"祭祀"に関連する記事一覧
 | HOME | 

★【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

2016/12/02
兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか

(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

【ケース】

被相続人は離婚し、2人の子とは20年以上疎遠になっていたが、自身の兄弟とは比較的密に交流があったため、亡くなったという連絡を受けた兄弟が喪主として葬儀をし、費用を支払ったという事案において、相続人に葬儀費用や埋葬等の行為にかかる費用を請求できるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は以下のような内容の判断をしました。

亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、同儀式を準備し、手配等して挙行した者が負担し、埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当である。
なぜならば、追悼儀式を行うか否か、同儀式を行うにしても、同儀式の規模をどの程度にし、どれだけの費用をかけるかについては、もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し、実施するものであるから、同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であるからである。
他方、遺骸、遺骨の埋葬等の行為に要する費用については、亡くなった者の祭祀を主宰すべき者が負担すべきものであるが、亡くなった者には二人の子があるものの、20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況である一方(なお、長男は葬儀にも出席しなかった。)、兄弟らとの間に比較的密な交流があった事情が認められることも考慮すると、亡くなった者の祭祀を主宰すべき者を子供らのいずれかとすることが慣習上明白であると断ずることはできない。


【弁護士のコメント】

葬儀費用は相続債務ではなく、喪主を務めた者が費用を負担すべきであると考えられています。
もっとも、法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、その他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いたうえで、他の相続人に分担してもらう形で遺産分割の中で解決することが実務上、多いです。
ただ、法定相続人でない人が喪主になり、葬儀を行った上葬儀費用を支払ったという場合には遺産分割の中で解決することもできませんので、話は別になります。
この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪には請求できない》という結論になっています。
しかし、この裁判例の事案は、20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況であり、また甥姪のうち一人は葬儀にすら出席していないという事情がありますので、この事情が違えば、別の判断がなされる可能性もあります。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:51 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

預貯金を祭祀の費用として相続人に託したい【Q&A №510】

2016/06/21



【質問の要旨】

祭祀の費用として預貯金を託したい

記載内容  信託 葬儀 

【ご質問内容】

預貯金を相続させるのではなく、葬儀や供養とお墓の存続にかかる費用として、名前を継ぐ者に託したいと思っています。

どの様に遺言書を作成したら良いかお教え下さい。

2名の子供がおりますが。金銭感覚がしっかりし、供養をしている者に預けたいと思っています。

(まさこ)






【遺言で祭祀の承継者を定める】


葬儀・供養及びお墓の存続を託すということですが、そのような役割は法律上、《祭祀の承継者》ということになります。

さて、遺言で《祭祀の承継者》を定めることはできます

但し、当然のことですが、《金銭感覚がしっかりし、供養をしている者》というようなことを遺言書に記載しても効力はなく、具体的な氏名の記載が必要です。


【祭祀の費用のために使用を実現させるには・・負担付遺贈では難しい】

考えられるのは、
 ① 遺言で負担付遺贈をする。
 ② 遺言信託をする。
のいずれかの方法です。

まず、①の方法の場合、遺言で祭祀の承継者に預貯金は相続させる(遺贈する)としたうえで、これらの預貯金は祭祀の実行に使わなければならないという負担も記載しておくことになります。

ただ、質問にあるように預貯金を相続させたくないというのであれば、この方法はとれません。

また、このような負担付遺贈をしても、本当にそのような目的に実行されるのかが疑問です。

さらに、仮に負担が実行されない場合には、法律上は負担付遺贈の遺言の取消を裁判所に請求することも可能です(民法1027条)が、現実問題としてそこまでするような例は少ないでしょう。

そのため、①の負担付遺贈はお勧めできません


【遺言信託の方がお勧め】

信託法は遺言信託という制度を定めています(同法3条2号:末記をご参照ください)。

遺言で財産(預貯金等)を委ねる人(受託者)を定め、その受託者に祭祀の費用として《祭祀の承継者》に金銭を渡すことを委託するのです。

信頼できる受託者に金融資産を託して祭祀のための費用を管理してもらい、《祭祀の承継者》の要請に応じて費用を支払ってもらうのです。

このような定めをしておくことによって、受託者に信頼できる人を選べば、その人がきちんと《祭祀の承継者》に必要な金銭を渡してくれるでしょうし、もし祭祀に使われないのであれば、そのようなお金を支払わないということになります。

次に、遺言では細かなことは定めることは少ないので、生前に受託者との関係で細かなルールを決めておく必要があります。

また、受託者は監督という面がありますので、相続人でない方が望ましいです。

ただ、相続人が遺産分割をする前に速やかに受託者に遺産を移動させる必要がありますので、遺言書は検認という時間のかかる手続きが不要で、速やかに実行が可能な公正証書遺言でするのが望ましいです。

いずれにせよ、遺言信託についての知識がある弁護士と相談され、あなたの希望がかなえられるような方策を考えられるといいでしょう。

【信託法3条2号】
第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:04 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続人不在の葬儀代や香典の扱い【Q&A No.470】

2015/10/05



相続人のいない従兄弟の葬儀を執り行いました。

従兄弟の財産は、国に没収されてしまいました。

葬儀代だけは戻りましたが、香典分を差し引かれてしまいました。

その後の法要などで、出費がかさみ納得できません。



記載内容

  相続人不在 香典 葬儀費用


【ご質問内容詳細】

 身内が一人もいない従兄弟が急になくなり財産が国に没収されることになりましたが葬儀代だけは戻りました。

 しかしその時に頂いた100万円近い香典を申告したところその分を全部差し引かれてしまいました。

 この差し引かれた分の香典代はそのまま国に持って行かれることは理解できません

 その後永代供養や墓の撤去費用や三回忌など費用がマイナス100万近くかかりました

 裁判所の葬儀時の拠出金等清算完了してもう半年以上たちましたが取り戻せることはできますか。



(マロン)








【葬儀費用は相続債務ではないが・・】

 葬儀費用は相続債務ではありませんので遺産からの支払いはできないというのが原則です(なお、相続税の申告では葬儀費用は費用と控除対象として扱われますが、それは税務の扱いであり、民法上は遺産にかかわる債務とはされておりません)。

 この理由は、遺産から支払われるべき債務は生前に発生したものに限られるのに、葬儀費用は死後に発生するものだからです。

 そのため葬儀費用は原則として喪主が負担することになります。

 ただ、葬儀は①社会生活上で死亡に伴うものであること及び②その額がそこそこ高額であることから、喪主以外の他の相続人も葬儀に参加していたような場合には、公平の観点から法定相続人に負担させることも実務上、よく行われています

 そのため、財産管理人(国)としては、本来は遺産から支出するべきものではないけれども、葬儀費用程度は支出しても差支えないと判断し、あなたに支払いをしたのだと思います。



【香典の扱い】

 葬儀費用は本来、相続債務ではないのですが、公平の観点から遺産からの支出を認めたとすれば、同じく公平の観点から言えば、収入である香典は遺産に入れるべきだという見解になります。

 本来的には喪主が負担すべきとされる葬儀に関する支出である葬儀費用は相続財産から出してもらうが、喪主が受け取る葬儀に関する収入である香典は返さなくて良いというのはやはり公平に反するという結論になりますので、財産管理人があなたから香典分を回収したのはやむをえない処置だったというべきでしょう。

 次の図のような考え方です。

葬儀費用  本来喪主負担  しかし、財産管理人が支出

 香 典   本来喪主の物  しかし、財産管理人の収入



 元々、葬儀費用も当然遺産から出すべきものではなかったのだという前提にたてば、香典で回収を図るという財産管理人の判断もやむを得ないものと思われます。

 経済的あるいは金銭的には損をするような場合もありますが、葬儀に関連する事項は単に経済的に考えるのではなく、社会生活の上でやむを得ずする点もあります。



【法事費用の扱い】


 死亡直後の葬儀費用も原則は相続費用ではありませんので、その後の初七日や四十九日、一回忌等の法事費用についてはなおさら相続費用には当たらず、遺産から支出することは認められません。

 法事費用については、祭祀の承継者が負担するということになります。

 相続人ではないあなたが法事を行うのであれば、その点は予め承知されておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:48 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

後妻の、祭祀の義務について【Q&A №448】

2015/05/28



【質問まとめ】

祭祀の承継について質問です。

妻と実弟である養子が相続人です。

その養子が祭祀について費用負担等一切を拒否しています。

祭祀の執り行いと費用負担は、妻が行わなければならないのでしょうか?

お骨や位牌は、①父、②父の先妻、③父の先妻との間の子、④父の親のものです。



記載内容

  祭祀 後妻 


【質問詳細】
 
 数年前に母が再婚。

 再婚相手の男性を父と呼びます。

 父も再婚で先妻とは死別、実子も病死。

 先妻が存命中に、父は祭祀を血縁で引き継いでもらうために実弟(既婚、子息あり)と養子縁組してます。

 母と再婚の際、私とは養子縁組してません。

 先日父が亡くなり、最近母と実弟とで遺産分配の目処がつき、祭祀について話合に入りました。

 実弟は祭祀について費用負担も含め一切を拒否、仏壇や墓の処分を要求してます。

 ちなみにお墓のお骨や仏壇の位牌は、父及び実弟の両親と兄弟と、父の先妻と実子のものです。

 祭祀全ての執り行いと費用負担は、母が全て行わなければならないのでしょうか。


(goo)





【祭祀の承継とは】

 祭祀とは祖先を祭る等の宗教的な儀式を行うことであり、それを中心となって執り行うのが主催者です。

 例えば、葬儀の喪主というのをイメージするとわかりやすいでしょう。

 死亡された方の一切の財産は相続人にいくのが原則ですが、このような祭祀に関係する物や権利(例えば仏壇や墓の権利)などは例外として、祭祀を主催する者が受け継ぐことになります。






【指定が無ければ慣習、慣習もなければ裁判所】

 祭祀の承継については民法(末記条文を参照ください)で定められています。

 まず、被相続人の指定があればその人が祭祀の承継者になり、そのような指定がない場合には慣習で決定されます。

 ただ、慣習というものがどのようなものかは必ずしも明らかではありません。

 民法では、慣習が明らかではない場合には家庭裁判所で決めるとされています。


指定  慣習 家裁







【現実問題としては】

 慣習といえるかどうかは明らかではありませんが、普通なら子供(複数おれば長男)か、配偶者が祭祀の主催者となるケースがほとんどでしょうが、現実問題としては、残された遺族間で、他の親族との関係も考慮して決定されるようです。

 さて、本件の質問の回答ですが、《法的には》お義父さんの指定がないのであれば、慣習に従って決定され、それが明らかではないというのであれば家庭裁判所で決定してもらうというのが回答になります。

 ただ、養子であるお義父さんの弟が祭祀の主催者となることを拒否しているのであれば、お母さんが祭祀の主催者にならざるを得ないでしょう。

 なお、祭祀の主催者になったからといっても、法事などしなければならないという義務はありませんので、出すべき費用がないというのであれば49日や一周忌などの法事をしないという選択肢もありえます。





【仏壇や墓の処分について】

 なお、養子であるお義父さんの弟さんは、仏壇や墓の処分を要求しているとのことですが、これらの物や権利は祭祀の承継者が単独で取得します。

 そのため、お母さんが祭祀の承継者となるのであれば、これらの物や権利の維持管理や処分については、養子の意思とは無関係にお母さんが独自に決定されるといいでしょう




<参考条文・祭祀の承継について>

  第896条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の

         権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に專属したものは、

         この限りでない。

  第897条  系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣

         習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続

         人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者

         が承継する。

         前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権

         利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:01 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★後妻への生前贈与の証明【Q&A №401】

2014/09/16
 父が亡くなり、相続人は、継母・私・妹の3人です。父と継母は十数年2人で暮らしてきたので、父のものを管理しているのは継母です。継母は仕事をしていますが、生活費は全て父が負担し「父に養ってもらった」と言ってました。葬儀後、継母は「父の退職金は4000万円あったけど、父が全て使った」と言ってきましたが、父は退職の際「退職金4400万円の半分2200万円を継母に渡した」と父の兄弟に話したそうです。
 父の口座の残高は150万円程ですが、継母は、そこから葬儀費用・法要費用等、とにかく細かいものでも出費した全てをマイナスした表を作り「まぁざっと書き出しただけだけど」と渡してきました。構えられるといけないので、まだ継母には何も話していません。一応、銀行の明細書を10年分発行してもらいましたが、肝心の退職は10年以上前です。なので、継母が否定し、退職時の父の通帳がない、もしくは継母が隠す等したら、証拠はありません。
※2200万円は継母のものになるんでしょうか。
※父に養ってもらって生きてきた継母は、葬儀・法要費用等、一切負担しないでいいものなんでしょうか。
 ギャンブル好きで家庭を顧みない父のせいで、苦労し、嫌な思いをし、悲しい思いもし、必死で生きてきました。なにかアドバイスをいただければ有難いです。どうぞ宜しくお願いいたします。

記載内容

葬儀代 法要

(ニコラス)


【継母に贈与された金2200万円は特別受益になる】
 お父さんが継母さんに2200万円を渡したのが贈与であるとすれば、金額が多額であることから、「生計の資本としての贈与」であるとして特別受益になり、遺産分割の際に、遺産に持ち戻すことになります。

【贈与の証明ができるかが問題】
 ただ、持ち戻す前提として、2200万円の贈与があったことを明らかにする必要があります。
 本件では、継母さんは退職金はお父さんが全部使ったと言っており、贈与の事実を認めていませんので、そのような贈与をされた事実はあなたが証明する必要があります。
 贈与の証明としては、ある時点で2200万円の金額が引き出されていること及びその金額を継母さんが取得したことの2点を証明する必要があります。
 あなたが照会をかけても、金融機関には記録がなかったというのであれば、これらの2点を証明することはむずかしいでしょう。
 お父さんが言っていたということでは到底、証明にはなりません。

【葬儀・法要費用は相続費用ではない】
 葬儀費用や法要費用などは、相続開始の後に発生したものであり、相続される債務ではありませんし、相続のための費用でもありません。 
 ただ、葬儀費用については、相続人全員が葬儀に出席している場合などは、その費用を相続人全員で負担するという《実務的解決》がなされることが多いです。
 なお、法事の費用については、祭祀の主催者の負担となると理解されるといいでしょう(この問題については当ブログ Q&A №308Q&A №140等も併せてご参照ください。)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:50 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

嫁入り道具と持参金の扱い【Q&A №377】

2014/05/28
 父の遺言書で不動産祖先祭祀は兄、預貯金は母、株は母と私と指定されていました。
 兄の引き継ぐ不動産の維持管理費を 請求してきましたので、不動産を相続してた者が支払うものでしょうと言って、拒否しました。兄の言い分は売ることもできない不動産の管理をおれにさせるのかというものです。
 母が半年前に他界して、遺産相続協議書を作りました。その中に「この協議書に記載されていない財産、および、知られざる遺産(積極財産、消極財産とも)は、すべて兄が取得または承継する。」という一項ががあるから、母が相続するように書かれているものはすべて兄が相続する権利があると言ってきました。
 また、嫁入り道具にかかった費用を計算に入れると言っています。兄も、多額の結納金を親から出してもらっているし、家を建てたときにもお金をたくさんもらっています。しかし、そのようなものは一切もらっていないと言い切ります。
 母の遺産分割協議書は今回の件に影響しますか。嫁入り道具はどのように考えるべきでしょうか。計算の仕方を教えてほしいです。母はメモを残している可能性があります。持参金と嫁入り道具では考え方が異なりますか。

記載内容

嫁入り道具 持参金 遺産分割協議 死亡した人に遺贈する遺言の効力
(みつこ)


【まず、母が死亡し、その後、父が死亡したと理解しての回答】
 質問ではお母さんとお父さんのどちらが先に死亡したのかが明らかではありません。
 ただ、質問中に「母の遺産分割協議書は今回の件に影響しますか」とあり、この「今回の件」とはお父さんの死亡ということだと理解すると、経過としては次のとおりになると思います。
  お父さんの遺言書作成⇒お母さんの死亡⇒お父さんの死亡
この前提で、以下のとおり回答します。

【遺産分割協議書はその被相続人の遺産について効力を有する】
 お母さんの遺産分割協議は、お父さんとあなた、お兄さんの3人(と思われる)で作成されているはずです。
 ただ、遺産分割協議は、被相続人であるお母さんの遺産について効力を有します。
 お母さんの分割協議の段階ではお父さんは死亡していないのですから、お父さんの遺言書に「預貯金は母」、「株は母と私」と記載されていても、遺産分割協議の時点ではお父さんの預貯金や株は、お母さんの遺産ではありません。
 従って、お父さんの保有している預貯金や株がお母さんの遺産分割の対象となることはありません。

【死亡した人に対する遺言は無効】
 お父さんの遺言書に記載されていた「預貯金は母」等の記載は、その遺言書が効果を発揮する(お父さんが死亡した)時点では、既にお母さんが死亡していましたので、上記遺言書の部分は効力を失っており、お母さんのものになることはありません。
 そのため、お母さんの遺産分割協議書に「この協議書に記載されていない財産・・は、すべて兄が取得または承継する」との条項があったとしても、お兄さんのもらう分が増加することはありません。

【嫁入り道具と結納金、建築代金の補助】
 嫁入り道具については特別受益になるとの考えもあります。
 しかし、一方ではお兄さんも結納金を出してもらっているのが普通です。
 調停などの実務の扱いでは《痛み分け》ということで双方の主張を相殺する、あるいは主張を双方が撤回するという扱いをすることも多いです。
 もちろん、嫁入道具額と結納金のどちらかがあまりにも多額であり、差額が大きすぎる場合には、相続人間の公平を考慮して特別受益とされる場合もありえますが、その場合には差額が多額であるという点を証明する必要があるでしょう。

【お母さんが残したメモの効力】
 お母さんが残しているとされる(おそらく持参品に関する)メモがある可能性があるようです。
 ただ、私(大澤)が経験したケースでは、持参品を毛筆で記載した巻物風の目録が提出されたケースがありましたが、この場合も、結婚式費用や結納金、嫁入り持参道具などを考えて、双方が互いに特別受益の主張を撤回するということで最終解決をしました。
 兄弟姉妹間で極端な差額がない限り、一方の分だけを特別受益にすることにはならないと考えていいでしょう。

【嫁入り道具等の計算のしかた】
 嫁入り道具については、そのもらった当時の時価を前提に金額に換算して計算します。
 持参金はその金額でカウントしますし、結納金を出してもらった時もその金額で計算します。
 ただ、繰り返しになりますが、嫁入り道具や持参金が莫大な金額というのではない限り、特別受益としては扱われない可能性も高いです。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:01 生前贈与・特別受益 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

生命保険金から葬儀費用を捻出してよいか。【Q&A №308】

2013/08/27

 母が亡くなり、母の生命保険金300万円の受取人が私を含め兄弟3人に、それぞれ100万円ずつという内容です。
 葬儀は兄弟の話し合いによって兄弟3人が喪主を務めることで無事終わったのですが、葬儀費用は一旦私が全額を負担しました。
 3人の共同で喪主を務めたという経緯もあることから、葬儀費用については3人で等分して負担すべきと考え、2人の兄に対して葬儀費用のそれぞれ3分の1ずつを請求しようと思います。
 ここで、3人がそれぞれ受取人となっている生命保険金から葬儀費用を出してもらいたいと考えているのですが、事前にその旨の承諾は必要になりますでしょうか?
 ちなみに、生命保険金は現在、全額を私が管理しております。さらに、相続財産の中で現金については、母の預金として他に300万円ほどあり、これも私が管理しております。

記載内容

生命保険 葬儀費用


(みきお)


【葬儀費用は相続債務ではないが・・・】
 葬儀費用は相続開始後に生じた債務ですので、相続債務ではありません。
 葬儀費用は原則として祭祀の主催者が負担するべきものであり、相続財産に関する費用ともいえないとされており、祭祀の主催者が単独で負担するべきものです。
 ただ、裁判例などを見ると、葬儀費用が妥当な額であり、かつ他の相続人も葬儀に参加しているのであれば、相続人間で分担するべきであるとしたものもあります。
 この場合、香典などは祭祀の主催者が取得しますので、葬儀費用を分担するとした場合には、香典分を差し引いて計算することになるでしょう。
 今回の質問では、3人が共同で喪主を務めたとのことですので、このような場合には3人で分担するというのが公平に合致した結論になるでしょう。

【生命保険は受取人が単独で取得する】
 生命保険による死亡保険金は遺産ではなく、受取人個人が単独で取得するべき財産です《これについては過去の回答(当ブログ、Q&A №298Q&A №299ほか)を参照ください》。
 質問の場合には、相続人3人がそれぞれ受取人である生命保険金なので、あなたが管理している保険金はその受取人に支払う必要があります。

【トラブル防止のため、予め、控除の同意を得ておく】
 今回の質問では、その保険金を他の相続人に支払う際に控除していいかどうかの問題ですが、法的にはあなたの他の相続人に対する支払債務とあなたの請求するべき葬儀費用分担請求権と相殺ができ、控除が可能だと思われます。
 ただ、一方的に葬儀費用分担分を控除して支払うというのではなく、予め控除の同意を取り付けておくのが、将来の紛争を避ける大人の智恵ということになるでしょう。


大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:36 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
 | HOME |