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★【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?(大阪地裁 平成27年10月2日判決)

2016/12/07
戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?

大阪地判平成27年10月2日(平成25年(行ウ)256号)


【ケース】

厚生年金保険の被保険者であった被相続人と内縁関係にあったと主張する女性が老齢厚生年金及び老齢基礎年金の支給を請求したところ、被相続人と戸籍上の妻との婚姻関係が形骸化しているとは認められないとして支給しない旨の決定をされたため、その決定の取り消しを求めた事案。


【裁判所の判断の概略】

 厚生年金保険法の目的等に鑑み、同法上の「配偶者」には、戸籍上の配偶者のみならず、事実婚関係にある者も含まれるものとしている(同法3条2項)。
 戸籍上の配偶者を有する被保険者等が重ねて他の者と内縁関係にあるという、いわゆる重婚的内縁関係にある場合にあっては、原則として、戸籍上の配偶者が「配偶者」に当たるというべきである。
しかし、被保険者等が戸籍上の配偶者を有する場合であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、戸籍上の配偶者はもはや「配偶者」に該当せず、重婚的内縁関係にある者が「配偶者」に当たる。
 実体を失っており形骸化しているかどうかの判断基準としては、被保険者等と戸籍上の配偶者との婚姻関係が上記のような事実上の離婚状態にあるか否かについては、別居の経緯、別居期間、婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無、別居後における経済的依存の状況、別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況、重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮する必要がある。
 本件では、被相続人と戸籍上の配偶者の夫婦関係は別居前から芳しくなく、別居は一度も解消されないまま約6年10カ月という比較的長期間に及んでいること、婚姻関係の維持ないし修復するための努力を一切行っていないこと、別居後経済的依存関係は認められないこと、音信及び訪問は財産関係の清算を目的とするものがほとんどで、被相続人の死亡当時にはほぼ断絶状態であったこと、他方内縁の妻と約6年7カ月にわたって事実上夫婦としての共同生活を送っており、その関係も相当程度安定かつ固定していた。
 そのため、被相続人と戸籍上の配偶者とは事実上の離婚状態にあったと認められ、内縁の妻に対する老齢厚生年金等の不支給決定等は違法である。


【弁護士のコメント】

 戸籍上の配偶者と内縁の配偶者が存在する場合に、遺族厚生年金を受給できる「配偶者」とはどちらのことを指すのかが問題になります。
 原則として戸籍上の配偶者が受給することになるのだろうということは想像がつくと思いますが、この裁判例は、内縁の配偶者が受給できることができる場合も例外としてあるということを明らかにしました。
 その判断は、上記下線部で示したような様々な事情を総合的に考慮してなされ、戸籍上の配偶者との婚姻関係が形骸化していて、事実上の離婚状態にあるといえるような状態だといえる場合にのみ、内縁の配偶者が受給できるということになるのです。
 単に戸籍上の配偶者と別居して、内縁の配偶者と暮らしているというだけで内縁の配偶者が受給者になるという単純な話ではなく、それぞれの具体的な事情を考慮して判断されますので、注意が必要です。
大澤龍司法律事務所
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