"特別受益"に関連する記事一覧
 | HOME | Prev »

遺産の対象財産と計算方法【Q&A №559】

2017/02/14


【質問の要旨】

保険金や共有の不動産などを考慮すると、遺産分割はどうなるか

記載内容 共有 賃貸 保険金

【ご質問内容】

相続人兄と私のみ

遺産は共有名義の家(持分兄6:父4)

死亡保険金1450万円(受取人私)あり。

家は同居を前提に父が1450万円出したが、喧嘩により同居を断られ一度もその家には住まず、アパートを借り生活。

何度もお金をかえしてくれと頼んだが、聞いてもらえず。

少額の個人年金の受取と兄と私の援助で生活。

2年前父とのトラブルで兄家族は隣の市へ引越。

その1年後父が他界。

葬儀の際、家は父が亡くなる半年ほど前から人に貸していることを聞く。(父は知らない。)

今回、家を売りたいから、早くサインをしてと連絡が来る。

家は兄が相続。(2680万円で売却予定。)

生命保険は私が受取る。

父の葬儀代?円、アパートのリフォーム代192万円、他に亡くなった後かかった費用は兄と私の折半という遺産分割書を作成す
ると。

兄は1060万円しかもらえず、私は生命保険を全部受取るんだから文句ないよなという感じです。

生前父に兄は400万円程度、私は家賃など約350万お金を援助しています。

兄は共有なのに10年間自分たちだけで住み続け、その後無断で人に貸し収入(10万円程度/月)も独り占めにしていた。

実際のところ父の遺産はいくらと考えられますか?

兄は12年ほど前に土地(100万程度の価値)を譲り受けています。

分割の内容は後で決めるとして、取り急ぎ売ることの同意を早くしろとも言われています。

今同意するのは何か私の不利益となりますか?

(たいよう)






【遺産内容について】

まず共有名義の家(以下、家といいます)は、お父さんの持ち分が40%ですので、その40%の持ち分が遺産の中にはいります

これにお父さん名義のその他の財産(預貯金や株式等の有価証券、動産など)が遺産になります


【保険金は遺産ではありません】

あなたが受取人として受け取った死亡保険金は、遺産分割では、原則として遺産とは扱われません(相続税の申告では遺産の中に含まれますが、それは税金の問題です。法律的には、遺産分割の関係では原則としては遺産でないとの判例があります(当ブログQ&A №298)。


【お父さんの家を使っていた点は特別受益になるか】

家 は被相続人であるお父さんとお兄さんの共有ですので、もし、お兄さんが自ら居住していた場合には、その共有持ち分については無料で使用しているのですから、その無料使用分(使用借権)が特別受益になるのか、遺産に持ち戻されるかどうかが問題になります。

土地の無料使用については特別受益になると思われますが、家屋の無償使用については、権利性が低いとされ、特別受益になることは少ないです(当ブログQ&A №457)。

特に本件では家全部ではなく、共用持ち分ですので、お兄さんが使用しているのなら特別受益ではないということになるでしょう。

ただ、今回の質問ではお兄さんが他人に貸し、賃料という経済的な利益を得ています。

そのため、もし、お父さんがその賃貸を了承しているのであれば、その賃料のうちのお父さん持ち分相当分である40%分は特別受益という主張をしてもいいだろうと思います(この問題も当ブログQ&A №539に同様の記載があります)。

又、お父さんに無断で貸したというのであれば、不法行為に基づく賠償請求権という債権(賃料の40%相当分が損害額 ということになります)が成立する可能性があり、遺産に含まれるという主張も可能でしょう(ただ、従来、お兄さんが無償で使用するのを認めていたので、賃貸にしても損害はないはずという反論もあり得ます)。

なお、お父さん死亡後の賃料についていえば、相続人がその持ち分に応じて遺産とは別に請求できるという判例があります(当ブログQ&A №240)。


【債務の扱い】

お父さんの賃借しているアパートの リフォーム代とあります。

賃借物件を賃借人であるお父さんがリフォームし、その価額が192万円という高額であるというのは考えにくいので、賃借物件の立退きに際しての原状回復費用の可能性があります。

その前提で考えれば原状回復費用はお父さんの生前の賃借に関する費用ですので、お父さんの生前債務と同様に扱っていいでしょう。

次の葬儀代については相続債務ではありませんが、あなたが葬儀に出席されていたのなら、相続債務扱いで負担をするような解決例が多いです(当ブログQ&A №545)。

以上に記載したように、生命保険は除外して、《家の持ち分+他の預貯金+有価証券+動産+賃料の持ち分相当額 》が遺産になり、《家のリフォーム代と葬儀代》が相続債務になるものと思われます。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
18:12 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡母が出してくれた治療費と持戻し免除【Q&A №556】

2017/01/26


【質問の要旨】

過去に治療費を出してもらった場合、相続時に考慮するのか

記載内容 治療費 相続分 引く

【ご質問内容】

昨年暮れ母親が亡くなったのですが、不動産の相続で問題が起きています

兄弟が4人いるのですが長兄が母の看病を嫌い闘病中に急に連絡がとれなくなり、そうこうするうちに母が亡くなりました。

葬儀にも来ず、残った兄弟で葬儀をあげたのですが、いざ相続の事になると急に出てきてお金をもらう事を主張し始めました。

長兄の言い分は4人で平等に分けるのは不公平というのです。

と、いうのは私が数年前ガンにかかりその治療費を母がだしてくれたのですが、その分の金額を私の相続分から引かなければ不公平だというのです

母が元気な時の話ですし、そんな事を言われるとは夢にも思いませんでした。

長兄のいうように均等に分けて相続するのは不公平にあたるのでしょうか

また、長兄にはどのように対処すればいいのでしょうか。

(るる)





【治療費は特別受益にならない】

あなたはお兄さんから、数年前病気になったときにお母さんに出してもらった治療費をお母さんの相続に際して考慮するべきだと主張されているようです。

これは、法律的に言えば、あなたがお母さんからもらった治療費が特別受益となるかどうかという問題です。

特別受益になるなら、治療費の額を遺産の中に組み入れて、各相続人の遺産額を計算する必要があり、その結果、あなたは遺産を治療費として先にもらっているから相続での取り分が少なくなる(場合によればゼロになる)こともあります。

この特別受益とは、民法903条で、「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」場合であると規定されています。

本件のような治療費は、お母さんが生きておられる間にもらったものですので遺贈ではありません。

また、婚姻、養子縁組や生計の資本のためにもらったものであれば、その贈与が相続財産の前渡しとみられる贈与であるか否かを基準として判断しますが、病気の治療のためのお金ですので、婚姻、養子縁組や生計とは関係がなく、相続財産の前渡しとは考えにくいでしょう。


【仮に特別受益になったとしても持戻し免除を主張することができる】

前項に記載したように治療費が仮に生計の資本としての贈与だと判断されたとしても、あなたの治療費として、お母さんがあなたのことを心配してお金を出してくれたというのであれば、通常お母さんとしては「治療費としてあげたお金は遺産分割において考慮しなくてよい」と考えていたと考えられます。

そこで、病気の治療費として出してくれたという事実から、持戻し免除の黙示の意思表示があったと考え、主張するとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:50 生前贈与・特別受益 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

何かをする時期について【Q&A №554】

2017/01/19


【質問の要旨】

母が亡くなるまでにできることはないか

記載内容 公正証書 実家 請求

【ご質問内容】

私は姉妹の姉です。

父の死後、話し合いもなく、父の死後公正証書が送りつけられ、数か月後税理士の方からの書類が届いた時は、母に全部渡す預貯金は妹名義になっていました

数年前に母を施設に入れ、実家に移り一人で住み始めました

こういう場合母が亡くなる迄手立てがないのでしょうか

私は過分に欲しいと思っているわけではありませんが、

妹も不動産などを両家からたくさん相続していますので、裕福ですので

私もきちんと請求したいと思っています。

(さくら)






【お父さんの相続に関しては遺留分減殺請求はできたが…】

お父さんの相続に関しては、預貯金はすべて妹さんに相続させるとの内容の公正証書遺言が作成されていたと理解しました。

このような遺言書があり、他の相続人になんらの遺産も来ないような場合でも、最低限の遺産(子であれば法定相続分の半分)を取り戻す権利があります(遺留分といいます)。

ただ、この権利は自分に遺産が来ないという遺言書があることを知ってから1年間以内に、遺言書で遺産をもらう人に請求(遺留分減殺請求といいます)する必要があり、この期間を過ぎると請求することができません(民法1042条)。

そのため、妹さんが預貯金をすべて相続したことにより、あなたやあなたのお母さんの遺留分が侵害されていた場合には、1年以内であれば、遺留分減殺請求をすることができました。

しかし、お父さんが亡くなってから既に9年経過しているということですので、お父さんの相続に関して、妹さんに何らかの請求をすることは難しいでしょう。


【実家に妹が住んでいても、あなたからは請求することはできない】

妹さんは両親も住んでいない実家に一人で住んでいるとのことで、あなたとしては妹さんに何らかの請求をしたいという気持ちでおられることと思います。

ただ、妹さんの住んでいる家の所有者はお母さんだと思われます。

そのため、妹さんに何らかの請求をするとしても、請求者はお母さんであり、今の段階では家の使用については、あなたが妹さんに対して何らかの請求をするということはできません


【お母さんが亡くなれば特別受益の問題になる可能性もあるが…】

将来的にお母さんが亡くなると相続が発生します。

その段階では、お母さんの家に妹さんが無償で使用・居住していたことにより受けた利益を、お母さんから妹さんへの特別受益だと主張できる可能性が出てきます。

ただ、建物の無償使用というのは、恩恵的要素が強く、一般的に持戻し免除の意思表示がある(お母さんが無償で使うことを認め、相続の際にもその賃料や使用料というものを考慮しなくてよいと考えている)ものと評価されることが多く、特別受益と判断されることは稀です。


【お母さんの状態によっては成年後見も検討すべき】

また、現在妹さんがお母さんの財産を管理しているのであれば、妹さんによってお母さんの預金が引き出されているという事態もありえます。

今後の遺産の目減りを少しでも防止する観点からは、お母さんが自分の財産を十分に管理できる判断能力がないというのであれば、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、お母さんの財産を管理してもらうことができます

ただ、この場合の財産管理は、原則として後見人選任後のみであり、又、今回のような質問のケースでは後見人は司法書士や弁護士になる可能性が高いため、その場合には、後見人の報酬として月額3万円程度の出費が必要になります。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:03 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

被相続人との共有マンションの家賃の扱い【Q&A №546】

2016/12/06



【質問の要旨】

マンションの共有者である長男が、被相続人に対し収益の返還請求権を持っていると主張している

記載内容 共有物 賃料 時効

【ご質問内容】

被相続人と長男が一棟建て賃貸マンションを所有していました。

分割協議が進まず調停へと進む状況です。

これまで賃貸マンションの収入は被相続人が管理し、収入も返済や税金の支払も行ってきました

長男代理人は2分の1所有の賃貸マンションからあがる収益は本来自分の物であり、返還請求権をもっていると主張しています。

この主張は認められるのでしょうか?

またこの被相続人に対する債権は何年前まで有効なのですか?

時効はあるのでしょうか

この債務を遺産に加えると他の相続人の相続分はなくなるといっています。

(mujun)





【兄が本当に共有者であるかどうかを念のために確かめる】

お父さんと兄で共有持ち分が各2分の1であるのに、被相続人が賃料収入全部を得ていたということですが、2つの面で疑問(あるいは問題といってもいいでしょう)がありそうです。

まず、第1は、兄の持ち分2分の1というが、実質はお父さんが建築資金を出しており、名義だけを長男のものにしていたのではないか?という点です。

この疑問は①長男名義の2分の1は実質上はお父さんの遺産ではないのか?

あるいは②お父さんがお兄さんに建築資金を生前贈与(特別受益)したのではないか?

という問題に発展しますので、念のために上記の①及び②の観点から、是非、調査されるといいでしょう。

なお、ローンがあるようですので、その借入名義がお父さんだけか、兄でもあるのか、又、頭金などは誰が負担したのかを、お父さんの取引履歴等なども参考にして調査されるといいでしょう。


【兄はお父さんに賃料の返還請求はできない可能性が高い】

次に、兄としてはお父さんが賃貸に出していることぐらいは知っていたと理解するべきでしょう。

にもかかわらず、賃料の半額を請求しなかったのはなぜかという疑問があります。

この点については、賃貸を始めるときにお父さんと兄との間で、お父さんが賃料を全部取得するということで合意(暗黙を含めて)があり、管理はお父さんがし、賃料収入はお父さんがもらう、ローンの支払いや固定資産税の支払いは全てお父さんがするとの合意があったと考えるのが普通の理解でしょう。

もし、その前提が正しいとすると、お父さんが全額を取得することを、兄は了解していたのですから、兄が被相続人であるお父さんに不当利得等の請求はできないことになります。


【仮に無断で賃貸していた場合には】

しかし、万一、お父さんが兄に知らせず、勝手にマンションの賃貸をしていたのだとすると、兄からお父さんに対して不法行為による損害賠償請求及び不当利得返還請求として賃料額のうちの兄持ち分額に相当する金額を請求することが可能になります。

この場合、お父さんが兄の分のローンの支払いをし、かつ固定資産税も立替支払いをしていたのであれば、その分は請求額から控除されますし、場合によれば管理料相当分も控除することも可能です。

なお、不法行為で請求する場合には、勝手に貸していることを知ってから3年で、不当利得返還請求をする場合なら10年で請求権が消滅時効にかかりますので、それ以前の分は時効を主張されると、兄は請求できないということになります。


【兄請求の債務を遺産に加えるどうなる?】
  
今回の質問のケースでは兄の請求が成立しない可能性があります。

仮に請求できるとしても、お父さんが賃料から兄のローンの支払いをし、かつ、兄の分の固定資産税も支払っていたというのであれば、法的に認められる返還額はそれほど多額にはならず、請求すると遺産が無くなるようなことはないと思われます。


【特別寄与について】

兄に賠償あるいは返還請求ができない場合でも、賃料全額をお父さんに取得させたということが特別寄与として認められ、兄がその額を取得できる可能性はあり得ます。

ただ、この場合でも、兄の分のローンの支払いや固定資産税の立替支払い、管理料相当額等が考慮されますので、兄の寄与分としてはそれほど多くないように思います。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:23 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

娘婿への贈与について【Q&A №540】

2016/11/16



【質問の要旨】

母が私の夫名義の家に1000万円を出してくれた

記載内容 娘婿 住宅購入 同視

【ご質問内容】

母は生前に私の夫名義の家(私も住んでいます。)を買うときに1000万円出してくれました

その母が亡くなり、遺産分割協議をしているのですが、夫名義の家であっても私に対する特別受益になりますか

よろしくお願いします。

(なし)







【贈与は誰になされたのか】

今回は住宅購入資金として父から贈与された1000万円が特別受益にあたるかどうかが問題となっています。

特別受益はあくまで相続人に対する贈与が対象ですので、1000万円が娘さんに贈与されたのか、それとも夫(娘婿)に対して贈与されたかによって結論が変わってきます。

娘であるあなた自身に1000万円を贈与されたのであれば、問題なく特別受益とされるでしょう。

しかし、もし夫(娘婿)に対する贈与であった(たとえば、夫名義の口座に1000万円を振り込んだ)のであれば、娘婿は相続人ではない以上、原則として特別受益にはなりません


【娘への贈与と同視できるか否か】

ただ、このような相続人以外の人物(配偶者)への贈与であっても、裁判所は、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には相続人自身の特別受益と扱う余地があることを認めています

具体的には、贈与の額が多額であり、贈与の経過から見て、他の共同相続人からすると特別受益としなければ公平に反すると思われる場合には、相続人以外の人物(今回でいえば娘婿)への贈与を特別受益とすることを例外的に認めています。

今回のケースでどう判断されるかは詳しい贈与の経過を確認する必要がありますが、たとえば住宅資金として贈与した額と遺産総額の大小、贈与の話をまとめたのは娘さんか娘婿か、娘婿名義の口座に振り込んだ理由(業者への支払の都合か否か)、そのほか、娘さんや娘婿の居住期間などといった事情を考慮し、実質上は娘への贈与であったか否かが判断されるでしょう。


【参考裁判例】

これについては、当ブログQ&A №324及び【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)に同様のテーマで記事がありますので、ご参照下さい。

(弁護士 北野英彦)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:39 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★亡父との共有名義マンションの使用借権【Q&A №539】

2016/11/08


【質問の要旨】

亡父が出資して共有所有者となっているマンションに、姉が居住したり、賃貸に出したりした場合

記載内容 購入資金 持ち分 特別受益

【ご質問内容】

父親が亡くなり姉妹で財産を分けることになりました。(母はすでに亡くなっています)
姉は生前父にマンション購入資金として1200万円出してもらいました
残りのローンは姉が払いました。

しかし税金対策だったのでしょう、父が出した分を共有所有者として登記していました。
父は生前、姉に自分の持ち分を買い取ってほしいとの話もしていましたが、姉も買い取ることはできず、相続分として父の分が残りました。

姉は最初は自宅として使用し、後にマンションを賃貸に出して収入を得ています
姉から父に賃貸の代金を一部払った時期も1年ほどありましたが後に払った様子はありません。
今ではその所有分の価値も1/3程になっています。

共有の持ち分になると、特別受益が1200万円だとは言えないのでしょうか

言えないのなら、共有所有者の父がもらわなかった賃料の一部をみなし財産として算入できますか?

あるいは、使用借権を無償で得ていたことにはなりませんか
その場合の金額の算定は?

私は姉だけが住宅資金をもらっているのに、遺産が1/2づつというのはどうも納得できません。

不平等感をなくすいい方法があればご教授ください。

(tomo)





【今回の質問は《購入資金援助》と言う意味では、特別受益にならない】

通常の場合であれば、被相続人が法定相続人のマンション購入資金の一部を出した場合には、金銭の生前贈与として特別受益になります。
ただ、今回の案件では、お父さんが出した分はお父さんが自分の持ち分として共有登記されていますので、金銭の移動はありません
したがって《購入資金援助》としての贈与はなく、お姉さんの特別受益は存在しません
マンションのお父さんの持分は、お父さん自身の遺産となり、遺産分割の対象となります。


【お父さんの共有持ち分の使用は、居住用であれば特別受益にならない】

お姉さんがマンションを居住用にしていたとき、お父さんの持分を無償で使用している点では、お姉さんはお父さん持ち分につき、使用借権(無償で使用する権利)をもらったということになり、特別受益となる可能性があります
そのため、マンションの使用貸借について判断した裁判例を検索しましたが、発見できませんでした(参考までに言えば、土地の使用貸借は特別受益になるとの裁判例はあります)。
学者の意見では、建物使用貸借は遺産の前渡しという性格が薄く、又、財産権として強い権利ではないこと、更に被相続人の意思としては遺産分割の持戻し免除の意思が推定されるということから、特別受益にはならないとの見解が多いです。


【お父さんの建物持分をお姉さんが他人に賃貸している場合】

問題は、お姉さんが自ら居住するのではなく、他人に貸して賃料を得ている場合です。
これについても参考になるような裁判例も学者の意見もみつかりませんでした。
ただ、あなたの立場から言えば、使用貸借は他人に賃貸した段階で終了しており、その後にお父さんの持ち分相当の賃料分もお姉さんが得ていたのは特別受益になると主張するか、あるいはお父さんが賃貸に出すのを知らない場合には不当利得にしないと不公平だと主張されるといいでしょう。
このような主張をした場合に裁判にまでいけばどのような結論になるか、興味のあるところではありますが、お父さんの持ち分に相当する賃料分は特別受益として遺産に持ち戻される可能性もあるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:03 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

第三者の寄与と遺言【Q&A №532】

2016/09/29



【質問の要旨①】

相続人の配偶者が費用負担すると寄与分になるか


【ご質問内容①】

被相続人(父)の介護費用(老人ホーム入居関係費用、医療費など)の一部、不要となった父所有の家屋の固定資産税や解体費用、家財道具の撤去費用などを相続人である子(女)の配偶者(夫)が負担した場合、将来被相続人が逝去時、相続される過程の中で寄与分として認められますか?

(相続人は専業主婦により収入はなく、かかった費用は夫に委ねざるをえない状況による理由から。)

(九州女児)



【質問の要旨②】

特別受益の持ち戻しを遺言書に記載した場合、有効か

【ご質問内容②】

被相続人より住宅資金の援助として生前贈与を受けたという証明を取り付けるのが困難である場合、遺言書に「遺言者は相続人Aが家屋を購入するに際し、相続人Aに住宅資金として200万円を援助した。

相続人Aはこれを特別受益として持ち戻すこと」と記載した際、遺言書として認められますか?

記載内容 介護費用 援助

(博多っ子)




※同一人物と思われる方から2つに分けてご質問いただいていますが、回答は一つにまとめています。ご了解ください。

【寄与分の問題ではなく、相続債務の問題ではないのか?】

被相続人のお父さんの介護費用(老人ホーム入居関係費用、医療費など)の一部を負担したことについては、被相続人の支払うべき分の立替支払いをしたとして理解することが可能です。

その前提に立てば、寄与分という以前に、被相続人は立替支払いをした人に対して返還債務を負い、この分は相続債務として法定相続人に承継されます。

同様に《不要となった父所有の家屋の固定資産税や解体費用、家財道具の撤去費用など》についても被相続人が立替費用返還債務を負い、これが相続人債務になると理解することが可能ですし、その方が実態に見合うでしょう。


【寄与分としてみた場合の問題点】

もし、上記費用の返還を求めないという前提で出したということであれば、寄与分の問題となります。

寄与分は認められることが少ないですが、例えば、付添看護をしたというような場合には、付添等をした分、ヘルパーの料金の支払いを免れた分程度しか、寄与分は認められません。

ただ、今回の質問のケースは、上記各支払いにより、被相続人の遺産が減少を免れたことが明らかですので、寄与分として認められる可能性はあると思われます。

問題は、寄与分は法定相続人間で認められる制度だという点です。

今回の質問は、法定相続人ではなく、その配偶者(夫)が寄与したという点にあります。

夫婦であり、一体と見て、夫の寄与分も妻の寄与と同視するという考え方が多いようですが、これらの問題点があることを考えれ
ば、やはり前項で記載した立替金返還請求債務として処理するのが妥当だと思います。


【特別受益に関する記載の効力】

遺言の効力を考える場合、

① その記載をして、遺言書全体が無効になるのかどうか?

② 遺言書全体としては無効にならないとしても、その記載が有効なのか?

という2つの方向からの検討が必要になります。

まず、最初の①の観点から言えば、「遺言者は相続人Aが家屋を購入するに際し、相続人Aに住宅資金として200万円を援助した。相続人Aはこれを特別受益として持ち戻すこと」という内容は遺言書本体ではなく、遺言者の希望を書いた《付言事項》というものにすぎず、そのため、遺言書全体が無効になるということはありません

次に、上記②の付言事項として効力があるかという点ですが、仮に上記のような記載をしても、住宅資金を援助した事実があることの決定的な証拠にはならず、又、特別受益になるものでもありません。

前者はそのような事実があるかどうかの問題であり、後者はそのような事実があった場合にどのように法的評価するかの問題であり、いずれも遺言者が決定するべき事項ではなく、最終的に裁判所が判断するべき事項です。

もし、200万円を特別受益したから、その分、その受益者の取り分を減らしたいのであれば、その受益者の相続額を減額した配分の内容の遺言書を作成するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:58 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

20年前に妻に名義変更された土地は遺産か【Q&A №529】

2016/09/21

 【質問の要旨】

20年ほど前に父から母へ名義切り替えした不動産は、父の遺産か

記載内容 名義 贈与 土地

【ご質問内容】

父が他界し、遺産相続について質問です。

実家は土地も建物も父がなくなる随分前に(20年程前)母名義に切り替えしておりますが、父の遺産に含まれるのでしょうか?

名義は母なので、父の遺産には含まれないのでしょうか?

教えていただけますか。

宜しくお願い致します。

(ふーちゃん)






【他人名義の不動産は被相続人の遺産に含まれないのが原則】

元々はお父さんの所有であった不動産が、生前にお母さん名義に移転されていた場合、その不動産は原則として、お父さんの遺産に含まれません。

ただ、債権者対策として偽装登記したとかいう事情があり、かつ、その事実を証明することができるのであれば、遺産に含めることが可能です。

ただ、現在の名義人としては、そのような偽装登記ではなかったのだと主張する場合が多いでしょうから、話し合いがつかなければ、最終的にはお母さん(登記名義人)を相手に、「この土地はお父さんの遺産である」という訴訟を起こして決着をつけざるを得ないでしょう。

なお、20年ほど前の移転ということですが、その時点でお父さんが認知症にかかっており、意思能力(判断能力)がないような状態であったというのであれば、(それも証明が必要ですが)その不動産の移転は無効であって、お父さんの遺産に属するということになります。


【夫から妻への不動産の移転の場合】

お父さんがお母さんに不動産を移転したとしか、質問には記載されていません。

何を原因とする移転なのかは、移転の際の事情をお母さんにお聞きになるとともに、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取り寄せて、登記原因を見れば判明しますが、おそらく、贈与で移転されたものと思います。

ご存知だとは思いますが、婚姻後20年間を経過した後の夫婦間での居住用不動産等の贈与はその不動産価額が2000万円以下なら贈与税が全くかかりません。

そのため、お父さんとしてはその制度を利用し、贈与税を支払うことなく、お母さんに不動産を贈与したのだと思われ、それ以外の売買などというのが原因となる可能性は極めて低いでしょう。


【特別受益等の問題が生じるが・・】

仮に被相続人であるお父さんからお母さんへの贈与があった場合、その贈与は特別受益になり、お父さんの遺産分割の際に、遺産に持ち戻して計算することになります。

この特別受益については当ブログQ&A №164Q&A №334をご覧ください。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:11 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★子どもの国民年金掛金と特別受益【Q&A №527】

2016/09/07



【質問の要旨】

肩代わりした国民年金約240万円は、特別受益に該当するか

記載内容 年金 継続的 扶養


【ご質問内容】

20才から支払う義務がある国民年金「金額240万円程度」を肩代わりして支払いました(アルバイトで支払い能力がなかったため)。

そろそろ遺言書を作成すべき時期かと思案していますが。

この過去に支払った金額は特別受益に該当するのでしょうか。

宜しくお願い申し上げます。
(素浪人)







【事案によっては特別受益にあたる場合もある】

被相続人であるあなたが、相続人に対して「生計の資本としての贈与」をした場合、特別受益として、遺産分割の際に遺産に持ち戻されます(当ブログQ&A №164Q&A №334等参照)。

問題はどのような金銭等の提供が、《生計の資本》としての贈与になるかです。

例えば、相続人である長男の自宅買入資金として500万円を援助したというのであれば、特別受益になることは間違いありません。

しかし、今回のご相談は、毎月数万円程度の金銭を渡した、あるいはその程度の債務を立替支払いしたような場合です。

このような、毎月は少額でも多年にわたると金額も大きくなるような場合に、特別受益になるかどうかという問題になります。

お金を渡していれば贈与ではないかという反論が出そうですが、被相続人である親が子である相続人にお金を渡す場合、親の子に対する扶養義務の履行として渡しているとされる場合もあり、その場合には渡した金銭は特別受益にはなりません。


【判断基準はどういうものか】

次に、扶養義務の履行か否かを判断する基準は何かということが問題になります。

遺産の総額、一度に渡されたものかどうか、又、月々の支払い等であればその額はどうか、渡された期間やその交付する理由などが判断基準となるでしょう。

過去の家庭裁判所での審判例では、遺産総額や被相続人の収入状況から考えて、月に10万円に満たない送金は扶養的金銭援助にとどまるが、月10万円を超えるものは生計の資本としての贈与になり、特別受益になると判断したものがあります(東京家審平成21年1月30日・家月62巻9号62頁)。

(詳しくは【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?をご参照ください。)


【遺言書の作成上の注意】

これから遺言書を作成するが、被相続人のした国民年金の立替分を特別受益にならないようにしたいというのであれば、次のような方法を考えられるといいでしょう。

① 国民年金立替分については《持ち戻しの免除する》との意思を遺言書に明記する。
② なぜ、持ち戻しの免除をするのかという理由を遺言書の付言事項として記載し、併せて他の相続人が特別受益という問題を持ち出さないようにという内容の遺言者の希望を記載する。

これらの①及び②の方法の双方を採用し、その内容を遺言書に記載することで解決されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:30 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?(東京家審平成21年1月30日)

2016/09/07
毎月の送金が特別受益にあたるのか?

(東京家審平成21年1月30日)


【ケース】

平成4年から平成6年の間、被相続人から相続人の一人に対して一月に2万円から25万円の送金がなされていた事例で、相続人の一人への特別受益にあたるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は、以下のような内容の判断をしました。

遺産総額や被相続人の収入状況からすると、一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であると認められるが、これに満たないその余の送金は親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは認められないと思慮する。

一月に10万円未満の送金については、親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは直ちに認められないと思慮するが、その余の送金はいずれも一月に10万円以上の送金がなされており、返済されたと認められる証拠がないことからすると、これらの一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であり、いずれも特別受益と認められる。


【弁護士のコメント】

裁判所は、この事案については、月に10万円程度なら扶養義務の範囲での援助といえるが、それ以上の送金については、扶養義務の範囲を超えた「生計の基礎として役立つような財産上の給付」であると言えるので、特別受益になると判断したということです。

月に何万円程度が扶養義務の範囲といえるかどうかは、遺産総額や被相続人の収入状況によって変わりますので、月に10万円というのは固定額ではないことに注意が必要です。

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:15 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

20年前の土地売買と特別受益【Q&A №513】

2016/06/29



【質問の要旨】

祖父の土地を叔母たちが売買で手に入れたら、相続はないのか?

記載内容  売買 特別受益 

【ご質問内容】

私の母はわたしが5歳の時なくなりました。

それから30年後母かたの祖父が亡くなりわたしが代襲相続することになりましたが。

2人の叔母はすでに祖父の土地を売買で手にいれていて、土地の登記も済んでいました

日付を見ると20年前に土地は祖父から叔母たちのものになっています。

この場合わたしには土地の相続はもうないということでしょうか

よくわからないので、教えていただければありがたいです。

(たんぽぽ)







【不動産の移転が贈与でない限り、特別受益にならない】

お祖父さんの遺産が叔母さん2人の名義になっているようですが、それが贈与で移転されたものなら特別受益の問題になります。

しかし、売買で移転したのであれば、特別受益の問題は発生しません

ただ、当時の相場から見て、特別に安い金額で売買されたというのであれば、その相場価額との差額分が特別受益となる可能性はなくはありません。

しかし、特別安い金額であったという点は、あなたの方で証明する必要があります。

その証明ができないとすると、お祖父さんの土地は既に生前に叔母さんらに売却されており、その登記も完了している以上、この土地は遺産にはならないでしょう

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:39 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

使用借権の価額と特別受益【Q&A №511】

2016/06/24

※同じ方から2つに分けてご質問いただきましたが、回答は1つにまとめています。

【質問の要旨①】

使用貸借の価額と空き地について

【ご質問内容】

父親名義の土地に兄が家を建てています。両親とは同居していません。

両親への仕送りも無く、固定資産税も払っていません。

両親を訪問する事も年に数回です。

父がが亡くなりましたので、この場合使用貸借は、その土地の実勢価格のどの位が妥当でしょうか

また、兄の家の土地の横に空き地があり、実質兄が使用していたのですが、その土地も使用貸借に入れるのでしょうか(そこには特に建物は建ってはいません)


【質問の要旨②】

使用貸借とは?

【ご質問内容】

基本的な質問で申し訳ありませんが、使用貸借で計算された金額は、全体の遺産金額に含め、相続計算をするのか、使用貸借をしている相続人だけで分割するのでしょうか

遺産金額に含めて計算するのか、その他の相続人(特に配偶者)で計算するのでしょうか

遺産金額に含めた場合、使用貸借者に贈与が発生しているみたいに、思えるので

記載内容  使用貸借 無償 土地

(ブブブブ)







【土地の無償使用と特別受益について】

亡くなられたお父さん名義の土地の上にお兄さんが建物を建築し、賃料の支払いもしない場合には、お父さんとお兄さんとの間で使用貸借契約が成立したものと考えていいでしょう。

特別受益との関係で言えば、お兄さんはお父さんから使用借権を与えられたのであり、この権利の設定により受ける利益を「贈与」されたことになります


【空き地の使用について】

お兄さんはお父さんの空き地を使用していますが、これもその空き地を独占的に使用している(他の人が使えないような)状態であれば使用貸借が成立する可能性があります

お父さんがお兄さんの使用を知っていたのであれば、それは暗黙の同意があったとして、使用借権が成立したとされる場合が多いです。

この場合も、この空き地の使用借権の贈与が特別受益になります。


【使用借権の価額】

土地を、賃料を支払って利用する場合には借地権とされ、国税庁の発表している路線価図でもその価額が明らかにされています(通常は更地価額の40~60%の範囲内であり、60%とされるケースが最も多いです)

しかし、使用借権については裁判例などで更地価額の10~30%程度とされることが多いです(当ブログQ&A №321参照)。

これは使用借権が、借地権ほど強い権利ではない(土地が第三者に売却されれば、土地使用が認められないこともある)こと、又、存続期間等が契約内容や使用の実情等に応じて種々様々であり、裁判所としては、ケースバイケースで判断せざるを得ないからです。

ただ、これまでの相続案件での私の経験から言えば10%~15%程度で考える場合が多かったように思います(使用借権を更地価格の15%に相当すると判断した裁判例として、東京地判平成15年11月17日があります)。


【特別受益があるときの処理】

特別受益がある場合には、特別受益を遺産に持ち戻します。

今回の質問の場合であれば、借地権価額を遺産に加えます

その後、遺産全体を法定相続分に応じて分割することになりますが、特別受益を受けた人はその使用借権分を先にもらったことになり、その分だけ、遺産からの取り分が減少します

例えば、子が2人のケースで遺産総額が預貯金1000万円、特別受益が500万円とすれば、特別受益をもらった人は《特別受益:500万円+預貯金250万円》を、又、もう一人の子は《預貯金750万円)を取得することになります。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:27 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

在宅介護費用と特別寄与【Q&A №507】

2016/05/31



【質問の要旨】

看護を負担した相続人が他の相続人に費用請求できるか

記載内容  介護 扶養 不公平

【ご質問内容】

私が、仕事を休んで、平成22年7月から平成25年1月まで自宅で看護(導尿行為、バイタルチェック、塩分1日8グラムの食事作り)を行ってきました。

相手(姉2人)は近所に住んでいながら、一切協力せずに遊びまわり、扶養義務調停にも出廷せず、扶養義務調停が終わる前に父親は亡くなりました。

一番上の姉は生前贈与(住宅購入資金の一部として現金300万円)を昭和48年頃に貰い、高校と短大も我儘を言って私立に通っていました。

私と下の姉は公立高校で終わっております。

短大卒業後すぐに結婚しましたので嫁入り道具と、結婚資金等は、両親が出しています。

なお、私は平成22年2月に腰に金属を入れる手術を行っておりその後絶対安静時に看護が始まり現在は酷い後遺症が出ております。

財産は私たちが住んでいる土地建物しかありません。

土地は路線化で2800万円位(約82坪)建物の名義は13分の11は、私の名義になっております。父親名義の分の建物の評価は53万円程です。

(くま)






【介護費用は請求できないが、特別寄与の可能性がある】

親子間では互いに扶養義務があります。

そのため、子であるあなたが約2年半もの間、自宅でお父さんの介護をしたとしても、これは扶養義務を履行しただけであり、これをしなかった他の扶養義務者(今回は2人のお姉さん)に請求することはできません。

親子間に扶養義務が定められている以上、子として介護等をするのは当然のことであり、他の扶養義務者に介護のための労力等の費用を請求することはできないというのが、今の法律です。

しかし、あなたが介護をしたことにより、ヘルパー代や看護師料、老人ホーム入居費用等が減り、その分、遺産の減少が食い止められたというような事情があれば、その減額分を《特別寄与》として請求すれば、遺産から支払ってもらえる可能性があります。

(なお、介護の努力がどのように遺産分割に反映されるかという点は、当ブログQ&A №386Q&A №254などにも同様の話が出ておりますのでご参照下さい。)


【住宅購入資金の生前贈与は特別受益になる】

一番上のお姉さんが住宅購入資金の一部として金300万円をお父さんからもらったというのであれば、特別受益になりますので、遺産に持ち戻した上で遺産分割をすることになります。


【短大への進学に関する費用は原則として特別受益にならない】

一番上のお姉さんが短大に行かせてもらった点ですが、教育については子の能力の問題もあり、又、親の子に対する扶養の問題であり、遺産の前渡しという意味は持たないという判例もあることから、原則として特別受益にならない可能性が高いです。

ただ、私の担当した案件ですが、私立の医大に行った場合には、その授業料額が莫大であることや医師という社会的に重要な資格を取得することから、特別受益として対応したことがあります(なお、当ブログQ&A №375を参照ください)。


【参考判例】
大阪高裁決定平成19年12月6日
「被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」



【結婚資金について裁判例は分かれるが・・】

結婚資金については、裁判例がわかれていますが、私は挙式費用などは、特別受益には当たらないと考えています。

その理由は、挙式費用は、結婚式という一過性の支出であり、後に残るものではないことや、結婚式が結婚する当事者のみならず、その両親や親戚のためにするという側面を有すること、更に親としても相続分の前渡しとして挙式費用を出すのだという意識はなく、持ち戻し免除が推測されること、更に通常の場合、すべての子が多かれ少なかれ親の援助で結婚式をしていると思われることなどからです。

なお、嫁入り道具や持参金などは金額が高額であれば特別受益に該当するでしょう。

【参考判例】
① 名古屋地裁平成16年11月5日
「嫁入り道具や持参金等がこれ(弁護士注:特別受益)にあたることはいうまでもない。しかしながら、結婚式や結納の式典そのものに生じた費用については、婚姻する者のみならずその両親ないし親戚一同にとって重要な儀式であることに鑑みると、両親が子の結婚式や結納の式典に生じた費用を支出したとしても、それを両親から子に対する「婚姻のため」の贈与と評価すべきではなく、特別受益にあたらない。」

② 仙台地裁平成5年9月7日
「右程度の援助(弁護士注:結婚披露宴費用のうち祝儀代を引いた残額二〇万円の援助)は、本来通常必要なものであるが、他の妹弟が結婚に伴う援助を受けていないことを考えると、特別受益に該当するものといわざるを得ない。」

③ 盛岡家裁昭和42年4月12日
「相続人が婚姻に際し、被相続人より挙式費用等を負担してもらっているが、その金額も高額でないので、いずれも民法903条にいう贈与として相続分の算定につき斟酌すべきではな」く、特別受益に該当しない。」



【その他の問題点・・土地使用借権が特別受益の可能性あり】


あなたがお父さん名義の土地の上に建物の持ち分を有しておられるのであれば、その土地をあなたの建物のために無償使用している(使用借権)の贈与と主張される可能性もあり、あなたの方でも特別受益が問題になりかねませんので、その点はご留意ください。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:43 寄与・生前贈与 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★建築費用の負担等と特別受益【Q&A №506】

2016/05/31



【質問の要旨】

次女夫婦が母名義の土地に家を建て、建築費用も一部負担してもらった

記載内容  同居 建築 負担

【ご質問内容】

父はすでに他界し、母と3姉妹という家族構成です。

母名義の土地に次女夫婦が新築で家を建て、母が同居することになりました

・土地名義は母のままで固定資産税も母が払い続ける

・建物は、次女夫婦の名義で、建築費用の3分の1程度を母が負担することになりそ
うです。

建築費用を援助する事が生前贈与にあたるのでしょうか?

また、同居する場合は、特別受益には該当しないのでしょうか?
(ゆずのん)






【次女夫婦名義の建物の建築資金補助は特別受益となる】

次女夫婦名義の建物を建築する際に、被相続人(お母さん)から建築資金の援助を受けたのであれば、それは「生計の資本としての贈与」として特別受益になり、遺産に持ち戻す必要があります。

なお、特別受益は相続人にのみ生じる問題です。

そのため、次女ではない他人(配偶者も他人です)に贈与した場合には特別受益の問題にはなりません。

質問では、次女《夫婦》への贈与と質問に記載されています。

仮に建物が次女ではなく、その夫の単独名義になっており、その資金をお母さんが出していたらどうかという問題があります。

この場合には、実質上、夫婦は一体であるとして特別受益の主張をされるといいでしょう

【参考判例】福島家裁白河支審 昭和55年5月24日
被相続人から共同相続人の1人の配偶者に対して贈与がなされた場合において、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質、これにより受贈者の配偶者である相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には被相続人から相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められるときは、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であっても、これを相続人の特別受益とみて遺産分割をすべきである。
【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)もご参照ください。)

【土地の無償貸与も特別受益になる】

お母さんの土地の上に次女夫婦が建物を建てるということになると、おそらく賃料の支払いはしないでしょうから、次女夫婦は他人であるお母さんの土地を無償使用で使用できるという利益を得ることになります。

この無償使用する利益を法的には使用借権といいますが、この権利を得ることも「生計の資本としての贈与」として特別受益になり、その権利の価額が遺産に持ち戻されることになります(この点については当ブログQ&A №321もご参照ください)。


【同居の場合、特別寄与や生活費援助も問題となる余地がある】

法律的に言えば、次女夫婦がお母さんと同居し、その介護に尽くしていたとしても、次女の特別受益分として遺産に持ち戻される額が減額されることはありません。

ただ、次女がお母さんを介護することにより、ヘルパー代等が助かったというような事情がある場合には、その分が《特別寄与》となって、遺産から次女に支払いされることはありえます(当ブログQ&A №254をご参照ください)。

逆に、お母さんが同居する次女夫婦の《生活費を支給》していたようであれば、この支給分が特別受益になるかどうかが問題になります(当ブログQ&A №321Q&A №505等をご参照ください)。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:47 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

姉が母の年金を使い込んだ【Q&A №505】

2016/05/30



【質問の要旨】

姉が母の年金のほとんどを使っていた

記載内容  不正出金 年金 介護費用

【ご質問内容】

要介護1の母が姉のところに同居するにあたり、兄弟間の約束で、毎月8万円世話代として、母の年金から受け取って良いことになっていましたが、あとで収支表をみせてもらうと、年金月19万円のうち、ほとんどを使ってしまっていました

姉の所で世話になっていたのは、5年間です。

月8万円×5年間で約500万円弱は、姉の取り分のはずですが、1200万余りの母の年金総額がほとんどなくなっていまし
た。

差額700万円は姉の相続分から、差し引く事はできますか

世話代の他の経費として考えられるのは、デイサービス代、、入院費等で150万円程です。

母は足の骨を折って入院したあとは、寝たきりに近い状態になったので、介護老人ホームに入所しました。

(クロちゃん)







【お母さんのお金の使途はお母さんが決めることです】

姉妹間でお母さんの年金の使途を決めたということですが、《法律的に言えば》お母さんの財産をどうするかはお母さんが決めることであり、姉妹間で決めることではありません

お母さんは要介護1ということですが、身体的な理由なのか、あるいは認知症等の精神的な理由によるものであるかは質問には記載されていません。

仮に認知症によるものである場合でも、要介護1であれば通常は判断能力があると思われます。

ただ、もし、長谷川式認知スケール等で判断能力がないというのであれば、成年後見人を選任して、その人がお母さんの財産の使途を決めるということになります。


【お母さんとお姉さんとの間でどのような話があったのか】

お姉さんがお母さんの面倒を見ていた5年間で約1200万円の年金収入があったようですが、このうち、約150万円はデイサービスや入院費という必要経費ですので、差額の1050万円の使用をどう考えていくのかが問題になります

ただ、お母さんのための生活費(水道やガス、光熱費、固定資産税、食費等)も当然必要ですので、その分を差し引きする必要があり、これを差し引いた残額がお姉さんの使った分と考えられます。

わかりやすくするために、具体的な数字で計算していきましょう。

仮に生活費を月8万円として考えると5年間で480万円が必要となり、これを差し引くと残額は570万円となります

参考までに言えば、姉妹間で8万円と言う金額を合意したというのは、おそらくこの生活費として認める額を姉妹間で8万円だという合意と理解すべきだろうと思われます。


【570万円の扱い】

この残額570万円については次の3通りの対応が考えられます

お姉さんが勝手に使った場合

お母さんの了解なく、勝手に使ったのだとすると、その分は、お母さんに返還する必要があります(法律的に言えば、お母さんがお姉さんに不法行為あるいは不当利得に基づく返還請求権という債権を持つということになります)。

お母さんが死亡した場合には、あなたの法定相続分は2分の1ですので、上記債権のうちの2分の1にあたる285万円があなたに相続され、あなたがお姉さんにその額を返還請求するということになります。

お母さんが生前贈与した場合

もし、お母さんがお姉さんに生前贈与したというのであれば、その分は特別受益で遺産に持ち戻されます。

お母さんがお姉さんの生活費として金銭援助した場合

お姉さんが生活に困っておられるような状況があり、お母さんが生活費として援助していたような場合、親子間の援助として扱われ、特別受益にならない場合があります。

今回の場合、5年間に均等に援助したとすれば月額にすれば9万5000円の援助額になります。

もし、お姉さんが本当に生活に困っておられた、かつ遺産が多額の場合、生活資金の援助にすぎず、特別受益にならないとされる可能性もありますが、被相続人の遺産総額や収入状況により特別受益になるかどうかの結論が異なります。

この点につき、参考となる判例を末記に掲載しておりますのでご参照ください。

【参考判例】
東京家裁:平成21年1月30日審判
被相続人の遺産総額や収入状況により判断は異なりますが、上記判例は遺産総額が約2憶8000万円のケースで、被相続人から相続人の1人に対する継続的な送金のうち月10万円に満たない部分は親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計の資本としての贈与とは認められないが、月10万円を超える部分について生計の資本としての贈与とし、特別受益としています。


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:57 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★持ち戻し免除を受けたい【Q&A №503】

2016/05/19

【質問の要旨】

特別受益の持ち戻し免除について

記載内容  特別受益 免除 相続対策

【ご質問内容】

司法書士のもとで生前贈与の手続き、および遺言書作成をしましたが、現在、他の相続人から遺産分割申立書が来ました。

生前贈与手続き、遺言書作成を、司法書士に確認し、これなら生前贈与を受けたものは守られると聞いていたのですが、今になって、みなし相続財産として組み込まれることが分かりました

また、特別受益の免除を証明をしておけば、生前贈与を受けたものは持ち戻ししなくてよいという説明は一切ありませんでした

この場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか

宜しくお願い致します。

(あずき)






【税金の問題と相続の問題は別個である】

相続税対策として、被相続人の生前に金銭を贈与することがありますが、このような対策は節税にはなるものの、遺産分割については特別受益になります。

税務と相続(民法)の違いの例としては、死亡保険金は税務上は遺産として扱われるのに、民法上は遺産としては扱われない等、多々あります。


【相続分割(民法)では生前贈与は遺産の先渡しと考える】

生前に法定相続人の一部の人が財産の贈与を受けている場合には、相続に関する法律である民法では、《特別受益》として遺産に持ち戻します

これは相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えるということです。

具体的なケースで言うと、死亡時の遺産額が4000万円だが、あなたが生前に暦年贈与で合計1000万円を被相続人からもらっていたというケースであれば、その生前贈与金額を遺産に加算した遺産総額(5000万円)を前提に、これを法定相続分で分割することになります。

相続人が2人であるとすると、あなたの相続分は2500万円ですが、既に生前に特別受益があります。

そのため、あなたとしては2500万円から生前受益分を差し引いた1500万円しか相続できないということになります。


【持ち戻し免除について】

ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません

そして、黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断することになります

具体的には、

①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させた

②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)

③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)

などの場合には持ち戻し免除を主張するといいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:55 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

親子間での土地売買と特別受益【Q&A №487】

2016/01/22

 【質問の要旨】

親子間で土地を安く売買したら特別受益になるか

記載内容

土地 売買 安値

【質問の内容】

父の土地を生前に親子間売買で購入を考えております。

土地の評価額より安い金額(路線価)で購入予定です。

評価額より約2000万ぐらい安いです。

私は、姉と兄の3人兄弟です。相続時、姉は財産放棄する予定です。

私が、父から2000万円安く購入した場合、相続時に兄から特別受益を指摘されるでしょうか?

された場合、2000万の半分の1000万円を兄に補填する義務はありますか?指摘されない方法はありますか?

宜しくお願いいたします。

(こまゆ)







【時価より低い価額での親子間売買では「時価」との差額が特別受益になる】

質問では「評価額」と記載されていますが、おそらく「時価」のことと思われますので、その前提で回答します。

商品とは異なり、土地の「時価」がいくらかはわかりにくいです。

ただ、毎年3月に、国交省が発表する公示地価が「時価」に近いものとして、価額算定の参考にするといいでしょう。

路線価額は公示地価の約7~80%を目途として算定されますので、土地を路線価額で買うと、「時価」より安く買ったことになり、差額(本件質問では2000万円)が特別受益とされる可能性があります

特別受益であれば、差額が遺産に持ち戻され(他の遺産との関係もありますが)、持ち戻された額の半額をお兄さんに支払うことが必要となることもあります


【特別受益を主張されないための方策】

1.時価がどの程度かを確認する

まず、売買価額面での対処法です。

路線価額は国税庁が定めたものにすぎません。

そのため、売買の代金でいくらが相当なのかを、不動産鑑定士に鑑定してもらうことが考えられます。

ただ、鑑定はかなりの料金がかかりますので、知り合いに不動産業者がおれば、その方に査定をしてもらい、もし、近隣の取引事例などを参考にして路線価額より低くても妥当な額だというなら、査定書を作ってもらい、その査定書の額で売買するといいでしょう。

2.お父さんの持ち戻し免除

次に、持ち戻しをしなくてもよい方法としては、お父さんに《特別受益の持ち戻し免除》をしてもらうことが考えられます。

この免除があれば、遺産分割の際には、遺産への持ち戻しが免除されます

お父さんが協力してもらうことができるのなら、持ち戻し免除を書面化してもらって、将来に備えるといいでしょう。

3.お姉さんからの相続分譲渡で対処する

お姉さんは相続放棄をするとのことですが、もし、可能であれば、お姉さんから相続分の譲渡を受けるといいでしょう。

その場合、お兄さんの取り分は、持ち戻し分の2分の1ではなく、3分の1の666万円になります。

なお、相続分の譲渡は、相続開始前にすると、効力が認められない可能性が高いので、相続開始後に譲渡するとよいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:11 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★使用借権の承継と固定資産税の請求【Q&A №486】

2016/01/20

【質問の要旨】

相続した土地に相続人の一人が住んでいる場合、特別受益になるか

記載内容

無償 土地 居住

【質問の内容】

三年前に亡くなった父名義の土地に相続人の一人(A)が土地を担保にA名義の家を建て、現在も一人で住んでいます。

ローンはまだ10年程度残っていて、Aは毎月支払っています。

その家には存命中は父母も一緒に住んでいました。Aは賃料や生活費を一切支払っていず、父が固定資産税を払っていました。

両親の生活費の一部は私が銀行振り込みで仕送りをしていました。相続人は私とAの二人です。

父とAはとても折り合いが悪く、父は公正証書遺言で全ての財産を世話をした私に譲るとしています。

私は既に名義変更をして固定資産税も毎年支払っています

Aは三年前に遺留分減殺請求をしていて、Aの家屋の下の土地を相続すると言い張っています。

建蔽率は50%の地域で家屋下の土地は25%を超えます。

殆ど土地だけの相続ですが、この間、私はどうすることも出来ない状態でいます。

これは、Aの特別受益にならないでしょうか。

その土地を売却、或いは、利用する場合、Aの許可が必要なのでしょうか


(ココ)







【特別受益は生前の受益を意味する】

「特別受益」とは、被相続人(=お父さん)が生前に相続人(A)に与えた利益(金銭、不動産の所有権や使用権など)のことです。

そのため、遺言で土地を相続した後に、Aさんがあなたの土地上に住み続けていたとしても、それによる利益は「特別受益」にあたりません

特別受益という点で言えば、Aさんが、生前にお父さんから土地を無償(ただ)で使用させてもらうという使用権(使用借権)をもらった点が特別受益に該当します。

この使用借権の価額は、対象となった不動産の10~30%といわれることが多いですが、ケースにより異なりますが、私の経験から言えば10%程度で評価し、遺産に持ち戻すことが多かったです。


【Aに賃料の支払いを請求できない】

あなたがAさんに賃料を請求することができるかどうかも回答しておきます。

お父さんはAさんに土地を無償で使用させていましたが、死亡されたことから、あなたがお父さんの権利義務を引き継ぎました。

従って、あなたはお父さんの負っていたと同じ義務―土地をAさんに無償で使用させる義務―を承継することになりますので、賃料請求はできません


【固定資産税をAに負担させることはできないか】

 あなたは固定資産税の支払いを続けているのですが、この分をAさんに負担してもらうことはできないかという問題もあります。

お父さんが生きていたときは、固定資産税もお父さんが負担していました。

土地はAさんに使用借権が発生していますが、固定資産税の負担は土地の使用貸借とは別個の話であり、お父さんからAさんに対する固定資産税分の金額(あるいは利益)の贈与と考えてもいいでしょう。

あなたとしては、今後、このような贈与はしないとの意思をはっきりさせるために、固定資産税の相当分の返還をAさんに請求してもいいと思いますし、これが公平の観点からみて妥当なことだと思われます。


【土地の売却という解決方法について】

遺言であなたが土地の所有権を取得しており、既にその遺贈で単独所有の登記をしているのであれば、この土地を売却することも可能という考え方もあります。

もし、土地を売却した場合、Aさんは買主である第三者に使用借権を主張できませんので、Aさんは建物を撤去せざるをえないということになり、問題が一挙に解決するようにもみえます。

しかし、遺留分減殺請求がなされた以上、その土地の4分の1はAさんの所有になりますので、あなたが単独で売却をすれば、Aさんの共有持ち分を侵害したことになり損害賠償をすることになります

また、あなたはAさんに無償で土地を使用させる義務があるところ、土地を売却するとその義務を不履行したことになり、債務不履行により損害賠償義務が発生します

以上の点を考えれば、売却という選択肢は法的にも問題があり、また、新たにやっかいな問題を発生させるものであって、とるべき方策にはならないというべきでしょう。


【問題の解決は調停及び遺産分割審判で】

結局、あなたとしてはAさんと交渉することになりますが、もし話し合いで解決することができないというのであれば、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、調停委員の関与により円満な解決を目指すといいでしょう。

また、調停が成立しないのなら、遺産分割の審判(裁判)でAさんに代償金を支払ってもらって土地を取得してもらう方向を目指すといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:52 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★使用貸借と特別受益【Q&A №484】

2015/12/17


【質問の要旨】

賃料相当額を特別受益として引かれるのか

記載内容

賃料 使用借権 持ち戻し

【ご質問内容】

裁判認知により相続人となりましたが、被相続人所有の空き家に住んでいた年数分の賃料(1000万円)を、特別受益として遺留分から差引くと言われています。

建物は、数年前に贈与の約束(契約書)があり、私(婚外子)の母が建替え、被相続人の死亡以前に母名義となっています。

土地は、私に遺贈の遺言があります。

それでも特別受益として賃料相当額を引かれなければならないのでしょうか

(カピバラ)





 【使用貸借であれば賃料の支払いは不要】

被相続人であるお父さん所有の空家をあなたが使用していたということを法律的に考えてみます。

お父さんがあなたに賃料を請求するようなことはなかったのであれば、あなたはお父さんから無償(ただ)でその家を利用することを認められたということになり、法律的には使用貸借という関係になります。

あなたの立場から言えば、無償で使用する権利(使用借権)をお父さんから与えられたということになりますので、賃料を支払う必要はないでしょう。


【使用借権が特別受益になる可能性がある】

ただ、あなたが、被相続人からただで使用する権利(使用借権)をもらったということが特別受益とされる可能性があります。

使用借権の価額については当該対象物件の5~10%程度の価値があるものだとされることが多いです(但し、裁判例の解説などを読むと10~30%ではないかという見解もあります)。

しかし、建物価額は評価証明額を前提として算定されることが多いですが、建物の評価証明額が極めて少額な場合も多く、そのため、上記の割合では使用借権価額が極めて少額になります。

一方で、被相続人であるお父さんは土地や建物の固定資産税分を負担しています。

その物件をあなたが無償使用しているのであれば、最低限、土地や建物の固定資産税分の支払い分程度は免れたという利益を受けていたことになり、その相当額が特別受益とされる可能性があります


【建物贈与の影響】

建て替える前の建物は、生前に贈与されていますが、誰に贈与されたのかがご質問では明らかではありません。

もし、あなたに贈与されたのであれば、建物価額があなたの特別受益として持ち戻されますが、その場合の特別受益額は、《建物価額-使用借権額》でいう計算式で算定されます。

贈与があったとしても、あなたが使用借権を取得した事実は消えませんので、使用借権取得が特別受益となる点は否定できません

但し、上記考え方はあくまで一つの考え方にすぎず、異なる見解もありえます。


【持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を】

なお、今回のご質問から受ける印象ですが、お父さんとしては遺産への持ち戻しを免除するという意思をお持ちであった可能性もあります。

また、前項に記載したように使用借権を設定した後、その建物を取得した場合にどのような形で特別受益に反映させるかについても、弁護士により見解の相違がありえます。

いずれにせよ、今回のご質問が含む問題については、難しい点も多いので、近くの相続問題に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、相談されることをお勧めします


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
18:13 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

過去処分した不動産の売却代金調査と特別受益【Q&A №482】

2015/12/15

 【ご質問の要旨】

1 被相続人が事実婚時代に贈与等を行った場合、婚姻後に特別受益と扱われるか
2 被相続人が過去に売却した不動産の代金についての調査

記載内容 特別受益 不動産売却 取引履歴

【ご質問の内容】

被相続人は、結婚せずに20年以上同じ異性と暮らし、二人で家を購入し(名義がどうなっていたかは不明)共働きででローンの返済をしていましたが、異性が年金受給できる年齢に達する数年前に家を売り、ローン返済後の所得を持ち、異性の故郷のある土地へ二人で引越したのを機に結婚しました。

以来二人は働いていません。

私は被相続人の兄弟で、法定相続人です。

婚姻前の不動産所得は被相続人と配偶者の共用財産ですが、被相続人の財産分もあると思います。

こういった場合、調停か審判になった時、被相続人の不動産所得分として、配偶者の特別受益と見なされますか?

不動産所得額や財産分与があったのかなど、具体的には配偶者以外、誰もしらない状況です。

宜しくお願い致します。

(もっち)





 【財産分与は相続の対象にならない】

ご質問の中に、「財産分与」という言葉が出てきます。

財産分与というのは、法律的には、離婚の際に、財産をその夫婦間で分ける手続です。

この財産分与が遺産で問題になることは少ないといえます。

なぜなら、財産分与は、離婚した妻(場合によれば夫)に対する支払いであり、その内容は婚姻後に夫婦で形成した財産の分割なので、仮に妻が財産分与を受けてもそれは実質的に自分の財産を戻してもらったということであり、その分は遺産にはならないからです。
また、そもそも離婚しているのですから、復縁しない限り、その妻が相続人となることもありません。

ご質問の被相続人は、離婚しているわけではなさそうなので、財産分与の有無を考える必要はないといえます。


【生前の財産譲渡は特別受益になる可能性がある】

今回のご質問で財産分与という趣旨は、おそらく、生前に配偶者が財産をもらっているのではないか、その分は遺産計算上、どうなるのかということでしょう。

そのように生前に財産をもらっているのであれば、それは特別受益として、遺産の分割時に遺産に含めて計算されることになります。


【今するべきことは、なによりも調査です】

被相続人の財産が、その生前、残された配偶者に移されているかどうかについては調査が必要です。

なぜなら、調停にせよ、裁判にせよ、被相続人の財産が配偶者に移されていることを認めてもらうためには、裏付となる証拠を集めなければならないからです。

そのため、早急に遺産調査を始める必要があるでしょう。

   《不動産の調査》

まず、かなり前に不動産を売ったようですが、その辺から調査を開始しましょう。

① 売却後に故郷に居を移したということですので、自宅を売却した可能性が高いと思われます。そこで、住所の移動状況を探るために、被相続人の戸籍附票を取寄せましょう。ご質問内容からは、売却した不動産は、故郷に移る前の住所地であることがうかがわれます。

② さらに、その不動産のある市町村から名寄帳を取寄せ (【コラム】名寄帳の取り寄せ参照)、当該不動産の登記上の所在地や、そのほかの不動産所有の有無等を調査しましょう。

③ 不動産の所有状況が判明した場合は、法務局でその不動産の登記を調べることで、被相続人がいつ、誰に売却したのかが分かります。

   《金銭の動き・・取引履歴の調査》

前記不動産の調査によって不動産の売却時期が判明した場合には、続いて、金融機関の取引履歴を調べることが必要です。

どこの金融機関を調べるかは、支店名まで特定する必要があるので難しいところですが、不動産の登記に住宅ローンの抵当権などがついていた場合、その抵当権者である金融機関(あるいはその関連会社)から支店名を探り出し、その支店に対して取引履歴の照会を行うとよいでしょう。

そして、その取引履歴のうち、不動産売却当時の大きな入金があれば、それが売買代金の可能性が高いといえます。

その代金額が配偶者の共有持ち分と大きく異なる、あるいはその後引き出されているなどという事実があれば、その時点で財産が贈与等されていると理解して、その後の対応を考える必要があるでしょう。


【弁護士に相談してもいいでしょう】

ご質問からは、被相続人の遺産については、現在、ほとんど判明していないように見受けられます。

そこで、前記のような調査が必要不可欠となるわけですが、一方で、処分された不動産や金融機関の支店が判明するとは限りません

ただ、質問のケースに応じてどのような調査方法が最適なのか、調査の結果によりどのように対応するなかなどについて、相続に詳しいお近くの弁護士に相談することを考えられるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:51 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

後妻や連れ子の相続分はどうなるか【Q&A №481】

2015/12/03

 10年前に再婚しました。

再婚時に私には前妻との子どもが2人(私と同居)、妻(再婚相手)には子どもが1人いました。

私と妻(再婚相手)との間には2人の子どもができ、私と妻と子ども達5人(7人家族)で暮らしています。

再婚前の資産をA、再婚後の資産をBとすると、私が他界した場合には、遺産分割は法的にはどうなるかお教えください。

遺産分割では、そもそも再婚前後の資産の区別はないのでしょうか。

記載内容 再婚 前妻 公正証書遺言

(やっち)





 【遺産には再婚前と再婚後の区別はない】

特別受益で持ち戻される点を別とすれば、遺産とはその死亡した人(被相続人)が死亡した時点で有していた財産であり、それが再婚前に作られたもの(A)か、それとも再婚の後に作られたもの(B)かで区別されることはありません。

配偶者との関係では、再婚前に作った財産(A)で前妻がその形成に関与していたとしても、遺産分割の場面では前妻が登場する場面はなく、後妻(死亡時の配偶者)だけが相続人になります


    【連れ子の養子縁組は重要な意味がある】

ただ、今回はあなた自身も再婚相手もそれぞれ連れ子さんがいるということです。

あなたの連れ子はあなたの実子ですので、当然に法定相続人になりますが、後妻の連れ子は養子縁組をしているかどうかで結論が異なります。

後妻の連れ子とあなたが養子縁組をしていないのなら、長年同居して生活を共にしていたとしても、後妻の連れ子はあなたの相続人とはなりません

養子縁組をしているなら、養子である後妻の連れ子は、あなたの実子と同じ割合で法定相続することになります。

なお、養子縁組ができない事情があるけれども、それでも後妻の連れ子に遺産を与えたいというのなら、遺言書で遺贈するといいでしょう(このような場合には、紛失する可能性がある自筆遺言書ではなく、公正証書遺言にするのが望ましいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:59 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父が支払っていた共有建物の光熱費【Q&A №478】

2015/11/25

【共有建物の住居部分の家賃光熱費について】

賃貸店舗のある物件で、二分の一持ち分三〇年前、建築したときから、保存登記もされています。
父親と共有で、共同経営していました。

私の住まいとして、父親がその物件で住めばいい、家賃光熱費いらないからと三〇年家族ですんでいます。

父親が亡くなり、父親の持ち分が相続で姉になり、過去一五年分家賃光熱費請求してきました

土地全部父親の名義でしたが相続で姉の名義です。ちなみに地代も請求してきました

私は、建物全体経費電気水道局他支払いしている。相続後姉は、父親の名義のテナントから、家賃光熱費受け取っている。

わたしの持ち分所有権保存登記されています。相続の時生前贈与扱いです。
姉の請求納得いかない

経費二分の一も支払いしてくれない。

よろしくお願いします。

記載内容 光熱費 共有 賃料

(りく)







【考えるポイント】

相続人は、被相続人(本件ではお父さん)の持っている権利や義務を受け継ぎます。

そのため、地代、家賃や光熱費の支払いの要否については、お父さんとあなたとの権利や義務がどうなっていたかを確認する必要があります。

以下においてはそのような観点から検討していきます。

【地代について】

まず、お姉さんから請求のあった地代について検討します。

土地はお父さんの単独所有、建物はお父さんとあなたとで各2分の1の共有ですので、あなたはお父さんの土地の2分の1を使用していることになります。

土地利用につき、あなたがお父さんに賃料を支払っていたというのであれば、あなたとお父さんのとの間に賃貸借契約が成立しており、お父さんから土地を相続(ということは賃貸人の地位も相続)したお姉さんに対し、賃料を支払う義務があります。

ただ、あなたが賃料を支払わず、お父さんも請求しないことについて(暗黙でも)合意があったということであれば、お父さんとあなたとの間には、土地を無償で使用させる使用貸借契約が成立しており、相続でお父さんの土地を取得したお姉さんは、お父さんと同様にあなたに土地を無償で使用させる義務があり、賃料請求はできません

ただ、あなたは使用借権という無償で土地を使う権利をお父さんからもらったのですから、その使用借権が特別受益とされる可能性があります。

しかし、質問では少なくとも不動産については遺産分割協議が終了しているようですし、他の遺産についても遺産分割協議が終了しているようであれば、特別受益の問題は既に解決済みとして扱うといいでしょう。

【家賃について】

建物は、賃貸店舗に出されていた分と、あなたの居住用にされていた分があるようですので、分けて記載します。

賃貸店舗に出されていた分については、誰が賃料を取得していたのかによって異なりますが、あなたが賃貸人として賃料全部を取得していた場合、その賃料の中には本来はお父さんが取るべき分もあったはずです。

お父さんが、あなたから自分の建物持ち分に相当する賃料相当額を請求しなかったのであれば、その分も使用貸借同様の関係になり、その使用貸借権がお父さんからあなたへの生前贈与として特別受益になります。

次に、あなたが建物の一部を住居として使用していたことについてですが、お父さんとしては家賃はいらないということですので、その無償使用分も使用借権になり、その権利の価額が特別受益になります(なお、遺産分割協議が終了していれば特別受益問題は解決済みであることは上記「地代について」の末尾に記載したとおりです)。

いずれにせよ、あなたが建物を無償で使用するということをお父さんが認めていたのであれば、建物の持ち分をお父さんから引き継いだお姉さんとしても、お父さんと同じようにあなたに無償で貸与すべき義務があり、家賃を請求することはできないという結論になります。

【光熱費、経費について】

お父さんの死亡までは、建物全体経費電気水道局他の支払いをあなたが負担し、光熱費はお父さんが負担いたということですので、そのような内容の分担の合意が成立していたと考えてよく、お父さんの時代の精算は不要と考えていいでしょう

ただ、相続開始後は、お姉さんが底地全部や建物の持ち分を相続したということですので、費用関係については、お姉さんとの間で協議をされ、新たな合意をされるといいでしょう。

【弁護士と相談されることも考える】

以上、原則的な考え方を記載しました。

ただ、お姉さんの態度から見ると、調停や訴訟に発展する可能性もありそうです。

また、事案の内容によっては、より詳しく聞くと回答が変わってくる場合もあります。

相続に詳しい弁護士と法律相談をされることも考えられるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:28 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父と私が購入した兄名義のマンションは遺産か【Q&A No.467】

2015/09/15



① 父が主な出資者、兄名義のマンションがあります。

  父がなくなり、次いで母もなくなりました。

  マンションの残債の一部に私の預金600万円が当てられています。

  この600万円は寄与分ですか?兄に返還請求できますか?


② 母が私名義で貯金していました。

  この貯金は生前贈与ですか?遺産ですか?



記載内容

  特別受益 家賃 生前贈与


【ご質問内容①】
 亡父に預けていた預金(約600万:裏付け資料なし)を兄名義だが父が出資のマンションのローンの残債に充当する。
 私が無償で居住OK(兄は黙認)。
 亡き父が”いずれお前のものに!”(亡父)
 母も同じ発言。
 母が亡くなった今も、名義変更されておりません。
 この現状の中、亡母の相続協議では¥600万は”寄与”それとも、兄に”返還請求”?
 また、無償の家賃は”特別受益”それとも兄へ返還すべきものでしょうか?

【ご質問内容②】
 亡くなった母親から”お前名義で貯金しているからね。”と言われていました。
 この度の相続にあたって、資産管理を任されていた兄に、存在の確認と引き渡しを申し出たところ、”預かっているから引き渡すよ。”の返事がありました。
 この様な場合、この貯金は贈与=特別受益として扱うのか、手渡しが終わってないから親の遺産だとして扱うのかが判りません。
 どのように判定すべきかをご教授願います。



(泉南のくま)







①について

【マンションは誰のものか?】

 まず、マンションは誰のものかという点を確認しておく必要があります。

 お金を出したのがお父さんであっても、名義がお兄さんだということであれば、原則、お兄さんの所有とみていいでしょう。

 この場合、お父さんが出資した金額がお兄さんの生前贈与となり、特別受益として遺産に持ち戻されることになります。





【あなたがお父さんに預けていた600万円の扱い】

 あなたがお父さんに600万円を預けていたようですが、その証明はできないということであれば、あなたがその600万円についてお兄さんに返還を求めることはむずかしいでしょう。

 また、マンションがお父さんのものではないという前提であれば、あなたの寄与分にはなる余地はありません

 ただ、その600万円についてもお父さんからお兄さんにわたった(お父さんが出資した金額だ)という点が証明できるのであれば、その分もお父さんからお兄さんへの生前贈与(=特別受益)として考え、その600万円も遺産に持ち戻すことになります。





【マンションの所有権をもらうことはできないか?】

 お父さんがマンションを《いずれお前のものに!》と言われたようですが、マンションがお父さんの遺産であれば、お父さんから生前贈与でもらったと主張できる可能性がなくはありません。

 しかし、最初に述べたようにマンションはお兄さんのものという前提に立てば、お父さんが何を言ったかにかかわらず、あなたがそのマンションの所有権を取得することはできないということになります。





【無償利用は特別受益になるか】

 あなたが利用しているのはお兄さんのマンションであり、お父さんの遺産ではありません。

 そのため、その無償使用はお兄さんとの関係で問題になるとしても、お父さんの遺産で問題になることはなく、家賃相当分が特別受益になることはありません。





【弁護士に相談が必要なケース】

 今回はお兄さん名義であることから、マンションはお兄さん所有として考えていきました。

 しかし、お父さんがマンションを《いずれお前のものに!》と言ったということは、お父さんとしては自分の所有物であることを前提にしていたと考えることも可能です。

 前提となる事実関係が異なれば結論も異なります。

 本件については、具体的な事実を説明したうえで、相続に詳しい弁護士に相談され、マンションがお父さんの所有となる余地はないかどうか検討してもらうこと、また、その場合にどのような寄与分特別寄与や特別受益がどのようになるのか、回答を得られることをお勧めします。





②について

【お母さんがあなた名義でしていた預金について】

 お母さんがあなた名義でしていた預金については、あなたがその通帳や証書、取引印をもらっていない限り、原則、お母さんの遺産になります。

 ただ、お兄さんがお前に渡すよということを言っており、全相続人がそれに異議がないのなら、その預金分はお母さんの遺産ではなく、あなたがお母さんから生前贈与(=特別受益)されたものとして扱うことになるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:38 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★書類を偽造した姉は相続できるのか?【Q&A №461】

2015/08/25



【ご質問のまとめ】

子5人のうち長男が亡くなり、続いて、父、母の順で亡くなりました。

長女に有利な内容で遺産分割がされました。

残りの兄弟は、よくわからないままサインしました。

数年後、長男の財産について、長女が偽造で名義を書き換えていたことがわかりました。

長男の財産を分けるにあたって、長女を外すことはできませんか?

残りの兄弟たちが長女に主張できることはないですか?



記載内容

 偽造 欠格 遺産分割協議


【ご質問内容】

両親と兄と四人姉妹です。

兄は独身で両親より早くに亡くなりました。子供はいませんでした。

亡くなる1年前に兄の不動産は姉名義に変えられており、両親が相続する財産はありませんでした。

その2年後に父が亡くなり、さらに4か月後に母が亡くなりました。

両親を続けて亡くして平常心では無い中、長女が知り合いの税理士と一緒になって遺産分割協議を主導しました。

父は公正証書で母と兄そして長女に不動産を遺贈していました。

母は遺言書を書いてはいません。

父の遺言書の執行と母の遺産分割を同時に行いました。

法律のことをよく理解していなかった妹3人は、遺産分割協議書にサインしてしまい、その協議書の控えを貰えることも知らず、とても不公平な分割を了承していることに後で気づきました。

どうすることもできずに7年が過ぎたころ、長女名義に変えられた兄の不動産は、長女が書類を偽造して勝手に名義変更していた事が分かり、裁判で兄の名義に戻しました。

しかし、その兄名義の不動産を姉妹で相続するにあたり長女は法定での分割を主張して譲りません。

長女に遺産を渡さない方法はないでしょうか。

私達が長女に対して法的に主張出来ることはありますか。

父から遺贈された不動産は特別受益として、今回の遺産に含めることは可能でしょうか。

7年前にもどって遺産分割協議を最初からやり直したい気持ちです。

宜しくおねがいします。

(イーサン)





【お兄さんの遺産分割について】

 お兄さんには配偶者(妻)も子もないのですから、お兄さんの遺産は直系尊属であるお父さんとお母さんが相続することになり、その法定相続分は2分の1ずつです。

※ 本来の相続の流れ

          お兄さん
             
お父さん(1/2) お母さん(1/2)
                  
 子  お母さん       
         
         


【お兄さんの遺産でお父さんが相続した分について】

 お父さんはお兄さんとお母さん、妹さんに不動産を遺贈しているのですから、この遺贈分は特別受益として遺産に持ち戻して、遺産分割をするべきものです。

 ただ、既にお父さんの遺産について分割協議が行われているのであれば、その対象となったお父さんの遺産については特別受益分も含んで解決したと考えるのが通常でしょう。

 遺産分割協議後に(お兄さんの分をお父さんが相続した)新たな遺産が判明した場合には、残念ですが、長女の主張するように法定相続分は渡さざるをえないことになります。



【欠格事由にも該当しない】

 相続人から除外する制度としては欠格制度があります(民法891条:末記条文を参照ください)。

 この制度は被相続人を殺したり、遺言書を偽造したような場合には相続させないという制度です。

 しかし、今回の質問では遺言書ではなく、登記関係書類の偽造ですので、この欠格事由にもなりません。



【遺産分割協議に取消、無効事由はないかを考える】

 結局、既に遺産分割協議をしているというのが一番のネックです。

 事情がわからなかったのならその時点で弁護士等に相談されるべきでした。

 現在、取りうる手段としては、遺産分割協議を何らかの理由で無効にすることです。

 遺産分割協議について、騙されたようなことや思い違い(錯誤)をしているような場合には詐欺で協議を取り消しし、あるいは錯誤で無効とすることもできなくはありません。

 遅きに失した感がなくはありませんが、相続に詳しい弁護士に分割協議時点の具体的な話をしたうえで、協議を無効や取り消しになるような方策がないかどうかを相談されるといいでしょう。

 また、仮にお兄さんの不動産を長女名義にしていた際、長女がその不動産を他人に賃貸しておれば、その賃料を法定相続分に応じて返還請求することも可能でしょう。

(弁護士 大澤龍司)



【参考条文】
民法
(相続人の欠格事由)
第891条
 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
18:05 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★居住の利益と特別受益【Q&A №457】

2015/07/22



【質問のまとめ】

① 被相続人と相続人の一人が建築費用を折半して建てた家があります。

  被相続人の生前、その家には、相続人が一人で住んでいました。

  相続人に特別受益がありますか?


② 被相続人の家に相続人の一人が同居して、

  相続人の生活費の多くを被相続人が負担していました。

  相続人に特別受益がありますか?




記載内容

  居住利益 特別受益 建築費用


【ご質問内容】

遺産に不動産が含まれています。

土地は被相続人名義、家屋は建築費を被相続人と相続人Aが半分づつ負担し共同名義で相続人Aが居住しています。

被相続人は相続人Bと同居しており、Bは生活費として月に3万程度負担していました。

上記の場合、相続人A・Bともに特別受益になりますか?

また共同名義の家屋の現在の価値の半分が遺産の対象として含まれるのでしょうか?

特別受益と遺産との場合では相続分に価値的な違いが出てくるのでしょうか?




(迷える羊)







【Aの特別受益は居住利益】

 わかりやすくするために、被相続人がお父さん、AとBはその息子という前提で話をしていきます。

 お父さんとAとがそれぞれ建築費用を出して建築し、共有である家を、Aがお父さんから(半分)借りて住んでいたというケースです。

 Aの特別受益は、その家屋が共有である(つまり、家屋の半分はお父さんのものである)にもかかわらず、家屋の全部を使用している利益(正確に言うと、お父さんの持ち分を利用している点についての利益)と思われます。

 具体的には、その家の家賃相当額の半額(正確には土地利用料も考えられるが)を免除されたものとして、これを特別受益だと主張することになるでしょう。



【同居者の生活費の部分は特別受益が減殺される】

 Bについては、特に記載されてはいませんが、お父さんの家に無償で同居していたとすれば、家賃相当額が特別受益であるとの考えもあり得そうです。

 しかし、親と同居の場合には、扶養義務のある親子関係の同居であること、Aのような独自の居住状況ではないことや、親の面倒や介護をしていた等の理由からか、家賃相当額が特別受益になると主張されることは少ないようです。

 むしろ、このBのようなケースでは、親の介護をした等とかを根拠として、特別寄与等の主張が出てくる可能性さえあります。

 次に、Bは生活費を3万円出しているとのことですが、現実の生活費よりかなり低額であっても、被相続人と相続人が親子の関係であればお互いに扶養義務を負っていますので、特別受益とならない場合も多いです(この点は当ブログ【Q&A №254】母の生活費負担と特別受益・寄与分もご参照ください)。

 参考までに言えば、過去の裁判例では月十数万円程度の生活費提供でも特別受益にならないとしたものがあります。



【建物評価額の半額は遺産に組み込み】

 最後に、お父さんの有する共有持ち分は被相続人の遺産になります。

 おそらく本件のような場合には、Aが居住している家(正確にいうと被相続人の土地とその土地上の建物の共有持ち分)を相続で取得し、Bは被相続人と同居している家を相続で取得するということになりますが、それぞれの価額に差があれば、他の預貯金の相続で調整するか、代償金の支払いで調整することになるでしょう。

 評価基準時ですが、遺産の場合には遺産分割時点となります。

 特別受益の場合の評価時点は不動産等については、特別受益のあったときではなく、相続開始時とするというのが裁判例です。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
09:46 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★親と同居していた相続人の金銭管理【Q&A №454】

2015/07/13



【質問のまとめ】

親(被相続人)と同居していた相続人(子)の財産管理がずさんだと思います。

何に使ったかわからないまま、親の「遺産は●●円です」と言われても納得がいきません。

どうしたらいいですか?



記載内容

 同居 無断 不正出金


【ご質問内容】

 相続人の1人は親と同居し金銭管理をしていました。

 管理していた年月日についても話がころころ変わります。

 「親のお金も私のお金」と言わんばかりのずさんな管理に困っています。

 「何に使ったか分からない」と言いながら「遺産は○○○円です。」では、納得できませんし遺産分割に応じられません。

 また、被相続人が死亡し、数月間の取引履歴を取り寄せた際、存命時に金融機関からの普通定期預金の引き出しが行われており、その筆跡は金銭管理の相続人、死亡後の引き出しもその相続人です。

 はっきりさせたいと思いますよろしくお願いいたします。


(さくら)







【家計収支の区分ができていない】
 同居していた相続人(特に子)の方が親の金銭管理をしている場合、家計収支を区分せず、親のお金も自分のお金もごちゃまぜにして生活費を出していたというのは、よくあるケースです。

 この場合、高額の出金かどうかで対応が異なります。

 以下、区分して回答していきます。



【高額出金の場合】

 預貯金口座からの高額の出金(その人の遺産全体の価額により異なりますが、通常、20~50万円を超すと高額となると考えていいでしょう)の場合には、親が同意をしているのかどうか、また、その使途が何かが問題になります。

 親が同意をしている場合、その使途が子のためであれば、贈与とみなすことができ、その出金額は特別受益になり、遺産に持ち戻されます

 親の同意がない場合には、子が勝手に出金したとして、親が子に対してその出金額を不当利得(あるいは不法行為)として返還請求ができることになります(口座の名義人である親の氏名を同居人である子が署名して出金しているような場合には、親の同意がない可能性が高いと考えていいでしょう)。

 このようなお父さんの持つこの返還請求権は遺産になります。

 そのため、相続人は法定相続分に応じた返還請求権を相続します。

 例えば、100万円が不正出金され、あなたの法定相続分が4分の1なら、あなたとしては出金された人に25万円を返還請求することできます。



【少額出金の場合】

 毎月、数万円程度の出金があり、それを同居者が使っていたとした場合、それは生活費の補助とされる場合も多いです。

 裁判例では10数万円でも、親から子供に対する生活費の補助だとして、特別受益が認められなかったケースがあります。



【死亡後の引き出しは遺産の出金】

 死亡した時点で、遺産は相続人に法定相続分で分割されることになります。

 金融機関が被相続人の死亡を知った場合には、その時点で口座を凍結され、出金ができなくなります。

 ただ、死亡を隠して、相続人の一人が多額の出金をした場合、他の法定相続人はその法定相続分に応じた金額の返還を請求することができます。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:53 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産の土地を妹の義父が借りていた【Q&A №450】

2015/06/03



父が私の妹の義父に土地を貸与していました。

そのような土地の賃貸借が生前贈与に当たりませんか



記載内容

  義父 贈与 同一 


【質問詳細】
 
 昨年、父が亡くなりました。

 父は生前に公正証書遺言を残していました。

 その遺言には、妹に全ての財産を相続させると記載されています。

 相続人は、私と妹の二人です。

 私は遺留分減殺請求を行う予定です。


 ところが父の生前、父と妹の義父(妹の夫の父親)との間で相続対象の土地の借地権契約をしたそうです。

 妹の義父はその土地にアパートを建てて他人に賃貸をしていました。妹の義父はその後1年足らずで死去しその後、妹の夫がアパート及び借地権を相続しております。



 妹からは、私が遺留分減殺請求をしても、相続対象の土地の借地権割合が60%なので、私が請求できるのは、底地割合の40%の遺留分(4分の1)、つまり1/10しかないのだから諦めろと言われてしまいました。

 借地契約書や地代をどの程度収めていたか等は、これから相手側に問いただす予定でおり、借地権の有効性を確認する予定です。


 上の経緯は、相続発生後に私が遺留分減殺請求を行う事を前提に、私の遺留分をなるべく小さくするために、妹らが対策を考えて借地契約という形をとったのではないかと考えています。



 このような場合、借地契約を締結したのは妹ではなく、その義父ではありますが、借地契約そのものが妹への生前贈与に当たらないでしょうか?


(asw32mk)







【借地権であるかどうかの確認が必要】

 質問でも記載されていますが、お父さんとお義父さんとの間で土地使用がどのような契約をしているのかを確認する必要があります。


 契約書が作成されているかどうか、作成されているのならその内容、更に署名がお父さんの筆跡であるのかどうかも確認されるといいでしょう。


 なお、賃料が支払われているのか保証金等は差し入れられているのかも調査の対象とする必要があります。





【遺産内容の確認も必要不可欠】

 遺産は不動産だけということのようですが、やはり預貯金等の銀行関係の調査が必要でしょう(調査方法についてはブログQ&A №417をご参照ください)。


 預貯金の取引履歴を確認すれば、預貯金の不正引き出し等がわかり、遺産額が増えますが、それだけではありません。


 契約時に保証金等の支払いがあったのか毎月、賃料が入ってきているかどうかが確認できます。





【保証金や賃料の支払いが発見できない場合でも役に立つ】

 取引履歴に賃料が記載されていないとすると、土地は借地権でなく、無償使用(使用貸借)である可能性があります。


 その場合、借地権額は更地価額の60%程度、使用貸借額なら10%前後ですので、遺産の対象となる土地の価額がアップします。


 なお、念のために言えば、あなたが知らない隠された預貯金口座が存在し、そこに賃料が入金されている可能性もあります。


 この場合にはそこの多額の預貯金が存在する可能性があります。


 また、保証金等の契約時の支払い分がないかどうかも確認する必要がありますので、取引履歴の取り寄せは必要不可欠です。





【法定相続人以外の人に対する贈与】

 ほとんど保証金を取らずに、しかも定額で借地権を設定したとしても、その相手がお義父さんのような法定相続人以外の方であれば特別受益の問題は発生しません


 遺留分減殺の場合、第三者に対しても請求することができます

 ただ、借地契約の内容があまりに不当で、地主であるお父さんにとって不利な内容であり、《まるでただ同然のような条件で貸している》というのなら、贈与とみなすことも不可能ではないでしょう。


 ただ、遺留分減殺請求自体がなかなか難しい手続きですし、ましてや本件は第三者との間で賃貸借契約を装ってというような難しい案件ですので、相続に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、そのアドバイスを受けるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:22 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母が支出したリフォーム費用と相続【Q&A №437】

2015/03/19
  


 およそ3000万円で建築した家のリフォームを検討しています。

 持分は、家族4人全員の共有名義です。

 持分は、父4、母1、長男2、長女(私)3です。

 ただ、父は、平成19年に亡くなりましたが、相続登記はまだしておりません。

 おそらく、長女が相続する予定です。(または、長男長女で相続)

 リフォームは、増築は行わず、お風呂、トイレ、キッチンのリフォームを約500万円で行う予定です。

 このリフォームの費用を、母が全額負担した場合、将来、母からの相続の時に相続税に組み込まれますか?

 又は、リフォーム時、贈与税が掛かりますか?

 母が、負担した金額分、母の持分を増やす必要があるのでしょうか?

 私は、共有名義者の1人が負担するのだから問題無いと思っていたのですが、これは間違いでしょうか?

 父からの相続登記はリフォームより前にした方がいいのでしょうか?もちろん、本来なら当然、すでに相続登記していないといけないものなのですが・・

 教えてください。

 よろしくお願いします。


記載内容

  リフォーム 贈与 請求権 特別受益


(いち)





【リフォーム代金の負担と相続との関係】

 共有している自宅をリフォームする場合、その費用は共有者がその共有持ち分に応じて負担するべきものです。

 そのため、その代金をお母さんが一人で負担した場合、他の共有者との関係では次の①か②にいずれかに該当します。

①他の共有者は、お母さんに対して持ち分に応じた負担金を支払う義務を有する。

  この権利は、母さんから見て請求権となりますので、お母さんの債権として、その遺産の一部を構成します。

②お母さんは、他の共有者にリフォーム代金の返還を求めないというのであれば、各共有者はその持ち分に応じた額のリフォーム資金の《贈与》を受けたということになります。

 この場合には、その贈与分が法定相続人にとっては《特別受益》になります。(特別受益については【コラム】生前贈与を受けていたらご参照)。



【贈与か否かの判断基準】

 前項の①か②かは次の基準で判断していいでしょう。

 お母さんがリフォーム代金を全額だすが、そのとき、他の共有者に返還を求めないということであり、他の共有者がそれでよいというのであれば、それは贈与です。



【贈与税がかかるかどうか】

 お父さんが死亡されているということですので、相続が発生しています。

 お父さんの持ち分が10分の4ですので、法定相続であれば、お母さんが10分の2を相続し、長男とあなたが10分の1を相続することになります。

 その結果、従前の持ち分と合算して、お母さんは10分の4、長男は10分の3.あなたは10分の4の共有持ち分となります。

 この前提でいうと、お母さんが500万円を出した場合、あなたとしてはその10分の4の200万円分のリフォーム資金の贈与を受け、長男さんは150万円の贈与を受けたことになります。

 贈与の基礎控除は110万円ですので、あなたとしては90万円に対する贈与税の支払いが必要ですし、長男さんとしては40万円分に対する贈与税の申告が必要です。




【お母さんの持ち分を増やす必要はありません】

 この代金支出は、法的にはお母さんからの贈与か、あるいはお母さんの他の共有者に対す請求債権という形に変わりことになりますが、所有権の持ち分にはなんら影響を与えません。

 そのため、お母さんの持ち分を増やす必要はありません。




【お父さんの相続登記とも関係がありません】

 前項に記載したように、リフォームすることと家の所有権(及びその登記)とは何ら関係がありません。

 そのため、相続登記も急いでする必要はありません。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:39 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

義母から資金援助を受けた建物の相続【Q&A №436】

2015/03/18
 


 30年ほど前に父親が亡くなり、実家の母親と長男が同居するのに半分の資金を母親が出し、建て替えて新築しました。

 その後長男が10年前に亡くなり、その妻の私の名義にしました。最近義母がなくなりました。

 この家の所有権は名義者である私であると思いますが、建て替えた時に義母が半分資金を出してくれてた事が引っかかります。


記載内容

  新築 資金 数次相続

(さくら)





【「部屋」が遺産相続の対象になることはない】

 質問の中に「建物の義母が住んでいた部屋は遺産相続の対象になるのでしょうか?」という部分があります。

 まず、この点の説明をします。

 建物についていえば、1戸の建物の全体についての所有権が相続の対象となります。

 例えば「離れ」として完全に独立した建物であるような場合には別として、建物うちの一部分でしかない部屋が相続の対象になるということはありません。



【新築資金の贈与は特別受益になる】
 新築した建物について、その建築費用の半分をお義母さんが出したが、名義はご主人の単独名義にしたというケースです。

 このような場合、新築された家についてはご主人が単独で所有権を持ち、お義母さんは建築資金の半分をだした(ご主人に贈与した)ということになるでしょう。

 このようなお義母さんのした生前の建築資金分の贈与は特別受益として扱われ、遺産分割する際に、遺産の中に組み入れて、遺産分割されることになります。

 そのため、お母さんの遺産を分割する際に、他の相続人から「あなた方は自宅建築資金の半額を生前贈与され、その分が特別受益である。

 その分他の遺産については他の相続人が多く取得するべきだ。」と言われる可能性はあり、その場合にはこれをみとめざるを得ないでしょう(特別受益については【コラム】生前贈与を受けていたらご参照)。

(なお、本件では、特別受益を受けたのはあなたのご主人ですが、ご主人が死亡されているので、相続人はご主人の子であり、代襲相続人です。ただ、この場合、代襲相続人である子はご主人の立場を継ぐのですから、ご主人の特別受益は子である代襲相続人の特別受益とみて差し支えないでしょう)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:30 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺言書の検認を受けてからするべきこと【Q&A №430】

2015/02/18
 


 昨年母親が亡くなりました。

 父親は十数年前にすでに他界しております。

 私には姉が一人おります。

 姉は現在社会人、大学生2人の娘と夫の5人家族で私のほうは小学6年生の息子と主人の3人家族です。

 母の病院の付き添いなどの面倒は主に姉が行ってきました。

 私の方は育児期が重なり主に週末など行ける時に息子の顔を見せに行くという形で関わってきました。

 母が亡くなってから姉より、実は数年前に母から遺言状をもらっていたと聞かされました。

 もらう際、「財産は全部あなたに」といった内容の遺言状であると聞かされながらもらったそうです。

 そうはいっても、ということで一度は財産は等分にしようということになったのですが、実家の片付けをする過程で意見の不一致などが重なってきたところで「やっぱり検認するから」といわれ手続きにかかっているそうです。

 姉はそれまでにも母より子供の学費や生活費の援助を相当額うけていましたし、もっと遡れば子供の幼少期には母は定期を買って足しげく姉のところに通い面倒をみておりました。

 つまり、過去からずっと持ちつ持たれつの関係でした。

 私の方は子供の頃から冷遇、姉は母の愛情を一身に受けておりました。

 悔しくてなりません。

 遺言状の存在を知りながら教えてもらえなかったこと、姉が生前に受けてきた恩恵。

 最後にとどめの一発、どう考えたらよいのでしょうか。

 自分の尊厳を守りぬく方法を教えてください。


記載内容

  秘密 自筆遺言書 検認 遺留分 特別受益

(みなしごはっち)





【まずするべきことは遺言書の確認です】

 質問では、お姉さんは遺言書があると言っておられ、検認の手続きをされる方向のようです。

 公証役場で作った公正証書遺言の場合には検認が不要ですので、遺言書は自筆でかかれた自筆証書遺言だと思われます。

 あなたとしては次の点を確認する必要があります。

①まず、本当に遺言書が存在するのかを確認する。

遺言書の内容がどのようなものかを確認する。

遺言書が有効かどうかを確認する。


 自筆証書遺言の場合、法律に定められた書式に合致しない場合には、遺言書は無効になります。

 たとえば、ワープロで作成したものは効力を持ちませんし、日付が抜けている場合も効力がありません。



【遺言書を入手して、有効性を確認する】

 自筆証書遺言の場合、お姉さんが家庭裁判所に検認の申立をします。

 裁判所は遺言書を開封し、その内容を他の法定相続人等に見せます。

 この裁判所の検認は遺言書が出てきたことを他の法定相続人に見せるというだけの手続きであり、裁判所がその遺言書が有効であるかどうかの判断はしません。

 あなたとしては遺言書の検認に際して裁判所が作成する検認調書(遺言書のコピーが付けられています)をもらい、有効な遺言書かどうかを判断されるといいでしょう。

 なお、その判断ができないというのであれば、相続に詳しい弁護士に法律相談され、遺言書が有効かどうかについての見解を聞かれるといいでしょう。




【遺言書が有効な場合の対処法】

 仮に遺言書が有効なものであり、その内容がお姉さんに遺産全部を相続させるというものであっても、あなたには、本来の法定相続分の半分(相続人があなたとお姉さんだけだとすると4分の1)の限度で遺産をもらえる遺留分減殺請求という制度があります。

 遺言書の内容を見て、あなたが全く遺産をもらえないような内容である、あるいはもらえるけれども遺産の4分の1に届かないというのであれば、遺言書を見たときから1年以内に、遺留分減殺請求通知を出されるといいでしょう。

 なお、お姉さんが、お母さんの生前にかなりの財産をもらっているような場合には、その生前にもらった分を特別受益として遺産に持ち戻すという制度があります(このような持ち戻しが認められると、あなたが遺産からもらう遺留分が増加します)。

 この遺留分や特別受益については、この相続ブログの他のQ&Aに詳しく書いておりますので参照されるといいでしょう。(相続Q&A №243Q&A №393ご参照)

 ただ、遺留分や特別受益については、法律的に難しい分野ですし、最終的には訴訟等の法的手続きが必要になる可能性も高いことから、早期に弁護士に相談、依頼することも視野に入れるといいでしょう。
 

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:45 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
 | HOME | Prev »