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相続放棄する場合のお墓の延滞管理料【Q&A №572】

2017/07/26


【質問の要旨】

墓の延滞管理料を払うと相続放棄できないか?

記載内容  相続放棄 お墓 延滞管理料  相続債務


【ご質問内容】

 義父に多額の借金があり相続放棄の申請を裁判所に提出中です。
 義父名義のお墓があり継承することになりました。
 お墓の管理料が1年分支払われておらず、継承者が払うようなのですが、延滞管理料を支払うと債務を支払ったことになり相続放棄ができなくなることはありませんか?
 どうしたらよいでしょうか?

(ネコにゃん)





【お墓と相続財産は別です】

 相続人は、原則として、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。
 しかし、祭祀に関する財産―例えば、系譜(家系図など)、祭具(位牌、仏壇など)、墳墓(墓石、墓碑など)―は、例外になり、祖先の祭祀を主宰する者が承継することになっています(民法897条)。


【相続放棄との関係】

 そのため、あなたが相続を放棄した場合、遺産に属する権利義務は引き継ぎませんが、例外としてお墓のような祭祀に関する財産は祭祀を主宰する者が引き継ぐことになります。
 本件では、あなたがお墓を承継することになったということですので、あなたが相続放棄をしたとしても、お墓等の祭祀財産については、あなたが承継することになります。

【祭祀財産に関係する債務の支払と相続放棄の関係】

 遺産に属する財産、例えば不動産を売却したり、預貯金を引き出して使ったような場合、相続放棄の手続きをしても、その効果はなくなり、普通の相続をしたと同様に扱われます。
 問題は、被相続人の債務を支払った場合ですが、遺産の預貯金から引き出して債務を支払ったような場合には相続放棄は認められません。
 しかし、相続人自身の財産から債務を支払ったというのであれば、相続放棄は効力を認められます。
 又、祭祀の承継に関する財産は通常の遺産とは別扱いですので、それに関する債務―今回のような滞納している管理料―の支払いをしても、それは祭祀に関する財産の範囲内のこととして、相続放棄の効力に影響しないということになります。
 結局、お墓の管理料をあなたが自分の財産から払うということであれば、相続放棄の効果は認められ、あなたが被相続人の債務を支払う必要はないことになります。


(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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11:12 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №553】

2017/01/17


【質問の要旨】

相続放棄したら仕送りしていた金銭はどうなるのか

記載内容 預金 引き出し 承認

【ご質問内容】

父の死亡後、多額の負債の連帯保証人をしていたことがわかり、子である私たちきょうだい三人全員が相続放棄をすることになりました。

遺産は預貯金40万円ほどと軽自動車1台。ほかにはありません。

父は年金と私たちきょうだいからの仕送りで生活していました。

相続を放棄してしまうと預貯金から仕送り分を返してもらうことはできない、という解釈であっていますか

(おがわ)






【仕送りは貸金ではない】

親子間では困っていたら助け合う義務(扶養義務といいます)があると定められています(民法第877条第1項。末記条文を参照ください)。

子が親に仕送りするような場合にはこの扶養義務の履行に該当すると考えられます。

そのため、子から親に対する仕送りは貸金ではなく、返還を要しない贈与となり、親は返還義務を負いません

そのため、お父さんの遺産から返還を受けることができないという結論になります。


【参考説明:子の親に対する貸金と子の相続放棄との関係】

前項で述べたように、親に対する仕送りは貸金ではないと考えられます。

ただ、本件の質問を離れて、仮に子が親に貸金があった場合、相続放棄との関係がどうなるかも説明しておきます。

相続放棄とは遺産の相続をしないということです。

子であるあなた方が相続放棄をした場合、お父さんの遺産である車や預貯金40万円を相続することはできません。

しかし、子が親に対して貸金のような債権を持っていた場合、子が相続放棄しても、その貸金債権はなくなりません。

相続放棄は親からの遺産をもらわないということであって、あなた方が従来から持っている親に対する貸金債権までなくなることはなく、あなた方は親の遺産に対して貸金の請求ができます


【参考説明:相続財産管理人の選任が必要】

問題は、この請求をした場合に、誰が支払いをしてくれるかです。

相続放棄をしない場合、法定相続人が遺産の権利者になりますので、その権利者の権限として遺産を自由に処分でき、債務の支払いもできます。

これに対して、相続放棄をした場合、その放棄した相続人は遺産を自由に処分する権限はなく、債務の支払いをすることができません

相続放棄をしない法定相続人がいれば、その人が遺産と債務を承継しますので、その人に支払い請求をすることになります。

もし、すべての相続人が放棄をした場合で、貸金を有している債権者が債権の支払いを求めたいのなら、その債権者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をする必要があります。

選任された相続財産管理人が遺産を管理・調査し、債権者に支払いをしてくれます。

ただ、財産管理人選任の申立をする場合、原則として、予納金として裁判所に90万円から100万円を納付する必要があります。
今回の質問の場合、遺産が少ないのでそのような手続きはするメリットはないでしょう。

なお、財産管理人が選ばれた場合、この申立をした債権者の債権の弁済が優先されるわけではなく、債権額に応じた平等弁済になることも理解しておかれるといいでしょう。


【勝手に遺産から弁済をうけた場合の扱い】

相続放棄したにもかかわらず、その放棄した方が遺産から勝手に貸金の返済を受けた場合、その相続人は遺産を取り込んだとして、相続放棄の効力がなくなることがあります

相続放棄が無効になった場合、その相続人は、お父さんの債権者から請求があれば債務の支払いをしなければならないこともありうることにご注意ください。

民法 第877条
(扶養義務者)
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(以下略)


(弁護士 大澤龍司)

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12:57 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★叔父の葬儀費用を請求したい【Q&A №545】

2016/12/02



【質問の要旨】

連絡がとれない相続人に葬儀費用を請求できるのか

記載内容 お葬式代  請求

【ご質問内容】

叔父のお葬式代について質問があります・・・ぜひ回答ください。
まずは必要な情報としてプロフィールを見てください。

【叔父】
離婚歴あり娘が4人で叔父は今は独身
叔父や私たちは娘さんたちとは離婚したあとに連絡先を知らずにとれない状態です
でも娘さんたちが叔父の財産を引き継ぐとおもいます。

【私の父】
・叔父からみたら弟で男兄弟は父だけ。他の兄弟は叔父からみたら姉が4人います。
お葬式の喪主は父がしてお葬式代を父がだす形になるとおもいます。
ちなみに娘さんたちは探す予定です。財産分与の件もありますので。

ここから質問です。質問は3点あります。

① もし娘さんたちが見つかり、この場合は財産を引き継ぐ娘さんたちにはお葬式代は請求できないんでしょうか

② もし請求ができたら回収できる確率はどれくらいでしょうか?
(前例などあればいけるとおもっていますがこのような少し変わった事例などで裁判費用を回収できたということがあったのなら助かります)

③娘さんたちが叔父の財産を引き継ぐ引き継がないなどの2つのパターンでも請求ができるできないとかなどの選択肢が変わるようなこともあるんでしょうか。

お手数掛けますがどうぞ回答の方をよろしくお願いします。

(ゆき)







【叔父さんが死亡したときの相続関係】

叔父さんが遺言書を作成せずに死亡した場合、配偶者はないため、その遺産は叔父さんの娘4人(以下、娘4人と言います)が法定相続します

あなたのお父さんは、上記娘4人が全て相続放棄をしない限り、相続人になりません


【葬儀費用の負担について】

相続債務であれば、遺産から支払いを受けることが可能です。

例えば、叔父さんの治療費などが生前に支払いされていないのであれば、相続債務として、叔父さんの相続人である娘4人が支払義務を負います。

しかし、葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するものであり、相続債務ではありません

葬儀費用は喪主が負担するものです。

お父さんが喪主になるのであれば、葬儀費用を負担することになります。


【喪主が負担した葬儀費用の請求】

葬儀費用は前記のとおり相続債務ではありませんが、法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、その費用の分担を他の相続人に請求可能かという点については、他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いたうえで、他の相続人に分担してもらうことが実務上、多いです

この場合、遺産分割とは別に、その葬儀費用を別途支払いするというのではなく、遺産分割での取得額から分担額を減額するということが多いです。


【今回の質問のケースで葬儀代は請求できないか?】

しかし、今回のケースは喪主が法定相続人ではないため、遺産分割の中で葬儀費用を分担するという実務と同視できないでしょう。

今回のようなケースに参考になる過去の裁判例としては、次の裁判例が参考になります。
【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できない》と判断しましたが、その理由は、《葬儀は行うか否か、どの程度の規模にするか、どこまで費用を掛けるかは喪主が決定するのだから、喪主が費用を負担するのが妥当》というものでした。

この裁判例に従えば、娘4人に葬儀費用を請求するのは法的にはむずかしいという結論になります。

ただ、前記判例では甥姪2人のうち、1人は葬儀に参加していたようですが、2人ともにつき、葬儀費用の分担をする必要はないとの判断でした。

もし、娘4人が葬儀に出席していたのであれば、法的にはむずかしい点はあるものの、請求し 、支払いを拒否されたのに納得できないのであればあきらめるというが妥当なところだと思われます。

なお、お父さんには、葬儀代は返還してもらえない可能性があることを前提に、葬儀の規模や費用を判断するようにアドバイスされるといいでしょう。


【叔父さんが生きているのなら】

ただ、叔父さんが現在も生きておられ、かつ判断(意思)能力があるのなら、現時点で叔父さんと話をし、葬儀費用を預かるといいでしょう。

この場合、葬儀費用としてお金を預かることを明確にし、もし、金銭的に過不足が出た場合にどうするかという点も書面などで明確にしておくといいでしょう。


【娘らが相続放棄をした場合】

仮に4名の娘全員が相続放棄をした場合には、お父さんらの兄弟が相続人になる可能性があります。

この場合、喪主であるお父さんから、遺産分割の際に、葬儀に出席された他の法定相続人に対して葬儀代の分担を求められるといいでしょう

(弁護士 大澤龍司)

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11:09 その他 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

兄の葬儀代【Q&A №542】

2016/11/21



【質問の要旨】

兄の葬儀費用を払ったが、相続放棄をする前に費用を回収したい

記載内容 相続放棄 葬儀代 返してもらう

【ご質問内容】

親、妻子のいない独身の兄が先月亡くなりました

亡くなるまで体調が悪く、自宅でヘルパーさんに毎日来てもらい、財産管理は後継人の弁護士さんにお願いしていました

葬儀はやらず火葬だけで30万円程かかったので、葬儀屋さんから後継人の弁護士さんに電話で費用について話しをしてもらいました。

私が支払うとの事を言われたので支払いました

(亡くなった時点で後継人は解除され弁護士さんも通帳からお金を出せなくなったのでしょうか?)

私は相続放棄するのですが、国の物になってしまう前に葬儀代だけ返して貰う方法は何かないのでしょうか?

他に独身の兄がいるのですが、施設に入って財産は後継人の他の弁護士さんにお願いしています。

その兄が亡くなった時にも同じように葬儀代を払わなくてはいけないのでしょうか?

その兄がも今回相続放棄します。

跡継ぎもいないので先祖代々のお墓も閉めて永代供養にしたいので、他にもお金のいることが多いです。

子供に迷惑をかけないように私が生きているうちに何とかしておきたいです。

私も高齢なのでお金に余裕はありません。宜しくお願いします。

(セレナ)







【火葬費用は相続債務ではないが・・】

火葬費用は、被相続人の死亡後に発生するものであるため、厳密に言えば相続債務や費用にはならず、遺産から当然には支払われるものではありません。

火葬費用は葬儀費用として、被相続人の喪主を務める人が負担するべきものです。

しかし、人の死亡した後、必然的に火葬を伴いますので、遺産分割調停などでは、相続債務に準じるものとして扱う場合が多いです。


【後見人は火葬に関する契約をする権限がある】

成年後見人(以下、後見人と略します)は、裁判所の許可を得てですが、死亡した被相続人の死体を火葬するに必要な行為をすることができます(この点は今年(平成28年)の民法改正で第873条の2第3号として明記されました)。

そのため、後見人としては財産があれば、裁判所の許可を得て、火葬についての契約を結ぶことができるようになりましたが、遺産から火葬費用を支払うことができるかどうかは条文では明確にはされていません。

しかし、契約は締結できるが、火葬費用は支払いできないということもおかしい話なので、後見人としては火葬費用を支払うことができると考えていいでしょう。

今回の質問では、あなたが火葬費を支払ったようですが、もし《遺産があれば》後見人が遺産の中から支出することも可能だったケースです。


【相続放棄しても立替請求は可能である】

あなたはお兄さんの相続放棄をした場合、お兄さんの財産はもらえず、債務も引継ぎしません。

しかし、あなた自身がお兄さんに対して持っている債権は、あなた独自の財産ですので、相続放棄後も存続しています。


【後見人に立替火葬費用の返済を求める】

あなたが立て替えた火葬費用については、後見人が契約をしてあなたがその費用を立替えて支払ったというのであれば、後見人に支払いを求められるといいでしょう

又、仮にあなたが火葬の契約をし、かつ費用も出したということであれば、喪主たるべき人に対して請求するということになります。

もしもこの件に関して、喪主たるべき人があなただということであれば、火葬費用を請求することはできないということになります。

なお、喪主たるべき人が相続放棄をしていても、前記のとおり、相続放棄はお兄さんの財産や債務を引き継がないということであり、喪主の地位が亡くなるわけではありません。

喪主としては相続放棄をしたか否かにかかわらず火葬や葬儀を行い、又、その費用を負担するべき立場になるということになります。

また、もう一人のお兄さんが亡くなられたときにも、今回と同様に、お兄さんの喪主になられた方がその費用を負担することになります。

(弁護士 大澤龍司)

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17:16 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

父親の介護と遺産に関する約束【Q&A №535】

2016/10/11


【質問の要旨】

父親の施設の入所代、病院代などについては半分が長男、亡くなったら全額長男と言われて困っている

記載内容 介護 扶養 約束

【ご質問内容】

静岡に住んでいる主人の父親(81)の話ですが、私達は結婚してから横浜住まいです。

夏に子どもを連れて遊びに行くぐらいでした。

主人は長男なのですが、母親の連れ子で姉2人父親の連れ子で、主人と妹(音信不通)今の両親で一男一女(一男は死亡)の家族構成なのです。

今まで両親は2人でアパートに住んでいましたが、何年か前だと思いますが、2人共介護が必要になったみたいです。

2人の仲も悪くなったようで、父親は年金で施設、母親は姉の家に連れていきました。

今になって父親とは他人なので、通帳も印鑑も渡すので、こちらで面倒をみろというのです。

私達も近くて、金銭的な余裕があれば見てあげたいですが、とても見てあげられない状況です。

施設の入所代、病院代、などは半分が長男。

何かあって父親が亡くなったら、全額長男。

父親は退職金も入っていたと思うし、わが家も経済的に無理だし、いままでの生活がまるでわからないので、どうしたらいいかわかりません


助けて下さい。

(なな)







【相続については相続放棄も考えておく】

本件で相続に関するのは《施設の入所代、病院代、などは半分が長男。何かあって父親が亡くなったら、全額長男。》とある点です。

お父さんの死亡時点で施設費の未払料金や借金等の債務等が存在する場合、遺産と債務を比較し、債務が多いようであれば、相続放棄ができます。

相続放棄すると、遺産を受け取ることはできませんが、債務の支払いもする必要が無くなります。

相続放棄はお父さんが亡くなり、相続が開始したことを知った日から3ケ月以内に家庭裁判所に申立する必要があります(詳しくは当ブログQ&A №455などをご参照ください)。


【今、するべきことについて・・ご主人には扶養義務がある】

それ以外の質問に書かれていることは相続問題ではありません。

ただ、お困りのようですので、簡単にコメントを付しておきます。

まず、ご主人はお父さんの子であるので、お父さんを扶養する義務があります。

ただ、ご主人が経済的なゆとりがないというのであれば、如何ともしがたいので、義務を尽くすことができないと回答するしかないでしょう。

もし、私が今回の相談を受ければ次のようなアドバイスをするでしょう。

①《お父さん》の心身の状態を確認する。

最初に《お父さん》が自分で物事を判断できるような状態なのかどうか、身体的にどのような状態なのかという、心身の状態を確認する必要があります。

判断能力がないのであれば、成年後見人を選任するということも考える必要があります。

この点は、施設に入っているということですので、施設に事情を説明して、教えてもらうことができると思います。

②《お父さん》の財産を確認する。

次に、《お父さん》の財産を次の3つの面から確認する必要があります。

・現在の月々の年金分などの入金分と施設の使用料との出金分の収支の内容、差額を確認する。

・次に《お父さん》の財産(不動産や預貯金、借金)として何があるかを確認する。

・更に過去にどれだけの金銭が動いているのか(退職金がどうなったのか、預貯金からの引き出しはどうなっているのか)を確認する。

これらの確認は、これまで財産を管理していた人に対して教えてもらうことになります。

③判断をする。

以上の確認をした上で、ご主人が扶養義務を尽くすことができるのか、できるとしてどのような形でしていくのかを判断する。


上記①~③の調査をしていけば、どうしてもお父さんの面倒を見るという方向になってしまいますが、その時でもできないことはできないとはっきりと述べる勇気が必要でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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13:53 寄与・生前贈与 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

損害賠償請求権の相続【Q&A №512】

2016/06/27



【質問の要旨】

回収できない損害賠償も相続財産となるか

記載内容  損害賠償 盗難 相続税

【ご質問内容】

父の預金通帳が盗難により不正出金され、警察の捜査の結果、犯人は逮捕されました。

裁判の結果、初犯のため執行猶予付の有罪判決が下されましたが、高齢の犯人に財産はなく、ギャンブル等で費消したため被害弁償の支払い能力は全くありません。

判決を前に父は亡くなりましたが、この場合、犯人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権が発生し、それが相続財産になると聞きました。

犯人から全く弁償の見込みがないにも関わらず、請求権が相続財産になるのでしょうか。(被害額は数千万円になります)

また、相続財産となる場合、この請求権のみを放棄することは可能でしょうか

(鈴木)






【賠償請求権は相続財産になる】

お父さんの預金通帳が盗難にあったが、その犯人に弁済能力がないというケースでも、法律上はその損害賠償請求権は遺産になります

相続人としては、その債権を相続で取得しているのですから、その法定相続分に応じて、(実益はありませんが)犯人に対して損害賠償を請求することができますし、訴訟をすることもできます。


【一部の遺産だけを相続放棄することはできない】

法律上は相続放棄という制度があり、一定期間内に家庭裁判所に申述書を提出することで、相続財産を相続しない(正確には、相続人にならない)ことができます。

しかし、相続放棄はあくまで《全遺産を相続するか》、又は《全部を放棄するか》の二者一択であり、他の財産(預金や不動産)を相続しながら、賠償請求権だけを相続放棄するというようなことはできません


【相続税の課税対象は別問題】

ただし、上記の回答はあくまで法律の面からのものです。

法律上は相続財産でも、相続税上は相続財産にならないものがありますし、又、逆の場合もあります

例えば、生命保険金は原則として法律上は相続財産になりませんが、相続税の関係では相続財産として申告が必要です。

ところで、損害賠償請求権については、交通事故についてですが、末記のとおり、「被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償請求金は相続税の対象になりません」とする通達があります

税務上の問題として、この通達が本件のような《生前の盗難》という損害賠償にも適用されるのかということが問題になります。


【上記通達に対する弁護士コメント】

税務の問題であるので、最終的には税理士さんに相談されて結論を出されるといいでしょうが、参考として弁護士としてのコメントを付するとすると次のとおりとなります。

相続は、被相続人が《生前に取得した権利》を、相続人に移転させるものです。

これに対して、前記交通事故の場合の損害賠償請求権は、被害者である被相続人が《死亡後》に発生するものであり、生前に取得するものではありません。

そのため、《生前に発生した》盗難による損害賠償請求権については、《死亡後に発生した》前記交通事故の通達は適用されず、盗難の損害賠償請求権は相続財産になるものと考えられます。

ただ、この盗難の債権を全額遺産に入れるかどうかは別の問題です。

相続財産であるが、回収不可能で、実質的に価値がゼロであるとして申告する、そのような申告をどのように税務署に認めさせるのか、税理士の力の試されるところでしょう。

以上の記載はあくまで弁護士の見解です。

法律と税務とは異なりますし、税務署が私と同様な見解をもつかどうかもわかりませんので、より正確な意見を聞きたいのであれば相続に詳しい税理士に相談されるといいでしょう

【参考通達 タックスアンサーNo.4111 交通事故の損害賠償金

(弁護士 大澤龍司)
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10:34 遺産 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

遺産分割協議後の使い込み【Q&A №491】

2016/02/08

 【質問の要旨】

遺産分割協議書で財産を相続した人が、遺産を生活費につかってしまった

記載内容

遺産分割 約束を破る 取り戻す

【ご質問内容】

家族構成は父、母、子供4人(長男=兄 離婚歴あり現在は独身で別世帯。長女=私次女=妹 二男=弟 

2年前父親が亡くなり、財産を母親、子供4人が相続するところですが、母親に家を購入してあげたい希望があり(母も強く希望しておりました)、

高齢である母の代わりに家の購入、父のお墓の購入手続きをしやすくする為に母、子供3人は相続を放棄して長男である兄一人だけに相続することに決め、遺産分割協議書を提出しました。

そして兄が母に家を購入するつもりでいましたが一度契約寸前まで行ったところ、兄と不動産屋担当者との相性が悪く、購入を断念してしまいました。

こうして1年半、母は貸家に住み続けましたが突然家で病死してしまいました(遺言はありませんでした)

遺産を管理していた兄に預金を問いただすと兄はほとんど預金を自分の生活費にしてしまったと言うだけで通帳どころか使い道もハッキリ言いません。

母へ購入してあげるべき家の代金を全額兄は自己消費してしまった上に父母のお墓も買う事が出来なくなりました

私は兄の身勝手な行動が信じられなく許せません。

泣き寝入りしかないのでしょうか

(kanasiineko)







【相続放棄ではなく、遺産分割の問題】

質問には、お兄さん以外の法定相続人が《相続放棄》をしたとあります。

相続放棄は家庭裁判所へ申立をすることが必要ですが、今回はそのような手続きはせず、遺産分割協議で、お兄さんが遺産を一人で取得し、他の相続人は遺産をもらわなかったということだと思われます。

以下の回答は、この前提で記載していきます。


【遺産分割協議書の記載内容はどうだったのか】

遺産分割協議書に《お母さんに家を購入すること》が条件で記載されていた場合には、その条件を充たしていないのですから、お兄さんが遺産を取得できないことになります。

次に、条件というほどではないにしても、《お母さんに家を購入すること》が義務として記載されていた場合には、その義務をお兄さんが履行しなかったことを理由にして、遺産分割協議を解除できるのかという問題があります。

この点については、裁判例があり、遺産分割協議で定められた義務を履行しなかった場合でも、遺産分割協議は解除できないという結論でした。

ただ、この裁判例では、その義務を負った者に対して義務を履行しなかったことを理由として損害賠償を請求できる余地があるとしています。

なお、遺産分割協議書に義務として記載されない場合でも、その義務があったことが証明できるのであれば、損害賠償が請求できると私は思いますが、この点については異論があるかもしれません


【他の相続人として何ができるか】

今回の質問の場合、お兄さんが債務負担者であり、お母さんが債権者になります。

お母さんはお兄さんに損害賠償を請求できる可能性がありました。

お母さんは死亡されたのであれば、あなたをはじめとする法定相続人が、お母さんの損害賠償請求権を法定相続分だけですが、相続します

そのため、あなたがその相続した賠償請求権を行使できる可能性があります。


【専門家に相談されることをお勧めします】

今回のようなケースは相続人の間だけで解決するのは難しいです。

できれば法律の専門家である弁護士に相談され、遺産分割協議書の内容や合意に至る事情、更には不履行に関する事実経過を説明して、弁護士の意見を聞き、今後の取るべき方針を決定されるのがいいでしょう。


参考判例⇒
【相続判例散策】遺産分割協議で負担させられた義務を実行しないとき、分割協議を無効にできるか?(東京高裁 昭和52年8月17日決定)

遺産分割協議で負担させられた義務を実行しないとき、分割協議が無効になるのではなく、債務不履行による損害賠償を請求するべきである。

(最高裁判所:平成元年2月9日判決、東京高裁:昭和52年8月17日決定)

(弁護士 大澤龍司)

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17:43 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

限定承認と相続放棄【Q&A №488】

2016/01/25

【質問の要旨】

相続放棄の注意点等

記載内容

返済 承認 遺品整理

【ご質問内容】

独居の叔父がなくなり甥である自分が相続人となりました。

若干の現金と一戸建ての遺産がありますが、人の良い叔父が連帯保証人になっていないか心配しております。

遠方に住んでおり、叔父の交友関係など全くわからないので、限定承認か相続放棄を考えております。

この場合注意することはありますか?

また、相続放棄をする場合、独り暮らしの叔父の遺品整理をしてしまうと単純相続したことになってしまいますか

相続放棄をした場合、家の後始末も全くしなくてよいと言うことでしょうか?

既に、叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配しています。

アドバイスのほどよろしくお願いいたします。

(ちょろ)





【遺産の整理と保証債務】

相続放棄は法定相続人が被相続人の相続をしないと家庭裁判所に申し立てることです。

相続放棄をすると遺産の中の預貯金や不動産、株式等、一切の財産を相続でもらうことはできなくなります。

反面、被相続人の債務(借金等)も相続されず、支払う必要はなくなります。

ただ、預貯金を払い戻す等、遺産を使うような行為があった場合には、相続放棄は認められません。

今回の場合は、遺産の整理ということですが、厳格にいうと遺品(例えば鍋・釜・布団等)の整理も遺産の処分に該当するので、放棄できないということになりそうです。

しかし、私としては、例示したような鍋等の価値のないものを処分する程度であれば単純承認とされることはなく、放棄が可能だと思います。

但し、価値ある物品(例えば絵画や彫刻等)を売却するような場合には、遺産の処分に該当し、法的には放棄ができない(正確にいうと、放棄してもその効果を被相続人の債権者に主張できない)ということになります。


【限定承認はほとんど使われていない】

民法の条文を見ていると限定承認は財産と借財を確認したうえで、相続をするという制度であり、合理的な制度のように見えます。

しかし、不動産の相続などで、税務上は相続とはみなされず多額の税金が課される等の使い勝手の悪い面があるため、私自身は今まで1回も扱ったことがなく、他の弁護士がこの手続きをしているのを見たこともありません。


【保証債務の有無の確認はむずかしい】

被相続人が保証債務を負っているのに、相続放棄をしなかった場合、この保証人の地位も相続人に承継される可能性があり、その場合には相続人が保証債務の支払いをする必要があります。

問題は、ほとんどの場合、保証人となっているかどうかが判明しないということです。

私の経験では、被相続人である母親が死亡した後、約10年経過してから、父親のしていた会社が破産し、会社の債務の連帯保証をしていた母親の保証債務が現実化したというケースがありました。

この場合には、被相続人からの何も財産などはもらっていなかったことから、相続放棄の手続きをし、結局、放棄が認められたことがあります。

叔父さんがどのような社会的な地位にいたのかを調べる必要があるでしょう。

もし、叔父さんが会社の社長や役員をしていたのであれば、会社の借財に連帯保証をしている可能性も考えられ、慎重に遺産調査をする必要があります。

相続放棄は相続開始を知ってから3ケ月以内に申立する必要がありますが、もし、調査に時間がかかるのであれば、放棄期間伸長願いを裁判所に提出するといいでしょう(ブログ【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。


【遺産の整理はしなくてもいいのか・・】

法律的には、相続放棄をするのであれば、遺産に手をつけない方がいいでしょう。

しかし、遺族としての立場から言えば最低限の遺産整理もしないと社会的な非難を受けかねません。

そのため、価値あるものは何らかの形で保管しておき、価値のないものは廃棄するということで折り合いをつけるのがいいでしょう


【自動車税や固定資産税、電気等の支払いについて】

叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配していることようですが、あなたが相続人としてその行為をしているのであれば、単純承認とみなされる可能性が高いです。

もし、そのような支払いの手配を停止できるのであれば、停止されるのが望ましいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
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10:19 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

親子間での土地売買と特別受益【Q&A №487】

2016/01/22

 【質問の要旨】

親子間で土地を安く売買したら特別受益になるか

記載内容

土地 売買 安値

【質問の内容】

父の土地を生前に親子間売買で購入を考えております。

土地の評価額より安い金額(路線価)で購入予定です。

評価額より約2000万ぐらい安いです。

私は、姉と兄の3人兄弟です。相続時、姉は財産放棄する予定です。

私が、父から2000万円安く購入した場合、相続時に兄から特別受益を指摘されるでしょうか?

された場合、2000万の半分の1000万円を兄に補填する義務はありますか?指摘されない方法はありますか?

宜しくお願いいたします。

(こまゆ)







【時価より低い価額での親子間売買では「時価」との差額が特別受益になる】

質問では「評価額」と記載されていますが、おそらく「時価」のことと思われますので、その前提で回答します。

商品とは異なり、土地の「時価」がいくらかはわかりにくいです。

ただ、毎年3月に、国交省が発表する公示地価が「時価」に近いものとして、価額算定の参考にするといいでしょう。

路線価額は公示地価の約7~80%を目途として算定されますので、土地を路線価額で買うと、「時価」より安く買ったことになり、差額(本件質問では2000万円)が特別受益とされる可能性があります

特別受益であれば、差額が遺産に持ち戻され(他の遺産との関係もありますが)、持ち戻された額の半額をお兄さんに支払うことが必要となることもあります


【特別受益を主張されないための方策】

1.時価がどの程度かを確認する

まず、売買価額面での対処法です。

路線価額は国税庁が定めたものにすぎません。

そのため、売買の代金でいくらが相当なのかを、不動産鑑定士に鑑定してもらうことが考えられます。

ただ、鑑定はかなりの料金がかかりますので、知り合いに不動産業者がおれば、その方に査定をしてもらい、もし、近隣の取引事例などを参考にして路線価額より低くても妥当な額だというなら、査定書を作ってもらい、その査定書の額で売買するといいでしょう。

2.お父さんの持ち戻し免除

次に、持ち戻しをしなくてもよい方法としては、お父さんに《特別受益の持ち戻し免除》をしてもらうことが考えられます。

この免除があれば、遺産分割の際には、遺産への持ち戻しが免除されます

お父さんが協力してもらうことができるのなら、持ち戻し免除を書面化してもらって、将来に備えるといいでしょう。

3.お姉さんからの相続分譲渡で対処する

お姉さんは相続放棄をするとのことですが、もし、可能であれば、お姉さんから相続分の譲渡を受けるといいでしょう。

その場合、お兄さんの取り分は、持ち戻し分の2分の1ではなく、3分の1の666万円になります。

なお、相続分の譲渡は、相続開始前にすると、効力が認められない可能性が高いので、相続開始後に譲渡するとよいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)

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13:11 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄と連帯保証人への請求【Q&A No.473】

2015/10/08



兄が亡くなりました。

私は相続人です。

兄の生前、兄に対する債権があり、連帯保証人も付いています。

私は、相続放棄をしましたが、債権も放棄したことになりますか?



記載内容

  連帯保証 相続放棄と債権 遺産分割協議と代償金請求権


【ご質問内容の詳細】

 9年前に父が亡くなり長男、次男、長女にて遺産分割協議書を作成し合意しました。

 長男次男はそれぞれ不動産の遺産を相続し、長女は兄弟二人よりそれぞれ1000万円で合計2000万円を月割りで貰うこととなりましたが、長男が今年亡くなり長男支払い分1000万円の連帯保証になっている次男が払う事となりました。

 しかし長男が亡くなったときに負債が多かったので次男長女とも相続放棄をする事としました。

 遺産分割協議書の内容は同様に放棄する事になるのでしょうか?

 長女は長男より貰うべき1000万円の残分832万円も放棄ということとなるのでしょうか?

(ミヤコ)






【権利関係の整理】

 お父さんの遺産分割で長男さんと次男さんが不動産を取得した。

 あなたは代償金として長男さんから1000万円の、また、次男さんも同様に代償金1000万円をあなたに支払うという協議が成立した。

 その長男さんの債務(1000万円の支払い)については次男が連帯保証しているというのが質問の前提になります。

 さて、あなたとしては長男さんの債務について次のとおりの権利を持つことになります。

①長男さんに対する代償金請求権(主債務)

②上記①の主債務について次男さんに請求する連帯保証債権(連帯保証債務)




【相続放棄と連帯保証債務との関係】

 長男が死亡し、相続人のすべてが相続放棄をしたのなら、長男さんの上記①の債務については支払うべき人(=債務の承継者)はいないことになり、上記①の債権は請求ができなくなります。

 しかし、主債務者に請求できない場合でも連帯保証債務(上記②の債務)の請求は可能です。

 そのため、あなたとしては、長男が未払いだった残債務の支払いを次男さんに、《連帯保証したのだから支払いをして欲しい》と言って、請求するといいでしょう。 

 なお、次男さんが支払いを拒むのであれば、弁護士に依頼してしかるべき法的手続きを取るしかないでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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17:31 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

第三者が支払った保険金掛金と相続放棄【Q&A No.469】

2015/09/29



 Bが死亡して、Bの相続人Cが相続を放棄しました。

 Cは、Bの生命保険金500万円を受け取りました。

 その保険金の掛金約200万円は、BやCではなく、Aが支払いました。

 Aは、Cから200万円を請求することはできないでしょうか。



関連記事

  相続放棄 生命保険


【ご質問詳細】

 債権者Aは、債務者Bの契約した生命保険について特約を結び、当初より死亡時まで保険料約200万円を支払った。

 受取人Cは相続放棄後、保険金500万円を死亡日に請求、14日後に受け取った。

 Aは保険証券を占有し質権も設定したが、保険会社には通知しなかった。

 保険会社には請求できなくとも、受取人から払い込んだ保険料200万円相当額は請求できないか。ご教示ください。

(asakatsato2)







【相続放棄と生命保険金の受け取り】

 Aは、本来の契約者であるBが支払うべき生命保険契約の掛け金を立替払いしているのですから、AはBに立替えて支払った分の金銭の返還請求ができるはずです。

 ところで、Bが死亡すると、Bの法定相続人はBの債務を引き継ぎます。

 しかし、相続放棄されると、債務を引き継ぐ人が不在になり、債権者Aはその債務の支払いを求めることができなくなります。



【相続放棄しても生命保険の請求はできる】

 生命保険金は遺産ではないというのが裁判所の考え方です。

 保険金は、相続とは関係なく、生命保険契約に基づいてCが独自に取得するものですので、受取人Cとしては相続放棄をしても、保険金を受け取ることができます(Cとしては生命保険金を受け取ることはできるが、債務を負わないということになります)。

 不当利得ではないかと思われる方もおられるかもしれません。

 しかし、Cとしては保険契約に基づき、保険金の受領をする権利を有しており、不当利得にはなりませんので、債権者AにはCに対する返還請求権はありません。



【質権設定の通知等がない場合は打つ手がない】

 質権を設定した今回のケースであっても、保険会社に質権設定の通知をしてなかったため、今回はすでに生命保険金が支払われてしまっています。

 これによって、質権の目的物(目的債権)であった死亡保険金債権は消滅しています。

 したがって、現段階で、質権を受取人に対して主張することはできないという結論になります。

(弁護士 大澤龍司)
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17:31 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄されたマンションの管理費回収方法【Q&A №465】

2015/09/09



マンションの区分所有者が亡くなり、相続人がいません。滞納管理費を回収する手段はありますか?


【ご質問内容】

分譲マンションで独居老人が1年前に亡くなりました。

その後の管理費(年間約35万円)が滞納中です。

当該不動産に抵当権等の権利設定は全くありません。

相続人調査は未だ行っていませんが、息子さんの話では相続放棄する(した)とのこと。

管理組合として債権保全を行い滞納管理費を回収するにはどう処置したらよいでしょうか。

例えば、当該不動産に仮差押をすることは可能でしょうか。可能としたら、どのような手続きが必要になりますか。

宜しくお願い致します。


記載内容

  マンション 管理費 滞納

(管理組合理事A)





【まず、他に相続人がいないかどうかを調査する必要がある】

 すでに息子さんが相続放棄されているようですが、他に相続人はいないのでしょうか。

 相続には順位があり、配偶者と子(または孫)がまず第一順位に相続人になります。

 今回の質問では息子さんが相続放棄されたということですので、第2順位の直系尊属である独居老人のお父さんやお母さんが生存しているのか、万一、生存しているとしたらその方が相続放棄をしているのかどうかを確認する必要があります。

 その後、兄弟姉妹も第3順位の相続人になりますので、これらの方が存在するのかどうか、存在するなら相続放棄をしているのかを確認する必要があります。

 もし、相続放棄をされていない法定相続人がおられれば、その方が債務を引き継ぎますので、その方に請求して、必要な手続きを進められるといいでしょう。



【相続財産管理人を選任することになるが・・】

 相続放棄の結果、相続人がいない場合には、債務を引き継ぐ人もいなくなり、滞納された管理費はもはや誰にも請求できません

 ただ、マンション(の一部屋)という財産があるケースですので、その財産を競売等で換価して、延滞賃料の支払いに充てるということも考えられます。

 しかし、訴訟等の法的手続きをするには相手方が必要ですが、相続人不在では債務者がいないために手続をすることができません

 このような場合、債務者の立場になる相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申立することができ、申立があれば、裁判所は相続財産管理人となる弁護士を選任します。

 管理組合としては、この相続財産管理人を債務者として手続きを進めることになります。

 ただ、相続財産管理人の選任申立するには、裁判所に約90万円程度の予納金を納める必要があります。

 この予納金は原則として返還されません




【回収までの手続き】

 財産管理人は独居老人の方の遺産を調査されますので、もし預貯金があれば、財産管理人に債権申し出をする手続きがありますので、延滞管理費の弁済を受けることができる可能性があります。

 もし、預貯金がない場合にも、財産管理人が独居老人のマンションを売却し、その代金で延滞金を支払ってくれる可能性もあります。

 ただ、延滞額である約30万円を回収するために、相続財産管理人申立のための予納金90万円を出すのかということになり、管理組合としてはどちらを選択するかということになります



【管理組合として考えるべきことは・・】

 財産管理人の選任の方針を選択すれば、管理組合として90万円もの費用負担が必要になります。

 しかし、反面、このまま放置しておくと、その独居老人の部屋からの管理費は未来永劫に回収されなくなります。

 また、その部屋をこのまま放置しておくことが、近隣の住民(所有者)やマンション全体にとって悪影響を与える可能性も考えられます。

 多額の金銭がかかっても相続財産管理人を選任するのか、このまま放置するのか、管理組合や他の所有者で協議、検討のうえ、今後の方針を固められる必要があるでしょう。
 
(弁護士 大澤龍司)
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16:04 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

甥を相続することはあるのか? 【Q&A №459】

2015/08/05



【質問のまとめ】

 甥が亡くなった後に姉が亡くなりました。

 甥の借金を私が返さないといけないことがあるのでしょうか?



記載内容

   相続順位 相続放棄


【ご質問内容】

 はじめまして、二次相続につき教えていただきたく投稿いたしました。

 姉の子(甥)が住民税や固定資産税を未払いのまま死亡したらしく市役所から自分に請求が来ています。

 法律上、被相続人の叔父叔母が相続人になることはなかったはずと思い、市役所に問い合わせました。

 まず甥が亡くなり姉が相続放棄をしなかった。その後に姉が亡くなり、姉には他に子もいないため、兄弟である私に甥→姉→私と納税する義務が相続されたとのことです。

 相続放棄を検討していますが、直接甥の相続人ではなくてもこの場合、私は相続人になってしまうのでしょうか。

 
(清左衛門)







【あなたが甥の債務を相続することもあります】

 お姉さんの子(甥)が死亡して相続が発生したケースです。

 まず、甥が、子供がなく死亡した場合、その方の母親(すなわち、あなたのお姉さん)が直系尊属として相続人になります。

 また、甥に子供がいても、その子供が相続放棄した場合にも、お姉さんが直系尊属として相続人になります。

 相続では財産だけでなく、負債も引き継ぎます。

 そのため、もし、甥の遺産が、財産よりも負債が多い場合には、お姉さんとしては相続放棄をするべきでした。

 もし、相続放棄をしていないというのであれば、甥の税金等の債務の支払義務は相続でお姉さんに引き継がれます。

 お姉さんが死亡した場合、お姉さんに子や親がいないか、あるいはこれらの方が相続放棄をした場合、兄弟であるあなたが相続人になります。

 以上に挙げたケースに該当するのであれば、市役所のいうように、甥の方⇒お姉さん⇒あなたの流れで税金の支払い義務が相続され、あなたが支払い義務を負います。


    甥 ⇒ お姉さん ⇒ あなた
      一次相続     二次相続




【相続放棄をするかどうかは調査をしてから】

 まず、あなたとしては、お姉さんの遺産(財産)や負債(債務)の内容を調査し、債務が多ければ家庭裁判所に相続放棄の申立をするといいでしょう。

 ただ、相続放棄は、相続開始を知ってから3ケ月以内にする必要があります。

 もし、調査には時間がかかるというのであれば、予め、家庭裁判所に相続放棄の期間を延ばしてもらう手続きをするといいでしょう。

 債務が多いことがはっきりしており、相続開始を知ってから3ケ月以内だというのであれば、すぐに相続放棄の手続きをするといいでしょう。

 手続きとしては弁護士に依頼しなければならないほど複雑なものではありません。

 もしわからない点があれば、家庭裁判所で教えてもらってもいいです。

 ただ、財産を調査する必要があれば、相続に詳しい弁護士に相談されるということも考えていいでしょう。



【遺産調査に時間がかかる場合の対処】

 遺産の調査に時間がかかるということを理由にすれば、家庭裁判所は放棄するまでの期間を(通常の場合)3ケ月程度延長してくれますので、相続開始から6ケ月程度、調査機関があることになります。

 その調査の結果、負債が多ければ家庭裁判所に対して相続放棄の手続きをするといいでしょう。

 なお、調査期間中に遺産の預貯金を使うなどということをすれば、相続放棄の効果が認められなくなりますので、この点は注意が必要です。

(弁護士 大澤龍司)
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14:15 相続人 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄はいつから数えて3か月【Q&A №455】

2015/07/15



【質問のまとめ】

「相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」の「知った時」とは、いつですか?

戸籍謄本類は、それぞれの相続人が各自揃えて提出すべきですか?



記載内容

  借金 起算日 3ヶ月


【ご質問内容】

 「相続の開始を知ったとき(日)」がいつに当たるのかがわかりません。

 最初に銀行からの手紙が来ました。

 亡くなった叔父の件で重要な案内があると、書かれていました。

 詐欺かなにかと思い、銀行へは電話せず、叔父の家族へ問い合わせました。

 それはもう済んだことだから放っておいていいと言われました。

 しかし、翌日になって直ぐに相続放棄の手続きをしてくれと言われました。

 このときに、初めて叔父に借金があり、叔父の家族は全員相続放棄をしていたことを知りました。

 1週間後に銀行へ電話をして、叔父の借金の額と、相続人である私に返済して欲しいと言われました。

 この場合、叔父の家族が相続放棄をしたと知った日なのか、それとも銀行の手紙が届いた日なのか、どちらになるのでしょうか?

 また、戸籍謄本類のことなのですが、同順位の相続人が先に提出していた場合でも、各自が揃えて提出した方がいいのですか?


(はちわれ)







【相続の開始を知ったときとは】


 相続放棄については相続開始を知って3ケ月以内家庭裁判所に放棄の申し出をする必要があります。

 第一順位の法定相続人の場合には、被相続人が死亡した日(正確に言えば、被相続人の死亡を知った日)が起算日になります(なお、初日を算入しないことになっていますので、例えば1月1日に相続の開始を知った場合には、4月1日が期限になります)。

 次に先順位の相続人が相続放棄をした場合には、その相続放棄があったために、あなたが相続人となったことを知ったときが起算日になります。

 銀行から手紙が来たとしても、その内容が「叔父の件で重要な案内がある」というだけでは、あなたが相続人になっていることは読み取れませんので、その手紙が来た日は起算日になりません。

 あなたが叔父の家族の全員が相続放棄をしたことを知ったという時点までいくと、あなたが相続人になったことが判明しますのでこの日が起算日になります。



【提出通数について】

 家裁に相続放棄の申立をする場合には、あなたと死亡された被相続人との間に相続関係があることを証明する書類(戸籍謄本や除籍謄本)の提出が必要です。

 提出通数ですが、違う時期に放棄をする場合にはその都度、戸籍等の謄本の提出が必要になります

 同時に一緒に申し立てをするのであれば一通で足りますが、同順位の相続人であっても、別々に申し立てるのであれば、通常は、それぞれの方が戸籍謄本類を提出する必要があります。

(弁護士 大澤龍司)
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13:36 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続不動産の時効取得はできるか【Q&A №449】

2015/06/02



【質問まとめ】
10年前に父がなくなったとき、父の不動産について

「いらない」

と言って相続放棄したはずの姉が

「不動産を売って法定相続分の金をよこせ」

と言ってきました。

私は、土地建物を時効取得したと主張できるでしょうか



記載内容

  長年 時効取得 


【質問詳細】
 父が死んで10年たつので、父名義の土地、建物の名義を私名義に変えようと思って、 姉にいうと「家を売って法定相続分の金をよこせ」というのです。

 父が死んだ後、父の貯金を姉と私2人で200万円づつ分けました。

 それで、その時、姉は「他の財産の家や土地はいっさいいらない」といいました。

 土地、建物の取得時効は10年だとおもいますが、姉は父が死亡する30年ぐらい前に結婚して遠方にすんでおり、父死亡後は私1人で、土地、建物を占有していました。

 この場合、土地、建物の取得時効を主張して時効取得時効による登記ができるでしょうか?

 裁判の場合、姉を相手におこすのでしょうか?

 善意は、他に相続人がいない場合ということだと思うのですが、姉は土地、建物の相続を放棄していましたので、私は、他に相続人がいない場合だと思っていました。

 相続人は私と姉2人です
(hukuda)





【相続放棄ではなく、遺産分割協議の話である】

 相続放棄とは、家庭裁判所に対して、お父さんの遺産は全て相続しませんという申し出をすることです。

 お姉さんが《家や土地は一切いらないとあなたに言った》ということは相続放棄ではありません

 法定相続はすることを前提として、どのように遺産分割をするのかということであり、それは遺産分割協議の話であるとご理解ください。




【他の財産はいらないという発言の意味】

 遺産分割する場合、通常、法定相続人間で《遺産分割協議書》という合意書を作成し、実印を押捺し、印鑑証明書を添付します

 遺産は多額の財産の分割ですので、分割に同意するという意思に間違いがないこと、分割内容も記載したとおりであるということ等、間違いや誤解を防ぐという配慮から書面化されるのです。

 口頭(会話)等だけで遺産分割協議が絶対に成立しないというわけではありませんが、遺産分割という重大な問題を口頭だけで処理するということが裁判で認められることは極めて可能性が低いということを理解する必要があります。

 裁判になると、遺産がいらないという発言があったことについてあなたの方が証明する必要がありますが言った、言わないの議論になりかねません。

 また、仮にそのような発言があったと認められても《そのような気持ちもあったというだけで、絶対にいらないと言ったわけではない》と反論されることも多く、裁判になれば必ずしも有利な判決が出るとは言えないでしょう。




【取得時効の成立について】

 土地や建物については、占有が長期間続くと時効取得が認められます。

 しかし、相続の場合に取得時効が認められることはむずかしいです。

 その理由は次のとおりです。

 時効取得が成立するには多くの要件がありますが、その一つに自主占有》の開始という要件があります。

 これは取得時効を主張する人が、その家の全部の所有者であるという外形を整えることです。

 質問のようなケースでは、あなたがお父さんの家に住んでいるだけでは不十分です。

 《全部が私の家である》ということが外見的にわかるような状況が必要です。

 説明をしにくいのですが、遺産分割協議が整い、単独登記をし、かつ単独で占有をし始めたが、実は分割協議は無効であったというようなケースがこれにあたります。

 そこまで行かなくても、少なくともあなたがお姉さんに《この家、私が全部の所有者になりますよ》ということを宣言する程度の事実が最低限、必要でしょう。



 また、本件では、期間の点でも時効の成立は難しいです。

 不動産の取得時効は《善意無過失》で10年、それ以外は20年です。

 《善意》とはこの家が自分の《単独の所有》と信じ、そう信じたことがもっともだというような場合ですが、本件の場合には、お姉さんに持ち分があるということは明らかですので、善意にはならず、そのため20年も経過していない現時点で取得時効の要件を満たすことはありません

 結局、取得時が成立する可能性はほとんどないと考えていいでしょう。




【どのようにして解決するか】

 以上に述べたように、法律的にはあなたの主張がとおることは少ないです。


 しかし、法律がすべてではありません。

《お父さんの面倒を見たのは私でしょう》と人情と義理をからめて攻め、

《お姉さんはあのときいらないと言ったのに・・》と足元をすくいつつ、最後の落としどころとしては少し譲って

《半分づつではなくて4分の1くらいでどうか》とか、あなたの人間力を総動員してお姉さんを説得していくといいでしょう。
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★相続放棄と遺留分【Q&A №447】

2015/05/27
 


生前贈与を受けた人が相続放棄をした場合,特別受益はどうなりますか?

また,生前贈与を受けた人が相続放棄して,遺留分減殺請求をされた場合はどうですか?



記載内容

  生前贈与 遺留分 相続放棄 


【質問詳細】

被相続人(父)、相続人A(長女)B(次女)C(長男・末)がいます。

Aは生前に1,000万、B・Cは500万ずつ贈与を受けています。

父の遺産は現金500万、不動産1000万です。

Aは上記1,000万円の他に、父が生前の2年前にAの子二人(孫にあたる、共に成人)

に100万円ずつ生活支援のお礼としてお金を渡したこと、それ以前に色々な事象にて

お金(総額で2~300万円か)を貰っていたことを考慮し、遺産を放棄することにしました。

相続人BとCは父生前のA及び子に対する過大な贈与を受けたことが不満で、遺産1,500万円に各々の生前贈与(特別受益)を加算し、分配すべきと主張しています。

Aとして相続を放棄するのに、差額をB・Cに払う義務あるのですか?

併せてB・Cの遺留分について減殺請求権があった場合どうなりますか?



(goo)





【相続放棄すると特別受益の問題は発生しない

 Aさんが、お父さんの遺産について相続放棄をする前提で回答していきます。

 相続放棄をすると、Aさんは法定相続人ではなくなり、遺産分割の問題は発生しません。

 遺産分割はBさんとCさんとの間でするだけになります。

 特別受益は、遺産分割の際、法定相続人に生前贈与分などがある場合にその贈与分を遺産に持ち戻すという制度です。

 しかし、その生前贈与を受けた人が法定相続人でなくなれば、特別受益の問題は発生しません




【相続放棄しても遺留分の問題は発生する

 相続放棄をした場合でも、その人が多額の生前贈与を受けていたのであれば、他の法定相続人(正確に言えば遺留分権利者)から遺留分減殺請求を受ける場合もありえます


 例えば、生前に1億円の贈与を受けた人がいたため、遺産が0円であったような場合で、その贈与を受けた人が相続放棄をするケースを考えてみましょう。

 贈与を受けた人は相続放棄をしているのですから、特別受益の問題は発生しません。

 しかし、遺留分は法定相続人にある程度の遺産(法定相続分の半分程度)だけは渡るようにしようという制度ですので、生前贈与を受けた人は請求に応じて、遺留分に該当する遺産を渡さなければならないということになります。




本件のケースでは遺留分減殺請求はできない

 遺産は法定相続人AさんとBさん、Cさんに生前贈与計2000万円遺産が計1500万円その他に200万円と2~300万円の生前贈与分があるとの前提ですので、遺留分計算の基礎となる遺産額は4000万円になります。

 Bさんとしては生前贈与分500万円と今回の遺産分の半額である750万円の1250万円がお父さんの遺産から入ることになります。

 Aさんの相続放棄によって、Bさん及びCさんの遺留分は本来の法定相続分2分の1の半分(4分の1)になっています。そうするとBさんCさんのそれぞれの遺留分は1000万円となります。


 (Bさんの)得た額    (Bさんの)遺留分 


 遺留分が侵害されていませんので、Aさんが遺留分減殺請求をされることは法的にはないケースでしょう。
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14:53 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

父の言葉を代筆した遺言書の効力【Q&A №446】

2015/05/22




口頭で言ったことを、ほかの人が代筆して文書にして、

本人が自筆で署名押印した場合、将来の遺産分割協議で有利になりますか?



記載内容   遺留分 


【質問詳細】
 義父より自身が死んだ時のために相続人間で争い事が起きぬよう残しておきたいことがあるので、協力して欲しいと言われました。

 相続人(子)はA男・B男・C子で(私はC子夫)、C家が父を看ています(A・Bとソリが合わないことから)。

 父は今までにC家に対して自身の生活支援のお礼として事ある度に幾らかのお金を渡してきました。

 家屋購入資金(C子夫名義)、孫の入学祝いや就職祝い、孫の結婚祝い、等です。

 A家とB家にも相応にお金を渡していましたが、C家までには至らなかったようです。

 それがA・Bとして不満であり、大きな騒動になりました。

 C家は相続人であるC子が直接貰い受けていないお金もあるが、総括してA・Bより多くのお金をもらっていることから、父没後の遺産を放棄するつもりです(A・Bより色々理由つけられて遺留分を請求してくることが予想されることから)。

 これを義父に話したところ、「遺産は平等に受けろ。A・Bは今まで何も支援してくれない上に渡した金額差に文句を言っているだけ。二人が自分にしたことを明確に列記し、何で差がついたか、今まで幾ら渡したかを言うので、自身の宣言書として書き残して欲しい」とのことです(父は口は達者ですが体力が衰え書き事ができない)。

 内容はこれから考えるとの事ですが、とりあえず私がそれを聞き代筆し、父自筆で署名捺印した書面について将来の相続協議に有利となるのでしょうか?


(Noppo)





【それは遺言書ではない】
 
 質問者の方はおわかりのようですが、念のために記載しておきます。

 お父さんが考えた内容を、あなたが《とりあえず私がそれを聞き代筆し、父自筆で署名捺印した書面》は遺言書にはなりません

 遺言書は遺言者が全文を自分で記載し、日付及び署名・捺印をしたものです。

 お父さんの意思に基づいたとしても、その内容をあなたが記載したのでは遺言書にはなりません。



【お父さんの意思を書いた文書は相続協議に役に立つか】

 遺言書ではないにしても、死亡された人の意思がはっきりしている場合、それが遺産分割協議に役立つかは場合により異なります。

 法定相続人間でお父さんの意思についての共通了解があり、しかも法定相続人の間及びお父さんと法定相続人間で人間関係が円満な場合には、お父さんの意思が尊重される場合が多いでしょう。

 しかし、本件ではお父さんとあなた以外の法定相続人との関係も、法定相続人間の関係もぎくしゃくしていることを考えると、あなたが質問で記載したような書面を残しても、相続のためには役立たない可能性が極めて高いでしょう。




【相続放棄と遺留分】

 あなたは相続放棄をするということもお考えのようです。

 おそらく相続放棄をし、相続人にならないことによって、相続問題に巻き込まれないということをお考えになっていることと思います。

 あなたが相続放棄をするのであれば、あなたは相続人ではなくなりますので、法定相続分を前提とする遺産分割問題は発生しません

 しかし、あなたが生前に贈与を受けていたという事実はなくなるわけではありませんので、他の相続人としては、あなたに対して遺留分減殺請求をする可能性があります

 その場合、生前の贈与分は遺留分の算定の基礎財産に含まれることになります。

 相続放棄をしたからといって、遺産争いがなくなるわけではないということを理解しておく必要があるでしょう。




【遺留分減殺請求への対処が必要】

 本件では、遺産分割であれば他の相続人はあなたの特別受益を主張するであろうし、また、相続放棄をしても遺留分減殺をする可能性が高いです。

 そうであればあなたとしては、そのような事態に対処する方策を現時点で取っておく必要があります。

 そのような場合には、あなたとしては金銭を他の法定相続人に支払って解決することが多いです。

 その点を考えると、あなたとしてはお父さんから金融財産(預貯金等)をもらう内容の遺言書を書いてもらい、不動産等は他の法定相続人に渡すということで、将来の金銭支払いに対処するという必要があると思われます。

 いずれにせよ、具体的な金銭勘定がわかりませんが、この点については相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。

 なお、お父さんが遺言書をご自分で書けないというのであれば、公正証書遺言を公証人に作成してもらうという方法もありますので、この点も併せて弁護士と相談されるといいでしょう。

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11:43 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★相続放棄と葬儀費用【Q&A №440】

2015/04/01



 母方の叔父が独身で、甥、姪に当たる人物が私だけです。

 母も叔父もまだ元気ですが、今のうちに知っておきたいので質問させていただきます。

 叔父の遺産は放棄するつもりです。

 母が亡くなり、その後叔父が亡くなったら葬儀代の負担はどのようになりますか?

 相続人が私しかいない場合、葬儀代は立て替えておけば、遺産を放棄しても葬儀代など請求できますか?

 その場合どんな手続きをしておいたらいいですか?

 領収書をもっておけばいいのでしょうか?


記載内容

  葬儀費用 立替 相続放棄 相続財産管理人 代襲相続  
(はるか)





【葬儀費用は相続債務ので、遺産に立替分の返還請求をできない】

 叔父さんが死亡したとき、資産や債務は法定相続人に引き継がれます。

 この相続人に引き継がれる債務とは、叔父さんが生前に負っていた債務です。

 質問の葬儀費用ですが、これは叔父さんが死亡した後に発生する債務ですので、相続債務にはなりません。

 なお、相続税の申告では、葬儀費用は必要経費として遺産から控除されます。

 しかし、それは税務上の扱いにすぎず、法律では相続債務としては扱われません。

 そのため、葬儀費用を立替えたからといって、その立替分を遺産から支払ってもらえることはないというのが法律的な回答になります。

 なお葬儀費用の扱いについては相続Q&A №140Q&A №424を参照ください。




【相続放棄の後の請求には手続的に費用もかかる】

 お母さんが先に亡くなり、その後に母方の叔父さんがなくなった場合には、あなたはお母さんの代襲相続人として叔父さんの遺産の法定相続人になります。

 あなたが相続放棄をした場合、他に相続人がおらなければ、叔父さんの遺産を管理する人はいなくなり、相続財産は宙に浮くことになります。

 もし、あなたが叔父さんの葬儀費用を立替えたということで請求がしたいのであれば、あなたが家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をし、これを受けて裁判所が弁護士を相続財産管理人として選任します。

 但し、この選任をしてもらうためには約100万円の予納金を裁判所に納める必要があります(この予納金は相続財産管理人の報酬等に充てられます)。

 このように手続き的にもややこしく費用もかかります。

 しかも、相続財産管理人としては、あなたから葬儀費用立替分の返還請求があったとしても、前項で記載した理由により、支払いを拒否する可能性が極めて高いことを理解しておく必要があるでしょう。





【葬儀をしなければならないなら、生前にその分をもらっておく】

 以上のとおりであり、相続放棄をした場合、立替えた葬儀費用は返還される可能性は極めて少ないと覚悟しておくべきでしょう。

 解決策としては、現在、叔父さんが生きておられるようですので、将来の葬儀費用を予めもらっておくことを考えられるといいでしょう。

 葬儀費用に使用するとの前提で叔父さんからお金を預かり、それを保管しておいて、叔父さんが死亡されたときにそのお金と使って葬儀をされるといいでしょう。
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10:28 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

子どものいない伯父の相続【Q&A №434】

2015/03/09



 子どももおらず奥さんにも先立たれた一人暮らしのおじを近くに住んでいた兄(おじからみたら甥)がいろいろ面倒をみていました。
ここ何年かはがんにかかり病院に連れて行ったりもしていました。

ところが以前からお金に困っていた別の甥が自分が引き取って面倒をみると連れて行ってしまったのです。

それから間もなくおじも亡くなり、保険金の受け取りも当初は兄になっていたのですが、その後どうなったかわかりません。
おじは最近では少し認知症の症状もあったらしいので保険の受取人も変えられてしまっていて、もしかしたら保険会社にお金を借りていたかもしれません。

このまま兄は泣き寝入りをしないといけないのでしょうか。
おじの兄弟はみんな亡くなっているのでむしろ相続放棄をした方がいいのでしょうか。


記載内容

  生命保険の受取人変更 生命保険の調査 相続放棄 期間延長 

(トン子)


【まず、相続放棄をするべきかを考える】
今回の問題について、どのように対処していくべきかを考えていきます。
まず、相続放棄をするかどうかが問題になります。
ただ、そのためには、遺産(資産)と被相続人の債務の内容を確認し、それを比較して判断することが必要です。
これについてはブログQ&A №431に詳しく記載しておりますが、そのポイントは次のとおりです。
① 遺産(資産)と債務の調査をする。
② 債務の方が多い場合には相続放棄の申し出を家庭裁判所にする。
③ 調査に時間がかかる場合には、期間延長(伸長願い)を裁判所に提出する。

【保険会社からの借り入れについて】
 保険会社から借り入れがあるかもしれないということですが、保険会社が保険金額あるいは保険の解約返戻金を超える貸し付けをすることはありません。
 したがって、保険会社からの借入金債務が残ることはまず考えられませんので、この点は安心されるといいでしょう。

【生命保険は、原則、遺産には入らない】
  生命保険の保険金は原則として遺産には入らないというのが最高裁の判例です(この点はブログQ&A №298をご参照ください)。
  ただ、遺産が少なく、生命保険しかない、あるいは遺産額の60%程度を超えるということであれば、遺産とされる可能性もあります。

【保険契約の確認】
  保険契約の内容はどういうものか、受取人の変更がいつなされ、保険金をいつ、誰が受け取ったかなどについては、法定相続人の立場で保険会社に確認されるといいでしょう(その際、戸籍謄本や除籍謄本が必要になりますが、この点は保険会社により要求する書類が異なりますので、予め、確認されるといいでしょう)。
 もし、どこの保険会社との契約かがわからない場合には、弁護士に依頼して、弁護士会照会という手続きで保険協会に問い合わせすることもできます。
 この場合には保険協会に加入している約50社前後の保険会社から、契約の有無や内容、支払い先等に関する回答が来ることになります。

【意思能力がないと受取人変更はできない】
 保険契約の受取人変更が有効になるためには、その変更をする時点で契約者である叔父さんが判断能力(意思能力)を有していることが必要です。
 質問では、《少し認知症》があったと記載されていますが、その程度がわかりません。
認知症でも、軽い場合(例えば長谷川式認知スケール30点満点で15点以上の場合。なお、《【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介》に過去の裁判例を整理しておりますので、ご参照ください)には意思能力があるとされることが多いようです。
 もし、おじさんが入院していたり、介護施設に入っていた場合などは、上記長谷川式認知スケール等の知的能力に関する検査がされている可能性があります。
 これらの病院や施設に確認し、検査がされているなら、その結果を取り寄せ、意思能力の有無を判断されるといいでしょう。
【調査に時間がかかる場合には伸長願いを出す】
 相続放棄は相続開始時点から3ケ月以内に家庭裁判所に申し出(申述)する必要があります。
 しかし、上記の各点についての調査をするには時間がかかります。
 そのため、とりあえずは裁判所に相続放棄申述の期間延長願いを出しておくといいでしょう。
 通常は、3ケ月の延長ならほぼ無条件で出ますし、その後も事情によっては同様の期間延長してくれる場合もあります。
 その伸長された期間を利用して、調査をした上で、相続放棄をするかどうかの最終決断をされるといいでしょう。

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13:33 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №431】

2015/02/24



 音信不通だった父が亡くなり、預金をおろしにいくつもりです。

 古く状態は良くないものの、父名義のマンションに住んでいたため、家賃こそありませんが、荒んだ暮らしだったようで、管理費や、公共料金の滞納があります。

 相続人として預金をおろした場合、それらの支払い義務、またサラ金に借金があった場合の返済義務は生じますか?

 マンションの資産価値は現金に換算して、相続税がかかるのでしょうか?


記載内容

  借金 滞納 預貯金の引き出し 相続期間の延長 遺産調査事項

(桜餅)





【預金を下ろすと相続の承認となるか?】

 お父さん名義の預金は遺産です。

 そのため、お父さんの預金を引き出すと相続の承認をしたとされ(末記条文参照)、相続放棄ができなくなるというのが原則です。

 相続放棄ができないと、お父さんの借金等の債務は、法定相続人であるあなたに引き継がれ、あなたが債務の支払い義務を負います。

 ただ、過去の裁判例を見ると、遺産を墓代や葬式代に使用したり、死亡した人の荷物の引き取りのために使用したような場合には単純承認にはならず、相続分の放棄が可能(平成14年7月3日の大阪高等裁判所決定等)というものもあります。

 私的利用ではなく、被相続人の死亡に伴う支出で、社会的に非難されないようなものに出費した分は処分にあたらず、相続放棄を認めようというのが裁判所の考え方といっていいでしょう。

 なお、一旦は預金を引き出したものの、それを使用しておらず、その後に預金に戻した場合や手元に持っていただけの場合にも、相続財産を処分したとはみなされず、相続放棄が可能と考えていいでしょう。



【まず、遺産調査を確認しましょう】

 預貯金を引き出す前に、まず遺産調査をし、相続放棄をするべきかどうかを決断する必要があります。

 お父さんの遺産(財産)と債務の調査し、遺産の方が多い場合には相続放棄をせず、相続を承認するという決断をしてから後に、預貯金を引き出すという手順になります。



【遺産調査で確認すべき事項は次のとおりです】

1.遺産関係

① 預貯金額の確認・・金融機関で確認しますが、その際、預貯金とは別に借金等の債務がないか、又、保証人になっていないかどうかも確認するといいでしょう。

② 不動産の確認・・不動産があるのかどうか、あればどの程度の価額かを確認する必要があります。

 これらの点は市町村に確認するといいでしょう。

 もし、不動産があるのであれば、ついでに固定資産税の未納付がないかどうかも確認しましょう。

③ 株式等の確認・・預金通帳で配当などがある場合には、証券会社に株式の有無を確認する必要があります。


2.債務関係

① マンションの管理費や公共料金
 催告書の有無の確認やマンション管理組合への問い合わせをして滞納があるかどうか、滞納がある場合にはその金額を確認しましょう。

② 固定資産税の滞納

 この確認も必要不可欠ですので、市町村の固定資産税係に確認する必要があります。

③ 金融機関やサラ金などからの借り入れ

 お父さんのご自宅に届いている借入金や返済状況のお知らせといった郵便物により把握できるものもありますが、サラ金などからの借り入れの可能性があれば、お近くの信用情報機関などに問い合わせれば概ね把握できるでしょう。



【調査のために時間がかかる場合には延長願いを出す】

 相続放棄は原則として、相続開始を知った時点から3ケ月以内という短期間に家庭裁判所申し出する必要があります。

 しかし、調査のために時間がかかる場合もあります。

 その場合には、予め、裁判所に相続放棄の期間延長願い(専門用語では「相続放棄の熟慮期間伸長願い」と言います)を出すといいでしょう(【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。

 遺産調査が難航しており、時間がかかるということを記載するだけで裁判所は簡単に3ケ月間の延長を認めてくれます。



【相続税について】

 平成26年内に相続が開始した場合には、基礎控除5000万円+法定相続人1人当たり1000万円の基礎控除が認められていました。

 そのため、法定相続人があなただけであれば、6000万円の基礎控除がありました。

 遺産(財産)から負債を控除して、6000万円以内であれば、相続税の申告は不要です。

 平成27年1月1日以降に死亡された場合には、基礎控除3000万円+法定相続人600万円の基礎控除ということに制度が改められましたので、法定相続人があなた一人だけであれば、3600万円の基礎控除になります。

 遺産(財産)から負債を控除して、3600万円以内であれば、相続税の申告は不要です。

 ただ、差額が3600万円以上あった場合でも、相続税特有の不動産価額の計算方法もあり、相続税の申告が不要となる場合もあります。

 詳しくは税の専門家である税理士さんに相談されるといいでしょう。



《参照条文:民法第921条 法定単純承認》

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二  相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

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16:44 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

介護保険料・健康保険料の還付金と相続放棄【Q&A №390】

2014/06/19
 亡くなった主人の相続放棄をしました。

 市役所からの通知が届き、「死亡した方の年金から天引きされていた介護・国民保険料が、未支給年金を受給する資格のある遺族に還付される」とのことです。
 それで、「還付請求書」に振込口座などを書いて出してください、との通知でした。

 未支給年金は、妻が相続放棄をしても受け取れるとのことですが、主人が収めすぎた介護・国民保険料の還付も、受け取ってもよろしいのでしょうか?

 年金生活者だったので、死亡後にさまざまな還付金があるのですが、相続放棄すると、受取ってもよいものといけないものがあるようで判断に悩みます。

記載内容

還付金 未支給年金 保険料
(ぽんこ)


【相続放棄した場合、遺産なら還付を受けることができない】
 問題となっているのは
① 未支給年金
② 介護保険の還付金
③ 国民健康保険の還付金

といういずれも請求権です。
 これらの権利が遺産になる場合には、相続放棄をすれば請求できません。
 以下、個別に検討していきます。

【未支給年金は遺産ではない】
 未支給年金については、末尾に記載した法律により、相続の規定である民法とは異なる支給順序が定められています。
 そのため、裁判所の判決で遺産ではないという判断をされています。
 そのため、相続放棄をしていても未支給年金を受け取ることができます。

【介護保険及び健康保険還付金は遺産である】
 ところが、介護保険や国民健康保険の保険料の還付金はこのような特別の規定がないため、他の請求権と同じ扱いで、債権として民法の原則に従うことになり、遺産になります。
 そのため、相続放棄をすると請求することができません。

【もらってしまうと不利益がある可能性があります】
 もし、遺産である介護保険や健康保険還付金の還付を受けうると相続放棄ができなくなりますし、既に相続放棄をしていても相続放棄の効果を主張できなくなります。
 相続放棄をするということは通常は被相続人の方の債務が多額である場合が多いということになります。
 還付を受けたという事実を債権者が知ることはないとは思いますが、万一、債権者が及び健康保険還付金を受けたことを知った場合には、それらの債権者から被相続人の方の債務の請求を受けることになりかねませんので、ご注意ください。

《参照条文》
国民年金法第19条 (未支給年金)

1. 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
2. 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者の子は、同項に規定する子とみなす。
3. 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。
4. 未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。
5. 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。
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13:07 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄した場合の高額療養費【Q&A №380】

2014/06/03
 母のかかっていた訪問診療クリニック、訪問看護、訪問薬局は、まず医療機関と家族が契約したうえでサービスが提供されるシステムでした。それで、娘である私が契約書に記入し、医療費は一か月分まとめて、私の口座から、翌月に自動引き落としになっていました。

 私の場合、医療費は私の口座から払うという契約になっており私が支払ってきたことは通帳記録からも証明できるのですが、そのような場合でも払い戻し金は受け取れないのでしょうか。

 三ケ所それぞれに限度額認定証を提示していますが、それでも合わせると月に20万程度支払っています。合算された払戻金が受取れないのはキツイです。

記載内容

高額療養費 還付金 被保険者 世帯主 健康保険法
(ぽんた)


【還付金返還請求権は誰のものなのかが問題です】
 年金については、特別に法律で、死亡した時点までの未支給分については、順位は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」というように、民法の法定相続人の規定とは別個のもらえる順序が定められています。
 高額療養費は、健康保険法に基づく高額療養費制度に基づくものですが、この請求については、死亡までの未還付分がどのようになるかを直接定めた規定はありません。
 ただ、健康保険法では、この高額療養費を請求できるのは《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》と記載されています。
 お母さんが世帯主か、組合員健康保険の被保険者である場合には、お母さんが請求権者であり、その権利はお母さんの遺産になります。
 このようにその療養費請求権がお母さんのものである場合には、高額療養費請求権はお母さんの遺産になり、《相続放棄をすれば高額療養費は受け取れない》という結論になります。

【あなたが世帯主または組合員かどうかを確かめる】
 あなたの場合、まず、あなたが世帯主か、健康保険の組合員かどうかを確認しましょう。
 もし、どちらかであれば、先ほどの健康保険法の規定上からみて《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であるあなたの独自の権利として請求できると理解してもよいでしょう。
 この場合、役所に出向き、あなたが《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であったことを説明するとともに、現実にもあなたがお金を支払ってきたという証拠として通帳等を持参されるといいでしょう。

【最後は、ダメ元の精神で役所と協議する】
 なお、あなたが《世帯主》でもなく、又《組合員健康保険の被保険者》でもない場合でもない場合には、あなたには請求権がないように思われます。
 しかし、
① お母さんのかかっていた訪問診療クリニック等との契約はあなたがしていた。
② 医療費は、あなたの口座から自動引き落としになっていた。

という事実がありますので、あなたが返還してもらってもおかしくはないともいえます。
 役所と交渉して、支払ってもらったという話も聞いたことがありますので、あなたとしても、実質上の支払い者であるということを訴えて、療養費の振込み口座をあなたの口座にしてもらえるよう、努力されるといいでしょう。

参考条文:健康保険法第57条の2(高額療養費)
 保険者は、療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養及び生活療養を除く。次項において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費若しくは特別療養費として支給される額若しくは第56条第2項の規定により支給される差額に相当する額を控除した額(次条第1項において「一部負担金等の額」という。)が著しく高額であるときは、世帯主又は組合員に対し、高額療養費を支給する。ただし、当該療養について療養の給付、保険外併用療養費の支給、療養費の支給、訪問看護療養費の支給若しくは特別療養費の支給又は第56条第2項の規定による差額の支給を受けなかったときは、この限りでない。
2 高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める。
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10:31 相続放棄 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

夫を相続人から外す方法【Q&A №379】

2014/06/03
 初めまして。よろしくお願い致します。
 私は結婚していますが、子供がいません。
 病気の容体が良く無く、「死」を意識する様になりました。
 私の死後、保険金で葬儀を行って貰えると仮定して。
 主人用にも毎月少ないながらもお金を貯蓄しているので、私の通帳の中身は、妹の娘(姪)に譲渡したいと思います。
 その場合は、「夫の相続人手続きを外す」と聞きましたが、その様な手続きはどの様にしたら良いのですか?

記載内容

遺留分 生前の相続放棄の合意 生前の遺留分放棄 公正証書遺言の執行 廃除
(くるみ)


【相続人である夫の立場は・・・】
 ご主人に遺産を渡したくないが、どうすればいいかという質問です。
 まず、ご主人は配偶者になりますので、妻であるあなたが死亡した場合には、本件では子供がいないということですので、直系尊属(あなたのご両親等)が存在する場合にはあなたの遺産の3分の2が、又、ご両親等の直系尊属が死亡されている場合には4分の3が、法定相続分としてご主人が相続します。

【遺言書を書く】
 まず、何よりも遺言書を作成し、ご主人以外の人に遺産全部を相続あるいは遺贈する必要があります。
 又、なぜ、ご主人に遺産を与えないかを、穏やかな表現で《付言》として記載しておくといいでしょう。
 ご主人としては、そのような遺言書であれば、やむなしとして納得する可能性があり、あえて遺留分減殺請求まではしてこない可能性もあります。

【夫を相続手続きから外す《廃除》という方法があるが・・】
 質問には《「夫の相続人手続きを外す」と聞きましたが、その様な手続きはどの様にしたら良いのですか?》とあります。
 法律上、夫から強制的に相続人である資格を奪ってしまう《廃除》という制度(民法892条。条文は末記のとおりです)があります。
 この制度は、あなたが生前に、家庭裁判所に、ご主人から暴力や虐待を受けていたことを証明し、裁判所の裁判(審判)でご主人を相続人から除外してもらうものです。
 ただ、そう簡単には認めてくれないことが多いです。

【生前の相続放棄は法的に法的には無効で意味がない】
 生前、相続を放棄するのに同意をしてもらうことも考えられますが、残念ながら、生前の相続放棄は無効です。
 そのため、あなたの死後、ご主人が約束を翻して相続放棄をしなかったとき、ご主人は法定相続分どおりの相続することになっても、誰も文句をいうことができません。

【生前の遺留分放棄を考えてみるとよい】
 生前の相続放棄はできませんが、生前の《遺留分》の放棄は可能です(民法1043条。条文は末記のとおりです)。
 あなたとご主人は互いに法定相続人という関係にあるのですから、互いが遺留分を放棄しあうということで合意されてはいかがでしょうか。
 ただ、生前の遺留分放棄については、次の点をご注意ください。
① 家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
② 遺言書がないとご主人は法定相続します。

 そのため、あなたとしては遺言書を作り、ご主人に遺産を行かないことを明らかにしておく必要があります。
 遺留分放棄の審判申立については、当ブログのQ&A №381をご参照ください。

【公正証書遺言で遺言執行者を定め、秘密裏に執行すると・・】
 過去に扱った案件ですが、他の相続人に全く知らせることなく、遺言が執行されていたことがありました。
 公正証書遺言で遺言執行者が隠密裏に執行したのです。
 自筆遺言証書であれば、その実行をするために家庭裁判所の検認という手続きが必要であり、その手続きの通知が裁判所から全相続人に行きます。
 しかし、公正証書遺言の場合、検認の手続きが不要で、即時に執行できます。
 このような場合、他の相続人の知らない間に遺産が分配され、特定の法定相続人が相続から事実上、排除されるということになります。
 但し、遺言執行者としては相続の開始や遺言の存在を知らせ、遺産目録を作成して法定相続人にも交付する義務があります。
 前記のようなケースは、これらの義務を履行しなかったために遺留分減殺の機会を奪ったものだとして、他の相続人(たとえばご主人から)損害賠償請求をされるというリスクが発生しますので、お勧めできる方法にはなりません。

・参照条文①:民法第892条(推定相続人の廃除)
 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

・参照条文②:民法第1043条(遺留分の放棄)
 1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

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介護をした相続人と寄与分【Q&A №371】

2014/05/01
 母と二人で在宅介護をしてきた父が家で亡くなりました。
 父には遺言書などなく相続人は母と兄姉と自分の4人です。
 兄の方は父の介護を二人に押し付けていたのに遺産を貰うなんて出来ないと、放棄すると言われましたが姉の方は介護なんて自分には関係ないと遺産を要求してきました。
 そこで寄与分についてですが、父は10年前に介護度3が認定され5年前からは5に上がり認知症まで加わった寝たきり生活になりました。そして4年前からは重度のパーキンソン病を患い、2年前からは肺炎を患って胃ろうになりました。介護の間、訪問看護やヘルパーなど頼まず二人だけでしてきました。(胃ろうになってからは訪問看護の人に週一で30分だけ来てもらっていました。)
 介護度5になった辺りから痰が多く吸引機で取っていました、肺炎後からは肺炎防止の為に吸引回数も24時間体制で取っていました。床ずれも大きなポケットが3か所もあり床ずれの場所に圧を掛けない為に体の向きを2.3時間程度に一度は右に向けたり左に向けていました。
 訪問看護の方からはこんなに見てる家族は初めてとまで言われました、父には家族さんにこれだけ見てもらっこんな幸せな人はいないと皆さんから言われました。
 寄与分ですけど姉に対して主張が可能でしょうか、もし調停にまで行ったら寄与分は認められる可能性はあるでしょうか。
 駄文で申し訳ありませんけど、お願いします。

記載内容

介護 ヘルパー 相続分譲渡 相続放棄 特別寄与
(S-Ran)


【療養看護の寄与にあたる可能性があります】
 法定相続人が被相続人の療養介護に努めた場合、遺産の分割に際して特別寄与が認められることがあります。
 ただ、あなたについて言えば、父子関係にあったことから、療養介護は《親族間の扶養義務》の履行であり、《当然なすべき義務を履行しただけである》として、それほど多額の寄与分は認められないのが普通です。
 ただ、あなた方が介護したことにより、ヘルパー等の介護料金等を支払わなくてもよくなったと認められる場合には、その支払いが不要となった金額が特別寄与として認められる可能性があります。

【具体的には・・】
 質問を見ると、
《父は10年前に介護度3が認定され5年前からは5に上がり認知症まで加わった寝たきり生活になりました。》
《そして4年前からは重度のパーキンソン病を患い、2年前からは肺炎を患って遺漏になりました。》
《介護の間、訪問看護やヘルパーなど頼まず二人だけでしてきました。(胃ろうになってからは訪問看護の人に週一で30分だけ来てもらっていました。)》
《介護度5になった辺りから痰が多く吸引機で取っていました、肺炎後からは肺炎防止の為に吸引回数も24時間体制で取っていました。床ずれも大きなポケットが3か所もあり床ずれの場所に圧を掛けない為に体の向きを2.3時間程度に一度は右に向けたり左に向けていました。》
と記載されています。
① どの時期からヘルパーが必要になったのか?
② 週単位でどの程度ヘルパーが必要であったのか?
③ その時点でのヘルパーの料金はどの程度であったのか?

等を調査・確認した上で、その総額を特別寄与として請求されるといいでしょう。

【お兄さんには放棄ではなく、相続分の譲渡をしてもらう】
 お兄さんはあなたの努力を認めて、遺産を放棄すると言われているようです。
 この相続放棄が家庭裁判所に対する相続放棄の申述をするのか、あるいは遺産を請求しないのかがわかりませんが、いずれにせよ《相続放棄》だけでは不十分です。
 お兄さんには相続放棄ではなく、相続分をあなたに譲渡するようにお願いをしましょう。
 相続放棄をすると、お兄さんを除いて他の相続人で遺産分けをすることになり、妹さんの取り分が増えます。
 相続分の譲渡であると、お兄さんの取り分もあなたの取り分に加算されます。
 なお、お母さんも協力していただけるのであれば、その相続分をあなたに譲渡するといいでしょう。
 相続分譲渡については、相続分譲渡書に実印を押してもらい、印鑑証明書をもらっておくといいでしょう。
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16:30 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産となる車両の処分と相続放棄【Q&A №365】

2014/04/18
 弟がなくなり、相続人は両親でしたが、母は相続放棄しています。
弟の車は、ローンが二か月分残っていた為、所有者がローン会社でした。しかし、
ローンの一括返済額より、売却額が上回り、返済額を差し引いた額が父の手元に入り
ました。車の買取店をとおし処分したので、所有者を父には変更せずに、車売却に
至っています。(買取店との書類を交わしたのは、父のみです。所有者がローン会社
だった為、代表相続人のサインのみでよかったという事でした。)その場合、父は相
続放棄できるでしょうか。

記載内容

遺産の処分 売却 法定単純承認 単純承認
(プーさん)


【遺産を処分した後には、相続放棄ができない】
 相続放棄前に遺産を処分した場合、遺産の相続をしたものとして扱われますので、相続放棄はできません(末記の参照条文:民法第921条1項をご参照ください)。
 なお、相続放棄は家庭裁判所へ簡単な書類を提出するだけで受け付けられ、家庭裁判所から相続放棄の申述の受理証明が出されます。
 しかし、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したとしても、遺産を処分しておれば、普通の相続をしたと扱われますので、相続の放棄の効果はありません。
 そのため、弟さんの債権者(貸金業者など)が、お父さんの相続放棄は無効だとして請求をしてくれば、相続放棄は無効となり、お父さんとしてはその借金を支払う必要があるということになります。

《第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。(以下略)》

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10:58 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

姉の入院費用の支払い義務【Q&A №359】

2014/03/28
 別居の姉が先日亡くなりました。
 入院にあたって、姉は、保証人の欄に自分で私の名前と住所、電話番号を書いていましたので病院から、生前の入院費と今回の入院費の請求をされています。(保証人の欄に押印はありませんでした)払わなければならないのでしょ
うか?
 姉の入院は亡くなってから知りました。両親も他界し、親族は私だけです。
 相続する預貯金、財産、生命保険等は一切ありません。

記載内容

保証 入院費用 扶養義務 相続放棄 他人の署名・捺印
(ごんちゃん)


【問題点は相続としての債務とあなた自身の債務の2点です】
 今回は、書面上であなたの署名がされた形になっているので、あなた自身が(保証人としての)債務を負うのかどうかという点、次にお姉さんの負っている債務(主債務)についてあなたがお姉さんの相続人として債務を負うかという点の、2点です。

【あなた自身の債務はない】
 まず、あなた自身の保証債務について回答します。
 あなたのお姉さんが、あなたの署名をすることについて、あなたが同意あるいは黙認していたような場合には、保証人としての責任を問われることがあります。
 しかし、そうでないなら、あなたが署名も捺印していないのだから、原則としてあなたが(保証人としての)債務者になることはありません。
 なお、あなたはお姉さんの兄弟姉妹になりますので、扶養義務があります(末記条文を参照ください)が、それは親族内部の関係であり、第三者である病院があなたの署名・捺印もなく、又、同意もしていないのにあなたに保証債務を請求することはできないでしょう。

【相続債務の対策・・相続放棄を考える】
 ただ、お姉さんは、病院に対して支払債務を負います。
 そのお姉さんが死亡したので、その債務は相続人に承継されます。
 その債務を負いたくないというのであれば、死亡を知って3ケ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをするといいでしょう。
 ただし、相続放棄をした場合、あなたは債務を引き継ぐことはなくなりますが、同時にお姉さんから遺産をもらえなくなります。
 従って、相続放棄をする場合には、お姉さんの財産と負債とを比較して、負債が多いというような場合に放棄をすればよいでしょう。
 なお、財産の方が多いということであれば、お姉さんの債務は支払わざるを得ないでしょう、
 具体的な相続放棄の手続きにつきましては、お近くの家庭裁判所に確認されるといいでしょう。親切に教えてくれると思います。

【弁護士に相談することも考える】
 質問では病院からの請求があるようですが、相続放棄をするのなら、その後に相続放棄をしたことを主張すればいいでしょう。
 なお、病院が保証人としての債務を主張してくるのであれば、署名捺印をしていないということを主張すればいいでしょう。
 それでも病院が納得しないのであれば、弁護士に相談して、対策を協議されることをお勧めします。

【参照条文】
《民法第877条(扶養義務者) 
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。》
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13:45 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

養子縁組で相続関係はどう変わるのか。【Q&A №345】

2014/02/13
 昨年4月に祖母が亡くなりました。
 相続人としては実子2人(私の母・叔母(妹))と養子(私の父:婿養子のため養子縁組しておりました。)の計3人になると思います。
 祖母は負の財産があり、私の母は相続放棄しました。叔母も放棄する予定です。父は既に他界しております。
 この前、税務署から連絡があり、私と弟が相続人であるから、相続する意志があるのかを聞かせて欲しいとの事でした。
 私の母が相続放棄しているので、その子(祖母にとっての孫)の私達には相続の権利はないと思っていたのですが、税務署の言い分は私と弟は亡くなった父の代償相続人だという事でした。
 家庭裁判所に問い合わせると、父の養子縁組より前に出生している私と弟は代償相続人にはなり得ないと返答を頂きました。(放棄手続きについても、相続権がないのだから放棄の手続きをとっても受理されないだろうとも言われました。)
 その旨を税務署に伝えると、祖母と血の繋がりがあるだとか、放棄しない・できないのであれば相続を承認したとみなすと一方的に告げられて非常に困っています。
 そもそも私と弟に相続権があるのか(当然あっても放棄します)、またもし相続権がないのであれば税務署にどのような形で通告すればよいのか、アドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

(無礼な税務署職員)


【結論から言えば、家庭裁判所の見解が正しい】
 結論から申し上げますと、家庭裁判所の見解が正しいです。
 税務署にも納得して頂ける内容にするため、民法の条文と文献、判例を記載した回答にしました。
 難しいかもしれませんが、ご理解ください。

【子の代襲相続に関する民法の規定】
 民法の代襲相続の規定は次のようなものです。
《民法第八百八十七条
 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。》

 この条文の下線部分は、「被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になれない」という意味です。

【直系卑属でない者は代襲相続できない】
 父さんが被相続人の養子ですので、子になります。
 問題は、そのお父さんの養子縁組前の子供であるあなた方が、被相続人の直系卑属にあたるかどうかです。
 さきほど記載した民法887条2項の但し書き(上記の下線部分)は昭和37年の民法改正で新設された条文であり、「もっぱら養子の縁組前の子を相続から除く」目的でさだめられたものです(参考文献:有斐閣『新版 注釈民法(26)』247頁6行目以下。図書館などでこの本を探してご確認ください)。

【養子縁組前の子は直系卑属にならない】
 そうすると、問題は、養子縁組前に生まれた養子の子が被相続人の直系卑属になるかどうかという点に絞られます。
 この点については、養子縁組前に生まれた養子の子は、被相続人との間で血族関係をもたない、すなわち直系卑属にならないということが、古くからの確定した裁判例です(大審院判決昭和19年6月22日民集23巻371頁等。なお、これ以外にも判例がありますが、前記『注釈民法』に記載されていますのでご参照ください)。

【養子縁組前の子は代襲相続しない】
 以上のとおりであり、結局、あなた方は縁組前の子であるので、被相続人の直系卑属にはなりません。
 そのため、民法第887条2項の但し書きによりあなた方は代襲相続人にはならず、被相続人であるお祖母さんの相続をすることはありません。
 税務署にはこの回答を印刷してお見せするといいでしょう。
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13:22 相続人 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

亡くなった父が家を担保に借金していた【Q&A №332】

2013/11/27
 父が家を抵当に銀行に借金をしていることが、亡くなった後に判明しました。母が相続し借金を返済するということで、子どもは相続放棄しました。
 ですが、実際は長女が借金を返済しています。家の価値は借金よりも多いので借金完済したいのですが、母が死去した場合は、銀行に家を取られてしまうのでしょうか?
 教えてください。お願いいたします。

記載内容

債務 借金 担保
(猫ママ)


【お父さんの遺産や債務相続はお母さん一人が承継あるいは負担する】
 お父さんが死亡したということですので、相続人はお母さんとあなたを含む子供たちになります。
お父さんが死亡したのち、お母さんを除いて子どもは相続放棄したとのことですから、お母さんだけがお父さんの遺産である家を相続し、かつお父さんの借金(債務)を引継ぎます。
そのため、お母さんだけが借金を返済する義務を負います。

【お母さんの死亡した後の相続については】
 将来、お母さんが亡くなった場合には、今度はお母さんの相続で、再び同様の問題が発生します。
お母さんが引き継いだ借金を、今度こそ子どもが引き継ぐ(相続する)のではないか、という問題です。
 その段階で、あなたを含む兄弟姉妹が相続人になります。
それぞれの相続人が、今度は、お母さんの遺産について相続放棄をするかどうかを改めて検討する必要があります。

【長女以外の方が相続放棄をすればよい】
 お母さんが亡くなった場合に、抵当権者である銀行が家を取り上げる(=担保権を実行して家を競売してしまう)のではないかとご心配のようですが、お母さんが亡くなっただけでは競売されることはありません。
現在、お母さんが支払うべき住宅ローン債務を、(相続放棄をした)長女さんが支払い続けているのであれば、将来のお母さんの遺産分割では、長女さん以外の人が相続放棄をして、長女さんが単独で家と負債を負うということで対処するしかないと思います。
長女さんが、従前通り借金を返済していく限り、銀行が家の競売をすることはありません。
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16:59 相続放棄 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

相続分を譲渡するには【Q&A №283】

2013/06/14
被相続人の通帳を管理していた共同相続人が言を左右にして相続対象預貯金の詳細を明らかにしません。
 このような人間を相手にいつまでも不毛な協議を続けたくありませんので無償で相続分を譲渡して係りを一切絶ちたいと思っています。
 この場合、一方的に「君に無償で譲渡する」という文書を送り付けて終わりにしたいのですが、このような方法での譲渡は有効でしょうか。
 相手がこれを受領すれば黙示の譲渡契約が成立したとみることはできませんか。お忙しいところ恐縮ですがご教示願えれば有難いです。

記載内容

相続分譲渡 相続放棄 相続放棄期間経過


(bluegrass)


【譲渡契約書を締結する必要がある】
 相続分の譲渡を考えておられるようですが、その場合の注意点を記載しておきます。
 相続分の譲渡は、譲渡人であるあなたと、譲受人である相手方との合意ですので、《一方的に「君に無償で譲渡する」という文書を送り付け》ただけでは効力を持ちません。
 相手の同意が必要です。
 そのため、あなたと共同相続人である譲受人の署名捺印のある譲渡契約書を作成・締結する必要があります。

【相続債務の支払いを明記する】
 被相続人の負債はないのかもしれませんが、現在把握しておられない借金などが判明する可能性も否定できません。
 そのため、持分の譲渡の契約書を作成する場合、《譲渡人であるあなたの相続債務分を譲受人が支払うものとする》というような条項を記載しておくといいでしょう。

【相続債務の支払いがされなかった場合は・・】
 ただ、注意するべきことは、譲受人があなたの相続債務分を支払わなかったときには、債権者としては、あなたに債務の支払請求をしてくる可能性があるということです。
 相続人間で債務の支払責任を移転しても、それは相続人間で勝手にしたことであって、債権者としてはあなたに対して、法定相続分に応じた債務の支払いを請求することができます。

【3ケ月間の相続放棄期間が経過していた場合の処置】
 債務を請求されないための方策としては相続放棄が望ましいでしょう。
 相続放棄期間(相続開始を知って3ケ月以内)を過ぎていても、新たに多額の債務の存在が明らかになった場合には、その時点から3ケ月以内に相続放棄の手続きが可能です。持分の譲渡だけではなく、相続放棄も視野に入れて、今後の対応を検討されるといいでしょう。


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16:30 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

土地の所有権は放棄できない【Q&A №273】

2013/05/01
死んだ父は山の一部を買いそこを畑に使用する等していたようです。現在荒れ放題です。借りたのではなく買ったようです。
 隣の区画は登記簿によると神奈川の人のようです
 この畑に使用していた土地を放棄する訳にはいかないでしょうか

記載内容

山林 放棄 
(kitty)


【土地の所有権は放棄できない】
 所有権は一般に使用するも処分するも自由であり、この点は動産であっても、本件のような不動産(山林)であっても同様です。
 ただ、ここでいう処分とは、売却や贈与等の、次の権利者が明らかになっている場合の話です。
 これに対して不動産の放棄は簡単ではありません。不動産の放棄の意思表示を一体誰に対してするのかを定めた条文はありませんし、又、不動産の放棄をした場合にその旨の登記をどのようにするのかの条文もありません。
 結局、不動産の放棄はできないと考えられた方がいいでしょう。

【遺産分割協議で取得者を決定するしかない】
 あなたが相続するべき遺産の中に、価値がなく相続したくない財産がある場合には、他の相続人にその財産を取得してもらうしかないでしょう。
 遺産分割協議の中で、問題の土地を他の相続人が取得するという方向で話をつけることができないのなら、相続人全員で法定相続分に応じて取得することになります。

【ある特定の財産の相続放棄はできない】
 遺産の相続をしたくない場合には、家庭裁判所に対して、相続放棄の手続きをすることができます。
 しかし、この場合は相続するかしないかのどちらかを選択するだけで、特定の財産だけを相続放棄するということはできません。

【土地を所有することのデメリット】
 土地を所有することの一番大きなデメリットは、固定資産税の支払いと現地の管理責任を負うことです。問題の土地は、お父さんが購入されたということですので、購入当時は価値があったのでしょう。
 もし、現在も価値がある土地であれば、隣接地の土地所有者がわかっているのですから、相続で取得した後に、その隣接所有者に売却する、あるいは贈与するということも考えていいでしょう。
 値打ちのない土地であれば、固定資産税が非課税になる場合が多いので、相続をし、そのまま持ち続けるしかないでしょう。
 現地の管理について、隣接所有者や地域の自治会から《雑草を刈って欲しい》というような要求がされることも多いですが、逆にいえばそのような苦情が出るような地域であれば、近くに住宅地があり、価値のある土地という可能性がありますので、売却・贈与等の処分を検討されるといいでしょう。


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10:40 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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