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相続問題Q&A : 記事一覧
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相続後の不動産の遺産分配について【Q&A №633】

2018/12/10


【質問の要旨】

登記完了後の代償金請求

記載内容  遺産相続 登記 現金で要求 

【ご質問内容】

父はすでに他界しており、母が今年死亡しました。
相続人は私(長男)と姉(長女)です。
母の住んでいた実家の土地、家屋の遺産相続は長男の私の相続として、すでに登記が終了しております。
その時点では姉も納得していたのですが、今になって価値の半分を現金で要求されています。
法律的にこの要求は正当でしょうか?
尚、預金等は折半しています。

633


(ブラウン)



 ※敬称略とさせていただきます。

【遺産分割協議書を作成しているか】
相続が発生すると、その相続人らは協議をし、遺産をどのように分けるか話し合います。
話し合いの結果、分け方が決まれば、その内容を「遺産分割協議書」という書面にし、相続人全員が署名及び実印での捺印をして印鑑証明書を添付します。
各相続人らは、この遺産分割協議書をもって、銀行手続や登記手続きを行うということになります。
今回、あなたはすでに、実家の土地建物について、登記を済ませたとのことですので、おそらく遺産分割協議書を作成しているのだと思われます。

【遺産分割協議書を作成していれば、その内容通りの分割になる】
お姉さんとしては、遺産分割協議の際に、「あなたに不動産は渡すけど、価値の半分を代償金として支払ってくれ」という主張をすることはできましたし、その主張はもっともなものといえます。
ただ、代償金をもらわない前提の遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を交付してしたとなると、その内容を理解し、納得していたとみなされますので、それに反した主張をすることは難しいです。
そのため、あなたとしては、遺産分割協議書ですでに合意しているのだから、それ以外の請求には応じることはできない、とお姉さんに伝えるとよいでしょう。

(岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
11:21 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺留分請求には相続放棄で良いのでしょうか?【Q&A №632】

2018/11/26


【質問の要旨】

遺留分減殺請求と相続放棄

記載内容  遺留分 相続放棄 特別受益 

【ご質問内容】

いつもこちらのブログを拝見し、相続について色々と学ばせて頂いております。
その中で遺留分というのは、法律で保証された最低限の取り分であるという認識でいるのですが、私の中で「遺留分でさえも相続放棄には敵わない」のではないかという気がしてなりません。

例えば、被相続人の財産(プラスの財産、マイナスの財産どちらも)がほとんど無い一方で、それまでに相続人の一人が何千万もの生前贈与を受けていたとします。
そうすると、何千万もの生前贈与が特別受益となり、この相続人は他の相続人から遺留分減殺請求を受ける可能性がでてくるかと思います。
そこで、この相続人は、被相続人の「ほとんど無い遺産」を相続するより、いっそのこと相続放棄を行い、はじめから相続人でなくなれば、他の相続人から遺留分減殺請求を受けずに済むのではないかと思うのです。

私の安易な考えですが、もしこれが可能なら先に述べた「遺留分さえも相続放棄に敵わない」が現実になってしまい、法律が保証する意味がなくなってしまうのではないかと思っています。
実際は、相続放棄を行う事で遺留分減殺請求を免れることは可能なのでしょうか?

632


(テルオ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【遺留分算定の基礎となる財産】
遺留分算定の際には、相続開始時に被相続人が有したプラスの財産に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して算定します(民法1029条)。
このとき加算される贈与の範囲は、次のとおりです。
① 相続開始前の1年間になされた贈与(民法1030条前段)
② 遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条後段)
③ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
④ 特別受益としての贈与(最高裁裁判例 リンク:【相続判例散策】特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?

【特別受益というのは、相続人に対する贈与】
上記のうち、特別受益というのは、相続人に対して、被相続人から生前になされた贈与又は相続開始後になされた遺贈のことを言います。
民法の条文には、特に記載はないのですが、相続人に対してなされた贈与については、相続開始1年前か否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべて遺留分減殺の計算の際の基礎財産に加算されます。

【相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされる】
ただ、相続放棄をすると、その効果として、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
そのため、生前に多額の贈与を受けた上で相続放棄をされてしまうと、その方への贈与は、上記④特別受益として遺留分算定の基礎に加算することはできません。
その結果、上記①相続開始前の1年間の間になされた贈与又は②遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与として遺留分の基礎に入れられないかを考えるしかありません。
したがって、あなたが考えておられるように、相続放棄をすることによって遺留分減殺請求を免れるということは、やりようによっては可能ということになってしまいます。
ただ、上に述べたような結論には当事務所の弁護士間で異論があります。
今回のようなケースで、遺産が1000万円しかなく、その全部をAが生前贈与を受けた後、相続放棄をすると、あなた方はAに遺留分減殺請求は一切できないことになります。
しかし、もともと、特別受益分を持ち戻すというのは条文にはないのに、最高裁が《公平の観点》から認めた制度です。
上記のケースでAが相続放棄したので、遺留分請求はできないというと、多額あるいは全部の遺産の生前贈与を受けた人にも遺留分請求できないという結論になります。
しかし、これはあまりに公平を害します。
遺言書などである人が全部の遺産を相続できると記載されていても、最低限度の遺産を他の法定相続人に取得させるというのが遺留分制度です。
この点を考慮すると、相続放棄しても、その人の生前贈与分は遺留分減殺の基礎財産になるというのが公平な結論であり、裁判にでもなればそのような結果になるということも考えておく必要がありそうです。

(岡井理紗、大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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17:53 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

このケースで遺留分の請求はできますか?【Q&A №631】

2018/11/13


【質問の要旨】

遺留分減殺請求の可否

記載内容  遺留分 贈与 遺言書 

【ご質問内容】

父が亡くなり、これから父の遺産相続について話し合いを行うのですが、相続人は兄と私(弟)の2人です。
父は6年間、兄と同居していました。その後亡くなる迄の4年間は私が引き取りました。
父が認知症となり、兄が面倒を見ることを放棄したからです。
引き取って、父の残高が少な過ぎることに気づき兄に聞いたら「贈与された」と言って父の自筆で書かれた覚書のようなものを提示してきました。
それには「〇(父)は〇(兄)に500万円贈与します。」と書かれていました。
父の自筆で書かれていたので、モヤモヤした気持ちでしたが反論できませんでした。
実際に兄の口座に送金されていました。
それから、何とか頑張ってみたのですが、父の入院などもあり、亡くなった時の残高は50万円しかありませんでした。
先日、遺言書が見つかり、そこには「残った遺産は〇(私)に全部あげる。」と書いてありました。
すると兄が「遺留分」ということを言い出し「12万5千円は俺に権利がある」と言うのです。
調べたところ「法定相続分の2分の1」との事でしたので、兄の言う事もあながち間違いではないのかと思います。
その一方で「兄さんは7年前に500万も贈与してもらっているのに。」という気持ちもあります。

そこで教えて頂きたいのですが、やはり兄は遺留分を受け取る事が出来てしまうのでしょうか?
そして、遺留分という制度は、前述の500万の贈与を考慮してはくれないのでしょうか?

631


(コウキ)



 ※敬称略とさせていただきます。


【兄の遺留分の問題ではなく、逆にあなたが遺留分を請求するケース】
すべての遺産をあなたに相続させるという内容の遺言書があったのに対して、他の相続人である兄が遺留分を請求してきたということですが、今回の案件では兄は遺留分を請求することはできません。
むしろ、あなたが遺留分の請求をすることができます。

【遺留分計算のしかた】
他の相続人が兄だけですので、あなたの遺留分は4分の1です。
問題は、遺留分を計算するときの前提となる遺産の範囲です。
死亡時に残っていた遺産(本件では50万円)だけではなく、生前の贈与も遺産に加算して、遺留分計算します。
今回の質問の場合、
死亡時の遺産:50万円+生前の兄への贈与:500万円=550万円
が、遺留分計算の基礎財産になります。
額は550万円であり、兄の遺留分は、その4分の1の137万5000円となります。
ただ、兄はすでに生前に500万円をもらっていますので、遺留分額を超えた財産をもらっており、兄は遺留分を請求できません。

【むしろあなたが遺留分減殺請求をすべき】
あなたも遺留分は4分の1の137万5000円です。
しかし、あなたは50万円の遺贈を受けただけですので、遺留分に達する金額をもらっていないということになります。
そのため、あなたは。遺産の50万円を全部もらう意外に、兄からさらに87万5000円を請求することが可能です。
法律では生前贈与を遺留分計算に算入するためには、相続開始前の1年間の贈与か、あるいは遺留分侵害を知って贈与された場合に限定されています。

(参考:民法第1030条)
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。


しかし、これまでの裁判所の判例(外部リンク:最三小判H10.3.24(民集52巻2号433P))で、法定相続人が生前贈与を受けるなど、特別受益がある場合には、当然に遺産に持ち戻して、遺留分計算をすることになっています。

【遺留分の請求は原則、相続開始から1年以内】
遺留分減殺請求は、原則として、相続の開始の日から1年以内にすることが必要です。
そのため、あなたが兄に遺留分請求をしたいのなら、この1年の期間が経過しないうちに、早急に請求をしたという証拠が残る内容証明郵便で、遺留分請求をされるといいでしょう。

【生前に不審な出金はないか、念のために調査する必要がある】
なお、今回の事案では、あなたがお父さんを引き取った際に、預金残高が少ないと感じられたとのことであり、500万円の贈与の他にも、兄が出金した金員がある可能性もあります。
お父さんの預貯金の取引履歴を取得し、使途不明な出金がないかどうかは、念のため調査された方がよいでしょう。
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13:42 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄と非上場株式【Q&A №630】

2018/11/13


【質問の要旨】

株主の過半数が相続放棄した株式

記載内容  株式 取締役 任期 


【ご質問内容】

父が他界しましたが、多くの債務及び債務保証があり相続人全員が相続放棄をしました。
父は生前、父が代表取締役を務める非上場会社の株式を60%所有していました。
現在長女である私が父に代わって経営を続けておりますが、父の死亡後私及びその他の取締役3名の任期は切れています。
私が代表取締役に就任し経営を続けていきたいと考えていますが、私たち3名の取締役の重任及び私の代表取締役選任のためにどのような手続きを行えばよろしいでしょうか。

630


(あい)



 ※敬称略とさせていただきます。

【相続放棄した場合の会社株式の保有者は誰か?】
まず、法定相続人全員が相続放棄をした場合、会社の株式は誰のものになるのかを説明します。
父が持っていた株式は誰にも属さないという状態になります。
このままでは誰も株式を保有しておらず、株主としての権利を行使できません。

【会社の経営は誰がするのか?】
これまでは、父が会社の社長(代表取締役。以下、社長といいます)だったのでしょうが、その死亡で社長がいなくなります。
このままでは社長不在となり、会社経営に支障が出ます。
そのため、早急に社長を選任する必要があります。
また、取締役の任期も満了しているということですので、新たに取締役を選任する必要もあります。

【取締役、社長の選任の原則】
ご存知だと思いますが、取締役は株主総会で選任されます。
また、社長は新たに選任された取締役で構成される取締役会で選任することが必要です。

【今回の場合、総会は開催できません】
ところで、現状の株主構成では取締役を選任する株主総会は開催できません。
なぜなら、総会を開催する場合には株式の過半数を保有する株主の出席が必要です(定足数といいます)が、父の60%の株式は相続放棄で宙に浮いた状態になっており、権利行使できません。
そのため、残りの40%では総会は開催できないということになります。

【やむを得ない暫定的な措置として取りうる手段】
取締役の任期が満了したが、新たに取締役を選任されない場合には従来の取締役が、引き続き取締役としての任務を果たすことになります。

(参考条文)
会社法 第346条(役員等に欠員を生じた場合の措置)
1.役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。(後略)


社長の選任は、取締役会ですることになるので、(既に任期が満了した)取締役で取締役会を開催し、社長を選任することになります。
あなたが取締役であったのなら、そのような手続きで社長になる方法があります。
しかし、あなたが取締役ではなかったとすれば、あなたが社長になることはできないので、ご注意ください。

【遺産株式の処理は相続財産管理人がする】
今後、法律的に問題のないように会社を運営するには、父の株式をあなたあるいはその他の会社関係者が取得する必要があります。
取得のためには、家庭裁判所に相続財産管理の選任の申請をし、その選任された財産管理人から株式を買い受けることになります。
相続財産管理人の選任のためには約90万円の予納金(裁判所に納める金銭)が必要であり、また、株式の取得のための買い取り価額(財産管理人との交渉になる)の支払いが必要であることにご注意ください。
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13:17 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

使途不明金問題の被告の反論について【Q&A №629】

2018/11/06


【質問の要旨】

使途不明金の主張立証責任

記載内容  使途不明金 引き出し 返還 


【ご質問内容】

亡くなった母の相続の際に、母と長年同居していた兄が通帳の開示を拒んでいました。
怪しいと思い、取引履歴を取り寄せたら予想通り多額の使途不明金の存在がありました。
その総額は、母が亡くなる5年前からで4000万にもなります。
引き出しは一度に20万~50万で、引き出し額の合計が100万になる月もありました。
ATMを使えない母でしたので、引き出し行為を行ったのは兄があっさりと認めました。
一方で、「母から頼まれて引き出した。引き出したお金は全部母に渡している。その後、母が何に使ったのかは知らない。」と言っています。
先日、役所で開催された法律相談で弁護士に相談したら「兄が母親に渡したと言うのであれば、母親が受け取っていない事をこちらが立証しないと無理です。
従って裁判では返還を求めるのは無理に近い。
ほとんどの裁判で、被相続人に渡したと言って逃げることができてしまっている。」と言われました。

今回、初めて相続に強い弁護士さんの質問コーナーを発見し、ご質問させて頂きました。

629


(フルホビ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【訴訟で争われる典型的なケースです】
今回の質問のケースは、同居の法定相続人が被相続人の財産をカード出金していたということで、世間でよくあるケースです。
実は、当事務所が扱うケースのほとんどが、このような案件です。

【証明する責任は誰にあるのか?】
死んだ母の口座から生前に出金されていた場合、その出金を兄が取り込んでいたという事案では、取り込んだという点の証明はあなたがする必要があります。
具体的には次の2点の証明が必要です。
① 母の口座から出金があること。
② その金を兄が取り込んだということ。
上記の①は取引履歴を取れば簡単に証明できます。
問題となるのは②の証明ですが、今回の質問では、兄がカード出金をしたことを認めています。
役所で相談された弁護士が、証明責任はあなたにある言ったことは正しいです。
しかし、兄が自分がカード出金をしたことを認め、しかも母の口座に、カード出金した金銭の入金がないというのであれば、兄が勝手にその金銭を使ったのではないかと考えるのが妥当な結論です。
そこまで行けば、兄が取り込んだという証明、100%ではないにしても、かなりの程度できていると思われます。
このようなときには、今度は兄が、出金額は母に渡した、あるいは母のために使用したということを証明する必要があります。

【証明責任は天秤のようなもの】
裁判における主張や証明責任は上皿天秤のようなもので、ある程度、あなたが証明し、それが事実らしいということになると、今度は兄の方が反証(あるいは反論)することが必要になります。
兄は母に渡したというのであれば、その点の証明は原則として兄がする必要があります。
あなたの方が、母が受け取っていない事実まで証明する必要はありません。

【カード出金をした理由はどうしてか?】
観点を変えて説明します。
兄は母に依頼されてカード出金をしたのなら、母から委任を受けて出金をしたのであり、母にその出金額を返還する義務があります。
その義務を履行したかどうかは、当然、義務者の兄がするべきものであり、証明責任はあなたではなく、兄が負うという結論になります。

【裁判の見通しについて】
役所で相談した弁護士は、裁判での返還は無理に近い、ほとんどの裁判で被相続人に渡したといって逃げることができるという判断ということですが、私とは見解が異なります。
冒頭に述べたように、当事務所が中心に扱う相続案件は、このような生前の取り込み分がある場合がほとんどです。
被害者の立場で、どんどん訴訟を起こしていますし、依頼者の人にそれなりに満足のいく成果を上げています。
もちろん、裁判になれば、兄の方からは、いろんな隠された事実を言い出し、また、新しい主張をしてくるでしょう。
裁判のことですので、絶対に勝訴するというような断言はできませんが、最悪の場合でも和解という解決方法で取り込んだ金銭の一部でも返還させることも可能の場合が多いです。

【弁護士に相談することをお勧めします】
この相談はあくまで質問者の方がお書きになった事実の限度で、回答をしています。
弁護士としてはより詳しい事実を知り、正確な判断をしたい案件です。
何が問題で、今後、どのような対応をしていいのか、その回答を得るために、是非、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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17:04 相続財産 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

誰も相続手続きしていない亡父の土地、家の扱い【Q&A №628】

2018/10/29


【質問の要旨】

遺言による登記を放置した父の家

記載内容  遺言 登記 放置 


【ご質問内容】

20年前に父が亡くなり、現金は母と3人の子供で分けましたが、母の住む家土地は父名義のままです。

10年程前母がこの土地と家(1600万程)を可愛がっている地元に居る私の二男に相続させると遺言状を書いて私に渡されました。

私は母2分の1、子供が残り2分の1を3人で分けて6分の1ずつになる。と思っており、母が亡くなった場合、他の2人の兄弟には6分の1ずつの代金を支払えば済むかと思っておりました。

しかし、母が亡くなった場合、相続の手続き放置したままの父の土地家は母を飛び越えて3人で3分の1ずつで相続する事になると聴きました。

そうなら、母が私の二男にこの土地、家を相続させると書いた遺言状は意味が無いのでしょうか?

折角、母が可愛い孫に書いてくれた遺言状ですが、私が勝手に放棄すると罪になる様ですし、開示するには他の相続人も集めて家庭裁判所で開封と聞き、他の兄弟は不満に思うでしょうから、面倒な事になったなと思っております。

母が亡くなった場合、この遺言状に書かれている事は有効でしょうか?無効でしょうか?

追記
母は5年程前より認知症になり、今は相談出来る状態では有りません。
5年前より、ホームへ入り、家は空き家になっております。
よろしくお願い申し上げます。

628


(悩ましいです)



 ※敬称略とさせていただきます。

【父の名義の不動産の所有関係】
父は20年前に亡くなっていますが、その遺産分割がされていません。
そのため、父名義の不動産は
  母・・・2分の1
  3人の兄弟・・・それぞれ6分の1
で所有(共有)していることになります。
登記が変更されていなくとも、相続が発生した段階で当然に上記のような相続分に応じて、所有権が移転されていることになります。

【相続登記していなかった不動産はどうなるか】
父の死亡後、相続登記がされていなくとも、相続が発生した段階で当然に上記のような相続分に応じて、所有権が移転されていることになります。
そのため、母が亡くなったときには、母の持つ共有持ち分は(遺言書がなければ)母の相続人である子3人に3分の1ずつ相続されます(正確にいうと、母の持ち分が2分の1ですので、子3人は母からは不動産のそれぞれ6分の1ずつ相続することになります)。

【遺言書がある場合の母の死亡時の所有権】
母が、孫(あなたの二男)に不動産を相続させるという遺言書を書いたということですが、母は不動産全部を持っていません。
そのため、遺言書は母が現在、持っている2分の1の共有持ち分の限度で有効になります。
もし、母の相続が開始した段階では、不動産の所有関係は
  3人の兄弟・・・それぞれ6分の1
  孫(あなたの二男)・・・2分の1
ということになります。

【遺留分減殺請求も考えられる】
母の相続人はあなたを含めて子3人です。
子には遺留分減殺請求が可能ですので、もし、それを行使すると、あなた以外の他の子は、母の遺産につき6分の1の遺留分権を有していることになります。
減殺請求後の不動産の所有関係は次のとおりとなります。
  あなた・・・父からの相続6分の1(遺留分を行使しない前提です)
  他の2人の兄弟
      ・・・父からの相続分それぞれ6分の1+母の遺留分減殺相当分12分の1(=6分の1×2分の1)
  孫(あなたの二男)・・・12分の4

【まとめると次の結論になる】
遺言書は有効ですが、もともと母は2分の1の持ち分しかなかったので、孫分しか孫(あなたの二男)に行きませんし、その分も他の2人の母の子が遺留分減殺すると、その分、持ち分が減るということになります。
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生前の高額医療費支給申請について【Q&A №627】

2018/10/25


【質問の要旨】

高額療養費の還付と単純承認

記載内容  高額医療費 支給 相続放棄 


【ご質問内容】

2月から父(71歳)が入院しており、3月末に転院をしました。現在も同じ病院で入院しています。

先日、健康保険組合から「高額医療費支給申請書のお知らせ」が届き、組合に聞いたところ、現在の入院先は今でも入院をしているところ+訪問歯科にかかっていることから対象ときき、4月~9月までの申請書をだしてしまいましたが、病院からそろそろだろうと連絡がありました。(支給は3か月後)

お恥ずかしながら父には借金はあれど、保険もかけておらず、貯蓄もありません。
自分の洋服や靴、鞄、祖母の使っていたタンスくらいなもので、財産になるようなものはほぼありません。

どう考えてもマイナス財産しかないため家族全員放棄手続きをするつもりでしたが、高額医療費支給申請を行い、還付されると相続とみなされるという記載を見つけました。
父が被保険者であり世帯主です。また、母のみ、扶養に入っています。受取は母宛てにしています。

保険の割合は2割負担で、同一入院先である場合、4か月目以降は57600円の負担から44000円になると聞いていたのですが、病院からわからないといわれ、ずっと毎月57600円を払い続けています。

せめて4か月目以降の過剰支払い分は返してほしいのですが、生前に既に申請している高額医療費の支給を受けてしまった場合、相続放棄はできないのでしょうか。
また、区の助成金(紙おむつ代)の申請もしているのでそちらも心配です。

627


(まめ)



 ※敬称略とさせていただきます。


【高額療養費の還付金も、被相続人の財産】 
高額の療養費を支払った場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻されます。
このような金銭を高額療養費還付金と言います。
ご質問では、父の医療費ですので、その高額療養費の還付請求権は父のものになります。
そのため、還付金請求をした場合に、その請求に基づき支払われる金銭は父のものであり、遺産の一部となります。
そのため、相続開始後に還付金を取得すると、相続放棄の手続きをしていても、遺産を取得したものとして、相続放棄の効果がなくなります。
なお、生前に還付金請求に基づく支払いがあり、それを父から相続開始前にもらったというのなら、相続放棄にはなんら影響しません。

【あなたが医療費を支出しているのなら、債権者になる】
現在、父の財産から医療費を支出しているのなら、上記に記載したとおりですが、あなたがご自身の財産から父の医療費を出しているのなら、あなたは、父の医療費分を立替えている債権者ということになります。
そのような債権者としての立場で、父の死後に支払いされた還付金を受け取ったので、相続人として受け取ったのではないという主張も考えられます。
しかし、その場合、父の遺産から医療費立替分を支払う手続きをあなたがすることになります。
そうすると、その支払うという立場ではやはり遺産の処分に関与したことになり、単純承認とみなされ、相続放棄が認められないということになります。
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連帯債務の住宅ローン支払い【Q&A №626】

2018/10/25


【質問の要旨】

子が支払った父の住宅ローン

記載内容  住宅ローン 立て替え 

【ご質問内容】

(亡)父親を主債務者、連帯債務者、息子(相談者)で住宅ローンをくんでおりました。
ローンの支払いは私がずっとしていたのですが、父親名義の通帳に現金で入金しておりました。
私の記載はありません。
今回、遺産分割協議となり、立て替えたお金の返還請求をしたいのですが、どう立証すればよいのでしょうか。
生活費の入金10万ローンの支払い4万を同日入金しております。
年金暮らしの父親には、財産はなく、14万の入金は絶対に無理なのですが。

626



(コマッタ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【貸金の場合、何が問題となるか】
父名義の不動産だが、相談者がそのローンの支払いをしているという事案です。
父親に対する貸金の返還請求をしたいとのことですが、あなたが父親にお金を貸したという点の証明ができるかが問題になります。
あなたから父に銀行送金でされている場合には、金銭の移動は父の通帳の履歴で簡単に証明できます。
この場合は、その送金が返還を前提とした貸付けか、それとも贈与かという点だけが問題になります。
しかし、今回のように父に現金で渡して、父口座に入金され、そこから住宅ローンの引き落としがされているという場合には、その現金の入金は履歴でわかりますが、あなたがその原資を出しているということを他の相続人に納得してもらう必要があります。

【具体的に証明する必要があるのは・・】
他の相続人を納得させるには次のような事情を説明、証明する必要がありそうです。
① 父への現金入金が毎月されていること
 ・・この点は父の預金履歴で証明できるでしょう。
② あなたの口座から、父への入金の前(直前が望ましい)に、父への入金相当額が引き落としされていること
 ・・この点は、あなたの口座の履歴で証明できるでしょう。
③ 父は、住宅ローンの原資に該当するような毎月の収入がないこと
 ・・この点の証明はできるのか、検討が必要です。
④ あなた以外に父に住宅ローンの原資を渡す人はいないこと
 ・・この点もどのように証明するのか、難しいところです。
⑤ 父への金銭の交付は貸金である(返還を前提として渡している)こと
 ・・父が死亡している現在、その点の証明がどの程度できるかも難しい点でしょう。

【他の相続人が納得するかどうか・・】
もし、裁判であれば、前項の①から⑤を証明して、裁判所が納得してくれるように証明していくことが必要です。
今回の案件では、他の相続人が納得するような証拠を出す必要があります。
具体的な事実関係が不明ですが、証明に困難を感じる案件のように思います。
お近くの相続に詳しい弁護士に事実を詳しく説明をし、どのような方策があるかを聞き、交渉の参考にされるといいでしょう。

【連帯債務ということについて】
質問には、あなたが《連帯債務》と記載されています。
もし、あなたが《連帯債務》を負っているのなら、あなた自身が自分の名義で返済できたのではないかという疑問があります。
父が主債務者とあるので、おそらく《連帯保証》の間違いだと思われます。
また、仮に《連帯債務》であったとしたら、不動産名義は共有になっているのではないかという疑問も出てきます。
いずれにせよ、法律問題もありますので、弁護士に早急に相談される必要がありそうです。
大澤龍司法律事務所
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遺留分対象のマンション売却について【Q&A №625】

2018/10/22


【質問の要旨】

遺留分減殺請求後の不動産売却

記載内容  遺留分 不動産売却 同意書 


【ご質問内容】

遺留分対象の中古マンション売却についてご質問がありメールしました。宜しくお願い致します。

父が他界し、相続が発生。相続人は先妻の子(4名)と後妻の計5名です。
公正証書遺言があり預金は後妻と先妻の子らで折半、中古マンション(1部屋)は後妻相続(名義は後妻変更済)となっています。

現在、相手方代理人とFAXを使い話し合っています。
マンション売却について相続終了まで売却代金を相手方代理人口座で預かる事を条件にマンション売却に同意しました。
相手方代理人より不動産売却について署名捺印の同意書(売却予定金額2000万円と瑕疵担保責任免責が記載)の提出を求められています。
売却には同意したのですが、同意書の提出は同意したつもりはありません。

相手方代理人は、同意書がないと相続人5名のうちの誰かが途中で売却を中止してくださいと言った場合、買い手から5名に対して損害賠償請求される可能性があるから同意書がないと売却できないと主張しています。
現在、相手方にマンション売却の一時中止をお願いしていますが、相手方はマンションを売却中です。

ご質問

①こちらは相手方作成の同意書を提出しないと損害賠償を請求されるのでしょうか。

②相手方代理人が辞任や解任された時は、売却代金が後妻に行ってしまう可能性が分かったので、売却中止を求めると相手方より損害賠償等の請求をされる事はあるのでしょうか。

625


(雪男)



 ※敬称略とさせていただきます。

【後妻はマンションを単独で売れる】
父の死亡後、遺言書でマンションは後妻の単独名義になっています。
後妻以外の相続人(あなたを含む)は、売却代金を後妻の弁護士が預かることを条件に、後妻がマンションの売却をすることに同意しました。
以上の前提で考えると、後妻としては単独でマンションを売却するについては、何ら法的な障害はありません。
そのため、後妻としては、サッサと単独で契約し、その代金を弁護士が預かり、その後、これを他の相続人に分配するということで問題が解決するということになります。

【なぜ、同意書が必要なのか】
法的には同意書を出す必要はありません。
ただ、売買に関連する仲介業者としては、後妻以外の他の相続人が売買の邪魔をしない保証が欲しいのでしょう。
質問にははっきりとは記載されてはいませんが、おそらく、他の相続人としては遺留分減殺請求権を行使できる(あるいはした)立場にあります。
そのため、業者としては、売買契約締結の途中でそのような権利主張がでてきたら、契約が中途でストップする、そのようなことがないように同意書が欲しいと言ってきたのでしょう。

【法的には原則、同意書を出す必要はない】
あなたが同意書を出さなければならない法的な理由はありません。
ただ、気になるのは、弁護士が売却代金を預かることを条件にマンションの売却をすることに同意したようですが、その際、私なら、合意内容を文書化しておきますし、その中で《後妻以外の相続人は売買に協力する》という内容に加えて《売却に必要な書類の作成に協力する》との一文をいれておきます。
もし、これがあれば、あなたは同意書を作成する義務があります。
以上の前提で買主からあなたへの損害賠償を考えてみると次のような結論になります。
① あなたが、協力義務があるにもかかわらず、同意書を提出しないというのなら、後妻から債務不履行だということで損害賠償ということもありえます。
② もし、相手方弁護士が辞任あるいは解任された場合には、売買代金をその弁護士が預かれなくなった場合なら、代金の確保ができません。
そのため、売却に協力しないことが可能であり、その場合には損害賠償を受けることはないでしょう。
参考までに言えば、買主が損害賠償を請求するのは、売主である後妻に対してであり、あなたに損害賠償を請求することは考えにくいです。

【文書化されていなければ、この際、文書化をする】

今回のような売却代金を預かるという形で遺産を売却する場合に、一番、リスクが高いのは、後妻が代金全部を使うことでしょう。
そのリスクを避けるため、代金を弁護士が預かるということにした、弁護士の信用を担保にしたということでしょう。
ただ、弁護士が預かるということが売買契約を認める前提条件であるとの点は明確に証明できている必要があります。
もし、まだ、文書化されていないのなら、この際、同意書の提出と引き換えに弁護士預かりが条件だと明確に文書化するといいでしょう。

【リスクを回避するなら、処分禁止の仮処分】
次に、その弁護士が信頼できる人でないと将来の分配が心配になります。
仮にその弁護士が信頼できるとしても、後妻がその弁護士を解任した場合、弁護士は後妻に金を引き渡すのではないかという不安は消えません。
現在の業者は同意書を要求しているのでしょうが、そのような同意書なしで売却する業者も多いです。
もし、あなたが、後妻も弁護士も信頼できないというのであれば遺留分減殺を理由として、遺留分の限度で売買できないという内容の裁判(処分禁止の仮処分の申立)をされるといいでしょう。
この裁判が出ると、遺留分の限度であなたの登記が付き、あなたへの支払いが確保できます。
ただ、裁判が出るためにはいろいろな要件がありますので、是非、相続に強い弁護士と相談されるといいでしょう。
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死亡保険金を叔母に横取りされた【Q&A №624】

2018/10/18


【質問の要旨】

死亡直前に書き換えられた保険金

記載内容  生命保険 受取人 変更 


【ご質問内容】

今から2年前に母から遺言書作った話は聞いていました。
内容は聞いてませんが、死亡保険金の受取人は私にしてあると聞いていました。
ところが、亡くなる2日前に叔母から呼ばれていくと、公正遺言書を見せられ、これがあなたの分よ。と通帳など
渡されましたが、その中には生命保険の証書がなく、解約したのかな?くらいに思っていましたが、税理士に全体表を見せられたとき、何で叔母に生命保険金が全部行ってるのだろうと、保険会社に問い合わせたところ、一社から亡くなる直前に受取人の変更があったことがわかりました。
受取人変更請求が、あったとされる日は、母は入院中であったため、本人がやったのではないと思います。
叔母に横取りされた保険金は取り戻すことは可能ですか?
出来るならその方法が、知りたいです。

624

(ルル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生命保険金は遺産に含まれない】
今回は母の公正証書遺言があったにもかかわらず、生命保険が財産の中に含まれていなかったということで疑問を感じておられるようです。
しかし、一般に死亡保険金は法律上、遺産には含まれておりませんので、遺言に記載されることはまずありません。
特に今回は公証人が関与している公正証書遺言ですので、仮に母が間違って生命保険を遺言に記載したいと述べたとしても、公証人が訂正するでしょう。
つまり、生命保険が遺言書に載っていないこと自体は特におかしなことではありません。

【入院中でも受取人変更が可能なことがある】
ところが、あなたが税理士から見せられた全体表(おそらくは相続税申告用の遺産目録)には生命保険の記載があり、しかもそのうち一社の保険については受取人が死亡直前に叔母宛に変更されたようです。
この受取人変更の時期に母は入院中だったとのことですので、あなたとしては「母に無断で変更された無効な受取人変更である」と争いたいところでしょう。
しかし、入院には様々な理由がある(意識不明の重体もあれば、意識はしっかりした病気やケガもある)ため、単に入院中だからということで、受取人変更がすべて無効になるとは限りません。
実際の訴訟では、入院先の病院から医療記録や看護記録を取り寄せ、入院の理由や入院時の判断能力や意識状態を細かく検討していくことが必要となります。
その上で、やはり母には生命保険の話を理解し、受取人変更の手続きを取る(=書類にサインをする)ことができない状態であったということをあなたが証明して、初めて、叔母に変更された生命保険の受取人変更が無効であったと認められ、変更前の受取人が(あなたであれば)保険金を取り戻すことができるでしょう。

【療養中や入院中でも手続きを行うことがある】
この点に関し、最近では銀行や保険会社(さらには遺言を作成する公証人)は、本人の意思確認のため、入院先の病院や療養中の自宅に出向いて手続きを行うことがあります。
特に、高齢の方で先行きを心配される状況の場合、周囲の方が手配をして遺言作成や入院費捻出のための預金解約手続きなどを行われることがあります。
そのため、入院中であっても受取人変更の手続きが行われた可能性があります。
あなたとしては、前記の通り受取人変更が行われた前後の医療記録を取り寄せ、その当時の判断能力の有無についての判断を医師などの協力を得て、早急にされるといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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遺留分放棄の請求【Q&A №623】

2018/10/18


【質問の要旨】

遺留分放棄をするべきか

記載内容  遺留分放棄 家業 撤回 


【ご質問内容】

実家が自営業をしています。
長男が家業や家を守っていかないといけないと言う理由で、遺言書には、一切の財産を長男に。そして公正証書として残しておくと言われました。
それと、今のうちに遺留分放棄をしてくれと求められました。(長男は継ぐ事に前向きではありません)
ある程度の金額を提示されたものの、現時点で資産がいくらあるのかをしらされておりませんので、遺留分相当の額なのかも、不明です。
昔から、父はモラハラでハンコ押さないと今後の付き合いや財産は一切お前に与えないようにすると脅されました。
しかも、父と母の二人分の遺留分放棄と言われ、納得がいきません。果たして、両親ともの遺留分の放棄は出来るのですか?
また、遺留分放棄を撤回するのは、難しいと書いてありましたが、家庭裁判所で条件がつけられたり、こちらから長男が必ず家業を継続しているという条件や資産が嘘であった場合など、公正証書に残すとか。
有効な手段はありますか?
このままでは、親子関係、兄弟関係が悪くなってしまいます。

623


(トオル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【相続開始前の遺留分の放棄は可能です】
生前の相続分の放棄とは相続が開始する前に、あらかじめ遺留分を請求しないということを認めてもらう手続きです。
生前の相続分の放棄はできませんが、遺留分放棄は可能です。    
自営業の資産が細分化されるのを防ぐなど、相続財産の多くを後継者に残す必要性があるため、このような制度が認められていますが、被相続人やその他の人の不当な圧力で加わるような事態も想定されるため、相続開始前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。
裁判所の許可なく、生前に遺留分放棄をした場合、たとえそれが文書などで証明できるようなものであっても、放棄の効力は一切ありません。

【裁判所は、不当な強制を受けていないかを確認する】
生前の遺留分放棄をするには、遺留分を放棄する者が、家庭裁判所に対して、遺留分放棄の許可申立てをすることになります。
遺留分放棄の許可申立を受けた裁判所は、放棄の申立が、被相続人や他の相続人から不当な強制を受けてなされたものでないかという点を審査します。
具体的に言えば、裁判所は、遺留分放棄をする合理的な理由や必要性があるのか、また放棄の申し立てをした人がすでに十分な財産をもらっているのか等が判断材料になります。
許可が出た後は、遺留分を請求することはできません。
但し、法律上は撤回が可能です。

【参考条文:家事事件手続法】
第七十八条 家庭裁判所は、審判をした後、その審判を不当と認めるときは、次に掲げる審判を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。
 一 申立てによってのみ審判をすべき場合において申立てを却下した審判
 二 即時抗告をすることができる審判
2 審判が確定した日から五年を経過したときは、家庭裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその審判を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の取消し又は変更をする場合には、その審判における当事者及びその他の審判を受ける者の陳述を聴かなければならない。
4 第一項の規定による取消し又は変更の審判に対しては、取消し後又は変更後の審判が原審判であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。


しかし、裁判所の立場から言えば、一旦、決定を出した以上、簡単には生前の遺留分放棄の許可を撤回しません。
撤回のためには、放棄した人が、生前の放棄の許可を撤回するだけの事情の変化があったことを説明し、かつ証明する必要があります。
遺留分放棄の判断の前提になっていた事情が変更になり、遺留分放棄の状態を維持することが客観的に見て不合理・不相当になれば、裁判所が職権で放棄許可審判を取り消すことができることになっています。
そのため、仮に放棄の申立をする倍、その前提としてどれほど財産の開示を受けていたのか、わかる資料を裁判所にも提出し、また、自分自身も保存しておく必要があります。
いずれにせよ、遺留分放棄も許可が出た後はそれを撤回するかどうかは裁判所の判断ということになり、前もって合意をしていたからといって認められるわけではありません。
家族関係のこともあるようですので、法律的なことだけで結論を出すことはできませんが、可能であれば、生前の遺留分の放棄はできるだけしない方がいいでしょう。

【納得してから遺留分放棄の許可申立をすべき】
現段階では、あなたは、資産もわからないままに対価を示され、放棄を一方的に求められているようです。
ただ、上記に述べたとおり、一度遺留分放棄の判断をしてしまうと、それを取り消すためには、事情が変更になったとして裁判所の判断が必要になり、簡単ではありません。
そのため、遺留分放棄をする前に、資産の内容の開示を受けた上で、長男が家業を継ぐために、対価をもらって遺留分放棄をすることが妥当かを検討し、納得できる内容であれば、遺留分放棄の許可申立てをするということにすべきです。
なお、申し立てに際して、父と母の分は別々に申し立てる必要がありますが、別々に申し立てれば、双方について遺留分放棄をすることは可能です。

(弁護士 岡井理紗)
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土地の売買【Q&A №622】

2018/10/16


【質問の要旨】

売却した実家不動産の代金は誰が受け取るか

記載内容  実家 不動産 

【ご質問内容】

先日父が亡くなり、亡くなる前に不動産屋さんと、土地の売買を進めていました。
これは、母も兄姉も承知していたことで、父が亡くなり手続きが一時ストップしてきましたが、兄が不動産屋さんに相手が家を建てたいので手続きを進めて欲しいとの事に。
そこも問題ないのですが、売却のお金を、兄は自分の口座を新しく作ってそこに取り敢えず入金して貰い、後で皆に分割すると言ってます。
遺産相続の一環で行うから問題ないと言いますが、この場合、兄はそのお金を相続した扱いになり、分割したら兄からの贈与になる気がします。
この場合、その売却金はどのように扱うのが正確ですか?
土地売却は進めてあげたいのですが…

622


(ハル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【相続した財産の売却方法】
相続した財産を売却して、経費を差し引いた代金を相続人に分割することは、よくある話です。
その際、売買の方法として、次の2つの方法が考えられます。
それぞれについて、税金面と代金の支払い確保の面からプラスとマイナスを記載しておきますので、ご参照ください。

【お兄さんの単独名義にする方法】
相続人が多数いる場合、売買手続きを簡単にするために、お兄さんの単独名義にすることがあります。
この場合は、遺産分割協議書で兄が売買物件を単独で相続取得すると記載する必要があります。
兄が単独取得したことから、他の相続人は不動産からの取り分がなくなるので、その兄に単独取得させた代償として、金銭をもらうということをはっきりと記載しておく必要があります。
これをしないで、兄の単独名義にして、その後、売買代金の一部をもらった場合、税務署から贈与ではないかという疑惑を持たれかねません。
是非、《代償金》としてもらうのだという点を明記しておくことを忘れないようにしてください。
なお、この兄単独名義にする点は、売り主が兄一人になりますので、売買の手続きがスムーズにいくという利点があります。
しかし、兄が売買代金全額を受け取りますので、もし、兄がサラ金の借金がある、あるいは他に信頼できないような点があれば、お金が兄のところで消えてしまい、あなたにはまわらないというリスクがあります。

【3人が売り主になって、売却する方法】
代金の支払いの確保という点から言えば、相続人全員が売り主になるという方法もあります。
この場合、契約書には相続人全員が署名・捺印をし、また売買代金受領の場合には原則として、全員が立ち会うことになります。
私(弁護士大澤)が父からの遺産の不動産を売買した場合には、手続きは姉に売買の交渉をしてもらいましたが、決済のときには相続人全員が立ち会い、その場で経費を除いた売買代金全額を受け取りました。
別に姉を疑っていたわけではありませんが、皆がそれを希望したので、そのような形にしました。
売却代金の支払い確保にはこれが一番良いやり方ですが、反面、全員が売買の当事者になるので、手続きが面倒になるという欠点があります。

【どちらを選ぶかは兄が信頼できる人かどうかで決める】
結局、兄が信頼できるのであれば、兄の単独名義にし、兄から代償金として売却代金の一部をもらうというのが、手続きがスムーズでよい方法でしょう。
支払いで、若干でも不安があるのなら、法定相続人全員で売却するという、手続き的には煩雑な方法を採用するということになります。
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特別受益の件!【Q&A №621】

2018/10/02


【質問の要旨】

息子の消費者金融への支払いは特別受益になるか

記載内容  消費者金融 特別受益 贈与

【ご質問内容】

大沢先生宜しくお願い申し上げます。
もう20年以上前になりますが、息子が消費者金融で問題をおこし、当時の弁護士さんに200万円以上の費用をお支払して問題を解決して頂きました。
勿論息子に私への返済はさせておりません。
したがって遺留分の計算などで、この場合特別受益として認めてもらえる可能性はありますでしょうか。
大沢先生お忙しいところ大変恐縮ですが宜しくお願い申しあげます。

621


(トラちゃん)





20年前に息子の消費者金融の支払いをしたということであれば、特別受益になる可能性があります。
このようなケースで何が問題になるかを整理してみました。

【支払った人の相続でのみ特別受益になる】
まず、息子の消費者金融の借金を支払ったということですが、そのお金を誰が支払ったのかを確認しておく必要があります。
もし、《あなたが支払った》のであれば、《あなたの遺産分割の際》に特別受益として扱われます。
しかし、あなたの配偶者の相続の場合にはなんら特別受益にはなりません。
あくまで支払った人が死亡した場合、その人の相続でのみ、特別受益になるだけですので、ご注意ください。

【特別受益は贈与の場合で、貸金なら別途の扱いとなる】
特別受益は生前に《贈与》したという場合の問題です。
そのため、息子から《返還を予定していない》ということが前提になります。
もし、返還してもらう気持ちで、何回も請求した、あるいは借用書を差し入れてもらったというのなら、それは《貸金》になります。
貸金であれば、その返還請求権は原則10年で消滅時効にかかり、消滅します。
特別受益の場合は、20年や30年前であろうと、消滅時効にはかからず、特別受益として扱われます。

【贈与を証明できる必要がある】
質問のような20年も前の特別受益の場合、一番大きな問題点は、贈与したことが、果たして証明できるのかという点です。
支払った人がまだ生きている時には、息子は《支払ってもらったことはない》とまで主張することはないでしょう。
しかし、特別受益が問題となるのは、支払った人が死亡したときです。
そのとき《支払ってもらったという事実はない。もし、あるというなら証明してくれ》と言い出す可能性が高いです。
そのため、弁護士費用としていくら支払ったのか、また、消費者金融にどれだけ送金したのかを証明する書類があれば、大事に保存しておく必要があります。
また、仮に弁護士費用の領収書などがあったとしても、それは弁護士費用などが支払いされたという事実を証明するだけで、それをあなたが出したということを証明するものではありません。
なぜなら、弁護士の領収書は依頼者は息子ですので、息子宛に出しますし、送金も息子名義で送金されている可能性が高いはずです。
そのため、将来、特別受益が問題になった際、息子は《私が弁護士費用を支払った、私が送金したのだ》という可能性が高いです。

【今、できることとしては・・】
そのため、あなたがそのお金を出したというのであれば、その事実をあなたが元気なうちにはっきりさせておく必要があります。
息子に贈与を受けましたという書面を書かせることができればいいでしょうが、今更、そういうことも難しいかもしれません。
弁護士費用や送金の領収書などがあるなら整理して、特別受益を主張しようとする人に、生前に渡しておく必要があります。
次に息子との話の中で、消費者金融の債務整理をあなたのお金で支払いされたということを認める発言をさせるように持っていき、その会話などをICレコーダーやビデオ等で残しておき、これも特別受益を主張したい人に渡しておく必要があるでしょう。
大澤龍司法律事務所
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相続放棄後の分譲マンションの管理費【Q&A №620】

2018/10/02


【質問の要旨】

相続放棄したマンションの管理費も支払義務があるか

記載内容  不動産 相続財産管理人 管理責任

【ご質問内容】

夫が死亡し、親族全員相続放棄しました。
マンションの管理会社が弁護士を通じて 夫の死後から現在までの マンション管理費、修繕費(150万ほど)を支払って欲しいと連絡がありました。
応じない場合は 訴訟を起こすとのことです。

この場合、私たちは支払わなければいけないのでしょうか?
相続財産管理人は私たちが申立てするのでしょうか?

620


(きらり)





【全員が相続放棄した場合は最後の相続人が責任を負う】
相続人は不動産などの相続財産の管理責任を負いますが、法定の申述手続を行い相続放棄した場合、次順位の相続人が管理を開始した段階で管理責任を引き継ぎ、前順位の相続人は責任を免れます。
もっとも、最後に相続放棄した相続人は、相続放棄後も責任を免れることができません。

(民法940条)
1.相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。(後略)


相続放棄すれば全ての責任を免れると思っておられる方は多いのですが、不動産など管理を要する財産をお持ちの場合、相続放棄後も管理責任が続きますので要注意です。
※注:本件のような全員が相続放棄をした場合に、管理責任を負うのは最後の相続人であるかどうかについては、当事務所内で異なる意見があります。

【管理責任を免れるには管理人選任の必要がある】では、最後に相続放棄をした相続人はどうすれば管理責任を免れるのでしょうか。
実際には、家庭裁判所に相続財産管理人を選任する申立をすることで、管理責任を免れることができますので、この方針を弁護士など専門家に相談することが必要となります。
しかし、大阪の場合であれば裁判所に90万円~100万円程度の費用を申立時に予納する必要がある(弁護士費用は別途必要)ため、非常にコストがかかります。
また、遺産である預金などからこの予納金や弁護士費用を安易に支出したりすると、遺産を処分したということで相続放棄が認められなくなる(民法921条1号 法定単純承認)可能性もあるため、あまりお勧めできません。

(民法921条1号)
第921条次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。


【今回はマンション管理組合と調整すべき】
では、相続放棄をしたあなたとして取るべき方針は何でしょうか?
少し見方を変えれば、あなたと同様に困っているのはむしろマンションの管理費を請求する管理組合側です。管理組合の側も、不動産を換価処分して費用を回収するため相続財産管理人選任の準備を進めている可能性があります。そのため、費用のかかる管理人の選任手続については管理組合と相談し、費用負担などについて調整してから検討されてもよいでしょう。
この点も専門的な知見を元にした方針の立案と交渉が必要ですので、相続案件や相続放棄に詳しい弁護士などに相談されるのがよいでしょう。
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父の収入で母が子名義で貯金。これは誰からの特別受益?【Q&A №619】

2018/09/19


【質問の要旨】

名義預金は誰のものか

記載内容  名義預金 特別受益 保険金

【ご質問内容】

母が10年前に亡くなった際、父から子ども達に母の遺産分割を見送ってほしいとの話しがあり皆、承諾しました。
その父が2年前に亡くなり現在遺産分割調停中です。
母が亡くなった際、父から相続放棄(言葉が正しいかわかりませんが…)を促され兄弟は皆承諾しましたが子ども達名義の通帳のみ父が各自にくれました。
入金額はそれぞれ違いました。
専業主婦だった母が亡くなった父からの収入の中から貯金してくれたものと思われます。
そして今、兄弟の一人がそれは父からの特別受益だといい始めました。
兄弟の一人の主張は、そもそもの収入源は父、また貯金をしてくれた母が亡くなった際、母の遺産を放棄したのだからその通帳も全て父のものとなった、母の死後父から通帳を手渡された、よってこれは父からの特別受益であるという主張です。
ちなみにその兄弟は入金額が少なかったためとても不満に思っていますが母が保険金の受取人に指定していたため最終的な金額誤差はほとんどありません。
特別受益を主張した際は通帳額の少なかった兄弟の一人が有利に働くと想像します。
また兄弟の一人は固有財産だと主張しています。
このような場合、誰からの特別受益にあたるのでしょうか?

619


(きぬ)





【名義預金は名義人の遺産ではなく、父または母の遺産になる】
母が子供たちの名義で貯金することを「名義預金」といいます。
その預金が誰の財産であるかは、その名義には関係なく、そのお金が誰から出ていたか等のいろいろな事情を考慮して決定されます。
父が母に渡したお金から預金したという前提の場合、もし、その金銭が母への贈与の趣旨であれば母の預金になります。
しかし、今回の質問では、贈与の趣旨ではなく、父が給料全部あるいは生活費等として母に金銭を渡しており、その余りを子供名義で預金をしたようなケースですので、父の財産と考えていいでしょう。
 なお、名義人の独自の財産という主張は成り立たないと思われます。
なぜなら、その金銭の出所が父であり、かつ預貯金証書や取引印を父(またはその財産管理をしていた母)がもっていたというケ-スのようであり、子としては名義を使われたにすぎず、贈与とする根拠がありません。

【保険金は遺産に入らない】
母が保険契約をし、母の死亡によりその保険金を子が取得したということですが、死亡保険金は原則、遺産には入りません。
ただ、その保険金の額が大きく、遺産総額の6割を超えるような特段の事情がある場合には遺産に入れるという裁判例もあります【Q&A №298】)。
今回の質問では、預金及び保険金の各人の合計については、兄弟間の「最終的な金額誤差はほとんどありません」とあることから、保険金額が保険金が遺産の6割を超えていないようであるため、原則通り、保険金は遺産に入らないということになります。

【兄弟間で差がでるのはやむをえない】
結論から言えば、
① 保険金で受け取った分は特別受益にならず、遺産に持ち戻さない。
② 名義預金は父からの生前贈与であり、名義人独自の財産にはならない。
③ 名義預金は父からの生前贈与であるから、父の遺産分割の際、特別受益として遺産に持ち戻される。
④ 保険金をもらったものが得をするが、最高裁の判例が変更されない限りは、このような結論はやむを得ない。

【持ち戻し免除の意思があったとして公平を図ることもありうるかも・・】
子供たち各自名義の名義預金と、母の生命保険とで兄弟間の金額のバランスをとって、相続人らの公平を図ろうとしていたのが父母の意思であったとも考えられます。
そのため、それが通るかどうかは別として、名義預金の贈与については、遺産に持ち戻さないという父の黙示の意思表示があったと主張されるといいでしょう。
もし、その主張が認められると保険金及び名義預金の全部が遺産に持ち戻されず、その余の遺産について分割協議をすることになり、兄弟間の公平が図られることになります。
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父親の相続対策について【Q&A №618】

2018/09/11


【質問の要旨】

遺言を使用した場合の相続税対策および遺留分

記載内容  遺言 不動産 相続税

【ご質問内容】

標記内容についてですが、父は現在老人ホームに入所し、1年になります。脳梗塞が原因での入所になりましたが、最近覇気が無く、認知症も発症してきている状況です。
家族構成は、父親、母親(自宅で1人暮し)、同じ敷地内に私(長男家族)、近所に父親との共有名義で次男、三男が、その土地にそれぞれ自宅を建てています。
敷地内には、4所帯の2階建てのアパートがあります。
この様な状況での質問です。
①遺言書(自筆)を使用すべきか。
遺言書の存在は、私と母親のみ知っていますが、内容には、長男に母屋、アパート、預貯金等を相続させ、次男、三男はそれぞれの土地を相続との内容です。
ここで心配な点は、母親の取り分が記載されていない(私に高額な相続税がかかる)ことです。
仮に遺言書を使用かつ、母親にのみ相続法定分の2分1を申請させることは可能でしょうか。
この様な場合、次男、三男にも6分1づつになるのでしょうか。また、現在次男、三男の土地が遺留分を満たしているかの確認や遺産分割協議は、次男、三男が申し出ない限り、する必要はないのでしょうか。
②現在の相続税(概算)と次男、三男の遺留分の確認
②に関しては、どちらで確認できるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

618

(キンカン)




【遺言書を使用した場合、虚偽の申告になる】
遺言書とは異なる内容の申告(遺言書では財産をもらわないはずの母が相続税の申告では2分の1を取得する)というようなことが可能かという質問です。
母は配偶者ですので相続制上、優遇されており、その相続した財産が遺産の2分の1以下であれば、原則、相続税の課税はありません。
あなたとしては、不動産は遺言書のとおりにもらって、相続税の申告では母の優遇税制を使用するという形で、あなたの相続税をなしにあるいは軽減することはできないかという考えをお持ちのようです。
ただ、結論から先にいいますと、そのような手法で相続税を軽減することはできません。
なぜなら、父の不動産をあなた名義に移転登記をした場合、その登記がなされたことは法務局で国税庁に通知されます(不動産の移転登記は全て税務署に通知されることになっています)。
そのため、あなたが遺言書に基づき、不動産の移転登記をした場合、その登記については国税庁は把握していることになります。
そのため、登記とは全く異なる内容の、母が2分の1を取得したということを前提とした相続税の申告書が出てきた場合、税務署は必ず、税務調査を開始します。
結局は、あなたは真実の権利関係と異なる申告をして、虚偽の申告をしたことになり、不申告加算税や延滞税を課される可能性が極めて高いです。

【遺産分割協議をする必要はあるか?】
相続人全員の同意がある場合、遺言書と異なる内容の遺産分割協議をすることは可能です。
但し、一旦、遺言書に基づいてあなたの名義に移転登記した場合には、税務署は遺産分割は既に終了していると扱うことが多いです。
そのため、その後に法定相続人全員が同意して遺産分割協議書を作成しても、税務署としては、それは、遺産分割協議に基づくものではなく、新たな不動産の移転として譲渡税課税をしてくる可能性がありますので、ご注意ください。

【遺留分減殺請求を満たしているかどうかの確認について】
二男及び三男の取り分が、遺留分を満たしているかどうかについては、遺産全体と二男及び三男の取り分とを比較して、各遺留分である12分の1に達しているかどうかで判断します。
ただ、生前の特別受益があれば、その分が遺産に持ち戻され、遺留分算定の基礎になることがありますので、その点も注意されるといいでしょう。

【相続税対策について】
父に認知症が出てきたということですが、認知症が軽度であれば遺言書の作成が可能です。
現時点で父の判断能力を確認したうえで、能力があるというのであれば、相続税節減の方策を税の専門家である税理士に確認された後、遺言書を書き換えを考えられるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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14:00 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄後、故人の所有していた車について【Q&A №617】

2018/09/03


【質問の要旨】

相続放棄後の遺産の処分

記載内容  相続放棄 車の処分 財産管理人

【ご質問内容】

名古屋で20数年行方不明の兄が病死したという連絡が入りました。
部屋はゴミ屋敷状態で、負債の全容もわからず、相続放棄しかないと判断して、裁判所に申述書を提出中です。
兄は民間のアパート(駐車場代込み)に住んでおり、アパートの管理会社からは、部屋の回復や、車の処分を迫られています。
我々は長野におり、出向くこともできません。
どうしようもないとき車を処分し(80万ほどらしい)現金として保存することは認められるのでしょうか。
財産の管理人を選定するには予納金も高額と聞いており、悩んでおります。

617

(ひろ)





【相続放棄の効果】
現在、家裁に相続放棄の申し立てをしているということであり、それが受理されると、あなたは相続放棄したことになり、兄の相続人ではなくなります。
その結果、仮に、死んだ兄に借金などがあり、その債権者がいても、あなたは相続人ではなくなるので、請求を拒むことができます。
相続放棄とは、遺産はもらわないということですが、借金も支払わないということでもあります。

【車を売却すると相続放棄を主張できない】
しかし、相続放棄をしながら、兄の自動車を処分するというのは、矛盾した行為です。
兄の自動車を売却するとすれば、あなたは兄の相続人の立場で、その車を売却することになります。
(業者に対する書類にはあなたは《兄の相続人》と記載されますし、かつ、相続関係を明らかにする戸籍謄本等を提出する必要があり、これらがないと車を売却できません)
相続人でないのに遺産を処分すると、法律で、その処分者は遺産の相続をしたものとして扱われます。
《参照条文:民法921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。》


【債権者が車の処分を知ったら、借金の支払いを拒めない】
兄の債権者から支払い請求があった場合、あなたとしては、家裁の相続放棄の受理証明書を提出すると、ほとんどの債権者は、《相続放棄されたんですか、それなら請求をあきらめましょう》という対応をします。
しかし、万一、その債権者が、あなたが兄の自動車を売ったことを知った場合、あなたは相続放棄の効果がなくなるのですから、支払いを請求することができ、あなたは債務の支払いをせざるをえないことになります。

【本当はどうすべきだったのか?】
家裁に放棄の書類を出す前に、兄の遺産について、どの程度遺産があるのか、また、借金はどの程度あるのかを調査するべきでした(リンク:遺産の調査・発見)。
その調査に時間がかかるというのであれば、家裁に放棄期間(相続開始を知って3ケ月)の伸長願いを出せば、3ケ月程度、延長してくれますので、その間、鋭意、調査したほうがよかったでしょう。

【あなたとしてはどう対処するべきか】
現在、相続放棄の手配をしているのであれば、あなたとしては、その前提で動くといいでしょう。
具体的には、アパートの管理会社に対し、相続放棄したことを、受理証明書を示して明らかにし、請求をはねのけるというのが、あなたの取るべき対応です。
アパートの管理会社なら、相続放棄していたら、被相続人である兄の債務の請求ができないということを知っているはずです。

【相続財産管理人を選任するのは管理会社である】
相続放棄などで、相続人がなくなった場合には、管理会社としては兄に対して債権を有していても、請求する相手がいません。
そのため、同社としては相続財産管理人の選任の申し立てをし、その管理人を被告として裁判をするしかありません。
兄の車を撤去するためには訴訟をせざるを得ませんが、被告となるのは債務を引き継いだ相続人ですが、それがいないのなら、家裁に遺産を管理する相続財産管理人選任の申し立てをするしかありません。
ご指摘のように相続財産管理人の選任は家裁に納める予納金が高いです。
しかし、この選任申し立ては債権者である管理会社(駐車場から出ていけ、駐車料金を支払えとの請求権を有している)がすることであり、相続人ではないあなたの関知することではないことです。
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10:32 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

親族相盗例における相続放棄【Q&A №616】

2018/08/30


【質問の要旨】

横領した父の相続放棄

記載内容  横領 法人 損害賠償

【ご質問内容】

先日、叔父が経営する企業(株式会社)で働く父が、会社のお金を横領した後、お金を使わずにそのまま病気で亡くなりました。
生前の父の行いを考慮し、私は相続放棄をする予定です。
父は過去に離婚しており、相続人候補は叔父のみですが、その叔父も相続放棄をしようと考えている所です。
このようなケースにおいて、叔父は横領分のお金を父の銀行口座から取り戻すことができるのでしょうか。
一見すると、叔父が相続放棄を選んだ時点で、父の横領分のお金も放棄しなければならないように思いますが、
そのお金を本来受け取る権利を有するのは叔父の会社ですので、叔父にとってあまりにも酷ではないかと思い、
実際どのように考えるべきなのかをご教示頂きたく質問させて頂きました。

616

(マサムネ)





【損害賠償請求権は会社が有する権利】
まず、お話を整理しますと、あなたの父は会社(法人)のお金を横領したまま死亡されたということですので、あなたの父に対して損害賠償請求を行い、横領されたお金を取り戻す権利を有しているのは会社(法人)です。叔父(個人)ではありません。
ここは区別が難しいのですが、被害者は会社(法人)であることをまずご認識下さい。

【横領の責任は現在、叔父が引き継いでいる】
他方で、本来なら横領の損害賠償責任は相続人であるあなたが相続します。
ただ、今回はあなたが相続放棄をされるようですので、その場合、残された唯一の相続人である叔父があなたの父を相続します。
その結果、叔父(個人)が会社(法人)に対する損害賠償責任も相続する、という状態になります。
元々叔父(個人)は被害者の立場ですので少し変な状況になりますが、法律上はこのような状態になります。

【叔父は相続人として預金の払い戻しができる】
この状況下であれば、叔父(個人)はあなたの父の相続人として、銀行に対し預金の解約・払戻などの相続手続を取ることができます。もちろん、あなたの父の横領の責任として、会社(法人)にお金を返すこともできます。
元々は被害者の立場であった会社の代表者である叔父が責任を取る、というのは非常におかしな話ですが、実際上、横領されたお金を取り戻すにはこれがもっとも簡易な方法と思われます。
(厳密には、あなたの父がほかの借金をしていた可能性も考えられますので、ほかに負債がないことを確認ができるまで預金に手を付けない方がよいでしょう。)

【叔父も相続放棄した場合は相続財産管理人の選任】
他方で、この状況から叔父も相続放棄した場合、相続人は不在の状況になります。
その場合、誰もあなたの父の相続預金を解約することができないため、叔父の会社(法人)は、横領されたお金の回収ができません。
この状況であなたの父から横領のお金を返してもらうには、会社から家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てをし、選任された相続財産管理人に対する交渉や裁判を行っていく必要が出てきます。ところが、これには裁判を行う手間はもちろん、一般に90万円前後の予納金を裁判所に納めて選任申し立てをすることになるため、非常に負担が大きく、あまりお勧めできません。
そのため、(ほかの負債の有無にもよりますが)叔父が相続放棄するべきかどうかは慎重な判断が必要でしょう。

(弁護士北野英彦)
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13:17 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続財産開示について【Q&A №615】

2018/08/28


【質問の要旨】

生前の解約と取引履歴開示

記載内容  一部解約 明細 開示

【ご質問内容】

父は3年前に逝去、今年、母が逝去し、子供(長女・次女・長男)の3人が相続人です。

父の遺産は銀行の遺産信託で管理されていましたが母の場合は 母名義の銀行預金のみで、これについては 遺産分割についての遺言もエンディングノートもありません。

長男が母生前に 母名義預金を一部解約して自分名義にしていたらしいことがわかりました。

この自分名義口座から 母の老人施設費用、葬儀費用などを支払っていたようです。

Q1: 相続税対策のつもりだったかもしれませんが、これは正しいことでしょうか?

Q2: 母名義の口座の一部解約は2年近く前ですが、一部解約の明細は開示してもらうことはできるのでしょうか?

Q3: 長男名義になってしまった 元母名義口座の分については今後、どのような手段が可能でしょうか?

ご回答およびアドバイスを宜しくお願いいたします。

615

(パドミニ)





【正しいかどうかという質問について】
今回の質問の1は《正しいかどうか》という極めてユニークなものです。
遺産相続という法律(民法)では、遺産に属するかどうか、また、請求できるかどうかという場面で考えますので、正しいかどうかという観点で考えることはほとんどありません。
もし、あえて回答するなら次のとおりとなります。
① 母が自分の解約し、長男名義にすることを認めていたかどうかが、まず、問題になります。
 認めていたのなら、解約および長男名義への変更については何ら問題はなく、不正はありません。
 もし、母に無断でしたのであれば、不正ということになります(刑法という法律で処罰されるかどうかについてはQ&A №584をご参照ください)。
② 母が認めていた場合でも、それが長男への贈与であるのか、それとも長男に預けただけなのかという問題があります。
 もし、贈与であれば、生前にいくら贈与するかは母の自由であり、不正の問題は生じません。
 ただ、金額が基礎控除の110万円を超えるのであれば贈与税の申告が必要であり、それをしていないのなら、税務的には不正になります。
 また、仮に預けたのであれば、母のために使った分を控除して、残った残額を遺産に戻す必要があります。
 その返還分(返還請求権)は遺産ですので、相続税申告をする場合に記載しないと税務的には不正ということになるでしょう。

【解約預貯金の開示請求について】
母の生前に解約された口座の情報(取引履歴など)について、相続人が調査できるのかという点については裁判例があります。
平成23年8月3日に東京高裁で、被相続人の生前に解約された口座の取引履歴の開示を求めた事案で、「金融機関は、被相続人の生前に解約された預金口座の取引履歴を開示すべき義務は負わない」との内容の判決が出ています。
これは、金融機関としては、生前に、預金者による解約後に、従前の取引経過や解約の結果を報告しているので、それだけでよく、相続人に対しては開示義務はないというものです。
(最高裁の平成21年1月22日の判例で、法定相続人であれば被相続人の取引履歴の開示を求めることができると判断されていることとこの判例が矛盾しないのか、という問題がありますが、この点は判断が難しいところです)。
ただ、銀行によっては、相続人であることを示して開示を求めれば、開示をしてくれるところもありますので、開示請求はすべきでしょう。

【法律的に見た場合の問題点―不正出金か、または特別受益】
今回の質問を法律(民法)的にみると次のとおりの問題点を指摘することができます。
①一部解約が母の意思に反してなされた場合、無断出金として、母は長男に返還請求をすることができます。
ただ、母の用途に使われた分は、請求から控除し、残額を各法定相続人が相続分に応じて取得(相続)しますので、その分を長男に請求することになります。
②母の意思に基づくのなら、贈与なのか、それとも預けたのかが問題になります。
贈与なら、その分は特別受益として、遺産に持ち戻して計算することになります。
預けたのなら、母の用途に使った分以外を長男は返還する必要があります。
正確に言えば、母の用途に使った分を控除した残額につき、各法定相続人はその相続分に応じて返還請求ができます。
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09:49 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

混同により損害賠償請求権や遺留分は消滅するのか?【Q&A №614】

2018/08/27


【質問の要旨】

不正出金の責任も遺言で消滅するのか

記載内容  不正出金 混同 損害賠償

【ご質問内容】

原告(長男)は母に遺言書を書かせ相続し、被告側(三男)が生前母の治療保険金を不正費消したと損害賠償請求を起こしました。

被告側は全て治療費など母の費用に使用した主張。

被告は原告が母の生前多額の預金を不法に取得している事を反論し、原告の不法行為が認められ各相続人が損害賠償請求権があり、被告の遺留分を侵害していて、原告の訴えは全て棄却されましたが控訴してきました。

原告は控訴理由書にて不法行為でも損害賠償請求権は各相続人は取得するが、遺言書において母は全財産を長男に渡すと書いてあり、また混同で消滅するので、母が他の相続人に贈与する事を希望していないので遺留分も無いと主張してきました。

お聞きしたい事は

1、不法行為で損害賠償請求権を各相続人は取得すると思いますが、遺言書において母は全財産を原告に渡す(他の相続人を排除する事や目録含め具体的な事は書いていない)と書いてあり、原告分は混同で消滅すると思いますが、他の相続人に相続する
事を希望していない事と同様なので、混同によって他の相続人の損害賠償請求権や遺留分も消滅すると主張していますがそのような事は考えられるのでしょうか?

2、母が長男の事業の為に渡したと生前に言っている証拠がある場合、損害賠償請求権は無くなって、生前贈与となり特別受益と考えられますか?

614

(マッチ)





【他の相続人が取得するはずの損害賠償請求権が消滅するのか】
まず、本件では相続人が長男・二男・三男の3人とし、3分の1ずつ相続する場合を想定して回答します。
まず、《混同》とは、権利を持っているものが、義務を負う場合、権利と義務が同一の人に帰属するため、権利と義務がなくなるというものです。
義務が負う者が、権利を取得する場合にも同様に《混同》により権利義務がなくなります。
さて、今回の質問は、遺言があるので少しややこしいケースです。
(1)遺言がない場合と(2)遺言がある場合に分けて、混同で権利義務が消滅するかどうか、説明していきます。

(1) 遺言がない場合の混同について
遺言がない場合に不正出金による損害賠償請求権がどう相続されるのかを述べておきます。

①長男が母の預金の不正取得をしたのなら、母は長男に対し損害賠償請求権をもつ。
長男は母に対して損害賠償支払い義務を負う。
②母の死亡により相続開始すると、母が長男に対して有していた損害賠償請求権は、全相続人がその相続割合に応じて、分割相続する。
③上記②の分割相続の結果、・長男(相続分3分の1)は、母の損害賠償請求権の3分の1を取得する。
④長男は、損害賠償請求権全額の支払義務者でもあるので、相続した請求権(3分の1)の限度で、長男の損害賠償請求権は消滅する。
⑤しかし、残りの3分の2の損害賠償義務は消滅せず、他の相続人が請求をしてきた場合、その支払いに応じなければならない。

(2) 遺言がある場合の混同
①相続財産を全て長男に相続させる」という遺言がある場合、
母の有する損害賠償請求権はすべて長男に相続されます。
②長男は損害賠償全部の支払義務がありますが、①の結果、その請求権の全部を取得しますので、権利と義務の全てを取得するので、損害賠償請求権の全部が混同で消滅します。

【遺留分減殺請求権行使した後の混同について】
ところで長男以外の人が遺留分減殺請求権を行使した場合、このケースなら二男と三男がその遺留分(各6分の1。2人合計で3分の1)の限度で、損害賠償請求権を取得します。
そのため、長男としては、遺留分減殺の対象とならない3分の2の請求権を相続し、その限度で損害賠償請求権は混同で消滅します。
しかし、二男と三男が遺留分減殺で取得した3分の1については混同はせず、二男と三男に支払いをする必要があります。

【長男に対する生前贈与の扱い】
母が生前にその意思で長男に贈与した財産があれば、原則として特別受益になります。
長男の事業のために贈与したということなら、生計の資本としての贈与であり、特別受益になります。
法定相続人に対する特別受益であれば、遺留分を計算する際の計算の基礎となる相続財産に持ち戻されます。
なお、特別受益の場合、相続開始の1年以上前であっても、遺産に持ち戻されます。
その結果、二男・三男の遺留分が増えます。
 
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12:06 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

使用貸借について【Q&A №613】

2018/08/02


【質問の要旨】

使用貸借されている土地の相続と生前贈与

記載内容  使用貸借 相続 生前贈与

【ご質問内容】

使用貸借(無償貸与)されている土地を相続の時、使用貸借は承継するのに、生前贈与の時、使用貸借(無償貸与)は承継しないのは何故でしょうか?

(生前贈与を受けるのは相続人です。)

(ジャスミンルージュ)





【使用貸借は貸主に対して請求できる債権】
今回の質問は、具体的な案件の相談ではなく、法律の理解のしかたについての理論的な質問で、以下の回答内容は難しいかもしれません。

不動産(土地)を例にとって説明します。
まず、建物の持ち主A(以下、Aといいます)が借主Bに貸す(使用させる)という契約をします。
この場合、借主Bとしては、契約の相手方であるAに対してのみ、建物を使用させよという請求が可能です(このような契約の相手方に対してのみ請求できる権利は「債権」と言います)。
賃料を取る賃貸借にせよ、無償の使用貸借にせよ、Bの持つ権利はAに対する債権になります。

【Aが他の人に所有権移転すると、Bは建物を使用できないのが原則】
Bは家を使用させよという権利を持ちますが、これはあくまでAに対して請求する権利です。
そのため、Aが他人(例えばC)に土地の所有権を移した場合には、BはCに対して建物をつかわせよという請求はできません。
これは賃貸借であっても、使用貸借であっても同様であり、BはCに使用させよということはできません。
Bとしては、土地を使わせるという約束に違反したAに対して、損害賠償請求をするしかないということになります。

【登記した物権なら、Cに使わせよということができる】
ただ、この土地を使用する権利を登記してもらうと権利が強くなります。
土地の使用権を登記すると、《地上権》という強い権利(物権と言います)になり、新しい所有者であるCにも土地を使わせよという請求ができます。

【土地や建物の賃借は、法律で強い権利になっている】
ただ、土地の使用権を登記までするということは少ないです。
建物を建てる目的の土地などは、Bの住居や店舗に利用されている場合が多く、所有者が変わる度に退去するというのでは社会が混乱します。
そのため、賃貸借である場合に限定して、法律(借地借家法)で、所有者が変わっても継続使用を主張できる(借地権という強い権利になっている)ことにしています。

【贈与の場合は、使用貸借の継続使用は不可】
AがCに贈与した場合、贈与に伴い、Cが所有者になります。
賃貸借であれば、前項の法律のおかげで、Bは引き続きの使用を主張することが可能です。
しかし、使用貸借の場合は、借地借家法の保護はなく、Bは土地を使用できないということになります。

【相続の場合】
贈与の場合には、(生きている)AとCは、親子であっても他人として扱われます。
しかし、Aが死亡して、相続が発生した場合、相続人Dは《法律上》はAと同一の人として扱われ、DはなくなったAの権利義務を引き継ぎます。
そのため、Aの負っていたBに土地を貸す義務を、Dは引き継ぎ、Bは退去する必要がないということになります(このような違いがあることから、売買や贈与は《特定承継》と言われ、相続は《一般承継》と言われ、区別して扱われます)。
このような所有権の移転が発生する原因の違いが、Cの退去の可否に影響しているため、使用貸借の場合、生前贈与では退去、相続では退去不要という結論になるということです。
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16:54 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産の対象と遺留分について【Q&A №612】

2018/07/13


【質問の要旨】

全遺産を遺贈する遺言があるが、遺留分はどうなるのか

記載内容  全遺産 遺贈 生命保険

【ご質問内容】

母が亡くなりました。父はすでに他界しているため、相続人は弟と私(姉)の二人です。

母は身体が不自由だったため、25年私が身の回りの世話をし、その後5年前に弟が母を引き取りました。(弟とは訳あって絶縁状態です)

母の死後、半年経っても相続についての連絡がないので、問い合わせると、公証役場で作成したすべての財産と権利を弟に相続させる、という内容の遺言書コピーが送られてきました。

また遺言執行者を弟に指名しているため、母の財産の一部を残し、すでに口座名義等を弟のものへ変更しておりました。

遺留分減殺請求を考えております。
下記は遺産の対象となるのでしょうか?

① 弟家族への生前贈与
  弟、妻、子、孫2(幼児)5人それぞれ×100万×5年間=2500万

② 一時払い生命保険の掛け金1000万
  契約者、被保険者、受取人すべて弟 
  弟から上記は遺産の範囲に含めないと主張されているのですが、納得できません。
  また、遺言書作成後の上記贈与の場合、遺留分侵害を分かっていた生前贈与と考えられないでしょうか。

612

(はな)




【遺留分減殺請求ができます】

今回のように遺言で、遺産が他の相続人(弟)に全部いくような場合には、遺産をもらえない相続人(あなた)は遺留分減殺請求をすることができます。
法定相続人が子2人なら、減殺請求で遺産の4分の1をもらえます。

【すべての生前贈与が遺産になるわけではない】

問題は、遺留分計算の前提となる遺産の範囲です。
法律では、すべての生前贈与が遺産になるとはされていません。
遺留分の計算上、遺産に組み入れられるのは次の2つの場合です。
①相続開始前の1年間になされた贈与
②1年を超える前の贈与であっても遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされたもの

【特別受益は1年以上前でも遺産に入る】
ただ、法律には記載されていませんが、裁判所は共同相続人の特別受益になるような生前贈与については、相続開始時から1年を超える生前贈与でも遺産に入るとしています(最高裁平成10年3月24日判決)。
その結果、母の遺産の共同相続人の立場にある弟への生前贈与は、1年を超える分でも遺産に組み入れられます。

【共同相続人以外の者に対する贈与は原則、遺産に入らないが・・】

弟の妻、その子や孫は、共同相続人という立場ではありません。
そのため、このような立場の者に対する生前贈与は相続開始の前、1年間のみに限って、遺留分の基礎財産には組み入れることができます。
ただ、特別受益に関する判例には、《実質上、相続人(弟)にしたと同視できる生前贈与は特別受益になる》としたものがあります(【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

そのため、弟の妻らに対する生前贈与が実質上、弟に対してしたものと同視できるとすれば、生前贈与の時期を問わず、遺産に組み入れすることができるという結論になります。
実質上という判断は諸般の事情を考慮してなされるものであり、簡単には言えませんが、弟とその家族にのみ生前贈与をしており、各人への贈与額が贈与税の基礎控除以内の同額であるというのであれば、実質上、弟に対する500万円の生前贈与を、贈与税を免れるために分割したにすぎないと考えることも可能かもしれません。
ただ、遺留分の分野は相続でも最も難しいところであり、かつ、特別受益であるかどうかが大きな論点になるケースです。
相続に詳しい弁護士に詳しい事情を説明した上で、その見解をお聞きするのがいいと思います。

【一時払い生命保険の掛け金の扱い】
被相続人が契約した生命保険については、その受取人が共同相続人の一人であっても遺産にはなりません(Q&A №298)。
ただ、今回は、弟が契約者であり、被保険者でかつ受取人であるなら、弟は本来自分が支払うべき1000万円の掛け金を母に支払ってもらったのであり、その全額が生前贈与になり、かつ特別受益に該当すると考えられ、遺留分減殺の対象になります。
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不正な預金引き出しと疑われたくない【Q&A №567】

2018/06/29


【質問の要旨】

頼まれた出金が不正出金と疑われないか

記載内容  不正出金 証拠

【ご質問内容】

私の祖母は介護が必要で施設でお世話になっています。

去年に祖母の娘(私の叔母)が、「息子が結婚する」と祖母のところへ報告にきたそうです。
祖母は孫に結婚祝いを渡すから10万円を自分の口座からおろして持ってきてほしいと母に頼みました。

祖母の子供は長女(叔母)と長男(私の父)ですが(祖父は他界)、叔母はアルコール依存症で私たち家族に暴言を吐くようになり仲が悪くなって祖母以外の私の家族とは音信不通です。

母は言う通りに10万円を祖母の口座からおろし普通の封筒に入れ祖母のところへ持って行き、叔母も後日その10万円を受け取りに来たそうです。

しかしその後も結婚はしていないみたいで、(その話を出すと叔母は言葉を濁すそうで)婚約破棄になったか騙しとった可能性が出てきました

祖母は足が不自由な位で病気もなく頭もハッキリしていますが、もし亡くなって相続の話になった時にこの10万円が不正出金になるのではと心配になりました。

言われた通り口座から引き出したのは私の母ですが、叔母が「そんなお金貰っていない、不正な出金だ」と言われたら証拠がありません。

これは祖母の口座を管理している私の家族の不正出金になるのでしょうか。宜しくお願い致します。

(けり)





【厳密には祖母の同意がありますが】

 今回は、お祖母さんの同意を得て出金したのですから、(外形上はともかく)厳密には不正出金ではありません。そのお金をお母さんが利得したわけでもありませんので、後日責任追及を受ける理由はありません。

 しかし、そのような話はお祖母さんが亡くなった後は誰も分かりませんので、叔母さんが「10万円が消えている。誰かが不正出金した」と騒ぐ可能性もないわけではありません。

【経過を書面化するなど記録しましょう】

 幸いなことに、お祖母さんはまだご存命で判断能力も十分なようです。それであれば、10万円の出金経過(叔母さんの息子さんの結婚祝いのため出金を依頼したこと、叔母さんを通じて息子さんに渡したこと等)を書面化しておき、お祖母さんにこれを承認する旨のサインや印鑑をもらっておけば、不正出金でないことの証拠になります

 (叔母さんが騙したかどうかは別問題として)少なくともこの書面を作成しておくことで、お母さんの不正出金だと言われることは防ぐことができるでしょう。

【出金の証拠は残るが、支払いの証拠は残らない】

 お祖母さんの指示に従い、お母さんがお祖母さん名義の口座から10万円を出金したという事案ですと、払戻伝票はお母さんが書かれていたことになります。

 また、口座名義人ではないお母さんが出金するのですから、金融機関はお祖母さんのお母さんを代理人とするという内容の委任状も取っているはずです。

 金融機関はこれらの出金関係の書類を残しています

 お祖母さんの死亡後であれば、その法定相続人がこれらの出金関係の書類の取り寄せが可能です。
要するに出金した証拠は残るということです。

 一方で、出金したお金を、お母さんが叔母さんの息子に渡したという点については、結婚祝いで渡したのですから、領収書などは出してもらえないでしょう。
 そのため、出金したお金の使途を裏付ける書類はないということになります。

【死亡後に出金分の使途が問題になると・・】

 お祖母さんがなくなり、叔母さんがこの10万円の出金を問題にすることを想定すると、その際、お母さんは困った立場になります。

 10万円をお母さんが出金したことは金融機関に残っている払戻伝票等の書類で証明できますが、その出金した10万円を叔母さんの息子に支払ったことは証明できないからです。
 叔母さんが10万円を問題にする場合、その息子が自らもらったと言うことも考えにくいでしょう。

 又、結婚祝いとして渡したと言っても、その結婚自体がなかったというのですから、ますますお母さんの立場は不利になります。

【証明方法としては書面を作る、録音をするという方法がある】

 お祖母さんが存命なら、出金の依頼《叔母さんの息子さんが結婚するという話を聞いたので、10万円を出金することをお母さんに依頼し、お祖母さん自身が叔母さんにその10万円を渡したこと》を書いてもらうといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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12:10 遺産分割のトラブル | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

代襲相続人謝礼金相場について【Q&A №610】

2018/06/12


【質問の要旨】

遺産を相続しない承諾料(ハンコ代)の相場

記載内容  ハンコ代 承諾料 放棄


【ご質問内容】

父方の叔父が亡くなり、叔父の書いた遺言書により叔母が家、土地、預貯金、生命保険、を相続する事になりました。
司法書士事務所より父が他界しているため遺産分割協議書が送られてきて、印鑑証明書とともに実印を押して、送り返して欲しいとの事でした。
私の方には貰える現金は無く、謝礼として、商品券5千円が同封されていました。
謝礼金の相場としては適正なのでしょうか。
ちなみに私には叔母がいくら相続するのかは知らされていません。

610

(みーちゃん)



 ※敬称略とさせていただきます

【兄弟には遺留分がないが、念のために遺言書の確認が必要】
配偶者や子のいない叔父が死亡したのであれば、叔父の兄弟である、あなたの父が相続人になります。
父が死亡しているのであれば、父の子(すなわちあなた)が代襲で相続人になり、叔父の遺産をもらうことができます。
ただ、叔父が遺言書を書いており、その内容が他の人に遺産を全部相続させるという内容であれば、あなたには遺産が来ることはありません。
これは兄弟には遺留分が認められない(民法第1028条、【コラム】遺留分とは)からです。
今回の質問の場合、遺言書に問題がないのであれば、あなたの同意や印鑑なしで登記ができるはずです。
にもかかわらず、あなたの印鑑が必要だというのはどうしてでしょうかという疑念があります。
そのため、遺言書が本当に叔父の意思に基づくものか、あるいは遺言書作成人時に叔父に意思能力があったかどうかは念のために確認しておくといいでしょう。
なお、公正証書遺言であれば、原則として遺言書としての有効性については問題がないと思われますが、その場合でも遺言書の内容を確認しておく必要があるでしょう。

【承諾料の基準はこんな事情を考慮して決定する】
承諾料というのは、不動産登記をする場合や不動産からの立ち退きをするような場合に、登記をしたい人や立ち退きをさせたい人が出す金銭のことであり、登記などのときにはハンコ代ということもあります。
ハンコ代がどの程度が妥当かは、ケースにより異なります。
例えば借地権譲渡の場合のように借地権価格の10%程度という、ある程度の基準が決まっていることもありますが、多くの場合には金額が決まっていないと言っていいでしょう。
ただ、次のような点を考慮されることが多いので、金額決定の際に参考にされるといいでしょう。
① あなたの側に何らかの権利があるのか、ないのか。
もし、権利があるのなら、その権利を金銭的に換算した金額が承諾料になるでしょう。
冒頭に遺言書が有効かどうかを確認しなさいと言ったのはこのような観点からです。
② 手続きの手間を省くための承諾料なら、その手間を省くことにより得る相手方の利益
  相手方に権利があるとしても、その権利を実現するためにはあなたの印鑑が必要なケースがあります。
 例えば、遺言書があっても自筆の場合には、金融機関によっては、相続人全員の同意が必要というところもあります。
そのような場合、相手方としては、あなたの印鑑がとれない場合、裁判をせざるをえません。
裁判すれば時間や手間もかかり、又、弁護士(費用)も必要でしょう。
その手間や費用等を省くためにどの程度を出すべきかを考えることになります。
③ 相手方との人間関係も考慮要素である。
あなたと相手方とがどのような人間関係にあるかも承諾料に影響します。
いつもお世話になっている人なら、相手方の申し出た金額に反論はむずかしいかもしれません。
反面、そのような関係にない場合には、前記①及び②も効力入れた金額を請求してもいいということになります。

【今回の商品券は妥当か】
以下は私(弁護士大澤龍司)の私見ですが、参考にされるといいでしょう。
あなたに何らの権利がないとした場合、
① 遺産総額が10万円程度なら、今回の承諾料が商品券5000円でもやむを得ないとは思います。
② 遺産総額が100万円ということなら3~5万円という程度。
③ 遺産総額が1000万円ということなら30~50万円程度。
以上はあくまで長年の経験からくるものであり、これらの金額を基準にして具体的な事情で増減していくというのが私のやり方です。
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12:06 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

掛け金を契約者が支払っていない生命保険の解約返戻金について【Q&A №609】

2018/06/06


【質問の要旨】

父が掛金を支払った保険の解約返戻金は特別受益か

記載内容  掛金 解約返戻金 特別受益


【ご質問内容】

父を被相続人とし、兄と妹の私が相続人です。
父は生前、父が契約者で兄を被保険者とする(受取人は不明)生命保険に加入しており、掛け金は父の口座から引き落とされていました。
その後、父の存命中に契約者が兄に変更されましたが掛け金は父の口座からの引き落としのままでした。
そして、父の存命中に保険が中途解約されたのですがその際の解約返礼金690万円はすべて兄が受け取っております。
兄はそのうちの600万円を父の口座に振込み、父の遺産は2000万円ありました。
それを理由に、2000万円から600万円を差し引いた金額が遺産であると主張しております。
保険を中途解約した時点で父は存命中であり、掛け金は全て父が支払っていたわけですから兄が受け取った690万円は父の遺産とみなされるのではないのでしょうか。
また、受け取った兄に対する特別受益とはみなされないのでしょうか。

609

(ラベルト)




 ※敬称略とさせていただきます

【生命保険の名義変更は父の意思に基づく限り有効です】
生命保険契約は、父と生命保険会社の契約です。
その契約者である父がその意思でする限り、契約者の名義を兄に変更することは有効です。

【解約返戻金は兄が取得するが、生前贈与になる可能性がある】
父がその時点までに父が払い込んだ保険料については、保険契約が解約された場合、解約返戻金が支払われます。
この解約返戻金は、新たに契約者になった兄が受取れることになります。
とすると、今回の解約返戻金(690万円)は、父から兄から与えられる利益であり、実質的には生前贈与と扱っていいと思われます。

【生命保険金の受取と名義変更による解約返戻金の関係】
父が死亡したとき、受取人が兄であった場合、兄が受け取る生命保険金は遺産にはならず、生命保険金は遺産分割の対象にはなりません。
その理由は、死亡保険金は、相続とは別個の生命保険契約により、受取人が取得する財産だからです(当ブログQ&A №299参照)。

しかし、今回の場合には、父の死亡によるのではなく、父が生前にした行為により、兄が解約返戻金を取得できる立場になったのです。
そのため、兄に特別受益ありとして、その分を遺産に持ち戻して、遺産分割するということになります。

【特別受益は90万円】
ただ、兄は父の口座に600万円を入れたということです。
この入金がどういう趣旨でなされたのか明らかではありませんが、この入金分は父の遺産となると考えれば特別受益は90万円になります。
結局、90万円をお兄さんの特別受益として遺産に持戻し、父口座に入金された600万円を加算して算出された遺産総額が2090万円ですので、その2分の1の1045万円が、あなたが受け取る金額になります。
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13:21 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

使用貸借されている土地を生前贈与でもらった場合【Q&A №607】

2018/05/10


【質問の要旨】

土地を生前贈与すれば使用貸借はどうなるのか

記載内容  使用貸借 相続 生前贈与


【ご質問内容】

使用貸借されている土地を【相続】した場合のみ、
賃貸人の義務を相続人は、承継する。

相続でなく、【譲渡】の場合は、
第三者は、義務を承継しない。

では、大澤先生、わからないので
お手数ですがお教え頂きたいです。

【生前贈与】で、もらった場合は、
義務を承継するのでしょうか
承継しないのでしょうか。

(悩み中)



 ※敬称略とさせていただきます

今回は、土地を他人に使用させている土地の所有者(A)が、土地を第三者(B)に生前贈与した場合、BはAの義務を引き継ぐのかどうかという質問です。

【生前贈与の場合、使用貸借関係の権利義務は引き継がない】
土地の使用貸借(無償貸与)での義務といえば、土地利用者(C)に土地を使用させる義務ですので、生前贈与を受けたBがCの土地の利用を拒むことができるか、換言すればCに建物撤去を求めることができるかという問題です。
AとCとの間には、無償でCに土地を利用させるという契約が成立しています。
しかし、これはあくまでAとCとの間の契約にすぎませんので、Bが使用貸借上の義務を引き継ぐことはありません。
そのため、BとCとの間で新たな土地使用に関する契約が締結されない限り、CはBからの建物撤去要求を拒むことはできないということになります。

【損害賠償請求問題は発生する】
以上のように、Aが生前贈与したことにより、結果としてCは建物撤去せざるを得ず、多大の損害を被ります。
その点については、AがCに土地を利用させる義務があったのに、それを不履行にして損害を与えたということで、CがAに対し損害賠償請求してくる可能性もありますので、この点も考慮された上で、生前贈与あるいは撤去要求をするかどうかを判断されるといいでしょう。
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17:05 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産相続における話合いのでの合意の破棄【Q&A №606】

2018/04/20


【質問の要旨】

死亡後の不動産賃料の扱いはどうなるのか

記載内容  家賃 死亡後 承継


【ご質問内容】

2年前に父が他界し、兄と妹の兄弟3人で相続の手続き中です。
3人の話合いの際、実家の2世帯住宅に家賃を払って住んでいた兄夫婦を当座の実家の管理者として住み続けてもらうことに一旦合意したものの、その後話し合いがこじれ、現在、家裁での家事調停中です。
そこで、当初の合意を破棄し、亡くなった父と兄との賃貸契約が継続しているとみなし、父の死後の家賃を遺産分割に反映させたいと考えているのですが、可能でしょうか。
また実家の隣の父が所有していた空地を兄の妻の会社の駐車場として父と賃貸契約を結んでいたのですか、そちらも父の死後も契約が継続しているとみなし、遺産分割に反映させることはできますでしょうか。

484

(John)



 ※敬称略とさせていただきます

【遺産の中に賃貸物件がある場合、その賃料は相続分で分割する】
今回の質問では、遺産の中には、亡父が、①兄に賃貸していた物件と②兄の妻の会社に賃貸していた物件の2つがあります。
遺産の中に賃貸物件がある場合、その賃貸物件から上がる収益(賃料)を誰が取得するのかについては最高裁の裁判例(リンク:最一判平成17年9月8日)があります。
同裁判例は、賃料をもらう権利は遺産分割とは別であること、遺産分割が完了するまでは、賃料は法定相続人がその法定相続分に応じて取得すると判断し、その後、裁判は全て、この判例に従って判断をしています。
そのため、あなたは今回の上記①及び②の賃料の3分の1をもらう権利がありました(この点は本ブログQ&A №593をご参照下さい)。
なお、念のために言えば、この賃料をもらう権利は、あなたが相続人になったことにより、亡父の賃貸人としての地位をあなたも3分の1の限度で引き継いだということから発生するものであり、他の相続人(例えば兄)の同意はなくとも、当然に請求ができます。

【兄に対する請求について】
まず、兄が居住している①の物件ですが、既に賃料は請求しないという《合意》が成立したのであれば、その合意は有効です。
したがって、今更、その合意を撤回することはできません。
ただ、合意の内容やその合意した時の状況に応じて、合意が無効だといえる場合があるかもしれませんが、質問にはそのようなことは記載されていません。
もし、そのような状況があるのであれば、一度、お近くの弁護士と法的対処が可能かどうかを相談されるといいでしょう。
ただ、兄のする管理の手間と賃料とを比較して、賃料の方が多額でバランスが取れないということであれば、あなたとしては《賃料の免除》という大幅な譲歩をしているので、その点を考慮して、兄は遺産分割の取り分を少なくするべきだと主張するしかないでしょう。

【駐車場の賃料は、遺産分割合意までは請求できる】
前記②の駐車場の賃料については、父死亡後の賃料の3分の1を請求されるといいでしょう。
この請求は遺産分割とは全く別ですので、分割の合意ができなくとも請求可能です。
なお、念のために言えば、遺産分割の合意ができ、その駐車場を相続する人が決定した段階から、その人が単独で賃料を取得することになります。
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17:12 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

生前の貸金を返済したが相続に影響する?【Q&A №604】

2018/03/22


【質問の要旨】

車の修理代を援助してもらい、返したが、特別受益になるのか

記載内容  返済 ローン 自動車


【ご質問内容】

 亡くなった母から生前一時的に援助を受けました。
 経緯は10年前交通事故に合い車を修理しなくてはならず急きょ修理代を借りることになりました。
 しかしローンを組み中古車を購入することになり借りた一時金は母に返しました。
 借りていた期間は2~3カ月です。
 現在調停中で他の相続人の弁護士から特別受益との指摘を受けております。
 返金した証明、購入した中古車の登録証、ローン返済の書類証明の提出を要求されておりますがその中古車は既に手放しました。
 書類等はありません。
 以上の要求について証明、書類提出できなければ特別受益に値するといわれました。
 どのように対応したら宜しいのでしょうか?

604

(パキラ)



 ※敬称略とさせていただきます

【借りたお金の性格は貸金であるので、特別受益にはならない】
 まず、あなたがお母さんから借りたお金の性格が問題になります。
 あなたが母から贈与を受けたのなら特別受益になります。
 しかし、あなたが主張されているように母からの借り入れというなら、母はあなたに対して貸金債権を有することになります。

【貸金での問題点】
 貸金だとした場合には、あなたが母に返済をしたかが問題になります。
 もし、貸金の返済を証明できなければ、貸金債権として母の遺産になります。
 結局、貸金の場合には特別受益にはなりませんが、返済が証明できなければ、母のあなたに対する貸金債権は存続し、母の死亡時には「貸金返還請求権」という債権として遺産になります。
 贈与や借り入れのどちらにせよ、あなたが貸金の返済を証明できなければ、いずれの場合においても母の遺産として計算されることになります。

【返済の証明はどうするのか?】
 問題は返済を証明できるかどうかです。
 あなたが、返済時に、母から領収書をもらっていたなら、それを証拠に出せば返済を証明できます。
 領収書がないのなら、次のような方策を考えるといいでしょう。
 もし、あなたがお母さんの口座に送金して返済しているのなら、お母さんの預貯金口座の取引履歴を確認して返金を証明できる可能性があります。
 もし、手渡しで返金したというのなら、受け取った母が、返金分を自分の手元にはおかず、預貯金口座に入金した可能性がないかどうか、母の取引履歴で確認するといいでしょう。
 その場合、あなたの預貯金口座から引き出して返済したのだというのなら、あなたの預貯金口座の履歴も取り寄せするといいでしょう。
 あなたの口座から返金分が払い戻しされ、その一方で近接した時期に母の口座に返金額に相当する金銭が入金されているのであれば、返金が立証できる可能性が高いです。
 ただ、取引履歴は10年間程度しか取り寄せできません。
 貸金が約10年前のようですので、迅速に取引履歴の入手の手配をされるといいでしょう。

【返済が証明できない場合】
 貸金の返済を証明する責任はあなた側にあります。
 もし、あなたが返済を証明できないのであれば、借金は返済されていないということなり、母のあなたに対する貸金請求権が遺産になります。
 この場合、あなたは他の相続人に対して、その相続分に応じた返金をする必要があります。

【中古車を買ったことは返済の証明にはならない】
 あなたとしては、修理をせず、中古車の買入をされたとのことです。
 しかし、修理をしなかった、あるいは中古車を買入れたことは、借金の返済の証明としては極めて弱いです。
 修理をしなかったということが借金に返済とつながるというのも、更に中古車を買ったから借金を返済したということも、それだけでは、返済の証明にはならないでしょう。
大澤龍司法律事務所
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14:15 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

預金口座の取引履歴を開示したい【Q&A №602】

2018/02/20


【質問の要旨】

祖母が開設した娘名義の口座の取引内容を確認することはできるか?

記載内容  離婚 借金 取り引き内容


【ご質問内容】

 離婚をして10年以上経ちます。娘が1人います。
 昨年、娘の父親が亡くなりました。元夫は母親と会社を経営してました。
 元夫の母からは借金しかなく娘には何も渡すものは無いと言われました。
 今まで父親からは養育費として少しは頂いてたので祖母は19歳まで生活費を渡すと言ってます。
 先日、祖母が生活費とは別に少しづつ貯金をしてあげるからと娘の銀行口座の開設に行きました。通帳と印鑑は祖母が持ってます。しかし周りからはその口座に遺産関係が入るからだと言われました。もしそうだとしたらどうなるのでしょうか?
 通帳、印鑑が無くても娘は口座の取り引き内容は閲覧できるのでしょうか?
 私は全く関わりたく無いのですが娘が大学に行きたいと言ってるので学費だけでもと思っています。


(aloha)



 ※敬称略とさせていただきます

【元夫の相続人は娘】
① 元夫の相続人は、元夫があなたとの離婚後に再婚しておれば、現在の配偶者と元夫の子(あなたの娘。もし、他に子がいればその子も相続人になります)。
② 結婚してもおらず、他に子供がいないのであれば、娘のみが相続人になります。
なお、上記①及び②のいずれの場合でも、元夫の母親やあなた自身は相続人ではありません。

【相続するということは借金も引き継ぐということ】
 相続するということは、元夫の財産も借金などの負債もすべて引き継ぐということです。
 なお、相続人である娘が未成年であれば、親権者であるあなたが娘の代理人として相続手続をすることになります。

【元夫の遺産や借金については調査をすべき】
 元夫の母親の話では、元夫には借金しかなく、娘に渡すものはないとのことです。
 もし、元夫の母親の話が正しいとすれば、娘は元夫の借金を相続してしまうことになります。
 又、ひょっとすると財産があるかもしれません。
 今後の娘の行動を考えるには、元夫に借金があるのかどうか、又、財産があるのかどうかを調査する必要があります。
 調査の結果、借金が多ければ相続放棄の手続きをし。借金もあるが財産もあるというのであれば、双方を比較して財産が多いと判断すれば相続人として財産を取得する手続きをすることになります。
 いずれにせよ、亡夫の財産調査は必要不可欠です。

【相続放棄するなら3ケ月以内に】
 相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申し立てする必要があり、3か月の期限内に調査が終わりそうにないなら、放棄をする期間を延長(これを熟慮期間の伸長といいます)する必要があります。

【印鑑を預けてはいけない】
 祖母に娘の口座を作ってもらうために印鑑を預けたということですが、もし実印を預け、印鑑証明書を渡したというのであれば、それは極めて危険な行為です。
 娘の実印と印鑑証明書があれば、遺産分割協議書が勝手に作成されたり、亡夫の遺産である預貯金が勝手に解約されるかもしれません。
 娘さんが未成年のようなので、親権者であり、法定代理人であるあなたが娘さんの口座を作ることができます。
 もし娘の口座を作るので、あればあなたがその手続きをし、口座を祖母に連絡すればよく、印鑑まで預ける必要はありません。

【遺産が入るかも??】
 遺産を渡す気があるのなら、当然、祖母は、亡夫の遺産は借金だけというような話もしないはずです。
 もし、あなたが渡した印鑑が実印であり、かつ印鑑証明書なども渡したのであれば、祖母としては銀行等で亡夫の預貯金を解約取得する手続きができる場合があります(法定相続人である娘のもらうべき遺産を元夫の母が勝手に引き出すという最悪のケースも想定されます)。
 あなたとしては、そちらを心配するべきでしょう。
 もう、遅いかもしれませんが、預けている娘の印鑑などもすぐに取り返した方がいいでしょう。

【まず、するべきことは遺産調査と印鑑の回収】
 あなたが娘の学費をなんとかしたいというのであれば、亡夫の預貯金など、遺産の調査をするべきです。
 娘さんは相続人ですので、元夫の預貯金の取引履歴を取り寄せすることは可能です
 亡夫の預貯金などは、娘が亡夫の子であることを証明する戸籍や実印などがあれば、過去の取引内容を含めて、調査が可能です。

(調査方法についてはリンク参照)
《過去の参考ブログ:相続放棄 借金の調べ方 預貯金等、遺産の調査


(弁護士 岡井理紗)
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14:48 遺産の調査・発見 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

後妻による定期預金解約について【Q&A №600】

2018/02/19


【質問の要旨】

口座名義人の委任状があれば定期預金の中途解約はできるのか?

記載内容  定期預金解約 解約伝票 価格賠償


【ご質問内容】

質問①

 定期預金の中途解約についてご相談いたします。
 よろしくお願い致します。概略を記します。

 昨年、父が他界し相続が発生しました。相続人は4名(後妻+先妻の子3名)です。
 父は6年間ほど要介護度5(寝返りできない、痰の吸引が2時間毎に必要)で介護は後妻さんがしていました。後妻さんは定期預金(1,500万円)の中途解約を父の了解を得て行ったと言っています。
 銀行に口座名義人確認の方法を尋ねましたらキャッシュカードと暗証番号との説明でした。
 解約伝票の署名は口座名義人(父)の筆跡のようであり、預金の使途を後妻さんに聞いたら適宜使用と答えました。

 同銀行のお客様相談センターに問い合わせたころ支店の対応に任せているとの事でした。
 同銀行他支店に定期預金の中途解約について尋ねたら、口座名義人の委任状があっても解約は認めない、口座名義人が窓口に来れない場合は、何かしら他の方法で確認をとる、又は相続人全員の了承をとるとの事でした。銀行のダブルスタンダードといえる対応に対しどのように考え行動したらよいのでしょうか。ご教示お願い致します。

質問②

 相続で話し合いの最中なのですが、相手方が遺留分対象のマンションを売却しています。
 遺産額も決まらないのに相手方弁護士は、価格賠償を主張しています。
 どのような対応を考えたらいいのでしょうか?(マンションの仮差押えは、供託金の用意ができません。)



(雪男)



 ※敬称略とさせていただきます

質問①定期預金の解約の件と質問②マンションの売却の件の2件の質問をいただいていますので、2件まとめて回答いたします。

【質問①について…当該解約時の状況を確認するべき】
 被相続人の定期預金が後妻さんによって無断で解約されたのであれば、後妻の不法行為(ないし不当利得)ということになり、あなたが父の相続人として、返還請求をすることができます。
 無断であるかどうかの判断資料としては、誰が窓口で手続きをしたのかを確認する必要があると思われます。

【引き出しを勝手にしたかどうかの判断】
 銀行は、口座名義人の委任状があっても解約は認めず、口座名義人が窓口に来られない場合はほかの方法で意思確認するという対応だったようです。
 さて、上記銀行の対応と解約伝票の筆跡からすれば、父が書いた解約伝票を後妻が窓口に持っていき、後妻がキャッシュカードを持参し、又、暗証番号も答えたことから、銀行としては本人の意思を確認できたとして解約したと理解できます。
 銀行の対応に若干、疑問があるようにも思えるものの、父が委任状の意味を理解して署名捺印したのであれば、後妻が父の意思に反して勝手に解約したとは言えませんが、反面、父が6年程、要介護5の状態(身体的な面か、意思能力にも問題があったのかが明らかではありませんが)であれば、場合によれば、委任状を記載していても父には意思能力(判断能力)がなく、解約は不法行為に該当する可能性もあります。
 いずれにせよ、預金の引き出し時点の父の状態をカルテなどで確認する必要があります。

【父の意思能力がない場合】
 もし、父に意思能力がないというのであれば、後妻が勝手に引き出したものと主張できるでしょう。
 ただ、このような場合でも、後妻が解約したお金を父の介護のために使ったことを立証すれば、その分については後妻が取得したものとはいえず、返還を求めることはできないでしょう。

【父の意思で解約していたとしても、後妻が贈与を受けていれば特別受益になる】
 仮に父の意思で解約がなされたことが明らかになったとしても、それを後妻に贈与したのであれば、今度は特別受益の問題になります。
 特別受益だとすれば、1500万円を父の遺産に持ち戻して遺産分割をすることになりますので、あなたが取得する遺産額が増えます。

【質問②について…売却される前にマンションに登記をする】
 以下は、あなたがすでに遺留分減殺請求をしているとの前提でお答えいたします。
 遺留分減殺請求をした時点で、あなたと相手方とはマンションを共有する関係になります。
 しかし、第三者から見れば、この共有関係は明らかではありません。
 そのため、第三者に対して、あなたが遺留分権者としてマンションの共有持分権を持っていることを主張するためには、あなたが遺留分で所有権を取得したことの登記が必要です。
 この登記があれば、あなたは対外的にもマンションの共有者の一人ということになり、相手方はマンション(の全部)を勝手に売却できなくなります。
 現在、まだ、あなたへの遺留分登記がなされておらず、既に買受人である第三者に対する所有権移転登記が完了しているのであれば、あなたはこの第三者に所有権取得を主張することができません。
 売買契約はしたが、買受人の移転登記前であれば、早急に買受人に登記が移転されないように《仮処分》という手続きをする必要があります。
 既に買受人が移転登記を完了しているのであれば、あなたとしては相手方に遺留分相当額の価格賠償を求めることしかできず、相手方弁護士と交渉するしかないと思われます。

(弁護士 岡井理紗)
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