実例で見る相続問題 : 記事一覧
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【コラム】花押を押印の代わりにした遺言書は有効か?

2016/06/29
遺言書は、署名押印のあることが有効要件とされています。

「押印」というのは、ご存知の通り印鑑を使ってはんこを押すということです。

ところで、みなさんは「花押」をご存知でしょうか。

花押
「花押」は、書判(かきはん)とも呼ばれ、もともとは自署の代わりとして発生しましたが、そのうち実名の下に書かれるようになりました。

つまり、印鑑ではなく、「筆で書く」という点では署名に近いものといえます。

時代劇で戦国武将の手紙が出てきたときに目にされたことがある方もいるでしょう。


その花押が、遺言書に必要な「押印」の代わりになるかどうかが裁判で争われ、最高裁は、「花押は押印とは認められない」という判断を示しました(最高裁平成28年6月3日)。

民法968条1項は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」として、遺言書には、自筆の署名に加えて押印が必要だと定めています。

裁判で争われたのは、押印の代わりに花押が使われた遺言書(不動産などの財産を次男に相続させるという内容であった)が有効かどうかという点です。

最高裁は、押印まで必要とする趣旨について、「遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解される」とした上で、「我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。」と判断し、花押を押印と認めず、この遺言書は無効としました。

判決文を読んで、「はんこなら100円均一で買ってきたものでも有効で、由緒正しき花押は無効?花押のほうが遺言者の同一性も、文書に書いたことが真意であるということも明らかなんじゃないの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。

このように「印鑑を押す」という形にこだわるのは、日本では大事な書類には必ずと言っていいほどはんこを押すため、はんこを押すということは《書面に書いた内容に責任を持つ》という強い意志の表れとみなされ、下書き段階のものと区別される(完成が担保される)からだと思われます。

私も小さい頃から親に「簡単にはんこを押すな」と教えられ、小さいながらに「はんこを押すというのはおそろしいことなんだなあ」と思っていた記憶があります。

では、花押はどうなのでしょうか。

「花押を使ったということは書面に書いた内容に責任を持つという意識があるということだ」といえるのかが問題ですが、これは人によるのかもしれません。

たとえば、英文の自筆遺言証書に遺言者の署名は書かれていたが押印を欠いていたという場合、その人が遺言書作成の約1年9か月前に日本に帰化した白系ロシア人であり、主としてロシア語や英語を話し、日常の生活もヨーロッパの様式に従い、印章を使用するのは官庁に提出する書類等特に先方から押印を要求されるものに限られていた等の事情を考慮して、押印のない遺言書でも有効と判断した最高裁判例があります(最高裁昭和49年12月24日)。

これは、遺言書を書いた本人に注目し、その本人の慣行からして押印がなくても有効な遺言書といえそうかを判断しているものと思われます。

この判例を前提にすれば、私がいきなり「これが私の花押だ」と言ってサインのようなものを書いたとしても、それが押印代わりだとみなされることはないでしょうが、ずっと押印代わりに花押を使い続けていた人がいて、そのことが明らかであれば、押印とみなしてもよいのではないかと思います。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
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13:51 遺言書 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母の名義を借りていた建物【Q&A №464】

2015/09/02



【ご質問のまとめ】

20数年前に賃貸用建物を建て、母名義の登記をしました。

以来、賃貸の回収、ローンの返済、固定資産税すべて私が行ってきました。

数年前に母が亡くなり、兄と父がこの建物を渡せと言ってきます。

時効の主張はできますか?



記載内容

  名義貸し 固定資産税 時効


【ご質問内容】

20数年前に賃貸用に建物を数軒建てました。

名義は母で土地名義は祖父です。

収入は私、返済も私、その他の不動産の固定資産税も私で父と兄はノータッチでした。

10数年前に祖父、数年前には母も他界しているのですが、最近父と兄がその賃貸用の建物を渡せと圧力をかけてきます。

私は母には名義を借りただけと思い、建築当初から自分のものだから返済も遅れずにしてきました。

時効を使うことは難しいでしょうか。

返済中でもうすぐ終わります。

(kamemonn)





【不動産は誰のものか】

 まず、質問の賃貸物件が誰の所有ということから確認しておきましょう。

 今回の物件がお母さん名義だとしても実質上は質問者の所有という場合もあり得ます。

 ただ、そのようなことが認められるためには、その物件を建てたのは実質的には質問者だということ及びその代金も質問者が支払った、ただ、登記だけ名義を借りたというような事情が必要です。

 本件でそのような事情があるのなら、取得時効ではなく、そもそもその物件は自分の所有ということを主張されるといいでしょう。

 なお、賃料は誰の名義で回収していたのか、支払っていたローンは誰の名義であったのかという事情の検討する必要があります。

 これらの名義がお母さんだとすれば、その不動産があなたの所有だという主張は通りにくいでしょう。



【時効取得の可能性について】

 所有者でなくとも、時効で不動産の所有権を取得できる場合があります。

 自分の所有物だと思っていた場合なら10年間、他人の物であることを知っていた場合なら20年間、不動産を占有することで時効で土地を取得することが可能です。

 ただ、質問者の方が自分の所有物として占有しているという要件が必要です(このような占有を自主占有といいます)。

 取得時効の要件である自主占有とは、質問者の方が《自分で所有者と思っていた》だけではだめで、他の人から見て所有者と見られるような外形(外観)が必要だということです。


  周りからみて、自分の所有物として占有している

×  自分の所有物だと思って占有している



 今回の場合、賃料は誰の名義で回収していたいのか、支払っていたローンは誰の名義であったのか固定資産税はあなたに課税されていたのかという各点が問題になります。

 これらの点が全てお母さんということであれば、あなたはお母さんに替わって賃貸物件の管理をしていただけにすぎないということになります。

 また、あなたが他の相続人らに対して自分の所有物だということを主張し、それが認められていたというような事情があればそれは有利な事情になります。

 結局、あなたとしては所有者として占有していたという気持ちがあったとしても、裁判所や世間一般の常識的な判断として、所有者と見られるような外形が存在していないかぎり、時効での取得を主張するのは困難でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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14:55 不動産の相続 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★【コラム】《後妻と先妻の子》の激しい相続争いを避けるために

2012/05/10
 Loだよりイラスト3当事務所が扱う相続案件の中で、最も激しく対立するのは
《後妻と先妻の子》の争いです。

ほとんどの場合、《遺産はすべて後妻に相続させる》という遺言書が作成されている。
先妻の子側では「お父さんがそんなことを書くはずがない」、「遺言書が偽造された」と争うことになる。
また、残された財産が少ない場合、更に紛争が激化する。
「後妻が財産を取り込んで、隠している」と考えるからです。

そこで、弁護士からのアドバイス…
 
LOだよりイラスト2相続人が後妻と先妻の子である場合には、遺言書を絶対に書いておきましょう
また、遺言書の内容にも次のような配慮が必要です。
① 遺言書は公正証書遺言にする。
② どんな相続人にも、遺留分程度の財産は渡す。
③ 財産がどのような形であるか(どこの銀行のどの支店に預金がある…等)も記載する。
④ 遺産の分配内容について、「なぜそのようにしたのか」という気持ちを書く。

せっかく、がんばって、財産を残したのに・・・それが家族間の紛争の種になる。
そんな不幸を避けるために、ぜひ遺言書をお作りになることをお勧めします。
(大澤龍司法律事務所だより№2より)
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10:24 遺言書 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【コラム】法律の現場から:子供のいない夫婦の相続は、兄弟との喧嘩になる

2012/04/05
LOだよりイラスト1 どんなに仲のよい夫婦でも一緒には死ねません。例えば、ご主人が死ねば相続が始まります。
妻であるあなただけが、ご主人の財産を相続できると思っているなら大きな間違いです。子供がいれば、その子供と妻であるあなたが相続人になります。
もし、子供がいなかったらどうなるか知っていますか?ご主人の兄弟とあなたが相続人になります。兄弟から遺産を分けてくれと申入れされたら、4分の1を渡さなければなりません。遺産として、自宅しかない場合でも、その家を守りたければお金を調達しなければならなりません。
自宅が2000万円だとすると、500万円が必要になります。

LOだよりイラスト2 
そこで、弁護士からのアドバイス・・

ご主人に《あなたにすべて相続させる》という遺言書を書いてもらいましょう。
これで兄弟は遺産をくれと言えなくなります。
遺言書作成の費用は、弁護士に依頼して、最も確実な公正証書遺言という形の遺言でも20万円前後。
さて、あなた、20万円の費用を惜しんで500万円を支払いますか?
(大澤龍司法律事務所だより№1より)
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15:00 遺言書 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【コラム】遺言で「争族」回避(読売新聞 平成23年12月13日より)

2011/12/14
【記事の概略】
遺言書を作れば相続での争いを回避できること、信託銀行がしている遺言信託は120万円かかるが決して高くない。

【費用をかけないで遺言書を作成する方法】
値段だけを言えば、《遺言書キット》を2415円で購入して、自筆で遺言書を作成するのが安いでしょう。
もっとも安くしたいというなら、《ブックオフ》などの古本屋で、100円で遺言書に関する本を買って、それを参考にして遺言書を書くことでしょう。

【遺言書は、本当はとてもむずかしい】
しかし、遺言書を書いただけで、遺産争いを防止できるわけではありません。
たとえば、長男に遺産の全部を相続させるという遺言書を作った場合、おそらく、他の兄弟からは「私らにも遺産分けをしてほしい」という話が出てくるでしょう(このような請求をする権利を遺留分減殺請求といいます)。
このようなときには信託会社が紛争を解決してくれるのでは・・と考えているかもしれませんが、それは少し甘い考えかもしれません。
信託会社にお金を払っても、トラブルになると遺言の執行はしてくれず、紛争だけが残ることもあり、結局、弁護士の登場になります。

【どのようにして《争続》を防ぐ内容にするのか】
せっかく遺言書を作成するのなら、相続人が争わない内容にする、これが最も重要なことでしょう。
遺言をするあなたが、なぜ、このような内容の遺言を作ったのか、また、他の相続人にも最低限の遺産が行くようにすること・・そのような紛争を防止するための遺言書作成のノウハウは、相続に詳しい弁護士に相談するしかないでしょう。
法律や裁判例、あなたの相続人の置かれた状況を個別に聞き取って、あなたにふさわしい遺言書を作る、それが弁護士の仕事です。
あなたの遺産額を考えた場合、弁護士に相談する費用は、必要経費として考えることができるのではないでしょうか。
(大澤龍司)

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【コラム】実例で見る相続問題:こんな遺言書がありました!(その1)

2010/04/05
なかなかおもしろい遺言書を見たことがある。
その遺言書は自筆であるため、家庭裁判所で検認手続をした。
裁判官が遺言書の内容を読み上げる。
遺言書を相続人に見せて、相続人の意見を聞く。
これで手続きが終了するので、せいぜい15分前後で終わる。
相手方から提出された遺言書を見た当方の依頼者は、遺言者は被相続人の父親の筆跡らしいという。
本物か・・・とすこしがっかりした。

実はそのときは気づかなかったが、後で大きな問題点に気づいた。
検認された遺言書のコピーを事務所で眺めていたときだ。
遺言者の署名の下に印鑑が押されていない!ことを発見した。
実はこの遺言書は2ケ所に訂正箇所があるが、そこには印鑑が押されていた。
そのため、まさか、署名の下に印がないことには気がつかなかった。
よく見ると、署名の下に肝心の印がないのである。
本人が本当に遺言書を書いても、印がなければ、それだけで遺言書は無効である。

この遺言書は他にもおかしな点があった。遺言書本文の署名は略字(例えば「大沢」)なのに、訂正箇所の署名は本字(例えば「大澤」)である。
又、本文は勢いのない筆跡なのに、訂正箇所の署名はやけに力強く、印鑑もしっかり押されている。
おそらく訂正箇所の署名や印鑑は相手方がしたのであろう。

自筆証書ならではミスであるが、ここまでお粗末なケースは珍しい。
公正証書ではこのようなことは絶対に発生しない。
法律の専門家である公証人が作成するだから。
が、実はこの問題のケースでは、この自筆遺言書の後に公正証書遺言が作成された。
しかし、この公正証書遺言についても信じられないミスがあったのである。
さて、その詳しい内容はまた・・
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老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第6回)

2010/03/09
そのとき父親の真意は・・
自筆遺言証書サンプル
【「遺言書を書いた人、いますか?」】
昨年末に、相続問題の講演会に行ったことがあった。
「遺言書を書いた人、いますか?」と聞いてみた。
一人も手が挙がらない。近々、必要になりそうな人もいたけれど。

【人が遺言書を作るとき】
先日、親しい年上の知人から遺言書の相談を受けた。
元気いっぱいの方なのに、子供たちのことや奥さんのことを考えておられる。
同居の子供たちから勧められて遺言書を書くという場合もある。
この場合には、同行してきた子供たちを別室で待機させ、遺言をする本人に直接、真意を確認することになる。

【遺言書のための拉致事件】
はるか昔の話ではあるが、大阪府堺市の依頼者の女性の方から「同居しているお父さんがいなくなった!」という連絡を受けたことがある。
捜してみると、依頼者の兄が、横浜の自宅に、父親を連れて行ったことが判明した。
お父さんが死んだ後、初めて何があったかがわかった。
兄は、横浜の自宅で父親に遺言書を書かせ、その直後に老人ホームに入れた。
ほかの兄弟には、父親がどこにいるのかを一切、知らせなかったという。
遺言書には、お父さんの莫大な遺産の全部を兄が相続すると記載されていた。

【きれいなバッグが展示されてはいるが】
さて一澤帆布である。
2通の遺言書は、それぞれどのような場面で作成されたのであろうか?
2通目が本物とすれば、なぜ、1通目と正反対のものを父親が書いたのであろうか?
判決にはこのような点が記載されているかもしれないが、読みたいとは思わない。
信三郎帆布のショーウィンドウの中の色とりどりのバッグに魅力を感じなくなったのは、歳のせいなのか、或いは他に原因があるからだろうか。
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老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第5回)

2010/02/12
遺言・・それは生き方を反映するもの

【複数の遺言書があるのはどんな場合だろうか?】
一澤帆布では2通の遺言書があり、正反対の内容が記載されていた。
複数の遺言書があるというケースは決して少なくない。
人間の気持ちだから変わる事もあるし、特に遺言書を書くような年齢になれば気持ちが不安定になることもあるだろう。
当初は同居している長男に遺産を相続させるという公正証書遺言を作ったが、自分の面倒を十分に見てくれないと不満を持っていれば、たまたま遊びに来た次男の優しさにほろっと来て、次男に全ての遺産をやろうというような気持ちになることもあるだろう。

【複数の遺言書がある場合はどうなる?】
さて、遺言書が複数ある場合、どちらの遺言が効力があるのか?
法律的に言えば、後に作られた方の遺言書が有効になる。
先に作成された遺言書が和紙に達筆で書かれ実印が押されていても、あるいは公正証書遺言であっても、後で作成された遺言書が優先する。
だから一旦遺言書を書いてもらったからといって、それで大丈夫ということはない。

【人を支配する手段としての遺言】
ホテルからレストランまで、莫大な資産を持っている人から「先生、遺言書を書き換える手続きをしてくれなはれ・・」と依頼されたことがあった。
その人は同居している長男の嫁と折り合いが悪く、長男に離婚することを迫った。
しかし、長男は離婚しようとはしない。それなら遺言書を書き換えて遺産をやらないようにしてやるという展開だ。
私はこの依頼を受けなかったが、その人はやはり遺言を作り直したという。
子供たちが仲良くするための工夫をし、親の優しさを死後に残す遺言もあれば、このような生きている間に、自分の支配を貫くための遺言もある。
遺言は、文字通り、その人が遺す言葉である。どのような遺言を作成するかは、その人次第、遺言はその人の生き方を反映しているということかもしれない。

                                  (2010年2月 R記)
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老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第4回)

2010/02/04
本物かニセ物か、どちらの方がいいですか?
自筆遺言証書サンプル      
自筆遺言証書サンプル【筆跡鑑定が決め手となった?】
最初の裁判では、第2の遺言書が本物だという結論を出した。
警察の科学捜査研究所OBから3通の筆跡鑑定書が出ており、いずれも第2の遺言書を本物とする結論だったという。

【筆跡鑑定とは】
私の理解するところでは、筆跡鑑定とは、筆跡にはその人特有の癖があり、文字の形態(縦長か横長か、角ばっているかや丸いのか)、筆順やはね・止めの仕方などを比較して同一の人が書いたかどうかを判断するものである。
しかし、同じ人でも年齢や状況で字形が変化するし、筆順も筆勢も変化する。
たとえば、元気なときとパーキンソン病や脳梗塞などになったときでは字が変化するし、日記と遺言書や年賀状では文字を書く丁寧さが異なるであろう。

おそらく一番の問題は、偽遺言書は、死んだ人の関係者(相続人である子供)かその道の専門家が作るということである。
裁判になって筆跡鑑定がされることが当然予想されるから、どのような筆跡かを事前に綿密に調査し、かつ似た筆跡になるように練習もするだろうし、もともと血がつながっているから筆跡が似ているということもあるかもしれない。
筆跡鑑定自体には限界があるように思われる。

【筆跡鑑定についてはこんな経験がある】
遺言書が偽造だという事件で、科学捜査研究所のOBの先生に遺言書の筆跡鑑定をお願いに行ったことがある。
鑑定料が弁護士費用より高かったことにも驚いたが、もっと驚いたのは、その鑑定の先生から「本物かニセ物か、どちらのほうがいいのですか」と質問されたことだ。
「当方はニセ物だと考えています」と申し上げたら、その後、「あの遺言書はニセ物でした」という連絡があった。

当然のことながら、その先生に筆跡鑑定を依頼した(もちろん、高い鑑定料を支払った)。しかし、その事件を担当して約35年も経過した今でも、解けぬ疑問がある。
もし、あのとき、「当方は本物だと考えています」と申し上げたら、その先生は「あの遺言書は本物でした」という連絡をくれたのではなかろうか?

ちなみに、事件の相手方からは遺言書は本物だという鑑定書が出た。
相手方の鑑定人も「本物かニセ物か、どちらのほうがいいのですか」と質問したのであろうか。

ついでにひとこと。
昔の映画でアラン・ドロンがニセのサインの練習をしている場面があったように記憶しているけれど、あれは何という映画であったろうか?

注:掲載している遺言書の写真は、サンプル用に作成した架空の遺言書です。
  依頼者からお預かりする遺言書に関しては、秘密を厳守いたしますので、ご安心ください。
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老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第3回)

2010/01/28
遺言書をめぐって繰り返される裁判、まさに“骨肉の争い”…

大澤photo6【判決大逆転 本物から偽物に】
最初の裁判では、第2の遺言書が本物だという判決が最高裁で確定した。
しかしその後、新たに裁判が起こされ、今度は、偽物と最高裁が判断した。
この判決は「骨肉の争いが形勢逆転、『筆跡』巡り割れた最高裁判決」というタイトルで報道された。
しかし、負けた長男側が納得しない。
近く、3度目の裁判が起こされる予定だという。

【どんな遺言書であったのか】
ネットで調べてみると、先代の書いた最初の遺言書は、巻紙に毛筆で書かれており、「一澤」の実印が押されていたという。
しかし、第2の遺言書は便箋3枚に「一沢」という認印が捺印されていたという。

話は横道にそれるが、「一澤帆布」のかばんには、右の写真のような形で製造販売者を表示するラベルというか、ロゴというかわからないが、縫い付けられていた。
この漢字の表示を見て、「おぉ、一澤帆布じゃないか」などいう友人もおり、「昔から使っているんだ」というような答えを私は返して、いい気持ちになっていた。
だから、このような私の気持ちから言えば、遺言書は巻紙に毛筆で書かれているのがいかにも由緒正しく、かつ望ましく、相応しい。
便箋3枚に認印といえばあまりに安直でわびしく、「おいおい、ブランドの価値が下がるじゃないか」と言いたくなるような気がする。
(もちろん、便箋に認印だからと言って、それで遺言書が無効だというわけではないが)

さて、元にもどって、ではどうして最初の裁判では第2の遺言が本物と認められたのであろうか。
次回には、この点を考えてみる。

                                  (2010年1月10日記:R)
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老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第2回)

2010/01/21
残された2通の遺言書。偽造されたものかどうか…

大澤photo6【一澤帆布は閉店している】
この正月に知恩院に行ったときに一澤帆布の店の前を通った。
店は閉められており、店の扉には「お知らせ:申し訳ございませんが、当分の間、休業させていただきます」という貼り紙がしてあった。
その閉まっている店から左3軒目には「一澤信三郎帆布」店が営業していた。
ショーウインドウにはあのなつかしい帆布のかばんが飾られている。
寒い日であったにもかかわらず、店の外にも、店の中にもお客さんが入っていた。
一体どういうことになったのだろうか?

【さて、お家騒動の中味は・・】
一澤帆布は個人商店ではなく、「一澤帆布工業株式会社」が正式な名称である。
先代一澤信夫氏の引退後、三男の信三郎氏が社長となって、家業を引き継ぎ、発展させてきたが、長男は銀行に勤めており、店の経営には全く関与していなかったという。
ところで先代は三男らに会社の株式を相続させるという内容の遺言書(最初の遺言という)を書き、弁護士がその遺言書を保管していたようだ。
しかし、先代が死亡した後に、長男が、会社の株式は長男らに相続させるという、全く正反対の遺言書(第2の遺言という)を持ち出した。

第2の遺言が有効であるとすると、それより先に作成された最初の遺言は効力を失うことになる。
株式を相続したものがこの繁盛している店の経営権を握ることになる。
店を実際に切り盛りしてきた三男は当然のことながら第2の遺言に納得しない。
「これは兄貴が勝手に作った、偽造の遺言だ」(と三男は言ったであろう)ということで、長男と三男との間に争いが発生し、当然、2人の間では調整がつかず、裁判沙汰となった。
裁判の主な論点は、「第2の遺言は有効かどうか?」である。
ストレートに言えば、「第2の遺言書は偽造されたものかどうか?」である。
さて、裁判の結果はどのようなものだったか、これについては次回に・・

                                  (2010年1月9日記:R)
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老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第1回)

2010/01/14
京都ぶらり散歩:龍馬の結婚式場跡から一澤帆布へ
大澤photo6
車で走っても京都の面白さはわからない。
街を歩けばなにかしら面白いものがある。
今年の正月の収穫は「坂本龍馬 お龍『結婚式場』跡」の石碑の発見だ。
道路脇にポツンと立っていた。
どこにあるかって?教えない。
自分で足で歩き、眼で探すことだ。
結婚式場跡の石碑は見つからないかもしれないが、その替わりにもっと面白いものが見つかるかもしれないから。

【お気に入りのかばんを作っていた】
今から30年ほど前のことだ。
京都の知恩院に行ったときに変わったかばん屋を見つけた。
いかにも手作りという味わいのあるがっちりした帆布のかばんを売っていた。
値段はかなり高かったが、ショルダーバッグを買った。
仕事にも遊びにも使い、事務所にも裁判所にも持ち歩いた。
ほつれたり穴があいたりしたから結局3個ほどを買った。
その店が一澤帆布だった。

【遺産をめぐって、いまだに紛争中】
最近、「『一澤帆布』お家騒動」の記事を見た(平成21年12月26日:朝日新聞)。
相続問題でもめ、裁判をしていることは知っていた。
しかし、いまだに紛争は解決していないようだ。
一体、何が問題になったのか、弁護士の目から見た感想・コメントを次回から数回にわたって書いてみることとする。

                                  (2010年1月9日記:R)
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【コラム】実例で見る相続問題:老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動

2009/12/28
【一澤帆布はこういうお店】
 先日(平成21年12月26日)の朝日新聞に「『一澤帆布』お家騒動」という記事が掲載されました。京都の知恩院の前にあるお店です。

 今から30年ほど前、京都をぶらついていたときに「お、変わったかばん屋がある」と入ったのがこのお店でした。
 いかにも手作りという味わいのあるがっちりした帆布のかばんが気にいり、値段はかなり高かったのですが、ショルダーバッグを購入しました(結局、その後も3個ほどのかばんを買いました)。
 その当時から、このお店は観光客や女性客でかなり繁盛していました。

【さて、お家騒動の中味は・・】
 問題は、先代の会長が死んだ後に、2通の遺言書が発見されところから始まります。
 1通目の遺言書は「この店の株式の大半を三男(新三郎氏)に譲る」という内容でしたが、2通目の遺言書は「株を長男らに譲る」という全くの正反対の内容でした。
 繁盛しているお店ですので、この店の経営権を巡って長男と三男の争いが発生し、当然裁判沙汰となりました。

 最初の訴訟では2通目の遺言書(すなわち、長男有利の分)が有効となって裁判が終了しました。
 しかし、その後、三男の妻が起こした訴訟では2通目の遺言書は無効という裁判が確定したという。こんな判決が出たのでは、長男が黙ってはいません。
 新聞によると、こんどは、長男が2通目の遺言書で譲るとされた株式は自分が保有するのを認めよという訴訟を最近起こしたといいます。

 なんともまぁ、ややこしいお話ですが、このブログ(あるいはもともとの新聞記事)を読んでいる皆様、お分かりになりましたか?
 長男有利の遺言書は本物、偽物、さぁどちらでしょう?

 おそらく何がなんだか、わからないというのが本当のところでしょう。
 決して、私の要約の仕方が悪いのではありません。なにせ、弁護士である私にだって、簡単にわからないのですから。

【さぁ、これから始まるのは「遺言書の落し穴」の講義】
 この裁判の判決を見ていないので、コメントはできません。
 ただ、この一澤帆布のようなケースを参考にして、遺言書の問題点を次回以降に書いていこうと思います。
 題して、サルでわかって、眼からうろこの「遺言書の落とし穴」です。乞うご期待下さい!
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【コラム】実例で見る相続問題:義母(後妻)と(先妻の)子

2009/11/06
大澤photo6もっとも激しいバトルが行われるのは】
相続は「争族」といわれています。
遺産をめぐって激しい争いが生じるからです。
その争いがもっとも熾烈になるのが義母とその子、言い換えれば後妻と先妻の子の争いです。
ただでさえ感情的な争いをする立場にある方たちですから、ここに財産争いがからめば、争いはホットにならざるをえません。

【後妻の気持ち・先妻の子の気持ち】
後妻としては、夫の介護をしており、自分が夫の面倒を最後まで見たという思いがありました。
「だんなのオムツまで替えたのはこの私だ」という自負がありました。
死んでから遺産目当てにノコノコと出てきてという反感もありました。

夫が死んでしまえば、頼りになるのは金しかないという気持ちもあったのでしょう。
しかし、先妻の子も黙っていません。後妻は遺産を絶対隠しているというのはよく出てくる言葉です。

【先妻が生きている場合は、更に激しく】
私の扱った事件でもっとも「激烈」なものが、後妻と先妻の子の相続争いで、しかも先妻と離婚し、生きている場合でした。先妻が後妻に対して持っている気持ちがこんなときに噴出します。

先妻の子が後妻の指して言った言葉で驚いたことがあります。
女狐」(めぎつね)。なんともクラシックです。
母親である先妻がいつもこのような言葉を使っていたのでしょう。

【こんな争いを防ぐために】
遺言書はこんなときに役に立ちます。
でも書き方を間違えれば、それが又、争いの種になります。

争いを避けるコツは次のとおりです。
間違っても、後妻または先妻の子のどちらか一人だけに遺産全部を渡すというような内容にしないことです。
少ししか相続させない者に対しても、慰留分(本来の相続分の半分程度)の財産を残すことです。
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★【コラム】遺言の無効

2009/10/28
遺言が無効となるのは、次のような場合です。

①法定の書式が守られていないとき
まず、遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など法律に定められた方式によらなければなりません。
したがって、この方式に従っていない遺言は無効です。

②遺言を作成した時に意思能力がなかったとき
遺言の意味を理解できない人が作った遺言も効力がありません。
高齢者の場合には、認知症が問題になる場合があります。
高齢者が死亡したばあいに遺言書が出てきた場合には、まず、本当に遺言をするだけの意思能力があったのかどうかを考える必要があるでしょう。

③後に遺言がなされていたとき
遺言は自由に変更できます。
例えば、平成20年1月に公正証書遺言をしたと言っても、その後、平成21年9月に自筆証書遺言をしたら、後の方の遺言が有効であり、前の遺言は無効になります。

④その他の無効事由
遺言は、15歳以上でなければできませんので、15歳未満の作成した遺言は無効です。
また、遺贈など財産に関する行為については、不法なものや公序良俗に反するものは無効です。
例えば、愛人との間で生まれた子供に財産を遺贈するに際して、認知請求を放棄することを条件とするような遺言は無効です。

なお、遺言の無効を争うような場合には、訴訟になる可能性が非常に高いので、最初から弁護士に相談された方をお勧めします。
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【コラム】実例で見る相続問題:遺産分割の不動産の価額の妥当性

2009/09/11
【不動産の価額が安すぎる?】
遺産の分割協議をしていると、ある相続人は現預金で欲しいといい、他の相続人は不動産が欲しいといいます。
この場合、現預金であればその価値ははっきりしていますが、不動産の価額については相続人により大きく意見が異なってきます。
「この不動産の価額が安すぎる!」ということで不満を述べる相続人もよくおられます。
遺産分割の際の不動産価額は何を参考にすればいいのでしょうか?

大澤photo6【時価で算定すればよい?】
不動産は「時価」で算定すればいいのではないかという意見が聞こえてきそうです。
しかし、この「時価」がそう簡単にはわからないのです。

正確にいうと、現実に売れる額が時価ですので、売ってみなければわからないというのが実情です。
不動産鑑定士さんにお願いして価額を出してもらうことができますが、そのためにはかなり費用がかかります(場合によると、弁護士費用より高い場合もあります)し、鑑定士が鑑定したからといってもそれが時価である保障はありません。

【遺産分割調停では、路線価が基準になる場合が多い】

土地の価額といえば、公表されているだけでも公示地価や路線価固定資産評価証明額基準地価等、多数の基準があります。
路線価公示地価(法令に基づき国家機関等により定期的に評価されている公的地価のうち、個別の地点、適正な価格が一般に公表されているもの)の約80%に設定されており、時価より安くなっています。

この路線価は、税務署が相続税や贈与税の算出をする場合に前提とする土地価額です。そこで、相続問題である遺産分割の調停場合には、関係者が同意して、この路線価を前提にして遺産分割をしていく場合が多いです。

しかし、【実例で見る相続問題:遺産は不動産でもらいますか?現預金でもらいますか?】でも記載しましたように、不動産をもらうことは、税金の負担やすぐに現金化できないという、大きなリスクを伴いますので、この程度の減価は止むをえないところでしょう。
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13:34 不動産の相続 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【コラム】実例で見る相続問題:遺産は不動産でもらいますか?現預金でもらいますか?

2009/09/01
遺産は不動産でもらいますか?現預金でもらいますか?

遺産の分割協議をしていると、ある相続人は現預金で欲しいといい、他の相続人は不動産が欲しいといいます。
さて、あなたならどちらでもらいますか?


【現預金が一番】
弁護士としては、原則として、その遺産の家屋に居住しているような場合は別として、現金か預金でもらいなさいというアドバイスをします。
その一番の理由は、不動産は簡単に売れないということです。

例えば広大な土地をもらった場合でも(遺産額が多い場合には)相続税の支払が必要です。
遺産分割で、現預金をもらった場合は、それですぐに相続税の支払ができます。
しかし、不動産でもらった場合には相続税の支払い原資として、別途、お金を用意する必要があります。

【不動産を売り急げば買い叩かれる】
もし、そのお金がないというのであれば、不動産を売却するしかありません。
その場合、何事もそうですが、売り急げば不動産の価額は恐ろしく安くなります(足元を見て買い叩かれるということです)。

【税金もかかります】
その不動産があなたが居住している不動産なら別として、不動産を売却する時には通常はかなりの不動産譲渡税もかかります。
また、売るまでの期間、当然のことながら固定資産税等も支払う必要があります。

【過去にこんなケース】
 過去に、当方の依頼者で不動産の取得を選択した方がおりましたが、相続税として支払うお金がありませんでした。
 そのため、税務署と協議の上、長期で分割払い(延納)という手続をしましたが、もらった不動産は売れず、しかも不動産価額は下落を続け、依頼者の相続人は四苦八苦しておりました。

 次回の記事でも記載しますが、遺産分割の前提となる不動産価額は、相場よりかなり安くなります。相続税の支払や不動産の利用価値、売却の可能性等、しっかりと考えて対処する必要がありますのでご注意下さい。

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10:38 不動産の相続 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【コラム】実例で見る相続問題:遺言書作成のヒント

2009/08/18
なぜ、兄弟間の激しい争いが起こったのか?大澤photo6

前回(実例で見る相続問題:深い傷を残さないように)は遺言書偽造の事件が兄弟間の深刻なトラブルを引き起こした事件のことを記載しました。
なぜ、このような兄弟が憎みあうというようなことが起こったのでしょうか。
遺言書が偽造でなかったと前提とした場合、問題は次の点にあったように思われます。

1 偽造防止のために・・自筆ではなく公正証書遺言にする。
問題のケースでは、遺言書は自筆でした。
もし、公正証書遺言であれば、公証人が作成し、かつ保存するのですから、遺言書の偽造ということは考えられません。
自筆の遺言書だから、偽造ではないかという疑いが生じ、訴訟にまで発展しました。
遺言書を残そうと思う人はそれなりの財産を有しておられることと思います。
遺言者の作成のために公証人に支払う費用は、そのような財産に比べれば少額です。可能であれば、是非、公正証書遺言をされることをお勧めします。

2 紛争防止のため・・相続人には、最低限の遺産を与える。
遺産のすべてを特定の人に与えるということになると、当然ですが、もらえなかった相続人の側から不満が出ますし、場合によれば訴訟等の紛争が起こることになります。
このような相続人の不満をどのように対処するのかが、遺言書作成の大問題です。
まず、財産を全く(あるいは少ししか)もらえない相続人としては、財産をもっと欲しいという申し出が可能です(慰留分減殺請求)。
そうだとすれば、遺言で特定の人に遺産を多く与える場合にも、他の相続人にも法律上認められる慰留分程度の遺産を残してあげるべきでしょう。
相続人としても、自分も遺産がもらえるという事実があるために、遺言書を作成した人の相続人に対する配慮を感じることができますし、しかもそれ以上は法律的に請求できないとなれば、遺産をめぐる紛争は起こしたくてもできないということになります。

3 相続人の納得のため・・遺言による財産分けの理由を説明する。
遺言書は、遺言者が後に残された相続人に対する最後の言葉というべきものです。
遺産の分け方を記載すれば十分だという考えもあるでしょうが、なぜ、そのような遺言をしたのかという理由を記載することも紛争防止に役立つことがあります。
例えば、結婚した長女や次女には多額の持参金を持たしたので、家業を継ぐ長男には余分に遺産を分けるというような説明があれば、相続人の方でも納得できる場合があるでしょう。
特定の相続人に多くの遺産を相続させるのであれば、他の相続人が納得するような説明を記載して、少しでも紛争の種をなくしておく、これが遺言をする人の最後の仕事というべきものでしょう。
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【コラム】実例で見る相続問題 :深い傷を残さないように

2009/08/18
ここまで憎しみ合うものか・・

亡くなったお父さんの遺言書が偽造かどうかが争われた事件を担当したことがありました。
35年も前のはなしです。
結局、この事件では遺言書は偽造ではないという判決がでました。
ただ、その訴訟の最中に、遺言の偽造者と言われていた相続人(次男)が急死しました。
相手方の長男が述べた一言は次のようなものでした。
「ざまぁみろ、バチがあたったんだ!」
兄弟間の相続争いで、実弟が死亡しても、悲しみを感じるどころか、むしろそれを喜ぶという、そこまで憎しみを持つものかと深く印象に残りました。
この事件は、遺言書を作っても、トラブルは発生し、兄弟間に深い傷を残す場合があるのだということを教えてくれます。
せっかく遺言書をつくるのであれば、後にトラブルが出ないようにする必要があります。
次回に、この事件を例にどのようにすればよかったのか、問題点を検討していきます。
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【コラム】実例で見る相続問題:遺言書の偽造

2009/07/29
前回は遺言書偽造の事件が兄弟間の深刻なトラブルを引き起こした事件のことを記載しました。
では、どこに問題があったのかを検討しましょう。

まず、第一の問題点は、自筆の遺言証書であったという点です。
本人いない
だれが署名してくれるのか・・・

① 遺言書は公証人役場で作るのが望ましい。
 公証人役場で作成した場合、公証人は遺言する人の本人確認をしますので。偽造という問題は発生しません。

② 相続人間の紛争が生じないように、内容を工夫する必要がある。
 例えば長男だけに相続させるというような内容であると、財産をもらえなかった長女や次男等から不満が出ることが多く、紛争に発展していくことが多いものです。

遺言というのは、自分の死を想定して作成するものであり、「縁起でもない」として作成に踏み切る気持ちになれないという気持ちはよくわかります。
しかし、残された子供たちが遺産をめぐって、争いをするのはとても不幸なことです。
財産をお持ちの方については、是非、遺言書の作成をお勧めします。

又、作成については相続問題に詳しい弁護士に相談し、その内容をどのようにするかという踏み込んだ相談をされることをお勧めします。
大澤photo6
さて、最後に、私ですが、現段階では遺言書は作ってはおりません。なにせそれほど財産を持っていないですから。

しかし、こんな声も聞こえそうです。

知人:「財産があるかどうかは別として、早く作っておいた方がいいよ。もう、そんなに若くないんだから・・」
私「・・・・・・・・・」
                                     (龍)
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