相続判例散策 : 記事一覧
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★★【相続判例散策】預金債権は遺産分割の対象になる(最高裁平成28年12月19日判決)

2017/02/03
・・最高裁が従来と全く異なる判例を出しました・・

預金債権は遺産分割の対象になる

最高裁平成28年12月19日判決


【ケース】

相続人のうちの一人が生前に被相続人から5500万円の贈与を受けていたというケースで、生前贈与を受けていない法定相続人が、被相続人の預貯金約3800万円を生前贈与などと合わせて遺産分割するよう求めた事例。

1審及び2審は、従来の最高裁判例に従い、「預金は相続によって当然に分割されるので、遺産分割の対象外である」とし、預貯金の遺産分割を認めない判断を下していた。


【裁判所の判断の概略】

最高裁判所は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判断しました。

その理由は以下のとおりです。

本判決は、まず、預貯金一般の性質を説明しています。

「共同相続人間の実質的公平を図るため、一般的には、遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましく、また、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する。

預貯金は、決済手段としての性格を強めてきており、また、預貯金債権の存否及びその額が争われる事態は多くなく、預貯金債権の価値が低下することはないことから、現金との差をそれほど意識させない財産であると受け止められているといえる。」

また、それぞれの預金の特殊性を踏まえて、以下のような趣旨の理由づけも行っています。

「普通預金契約及び通常貯金契約について、預貯金債権が相続開始時の残高 に基づいて当然に相続分に応じて分割され、その後口座に入金が行われるたびにそれぞれの相続人の預貯金債権額が入金に応じて変わるとなると計算が煩雑になる。

定期貯金債権については、定期貯金債権が相続により分割されると解すると、それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる上、預入期間内に貯金を払い戻す場合には一部払戻の取り扱いをしないという制限があるため、共同相続人は共同して全額の払い戻しを求めざるを得ず、相続により分割されると解する意義は乏しい。」

 
【弁護士のコメント】

1.従来の判例の紹介と本判決の持つ意味

1)最高裁判事全員が本判決に賛成した。

最高裁判所は、貯金が分割債権かが問題となった平成16年4月20日の判決(判時1859号61頁)で相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと言っていますが、本判決は、預貯金債権について従来の判例と全く逆の結論をしたものであり、重大な判例変更です(なお、本判決は大法廷で審理されましたが、関与した裁判官15名全員が、本判決を支持しており、反対意見はありませんでした。)

2)法律的性質からみると、以前の判決は正しいが・・・

従来の最高裁判決は《預貯金債権は金銭債権であり、《法律上》は相続と同時に各相続人にその法定相続分に応じて分割取得される》と考えました。

たしかに金銭債権はそのような性質をもっており、法律的には従来の最高裁判例は間違いではありません。

参考までに言えば、不動産の価額は法定相続人の立場により異なってきます。

その不動産を取得したい側は低く言いますし、代償金をもらう側は高く評価します。

又、評価がまとまらない場合、預貯金なら計算で取得額が計算でき、分配も可能ですが、不動産は簡単に分割することができません。

ケーキなら簡単に分けることができますが、不動産は現物では簡単には分割できません。

不動産については共有にするということも考えられますが、これは問題の先伸ばしであり、最終的な解決にはなりません。

このように不動産は分割という困難な問題が生じますが、預貯金にはそのような問題がなく、分割が容易です。

その意味では、従来の最高裁判決は、預貯金の法律的性質に着目したものであり、その限度では《正しい判決》です。

3)実務では問題が生じた。

ただ、遺産分割訴訟で、当事者の一方が預貯金債権は遺産分割の対象にしないということになると、不動産等しか扱えず、調停が円滑にいかない可能性があります。

又、遺産分割調停が成立しない場合には、家庭裁判所の裁判官(審判官)が遺産分割審判(要するに判決のようなものです)をしますが、その場合には双方の当事者の同意があっても、不動産等しか分割の対象にできず、預貯金を増減して調整のために使うということは全く不可能でした。

本判決により、遺産分割調停では当事者の同意がなくとも、調停の対象とされ、又、遺産分割審判でも預貯金が対象ですので、ある相続人には不動産を、他の相続人には預貯金を与えるという柔軟な解決が可能になります。

調停や審判にかかわる実務家として、歓迎すべき点が多い判決です。

以下、論点を絞って、当事務所弁護士の本判決に対するコメントを記載しておきます。

2.本判決に対するコメント

1)預貯金債権は遺産分割の対象になる

これまで述べてきたように、従来の最高裁判決では、預貯金等の可分債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと判断されていました。

その上で、実務上では、当事者間で衡平妥当な解決を図るため、預金債権についても遺産分割の対象とする合意がある場合には、遺産分割の対象とする扱いがなされていました。

そして今回、上記のとおり、預貯金債権は相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になるという
判断が最高裁でなされました。

これにより、今後は相続人の同意の有無にかかわらず、預貯金は遺産分割の対象となるということになります。
その結果、遺産調停では預貯金が当然、分割されるべき遺産の内容(対象)となります。

同様に前記のように審判でも預貯金を考慮して審判ができることになります。

2)他の可分債権についても遺産分割の対象になるのか?

本判決で問題にされたのは預貯金債権ですので、預貯金以外の可分債権(貸金債権等)についても、当然に遺産分割の対象になるのかどうかは明らかではありません。

本判決に際して述べられた各裁判官の補足意見を見ても、この結論は預貯金債権について共同相続が発生した場合に限るという意見や、額面額をもって実価(評価額)とみることができない可分債権については、合意がない限り遺産分割の対象とならないという意見など、様々です。

ただ、本判決の中で、遺産分割において被相続人の財産をできる限り幅広く対象とし、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請があると判断されていますので、他の可分債権についても遺産分割の対象になると考えてよいのではないかという考えもありえます。

しかし、遺産の範囲に入れるということは遺産審判になればそれについても判断をしなければならないということでもあります。
例えば、遺産に貸金債権があった場合、その貸金額が決まっている場合を考えてみましょう。

貸金債権は典型的には金銭債権ですが、回収が困難であるという債権の場合、例えば1000万円の債権額であっても実質的な値打ちが0円の場合もあります。

このような場合には、遺産分割の対象とはならないというべきでしょう。

なぜなら、このような貸金も分割しなければならないとすると、その債権の評価をめぐって争いが生じる可能性があるからです。

本判決が、おそらく調停が成立しやすくするためや審判を容易にするためという目的に出たものであるとすると、金銭債権でもその実質的な額に争いがあるものも遺産分割の対象とすることは新たな紛争の種を持ち込むということになります。

本判決が、調停や審判の制度設計にかかわる枠組みを作る意図でなされたものであるとすれば、金銭債権であっても回収可能性に争いがあるような債権は遺産分割の対象外ということになりそうです。

3)取引経過の開示請求について影響はあるのか?

共同相続人の一人が単独で預貯金等の取引経過の開示を求めることは可能であることについては最高裁の平成21年1月22日(判タ1290号132頁)の判例があります。

そこで、本判決で預金債権が相続分に応じて当然に分割されないと判断されたことにより、単独での取引経過の開示請求の可否に影響するのではないかという懸念もあります。

取引経過の開示に関する上記判例は、「預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる」と判断しています。

このように、預金債権の帰属とは別に、共同相続人各自が「預金契約上の地位」を有しており、その地位に基づいて取引経過の開示を単独で求めることができるという理論構成を取る限り、今回の判例変更にもかかわらず、法定相続人の一人からの履歴照会には応じなければならないとの点は維持されるべきものと考えていいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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★【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?(大阪地裁 平成27年10月2日判決)

2016/12/07
戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?

大阪地判平成27年10月2日(平成25年(行ウ)256号)


【ケース】

厚生年金保険の被保険者であった被相続人と内縁関係にあったと主張する女性が老齢厚生年金及び老齢基礎年金の支給を請求したところ、被相続人と戸籍上の妻との婚姻関係が形骸化しているとは認められないとして支給しない旨の決定をされたため、その決定の取り消しを求めた事案。


【裁判所の判断の概略】

 厚生年金保険法の目的等に鑑み、同法上の「配偶者」には、戸籍上の配偶者のみならず、事実婚関係にある者も含まれるものとしている(同法3条2項)。
 戸籍上の配偶者を有する被保険者等が重ねて他の者と内縁関係にあるという、いわゆる重婚的内縁関係にある場合にあっては、原則として、戸籍上の配偶者が「配偶者」に当たるというべきである。
しかし、被保険者等が戸籍上の配偶者を有する場合であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、戸籍上の配偶者はもはや「配偶者」に該当せず、重婚的内縁関係にある者が「配偶者」に当たる。
 実体を失っており形骸化しているかどうかの判断基準としては、被保険者等と戸籍上の配偶者との婚姻関係が上記のような事実上の離婚状態にあるか否かについては、別居の経緯、別居期間、婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無、別居後における経済的依存の状況、別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況、重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮する必要がある。
 本件では、被相続人と戸籍上の配偶者の夫婦関係は別居前から芳しくなく、別居は一度も解消されないまま約6年10カ月という比較的長期間に及んでいること、婚姻関係の維持ないし修復するための努力を一切行っていないこと、別居後経済的依存関係は認められないこと、音信及び訪問は財産関係の清算を目的とするものがほとんどで、被相続人の死亡当時にはほぼ断絶状態であったこと、他方内縁の妻と約6年7カ月にわたって事実上夫婦としての共同生活を送っており、その関係も相当程度安定かつ固定していた。
 そのため、被相続人と戸籍上の配偶者とは事実上の離婚状態にあったと認められ、内縁の妻に対する老齢厚生年金等の不支給決定等は違法である。


【弁護士のコメント】

 戸籍上の配偶者と内縁の配偶者が存在する場合に、遺族厚生年金を受給できる「配偶者」とはどちらのことを指すのかが問題になります。
 原則として戸籍上の配偶者が受給することになるのだろうということは想像がつくと思いますが、この裁判例は、内縁の配偶者が受給できることができる場合も例外としてあるということを明らかにしました。
 その判断は、上記下線部で示したような様々な事情を総合的に考慮してなされ、戸籍上の配偶者との婚姻関係が形骸化していて、事実上の離婚状態にあるといえるような状態だといえる場合にのみ、内縁の配偶者が受給できるということになるのです。
 単に戸籍上の配偶者と別居して、内縁の配偶者と暮らしているというだけで内縁の配偶者が受給者になるという単純な話ではなく、それぞれの具体的な事情を考慮して判断されますので、注意が必要です。
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★【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

2016/12/02
兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか

(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

【ケース】

被相続人は離婚し、2人の子とは20年以上疎遠になっていたが、自身の兄弟とは比較的密に交流があったため、亡くなったという連絡を受けた兄弟が喪主として葬儀をし、費用を支払ったという事案において、相続人に葬儀費用や埋葬等の行為にかかる費用を請求できるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は以下のような内容の判断をしました。

亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、同儀式を準備し、手配等して挙行した者が負担し、埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当である。
なぜならば、追悼儀式を行うか否か、同儀式を行うにしても、同儀式の規模をどの程度にし、どれだけの費用をかけるかについては、もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し、実施するものであるから、同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であるからである。
他方、遺骸、遺骨の埋葬等の行為に要する費用については、亡くなった者の祭祀を主宰すべき者が負担すべきものであるが、亡くなった者には二人の子があるものの、20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況である一方(なお、長男は葬儀にも出席しなかった。)、兄弟らとの間に比較的密な交流があった事情が認められることも考慮すると、亡くなった者の祭祀を主宰すべき者を子供らのいずれかとすることが慣習上明白であると断ずることはできない。


【弁護士のコメント】

葬儀費用は相続債務ではなく、喪主を務めた者が費用を負担すべきであると考えられています。
もっとも、法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、その他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いたうえで、他の相続人に分担してもらう形で遺産分割の中で解決することが実務上、多いです。
ただ、法定相続人でない人が喪主になり、葬儀を行った上葬儀費用を支払ったという場合には遺産分割の中で解決することもできませんので、話は別になります。
この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪には請求できない》という結論になっています。
しかし、この裁判例の事案は、20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況であり、また甥姪のうち一人は葬儀にすら出席していないという事情がありますので、この事情が違えば、別の判断がなされる可能性もあります。
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★★【相続判例散策】親族相盗例が適用されないケース(最高裁平成24年10月9日決定)

2016/10/06
親族である後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族であっても刑罰に問われます!
(親族相盗例が適用されません!)


(最高裁平成24年10月9日決定)

【ケース】

家庭裁判所から選任された成年後見人である成年被後見人の養父が、成年被後見人の財産を横領した事案。


【裁判所の判断】

裁判所はこのケースについて、次のような判断をしました。

「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから、成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである。」

【弁護士のコメント】

 刑法には、「親族相盗例」と呼ばれる規定があります(刑法244条)。
 この規定は、窃盗等だけではなく詐欺や横領などにも準用されており、これらの罪を親族間で起こした場合には、特例として刑を免除し、または告訴がなければ公訴を提起することができないとするものです。
 後見人が被後見人の親族であるという場合に、その後見人が被後見人の財産を横領した場合にも、この規定が適用されるように思えます。
 しかし、裁判所は、家庭裁判所の選任・監督のもとに被後見人の財産を占有・管理する後見人が、被後見人の財産を横領した場合については、その後見人が被後見人と親族関係にあったとしても、親族相盗例は適用されないと判断しました
 これはつまり、家庭裁判所に選任されて成年後見人になった以上、親族であっても、公的立場から職務を遂行する義務(判例では「成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務」と説明されています)を負っているということです。
 なお、この判決より前に、未成年後見人に選任されていた未成年被後見人の祖母が、後見の事務として業務上預かり保管中の被後見人の口座から貯金を引き出して横領した事案について、以下のような判決があります。


(最高裁平成20年2月18日決定)

【ケース】

未成年後見人に選任されていた未成年被後見人の祖母が、後見の事務として業務上預かり保管中の被後見人の口座から貯金を引き出して横領した事案。


【裁判所の判断】

「刑法255条が準用する同法244条1項は、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき、その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず、その犯罪の成立を否定したものではない。
 一方、家庭裁判所から選任された未成年後見人は、未成年被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが(民法859条1項)、その権限の行使に当たっては、未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条、644条)、家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。また、家庭裁判所は、未成年後見人に不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは、職権でもこれを解任することができる(同法846条)。このように、民法上、未成年後見人は、未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく、等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。
そうすると、未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。」


【弁護士のコメント】

 この判決は、成年後見ではなく未成年後見のケースではありますが、親族相盗例制定の背景を説明した上で、後見の事務が公的性格であることを示し、後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族相盗例は適用されないと判断しているものです。
 あわせてご参照ください。
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★【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?(東京家審平成21年1月30日)

2016/09/07
毎月の送金が特別受益にあたるのか?

(東京家審平成21年1月30日)


【ケース】

平成4年から平成6年の間、被相続人から相続人の一人に対して一月に2万円から25万円の送金がなされていた事例で、相続人の一人への特別受益にあたるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は、以下のような内容の判断をしました。

遺産総額や被相続人の収入状況からすると、一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であると認められるが、これに満たないその余の送金は親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは認められないと思慮する。

一月に10万円未満の送金については、親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは直ちに認められないと思慮するが、その余の送金はいずれも一月に10万円以上の送金がなされており、返済されたと認められる証拠がないことからすると、これらの一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であり、いずれも特別受益と認められる。


【弁護士のコメント】

裁判所は、この事案については、月に10万円程度なら扶養義務の範囲での援助といえるが、それ以上の送金については、扶養義務の範囲を超えた「生計の基礎として役立つような財産上の給付」であると言えるので、特別受益になると判断したということです。

月に何万円程度が扶養義務の範囲といえるかどうかは、遺産総額や被相続人の収入状況によって変わりますので、月に10万円というのは固定額ではないことに注意が必要です。

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★【相続判例散策】被相続人以外の名義になっている財産を相続財産に含めることはできるのか?(東京高判平成21年4月16日)

2016/08/05
被相続人以外の名義になっている財産を相続財産に含めることはできるのか?

(東京高判平成21年4月16日)


【ケース】

被相続人の妻名義になっていた被相続人の財産について被相続人の相続財産に含めることなく相続税の申告をしていた事例で、被相続人の財産であるといえるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は、以下のとおり判断し、被相続人の財産であると認めた。

財産の帰属の判定において、一般的には、当該財産の名義が誰であるかは重要な一要素となりうるものではあるが、我が国においては、夫が自己の財産を、自己の扶養する妻名義の預金等の形態で保有することも珍しいことではないというのが公知の事実であるから、妻名義預金等の帰属の判定において、それが妻名義であることの一事をもって妻の所有であると断ずることはできず、諸般の事情を総合的に考慮してこれを決する必要がある。

被相続人以外の者の名義となっていた財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である。


被相続人の妻名義の預金等については、妻は被相続人名義の有価証券や預金も主導的な立場で管理、運用をしていたことが認められるところ夫婦間においては妻が夫の財産を管理、運用することがさほど不自然なことではないこと、被相続人は自分の死後の妻の生活について金銭面の心配をして自己に帰属する財産を妻名義にしておこうと考えたとしてもあながち不自然とはいいがたいこと、被相続人から妻への土地建物の生前贈与については贈与契約書を作成し税務署長に贈与税の申告書を提出していたのとは異なり預金等についてはそのような手続がとられていないことなどを考え併せると、妻が自ら管理、運用をしていた事実があったとしても、妻名義の預金等は被相続人の相続開始時にはなお、被相続人に帰属していた相続財産であったと認めるのが相当である。



【弁護士コメント】

上記裁判例のように被相続人の相続財産であると認める裁判例もありますが、事案によっては反対に、被相続人の相続財産であると認められない裁判例も存在します。

相続財産と判断されるか否かの判断は各事案によって異なりますので注意が必要です。
大澤龍司法律事務所
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【相続判例散策】預貯金等の金銭債権は相続開始後どのように扱われるのか?

2016/03/01
相続判例散策

預貯金等の金銭債権は相続開始後どのように扱われるのか?


【判例紹介】

損害賠償請求権という金銭債権について、最高裁判所の裁判例で次のようなものがあります。


【事件の概要】

立木の所有権の侵害を原因とする損害賠償請求事件で係争中に原告が死亡し、その妻及び三名の子が訴訟手続を引き継ぎました。

この場合に、この損害賠償請求権は相続により、誰にどのような形で相続されるかが問題となりました。

【判決の概要】

損害賠償請求権のような金銭請求をする債権について、「相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」と判断しました。

最一小判昭和29年4月8日 民集第8巻4号819頁)


【弁護士コメント】

預貯金を金融機関に預けていると、預金者は銀行に対して預貯金の払戻請求権を持つことになります。

この払戻請求権は金銭の請求を求めるものであり、金銭債権の一種になります。

上記最高裁判例は、損害賠償債権という金銭債権に関するものです。

この判例は、金銭債権は相続開始とともにそれぞれの相続人が独自に取得するということを言っています。

この判例があることから、仮に損害賠償請求権額が900万円であり、相続割合が同じ3人の相続人がいた場合、各相続人が300万円を相続することになり、また、他の相続人とは別個に(ということは他の相続人の同意を得ることなく、独自に)請求することができるということになります。

預貯金債権も金銭債権のため、相続開始時点で各法定相続人に分割して相続されます。

そのため、各相続人が独自に金融機関にその相続持ち分に応じた請求をすることができます。

この点を明確にした裁判例としては、預貯金債権について「預貯金は遺産分割を待つまでもなく、相続開始と同時に当然に分割されるのである」とした高等裁判所段階の決定があります(東京高決平成14年2月15日 家庭裁判月報54巻8号36頁)。

ただ、金融機関としては、遺言書があるかどうかなど全くわからない状態ですので、原則として一人の相続人からの払い戻しに応じることは少なく、代表相続人の指定の手続きを求めてくるのが通例であり、金融機関の立場からすればこのような扱いもやむを得ない面があります。

ただ、本来、法定相続分を取得しているのですから、各相続人としては訴訟で払い戻し請求が可能であり、その訴訟をすることについて他の相続人の同意は不要ですし、遺言書が出てきた等の特段の事情がないかぎり、法定相続分の支払いを命じる判決が出されます。

(関連ブログ未分割の財産について【Q&A №493再質問】参照)

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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【相続判例散策】遺産分割協議の不履行と契約解除

2016/02/08
【相続判例散策】

遺産分割協議で決まった義務を実行しないとき、分割協議を無効にできるか?

(東京高裁 昭和52年8月17日決定)



【結論:分割協議の無効ではなく、債務不履行で損害賠償をすることになる】

(最高裁判所 平成元年2月9日判決。
なお、東京高裁 昭和52年8月17日決定も同様の結論です)


【ケース】

遺産分割協議書で、相続人のうちの一人がお母さんの面倒を見るということになりました。

ところが、その相続人がその義務を実行しなかったため、他の相続人が母親の面倒を見るように求めました。

しかし、それでも母親の面倒をよく見なかったとき、他の相続人はその遺産分割協議を無効にできるでしょうか?


【裁判所の判断】

最高裁判所は、遺産分割協議の解除はできないと判断しました。

遺産分割協議はその性質上、遺産分割協議により終了しているため、債務不履行により解除できないと結論つけています。

遺産分割協議は多くの財産を多数の法定相続人に配分するものですので、
それが無効にすると、
相続人が遺産分割協議の結果もらった不動産を売却していたような場合はどうするのか、
あるいは相続人がもらった金を使い切ったようなときは・・・等の
非常にややこしい法律的な問題がいろいろと出てくることも配慮して、
遺産分割協議の無効を認めなかったものです。

ただ、お母さんは何もできないというのではなく、定められた義務を果たさない相続人に対して損害賠償できることになります。
大澤龍司法律事務所
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★【相続判例散策】被相続人の生前に解約された取引履歴の開示請求(東京高裁 平成23年8月3日)

2014/02/26
【被相続人の生前に解約された取引履歴は開示しなくてもよい】
(平成23年8月3日 東京高裁)

 被相続人の預金の履歴照会については、共同相続人全員の同意は不要であり、共同相続人の一人から照会でも、金融機関は開示しなければならないという最高裁判例が出ています(「【相続判例散策】平成21年1月22日 最高裁判例」)参照)。
 しかし、平成23年8月3日に東京高裁は、金融機関は《被相続人の生前に解約された》預金口座の取引履歴を開示すべき義務は負わないとする内容の判決をしました。
 同事件は、被相続人の生前に解約された口座の履歴開示を求めたものですが、
裁判所は
①被相続人の生前に解約された預金口座については、金融機関は、本来の預金者(被相続人。以下、預金者といいます)に対してであっても、いつまでも預金を開示する義務を負うわけではない。
②金融機関としては、解約後、預金者に遅滞なく、従前の取引経過及び解約の結果を報告するべき義務を負うに過ぎない。
③金融機関としては元の預金者に対しても開示義務はないのであるから、相続人に対して開示する必要はない。

と述べ、相続人の開示請求を認めませんでした。

 判決が法的な根拠とするのは、預金を預かるのは、委任契約や準委任契約と同様な面があるが、委任契約等では任務の終了した後、速やかに経過及び報告をすればよい(民法645条、656条)という規定があり、金融機関は解約時にその手配しており、なすべきことはしていたというものです。
 この理屈からいえば、共同相続人の一人どころか、全員の同意があっても、取引履歴の開示は不要という結論になります。
 この判例では金融機関の調査の手間が大変であることが強調されています。
 しかし、金融機関は預金者の多額の金銭を預かるのであり、その金銭の動きについての照会があれば、誠実に回答するべき義務があるというべきでしょう。

 又、判例は金融機関の調査の手間が大変ということをこの判決は述べていますが、預金者の全部が履歴の照会をするわけではありません。
 調査のために多額の費用がかかることも判決は述べていますが、金融機関であれば、当然、負担するべき費用だと思います。

 なお、この判例のケースでは、取引期間を特定せずに照会したものですが、現在の弁護士会照会の扱いでは原則5年間という期間限定で照会をしています。
 この東京高裁の判例は、当然のことながら、前記最高裁の判例を引用しながら議論を進めていますが、果たして、最高裁の判例の趣旨に合致するかどうか、極めて疑問だと思われます。
いずれにせよ、この東京高裁の判決については上告されていますので、今後、最高裁の判断が示されるものと思われます。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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★★【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)

2013/11/06
法定相続人の夫への贈与が特別受益として認められたケース
(昭和55年5月24日 福島家庭裁判所白河支部)

【事実関係】・・(事実関係はわかりやすくするために変更しています)
 被相続人甲が死亡し、その相続人はA及びBである。
 右遺産として、いずれも不動産(評価額は合計2150万円相当)である。
 なお、被相続人は、生前にAの夫であるKに不動産(1350万円相当)を贈与した。
 Bは、Kへの生前贈与はAの特別受益であると主張した。
 このような主張は認められるか。

【参考条文】
 民法第903条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

【裁判所の判断】
 問題の贈与は、相続人であるAに対するものではなく、その夫であるKに対してなされているのであるから、形式的に見る限り特別受益にはあたらない。
 しかし、通常配偶者の一方に贈与がなされれば、他の配偶者もこれにより多かれ少なかれ利益を受けるのであり、場合によっては、直接の贈与を受けたのと異ならないこともありうる。
 遺産分割にあたっては、当事者の実質的な公平を図ることが重要であり、形式的に贈与の当事者でないという理由で、相続人のうちある者が受けている利益を無視して遺産の分割を行うことは、相続人間の実質的な公平を害する。
 そのため、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であってもこれを相続人の特別受益とみて、遺産の分割をすべきである。
 本件では
① 本件贈与はA夫婦が分家をする際に、その生計の資本としてAの父親である被相続人からなされたものである。
② 贈与された土地のうち大部分を占める農地についてみると、これを利用するのは農業に従事しているAである。
③ 贈与は被相続人の農業を手伝ってくれたことに対する謝礼の趣旨も含まれていると認められるが、農業を手伝ったのはAであること
などの事情からすると、被相続人が贈与した趣旨はAに利益を与えることに主眼があつた。
④ 登記簿上Kの名義にしたのは、Aが夫であるKをたてたほうがよいとの配慮からしたものと推測され、本件贈与は直接Aになされたのと実質的には異ならない。
⑤ 又、その評価も、遺産の総額が2150万円であるのに対し、贈与財産の額は1350万円であり、両者の総計額の38%にもなることを考慮すると、右贈与によりAの受ける利益を無視して遺産分割をすることは、相続人間の公平に反するというべきであり、本件贈与はAに対する特別受益にあたると解するのが相当である。

【弁護士コメント】特別受益が問題になるのは、原則として共同相続人が贈与を受けた場合である。
 従って、相続人の子供や配偶者が贈与を受けた場合には、特別受益にはならない。
 しかし、
① 遺産と比較して贈与の金額(本件では不動産であるが、その価額)が遺産額に比して多額であったこと(贈与額は繰り戻し前の遺産額の約62%となる)
② 被相続人意思が、本来の法定相続人に贈与する意思を有していたと考えられること
③ 更に配偶者名義にしたのは《夫である配偶者を立てた方がよい》との趣旨に出たものであること
を考慮して、この判例では配偶者(夫K)に対する贈与を、法定相続人である妻Aに対する特別受益と判断した。
本件事案としては適切な判断だと思われる。
 被相続人が孫に生前贈与した場合に、それが法定相続人のである子供の特別受益になるかどうかが問題になる。
 そのような場合に参考になる判例である。
 しかし、原則は特別受益にならないということは理解しておく必要があるだろう。
 そのうえで、金額の多寡が多すぎ、かつ贈与した経過をみれば、これは法定相続人に対する贈与と同視できるという特段の事情があれば、特別受益として認められる場合があると考えておくといいだろう。
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【相続判例散策】相続欠格と債務の承継(仙台地裁判決 昭和63年5月31日)

2013/10/30
 
相続債権者から債務請求をされた場合に、相続欠格を理由に拒むことが許されるか?
(昭和63年5月31日 仙台地裁判決)

記載内容

民法891条 相続欠格 殺害 相続債務

【事案の概要】
・・・理解しやすくするために、内容を単純化しています。

 被相続人Aが死亡した。
 これは、兄弟B及びCが共謀して、Aを殺害したものである。
 相続人はBとC、D、E、Fの5名であった。
 債権者甲は被相続人Aに対する貸金債権を有していた。
 貸金債務は相続人である兄弟BとCにも相続(承継)される。
 そのため、債権者甲は相続人である兄弟を被告として貸金返還訴訟を起こした。
 裁判で、相続人であるBとCは、《自分達は民法891条1号の相続欠格者であるから、相続人ではなく、債務支払義務はない》と主張した。
 さて、このような主張は認められるか。

【参照条文】
第891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

【判決の概略】
 BとCは、Aを殺害したので、Aの相続については相続欠格者であるというが、BとCにはこのような主張をする資格(主張適格)がない。
 民法891条の相続欠格の条文は、同条に記載した者及びその承継人が相続権又はこれに基づく権利の主張をするのを封ずるためのものである。
 したがって、相続欠格の主張をなしうるのは、相続人であるBとCが相続権を主張する場合に、これを否定する立場の者が主張できるのである。
 相続欠格の制度は、本件のように、右非行をした者自身もしくはその承継人が相続した義務を免れるために利用しうる制度ではない。
 このことは、例えば詐欺又は強迫によって包括遺贈をさせた法定相続人が、遺言者の負っていた債務の履行を求められた場合に、自分は相続欠格者であると主張する事例を考えれば、容易に理解可能であろう。
 なお、本件の特殊事情として、Bらは、Aの積極財産につき、同人を被相続人、Bを相続人とする相続登記手続をしていることをも考えれば、BとCの主張は不当なことが明らかであろう。

【弁護士コメント】
 BとCは、被相続人Aを殺害している。
 但し、刑事判決では執行猶予がついたという。
 通常、殺人事件に執行猶予がつくのは異例中の異例であるから、BとCにはよほど有利な事情があったのであろう。
 それはさておき、本件ではBとCは、Aの遺産(積極財産)は相続しながら、Aの相続債務を請求されると、自分はAを殺害しましたから、相続欠格者であって、債務は支払いをしませんというのである。
 もらうべき相続財産はもらうが、相続債務(借金)は支払いをしないというのである。
 しかもその理由として、私たちはAを殺害したからというのである。
 誠に身勝手な主張というべきだろう。
 相続欠格は、非行した者に相続する権利を与えないという制度であって、債務の履行を免れるための制度ではないから、判決は極めて妥当というべきであろう。


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★【相続判例散策】履歴照会に全員の同意不要(最高裁 平成21年1月22日)

2009/10/14
相続人の全員の同意がなくとも、遺産である預金の取引履歴調査が可能に!
平成21年1月22日の最高裁判例について

【最高裁判例の内容】
 1月22日、最高裁は、相続人の一人が遺産の内容を調査するために預金の取引履歴を調査する際には、「他の相続人を合わせた全員の同意」は必要ないという内容の判決を出しました。
 これまでは、平成17年5月20日に最高裁は遺産である預金の調査をするには「全員の同意が必要」であるとの判断をしていたので、判断を変更したことになります。

預金の出し入れの内容が教えられませんという金融機関
 銀行などの金融機関は被相続人(遺産を残した人)の死亡した時点の預金残高は教えてくれました。しかし、金融機関の中には、預金の入出金の状況(取引履歴)については、相続人全員の同意がない限り、教えないところがありました。

今でも拒否する金融機関がある
 このような最高裁判例にもかかわらず、現在でも、全員の同意が必要だとする金融機関がありました。履歴の開示はしなくともよいという判例があるからというのですが、その判例とは(既に変更された)平成17年5月20日に最高裁判例のことでした。
 このケースは、新しい判例が出たことを説明して、履歴の開示を取り付けました。

支店が違えば、対応が異なることがある
 同じ銀行でも、ある支店では同意が不要としているのに、違う支店では全員の同意が必要だと言われることもあります。
 担当者の勉強不足が理由ですが、銀行としては全支店に扱いの変更を知らせるべきものでしょう。

中には高い料金を請求するところもある
 最近の傾向としては、銀行が高い料金を請求してくるということです。
 ある銀行では1口座1ケ月あたり金200円という、極めて高い料金を請求した例があります。多くの口座を調査する場合には、費用が多額になるという場合があるということを考慮しておく必要があるでしょう。
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