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相続制度見直し:配偶者に対する新優遇案【コラム】

2017/03/07
相続制度見直し:配偶者に対する新優遇案


【配偶者に対する新優遇案が出されました】

現在の相続制度の見直しがされており、法制審議会の相続部会で審議されています。

平成29年2月28日、法務省から新たな案が出されました。

その内容は配偶者を相続上、現在より優遇しようというものです。

具体的に言うと、

①結婚から20年以上過ぎた夫婦間で

②居住用の建物や土地を

③生前贈与や遺言遺贈を受けた場合

これらの贈与や遺贈の対象の不動産を遺産の計算に含まないというものです。

贈与者あるいは遺言者としても、このような贈与等は、遺産の計算に持ち戻さない(含めない)という意思があるだろう点を根拠にする提案です。


【現在の相続制度との比較】

現在の相続制度では、亡くなった方(被相続人)と一緒に住んでいた配偶者が、これからもその家で暮らしていくために家を相続した結果、他の遺産をまったく相続できないというケースがありました。

また、自宅以外の他の財産が少ない場合には、家を相続したことによる代償金という形で、他の相続人にお金を支払う必要があるというケースもありました。

これに対して、今回の新優遇案では、自宅の贈与等を受けていても、配偶者は自宅を取得分とカウントされずに、別途、他の遺産についても自分の相続分に応じた遺産をもらえることになります。


【弁護士コメント】

残された配偶者優遇策としては法定相続分を上げるということも考えられますが、反対が多いようです。

そのため、居住用不動産に限定して配偶者を優遇しようとする考えがだされています。

たとえば、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、

①遺産分割により当該建物の帰属が確定するまでの間、その建物を無償で使用することができ、その間の使用料は遺産分割で取得すべき財産額に算入しないとする案や、

②終身又は一定期間、配偶者にその建物の使用を認め、長期居住権の財産的価値相当額を相続したものとして扱う(建物の所有権額よりは低額になる)という案もあります。

それらに比較すると、今回の新提案はこれらより一歩踏み込んで、残存配偶者が財産を多く取得できる方向での提案です。

ただ、

①結婚から20年以上過ぎた夫婦に限っていること

②被相続人から贈与や遺贈という積極的な行為が必要である

などの要件が必要とされています。

上記の要件が必要とされている点では、他の案よりもハードルが高くなっていますが、逆に、生前贈与や遺贈があれば、その額を遺産の計算に持戻すことなく、家の所有権を取得できるというのは、配偶者の優遇策として進んでいるといえるでしょう。

多数の賛成者があるようですので、今回の提案が立法化される可能性も高いかもしれません。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:20 相続コラム | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

葬式費用の負担者と香典の取得者【Q&A №560】

2017/02/16


【質問の要旨】

父の葬儀の喪主が叔父、葬儀費用は遺産から払ったが、香典は誰が受け取る?

記載内容 香典 葬式費用 喪主

【ご質問内容】

母とは離婚、片親だった父がなくなり、葬式をあげる事になりました。

24歳の姉と21歳の私(2人姉妹)は知識も、まとまったお金も無いからと、何も費用などの相談も無いまま父の弟である叔父が喪主を務め、葬式費用も返してくれればいいからと立て替えてくれました。

後日かかった費用の領収書を受け取り、返すように言われ葬式費用は遺産から返したのですが、この場合香典は誰が受け取るべきですか

実際に喪主を務めた叔父が香典を受け取るとしたら、父の葬式なので葬式費用は私と姉で叔父に返すべきなのですか?

(麗華)





【葬儀費用は喪主が負担する】

葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するものであり、相続債務ではありません。

そのため、当然に遺産から支払われるべきものではなく、喪主が負担するものです。

したがって、今回叔父さんが喪主を務めてくれたのであれば、本来は叔父さんが費用を負担するべきだということになります。


【喪主が負担した葬儀費用の請求】

今回の事案とよく似た裁判例として、次の裁判例があります。

【相続判例散策】兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できない》と判断しましたが、その理由は、《葬儀は行うか否か、どの程度の規模にするか、どこまで費用を掛けるかは喪主が決定するのだから、喪主が費用を負担するのが妥当》というものでした。

この裁判例に従うと、やはり叔父さんが支払った葬儀費用をあなた方に請求することはできないという結論になりそうです。


【香典は葬儀費用を負担した者が取得する】

ただ、本件では、あなた方に代わって叔父さんに喪主を務めていただき、葬儀費用を支払うことについてあなた方が納得して遺産から葬儀費用を支払ったようです。

このとき、香典は誰が受け取るべきなのかが問題になりますが、香典には葬儀費用等の出費に対して金銭面で助けるという意味もありますので、本来香典は葬儀費用を負担した者が取得するべきだといえるでしょう。

本件において、あなた方が遺産から葬儀費用を支払ったのであれば、香典収入は叔父さんに渡すのではなく、遺産に含めるべきだと考えられます。


【本件ではどうする?】

そのため、今回の質問のケースでは、本来は、あなた方は叔父さんに葬儀費用を支払う必要はありませんでした

ただ、既に葬儀費用を支払った(もらった遺産からその分を返した)というのなら、葬儀費用の返還をしてもらっても良いということになります。

しかし、現実問題としてはそのような要求を出しても、応じてくれないでしょうから、せめて、香典は引渡すように請求されるといいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
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14:41 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★使用貸借と特別受益【Q&A №484】

2015/12/17


【質問の要旨】

賃料相当額を特別受益として引かれるのか

記載内容

賃料 使用借権 持ち戻し

【ご質問内容】

裁判認知により相続人となりましたが、被相続人所有の空き家に住んでいた年数分の賃料(1000万円)を、特別受益として遺留分から差引くと言われています。

建物は、数年前に贈与の約束(契約書)があり、私(婚外子)の母が建替え、被相続人の死亡以前に母名義となっています。

土地は、私に遺贈の遺言があります。

それでも特別受益として賃料相当額を引かれなければならないのでしょうか

(カピバラ)





 【使用貸借であれば賃料の支払いは不要】

被相続人であるお父さん所有の空家をあなたが使用していたということを法律的に考えてみます。

お父さんがあなたに賃料を請求するようなことはなかったのであれば、あなたはお父さんから無償(ただ)でその家を利用することを認められたということになり、法律的には使用貸借という関係になります。

あなたの立場から言えば、無償で使用する権利(使用借権)をお父さんから与えられたということになりますので、賃料を支払う必要はないでしょう。


【使用借権が特別受益になる可能性がある】

ただ、あなたが、被相続人からただで使用する権利(使用借権)をもらったということが特別受益とされる可能性があります。

使用借権の価額については当該対象物件の5~10%程度の価値があるものだとされることが多いです(但し、裁判例の解説などを読むと10~30%ではないかという見解もあります)。

しかし、建物価額は評価証明額を前提として算定されることが多いですが、建物の評価証明額が極めて少額な場合も多く、そのため、上記の割合では使用借権価額が極めて少額になります。

一方で、被相続人であるお父さんは土地や建物の固定資産税分を負担しています。

その物件をあなたが無償使用しているのであれば、最低限、土地や建物の固定資産税分の支払い分程度は免れたという利益を受けていたことになり、その相当額が特別受益とされる可能性があります


【建物贈与の影響】

建て替える前の建物は、生前に贈与されていますが、誰に贈与されたのかがご質問では明らかではありません。

もし、あなたに贈与されたのであれば、建物価額があなたの特別受益として持ち戻されますが、その場合の特別受益額は、《建物価額-使用借権額》でいう計算式で算定されます。

贈与があったとしても、あなたが使用借権を取得した事実は消えませんので、使用借権取得が特別受益となる点は否定できません

但し、上記考え方はあくまで一つの考え方にすぎず、異なる見解もありえます。


【持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を】

なお、今回のご質問から受ける印象ですが、お父さんとしては遺産への持ち戻しを免除するという意思をお持ちであった可能性もあります。

また、前項に記載したように使用借権を設定した後、その建物を取得した場合にどのような形で特別受益に反映させるかについても、弁護士により見解の相違がありえます。

いずれにせよ、今回のご質問が含む問題については、難しい点も多いので、近くの相続問題に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、相談されることをお勧めします


(弁護士 大澤龍司)
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18:13 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺言で遺贈を受けた場合に必要な費用【Q&A №366】

2014/04/22
 遺産相続で法定相続人以外の遺贈で、マンションを頂いた場合費用はどのくらいかかるのでしょうか?中古マンション価格は3500万円位です。余り金額が掛かるならお断りしようと思っています。余り蓄えがないので、よろしくお願いいたします。

記載内容

遺贈 相続税 マンション
(東郷平八郎)


【考えられる税金や諸経費について】
 遺言でマンションなどの不動産を遺贈された場合に必要となってくる税金や費用は、

① 相続税
② 不動産取得税
③ 登記費用

です。
 これに、登記名義を移転した後には、当然のことですが、毎年、固定資産税や都市計画税を支払う必要があり、又、建物の管理費なども考慮しておく必要があるでしょう。

【相続税について】
 相続税は、遺産総額が《5000万円+法定相続人1人×1000万円》を超えた場合に課税されます。
 そのため、法定相続人が2人の場合には、相続が7000万円までは相続税の申告は不要です(但し、平成27年から、《3000万円+法定相続人1人×600万円》を超えた場合に課税されることになります)。
 今回の質問では、遺産総額も法定相続人もわからないので、相続税が課税されるかどうかはわかりませんが、遺産総額が5000万円以下なら、相続税は課税されません。
 そのため、遺贈を受けるあなたにも相続税は課税されません。
 ただ、遺産総額が多く、相続税が課税される場合には、あなたは通常の法定相続人が支払う税金より20%アップされた税金を支払う必要があります。
 なお、相続税の計算においては居住用資産の遺産算入価額の軽減等、様々な軽減措置がありますので、詳しくは不動産登記簿謄本その他の資料を入手され、税金の専門家である税理士に相談されるといいでしょう。

【不動産取得税について】
 マンションなどの不動産を取得する場合、不動産取得税が課税されます。
 この税金は平成27年3月31日までであれば、次の税額になります。
   土地:固定資産評価額×2分の1×3%
   家屋(住宅):固定資産評価額×3%(なお、住宅でない場合には掛け率は4%になります)

【登記費用について】
 あなたが遺贈された不動産の所有権移転登記する場合には、登録免許税の支払が必要です。
 通常の法定相続人の相続登記は、固定資産評価証明額の1000分の4ですが、法定相続人に対する遺贈の場合には1000分の20の登録免許税が必要になります。
 なお、移転登記を司法書士に依頼する場合の司法書士さんに支払う費用は、ネットなどでお調べ頂くか、お近くの司法書士に見積書を出していただくとよいでしょう。

【取得後も継続的な費用が必要】
 不動産を取得した後も固定資産税、都市計画税を毎年支払う必要がありますし、又、建物の管理費も考えておく必要があります。
 遺贈の対象となっているマンションが、収益をあげることのできるマンションかどうかを十分に調査した上で、遺贈受けるかどうかを検討されるといいでしょう。
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13:10 遺言 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

孫への贈与と遺留分減殺請求【Q&A №353】

2014/03/06
 姉が一人おり姉には成人した子供が一人。私は現在海外に住んでいて父の死後、母と姉家族が同居。以前母から手書きで不動産の1~2(同居している家等)を姉に、3,4を私に、5の土地を孫(姉の子)にと書かれたメモを受け取り母の意思ならば従う気持ちでおりました。今回姉の話で私に相続させると書かれてた土地の1つを母の弟がお金が必要で自分の土地と母の土地を合わせないと売れない事を理由に要求して来た結果、印鑑を捺して売った。姉夫婦が面倒な対応を引き受けたと聞き初めて知らない間に売られていた事を知りました。孫の大学の学費は母が全て出したと母がしっかりしている時に母から聞いており、今回ご相談したい気持ちになりました理由は今回の訪問時『孫に不動産の全てを譲る。』と母の直筆で書かれた紙を私に見えるように貼ってあるのを見たからです。このような状況から全ての不動産を姉や姉の子供の名義に私の知らぬ間に(母の捺印済みで)変更されていた場合、私への遺産相続のはどうなるのか?そうなっていた場合私が母の意思であった一部でも相続できる為の手段と裁判になった際の費用等をご教示頂きたく、何卒宜しくお願い致します。
 母や姉に直接この話を問うことは姉の性格上、そして母が老人特有の物忘れもありますので、100%理路整然と話をできない状態にもなって来ております為、不可能だと考えております。

記載内容

 贈与 遺言書の有効要件 遺留分減殺請求 自筆のメモ 貼り紙 意思能力
(涙)


【メモは遺言書にはならない】
 遺言書が有効であるためには最低限、①日付があり、②氏名が自書され、③印鑑が押されていることが必要です。
 お母さんが不動産を、法定相続人であるあなたやお姉さん、お孫さんに分けるとの手書きのメモを書いていたようですが、単なるメモでは遺言書にはなりません。
(又、仮に遺言書であっても、該当不動産が売却されているのであれば、遺言書のうちのあなたに不動産を相続させるという部分は効力を持ちません。)

【貼り紙も遺言書にならない】
 《『孫に不動産の全てを譲る。』と母の直筆で書かれた紙》が貼られていたとしても、冒頭に記載した遺言書の有効要件を充たしていない限り、それは単なる《貼り紙》であり、遺言書ではありません。
 そのため、お母さんが死んだ後、お姉さんがこの《貼り紙》を根拠にして、お孫さん(お姉さんの子)に不動産を相続(遺贈)させることはできません。
 あなたとしては、遺言書ではないのだから、そんな貼り紙はなんらの効力がないということで対応されるといいでしょう。

【遺言書が存在する可能性もあるが・・・】
 ただ、お姉さんの動きを見ていると、遺産である不動産を全部、取り込みたいようです。
 このような状勢からいえば、既に要件を充たした自筆の遺言書あるいは公正証書遺言が作成されている可能性も否定できません。
 お母さんの死後、遺言書が出てきて、そこには、遺産の全部をお姉さん側に相続させる(遺贈する)というような内容だった場合でも、あなたには《遺留分減殺請求権》があります。
 この権利は、本来の法定相続分(本件では相続人はお姉さんとあなたの2人なので2分の1)の半分(4分の1)の限度で、遺産をもらえるという制度です(「相続コラム:遺留分とは」参照)。
 ただ、遺留分減殺請求ということになると、専門家である弁護士の助力が必要であると思われますで、遺言書がある事が判明し、その内容があなたに不利ということなら、早めに相談し、必要に応じて委任をされるといいでしょう。
 なお、弁護士費用は、弁護士により異なり、又、あなたが受け取る金額によっても違いますが、総額でいえば、あなたが受け取る金額の10~20%の程度のことが多いでしょう。

【遺言書を無効にする証拠を集める】
 判断能力がないときに書かれた遺言書は無効です。
 現状では、お母さんが《老人特有の物忘れもありますので、100%理路整然と話をできない状態にもなって来ております》ということのようですが、もし、可能であれば、お母さんの判断能力を調べるテスト(「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」参照)を受けて頂くことも考えておくといいでしょう。
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16:28 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★★【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)

2013/11/06
法定相続人の夫への贈与が特別受益として認められたケース
(昭和55年5月24日 福島家庭裁判所白河支部)

【事実関係】・・(事実関係はわかりやすくするために変更しています)
 被相続人甲が死亡し、その相続人はA及びBである。
 右遺産として、いずれも不動産(評価額は合計2150万円相当)である。
 なお、被相続人は、生前にAの夫であるKに不動産(1350万円相当)を贈与した。
 Bは、Kへの生前贈与はAの特別受益であると主張した。
 このような主張は認められるか。

【参考条文】
 民法第903条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

【裁判所の判断】
 問題の贈与は、相続人であるAに対するものではなく、その夫であるKに対してなされているのであるから、形式的に見る限り特別受益にはあたらない。
 しかし、通常配偶者の一方に贈与がなされれば、他の配偶者もこれにより多かれ少なかれ利益を受けるのであり、場合によっては、直接の贈与を受けたのと異ならないこともありうる。
 遺産分割にあたっては、当事者の実質的な公平を図ることが重要であり、形式的に贈与の当事者でないという理由で、相続人のうちある者が受けている利益を無視して遺産の分割を行うことは、相続人間の実質的な公平を害する。
 そのため、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であってもこれを相続人の特別受益とみて、遺産の分割をすべきである。
 本件では
① 本件贈与はA夫婦が分家をする際に、その生計の資本としてAの父親である被相続人からなされたものである。
② 贈与された土地のうち大部分を占める農地についてみると、これを利用するのは農業に従事しているAである。
③ 贈与は被相続人の農業を手伝ってくれたことに対する謝礼の趣旨も含まれていると認められるが、農業を手伝ったのはAであること
などの事情からすると、被相続人が贈与した趣旨はAに利益を与えることに主眼があつた。
④ 登記簿上Kの名義にしたのは、Aが夫であるKをたてたほうがよいとの配慮からしたものと推測され、本件贈与は直接Aになされたのと実質的には異ならない。
⑤ 又、その評価も、遺産の総額が2150万円であるのに対し、贈与財産の額は1350万円であり、両者の総計額の38%にもなることを考慮すると、右贈与によりAの受ける利益を無視して遺産分割をすることは、相続人間の公平に反するというべきであり、本件贈与はAに対する特別受益にあたると解するのが相当である。

【弁護士コメント】特別受益が問題になるのは、原則として共同相続人が贈与を受けた場合である。
 従って、相続人の子供や配偶者が贈与を受けた場合には、特別受益にはならない。
 しかし、
① 遺産と比較して贈与の金額(本件では不動産であるが、その価額)が遺産額に比して多額であったこと(贈与額は繰り戻し前の遺産額の約62%となる)
② 被相続人意思が、本来の法定相続人に贈与する意思を有していたと考えられること
③ 更に配偶者名義にしたのは《夫である配偶者を立てた方がよい》との趣旨に出たものであること
を考慮して、この判例では配偶者(夫K)に対する贈与を、法定相続人である妻Aに対する特別受益と判断した。
本件事案としては適切な判断だと思われる。
 被相続人が孫に生前贈与した場合に、それが法定相続人のである子供の特別受益になるかどうかが問題になる。
 そのような場合に参考になる判例である。
 しかし、原則は特別受益にならないということは理解しておく必要があるだろう。
 そのうえで、金額の多寡が多すぎ、かつ贈与した経過をみれば、これは法定相続人に対する贈与と同視できるという特段の事情があれば、特別受益として認められる場合があると考えておくといいだろう。
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11:25 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続紛争中に生じた納税の負担【Q&A №313】

2013/09/05
 
 数年前になくなった叔父は、何十億単位の財産を、妻子ではなく兄弟に等分して遺贈するという遺言を残してなくなりました。(兄弟の一人が私の父です。)
 兄弟達は、叔父が亡くなると同時に、叔父の妻子達から遺留分減殺請求の申し立てを受けました。
 分割協議・調停を行うも話し合いは難航し、未分割のまま数年が過ぎ、今に至ります。
 分割協議が確定するまでは、遺贈を受けた人に納税の義務があるという事で、兄弟達は高額な相続税を課せられた状態が続いています。
 兄弟達には納税する現金がありませんので、叔父の残した土地のみならず元々自分たちの持っていた土地までを担保にいれて、延納をお願いしています。
 相続人達はのらりくらりの対応で、分割を決着させようとする気配がありません。

(質問1)本税以外に延滞金のような金額が発生しておりますが、この金額は、相続が確定して払いすぎた分が返還される時に返してもらえるのでしょうか。また、その延滞金を分割協議を長引かせている妻子達に請求出来るのでしょうか。
(質問2)このまま時間が過ぎて、減殺請求自体が無効になることはあるのでしょうか。
(質問3)減殺請求をする時点で、請求者に納税の責任を移行するべきではないかと思いますが、それは無理な事なのでしょうか。


この説明だけでは不十分かと思いますが、出来る範囲でかまいませんので、ご返答を頂きたく、よろしくお願いいたします。

記載内容

相続税 延滞税 長期化 遺留分減殺請求 更正請求


(困った一族)


【税金の相談は念のために税理士へ確認する】
 今回のご相談のうち、質問1及び3は、相続税という税金に関する相談です。
 可能な範囲で回答いたしますが、不正確な点もあるかもしれません。
 正確なところは、税金の専門家である税理士等にご確認いただきますようお願いします。

【請求を受けた時点で遺留分減殺の効果は発生する】
 まず、法律問題について回答します。
 遺留分減殺請求は、遺留分が侵害されたことを知って1年以内に行使する必要がありますが、その期間内に遺留分減殺の意思表示がなされた場合、その効果が発生します。
 減殺請求をした後に、請求した人が調停や訴訟をせずに長年放置しても、既に遺留分減殺の効果が発生しているため、減殺請求自体が無効になることはありません。
 なお、長期間放置されていることに不満があるのであれば、減殺請求を受けたあなたのお父さんの側から遺留分を確定する訴訟をすることも可能です。
 この点については、法律の専門家である弁護士と相談されるといいでしょう。

【減殺請求の時点でも、請求者に納税責任は移転しない】
 遺贈を受けた人物(受遺者といいます)に課税された相続税は、たとえ遺留分減殺請求を受けた場合でも、請求権利者に移転することはありません。
 この根拠は、相続税法の改正経過です。
 以前は遺留分による減殺請求があった時点で相続税の更正請求ができるということになっていました。
 しかし、平成15年の相続税改正により、請求した時点ではなく、遺留分による請求に基づく返還または弁償するべき額が確定した時に更正請求ができるということに変更されました。
 このような税法の規定の変更経過から見て、請求時点で更正請求ができず、その結果としての請求者の相続税の移転がないことになります。

【確定した場合には更正請求で請求者が納税義務を負う】
 前項で述べたように、遺留分減殺請求で返還するべき財産が調停や判決で確定した時には、お父さん側としては遺留分請求者に渡した財産分を減額した内容での更正請求が可能です。
 なお、この更正請求はすることが可能ということですので、しなくともなんら問題はありません。
 更正請求をした場合、払いすぎた分の相続税は当然還付されますし、その分にかかる延滞税も支払っていたのなら還付されます(なお、延滞税は還付されるのですから、分割協議を長引かせている妻子に返還請求はできません)。
 更正請求がなされた場合、その減額された分につき、請求者に相続税の支払い義務が発生します。


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16:16 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

生前贈与・遺贈と遺留分の計算【Q&A №272】

2013/04/22
祖母がなくなりました。祖父は、すでに他界しています。そして祖母が亡くなる前に私の母(祖母の娘)が亡くなっていますので遺産相続人の中の一人になります。母には姉、弟がおります。
 遺産1200万のうち母の姉は500万生前贈与し、あと700万残ってますが母の姉が言うには祖母の遺言状を持っていて祖母が亡くなったら200万母の姉に渡すというものらしいです。なので、さらに200万もらうつもりだと言っています。母の弟も私に200万のみ渡すと決めているみたいです。
 私は、このまま叔母叔父のいうまま200万で納得するしかないのでしょうか。祖母は叔父と同居していました。叔父叔母は結託しており叔母は200万を後で叔父に渡し叔父500叔母500私200という企みのように思えてなりません。

記載内容

生前贈与 遺贈 検認  

(シンデレラ)


【遺贈を除いた残額を分けるしかない】
 まず、現状を整理しますと、お祖母さんの遺産1200万円の中からすでに伯母(お母さんの姉)がすでに500万円の生前贈与を受けており、遺産としての残額は700万円。そして、その700万円の内200万円がお祖母さんの遺言書により伯母さんに遺贈されると言うことであれば、遺産分割協議の対象となる遺産は500万円ということになります。
 これらの生前贈与や遺贈が特に法的に問題ないということであれば、遺産の残額である500万円を伯母さん、叔父さん(お母さんの弟)、そしてあなたの3人で分割するしかなく、あなたが相続で取得するは約167万円になります。

【遺留分の侵害もない】
 では、遺留分(遺言によっても減らすことができない最低限の相続取分割合)の侵害はないのでしょうか。
 あなたの相続分は、お母さんから引き継いだもの(代襲相続)なので、3分の1の割合となります。
 遺留分は、あなたの相続分の2分の1ですので、6分の1の割合となります。
 今回の質問では、遺留分計算の前提となる遺産総額(残額に生前贈与や遺贈の額を加えたもの)は1200万円ですから、あなたの遺留分はその6分の1である200万円ということになります。
 つまり、叔父さん(お母さんの弟)が考えているように、あなたに残額500万円のうち200万円を渡すということであれば、あなたの遺留分を侵害することもありませんので、法的にはこれ以上の請求は難しいと言えるでしょう。
 ただ、前記の内容はあくまで法の理屈を通した場合の話ですので、遺産分割協議において違う内容を合意することは自由です。

【念のために遺言の有効性を確認しておく】
 ただ、念のために遺言書が法的に有効なものかどうかは確認した方がいいでしょう。
 そのため、きちんと伯母さんから遺言書を見せてもらった上で、全文の自署、日付の記載、押印など遺言の要件を満たしているかどうかを確認しましょう(自筆遺言の有効性については過去の相続Q&Aの Q&A №50Q&A №69 などが参照になるでしょう)。
 もし、遺言書が有効なものということであれば、あなたとしては、叔父さんの言うとおり200万円で手を打つしかないでしょう。


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14:44 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★母の生活費負担と特別受益・寄与分【Q&A №254】

2013/03/08
 被相続人は父の母親であり、現在遺産相続争いが起こっています。
 法定相続人は父と、その妹です。

被相続人について
・私の父(相続人1)と同居
・収入は年金のみ
・遺産は銀行口座に計1360万円
・要介護認定「要介護1」

父の妹(相続人2)について
・嫁入りしている
・被相続人に対して金銭的なサポートなし
・相続人1から個人的に300万円借金

 被相続人が死亡するまで食事や医療費をすべて父が負担していたため、これが寄与分に当たるのではないかと思っています。
 ただ、被相続人の同意のもと、固定電話・ガス・水道・電気料金を被相続人の口座から支払っていました。これが特別受益とあたるのか疑問に思っています。
 医療費は、直近の5ヶ月平均で4万円/月くらいで、病院一往復につき1000円、すべて父が負担しています。
 また、被相続人は生前、不注意などから鍋を焦がしたり水道の出し放しなどが月に2,3回ありましたのでその面でも金銭的に寄与したとはならないのでしょうか。

長くなってしまいましたが、
・寄与分はどのくらいになるのか
・本人同意の下でのインフラ料金負担は特別受益にあたるのか
ご回答よろしくお願いいたします。

記載内容

医療費 生活費 同居

【通常の寄与を超えた寄与が必要】
 まず、寄与分とは《被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした》場合に求められるものですので、通常期待される程度を超える貢献が必要とされています。
 そのため、なんらかの寄与をすればそれがすべて寄与分になるわけではなく、両親と同居したという程度だけでは、寄与分とは認められません。
 親子間であれば扶養義務(成人であっても)があり、通常の親子であればなんらかの寄与があるのが通常と考えられているからです。
 通常の寄与程度であれば相続分で評価されているものと考えてもよいでしょう。

【多額の医療費なら可能性はあるが・・】
 前記のような見解から言えば、同居していた高齢の母の食費負担程度であれば親子間の扶養義務の範囲内であり、寄与分とは認められない可能性が極めて高いと思われます。
 また、不注意で鍋を焦がしたり水道を出しっぱなしにしたりということについても、修理に数十万円や数百万円を要したなど、よほど高額でない限り、寄与分と認められる可能性はないでしょう。
 他方、医療費についても、風邪などで年に数回程度通院する費用程度であればこれも通常の寄与の範囲内と言えるでしょう。
 ただし、毎月数万円の医療費が継続的に数年間発生し、合計すれば数百万円にも上るというケースであれば、本来お母さんの年金収入から負担すべきものといえますので、通常の寄与を超えた特別な寄与として、お母さんの年金収入によって構成された預金の減少を食い止めたものと評価され、寄与分が認められる可能性があると思われます。

【水道光熱費負担は特別受益ではない】
 他方、特別受益は、そもそも贈与が対象ですし、遺産分割上、相続人間であまりに不公平になることを避ける制度です。
 そのため、多額の贈与や遺贈が特別受益とされることはあっても、月額数万円程度の生活費補助等については、特別受益の問題は発生しません。
 ましてや、光熱費については、お母さん自身も同居しているのなら、相当の光熱費を負担するべきものであり、特別受益と認められる可能性低いと考えるべきでしょう。


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11:36 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺贈された預金口座の取引履歴【Q&A №203】

2012/09/20
 被相続人の口座開示請求
 被相続人が遺書に相続人Aに贈与すると記されていた預金口座をB相続人が開示できますか、被相続人の死亡時点でその預金はAの預金であり被相続人の口座で無くなるがAの同意なくして開示請求は出来ないと思いますが如何ですか。

記載内容

遺言 預貯金開示 相続人一人からの請求 遺贈を受けた者の預金の開示請求 使途不明出金

(CAT)


【2つの口座の開示が問題となる】
質問の趣旨からみて、
①被相続人の口座の開示請求できるか?
②遺贈を受けたAさんの口座の開示請求はできるか?

という2つの口座の開示が問題となります。

【被相続人の口座の開示請求は可能】
 過去には、相続人の一人から被相続人の預金の開示を請求できませんでした。
 開示を求めるには相続人全員の同意が必要だというのが多くの金融機関の扱いでした。
 しかし、平成21年に、相続人の一人からの請求でも開示しなければならないという最高裁判決が出て、その後は、相続人の一人からの請求で、被相続人の口座が開示されるようになりました。
 相続人は、被相続人の権利義務を承継する立場ですので、この判決は当然のことです。

【遺贈を受けたAの預金の開示は困難】
 しかし、遺贈を受けたAさんの預金通帳は開示請求できません。
 その方が相続人であっても、開示は、Aさんの個人情報であり、金融機関は開示しません。
 ただ、Aさんの預金をなぜ調べる必要があるのでしょうか。
 遺贈があれば、Aさんが取得しているはずであり、それ以上にAさんの遺産を調査する必要はないはずです。

【Aさんの預金を調べたいという意図は・・】
 ひょっとすると、被相続人から生前にAさんが多額の贈与を受けているのではないかというので、調査したいのかもしれません。
 もし、そうであれば、被相続人の預貯金の入出金情報を確認し(これは前記のとおり取り寄せが可能です)、その出金者が誰かを預貯金払戻票の筆跡から特定し、又、預貯金通帳やキャッシュカードの保管状況から確認するしかないでしょう。
 但し、そのような方法で不正出金が確認できたとしても、そのことだけでAさんの預貯金の開示をすることはできないことは前に述べたとおりですが、少なくとも訴訟などはできるでしょうから、訴訟の中で取り寄せの交渉を弁護士にしてもらうしかないでしょう。


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10:52 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★姪が叔父の遺産を相続するには【Q&A №171】

2012/07/09
 遺産について
 叔父は独身でひとり暮らしで私と同居の母と姉弟です。先日 癌であることが分かり、昨日から入院しました。
 叔父は投資信託・800万円ありますが万が一の時は姪の私に託すとメモを見せてくれたのですが 姉の母を越して私が相続出来るのでしょうか?その金額に対しての税金はどの位掛かるのでしょうか?どうかよろしくお願いいたします。

記載内容

 叔父 遺言 メモ

(JJJMR)


【このままでは、あなたは相続できません】
 今回のご質問では、独身の叔父(母の弟であれば「叔父」と思われます)さんには配偶者も子供もいないでしょうし、叔父さんご両親も死亡されているでしょうから、叔父さんの兄弟が相続人になります。 あなたのお母さんは、兄弟(姉)ですので、相続人になります。
 そのため、叔父さんの姉のであるあなたが、相続人になることはありません。
 このまま叔父さんが亡くなれば、他の相続人間(叔父さんの兄弟。但し、その兄弟が先に死んでおればその子供)で遺産分割協議を行うことになり、あなたはその話し合いに参加できません。

【単なるメモは遺言にはあたりません】
 今回、叔父さんが《万が一の時は姪の私に託す》という内容のメモを渡したとの話ですが、仮にその意味が財産を渡すということであっても、これは遺言ではなく、あなたが叔父さんの遺産をもらうことはありません。
 遺言は、日付、署名、押印、全文を自筆で作成するなど厳しい法律上の規制があり、単なるメモがこれらを満たすことはまずないからです。 【姪でも遺言があれば相続できます】
 しかし、叔父さんがあなたに財産を残すという遺言を作成していれば、あなたも叔父さんの財産を受け取る(遺贈と言います)ことができます。
 もし叔父さんが本気であなたに財産を残すつもりであり、あなた自身も遺贈を受けるつもりであれば、一度、叔父さんに正式な遺言作成を提案してみてはいかがでしょうか。
 なお、形式の不備などで無効となる遺言がよく見られますので、遺言作成の際には、ぜひ一度専門家に相談されることをお勧めいたします。

【相続税は課税されるか】
 相続税の基礎控除額(現時点の法律では5000万円+1000万円×相続人数)までは課税されません。
 そのため、叔父さんの財産が投資信託800万円ということであれば、相続税が課税されることはありません。

【兄弟だけが相続人であれば遺留分減殺はできない】
 なお、法律上、遺言で財産をもらった人は、他の相続人から遺留分減殺請求を受けるケースがありますが、今回は、おそらく叔父さんのご両親もすでにお亡くなりだと思われますので、遺留分権者が存在せず、この心配は必要ないでしょう。

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23:36 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

葬儀代は誰が出すのか?【Q&A №140】

2012/04/17
 


 母が亡くなりましたが、葬儀代は母の普通預金口座から出すものだと言う叔父の意見で私の相続分の普通預金口座から葬儀代を引かれました。叔父にも定期預金口座が遺言書により遺贈されていますが、葬儀代は普通預金からだと言うことで叔父の相続分からは負担されません。
 また不動産を遺贈された兄弟からも葬儀代は負担してもらえないとのことですが、この場合は仕方ないのでしょうか?法律的にはどうなのでしょうか?教えてください。よろしくお願いいたします。

記載内容 

葬儀費用 共同相続人 遺贈
(聡子)


【葬式費用は相続債務ではない】
 相続については民法という法律で定められていますが、葬儀代(葬式費用)については規定がありません。
 被相続人が死亡した場合には通常必要となる費用ですので、一般には相続債務のように思われていますが、正確に言うと死後に発生する費用ですので、相続債務とはいえません。

【葬式費用をだれが負担するかは意見が分かれている】
 そのため、葬儀代は誰が負担するのか、学説や裁判所の判断も分かれています。代表的なものには、喪主説、相続人負担説、相続財産負担説、慣習等で決定する見解などがあります。
 喪主説だと、葬儀費用を喪主が負担し、香典は喪主が取得するということになりますが、最近は香典を受け取らない場合が多くなっているため、この説は妥当ではありません。
 相続人全員が葬儀に出席した場合などは、葬儀費用が常識的な範囲内であることを前提にして、相続人全員の負担として扱うというのが妥当な見解だと考えられます。

【遺贈を受けた者であっても、葬式費用を負担しない】
 この考え方によると、叔父さんは相続人ではありませんので、定期預金を遺贈されたとしても葬式費用は負担しないという結論になります(宗教法人や慈善事業など純然たる第三者に遺贈された場合を考えれば理解しやすいのではないでしょうか)。
 不動産を遺贈されたご兄弟は、あなたと同じで相続人ですので、葬儀費用を負担すべきだということになります。

【とりあえずは預金から出すとしても・・】
 葬式は被相続人の死亡後、すぐに必要になる費用ですので、とりあえずはあなたの取得する普通預金から支出するとしても、他のご兄弟に負担してもらうように話をもっていくべきでしょう。
 なお、葬式費用を共同相続人全員で分割して負担した場合には、香典も共同相続人全員で分配することになるでしょう。

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10:27 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★遺言にも代襲相続はあるか【Q&A №45】

2010/10/27

夫の死亡後母が死亡しました。母に遺言書はあります
夫には二人の子供がおり、この二人が代襲相続をしました。
その遺言書には孫に代襲相続させることは書いていないから相続権はないと言われています。
この件についてよろしくお願いします。


記載内容

  遺言 受遺者の死亡 代襲相続 
(ひつじ)


【遺言書の記載】
 ご質問では、遺言書がどのように書かれていたのか分かりません。
 そこで、「すべての財産は、●●(あなたの夫)に相続させる」と書かれていたという前提でお答えします。

【代襲相続】
 代襲相続とは、被相続人(本件では夫の母)の死亡より前に、相続人であった子(あなたの夫)が死亡していたときなどに、その者の子(あなたの夫の子・・以下、夫の子といいます)が相続人になることをいいます。
 本件質問の場合、夫の子が代襲相続によって相続人になることは間違いありません(参考までに言えば、配偶者であるあなたは代襲相続できません)。

【遺贈者が死亡していた場合の扱い】
 問題は、夫の子が遺言どおりに「すべての財産」を相続できるかという点です。
 あなたの夫が生存しておれば、遺言書で全遺産を取得できたはずですが、その夫が先に死亡していたということであれば、あなたの夫には遺産はいきませんし、又、夫の子も遺言書どおりには遺産を取得できません。
 なぜなら、遺言者が遺言で明らかにしているのは、その指定する相続人(あなたの夫)に遺産をあげるということであって、代襲相続人である夫の子に相続させるということまで記載されていないからです。
 なお念のために言えば、遺言書に記載されていない遺産や記載されていても遺贈を受ける人が死亡したような財産については、代襲相続の対象になります。

☆ワンポイントアドバイス☆
参考までに言えば、遺言者が「あなたの夫に遺産全部を相続させる。但し、あなたの夫が先に亡くなった場合には、夫の子に相続させる」と遺言書にはっきりと記載しておけば、代襲相続ではなく、遺言書の記載に基づいて、夫の子に遺産が行くことになります。
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13:19 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【コラム】生前贈与を受けていたら

2009/11/02
生前に、相続人が被相続人から、贈与を受けていた場合や、遺言による贈与(遺贈)を受けた場合、これらの生前贈与や遺贈は、「特別受益」として相続分の算定の際に考慮する制度があります。

例えば、母親を早くに亡くした兄弟の父親が亡くなり、その遺産分割を行う場合で説明します。
兄の方が結婚して家を建てる際、父親に500万円援助してもらったとします。
これは、特別受益として算定されます。
もし、父親の遺産が1500万円であるとすれば、兄が援助してもらった500万円を加算した額である2000万円が相続財産となります。その際、それぞれの相続分は下記のようになります。
兄の相続財産:(1500+500)÷2-500(特別受益分)=500万円
弟の相続財産:(1500+500)÷2=1000万円


 この特別受益は、相続人の中で、遺産分割前に遺産の前渡しを受けたといえる場合、相続人間での公平を保つために、その分も考慮するという制度です。もっとも、全ての生前贈与が特別受益に該当するわけではなく、特別受益となるのは、「婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与」です。
 「婚姻、養子縁組のための贈与」とは、持参金、嫁入り道具、結納金、支度金など婚姻又は養子縁組のために、支出してもらった費用です。
 「生計の資本としての贈与」とは生計の基礎となる贈与は一切含まれ、かなり広い意味に解されています。
 具体例としては、子が別の世帯をもつために住宅やその他の財産の贈与を受けた場合や、田畑の贈与を受けた場合などです。
 多額の贈与は、特別な事情がない限り、特別受益にあたると考えられます。
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16:08 寄与・生前贈与 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【コラム】遺贈とは?受遺者とは?

2009/09/08
【遺贈とは?受遺者とは?】
遺言で遺産を与えることを「遺贈」といい、このような譲渡を受けた人を「受遺者」といいます。
受遺者は相続人である場合もあれば、それ以外の人の場合もあります。
なお、受遺者は遺贈を拒否することも可能です。

【「遺贈」と「相続させる」の違い】
 遺言で「遺贈」であった場合と「相続させる」であった場合とでは後の手続や費用が異なってきます。
例えば、「遺贈」なら不動産の登記には他の相続人の同意が必要ですが、「相続させる」なら不要です。又、「遺贈」の場合の登録免許税は、「相続させる」場合の5倍です。
 なお、法定相続人に対するものは「遺贈」と明記されているものは別として、「相続させる」という意味とするのが実務の扱いです。但し、相続人でない方に「相続させる」と明記しても「遺贈」となります。

【遺留分減殺請求】
長男が会社の株を全部引き継ぐなど、相続人の一人が被相続人から遺贈を受ける場合、法定相続分とは違った遺産の分け方になることが多々あります。
遺贈の結果、相続人の譲り受ける財産が遺留分以下になる場合、相続人は遺留分減殺請求をすることができます。(詳しくは遺留分減殺請求をご参照下さい。)

【遺贈は贈与税?相続税?】
法定相続人以外の人が遺贈を受けた場合でも、贈与税ではなく相続税が課税されます。
税率などについては、通常の場合の2割増しになるなど、法定相続人の分と計算方法が異なりますので、ご注意下さい。
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18:23 遺贈と受遺者 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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