特別受益だと認めさせたい【Q&A №577】

2017/09/04


【質問の要旨】

①子や孫への生前贈与は特別受益にあたるか?
②預貯金のみを相続したいが、どのように協議を進めればいいか?

記載内容  特別受益 生前贈与 調停

【ご質問内容】
 父が被相続人。相続人は私・兄・妹です。 
 兄は兼業農家の跡取りとして、遺産全部を受け継いで当然と考えており、妹も同意しています。
 私はこれまで、父からまとまった金銭を受け取ったことが全くなく、この相続では預貯金の3分1を受け取ることを希望しています。 

①父が生前、兄や兄の子(孫)に金銭を渡したことは、特別受益にあたるでしょうか。
 特別受益にあたるなら、相続遺産に加えたいですが、妥当でしょうか。
 心配なのは兄がすんなり認めるかです。認めさせる方法を教えて下さい。

②遺産分割協議は駆け引きの場だと思います。
 どんなことに注意すればいいでしょうか。
 大切なことを教えてください。


(のえる)



【あなたの申し出はどう評価できるか】
 あなたの相続分は3分の1ですが、それは遺産全部について、その3分の1です。
 遺産の中には不動産もあると思いますが、その不動産についてもあなたは3分の1の相続分があります。

 もし、遺産の中に不動産があるのに、あなたが預貯金の3分の1のみの相続で我慢するというのであれば、不動産については法定相続分を取得しないという大幅な譲歩をしていることになります。
 お兄さんとしては決して損な話ではありません。

【生前引渡分の扱い】
 生前にお父さんがお兄さんに金銭を渡していたのであれば、おそらく生前贈与に該当するでしょうから、遺産分割の際には、特別受益として遺産に持ち戻される可能性が高いです。

 ただ、お孫さんについての生前贈与ですが、お兄さんとその子であるお孫さんとは、別の人格ですので、お兄さんの特別受益と見なされる可能性は低いでしょう。

【お兄さんはすんなりとは認めない可能性が高い】
 あなたの提案する預貯金の3分の1の相続でお兄さんがすんなりと認めるかという点についても述べます。
 都会では相続をお金で割り切ることが多く、あなたの提案でお兄さんが納得することも多いでしょう。

 しかし、郊外などで農業をされているような方については、跡取りが遺産全部を取得するものだという考えを持つ方が多く、又、周囲の親族もそのような方向で圧力をかけてくるということも多いようです。

 このような地域性に加えて、妹さんが遺産はいらないという意向であるなら、お兄さんとしては《あなたにだけなぜ遺産を与えるのか》ということで、あなたの提案に難色を示す可能性が高いと思われます。

 又、お兄さんの立場から言えば、お父さんの農業を手伝ったので、特別寄与として遺産から優先的に支払いをせよと主張することも考えられます。

【調停制度の利用をお勧めします】
 このように本来は当然遺産分割するべきなのに、遺産分割をしないというようなケースでは調停制度を利用されるといいでしょう。
 調停はお兄さんの住んでいる地域の家庭裁判所に申立をします。
 手続き等がわからないのであれば、家庭裁判所に行って、どのように申立をすればいいかをお聞きになるといいでしょう。

 調停のいいところは、調停委員という第三者がお兄さんとあなたの話の双方を聞き、円満な解決の助けをしてくれるということです。
 裁判所で第三者が法律を前提に解決しますので、お兄さんとしても納得せざるを得ない場合が多いですし、あなたのように預貯金の3分の1でいいということであれば、調停委員としてもお兄さんを鋭意説得してくれるものと思います。

【調停での対応のコツ】
 調停のコツとしては、最初は全部の財産の3分の1を請求し、その後、調停委員の説得で預貯金の3分の1に応じる形をとるといいでしょう。
 調停は互いに譲り合って解決するという制度ですので、最初に譲ったところから出発すると更なる譲歩を求めれらますので、この点はよく覚えておかれるといいでしょう。

【調停は裁判ではない】
 なお、お兄さんや親戚の方などは、《裁判沙汰にして》などというかもしれません。
 しかし、調停は裁判ではなく、円満な解決を望む制度です。
 相続についての話し合いは本当に難しく、私(弁護士大澤)の経験でも話し合いで解決することは本当に少ないです。
 お兄さんがあなたの希望に従った解決をしないのなら、早期に調停を申し立てることを考えるといいでしょう。

【弁護士の知恵も借りる】
 なお、あなたの遺産問題で何が問題になるかを知っておくためにも相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
 何が問題であり、あなたが本来はどの程度の財産をもらえるのかを教えてくれるはずです。
 あなたの考えで間違っているところはないかどうか、弁護士の眼からみれば何が問題点になるのか、それらを知った上で、調停の申立をして、問題を解決するのがベストだと思います。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:09 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産総額を疑われています。【Q&A №576】

2017/08/23


【質問の要旨】

亡くなった母の預貯金を不正に出金したと疑われているが、どうすればいいか。

記載内容  不正出金 疑われた 犯罪

【ご質問内容】

 初めまして。よろしくお願い致します。
 
 母が亡くなりました。いわゆる孤独死になってしまい、警察が介入しました。事件も考えられるので、警察から頼まれた親戚が、私の到着前に通帳記帳をしてくれていました。
 その後私が警察で通帳や印鑑等を受け取りました。

 法事の後兄から、親戚から聞いた貯金総額と、私が提示した貯金総額に2000万近くの差がある。不明金なので、銀行に取り引き開示請求をし、それから警察に届ける、と言われました。
 通帳は、警察から受け取ったのは全てあり、兄には記帳済みの通帳も全部見せました。葬儀等の収支、現時点の残金も伝えています。通帳を見れば行方不明金などなく、親戚の見間違いとわかるのに、警察署、届け出と繰り返し言われました。
 私のことを疑う、と言う言葉こそ使いませんが(紛失という表現をします)、私は疑われていると強く感じます(通帳はあるのですから)。

 私の潔白の証明になると考えた通帳を、兄には不明金を確信したと言われました。理解に苦しみます。今は取り引き開示請求の結果待ちのようです。
 説明してもわかってもらえず、精神的に参りました。警察、届け出、と何度も書かれ、疚しいことをしていなくても、強い恐怖をかんじました。
 相続の時はこの程度疑われるのは仕方ないことなのか、兄の言葉は何かの罪に問えるのかご教示願います

(ランナー)





【お兄さんを罪に問うことは難しい】
 どうやらお兄さんは、お母さんの預金をあなたが不正に出金した(着服した)と疑っており、あなたは濡れ衣を着せられて不愉快な思い(あるいは怖い思い)をされたようです。
 しかし、今回の様な相続のケースでは基本的に警察が介入することはなく、少々の言いすぎなどがあっても名誉毀損や脅迫などで警察が動いたという話は聞いたことがありません。

【あなたも罪に問われることはありません】
 他方で、お母さんの預金をあなたが不正に出金した(着服した)と疑われている点についても、窃盗罪として警察が逮捕や起訴に踏み切ることはまずありません。
 なぜなら、法律上、親子間(直系血族)の窃盗罪は処罰されないことが明記されているからです。
この点は当ブログNo.389No.291No.466にも同様の記事が掲載されていますのでご参照下さい。
 
(参考条文 刑法第244条(親族間の犯罪に関する特例)
1 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条(窃盗)の罪、・・・(中略)・・・を犯した者は、その刑を免除する。


 なお、預金の場合は引き出された銀行が被害者という理解も可能ですが、銀行がこのような事案で警察に被害届を出したという話は聞いたことがありませんし、私どもが扱う事案でも警察が動いたケースはありません。

【そもそも証拠がないのでは?】
 また、このような理屈の話を抜きにしても、そもそも不正に出金した形跡がなければ警察は動きようがありません。法治国家である以上、証拠がなければ警察も強制捜査を行うことはできないのです。

【無実の証明は難しい】
 あなたとしては、一刻も早く身の潔白を証明し、お兄さんの疑惑を解消したいというのが正直なところだと思います。
 しかし、あなたが絶対に不正出金をしていないことを立証することはほぼ不可能です(我々弁護士の世界でも、無罪の証明は「悪魔の証明」とも呼ばれるほど、非常に困難なこととされています。)。
 しかも、今回のお兄さんはもはや結論ありきで疑っているようですので、もはや何をしても聞く耳を持たずのようです。このような場合、むしろ身の潔白を証明しようと努力することが疑いを深めてしまうことすらあります。
 ただ、警察が動き出す可能性は極めて低いため、ここは耐えることに徹し、ただ身の潔白を証明する「気持ちがある」ことだけをお兄さんや周りの人に示し続けることがあなたの立場や不安を補うことにつながるでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:22 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

夏期休業のお知らせ

2017/08/08
いつも当ブログ「相続これで納得!弁護士に聞く無料相談」をご覧・ご利用いただき、ありがとうございます。

誠に勝手ながら、当事務所は平成29年8月11日(金)から平成29年8月15日(火)まで夏期休業とさせていただきます。

そのため、その期間中、「相続問題Q&A」の新たな回答ができませんので、ご了承ください。

8月11日(金)以降にいただいたご質問については、上記休業期間は非営業日として算定しますので、平成29年8月16日(水)以降に順次回答致しますことを予めご了承くださいますようお願い申し上げます。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:21 お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

限定承認と保証債務【Q&A №575】

2017/08/03


【質問の要旨】

夫に借金や連帯保証があるかもしれない場合、どうすればいいか

記載内容  借金 連帯保証 限定承認

【ご質問内容】

 夫が亡くなりました
 お人好しの人でしたので連帯保証人とかになっていないか心配です。
 数年後とかに連帯保証人になっていた借り主が返済できなくなった場合、限定承認をしておくと相続人には夫の連帯保証人の支払いはしなくて良いのでしょうか?

(りんご)





【借金や保証の調査方法】

相続の前には、借金や保証などの調査をする必要があります。
財産より債務があることが判明した場合には相続放棄などの対策を考える必要があります。
(詳しくは本ブログ【コラム】相続放棄・・借金(負債)の方が多い場合にとるべき手段もご参照下さい)。
借金の調査方法としては、自宅に残された借用書などの資料を参考に取引のあった金融機関等に照会を出し、又、日本銀行協会、JICC・CICなどの信用情報機関で調査する必要があります。
ただ、注意すべき点は、前記調査機関で調べることができるのは、主債務者(借金をした人)が、連帯保証が銀行や貸金業登録をしている貸金業者から借り入れしたものだけで、個人的な借り入れは登録されていません。
そのため、友人などからの個人的な借り入れを窺わせるような資料があれば、その友人に確認する必要があるでしょう。
保証についても上記調査機関で調査できる場合がありますが、主債務ほどきっちりとは調査機関に登録されておらず、十分な調査ができないことが多いので注意が必要です。
又、借金もそうですが、他の個人の主債務に保証した場合には、調査機関では判明しませんので、その点の注意も必要です。


【限定承認はあまり利用されていないのが実情】

前項に記載したように調査をしても保証が確実にわかるわけではありません。
結局、債務や保証の存在がある可能性のある場合には、財産の多さと負債の存在する可能性を比較して、単純相続か相続放棄かのどちらかを選択することになり、リスクを考慮しての決断ということになります。
ところで、質問にあるような限定承認という制度があります。
財産から負債は支払った上で、財産が余れば、それを遺産分割するという制度であり、極めて合理的な制度のように見えます。
しかし、この手続は、(放棄した人以外の)相続人全員の同意が必要であること、手続にかなりの手間や時間がかかること、又、不動産を相続する場合には不動産譲渡税が課税されて高額の税金がかかる等のデメリットがあり(詳細は本ブログQ&A №286【コラム】限定承認の手続きについて)、そのため、この制度はほとんど利用されていないのが実情です。
結論から言えば、借金と資産を可能な限りで調査し、ある程度のところで見切りを付けて相続放棄をするか、リスクがあってもそのまま相続するか、決断をするしかないでしょう。
なお、限定承認をされるのであれば、その前に相続に詳しい弁護士に法律相談され、アドバイスを受けられると、後の手続きの理解ができていいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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17:44 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【非相続案件】後見人の弁護士による被後見人の普通預金の取引履歴調査について

2017/08/02
当ブログは、相続問題に関する質問のみを受け付けております。
今回、《お母さんの成年後見に関するご質問》であり、特に相続に関する法律問題を含んでいないご質問をいただきましたが、相続以外のご質問に関しては回答は控えさせていただいております。
何卒、ご了解ください。
 ただ、せっかくのご質問ですので、以下に簡単に弁護士のコメントを付し、回答に代えさせていただきます。

 また、ご質問いただきましたフアクト様宛にメールを送信いたしましたが、エラーで返ってきてしまったため、こちらに掲載させていただきます。



 認知症の母に、今年から法定後見人に裁判所が選任した弁護士が担当することになりました。
 最近になって、この弁護士が、後見人開始前の被後見人の普通預金の履歴調査をしていますが、これは、裁判所から行うように言われているのですか、教えてください。
 2年前までは、母も多少の物忘れは、あったものの認知症はなくて自分で預金管理をしていました。
 介護を実際にしている家族としては、疑われているようで、あまり良い気持ちは、しません。先方の後見人の弁護士から問い合わせがあれば、以前の管理は、母本人が行っていたと回答します。
(フアクト)


【弁護士コメント】
成年後見人の業務は、原則、就任した以降の財産の管理をします。
過去の履歴を取り寄せるというのは、就任前の使い込みの事実を疑っているからである可能性があります。
当事務所が扱った案件で、成年後見人が過去の分まで調査したケースがありましたが、その場合は1000万円近くの多額の引き出しが問題とされ、家庭裁判所と協議をした上での後見人の動きでした。
もし、口座からの多額の金銭の出金があるのなら、後見人に使途を説明して、わかってもらうようにするといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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15:04 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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