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生前の貸金を返済したが相続に影響する?【Q&A №604】

2018/03/22


【質問の要旨】

車の修理代を援助してもらい、返したが、特別受益になるのか

記載内容  返済 ローン 自動車


【ご質問内容】

 亡くなった母から生前一時的に援助を受けました。
 経緯は10年前交通事故に合い車を修理しなくてはならず急きょ修理代を借りることになりました。
 しかしローンを組み中古車を購入することになり借りた一時金は母に返しました。
 借りていた期間は2~3カ月です。
 現在調停中で他の相続人の弁護士から特別受益との指摘を受けております。
 返金した証明、購入した中古車の登録証、ローン返済の書類証明の提出を要求されておりますがその中古車は既に手放しました。
 書類等はありません。
 以上の要求について証明、書類提出できなければ特別受益に値するといわれました。
 どのように対応したら宜しいのでしょうか?

604

(パキラ)



 ※敬称略とさせていただきます

【借りたお金の性格は貸金であるので、特別受益にはならない】
 まず、あなたがお母さんから借りたお金の性格が問題になります。
 あなたが母から贈与を受けたのなら特別受益になります。
 しかし、あなたが主張されているように母からの借り入れというなら、母はあなたに対して貸金債権を有することになります。

【貸金での問題点】
 貸金だとした場合には、あなたが母に返済をしたかが問題になります。
 もし、貸金の返済を証明できなければ、貸金債権として母の遺産になります。
 結局、貸金の場合には特別受益にはなりませんが、返済が証明できなければ、母のあなたに対する貸金債権は存続し、母の死亡時には「貸金返還請求権」という債権として遺産になります。
 贈与や借り入れのどちらにせよ、あなたが貸金の返済を証明できなければ、いずれの場合においても母の遺産として計算されることになります。

【返済の証明はどうするのか?】
 問題は返済を証明できるかどうかです。
 あなたが、返済時に、母から領収書をもらっていたなら、それを証拠に出せば返済を証明できます。
 領収書がないのなら、次のような方策を考えるといいでしょう。
 もし、あなたがお母さんの口座に送金して返済しているのなら、お母さんの預貯金口座の取引履歴を確認して返金を証明できる可能性があります。
 もし、手渡しで返金したというのなら、受け取った母が、返金分を自分の手元にはおかず、預貯金口座に入金した可能性がないかどうか、母の取引履歴で確認するといいでしょう。
 その場合、あなたの預貯金口座から引き出して返済したのだというのなら、あなたの預貯金口座の履歴も取り寄せするといいでしょう。
 あなたの口座から返金分が払い戻しされ、その一方で近接した時期に母の口座に返金額に相当する金銭が入金されているのであれば、返金が立証できる可能性が高いです。
 ただ、取引履歴は10年間程度しか取り寄せできません。
 貸金が約10年前のようですので、迅速に取引履歴の入手の手配をされるといいでしょう。

【返済が証明できない場合】
 貸金の返済を証明する責任はあなた側にあります。
 もし、あなたが返済を証明できないのであれば、借金は返済されていないということなり、母のあなたに対する貸金請求権が遺産になります。
 この場合、あなたは他の相続人に対して、その相続分に応じた返金をする必要があります。

【中古車を買ったことは返済の証明にはならない】
 あなたとしては、修理をせず、中古車の買入をされたとのことです。
 しかし、修理をしなかった、あるいは中古車を買入れたことは、借金の返済の証明としては極めて弱いです。
 修理をしなかったということが借金に返済とつながるというのも、更に中古車を買ったから借金を返済したということも、それだけでは、返済の証明にはならないでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
14:15 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続 調停から審判【Q&A №596】

2018/01/15


【質問の要旨】

姉名義だが、父と姉が債務を負っている住宅の残ローンの半分は相続しなければならないのか。

記載内容  住宅ローン 光熱費

【ご質問内容】

 審判をするか悩んでおります。現在調停をしており先日担当裁判官と直接話をしましたが納得が行くものではありません。
 弁護士を入れて進めていますが、同じ結果になったとしても調停と審判では違うと審判を勧められています。
 ※特別受益と住宅ローン:家は姉名義で住宅ローンは二人で払っていたのでそれは特別受益ではないかと主張した。

 ボーナス払年二回11万ずつ現金で渡し、月々支払は光熱費と相殺していた。
 2世帯住宅だがメーターはひとつで父の口座から引落しで支払をしていた。
 裁判官の見解:ボーナス払いの現金を渡してたと言う証拠がない、光熱費が父の口座から引落としされてるのは明確だが姉が現金を渡してたかも知れないし相殺してたとは認められない従って特別受益は認められない。
 住宅ローンの債務についても半分の300万を負担する事、相続の分配に含んで行う。
 ※定期預金引出:生前父から電話があり、障害を持つ弟が入所している施設に寄付しないと居られなくなると言われ定期を渡した。

 姉に確認したら父に対して制裁だと話し返すよう話したが弟の保険に入ったと嘘を言い返済しなかった。
 裁判官の見解:定期解約をしたのは金融機関の書類で姉なのは事実だが、その後どうなったかは明白でない為、戻せとは言えず本件とは別に返還請求を別途するようにと。


(なつ)



 ※敬称略とさせていただきます

【父の支払を示す証拠が大前提】
 まず、今回は姉の単独名義で取得した自宅の住宅ローンについて、そのローン代金について父と姉がそれぞれ別個に、分割して借り入れをしたケースです。
 ところで質問では、ローンの返済は姉の口座から引き落されていたということであれば、父が姉の口座にお金を入れていなければ父は実質的に1円も負担していないことになります。そうすると、父が支払った証拠がない本件では、調停や審判の場ではなによりも証拠が重視されるため、特別受益とは認められないものと思われます。

【親子間では光熱費の無償使用もありうる(ローンとの相殺)】
 次に、あなたは、父と姉との間に「父が姉に渡す(父名義部分の)ローンの支払資金と姉が父に支払うべき光熱費を相殺する」という約束があったことを主張されているようです。
 しかし、今回は父が姉にお金を渡した証拠がないため、第三者の立場から見れば「父は姉の家に無償で住ませてもらっていた」という状況に見えてしまいます。そのため、父はそもそも姉に光熱費を請求するつもりがなかったと裁判所は考えるしかない状況かもしれません。
 ここはあなたの側で父と姉との間に相殺の約束があったことを立証する必要があるでしょう。
 要するに、結局のところポイントは「父が姉にお金を渡していた証拠をいかに見つけ出すか」という点にあります。
 この証拠が見つけられないためにあなたの主張が通らないという事態が生じているのです。

【父名義のローン残債務は分担】
 父名義の住宅ローン残債務については、父の金融機関に対する債務ですので、相続人であるあなたと姉が相続分に応じて分割された債務を支払いする義務があることは間違いなく、対金融機関の関係で返済せざるを得ないでしょう。

【姉の家は遺産分割の対象にならない】
 そうすると、父の遺産分割の結果、姉はローンを分割してあなたに半分負担させることができるが、姉は自宅を丸ごと自分のものにできるという利益を受けることになります。これはたしかに不公平感があることでしょう。
 この点の解決方法としては、父の債務である住宅ローンで融資された金銭はその全額が、売買代金の決済の時点で姉の代金の支払いに充てられているはずであり、この分は贈与として特別受益に該当する可能性があります。
 裁判所はその点の立証ができていないといっているのであれば、その点を立証するよう全力を尽くされるといいでしょう。
 現在、弁護士に依頼されているようですので、その立証方法としてどのようなものがあるかどうか、その弁護士と協議されるといいでしょう。

【不正な預金解約は調停・審判で判断しにくい】
 最後に別途訴訟提起が必要と言われている点ですが、調停や審判は遺産であることが明らかな(ほぼ争いのない)遺産だけを取り扱う手続です。そのため、不正な預金解約(損害賠償請求)のように事実関係に大きな争いがあるものは調停で判断ができないのが通常です。その場合、別途訴訟を提起して遺産であることを確認することが必要であり、この点は裁判所の見解が一般的といえるでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
14:01 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

子供がない夫婦、夫の死後ゆうちょ銀行の手続き【Q&A №591】

2017/12/01


【質問の要旨】

亡き夫の姉妹の居場所が分からない場合、相続手続はどうすればいいか?

記載内容  連絡先 戸籍の付票 行方不明 

【ご質問内容】

 相続の手続きが必要とのこと。

 亡き夫の生家とは、50年近く勘当同然の状態。
 両親は、亡くなっていますが姉3人、妹1人おりますが連絡先もわかりません。
 原戸籍は、取り寄せましたが現在の住所等を知る術がありません。
 会ったとしても普通に会話できそうにありません。

 正直、弁護士さんや司法書士さんへお願いする金銭的余裕もありませんので約5年そのままの状態です。
 この先、どうしたら良いのか不安で仕方ありません。
 具体的に手続きの術を教えてください。よろしくお願い致します。



(ゆた)



(敬称略で記載しております。ご了解ください)

【父が亡くなり、その後に夫がなくなったと理解】
 夫の父が先に死亡し、その後に夫が死亡したケースの場合に限り、あなたが夫の父の遺産を相続できます。
 今回の回答はその前提で記載しています。
 なお、あなたの夫が先に亡くなり、夫の父がその後に亡くなったケースでは、夫との間に子がいないため、あなたは夫の父の遺産を相続できません。

【戸籍の付票を取り寄せする】
 今回のご相談は、遺産分割をしようにも、他の相続人の居所も連絡先もわからないため、話し合いすらできないということのようです。
 ただ、相続関係を明らかにするために必要な戸籍は取り寄せておられるのであれば、「戸籍の付票」を取り寄せするといいでしょう。
 戸籍の付票とは、簡単に言えば戸籍に添付された住所の移り変わりの記録のことであり、出生時から現在までの住所の移り変わりが記載されており、他の相続人などの現在の住所地を把握することができます。
 戸籍の付票は戸籍に添付されているため、取り寄せ先は他の相続人のそれぞれの本籍地がある市区町村の役所ということになります。
 たとえば戸籍謄本を見て大阪市北区に本籍地があるなら、大阪市の北区役所に戸籍の付票を交付申請することになります。

【取り寄せ手続もそれほど難しくありません】
 戸籍付票は住所というプライバシー性の強い情報が記載されているため、本来は直系親族(たとえば申請者の祖父母、父母、子、孫など)を除けば、正当な理由がない限り役所は交付申請に応じません。
 ただ、今回の場合、あなたが相続人になることを裏付けとなる戸籍を提出し、その手続きのために必要であると申し出れば、付票を交付してもらえます。
 この申請手続は、専門家を要するような難しい手続ではありません。
 ただ、戸籍付票でわかるのは住民票がどこにあるのかということであり、そこに住んでいるかどうかまではわかりません。
 そのため、まず、手紙等の郵便物を付票上の住所に送付して、連絡をとることになります。
 なお、郵便物が返送されてくるような場合には、付票上の住所には住んでいない可能性も高いので、その現地に行かれ、付近の人から居住状況や転居先を聞かれるといいでしょう。


【法テラスなどの利用も検討する】
 連絡先が分かればあとはお手紙などで話し合いで遺産分割の話を始めることになります。
 普段からおつきあいのない親族との話合いに苦労されるケースも珍しくありませんが、専門家にご依頼されないのであれば自力で行うほかありません。
 なお、専門家に依頼する費用がないという場合であれば、弁護士費用を一時的に立て替えてもらい、後日分割で返済する制度(日本司法支援センター 通称「法テラス」)などもあります。
 預貯金や収入が一定額以下であることなど申込には条件がありますが、一度ご検討されてはいかがでしょうか。


(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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10:35 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

結婚時の親の援助と奨学金について【Q&A №589】

2017/11/28


【質問の要旨】

奨学金(学費)は4割増しで遺産から引かれるのか?

記載内容  奨学金 結婚費用 学費 

【ご質問内容】

 相続人は私と妹と妹の3男(養子縁組)の3人です。
 父の日記より、私の結婚時、両親が買ってくれた着物の代金と私が既にローンで買っていた毛皮等の残金を払ってくれていました。(40年前)その他に持参金を数十万頂いております。

 妹の奨学金ですが、親の遺産から4割増しで引くとあります。
 法律は全くの門外漢で分からないのですが、奨学金が4割増しで親の遺産から引かれるものでしょうか?

 母は、20年ほど前に亡くなり、一人息子である父だけでした。何とかH11年からの5年もの日記を3冊持ち帰りましたが、葬儀の翌日妹家族が全て処分してしまいました。
 几帳面な父の遺品と遺言書はありません。
 H11年以前の5冊25年分は妹が持っています。


(ルミ)



【前提となる事実関係】
 今回は「妹さんの奨学金」の借入経過について少し抽象的な部分があるため、次のようなご相談と理解し、回答させていただきます。

① 妹さんは奨学金(学費)をかつて自力で借入、返済をした。
② 他方で、お姉さん(相談者)は結婚の際に着物や持参金をお父さんからもらっている。
③ お父さんの日記には、「妹の奨学金は4割増しで遺産から引く」という記述がある。(=お父さんとしては、妹は自費で奨学金を借入、返済させたので、遺産分けの時は妹に奨学金の分だけ多めに4割増しで渡して欲しい、という心情で日記を書いた。)
④ ③のような扱いは法律上正しいのか。奨学金が4割増しになるような理由があるのかを相談したい。


【日記は遺言としての法的効力を持ちません】
 まず前提として、日記は遺言としての効力を持ちません。
 そのため、日記のとおり遺産分けをする必要はありません。
 日記にあるお父さんのお気持ちを尊重して遺産分けをすること自体は珍しくありませんが、法的に従う義務がないことはご理解下さい。
 以上の前提でいえば、妹さんの奨学金を考慮して、遺産を妹さんに多めに渡さなければならない理由はありませんし、4割増しにする理由もありません。
  
【結婚費用・持参金は特別受益にならない可能性も高い】
 まず、お姉さんのいわゆる嫁入り道具や持参金は特別受益にあたる可能性があり、嫁入り道具として購入してもらった着物の代金や持参金数十万円などは、特別受益とされることと考えられます。
 (この点は当ブログQ&A №507に同様の質問がありますのでご参照下さい)
 ただ、家庭裁判所の調停では、妹さんや弟さん(養子)の結婚に際してもそれなりの資金提供をされているケースが多く、嫁入り道具や持参金額が格別に高い価額ではないような場合以外は、特別受益はお互い様として帳消しにしてはどうかという対応を調停委員が言われることが多いです。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
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12:52 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正に預金を引き出した兄弟を訴えたい【Q&A №584】

2017/10/06


【質問の要旨】

不正出金をした兄弟の告訴は可能か?

記載内容  預金 使い込み 告訴 

【ご質問内容】
 パチンコ依存症兄弟が、亡き母の預金勝手におろし800万円あったのが、わずかしか残ってない!
 今度は、認知症4の父の大金使い込み!後見人弁護士調査中ですが、ずるい兄弟を告訴して処罰して必ずしてもらうには、どうすればいいのでしょうか?お願いします。疲れ果てております。


(和無)



【(犯罪は成立するが・・)告訴をしても警察は捜査をしない】
 兄弟の方が、無断でお母さん、お父さんの預金を引き出したというのであれば、詐欺罪や有印私文書偽造、同行使等の犯罪に該当する可能性があります
 どのような方法で使い込みをしたのかは明らかではありませんが、ご両親がするべき委任状の署名欄に兄弟の方が無断でサインをすれば、それは有印私文書偽造罪に当たる行為です。
 また、その委任状を銀行に提示してご両親の預金を引き出せば、銀行に対する詐欺罪が成立しうる行為です。
 キャッシュカードでの引き出しについては預金を窃盗したということで、窃盗罪になり得ます。

【告訴をしても警察は捜査をしない】
 以上のように刑法に規定された各種の犯罪が成立しますが、刑法には《親族相盗例》という条文があります。
 その内容は、親族間で上記のような詐欺や窃盗があっても、処罰はしないというものです(刑法251条、同244条準用)。
 このような規定が定められたのは、親族間で窃盗などは警察などの公権力は立ち入らない、そのような問題は親族間で解決しなさいという考え方があるからです。
 そのため、詐欺や窃盗で刑事告訴しても、処罰をすることができないので、警察が捜査を開始することはほぼないと考えた方がよいでしょう。

【民事上の争いで解決するしかない】
 刑事告訴をして処罰されることはないので、使い込んだ人の責任追及をするためには、民事上で解決するしかありません。

①お父さんの口座からの出金は後見人が返還請求
 お父さんには、成年後見人がついており、現在、調査をしているとのことですので、取り込んでいることがわかれば、家庭裁判所と協議の上で、後見人が返還を求めることもありえます。
 ただ、後見人によっては、選任された以降の財産管理をしっかりとするものの、選任前の預貯金の引き出しには積極的に動かない方もおられるようです。
 なお、お父さんが生きておられる段階ではあなたとしては、たとえお父さんの口座から不正出金があったとしても、なんらの請求もできないことも記憶されておくといいでしょう。

②お母さんの口座からの不正出金の返還請求
 お母さんの生前に、無断で預貯金を引き出し、使用した人がいるのであれば、お母さんはその人に対して返還請求をする権利があります。
 お母さんの死亡により、相続人であるあなたは法定相続分の限度で、使い込んだ人に返還請求をすることが可能です。
 ただ、無断出金された方がパチンコ等でお金を使い果たてしまえば、返済の資力がないということで、返還を受けられない可能性があります。
 いずれにせよ、民事上の請求をするのであれば、不正出金の調査も含めて、相続に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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11:36 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

保証債務の調査と相続放棄【Q&A №575】

2017/08/03


【質問の要旨】

夫に借金や連帯保証があるかもしれない場合、どうすればいいか

記載内容  借金 連帯保証 限定承認

【ご質問内容】

 夫が亡くなりました
 お人好しの人でしたので連帯保証人とかになっていないか心配です。
 数年後とかに連帯保証人になっていた借り主が返済できなくなった場合、限定承認をしておくと相続人には夫の連帯保証人の支払いはしなくて良いのでしょうか?

(りんご)





【借金や保証の調査方法】

相続の前には、借金や保証などの調査をする必要があります。
財産より債務があることが判明した場合には相続放棄などの対策を考える必要があります。
(詳しくは本ブログ【コラム】相続放棄・・借金(負債)の方が多い場合にとるべき手段もご参照下さい)。
借金の調査方法としては、自宅に残された借用書などの資料を参考に取引のあった金融機関等に照会を出し、又、日本銀行協会、JICC・CICなどの信用情報機関で調査する必要があります。
ただ、注意すべき点は、前記調査機関で調べることができるのは、主債務者(借金をした人)が、連帯保証が銀行や貸金業登録をしている貸金業者から借り入れしたものだけで、個人的な借り入れは登録されていません。
そのため、友人などからの個人的な借り入れを窺わせるような資料があれば、その友人に確認する必要があるでしょう。
保証についても上記調査機関で調査できる場合がありますが、主債務ほどきっちりとは調査機関に登録されておらず、十分な調査ができないことが多いので注意が必要です。
又、借金もそうですが、他の個人の主債務に保証した場合には、調査機関では判明しませんので、その点の注意も必要です。


【限定承認はあまり利用されていないのが実情】

前項に記載したように調査をしても保証が確実にわかるわけではありません。
結局、債務や保証の存在がある可能性のある場合には、財産の多さと負債の存在する可能性を比較して、単純相続か相続放棄かのどちらかを選択することになり、リスクを考慮しての決断ということになります。
ところで、質問にあるような限定承認という制度があります。
財産から負債は支払った上で、財産が余れば、それを遺産分割するという制度であり、極めて合理的な制度のように見えます。
しかし、この手続は、(放棄した人以外の)相続人全員の同意が必要であること、手続にかなりの手間や時間がかかること、又、不動産を相続する場合には不動産譲渡税が課税されて高額の税金がかかる等のデメリットがあり(詳細は本ブログQ&A №286【コラム】限定承認の手続きについて)、そのため、この制度はほとんど利用されていないのが実情です。
結論から言えば、借金と資産を可能な限りで調査し、ある程度のところで見切りを付けて相続放棄をするか、リスクがあってもそのまま相続するか、決断をするしかないでしょう。
なお、限定承認をされるのであれば、その前に相続に詳しい弁護士に法律相談され、アドバイスを受けられると、後の手続きの理解ができていいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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17:44 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正出金と特別受益について【Q&A №573】

2017/07/31


【質問の要旨】

母の預金を使いこんだ弟から遺産を取り戻せるか?

記載内容  使い込み 住宅ローン 贈与

【ご質問内容】

  先日、妻の母が亡くなりました。(父は既に他界)
  妻は兄と弟の3人兄弟で、母は13年程前から弟と同居していました(住宅購入)。
 母の遺産は定期預金など(推定6000万円程)で2年ほど前から弟が通帳管理し死亡前にはすべて弟の口座に移されていました。 贈与か不正出金か不明。
 弟は遺産総額を開示もしません。
 信託で契約を結び(金額不明)、死後、弟にお金が入るようにもしていました。
 信託会社に詳細を聞いたところ、財産と遺留分対象とのこと。

 住宅資金推定5000万円(弟名義)を、母が頭金援助(推定2000万円)、去年あたり母が(推定2000万円)を出してローン完済させたようです。
 弟はギャンブル好きで他にも不正出金が多々あると推測し、まだ現金2000万円程は隠していると思われます。

 お聞きしたいのですが、住宅資金援助は母の通帳開示請求から追及できるでしょうか
 また弟のローン支払いの通帳も開示請求して照合できるのでしょうか
 遺言書はないようですので、法定相続分の3分の1で請求した場合妻の相続分はどれくらいになるのでしょうか?

 また、兄は相続争いに参加したくないとの事で、妻への譲渡証明書を書いてもらうつもりですが、その場合、不正出金の返還請求も、特別受益があった場合も兄の分と2人分の請求ができるのでしょうか
 どうぞご教授よろしくお願いいたします。

(papepon)





【住宅資金援助の追及・・まず登記簿謄本と取引履歴の双方を確認する】

弟さんが購入した住宅の資金援助とローン返済をお母さんが行ったかどうかの追及ですが、次のような方法でされるといいでしょう。
まず、弟さんの不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せし、不動産購入時期及びローン完済時期を調べます
購入時期は所有権移転登記の時期、又、ローン完済時期は抵当権抹消時期で推測(判断)できます。
次に、被相続人であるお母さんの金融機関の取引履歴を確認し、購入時期及びローン完済時期に、お母さんの口座から多額の出金があるかどうかを確認するといいでしょう。
もし、双方の時期に合致した出金があれば、それが頭金等の購入資金として、あるいはローン完済の資金として使われた可能性があるといえるでしょう。


【購入資金あるいはローンとして使われたものかのどうかの証明が必要】

前項の登記変更時期と取引履歴の出金が合致したというだけでは、あくまで可能性があるという程度の話であり、裁判で必要とされる証明としては不十分なことが多いです。
お母さんの口座からの出金が弟さんのための資金として使われたことを証明する必要があります。
ところで、お母さんの出金額がそれぞれ約2000万円ということであれば、現金で出金されていることは少なく、おそらく送金されているものと思います。
そのため、上記金銭が送金されたかどうかを通帳の備考欄などで確認し、送金されたということであれば、出金した金融機関に対して、誰の口座に送金されたかを確認されるといいでしょう。
弟さんの口座に送金されているとすれば、追及することが可能になります。
なお、お母さんの預金については相続人であれば確認できますが、弟さんの預貯金口座の確認は、兄弟でも他人ですので、弟さんの同意がない限り、金融機関はプライバシー侵害を理由に応じないでしょう。


【奥さんの相続分・・お母さんが贈与していた場合】

遺産としては、弟さんがお母さんの口座から出金した預貯金6000万円と住宅資金の関係の出金である4000万円が質問に記載されていますので、この1億円が財産であるとして説明します。
まず、住宅関係で4000万円がお母さんから弟さんに生前贈与され、6000万円は弟さんが無断で出金したという前提で考えた場合、
① 生前贈与分4000万円は特別受益として遺産に加算されます。
② 無断引き出し分の6000万円は、お母さんの弟さんに対する不法行為や不当利得に基づく賠償・返還請求権となります。
この場合、遺産総額は、(特別受益:4000万円)+(不法行為等の返還請求権:6000万円)=1億円になり、子ども3名の相続分は各3分の1の3333万円強になります。
ただ、弟さんの生前贈与による取得額が4000万円で、法定相続分の3333万円を超えています。
そのため、弟は4000万円を返還する必要はありません(特別受益制度は返還までさせる制度ではありませんQ&A №406をご参照ください。)が、残りの6000万円からは1円ももらうことはできません。
あなたの奥さんとしてはお兄さんと共に生前贈与分を除外した残額である6000万円を2人で分けて、各3000万円を相続でもらえることになります


【奥さんの相続分・・お母さんに無断で引き出していた場合】

なお、もし、住宅関係の4000万円もお母さんに無断で出金されたというのであれば、お母さんは弟さんに対して合計1億円の不法行為による損害賠償請求権を有することになります。
子供らは各3分の1ずつを相続することになりますので、あなたやお兄さんは弟さんに3333万円ずつの返還を請求することになります。


【相続分譲渡の場合は譲渡者の分を含め、請求する】

 奥さんはお兄さんから「譲渡証明書」をもらっているということですが、これが相続分の譲渡であれば、不正出金の返還請求も、特別受益の場合にも、あなたの奥さんはお兄さんの分を含めて、2人分を請求することができるようになります。


【こんな点にも注意しましょう】

注意点も付け加えておきます。
弟さんが他にも現金で2000万円ほど持っているとしても、それを発見することはなかなか困難です。「ない」と断言されれば、どうしようもないということも考えておくべきでしょう。
次に奥さん側が遺産問題で動き出したのを気づいた場合、弟さんは財産を隠す可能性があります。
もし、弟さんが不動産をもっていたり、あるいは預貯金口座にお金をもっているらしいということがわかるのであれば、その財産を動かせないようするために裁判所に仮差押等という手続きをしておく必要があります。
ただ、その手続きをするのであれば、相続に詳しい弁護士と依頼されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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14:10 遺産分割のトラブル | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★母の預金の引き出しを防ぎたい【Q&A №555】

2017/01/25


【質問の要旨】

母の通帳などを妹が管理している

記載内容 不正出金 預金

【ご質問内容】

父が亡くなり四年が経ち、母・長女(私)・妹・弟(八年前他界)がおり、両親の面倒を見ていた妹夫婦が今回建物のみ母への名義変更を言ってきました。

弟存命中は、いずれ両親と同居する前提でマンション代を出してもらっており、しかし弟亡き後は、それが叶わないので妹から、父へマンション代を返すよう弟の嫁に言い、嫁は返済しました。

以前、私は、妹から両親の面倒を見てほしいと言われましたが、その当時は両親も元気で二人で生活できていたし、私の家の状況等の理由もあり、それを断った経緯があります。

その後は一切を取り仕切り、財産を聞いても教えてもらえず、生前父から何となく聞いていた預貯金額より遥かに少ないぼんやりした額をのらりくらり言うだけです。

嫁も同じことを言っています。通帳と実印は妹が全て持っていますし、母は強い妹には何も言えません。母名義にさせたマンション代他の預貯金の目減りを防ぐ手立てはないのでしょうか

また、今後どのようにして対処していけば良いのでしょうか

(piano)





【お母さんの財産の管理を決定するのはお母さんです】

お母さんの預貯金を、現在は妹さんが管理されているようですが、もし、お母さんが自分の財産の管理を妹に任せているのであれば、それはお母さんの意志に基づくものであり、何ら違法なことではありません

あなたはお母さんが死亡した場合には、その遺産を相続できる立場です。

しかし、現段階では、お母さんの財産に関与するなんらの権利も権限もありません。

そのため、もし、現在の状況を変えたいのであれば、あなたではなく、お母さんがその意志で行動する必要があります。

あなたとしてできることがあるとすれば、それは、お母さんが《預貯金通帳や印鑑を返してほしい》と決断するように働きかけることだけでしょう。

お母さんがそのような決断をするのであれば、お母さんの意向に従い、あなたがお母さんの代理人として妹さんと返還や管理について交渉するということも法的には可能ですし、又、必要に応じてお母さんが弁護士に依頼するということを考えてもいいでしょう。


【成年後見人をつけることも考える】

現時点ではお母さんの判断能力があるようですが、もし、将来、お母さんの判断能力がなくなるようなことがあれば、親族であるあなたは家庭裁判所にお母さんの成年後見申立をすることができます。

家庭裁判所で選任された成年後見人はお母さんの全財産を管理します。

今回のような将来の法定相続人の間でお母さんをめぐって紛争が生じるおそれのある場合には、家庭裁判所は、お子さんではなく、司法書士や弁護士などの第三者を成年後見人に選任しますので、選任された以降はお母さんの財産の保全を図ることが可能です。


【現時点でできることは何か?】

ただ、将来、お母さんが死亡した場合、あなたは相続人となり、遺産をもらう立場になります。

その際、妹さんがお母さんの預貯金を勝手に使っていたのであれば、貴方は相続人として法定相続分に応じてですが、返還請求ができます。

そのため、現在、どの銀行のどの支店にお母さんが預貯金を持っているかは最低限、把握しておくといいでしょう

通帳等が手にはいらなくとも、お母さんの死亡後、その金融機関に連絡すれば、取引履歴の取り寄せが可能です。

履歴照会により、妹さんがお母さんの預貯金をどのように扱っていたかのかが明らかになります。

現時点であなたがするべきことはそのような手配だと思います。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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16:23 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №553】

2017/01/17


【質問の要旨】

相続放棄したら仕送りしていた金銭はどうなるのか

記載内容 預金 引き出し 承認

【ご質問内容】

父の死亡後、多額の負債の連帯保証人をしていたことがわかり、子である私たちきょうだい三人全員が相続放棄をすることになりました。

遺産は預貯金40万円ほどと軽自動車1台。ほかにはありません。

父は年金と私たちきょうだいからの仕送りで生活していました。

相続を放棄してしまうと預貯金から仕送り分を返してもらうことはできない、という解釈であっていますか

(おがわ)






【仕送りは貸金ではない】

親子間では困っていたら助け合う義務(扶養義務といいます)があると定められています(民法第877条第1項。末記条文を参照ください)。

子が親に仕送りするような場合にはこの扶養義務の履行に該当すると考えられます。

そのため、子から親に対する仕送りは貸金ではなく、返還を要しない贈与となり、親は返還義務を負いません

そのため、お父さんの遺産から返還を受けることができないという結論になります。


【参考説明:子の親に対する貸金と子の相続放棄との関係】

前項で述べたように、親に対する仕送りは貸金ではないと考えられます。

ただ、本件の質問を離れて、仮に子が親に貸金があった場合、相続放棄との関係がどうなるかも説明しておきます。

相続放棄とは遺産の相続をしないということです。

子であるあなた方が相続放棄をした場合、お父さんの遺産である車や預貯金40万円を相続することはできません。

しかし、子が親に対して貸金のような債権を持っていた場合、子が相続放棄しても、その貸金債権はなくなりません。

相続放棄は親からの遺産をもらわないということであって、あなた方が従来から持っている親に対する貸金債権までなくなることはなく、あなた方は親の遺産に対して貸金の請求ができます


【参考説明:相続財産管理人の選任が必要】

問題は、この請求をした場合に、誰が支払いをしてくれるかです。

相続放棄をしない場合、法定相続人が遺産の権利者になりますので、その権利者の権限として遺産を自由に処分でき、債務の支払いもできます。

これに対して、相続放棄をした場合、その放棄した相続人は遺産を自由に処分する権限はなく、債務の支払いをすることができません

相続放棄をしない法定相続人がいれば、その人が遺産と債務を承継しますので、その人に支払い請求をすることになります。

もし、すべての相続人が放棄をした場合で、貸金を有している債権者が債権の支払いを求めたいのなら、その債権者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をする必要があります。

選任された相続財産管理人が遺産を管理・調査し、債権者に支払いをしてくれます。

ただ、財産管理人選任の申立をする場合、原則として、予納金として裁判所に90万円から100万円を納付する必要があります。
今回の質問の場合、遺産が少ないのでそのような手続きはするメリットはないでしょう。

なお、財産管理人が選ばれた場合、この申立をした債権者の債権の弁済が優先されるわけではなく、債権額に応じた平等弁済になることも理解しておかれるといいでしょう。


【勝手に遺産から弁済をうけた場合の扱い】

相続放棄したにもかかわらず、その放棄した方が遺産から勝手に貸金の返済を受けた場合、その相続人は遺産を取り込んだとして、相続放棄の効力がなくなることがあります

相続放棄が無効になった場合、その相続人は、お父さんの債権者から請求があれば債務の支払いをしなければならないこともありうることにご注意ください。

民法 第877条
(扶養義務者)
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(以下略)


(弁護士 大澤龍司)

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12:57 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

被相続人との共有マンションの家賃の扱い【Q&A №546】

2016/12/06



【質問の要旨】

マンションの共有者である長男が、被相続人に対し収益の返還請求権を持っていると主張している

記載内容 共有物 賃料 時効

【ご質問内容】

被相続人と長男が一棟建て賃貸マンションを所有していました。

分割協議が進まず調停へと進む状況です。

これまで賃貸マンションの収入は被相続人が管理し、収入も返済や税金の支払も行ってきました

長男代理人は2分の1所有の賃貸マンションからあがる収益は本来自分の物であり、返還請求権をもっていると主張しています。

この主張は認められるのでしょうか?

またこの被相続人に対する債権は何年前まで有効なのですか?

時効はあるのでしょうか

この債務を遺産に加えると他の相続人の相続分はなくなるといっています。

(mujun)





【兄が本当に共有者であるかどうかを念のために確かめる】

お父さんと兄で共有持ち分が各2分の1であるのに、被相続人が賃料収入全部を得ていたということですが、2つの面で疑問(あるいは問題といってもいいでしょう)がありそうです。

まず、第1は、兄の持ち分2分の1というが、実質はお父さんが建築資金を出しており、名義だけを長男のものにしていたのではないか?という点です。

この疑問は①長男名義の2分の1は実質上はお父さんの遺産ではないのか?

あるいは②お父さんがお兄さんに建築資金を生前贈与(特別受益)したのではないか?

という問題に発展しますので、念のために上記の①及び②の観点から、是非、調査されるといいでしょう。

なお、ローンがあるようですので、その借入名義がお父さんだけか、兄でもあるのか、又、頭金などは誰が負担したのかを、お父さんの取引履歴等なども参考にして調査されるといいでしょう。


【兄はお父さんに賃料の返還請求はできない可能性が高い】

次に、兄としてはお父さんが賃貸に出していることぐらいは知っていたと理解するべきでしょう。

にもかかわらず、賃料の半額を請求しなかったのはなぜかという疑問があります。

この点については、賃貸を始めるときにお父さんと兄との間で、お父さんが賃料を全部取得するということで合意(暗黙を含めて)があり、管理はお父さんがし、賃料収入はお父さんがもらう、ローンの支払いや固定資産税の支払いは全てお父さんがするとの合意があったと考えるのが普通の理解でしょう。

もし、その前提が正しいとすると、お父さんが全額を取得することを、兄は了解していたのですから、兄が被相続人であるお父さんに不当利得等の請求はできないことになります。


【仮に無断で賃貸していた場合には】

しかし、万一、お父さんが兄に知らせず、勝手にマンションの賃貸をしていたのだとすると、兄からお父さんに対して不法行為による損害賠償請求及び不当利得返還請求として賃料額のうちの兄持ち分額に相当する金額を請求することが可能になります。

この場合、お父さんが兄の分のローンの支払いをし、かつ固定資産税も立替支払いをしていたのであれば、その分は請求額から控除されますし、場合によれば管理料相当分も控除することも可能です。

なお、不法行為で請求する場合には、勝手に貸していることを知ってから3年で、不当利得返還請求をする場合なら10年で請求権が消滅時効にかかりますので、それ以前の分は時効を主張されると、兄は請求できないということになります。


【兄請求の債務を遺産に加えるどうなる?】
  
今回の質問のケースでは兄の請求が成立しない可能性があります。

仮に請求できるとしても、お父さんが賃料から兄のローンの支払いをし、かつ、兄の分の固定資産税も支払っていたというのであれば、法的に認められる返還額はそれほど多額にはならず、請求すると遺産が無くなるようなことはないと思われます。


【特別寄与について】

兄に賠償あるいは返還請求ができない場合でも、賃料全額をお父さんに取得させたということが特別寄与として認められ、兄がその額を取得できる可能性はあり得ます。

ただ、この場合でも、兄の分のローンの支払いや固定資産税の立替支払い、管理料相当額等が考慮されますので、兄の寄与分としてはそれほど多くないように思います。

(弁護士 大澤龍司)

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兄の葬儀代【Q&A №542】

2016/11/21



【質問の要旨】

兄の葬儀費用を払ったが、相続放棄をする前に費用を回収したい

記載内容 相続放棄 葬儀代 返してもらう

【ご質問内容】

親、妻子のいない独身の兄が先月亡くなりました

亡くなるまで体調が悪く、自宅でヘルパーさんに毎日来てもらい、財産管理は後継人の弁護士さんにお願いしていました

葬儀はやらず火葬だけで30万円程かかったので、葬儀屋さんから後継人の弁護士さんに電話で費用について話しをしてもらいました。

私が支払うとの事を言われたので支払いました

(亡くなった時点で後継人は解除され弁護士さんも通帳からお金を出せなくなったのでしょうか?)

私は相続放棄するのですが、国の物になってしまう前に葬儀代だけ返して貰う方法は何かないのでしょうか?

他に独身の兄がいるのですが、施設に入って財産は後継人の他の弁護士さんにお願いしています。

その兄が亡くなった時にも同じように葬儀代を払わなくてはいけないのでしょうか?

その兄がも今回相続放棄します。

跡継ぎもいないので先祖代々のお墓も閉めて永代供養にしたいので、他にもお金のいることが多いです。

子供に迷惑をかけないように私が生きているうちに何とかしておきたいです。

私も高齢なのでお金に余裕はありません。宜しくお願いします。

(セレナ)







【火葬費用は相続債務ではないが・・】

火葬費用は、被相続人の死亡後に発生するものであるため、厳密に言えば相続債務や費用にはならず、遺産から当然には支払われるものではありません。

火葬費用は葬儀費用として、被相続人の喪主を務める人が負担するべきものです。

しかし、人の死亡した後、必然的に火葬を伴いますので、遺産分割調停などでは、相続債務に準じるものとして扱う場合が多いです。


【後見人は火葬に関する契約をする権限がある】

成年後見人(以下、後見人と略します)は、裁判所の許可を得てですが、死亡した被相続人の死体を火葬するに必要な行為をすることができます(この点は今年(平成28年)の民法改正で第873条の2第3号として明記されました)。

そのため、後見人としては財産があれば、裁判所の許可を得て、火葬についての契約を結ぶことができるようになりましたが、遺産から火葬費用を支払うことができるかどうかは条文では明確にはされていません。

しかし、契約は締結できるが、火葬費用は支払いできないということもおかしい話なので、後見人としては火葬費用を支払うことができると考えていいでしょう。

今回の質問では、あなたが火葬費を支払ったようですが、もし《遺産があれば》後見人が遺産の中から支出することも可能だったケースです。


【相続放棄しても立替請求は可能である】

あなたはお兄さんの相続放棄をした場合、お兄さんの財産はもらえず、債務も引継ぎしません。

しかし、あなた自身がお兄さんに対して持っている債権は、あなた独自の財産ですので、相続放棄後も存続しています。


【後見人に立替火葬費用の返済を求める】

あなたが立て替えた火葬費用については、後見人が契約をしてあなたがその費用を立替えて支払ったというのであれば、後見人に支払いを求められるといいでしょう

又、仮にあなたが火葬の契約をし、かつ費用も出したということであれば、喪主たるべき人に対して請求するということになります。

もしもこの件に関して、喪主たるべき人があなただということであれば、火葬費用を請求することはできないということになります。

なお、喪主たるべき人が相続放棄をしていても、前記のとおり、相続放棄はお兄さんの財産や債務を引き継がないということであり、喪主の地位が亡くなるわけではありません。

喪主としては相続放棄をしたか否かにかかわらず火葬や葬儀を行い、又、その費用を負担するべき立場になるということになります。

また、もう一人のお兄さんが亡くなられたときにも、今回と同様に、お兄さんの喪主になられた方がその費用を負担することになります。

(弁護士 大澤龍司)

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★【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?(東京家審平成21年1月30日)

2016/09/07
毎月の送金が特別受益にあたるのか?

(東京家審平成21年1月30日)


【ケース】

平成4年から平成6年の間、被相続人から相続人の一人に対して一月に2万円から25万円の送金がなされていた事例で、相続人の一人への特別受益にあたるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は、以下のような内容の判断をしました。

遺産総額や被相続人の収入状況からすると、一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であると認められるが、これに満たないその余の送金は親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは認められないと思慮する。

一月に10万円未満の送金については、親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは直ちに認められないと思慮するが、その余の送金はいずれも一月に10万円以上の送金がなされており、返済されたと認められる証拠がないことからすると、これらの一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であり、いずれも特別受益と認められる。


【弁護士のコメント】

裁判所は、この事案については、月に10万円程度なら扶養義務の範囲での援助といえるが、それ以上の送金については、扶養義務の範囲を超えた「生計の基礎として役立つような財産上の給付」であると言えるので、特別受益になると判断したということです。

月に何万円程度が扶養義務の範囲といえるかどうかは、遺産総額や被相続人の収入状況によって変わりますので、月に10万円というのは固定額ではないことに注意が必要です。

大澤龍司法律事務所
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17:15 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★子のいない叔父の葬儀、墓をどうするか【Q&A №508】

2016/06/08



【質問の要旨】

遺体の引き取り手がいない、葬式費用を立て替える人もいない、入る墓もない

記載内容  後見人  

【ご質問内容】

叔父(独身、精神病院長期入院)に法定後見人(弁護士)が付いていますが、叔父の死亡時に当然ですが後見人は職務終了になると思われますが、各問題が浮上しますので、対応策をご教示頂ければ助かります。

兄弟は4名(叔父含めて他は没)姪、甥が現在5名

叔父の資産は推定数千万円。姪、甥は叔父の事で仲が悪くなった。

1、叔父の死亡時には誰も対応せず、遺体引き取りが出来ない。

2、葬式をするにも、戒名等代等 誰も立替える意思が無い。

  (立替えた費用が他の相続人の事後合意が取れなさそう)

3、本家の墓には入れそうにも無いので、墓の問題が発生。

(福田)







【相続人に遺体の引き取り義務があると定めた法律はない】

相続人に遺体の引き取り義務があると定めた法律はありません。

そのため、法定相続人である甥姪全員が遺体の引き取りを拒否した場合、最終的には死亡した場所の自治体が火葬することになります。

参照条文:墓地、埋葬等に関する法律第9条:〔市町村長の埋葬又は火葬の義務〕
「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。」


ただ、成年後見人(弁護士)としては、遺体の引取りや葬儀を主宰するように甥や姪の方々に働きかけることと思いますが、これも強制ではなく、断られてしまえば自治体に連絡して、火葬することになります。


【葬式費用の立て替えについて】

葬儀費用は相続債務ではありません。

そのため、喪主となった法定相続人が立て替え支払いをして、後日、遺産分割時に返済をしてもらうようなことが多いです。

しかし、厳密にいえば、葬儀費用は相続債務ではなく、支出したからといって、必ずしも遺産から優先弁済を受ける費用とは言えないため、相続人間で遺産争いがあると、後見人も安易に喪主に葬儀費用分を返還するわけにはいきません。

そのため、あなたがもし葬儀を執り行ってあげたいというお気持ちであれば、このようなリスクを覚悟の上で行うか、あまり費用をかけずに行うか、どちらかの方法で処理するしかないでしょう。


【墓地の費用について】

最後に、入るべき墓がないという問題ですが、法定相続人が墓を建立しなければならないという法律はありません。

最終的には、喪主となるべき人が決定することでありますが、その喪主も決まりそうもなく、又、費用負担するべき人はいないというのであれば、もはやどうしようもありません。

そのため、もしあなたが墓地を建立してあげたいというお気持ちがおありでしたら、ご自身の費用で立て替え支出した上、他の相続人(ほかの甥姪)に墓地を建立するための見積書等を提示した上、遺産分割協議を行う際に一定額を控除してもらうよう要求していくほかないように思います。


【遺産は遺産、葬儀や墓は別問題】

叔父さんの遺体を引き取りもしないような状況の中で、遺産分割について争いを続けるということが果たしていいのかどうか、法律問題ではありませんが、検討される必要があるように思います。

遺産問題全体の解決がすぐにはできなとしても、被相続人の遺体の引取りや葬儀の手配については法定相続人間で協議され、何らかの合意をすることはできないのでしょうか。

経費の最低限にしてでも必要な手配を行われることをお勧めします。

(弁護士 北野英彦)
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抵当権付きの建物の相続【Q&A №498】

2016/04/05

【質問の要旨】

抵当に入っている家に住み続けたい

記載内容  借金 保証 抵当権

【ご質問内容】

父が以前親戚の保証人となり、持ち家が抵当に入っています。(根抵当?)

先日父が亡くなり、母が実家に一人で住むことになります。

父は生前そのほかに多くの借金もしており、母が少しずつわかる範囲の借金を返済しております。

母は高齢でこれからどこかに引っ越しを考えることは難しく、死ぬまで住みたいと考えています。

抵当に入っているということで、遺産相続(借金返済を続ける)するということでしか、そこに住む方法はないのでしょうか。
また母が亡くなった場合、私たち子どもが実家を守る手段は何かあるのでしょうか。

※借金を実際にした本人とは連絡が取れないそうです

(しま)






【自宅に住み続けるためには保証債務を支払うしかない】

お金を借りた親戚の方(主債務者といいます)と連絡が取れないということであれば、その方はおそらく債務の支払いが滞っているものと思われます。

主債務者が支払いをしない場合、貸主としては、連帯保証人に請求をしますが、そのお父さんがなくなっていますので、保証人の債務は法定相続人がその相続分に応じて支払い義務を負います。

もし、保証人からの支払いがない場合、債権者としては抵当権の実行として、裁判所に競売の申立をします

そのため、自宅に住み続けたいというのであれば、高齢のお母さんには気の毒ですが、貸主の請求に応じて債務の支払いをするという方法があります

なお、主債務が分割支払いであっても、それが支払い遅延した場合、一括支払いをすることになります。

ただ、あなた方が事情を説明し、保証債務は履行するが、分割払いにしてほしいので抵当権の実行はしないようにという申し出をすることは可能ですが、貸主としてはその申し出を受けるという保証はありません。


【住み続けるための方策としての入札】

抵当権を実行させても住み続ける方法として、競売で自宅を買うという方法もあります

この場合の利点は、主債務の未払い債務額より、競売で入札できる額が少額の場合も多いことです。

そして、保証債務より低額の落札金額の支払いで、抵当権も消えた家を獲得できるという点です。

入札しても絶対に落札できるとは限らないという欠点がありますが、自宅を確保する一方法として考えられるといいでしょう。


【入札者に賃借を申し出る】

なお、入札できなかった場合には、入札した人(新しい所有者)に対して賃借させてもらうように頼むことも考えられます

但し、入札者が賃貸をしないというのであれば、やはり自宅を退去せざるを得ないでしょう。


【抵当権が実行されても、すぐに家を出るというものではない】

抵当権等の競売の申立をした場合、競売手続きの込み具合により異なりますが、最近のケースでは、申立から競売が終了するまでに約6ケ月程度がかかります。

そのため、その期間は自宅に居住することは可能ということは覚えておいていいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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★亡母の預金を使い込んだ兄の言い分【Q&A №495】

2016/03/10

【質問の趣旨】

建築費用は貸金か贈与か?遺産を公平に分配するには?

記載内容 不正出金 親に貸付 寄与分

【ご質問内容】

家内の実父は、約30年前に他界しており、更に1年前に実母も他界しています。

法定相続人は4人です。

長男は、約35年前に実親の家の新築の折、数百万円を借用書も無しに工面したと言っています。

そのお金を今になって「返して欲しい、しかも年5.5%の35年間の複利運用」条件を提示しています。

長男が中心となって作成した父の遺産相続協議の際、そのような負債があることは明らかにしておりません
し、返済請求書もありません。

従って、あたかも親への贈与と思われてもおかしくないものです。負債なら、膨れ上がる前に手の打ちようがあったはずです。

今やその金額は、母親の預金(5千万円)でも不足すると主張する始末です。

まさかと思って、他の兄弟が、銀行(3行)に確認したところ、案の定、母親の死亡1年前からATMから引出限度額で毎日下しており、残額はゼロと判明しております。

亡き母は認知症の為、介護施設に入っており、その支払い等のため銀行カードを長男に預けていたようです。

本件は、母親の預金額に目がくらみ、総取りのシナリオを後付で描いたように思えます。

公平に遺産相続する方法をご教示頂けませんか

(yuzu)







【まず、お金を渡したということを証明してもらう】

最初に、長男さんがお金を貸したかどうかの確認が必要になります

お金を貸したというのなら、当然お金の動きがあったはずです。

長男さんにまず、お金が動いたことの証明を求めましょう。

もし、長男さんがその点を証明できないのであれば、貸金の主張は無視して、遺産分割をすることになります


【贈与か貸金か】

もし、お金をご両親に渡していることが証明されるのであれば、次にどういう趣旨でお金を渡したのかが問題になります。

返還してもらうという前提ではなかったのであれば、長男さんから両親への贈与になりますし、返還してもらう前提なら貸金になります

建築資金ということですから、通常ならかなりの金額になります。

高額の金額にもかかわらず、借用書も作成していない、これまでの35年間返還されていない、という事実を考慮すると、貸金である可能性は極めて低いと思われます。


【複利はまずない】

長男さんは複利を主張されているようですが、そのように主張するのであれば、長男さんとしては貸金であることに加えて利息は複利であり、その利率は年5.5%で合意されていたということを証明する責任があります。

借用書も作らないようなとき、複利というような利息の合意が認められる可能性は皆無に近いと思います。


【貸金や贈与と特別寄与の関係】

仮に贈与があったとすれば、両親はもらった金銭は返還不要ですが、長男さんとしては、そのような金銭をあげたことで、長男さんが特別寄与をしたと主張することができます【コラム】寄与分とは?をご参照ください)。

もし、貸金を立証できた場合には、長男さんはご両親に返還を請求できるということになりますが、ただ35年も前の貸付であれば、特段の事由(例えば時効中断等)がない限り、時効で消滅している可能性が高いです(なお、貸金が時効で消滅していた場合でも、長男さんが特別寄与をしたと主張できる余地があります)。


【今後の取るべき対応について】

お母さんの判断能力がない段階で長男さんが預貯金を引き出していたのなら、お母さんは長男さんに不当利得の返還請求権を持つことになります

お母さんが死亡した場合、その返還請求権は各相続人がその法定相続分に応じて取得し、長男さんに請求することができます

長男さんの態度を見ていると、簡単に返還しそうな感じは受けませんので、遺産分割調停や訴訟等の法的手続きが必要だと思います。

ただ、訴訟して勝訴しても、財産がない場合には強制執行もできません

もし、長男さんの財産(例えば抵当権のついていない土地家屋など)があることが判明しているのであれば、長男さんがその財産を隠してしまう前に、財産の移動を禁止する仮差押え等の手続きを取る必要があります

この手続きはむずかしい点がありますので、弁護士に相談されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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限定承認と相続放棄【Q&A №488】

2016/01/25

【質問の要旨】

相続放棄の注意点等

記載内容

返済 承認 遺品整理

【ご質問内容】

独居の叔父がなくなり甥である自分が相続人となりました。

若干の現金と一戸建ての遺産がありますが、人の良い叔父が連帯保証人になっていないか心配しております。

遠方に住んでおり、叔父の交友関係など全くわからないので、限定承認か相続放棄を考えております。

この場合注意することはありますか?

また、相続放棄をする場合、独り暮らしの叔父の遺品整理をしてしまうと単純相続したことになってしまいますか

相続放棄をした場合、家の後始末も全くしなくてよいと言うことでしょうか?

既に、叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配しています。

アドバイスのほどよろしくお願いいたします。

(ちょろ)





【遺産の整理と保証債務】

相続放棄は法定相続人が被相続人の相続をしないと家庭裁判所に申し立てることです。

相続放棄をすると遺産の中の預貯金や不動産、株式等、一切の財産を相続でもらうことはできなくなります。

反面、被相続人の債務(借金等)も相続されず、支払う必要はなくなります。

ただ、預貯金を払い戻す等、遺産を使うような行為があった場合には、相続放棄は認められません。

今回の場合は、遺産の整理ということですが、厳格にいうと遺品(例えば鍋・釜・布団等)の整理も遺産の処分に該当するので、放棄できないということになりそうです。

しかし、私としては、例示したような鍋等の価値のないものを処分する程度であれば単純承認とされることはなく、放棄が可能だと思います。

但し、価値ある物品(例えば絵画や彫刻等)を売却するような場合には、遺産の処分に該当し、法的には放棄ができない(正確にいうと、放棄してもその効果を被相続人の債権者に主張できない)ということになります。


【限定承認はほとんど使われていない】

民法の条文を見ていると限定承認は財産と借財を確認したうえで、相続をするという制度であり、合理的な制度のように見えます。

しかし、不動産の相続などで、税務上は相続とはみなされず多額の税金が課される等の使い勝手の悪い面があるため、私自身は今まで1回も扱ったことがなく、他の弁護士がこの手続きをしているのを見たこともありません。


【保証債務の有無の確認はむずかしい】

被相続人が保証債務を負っているのに、相続放棄をしなかった場合、この保証人の地位も相続人に承継される可能性があり、その場合には相続人が保証債務の支払いをする必要があります。

問題は、ほとんどの場合、保証人となっているかどうかが判明しないということです。

私の経験では、被相続人である母親が死亡した後、約10年経過してから、父親のしていた会社が破産し、会社の債務の連帯保証をしていた母親の保証債務が現実化したというケースがありました。

この場合には、被相続人からの何も財産などはもらっていなかったことから、相続放棄の手続きをし、結局、放棄が認められたことがあります。

叔父さんがどのような社会的な地位にいたのかを調べる必要があるでしょう。

もし、叔父さんが会社の社長や役員をしていたのであれば、会社の借財に連帯保証をしている可能性も考えられ、慎重に遺産調査をする必要があります。

相続放棄は相続開始を知ってから3ケ月以内に申立する必要がありますが、もし、調査に時間がかかるのであれば、放棄期間伸長願いを裁判所に提出するといいでしょう(ブログ【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。


【遺産の整理はしなくてもいいのか・・】

法律的には、相続放棄をするのであれば、遺産に手をつけない方がいいでしょう。

しかし、遺族としての立場から言えば最低限の遺産整理もしないと社会的な非難を受けかねません。

そのため、価値あるものは何らかの形で保管しておき、価値のないものは廃棄するということで折り合いをつけるのがいいでしょう


【自動車税や固定資産税、電気等の支払いについて】

叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配していることようですが、あなたが相続人としてその行為をしているのであれば、単純承認とみなされる可能性が高いです。

もし、そのような支払いの手配を停止できるのであれば、停止されるのが望ましいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
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過去処分した不動産の売却代金調査と特別受益【Q&A №482】

2015/12/15

 【ご質問の要旨】

1 被相続人が事実婚時代に贈与等を行った場合、婚姻後に特別受益と扱われるか
2 被相続人が過去に売却した不動産の代金についての調査

記載内容 特別受益 不動産売却 取引履歴

【ご質問の内容】

被相続人は、結婚せずに20年以上同じ異性と暮らし、二人で家を購入し(名義がどうなっていたかは不明)共働きででローンの返済をしていましたが、異性が年金受給できる年齢に達する数年前に家を売り、ローン返済後の所得を持ち、異性の故郷のある土地へ二人で引越したのを機に結婚しました。

以来二人は働いていません。

私は被相続人の兄弟で、法定相続人です。

婚姻前の不動産所得は被相続人と配偶者の共用財産ですが、被相続人の財産分もあると思います。

こういった場合、調停か審判になった時、被相続人の不動産所得分として、配偶者の特別受益と見なされますか?

不動産所得額や財産分与があったのかなど、具体的には配偶者以外、誰もしらない状況です。

宜しくお願い致します。

(もっち)





 【財産分与は相続の対象にならない】

ご質問の中に、「財産分与」という言葉が出てきます。

財産分与というのは、法律的には、離婚の際に、財産をその夫婦間で分ける手続です。

この財産分与が遺産で問題になることは少ないといえます。

なぜなら、財産分与は、離婚した妻(場合によれば夫)に対する支払いであり、その内容は婚姻後に夫婦で形成した財産の分割なので、仮に妻が財産分与を受けてもそれは実質的に自分の財産を戻してもらったということであり、その分は遺産にはならないからです。
また、そもそも離婚しているのですから、復縁しない限り、その妻が相続人となることもありません。

ご質問の被相続人は、離婚しているわけではなさそうなので、財産分与の有無を考える必要はないといえます。


【生前の財産譲渡は特別受益になる可能性がある】

今回のご質問で財産分与という趣旨は、おそらく、生前に配偶者が財産をもらっているのではないか、その分は遺産計算上、どうなるのかということでしょう。

そのように生前に財産をもらっているのであれば、それは特別受益として、遺産の分割時に遺産に含めて計算されることになります。


【今するべきことは、なによりも調査です】

被相続人の財産が、その生前、残された配偶者に移されているかどうかについては調査が必要です。

なぜなら、調停にせよ、裁判にせよ、被相続人の財産が配偶者に移されていることを認めてもらうためには、裏付となる証拠を集めなければならないからです。

そのため、早急に遺産調査を始める必要があるでしょう。

   《不動産の調査》

まず、かなり前に不動産を売ったようですが、その辺から調査を開始しましょう。

① 売却後に故郷に居を移したということですので、自宅を売却した可能性が高いと思われます。そこで、住所の移動状況を探るために、被相続人の戸籍附票を取寄せましょう。ご質問内容からは、売却した不動産は、故郷に移る前の住所地であることがうかがわれます。

② さらに、その不動産のある市町村から名寄帳を取寄せ (【コラム】名寄帳の取り寄せ参照)、当該不動産の登記上の所在地や、そのほかの不動産所有の有無等を調査しましょう。

③ 不動産の所有状況が判明した場合は、法務局でその不動産の登記を調べることで、被相続人がいつ、誰に売却したのかが分かります。

   《金銭の動き・・取引履歴の調査》

前記不動産の調査によって不動産の売却時期が判明した場合には、続いて、金融機関の取引履歴を調べることが必要です。

どこの金融機関を調べるかは、支店名まで特定する必要があるので難しいところですが、不動産の登記に住宅ローンの抵当権などがついていた場合、その抵当権者である金融機関(あるいはその関連会社)から支店名を探り出し、その支店に対して取引履歴の照会を行うとよいでしょう。

そして、その取引履歴のうち、不動産売却当時の大きな入金があれば、それが売買代金の可能性が高いといえます。

その代金額が配偶者の共有持ち分と大きく異なる、あるいはその後引き出されているなどという事実があれば、その時点で財産が贈与等されていると理解して、その後の対応を考える必要があるでしょう。


【弁護士に相談してもいいでしょう】

ご質問からは、被相続人の遺産については、現在、ほとんど判明していないように見受けられます。

そこで、前記のような調査が必要不可欠となるわけですが、一方で、処分された不動産や金融機関の支店が判明するとは限りません

ただ、質問のケースに応じてどのような調査方法が最適なのか、調査の結果によりどのように対応するなかなどについて、相続に詳しいお近くの弁護士に相談することを考えられるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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11:51 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母の名義を借りていた建物【Q&A №464】

2015/09/02



【ご質問のまとめ】

20数年前に賃貸用建物を建て、母名義の登記をしました。

以来、賃貸の回収、ローンの返済、固定資産税すべて私が行ってきました。

数年前に母が亡くなり、兄と父がこの建物を渡せと言ってきます。

時効の主張はできますか?



記載内容

  名義貸し 固定資産税 時効


【ご質問内容】

20数年前に賃貸用に建物を数軒建てました。

名義は母で土地名義は祖父です。

収入は私、返済も私、その他の不動産の固定資産税も私で父と兄はノータッチでした。

10数年前に祖父、数年前には母も他界しているのですが、最近父と兄がその賃貸用の建物を渡せと圧力をかけてきます。

私は母には名義を借りただけと思い、建築当初から自分のものだから返済も遅れずにしてきました。

時効を使うことは難しいでしょうか。

返済中でもうすぐ終わります。

(kamemonn)





【不動産は誰のものか】

 まず、質問の賃貸物件が誰の所有ということから確認しておきましょう。

 今回の物件がお母さん名義だとしても実質上は質問者の所有という場合もあり得ます。

 ただ、そのようなことが認められるためには、その物件を建てたのは実質的には質問者だということ及びその代金も質問者が支払った、ただ、登記だけ名義を借りたというような事情が必要です。

 本件でそのような事情があるのなら、取得時効ではなく、そもそもその物件は自分の所有ということを主張されるといいでしょう。

 なお、賃料は誰の名義で回収していたのか、支払っていたローンは誰の名義であったのかという事情の検討する必要があります。

 これらの名義がお母さんだとすれば、その不動産があなたの所有だという主張は通りにくいでしょう。



【時効取得の可能性について】

 所有者でなくとも、時効で不動産の所有権を取得できる場合があります。

 自分の所有物だと思っていた場合なら10年間、他人の物であることを知っていた場合なら20年間、不動産を占有することで時効で土地を取得することが可能です。

 ただ、質問者の方が自分の所有物として占有しているという要件が必要です(このような占有を自主占有といいます)。

 取得時効の要件である自主占有とは、質問者の方が《自分で所有者と思っていた》だけではだめで、他の人から見て所有者と見られるような外形(外観)が必要だということです。


  周りからみて、自分の所有物として占有している

×  自分の所有物だと思って占有している



 今回の場合、賃料は誰の名義で回収していたいのか、支払っていたローンは誰の名義であったのか固定資産税はあなたに課税されていたのかという各点が問題になります。

 これらの点が全てお母さんということであれば、あなたはお母さんに替わって賃貸物件の管理をしていただけにすぎないということになります。

 また、あなたが他の相続人らに対して自分の所有物だということを主張し、それが認められていたというような事情があればそれは有利な事情になります。

 結局、あなたとしては所有者として占有していたという気持ちがあったとしても、裁判所や世間一般の常識的な判断として、所有者と見られるような外形が存在していないかぎり、時効での取得を主張するのは困難でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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14:55 不動産の相続 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄はいつから数えて3か月【Q&A №455】

2015/07/15



【質問のまとめ】

「相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」の「知った時」とは、いつですか?

戸籍謄本類は、それぞれの相続人が各自揃えて提出すべきですか?



記載内容

  借金 起算日 3ヶ月


【ご質問内容】

 「相続の開始を知ったとき(日)」がいつに当たるのかがわかりません。

 最初に銀行からの手紙が来ました。

 亡くなった叔父の件で重要な案内があると、書かれていました。

 詐欺かなにかと思い、銀行へは電話せず、叔父の家族へ問い合わせました。

 それはもう済んだことだから放っておいていいと言われました。

 しかし、翌日になって直ぐに相続放棄の手続きをしてくれと言われました。

 このときに、初めて叔父に借金があり、叔父の家族は全員相続放棄をしていたことを知りました。

 1週間後に銀行へ電話をして、叔父の借金の額と、相続人である私に返済して欲しいと言われました。

 この場合、叔父の家族が相続放棄をしたと知った日なのか、それとも銀行の手紙が届いた日なのか、どちらになるのでしょうか?

 また、戸籍謄本類のことなのですが、同順位の相続人が先に提出していた場合でも、各自が揃えて提出した方がいいのですか?


(はちわれ)







【相続の開始を知ったときとは】


 相続放棄については相続開始を知って3ケ月以内家庭裁判所に放棄の申し出をする必要があります。

 第一順位の法定相続人の場合には、被相続人が死亡した日(正確に言えば、被相続人の死亡を知った日)が起算日になります(なお、初日を算入しないことになっていますので、例えば1月1日に相続の開始を知った場合には、4月1日が期限になります)。

 次に先順位の相続人が相続放棄をした場合には、その相続放棄があったために、あなたが相続人となったことを知ったときが起算日になります。

 銀行から手紙が来たとしても、その内容が「叔父の件で重要な案内がある」というだけでは、あなたが相続人になっていることは読み取れませんので、その手紙が来た日は起算日になりません。

 あなたが叔父の家族の全員が相続放棄をしたことを知ったという時点までいくと、あなたが相続人になったことが判明しますのでこの日が起算日になります。



【提出通数について】

 家裁に相続放棄の申立をする場合には、あなたと死亡された被相続人との間に相続関係があることを証明する書類(戸籍謄本や除籍謄本)の提出が必要です。

 提出通数ですが、違う時期に放棄をする場合にはその都度、戸籍等の謄本の提出が必要になります

 同時に一緒に申し立てをするのであれば一通で足りますが、同順位の相続人であっても、別々に申し立てるのであれば、通常は、それぞれの方が戸籍謄本類を提出する必要があります。

(弁護士 大澤龍司)
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13:36 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №431】

2015/02/24



 音信不通だった父が亡くなり、預金をおろしにいくつもりです。

 古く状態は良くないものの、父名義のマンションに住んでいたため、家賃こそありませんが、荒んだ暮らしだったようで、管理費や、公共料金の滞納があります。

 相続人として預金をおろした場合、それらの支払い義務、またサラ金に借金があった場合の返済義務は生じますか?

 マンションの資産価値は現金に換算して、相続税がかかるのでしょうか?


記載内容

  借金 滞納 預貯金の引き出し 相続期間の延長 遺産調査事項

(桜餅)





【預金を下ろすと相続の承認となるか?】

 お父さん名義の預金は遺産です。

 そのため、お父さんの預金を引き出すと相続の承認をしたとされ(末記条文参照)、相続放棄ができなくなるというのが原則です。

 相続放棄ができないと、お父さんの借金等の債務は、法定相続人であるあなたに引き継がれ、あなたが債務の支払い義務を負います。

 ただ、過去の裁判例を見ると、遺産を墓代や葬式代に使用したり、死亡した人の荷物の引き取りのために使用したような場合には単純承認にはならず、相続分の放棄が可能(平成14年7月3日の大阪高等裁判所決定等)というものもあります。

 私的利用ではなく、被相続人の死亡に伴う支出で、社会的に非難されないようなものに出費した分は処分にあたらず、相続放棄を認めようというのが裁判所の考え方といっていいでしょう。

 なお、一旦は預金を引き出したものの、それを使用しておらず、その後に預金に戻した場合や手元に持っていただけの場合にも、相続財産を処分したとはみなされず、相続放棄が可能と考えていいでしょう。



【まず、遺産調査を確認しましょう】

 預貯金を引き出す前に、まず遺産調査をし、相続放棄をするべきかどうかを決断する必要があります。

 お父さんの遺産(財産)と債務の調査し、遺産の方が多い場合には相続放棄をせず、相続を承認するという決断をしてから後に、預貯金を引き出すという手順になります。



【遺産調査で確認すべき事項は次のとおりです】

1.遺産関係

① 預貯金額の確認・・金融機関で確認しますが、その際、預貯金とは別に借金等の債務がないか、又、保証人になっていないかどうかも確認するといいでしょう。

② 不動産の確認・・不動産があるのかどうか、あればどの程度の価額かを確認する必要があります。

 これらの点は市町村に確認するといいでしょう。

 もし、不動産があるのであれば、ついでに固定資産税の未納付がないかどうかも確認しましょう。

③ 株式等の確認・・預金通帳で配当などがある場合には、証券会社に株式の有無を確認する必要があります。


2.債務関係

① マンションの管理費や公共料金
 催告書の有無の確認やマンション管理組合への問い合わせをして滞納があるかどうか、滞納がある場合にはその金額を確認しましょう。

② 固定資産税の滞納

 この確認も必要不可欠ですので、市町村の固定資産税係に確認する必要があります。

③ 金融機関やサラ金などからの借り入れ

 お父さんのご自宅に届いている借入金や返済状況のお知らせといった郵便物により把握できるものもありますが、サラ金などからの借り入れの可能性があれば、お近くの信用情報機関などに問い合わせれば概ね把握できるでしょう。



【調査のために時間がかかる場合には延長願いを出す】

 相続放棄は原則として、相続開始を知った時点から3ケ月以内という短期間に家庭裁判所申し出する必要があります。

 しかし、調査のために時間がかかる場合もあります。

 その場合には、予め、裁判所に相続放棄の期間延長願い(専門用語では「相続放棄の熟慮期間伸長願い」と言います)を出すといいでしょう(【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。

 遺産調査が難航しており、時間がかかるということを記載するだけで裁判所は簡単に3ケ月間の延長を認めてくれます。



【相続税について】

 平成26年内に相続が開始した場合には、基礎控除5000万円+法定相続人1人当たり1000万円の基礎控除が認められていました。

 そのため、法定相続人があなただけであれば、6000万円の基礎控除がありました。

 遺産(財産)から負債を控除して、6000万円以内であれば、相続税の申告は不要です。

 平成27年1月1日以降に死亡された場合には、基礎控除3000万円+法定相続人600万円の基礎控除ということに制度が改められましたので、法定相続人があなた一人だけであれば、3600万円の基礎控除になります。

 遺産(財産)から負債を控除して、3600万円以内であれば、相続税の申告は不要です。

 ただ、差額が3600万円以上あった場合でも、相続税特有の不動産価額の計算方法もあり、相続税の申告が不要となる場合もあります。

 詳しくは税の専門家である税理士さんに相談されるといいでしょう。



《参照条文:民法第921条 法定単純承認》

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二  相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

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16:44 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父から借金していた兄に対する返済請求【Q&A №416】

2014/12/08



 今年1/20に父が死亡し、次男が相続をしました。かつて何度も長兄から「財産はいらないから家を継いでくれ」と言っていた長兄が金銭の相続権を主張、法定通りそれを分割しましたが、長兄には父より借入金が有りこれを次男に請求権はあるのでしょうか?
 因みに、母は生存しており母からも融資を受けています。
 又、兄弟姉妹は全部で4人です。


記載内容

  借金 混同 負債

(サンセベリア)


【貸金債権として相続し、125万円をお兄さんに請求できる】
 お兄さんがお父さんから借金をしていたのであれば、お父さんはお兄さんに貸金返還請求権と権利(債権)をもち、これがお父さんの遺産の一部になります。
 この貸金については、他の遺産と同様、相続人が法定相続分に応じて相続しますので、あなたは8分の1に相当する金125万円を返還するよう、お兄さんに請求できます。

【兄が母から借りたお金は、今回の遺産分けには関係ない】
 お兄さんはお母さんからも借り入れをしているようですが、その分はお母さんがお兄さんに貸金返還請求権を持つということになります。
 今回はお父さんの遺産分けですので、お母さんの財産とは何の関係もありません。
 将来、お母さんが死亡されたときに、その遺産分割として貸金返還請求権も遺産の一部を構成することになり、あなたはその貸金額の法定相続分に応じた金額をお兄さんに請求できるということになります。

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16:14 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★夫の退職金で夫名義のローンを返済【Q&A №412】

2014/12/02



 その後、夫は会社を定年退職し退職金をもらった。退職金全額を、夫は妻に渡した。
 妻は全額を「自宅兼収益物件のローン支払いにあてた」と言った。
 この件について質問です。

(1)この渡した退職金の1/2にあたる金額は特別受益として遺留分算定の基礎財産に加算できますか?

 父と母が持ち分1/2ずつの共有名義の「収益物件の不動産」があります。この「収益物件の賃料」は、全額、父の口座に入金されていました。そして、入金された後、この「収益物件の賃料」を母が毎月定額出金していました。母は、「収益物件の賃料」を管理するために、出金していたようです。母は、この定額出金した金額を自分名義の通帳にいれてるかどうかは不明です。現金で持っているかもしれません。この件について教えてください。

(1)母が管理している父の持ち分の不動産の「賃料」は、名義預金として遺留分減殺請求の基礎財産に加算できますか?

(2)遺留分減殺請求の基礎財産に加算できるとしたら、何年前まで遡れますか?

記載内容

  贈与 退職金 返済
(ikasama)


※同じ方から2回に分けてご質問をいただきましたが、回答は1つにまとめています。

【各月のローンの支払い分が特別受益となり、遺産に持ち戻される】
 不動産の名義は共有であるところ、ローンは夫だけというケースです。
 妻としてはローンの支払いをしないのに、夫が各月のローンの支払いをしますので、妻の財産が増えていく(正確にいうと、その不動産には抵当権がつけられているでしょうから、その債務が減少する)ということになります。
 ローンの支払い分のうち、妻の共有持ち分に該当する分の支払い額が特別受益になり、遺留分計算の基礎財産として、遺産に持ち戻されることになります。

【退職金で支払った残ローン分も特別受益になる】
 今回、退職金でローンの残額を一括して返済したということですので、その一括支払い分のうち、妻の持ち分に相当する分が特別受益になり、遺産に持ち戻されます。
 なお、質問では夫の退職金を妻に渡したという表現があります。
 しかし、その退職金は結局、ローンの支払いに充てられているのですから、妻に渡したという点は無視してもよく、結局、夫の退職金で不動産のローンが完済されたと考えて差支えありません。

【遺留分権利者に損害を与えることを知っていたということが前提だが・・】
 遺留分の算定の際の遺産に持ち戻されるのは、相続開始1年前までの贈与です(民法1030条後段)。
 したがって、条文から見れば、1年を超えて遡った時点での贈与については、《遺留分権利者に損害を与えることを知っていた》場合に限定してのみ、持ち戻しが認められるはずです。
 しかし、最高裁は特別受益に該当するような相続人に対する贈与は、その贈与が相続開始よりも相当以前になされたものであっても、特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当であると判断しています。・・・※注1。
 今回の質問のケースは、おそらくかなりの長期間にわたるローンの支払いですが、このようなかなり以前の分でも特別受益である限り、遺産に持ち戻されますし、ましてや、最近、夫の退職金でローンを支払い、その利益を受けているのであれば、その分も特別受益として、持ち戻しになることは確実だと言っていいでしょう。
   ※注1・・最高裁判決:平成10年3月24日(民集52巻2号433頁)

【賃貸人名義人が賃料を取得するが、他の持分権者に持分相当額を支払う必要がある】
 まず、不動産賃貸の賃料については賃貸人が受け取りますので、賃貸契約書を確認する必要があります。
 契約書で賃貸人が夫(お父さん)であれば、賃料を受領する権利は夫にあり、受け取った賃料は夫のものです。
 但し、妻が共有持ち分を持っていますので、特段の合意がない限り、妻も持ち分に相当する賃料を夫に請求できる権利があります。

【賃料全額を妻が預金しているとすれば、特別受益の可能性もある】
 賃料は、一旦、夫の口座に入り、そのうちから一定額を妻が出金していたということですが、その出金が何に使用されたのかによって結果が異なります。
  《賃料管理の費用》として、或は《生活費としての夫婦の婚姻費用》などに支出されたのであれば、その分は特別受益にはなりません。
 この場合、一定額を支払った後に残存するお父さんの口座(正確にいうと、そのうちの賃料入金分に見合う)残額のうち、妻の持ち分割合に相当する額は妻が取得するべき分ですので、妻は夫に対しその分の返還を請求することができることになります。
 なお、妻が自分のための支出として賃料の半額程度を引き出して使っていたというのであれば、夫の預貯金全額は夫の遺産であり、そもそも特別受益の問題は発生しません。

【消滅時効と特別受益との関係】
 特別受益は消滅時効にかかりません。
 しかし、返還請求権の場合には原則として10年で消滅時効期間が経過しますので、10年以上経過した分に相当する金額の請求権は消滅していると主張される可能性があります。
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17:15 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続人の配偶者の借金返済は特別受益となるか【Q&A №403】

2014/10/10
 子(法定相続人)の配偶者が過去に起こした借金が原因で、苦しい生計を案じた親(被相続人)が孫の教育費・車購入・住居購入(配偶者名義)の一部援助、借金の肩代わり(返済不要)、そして孫に数度の生活援助をした経緯があります。
 被相続人の遺産を当該相続人が相続する際、援助を受けた金員は特別受益としてみなされるのでしょうか。それとも借金が原因であるとの見解から、当該相続人の被相続人への借金として遺産に加算し、別相続人に分配されるものなのでしょうか。

記載内容

借金の支払い 返済 特別受益 相続人以外の人への贈与
(BOO)


【相続人以外の人への贈与は原則、特別受益にならない】
 質問は被相続人の生前の財産移転行為のうち、お孫さんへの教育費・数度の生活援助、住居購入(配偶者名義)の一部援助は《お孫さん》あるいは《配偶者》という、いずれも相続人以外の人に対するものです。
 特別受益は相続人に対する贈与を対象としており、相続人以外の者への贈与は原則として特別受益に該当しません。
 ただ、裁判例の中には、配偶者への贈与であっても、贈与の経緯、目的物の価額、その贈与により受ける相続人に利益等を考慮した後、特別受益としなければ相続人間の実質的平等に反するとして、配偶者への贈与を特別受益としたものがありますが、かなり古い判例です(福島家裁白河支部審判 昭和55年5月24日)。
 本件では、相続人ではなく、借金をした配偶者の名義で購入した住居購入代金の一部を支援したということですが、(今度借金したら、差押えでその住居を押さえられるのにという疑問もでますが、その点は別として、)名義は配偶者名義だが、実質は相続人のものであるという何らかの理由や事実があれば、特別受益の可能性はあります。しかし、配偶者がローン代金を支払っているということなら、特別受益とすることはむずかしいと思います。
 お孫さんへの贈与も特別受益にならないのが原則ですが、実質的には相続人への贈与と同視できるような場合には、このお孫さんへの支援が特別受益とされる可能性もあると思われます。

【借金等の肩代わり(返済不要)はケースバイケース】
 借金の肩代わり(返済不要)ということであれば贈与になります。
 しかし、全ての生前贈与が特別受益になるわけではなく、《生計の資本》としての贈与のみが特別受益となります。
 借金も、住宅ローンのような生活費を原因とする借金なら特別受益になるでしょう。
 しかし、ギャンブル等の遊興費が原因の借金なら《生計の資本》に関係ない贈与として特別受益にならないと考えられています。
 ギャンブルの借金の立替支払いが特別受益にならないという結論には納得しがたいと言われる方も多いでしょうが、条文上、《生計の資本》としての贈与だけを特別受益としている以上、この結論はやむを得ないという考え方になります。

【当事務所の弁護士協議では・・・】
 ただ、当事務所の弁護士間で検討した結果も、参考として以下に記載しておきます。
 前項の結論は借金の原因に基づいて、特別受益かどうかを判定しています。
 上記のような考え方を前提にすると、仮にギャンブルによる借金のため、相続人が生活できず、そのため被相続人が多額の贈与をした場合は次の結論となります。
①生活費を援助した場合・・・特別受益となる。
②被借金自体を立て替えて支払った場合・・・特別受益ではない。
 ただ、このような結論は説得力が乏しいように思います。
 そのため、上記の②も結果として相続人の生活苦を救うための方策としての支払いであり、特別受益として扱われてもいいのではないかと考える余地がありそうです。

【車のローンの支払い】
 なお、相続人の車のローンの支払い、あるいは車代金の支払いは特別受益になると考えていいでしょう。
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16:31 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★増築費用の贈与を受けた証明【Q&A №378】

2014/05/30
 兄弟3人で遺産分割の調停中です。20年前に長男が自宅の増築費用として、父から700万円の贈与を受けているので、この金額を長男の特別受益として認めてほしいと調停員に要望しました。調停員が証拠はありますかと尋ねてきたので、長男が書記官に提出した回答書に「振込みで受領」と記載している事が証拠と言ったところ、それだけでは不充分と言われました。他にどのような証拠が必要なのですか。長男は増築費用700万円は借用したもので、生活費の不足分で返済したと言っている。遺産分割の対象は預金と特別受益のみです。次男は預金の1/3のみで了解しており、長男の特別受益については問題として取り上げることに反対しています。

記載内容

建築費用 調停 返済 贈与 貸金 消滅時効
(スカイツリー)


【贈与か貸金か】
 自宅を新築した際、お父さんから金700万円が送金されたことについては、長男も認めています。
 問題は、その送金分が、《贈与》か《貸金》なのかという点です。
 その送金分が長男に対する《贈与》であれば、特別受益として、遺産に繰戻される可能があります。
 しかし、貸金であるとすると、返済の問題と、返済していない場合には、消滅時効の問題が生じてきます。
 長男は《その後、生活費援助で返金した》という主張ですので、貸金だったという立場です。
 貸金であると主張するのなら、長男の側で返済を証明する必要があります。
 又、送金時期が20年前ですので、消滅時効期間《10年間》が経過しており、時効で貸金返還請求権は消滅しているということも将来、主張するかもしれません(参考までにいえば、特別受益では消滅時効という問題は発生しません)。

【贈与の証明はあなたがしなければならないが・・】
 長男は貸金だと主張し、あなたは特別受益であると主張しているので、貸金であること及びその弁済をしたことは長男が証明する必要があります。
 しかし、反面、あなたとしては、贈与を主張している以上、その点を証拠で証明する必要があります。
 普通のケースなら、贈与を主張する側としては、長男が一度も金銭を返還していないこと(贈与なら返還不要であるため)や、借用書等の契約関係書類がなかったこと(貸金なら借用書があることが多い)等を証拠で明らかにする必要があります。
 当時、贈与税の申告をしていたというのであれば、その申告書の控えなどを入手されると決定的な証拠になるでしょう。
 又、返済しているというのなら、長男にその証拠を提出してもらうように要請し、その裏付けがないというのであれば、弁済の証拠なしとして、《貸金》ではなく、《贈与》だったのだという主張をすることも可能でしょう。

【長男の弁済の主張についての反論】
 今回の質問の件では、長男は生活費の不足分で返済したという主張をしているようです。
 この点については、そのような事実が本当にあるのかの調査をするために、お父さんの預貯金口座の履歴を取り寄せすることも考えていいでしょう。
 履歴を確認して、お父さんが十分な年金等を得ている、あるいはかなり多額の預貯金等があるということなら生活費の援助はいらないでしょう。
 又、お父さんの預貯金額が毎月減額しているというような事実が判明したのなら、生活費はその預貯金から出ており、長男はなんらの援助もしてはいないという推測ができます。
 援助しているとしても、その長男の援助は借金の返済ではなく、《親族間の扶養義務の履行》として、長男が実行したものであり、借金の返済ではないと反論することも可能です。

【調停は裁判ではない】
 20年前の送金が贈与か貸金か、そのいずれについても証明は困難な場合が多いです。
 質問のケースはあなたのご主張のように贈与の可能性も高いように思います。
 しかし、調停は裁判ではありません。
 贈与か貸金かを最後まで争うのもいいでしょうが、勝訴するとは限りませんし、弁護士費用も必要です。
 不満が残っても、調停委員の意見も参考にし、中間的な解決として、送金分の一部を特別受益として算入する等の方向を検討してもいいでしょう。
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15:52 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産となる車両の処分と相続放棄【Q&A №365】

2014/04/18
 弟がなくなり、相続人は両親でしたが、母は相続放棄しています。
弟の車は、ローンが二か月分残っていた為、所有者がローン会社でした。しかし、
ローンの一括返済額より、売却額が上回り、返済額を差し引いた額が父の手元に入り
ました。車の買取店をとおし処分したので、所有者を父には変更せずに、車売却に
至っています。(買取店との書類を交わしたのは、父のみです。所有者がローン会社
だった為、代表相続人のサインのみでよかったという事でした。)その場合、父は相
続放棄できるでしょうか。

記載内容

遺産の処分 売却 法定単純承認 単純承認
(プーさん)


【遺産を処分した後には、相続放棄ができない】
 相続放棄前に遺産を処分した場合、遺産の相続をしたものとして扱われますので、相続放棄はできません(末記の参照条文:民法第921条1項をご参照ください)。
 なお、相続放棄は家庭裁判所へ簡単な書類を提出するだけで受け付けられ、家庭裁判所から相続放棄の申述の受理証明が出されます。
 しかし、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したとしても、遺産を処分しておれば、普通の相続をしたと扱われますので、相続の放棄の効果はありません。
 そのため、弟さんの債権者(貸金業者など)が、お父さんの相続放棄は無効だとして請求をしてくれば、相続放棄は無効となり、お父さんとしてはその借金を支払う必要があるということになります。

《第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。(以下略)》

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10:58 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

亡くなった父が家を担保に借金していた【Q&A №332】

2013/11/27
 父が家を抵当に銀行に借金をしていることが、亡くなった後に判明しました。母が相続し借金を返済するということで、子どもは相続放棄しました。
 ですが、実際は長女が借金を返済しています。家の価値は借金よりも多いので借金完済したいのですが、母が死去した場合は、銀行に家を取られてしまうのでしょうか?
 教えてください。お願いいたします。

記載内容

債務 借金 担保
(猫ママ)


【お父さんの遺産や債務相続はお母さん一人が承継あるいは負担する】
 お父さんが死亡したということですので、相続人はお母さんとあなたを含む子供たちになります。
お父さんが死亡したのち、お母さんを除いて子どもは相続放棄したとのことですから、お母さんだけがお父さんの遺産である家を相続し、かつお父さんの借金(債務)を引継ぎます。
そのため、お母さんだけが借金を返済する義務を負います。

【お母さんの死亡した後の相続については】
 将来、お母さんが亡くなった場合には、今度はお母さんの相続で、再び同様の問題が発生します。
お母さんが引き継いだ借金を、今度こそ子どもが引き継ぐ(相続する)のではないか、という問題です。
 その段階で、あなたを含む兄弟姉妹が相続人になります。
それぞれの相続人が、今度は、お母さんの遺産について相続放棄をするかどうかを改めて検討する必要があります。

【長女以外の方が相続放棄をすればよい】
 お母さんが亡くなった場合に、抵当権者である銀行が家を取り上げる(=担保権を実行して家を競売してしまう)のではないかとご心配のようですが、お母さんが亡くなっただけでは競売されることはありません。
現在、お母さんが支払うべき住宅ローン債務を、(相続放棄をした)長女さんが支払い続けているのであれば、将来のお母さんの遺産分割では、長女さん以外の人が相続放棄をして、長女さんが単独で家と負債を負うということで対処するしかないと思います。
長女さんが、従前通り借金を返済していく限り、銀行が家の競売をすることはありません。
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16:59 相続放棄 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

不正に遺産が流出していた場合の対応【Q&A №319】

2013/10/07
  
祖母が亡くなり孫三人に預金をしてくれていた。姉と妹は預金を貰っていたが、私の預金は隠匿され残高ゼロになっていた。それを機に税務事務所に行き資産評価証明書を取り寄せたら、いくつかの不動産がなくなっていた。父に言ったらしらをきりごまかした。
 母の病気を付込み叔母が財産を狙っているようだ。姉も、父の弱みを握り脅迫してかなりの財産を貰って、妹までも母からこそこそ手渡しでお金を渡しているようだった。家族全員が不正し、この状態では正常な遺産分割ができない。
 祖母が亡くなる二年前に祖母から、父は昔会社のお金を使込み、祖母が全額返済をしたと聞かされた。それから父に対する不信感が増え父に叱咤するようになり関係性まで悪くなった。そのことは誰も知らず私にだけ教えてくれた。警察沙汰にならずに済んだと言っていた。祖母から財産を流用されないように見ていてと言っていたが、どうすることも出来ない。


記載内容

不正出金 贈与 借名預金は誰のものか 遺産の管理

(さっちー)


【相続人は誰か・・】
 質問はお祖母さんの相続問題です。
 相談内容を見ると、あなたのお父さん、お母さんはまだご存命のようです。
 その前提であれば、お祖母さんの子であるお父さん(あるいはお母さん)が相続人であり、あなたはお祖母さんの相続人ではありません。
 そのため、あなたとしては、お祖母さんの遺産についてなんらかの主張ができる立場にはありませんので、この点はご確認ください。

【孫名義での預金について】
 ただ、お祖母さんがあなたを含む孫3人に預金を残されています。
 この預金は誰のものかという問題がでてきます。
 まず、お祖母さんが孫(3人)の名義で預金をしていたということですが、その印鑑や通帳は誰が保管していたのでしょうか。
 もし、お祖母さんが保管していたのであれば、これはあなたの名義ではあるものの、いわゆる借名預金であり、あなたの名義を借りてしたお祖母さんの財産であると考えていいでしょう。
 明確な贈与の手続(お祖母さんから通帳と印鑑を渡される、中身を送金してもらう等)もなしに、お祖母さんが死亡したのであれば、あなた名義の預金であってもお祖母さんの遺産であり、あなた自身の財産と扱うことは難しいでしょう。

【財産の管理を頼まれていても・・・】
 お祖母さんから《財産を流用されないように見ていて》と言われておられたようですが、現在のあなたの立場からいえば、相続人でもなく、財産を管理できる立場にはありません。
 もし、あなたがお祖母さんの遺産を管理していても、相続人からの引き渡し請求があればそれに応じないと仕方がないことになります。
 ただ、お祖母さんが遺言書を作成しており、あなたがその執行者に任命されているのであれば、遺言執行者として遺言の内容を実現する必要があるでしょう。


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11:51 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

借金を残して失踪した父の遺産調査【Q&A №305】

2013/08/12
 ・相続財産の有無の確認・請求・回収方法
 ・療養中に名義変更された財産が相続財産の対象になるか

<経緯>
 昨年実父が他界(住所は滋賀県)
 私(東京在住)と弟(6年前他界)と妹(東京都在住)は、両親離婚後母の籍に入っている。
 離婚時、父には多額の借金があり、連帯保証人に母がなっていた。離婚成立後、父が失踪、借金は母と私が返済した。
 弟の葬儀に父が出席。借金は返済し終えたことと、弟の遺産放棄手続きのため携帯電話に住所・電話番号を登録。
 父は離婚後、再婚しており、再婚相手の籍にはいった。
 昨年危篤の連絡と、亡くなった旨を電話で現妻から受けたが後、連絡なし。
 今年6月にこちらから配達証明郵便で
「相続財産目録もしくは、財産の明細が判る書類を写しでよいので書面にて送ってほしい」旨を郵送。
 配達記録にて受け取ったことは確認できたが連絡がない。住所しかわからず、電話などの連絡先不明。
 父名義の財産について入院中に名義変更された可能性あり。

<希望>
 母が入院費用捻出の為、相続財産を明らかにしてもらい、相続分があるなら相続したい。
 借金がありマイナスになるなら放棄したい。
 わかっているのは、父の再婚相手の現住所のみ。
 現妻は、父の電話を使って危篤の連絡をしてきているので、こちらの連絡先しっている。

 調査は不可能または、無駄でしょうか。

記載内容

簡単な遺産調査法 借金返済 名寄帳 公正証書遺言 相続放棄期間の伸長


(母子家庭の長女)


【質問を見た感じでは・・・】
 質問では、
①離婚成立当時、お父さんには多額の借金があった。
②お父さんは再婚相手の籍に入った(要するにお父さんは苗字を変えた)。
と記載されています。
 それだけ見ると、お父さんは借金も自ら返済する能力がなかった、債権者から追及を逃れるために苗字を変えた、という可能性も考えられ、多額の遺産がある見込みは少なく、借金がかなりあるのではないか、という可能性があります。
 債務超過の場合には相続放棄の手配をする必要があります。

【簡単な遺産調査方法】
 ただ、上記①及び②だけでは、まだ、お父さんの遺産がないとは確定できません。
 簡単で費用もそれほどかからない方法としては次のようなものがあります。

①お父さんの住んでいた家屋が自己所有か賃借かを確認します。
 この点は建物の登記簿謄本(全部事項証明書)を見て判断するといいでしょう。
 自己所有であれば、遺産がある可能性があります。
 ただ、その建物に抵当権登記が多数付けられていたり、税金その他の差押えの登記があったりすれば、結局かなりの借金がある、あるいは税金も支払えない状況だということになります。

②居住家屋が賃借の場合には、賃料が高そうな物件かどうかを現地調査やネットを利用して調査するといいでしょう。
 高そうな物件であれば、その賃料を払うだけの資力がある⇒遺産がある可能性が高くなります。

③ お父さんが公正証書遺言をしているかどうかを調べるのも一方法です。
 これは相続人であれば調べることが可能です(調査方法は相続コラム「公正証書遺言の検索及び確認について」 参照)。
 もし、公正証書遺言をしているのであれば、そのような遺言をする必要のある財産を持っている可能性が高くなります。

【本格的な遺産調査をするときは、相続放棄期間の延長を申請する】
 本格的な遺産調査には時間がかかります。
 相続放棄の期間は相続開始を知って3ケ月以内という短期間ですので、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長願いを出しておく必要があります(この点は、相続コラム「相続放棄期間の伸長」 参照)。

【本格的な遺産調査の方法】
 一般的に、遺産の中心は不動産と預貯金や有価証券です。
 不動産の調査は名寄帳の取り寄せが必要です(この点の詳細は、相続コラム「名寄帳の取り寄せ」 参照)。
 また、被相続人であるお父さんの利用していた金融機関(支店名まで必要)がわかれば、取引履歴を取り寄せ、遺産額を確認するとともに、不正出金がないかどうかを確認するといいでしょう(この点の詳細は、Q&A №98参照)。

【信用情報の調査も必要】
 借金の有無や額の調査も必要です。
 この点については信用情報機関(JICC・CIC・全銀協など)に問い合わせて確認するとよいでしょう。
 このように結局、遺産のうち、資産部分と借金の双方を確認して、相続放棄をするかどうかを判断されるといいでしょう。


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11:49 遺産の調査・発見 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母と夫の共有地の相続【Q&A №303】

2013/07/24
 母所有の土地に、母と夫が1/2の所有の持ち家です。
 母は認知症ですが、15年ほど前にこういう状態になった(認知症や兄弟間の揉め事)場合の話し合いが母と夫の間で出来ていて今、登記証は夫がその時から預かっています。そして、この土地と建物は夫が相続するということは、兄も承知しています。
 老朽化で家の建替えを検討した結果、ローンのことや老後の生活も考えサブリースのマンションにすることを決めました。
 不測の事態でローン返済が母に及ぶのを防ぐため、母名義の部分を夫名義に書き換えたいのですが、兄が法律違反だということで拒否されています。契約金はすでに支払っているので解約はしたくありません。兄は後見人ではありません。先日、改めて母には許可をもらっていますが、兄が印鑑を隠しています。困りました。

記載内容

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(たまこ)


【認知症はどの程度なのか】
 認知症には程度があります。
 現時点で、判断能力(意思能力)が全くない状態なのか、それともそうではないのかを確認する必要があります。
 意思能力の有無により回答が異なります。
 なお、意思能力の判断方法としては当ブログの「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」をご参照ください。

【意思能力がある場合】
 お母さんの意思能力があれば、お母さんの同意を得て、不動産の名義変更等をすればよく、また、お兄さんにはお母さんから印鑑(実印)の返還を求めることで問題は解決するでしょう。
 それでも、お兄さんが渡さないというのであれば、実印を紛失したとして、新たに印鑑登録の手続きをするといいでしょう。

【意思能力がない場合】
 お母さんに意思能力がない場合には、お母さんの所有する建物持分や土地所有権をあなたのご主人に移転することはできません。
 お母さんの所有しているこの土地及び建物持分については、あなたのご主人が相続することになっており、それをお兄さんも承諾しているということであっても、現時点では、お母さんは生きておられ、相続は開始していませんので、お母さんが権利者です。
 そのため、権利移転はお母さんの意思を無視してはできませんし、お母さんの意思能力がない場合には権利移転は不可能です。
 お兄さんの法律違反というのは、このような点を指摘しているのでしょう。

【成年後見人の選任しかないが・・】
 家庭裁判所にお母さんに成年後見人をつけるように申立てをすることも考えられます。
 しかし、後見人はお母さんの現在の財産を維持保全するのが目的です。
 新たなサブリースマンションを建築するために、お母さんの権利をあなたのご主人に移転するというのであれば、後見人としては監督する家庭裁判所にお伺いを立てることになりますが、そのようなお母さんの財産が減少するような行為を裁判所が認めるとは思われません。
 結局、お母さんの意思能力がない場合には、権利移転をすることは難しいというのが結論になります。


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見えない借金と限定承認【Q&A №286】

2013/06/19
 亡くなった父の遺産相続です。
 マンションの2分の1の相続と見えない負債に相続するべきか悩んでいます。信用情報を調査し、カードローンの代位弁済がわかり、債権回収会社を調べて支払金額が100万ほどありました。この負債については、父の母が死亡退職金をもらっているので、支払いを済ませています。同じように数社に残っていた借金も死亡退職金から支払いを済ませ、調べた借金は完済しています。
 本来、単純に相続すればいいのですが、離婚して生活を共にしていない私は不安でいっぱいです。まずこのような状況で、限定承認の申し立てが可能なのでしょうか。もし負債がある場合、マンションは競売になるのでしょうか?半分は私の母が所有権をもっており、父の母が居住中です。奨学金の返済のため、父の死亡退職金の一部をもらい、500万弱手元に現金があります。どうぞよろしくお願いします。

記載内容

死亡退職金 限定承認 負債調査
(ノラ黒)


【限定承認をするために必要な要件】
 限定承認とは、遺産があまったら、その余った分だけ相続をし、負債が多い場合には、遺産の限度で支払いをし、それ以上の債務を負わないという制度です。
 この限定承認をする前提として次の要件を満たしている必要があります。

① 相続開始を知って3ケ月以内であること。
② 相続人が複数いる場合には、相続人全員が限定承認の申請をしなければならない。


 これらの要件を満たしている場合には限定承認の申請をすることができます。
 ただ、遺産の金銭から支払いをするという単純相続に該当するような事実があれば限定相続はできませんが、質問の場合、遺産ではない死亡退職金からの支払いですので、限定承認は可能だと思われます。

【限定承認の手続をする人は少ない】
 限定承認は、家庭裁判所に限定承認の申請、債権者への公告、財産の換価と債権者への弁済などをはじめとする一連の煩雑な手続をする必要があります。
 加えて、限定承認の場合に、相続で移転される不動産については、相続税の扱いではなく、不動産譲渡税が課税されます(対象不動産の取得価額や取得費用等を控除した差額の約20%)。
 このように手続きが複雑で、かつ税務上の不利益もあり、限定承認をする人は極めて少ないのが実情です。
 それでも限定承認をするというのであれば、法律の専門家である弁護士に依頼するといいでしょう。

【金銭での支払いができない場合には競売される】
 相続債務があり、それを金銭で支払いできない場合には、不動産が競売されることになります。
 但し、競売の対象となるのは、遺産に含まれる不動産である持分2分の1(お父さん名義の分)のみです

【どこかで決断をしなければならない】
 本当は、お母さんが得た死亡退職金からの支払いの前に、限定承認の手続きをするかどうかを判断するべきでした。
 相続開始から3ケ月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長願いを出して、時間を稼ぎ(通常3ケ月程度の延長をしてくれます)、その間、新たな債務請求がないのであれば、単純承認をするというのが妥当な解決案でしょう。
 その間、新たな債務の請求があったのであれば、その債務の額と遺産とを比較して、支払いをするか限定承認をするかを検討されるといいでしょう。
 いずれにせよ、現実には100%安心して相続を承認することは不可能ですので、どこかで見切りを付け、相続放棄や限定承認などの安全策を重視するか、遺産のメリットを重視するかの決断をせざるを得ないでしょう。


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16:20 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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