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★★【相続判例散策】預金債権は遺産分割の対象になる(最高裁平成28年12月19日判決)

2017/02/03
・・最高裁が従来と全く異なる判例を出しました・・

預金債権は遺産分割の対象になる

最高裁平成28年12月19日判決


【ケース】

相続人のうちの一人が生前に被相続人から5500万円の贈与を受けていたというケースで、生前贈与を受けていない法定相続人が、被相続人の預貯金約3800万円を生前贈与などと合わせて遺産分割するよう求めた事例。

1審及び2審は、従来の最高裁判例に従い、「預金は相続によって当然に分割されるので、遺産分割の対象外である」とし、預貯金の遺産分割を認めない判断を下していた。


【裁判所の判断の概略】

最高裁判所は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判断しました。

その理由は以下のとおりです。

本判決は、まず、預貯金一般の性質を説明しています。

「共同相続人間の実質的公平を図るため、一般的には、遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましく、また、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する。

預貯金は、決済手段としての性格を強めてきており、また、預貯金債権の存否及びその額が争われる事態は多くなく、預貯金債権の価値が低下することはないことから、現金との差をそれほど意識させない財産であると受け止められているといえる。」

また、それぞれの預金の特殊性を踏まえて、以下のような趣旨の理由づけも行っています。

「普通預金契約及び通常貯金契約について、預貯金債権が相続開始時の残高 に基づいて当然に相続分に応じて分割され、その後口座に入金が行われるたびにそれぞれの相続人の預貯金債権額が入金に応じて変わるとなると計算が煩雑になる。

定期貯金債権については、定期貯金債権が相続により分割されると解すると、それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる上、預入期間内に貯金を払い戻す場合には一部払戻の取り扱いをしないという制限があるため、共同相続人は共同して全額の払い戻しを求めざるを得ず、相続により分割されると解する意義は乏しい。」

 
【弁護士のコメント】

1.従来の判例の紹介と本判決の持つ意味

1)最高裁判事全員が本判決に賛成した。

最高裁判所は、貯金が分割債権かが問題となった平成16年4月20日の判決(判時1859号61頁)で相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと言っていますが、本判決は、預貯金債権について従来の判例と全く逆の結論をしたものであり、重大な判例変更です(なお、本判決は大法廷で審理されましたが、関与した裁判官15名全員が、本判決を支持しており、反対意見はありませんでした。)

2)法律的性質からみると、以前の判決は正しいが・・・

従来の最高裁判決は《預貯金債権は金銭債権であり、《法律上》は相続と同時に各相続人にその法定相続分に応じて分割取得される》と考えました。

たしかに金銭債権はそのような性質をもっており、法律的には従来の最高裁判例は間違いではありません。

参考までに言えば、不動産の価額は法定相続人の立場により異なってきます。

その不動産を取得したい側は低く言いますし、代償金をもらう側は高く評価します。

又、評価がまとまらない場合、預貯金なら計算で取得額が計算でき、分配も可能ですが、不動産は簡単に分割することができません。

ケーキなら簡単に分けることができますが、不動産は現物では簡単には分割できません。

不動産については共有にするということも考えられますが、これは問題の先伸ばしであり、最終的な解決にはなりません。

このように不動産は分割という困難な問題が生じますが、預貯金にはそのような問題がなく、分割が容易です。

その意味では、従来の最高裁判決は、預貯金の法律的性質に着目したものであり、その限度では《正しい判決》です。

3)実務では問題が生じた。

ただ、遺産分割訴訟で、当事者の一方が預貯金債権は遺産分割の対象にしないということになると、不動産等しか扱えず、調停が円滑にいかない可能性があります。

又、遺産分割調停が成立しない場合には、家庭裁判所の裁判官(審判官)が遺産分割審判(要するに判決のようなものです)をしますが、その場合には双方の当事者の同意があっても、不動産等しか分割の対象にできず、預貯金を増減して調整のために使うということは全く不可能でした。

本判決により、遺産分割調停では当事者の同意がなくとも、調停の対象とされ、又、遺産分割審判でも預貯金が対象ですので、ある相続人には不動産を、他の相続人には預貯金を与えるという柔軟な解決が可能になります。

調停や審判にかかわる実務家として、歓迎すべき点が多い判決です。

以下、論点を絞って、当事務所弁護士の本判決に対するコメントを記載しておきます。

2.本判決に対するコメント

1)預貯金債権は遺産分割の対象になる

これまで述べてきたように、従来の最高裁判決では、預貯金等の可分債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと判断されていました。

その上で、実務上では、当事者間で衡平妥当な解決を図るため、預金債権についても遺産分割の対象とする合意がある場合には、遺産分割の対象とする扱いがなされていました。

そして今回、上記のとおり、預貯金債権は相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になるという
判断が最高裁でなされました。

これにより、今後は相続人の同意の有無にかかわらず、預貯金は遺産分割の対象となるということになります。
その結果、遺産調停では預貯金が当然、分割されるべき遺産の内容(対象)となります。

同様に前記のように審判でも預貯金を考慮して審判ができることになります。

2)他の可分債権についても遺産分割の対象になるのか?

本判決で問題にされたのは預貯金債権ですので、預貯金以外の可分債権(貸金債権等)についても、当然に遺産分割の対象になるのかどうかは明らかではありません。

本判決に際して述べられた各裁判官の補足意見を見ても、この結論は預貯金債権について共同相続が発生した場合に限るという意見や、額面額をもって実価(評価額)とみることができない可分債権については、合意がない限り遺産分割の対象とならないという意見など、様々です。

ただ、本判決の中で、遺産分割において被相続人の財産をできる限り幅広く対象とし、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請があると判断されていますので、他の可分債権についても遺産分割の対象になると考えてよいのではないかという考えもありえます。

しかし、遺産の範囲に入れるということは遺産審判になればそれについても判断をしなければならないということでもあります。
例えば、遺産に貸金債権があった場合、その貸金額が決まっている場合を考えてみましょう。

貸金債権は典型的には金銭債権ですが、回収が困難であるという債権の場合、例えば1000万円の債権額であっても実質的な値打ちが0円の場合もあります。

このような場合には、遺産分割の対象とはならないというべきでしょう。

なぜなら、このような貸金も分割しなければならないとすると、その債権の評価をめぐって争いが生じる可能性があるからです。

本判決が、おそらく調停が成立しやすくするためや審判を容易にするためという目的に出たものであるとすると、金銭債権でもその実質的な額に争いがあるものも遺産分割の対象とすることは新たな紛争の種を持ち込むということになります。

本判決が、調停や審判の制度設計にかかわる枠組みを作る意図でなされたものであるとすれば、金銭債権であっても回収可能性に争いがあるような債権は遺産分割の対象外ということになりそうです。

3)取引経過の開示請求について影響はあるのか?

共同相続人の一人が単独で預貯金等の取引経過の開示を求めることは可能であることについては最高裁の平成21年1月22日(判タ1290号132頁)の判例があります。

そこで、本判決で預金債権が相続分に応じて当然に分割されないと判断されたことにより、単独での取引経過の開示請求の可否に影響するのではないかという懸念もあります。

取引経過の開示に関する上記判例は、「預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる」と判断しています。

このように、預金債権の帰属とは別に、共同相続人各自が「預金契約上の地位」を有しており、その地位に基づいて取引経過の開示を単独で求めることができるという理論構成を取る限り、今回の判例変更にもかかわらず、法定相続人の一人からの履歴照会には応じなければならないとの点は維持されるべきものと考えていいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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11:35 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★預貯金の目減りが心配【Q&A №555】

2017/01/25


【質問の要旨】

母の通帳などを妹が管理している

記載内容 不正出金 預金

【ご質問内容】

父が亡くなり四年が経ち、母・長女(私)・妹・弟(八年前他界)がおり、両親の面倒を見ていた妹夫婦が今回建物のみ母への名義変更を言ってきました。

弟存命中は、いずれ両親と同居する前提でマンション代を出してもらっており、しかし弟亡き後は、それが叶わないので妹から、父へマンション代を返すよう弟の嫁に言い、嫁は返済しました。

以前、私は、妹から両親の面倒を見てほしいと言われましたが、その当時は両親も元気で二人で生活できていたし、私の家の状況等の理由もあり、それを断った経緯があります。

その後は一切を取り仕切り、財産を聞いても教えてもらえず、生前父から何となく聞いていた預貯金額より遥かに少ないぼんやりした額をのらりくらり言うだけです。

嫁も同じことを言っています。通帳と実印は妹が全て持っていますし、母は強い妹には何も言えません。母名義にさせたマンション代他の預貯金の目減りを防ぐ手立てはないのでしょうか

また、今後どのようにして対処していけば良いのでしょうか

(piano)





【お母さんの財産の管理を決定するのはお母さんです】

お母さんの預貯金を、現在は妹さんが管理されているようですが、もし、お母さんが自分の財産の管理を妹に任せているのであれば、それはお母さんの意志に基づくものであり、何ら違法なことではありません

あなたはお母さんが死亡した場合には、その遺産を相続できる立場です。

しかし、現段階では、お母さんの財産に関与するなんらの権利も権限もありません。

そのため、もし、現在の状況を変えたいのであれば、あなたではなく、お母さんがその意志で行動する必要があります。

あなたとしてできることがあるとすれば、それは、お母さんが《預貯金通帳や印鑑を返してほしい》と決断するように働きかけることだけでしょう。

お母さんがそのような決断をするのであれば、お母さんの意向に従い、あなたがお母さんの代理人として妹さんと返還や管理について交渉するということも法的には可能ですし、又、必要に応じてお母さんが弁護士に依頼するということを考えてもいいでしょう。


【成年後見人をつけることも考える】

現時点ではお母さんの判断能力があるようですが、もし、将来、お母さんの判断能力がなくなるようなことがあれば、親族であるあなたは家庭裁判所にお母さんの成年後見申立をすることができます。

家庭裁判所で選任された成年後見人はお母さんの全財産を管理します。

今回のような将来の法定相続人の間でお母さんをめぐって紛争が生じるおそれのある場合には、家庭裁判所は、お子さんではなく、司法書士や弁護士などの第三者を成年後見人に選任しますので、選任された以降はお母さんの財産の保全を図ることが可能です。


【現時点でできることは何か?】

ただ、将来、お母さんが死亡した場合、あなたは相続人となり、遺産をもらう立場になります。

その際、妹さんがお母さんの預貯金を勝手に使っていたのであれば、貴方は相続人として法定相続分に応じてですが、返還請求ができます。

そのため、現在、どの銀行のどの支店にお母さんが預貯金を持っているかは最低限、把握しておくといいでしょう

通帳等が手にはいらなくとも、お母さんの死亡後、その金融機関に連絡すれば、取引履歴の取り寄せが可能です。

履歴照会により、妹さんがお母さんの預貯金をどのように扱っていたかのかが明らかになります。

現時点であなたがするべきことはそのような手配だと思います。

(弁護士 大澤龍司)

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16:23 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №553】

2017/01/17


【質問の要旨】

相続放棄したら仕送りしていた金銭はどうなるのか

記載内容 預金 引き出し 承認

【ご質問内容】

父の死亡後、多額の負債の連帯保証人をしていたことがわかり、子である私たちきょうだい三人全員が相続放棄をすることになりました。

遺産は預貯金40万円ほどと軽自動車1台。ほかにはありません。

父は年金と私たちきょうだいからの仕送りで生活していました。

相続を放棄してしまうと預貯金から仕送り分を返してもらうことはできない、という解釈であっていますか

(おがわ)






【仕送りは貸金ではない】

親子間では困っていたら助け合う義務(扶養義務といいます)があると定められています(民法第877条第1項。末記条文を参照ください)。

子が親に仕送りするような場合にはこの扶養義務の履行に該当すると考えられます。

そのため、子から親に対する仕送りは貸金ではなく、返還を要しない贈与となり、親は返還義務を負いません

そのため、お父さんの遺産から返還を受けることができないという結論になります。


【参考説明:子の親に対する貸金と子の相続放棄との関係】

前項で述べたように、親に対する仕送りは貸金ではないと考えられます。

ただ、本件の質問を離れて、仮に子が親に貸金があった場合、相続放棄との関係がどうなるかも説明しておきます。

相続放棄とは遺産の相続をしないということです。

子であるあなた方が相続放棄をした場合、お父さんの遺産である車や預貯金40万円を相続することはできません。

しかし、子が親に対して貸金のような債権を持っていた場合、子が相続放棄しても、その貸金債権はなくなりません。

相続放棄は親からの遺産をもらわないということであって、あなた方が従来から持っている親に対する貸金債権までなくなることはなく、あなた方は親の遺産に対して貸金の請求ができます


【参考説明:相続財産管理人の選任が必要】

問題は、この請求をした場合に、誰が支払いをしてくれるかです。

相続放棄をしない場合、法定相続人が遺産の権利者になりますので、その権利者の権限として遺産を自由に処分でき、債務の支払いもできます。

これに対して、相続放棄をした場合、その放棄した相続人は遺産を自由に処分する権限はなく、債務の支払いをすることができません

相続放棄をしない法定相続人がいれば、その人が遺産と債務を承継しますので、その人に支払い請求をすることになります。

もし、すべての相続人が放棄をした場合で、貸金を有している債権者が債権の支払いを求めたいのなら、その債権者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をする必要があります。

選任された相続財産管理人が遺産を管理・調査し、債権者に支払いをしてくれます。

ただ、財産管理人選任の申立をする場合、原則として、予納金として裁判所に90万円から100万円を納付する必要があります。
今回の質問の場合、遺産が少ないのでそのような手続きはするメリットはないでしょう。

なお、財産管理人が選ばれた場合、この申立をした債権者の債権の弁済が優先されるわけではなく、債権額に応じた平等弁済になることも理解しておかれるといいでしょう。


【勝手に遺産から弁済をうけた場合の扱い】

相続放棄したにもかかわらず、その放棄した方が遺産から勝手に貸金の返済を受けた場合、その相続人は遺産を取り込んだとして、相続放棄の効力がなくなることがあります

相続放棄が無効になった場合、その相続人は、お父さんの債権者から請求があれば債務の支払いをしなければならないこともありうることにご注意ください。

民法 第877条
(扶養義務者)
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(以下略)


(弁護士 大澤龍司)

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12:57 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の同居女性からの葬儀費用、保険金の請求【Q&A №549】

2016/12/14



【質問の要旨】

亡父の同居女性から立替金と死亡保険金を請求された

記載内容 立替金 死亡保険金 遺言書

【ご質問内容】

離婚し、音信不通だった父が病死したとの連絡がありました。

同居している彼女から生前の治療費、介護費、葬儀代等の立替金120万円と死亡保険金200万円の請求が弁護士を通じてきました。

保険金については、死ぬ前日の日付で遺贈するとの遺言書があるが、捺印はなしです。

父の預金通帳が見つかりましたが、100万円ほどの預金は亡くなるまでにほぼ全額引き出されており、使途は不明です。

彼女は預金のことは知らないと言っています。

この請求は妥当なもので、請求に応じなければならないのでしょうか?

あちらは訴訟の手続きを進めているようですので、こちらも弁護士に依頼することになると思いますが、その際にかかる費用と勝率はどれ位になりますか?

また、和解するならこちらは幾らくらい支払うのが妥当でしょうか?

(みち)





【生前の治療費・介護費は相続債務である】

お父さんの彼女から、生前の治療費、介護費、葬儀代等の立替金と死亡保険金を請求されているとのことですが、それぞれ法的な扱いが異なりますので、分けて説明いたします。

まず、生前の治療費、介護費は、被相続人自身の債務ですのでお父さんの相続人がその債務をそれぞれの相続分に応じて相続しますので、支払いをする必要があります

ただ、本当にそのような債務があったのか、又、その債務の支払いを彼女がしているのか(お父さんの財産から支払いされているのではないか)を確認する必要があります。

もし、そのような裏付証拠があるのなら、立替金を返還する必要があるでしょう。


【葬儀費用は相続債務ではない】

これに対し、葬儀費用は、被相続人の死亡後に発生するものですので、相続債務にはならず、原則として被相続人の葬儀の喪主を務めた人が支払うべき費用と考えられています

ただ、調停での解決では、実務では法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いた上で出席した他の相続人に分担してもらうことで解決する場合が多いです。

ただ、今回のケースは喪主である彼女は法定相続人ではありません。

このような法定相続人以外が喪主になったケースについては、過去の裁判例の中に、葬儀費用を相続人(2人のうち1人は葬儀にも参列しなかった)に請求できないと判断したものがあります(過去の相続ブログQ&A №545及び【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか)ので、この判例を参照の上、対応を考えられるといいでしょう。


【押印のない遺言書は無効である】

さらに、保険金については、亡くなる前日の日付で遺贈するとの遺言書があるようです。

遺言書は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています(民法968条1項)ので、押印のない遺言書は無効 です。

ただ、押印がなくても、遺言書を入れた封筒の封じ目に押印があれば、封筒と内容の遺言書本体とは一体と考えられ、捺印があったことになり、有効な遺言書になります(最判平成6年6月24日・家月47巻3号60頁)。

本当に封筒の方にも押印がなかったのかどうかの確認が必要でしょう。


【100万円の引き出しについて、証明はあなたがしなければならない】

さらに、お父さんの口座にあった100万円ほどの預金は、亡くなるまでにほぼ全額が引き出されていたとのことですが、お父さんの彼女が引き出したと主張する場合、その証明はあなたがする必要があります。

そのためには、あなたとしては預貯金の払戻書のコピーを取り寄せし、署名欄に記載された筆跡を検討し、彼女が引き出したことを確認する必要があります(この点について詳しくは、過去の相続ブログ【Q&A №502】をご参照ください)。


【弁護士費用と勝率、和解について】

弁護士費用については、以前は弁護士会の報酬規程がありましたが、現在は弁護士によって異なりますので、依頼する弁護士に直接確認する必要があります。

次に勝率、和解については、具体的な事案によって大きく異なりますので一概には言い切れません。

一度弁護士に相談に行き、具体的な事情やお持ちの資料等を説明した上でお聞きになるとよいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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代表相続人が解約した預貯金【Q&A №526】

2016/08/09



【質問の要旨】

代表相続人が勝手に手続き

記載内容 代表相続人 無断 預金

【ご質問内容】

経過 :代表相続人が勝手にし処理し、既に完了との連絡が金融機関からありました

代表相続人(配偶者)と他相続人(子供2名)間で協議がまとまらない為にこのような手段を講じたようです。

要は争族中です。

質問1:代表相続人(配偶者)から連絡がない、又は他相続人が分割分を請求しても応じないで放置すると、4800万円以下の遺産が代表相続人に全て使われてもしかたないですか

質問2:相続人代表口座の内容を閲覧するにはどうすればいいですか

(kawaさん)







【代表相続人から請求があれば金融機関は預貯金全部の支払いをする】

遺産の中に預貯金がある場合、金融機関は法定相続人に対して代表相続人の選任を求めます。

あなたが、配偶者を代表相続人とする手続きには協力した(ということは、配偶者を代表相続人に選任する書面に実印を押し、かつ印鑑証明書も渡した)のであれば、金融機関としてはその代表相続人が手続きをすれば預貯金全額を代表相続人に支払います

これは法定相続人間で遺産分割協議が整っていなくても、代表相続人の書類に不備がなければ、金融機関としては支払いを拒否する理由はありません。


【連絡してこない場合には迅速に仮差押え手続きをする】

代表相続人が預貯金を全部解約した場合、その人が全部を使ってしまう、あるいは隠してしまうおそれは十分に考えられます。

連絡してこない、分配請求に応じないというであれば、使われてしまう可能性も極めて高いでしょう。

もし、そのような事態になれば、最悪の場合、あなたは1円の金銭も回収できないことになりかねないため、預金を使われないよう代表相続人の口座を仮差押し、口座を凍結してしまうことが必要です。


【代表相続人の口座内容は確認できない】

代表相続人である配偶者が生きている限り、その同意がない限り、配偶者の預貯金の口座を知ることはできません

親子であっても、金融機関から見れば他人ですので、口座内容を知ることはできません。

もし、前項に記載した仮差押えをするのであれば、一番可能性の高い金融機関を狙うか、リスクを分散する意味で数個の金融機関に分散して仮差押えをするしかないでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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10:48 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

他人名義の預金は遺産に含まれるか【Q&A №524】

2016/08/05



【質問の要旨】

相続人の1人が生前に多くお金を受け取っている場合の遺産分割

記載内容 名義借り 遺産確認

【ご質問内容】

父と相続について話しました。

父は遺産分割協議書を作って、母、私、妹に財産を分割すればよい、ということでした。

ところが、父は株などで儲けた分をすべて母の口座へ入金しているようなのです

この状態で父と母の全財産をもとに遺産分割が可能なのでしょうか。

以上、ご回答願います。

(HY)






【将来の遺産分割協議の話と理解しています】

質問の時点ではお父さんもお母さんも生きておられるので、将来、お父さんが死亡して、その相続問題が発生したときの遺産分割協議書の問題として回答します。


【銀行では名義を基準とする】

銀行としては、名義を基準として取り扱いをします

名義がお母さんであれば、お母さんの預金であり、お母さんの自由な引き出しを認めます。

お母さん以外の法定相続人が、お父さんの遺産であるからと銀行に申し入れをしたところで、銀行がそれを認めて、お父さんの遺産として扱うことはまずないでしょう。


【判例では名義よりも実体を重視】

預金の名義人であるお母さんが「これは私のお金だ」と言い張り、お父さんの遺産であることを認めなかったときはどうなるのでしょうか。

そのようなケースが裁判で争われたことがあります。

事案の内容によって異なりますが、名義人のものではなく、口座に入金された金銭を出した人の財産と判断するという判決が多いです(末尾に参考判例1件を掲載しおりますのでご参照ください)。

ただ、裁判まで行くのは費用や手間から見て、大変でしょう。

お父さんやお母さんが生きている現時点で、将来のトラブルを防止する方策を考えておくべきでしょう。


【現在、法的に打てる手段は少ない】

現時点では、あなたの取れる法的な手段は少ないです。

あなたはお父さんが死亡した後には相続人になりますが、それは将来の話であり、現時点ではお父さんの財産について何らの権利も持っておられません。

以下に記載したようにお父さんとお母さんを説得するしかないでしょう。


【事前の対策(その1)・・お父さんらを説得する】

現在、お父さんとお母さんが生きているのですから、ご両親に相談してもらって、お父さんから出た分は、お父さん名義の口座に戻すのが、一番良い方策でしょう。

しかし、お父さんがなぜ、自分の名義ではなく、お母さんの名義に入金したのでしょうか。

その点をお父さんに確認する必要があります。

自分が死んだ後のお母さんの生活資金の前渡しというのであれば、それは生前贈与になる可能性もありますし、又、お父さんとしてもお母さん名義から自分名義の預金へ戻すことに賛成しないでしょう。

あるいは、税務対策などで、お母さんの名義を利用しているという可能性もあります。

このような場合には、名義をお父さんに変更した段階で税務調査が入るということにもなりかねませんので、その点も配慮が必要でしょう。


【生前の対策(その2)・・出所はお父さんである証拠を残しておく】

現在すべきことでもう一つ、大切なことがあります。

それは、お母さん名義の預金の出所がお父さんであることの証拠をちゃんと残しておくことです。

将来、訴訟になった場合にも役立ちますが、それよりも、ちゃんとした証拠を残しておれば、その証拠を見せるだけで相手方が納
得することも多く、紛争の防止に役立ちます。


【お父さんが死亡したときの対策】

お父さんが死亡した後、お父さんの遺産であることをお母さんが認めず、その預金を全部引き出しそうな場合には、お母さんが預金を引き出さないようにする手続きを取ることもできます。

仮差押えという手続きになりますが、裁判所に申立をして認めてもらえれば、あなたの法定相続分の限度でお母さんの出金をストップさせることも可能です。

ただ、裏付け証拠などを裁判所に提出しなければならず、又、迅速に手続きをしなければならないので、相続に詳しい弁護士に、早期の段階で相談されることをお勧めします。


【参照判例:東京高裁平成21年4月16日】

被相続人の妻名義の預金について、財産の出捐者や当該財産の管理及び運用の状況、妻名義にすることになった経緯等を考慮して、被相続人の相続財産であると認めた。

詳しくは【相続判例散策】被相続人以外の名義になっている財産を相続財産に含めることはできるのか?をご参照ください。

弁護士コメント:同趣旨の判例は上記以外にも他数ありますが、事案の内容によっては反対の判断をした裁判例もあります。

(弁護士 大澤龍司)

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相続した保証債務の裁判と主債務者の責任【Q&A №517】

2016/07/07



【質問の要旨】

相続債務と会社の責任

記載内容  会社 借金 保証

【ご質問内容】

債務超過相続、相続人4名に対する、主債務、連帯保証に対して訴訟提訴を債権者より受けている

全て抵当権付きのオーバーローン。

相続人の間は養女、私と、妹と従兄弟である相続人の法人仮代表取締役は、相続財産の2分1の未納固定資産税を私達持分支払わないで役所から給与の差押えを私は受けている。

父親は自分の会社に全不動産を担保提供し又貸していた。

その為家賃はこちら側には入金されずあちら側の好き放題に5年近くあちら側は貯めたと推測される。

相続不動産は競売の準備の登記はされたが裁判所からでない。

待っていても競売は無いと思われる。

妹弁護士は法廷で債権者の代弁かのように和解なら1000万円は必要。

馬鹿にしています。

会社も個人も全て売却するのが筋です。

会社を残し騙しながら現金を貯める卑怯者退治、和解案が何かありましたら享受の程宜しくお願い致します。

(きー)







【事実関係の整理】

質問の事情が複雑ですので、当方の理解の限度で次のとおり事実関係の整理をし、その前提で回答します。

① まず被相続人であるお父さんが会社の借金の連帯保証人になり、かつ、所有する不動産を担保に差し出した。

② その不動産はお父さんが会社に貸し、更に会社が第三者に賃貸しているが、お父さんには賃料は入っていない。

③ その不動産には「競売の準備の登記はされた」とあるので、おそらく仮差押登記が付されたが、オーバーローンのため、競売はできない。

④ 以上のような状況の中で、あなたを含む相続人4名に対して債権者から、被相続人の連帯保証債務を相続したという理由で訴訟が提起され、妹さんの弁護士の話では合計1000万円の支払いでなら和解ができる


という話であるとします。


【訴訟を提起されたことについて】

相続人が相続放棄しない限り、被相続人の負う連帯保証債務があれば、それぞれの法定相続人が法定相続分に分割して、その債務を履行する義務があります

今回の訴訟はその前提で提起されています。


【会社の財産を探す】

まず、本来は会社が主債務者ですので、会社に財産があればそれからの支払いをしてもらえば、それだけ保証債務が減ります。

そのため、あなた方としては会社に財産がないかどうかをあらゆる手段を使って確認される必要があるでしょう。

もし、発見できれば、訴訟の原告にその情報を流して、会社財産から回収してもらえば、その分だけでも連帯保証債務は減少します。


【賃料はどこに行ったのか】

お父さんの差し入れた担保不動産を会社が賃貸していたようです。

そうするとその賃料はどこにいったのでしょうか。

賃借人に確認すれば支払い先の会社の口座が判明します

その口座に残高があれば、それを債権者に差押えしてもらって、保証請求額を減額するということも考えてもいいでしょう。


【不動産を競売しても裁判の請求額は減らない】

次に、被相続人であるお父さんが担保に入れた不動産があります。

通常の場合、まず担保になっている不動産を売却し、その不足額を連帯保証人に請求することが多いです。

ただ、今回の場合には、仮に競売がなされた場合、オーバーローンということですので、競売代金は抵当権者等の担保権者にいくだけであり、その他の一般債権者にはいきません。

仮差押登記をつけた債権者であっても、それは一般債権でしかなく、抵当権の方が優先して支払いを受けることになります。

そのため、一般債権者としては不動産から配当される可能性はなく、各法定相続人に訴訟を提起して請求するしかなかったのでしょう。

このような経緯で訴訟が起こされたということであれば、法定相続人としても、被相続人が債務を負っていることが明らかであれば、法的にはその支払い義務は免れないでしょう


【和解で注意するべき点について】

相続債務の場合、仮に被相続人に1000万円の債務があり、子供4人が相続人であったとすると、各人は4分の1ずつ、金額で言えば250万円の限度で債務を負うことになります。

弁護士によると1000万円の支払いが必要だという言うことのようですが、次の点は注意をする必要があります。

①今回1000万円の話が出ているようですが、これは個別の額なのか、4人の合計の総額なのか確認する必要があります。

②次に総債務額が1000万円だとした場合、各法定相続人が1000万円の支払い義務を負う連帯債務なのか、それとも各人が250万円だけの支払責任を負うにすぎないかという点も確認される必要があります。

③和解をするというのは必ずしも望まないところかもしれませんが、訴訟で判決になると今回の1000万円より多額になる場合も多く、又、年5%程度の利息もつきます。

不本意でも和解の方が得策だということもあり得ます。

和解の条件と判決が出たときのどちらが有利であるかを弁護士の意見も参考にされ、判断されるといいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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★子のいない叔父の葬儀、墓をどうするか【Q&A №508】

2016/06/08



【質問の要旨】

遺体の引き取り手がいない、葬式費用を立て替える人もいない、入る墓もない

記載内容  後見人  

【ご質問内容】

叔父(独身、精神病院長期入院)に法定後見人(弁護士)が付いていますが、叔父の死亡時に当然ですが後見人は職務終了になると思われますが、各問題が浮上しますので、対応策をご教示頂ければ助かります。

兄弟は4名(叔父含めて他は没)姪、甥が現在5名

叔父の資産は推定数千万円。姪、甥は叔父の事で仲が悪くなった。

1、叔父の死亡時には誰も対応せず、遺体引き取りが出来ない。

2、葬式をするにも、戒名等代等 誰も立替える意思が無い。

  (立替えた費用が他の相続人の事後合意が取れなさそう)

3、本家の墓には入れそうにも無いので、墓の問題が発生。

(福田)







【相続人に遺体の引き取り義務があると定めた法律はない】

相続人に遺体の引き取り義務があると定めた法律はありません。

そのため、法定相続人である甥姪全員が遺体の引き取りを拒否した場合、最終的には死亡した場所の自治体が火葬することになります。

参照条文:墓地、埋葬等に関する法律第9条:〔市町村長の埋葬又は火葬の義務〕
「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。」


ただ、成年後見人(弁護士)としては、遺体の引取りや葬儀を主宰するように甥や姪の方々に働きかけることと思いますが、これも強制ではなく、断られてしまえば自治体に連絡して、火葬することになります。


【葬式費用の立て替えについて】

葬儀費用は相続債務ではありません。

そのため、喪主となった法定相続人が立て替え支払いをして、後日、遺産分割時に返済をしてもらうようなことが多いです。

しかし、厳密にいえば、葬儀費用は相続債務ではなく、支出したからといって、必ずしも遺産から優先弁済を受ける費用とは言えないため、相続人間で遺産争いがあると、後見人も安易に喪主に葬儀費用分を返還するわけにはいきません。

そのため、あなたがもし葬儀を執り行ってあげたいというお気持ちであれば、このようなリスクを覚悟の上で行うか、あまり費用をかけずに行うか、どちらかの方法で処理するしかないでしょう。


【墓地の費用について】

最後に、入るべき墓がないという問題ですが、法定相続人が墓を建立しなければならないという法律はありません。

最終的には、喪主となるべき人が決定することでありますが、その喪主も決まりそうもなく、又、費用負担するべき人はいないというのであれば、もはやどうしようもありません。

そのため、もしあなたが墓地を建立してあげたいというお気持ちがおありでしたら、ご自身の費用で立て替え支出した上、他の相続人(ほかの甥姪)に墓地を建立するための見積書等を提示した上、遺産分割協議を行う際に一定額を控除してもらうよう要求していくほかないように思います。


【遺産は遺産、葬儀や墓は別問題】

叔父さんの遺体を引き取りもしないような状況の中で、遺産分割について争いを続けるということが果たしていいのかどうか、法律問題ではありませんが、検討される必要があるように思います。

遺産問題全体の解決がすぐにはできなとしても、被相続人の遺体の引取りや葬儀の手配については法定相続人間で協議され、何らかの合意をすることはできないのでしょうか。

経費の最低限にしてでも必要な手配を行われることをお勧めします。

(弁護士 北野英彦)
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17:24 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡長兄の嫁に菩提寺への負担をしてもらいたい【Q&A №499】

2016/04/13

 【質問の要旨】

先祖代々の土地を兄嫁が相続

記載内容  先祖代々 土地 兄嫁

【ご質問内容】

兄が昨年死亡。

兄はA家の代表として土地Bを管理し、そこから上がる地代をA家の菩提寺の費用に充てる約束でした。

兄嫁はその土地の所有権を相続し、地代は生活費に充て始めました。

私は土地BはA家のもので、兄個人のものでは無く、兄が子供の時に相続で入手したので、兄嫁には相続権が無いはずだと主張。

この土地Bの相続を兄嫁がした事を取り消す事が出来ますか?

(白いコマクサ)







【兄嫁が土地を相続するのを無効にしたり取り消したりすることはできない】

お兄さんは幼い頃に土地Bを相続したのであれば、その土地はお兄さんのものです。

土地を所有するのは法人か個人であり、現在の法制度では「A家」が土地を取得することは認められておりません。


そのため、お兄さんが死亡すると同時に、土地Bは遺産として相続の対象になります。

遺言がない場合には、法定相続人がそれぞれの法定相続分でその土地を取得します。

血のつながりのない兄嫁さんが土地を取得するについては、あなたとしては納得いかないかもしれませんが、現在の法制度では兄嫁さんが土地Bを相続するのを無効にしたり取り消したりといったことはできません

なお、土地Bは兄嫁さんが単独で取得ということにはなりません。

なぜなら、子がおれば、子に遺産の2分の1がいきますし、子がいなければ両親、それもいなければ兄弟に、少ないですが、法定相続分があります。


【費用負担の約束も引き継いでもらう方向を探る】

今回の質問の核心は、お兄さんがした菩提寺の費用負担の約束を、兄嫁さんにも果たさせたいというところにあるように思われます。

菩提寺の費用負担についてお兄さんが約束したことが誓約書などの書面により証明ができるのであれば、兄嫁さんに対してその約束を果たすよう請求できる余地もあると思います。

そのような書面がなくとも、親戚の方がそのような話があったという話をしてくれるのであれば、それを兄嫁さんに伝えるといいでしょう。

土地の相続は否定できないとしても、せめて約束くらいは守るよう兄嫁さんに求めていくことで解決の糸口を見出す努力をされるといいでしょう

(弁護士 大澤龍司)

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10:42 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

抵当権付きの建物の相続【Q&A №498】

2016/04/05

【質問の要旨】

抵当に入っている家に住み続けたい

記載内容  借金 保証 抵当権

【ご質問内容】

父が以前親戚の保証人となり、持ち家が抵当に入っています。(根抵当?)

先日父が亡くなり、母が実家に一人で住むことになります。

父は生前そのほかに多くの借金もしており、母が少しずつわかる範囲の借金を返済しております。

母は高齢でこれからどこかに引っ越しを考えることは難しく、死ぬまで住みたいと考えています。

抵当に入っているということで、遺産相続(借金返済を続ける)するということでしか、そこに住む方法はないのでしょうか。
また母が亡くなった場合、私たち子どもが実家を守る手段は何かあるのでしょうか。

※借金を実際にした本人とは連絡が取れないそうです

(しま)






【自宅に住み続けるためには保証債務を支払うしかない】

お金を借りた親戚の方(主債務者といいます)と連絡が取れないということであれば、その方はおそらく債務の支払いが滞っているものと思われます。

主債務者が支払いをしない場合、貸主としては、連帯保証人に請求をしますが、そのお父さんがなくなっていますので、保証人の債務は法定相続人がその相続分に応じて支払い義務を負います。

もし、保証人からの支払いがない場合、債権者としては抵当権の実行として、裁判所に競売の申立をします

そのため、自宅に住み続けたいというのであれば、高齢のお母さんには気の毒ですが、貸主の請求に応じて債務の支払いをするという方法があります

なお、主債務が分割支払いであっても、それが支払い遅延した場合、一括支払いをすることになります。

ただ、あなた方が事情を説明し、保証債務は履行するが、分割払いにしてほしいので抵当権の実行はしないようにという申し出をすることは可能ですが、貸主としてはその申し出を受けるという保証はありません。


【住み続けるための方策としての入札】

抵当権を実行させても住み続ける方法として、競売で自宅を買うという方法もあります

この場合の利点は、主債務の未払い債務額より、競売で入札できる額が少額の場合も多いことです。

そして、保証債務より低額の落札金額の支払いで、抵当権も消えた家を獲得できるという点です。

入札しても絶対に落札できるとは限らないという欠点がありますが、自宅を確保する一方法として考えられるといいでしょう。


【入札者に賃借を申し出る】

なお、入札できなかった場合には、入札した人(新しい所有者)に対して賃借させてもらうように頼むことも考えられます

但し、入札者が賃貸をしないというのであれば、やはり自宅を退去せざるを得ないでしょう。


【抵当権が実行されても、すぐに家を出るというものではない】

抵当権等の競売の申立をした場合、競売手続きの込み具合により異なりますが、最近のケースでは、申立から競売が終了するまでに約6ケ月程度がかかります。

そのため、その期間は自宅に居住することは可能ということは覚えておいていいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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17:51 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

資産家の叔母の公正証書遺言【Q&A №489】

2016/02/03

【質問の要旨】

公正証書遺言が有効かどうか

記載内容

相続人 同席 カルテ

【ご質問内容】

都内主要駅から徒歩1分の所に住む叔母が、H25に85歳で亡くなりました。

叔母は後妻に入り(前妻病死 前妻の子とは養子縁組なし 実子なし ご主人も父母も亡くなっています)ご主人と工場を経営し、不動産、預貯金等、多額の財産を残しています。

相続人AとBが財産に目をつけ叔母を奪い合い、Aが入居させた老人ホームからBがさらって行った時は警察を呼び、又Aが叔母の取引銀行へ行ってBが財産を狙っているから、お金を下さないで欲しいと話し、聞きつけたBが叔母を窓口まで連れて行き、そんな事はないと言ってのけた強者と、Aから聞きました。

H22にBに全てを相続させる、H25にAに全てを相続させる(こちらは公正証書)全く内容が違い、自分1人に有利に書かせたと疑う私を、Aの弁護士を通して話せと突っぱねます。

H24には、叔母が気力も体力も無くなったとAが話していて遺言を書く頃は相当弱っていたのではと思って診断書などを取り寄せたいのですが、BがAの悪口を病院に触れ回っていて私も不審がられると思い取得できず大変困っています。

以前の電話でAは、他の相続人に言われたら火が噴いて大変だ!証書を作るとき保佐人が、相続人はA1人だから他に言わなくて良いと言われたとパニックでした。

相続人がその場にいて良いのでしょうか。

この事を息子に相談したメールは証拠になりますか?

よく眠れず、苦しいです。

先生、助けて下さい。よろしくお願いいたします。

(晴れたい子さん)





【同席だけでは無効とはならない】

叔母さんの生前から激しい争いがあり、別々の異なる内容の遺言が作られるなど、根深い紛争がうかがわれる案件です。

お互いが疑心暗鬼となり、相続人Aさんが叔母さんに対して、「自分に遺産を渡す遺言を作れ」などと圧力を加えて有利な遺言を作らせたと疑いたくなるのも理解できます。

しかし、公証人は遺言者である叔母さんの意思を確認しているはずであり、その場で脅迫や詐欺まがいのことが行われたことはまずないと考えていいでしょう。

なお、公正証書遺言を作成の際、通常、公証人は同席する人がいれば誰かを確認し、親族や利害関係人であれば席を外すように指示しますが、これは遺言者の真意を確認するためです。

その場に、Aさんがいたことで、叔母さんが《無言の圧力》を感じたという可能性がないわけではありませんが、それだけでは遺言が無効ということまでは言えないでしょう。

なお、同席の件を相談したメールについても、単に「Aも同席した」というだけのメールであれば、それだけで遺言を無効とする証拠とまでは言えないと思われます。

【代理人を通してカルテ開示を求める】

カルテの取り寄せについては、叔母さんの法定相続人(例えばAさん)なら取り寄せが可能のはずです。

Bが悪口等を言ったことで病院にカルテを請求しにくいというのもおかしいことだとは思いますが、病院が出さないというのであれば、弁護士に事件を委任して、その弁護士から弁護士会照会等の方法で取り寄せの手配をしてもらえば、病院としては拒む理由はありません。

いずれにせよ、本件のような案件は弁護士に依頼せずに解決するのはむずかしい案件ですので、早期に相続事件に詳しい弁護士に相談・依頼されるのがいいでしょう


《参考裁判例:こんな判例があります!》

参考までに、(相続人ではありませんが)証人になれない親族が同席して作成された公正証書遺言を有効とした最高裁判所の判例もあります(最高裁判所平成13年3月27日判決)のでご参照ください。

(弁護士 大澤龍司)
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10:01 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

後妻や連れ子の相続分はどうなるか【Q&A №481】

2015/12/03

 10年前に再婚しました。

再婚時に私には前妻との子どもが2人(私と同居)、妻(再婚相手)には子どもが1人いました。

私と妻(再婚相手)との間には2人の子どもができ、私と妻と子ども達5人(7人家族)で暮らしています。

再婚前の資産をA、再婚後の資産をBとすると、私が他界した場合には、遺産分割は法的にはどうなるかお教えください。

遺産分割では、そもそも再婚前後の資産の区別はないのでしょうか。

記載内容 再婚 前妻 公正証書遺言

(やっち)





 【遺産には再婚前と再婚後の区別はない】

特別受益で持ち戻される点を別とすれば、遺産とはその死亡した人(被相続人)が死亡した時点で有していた財産であり、それが再婚前に作られたもの(A)か、それとも再婚の後に作られたもの(B)かで区別されることはありません。

配偶者との関係では、再婚前に作った財産(A)で前妻がその形成に関与していたとしても、遺産分割の場面では前妻が登場する場面はなく、後妻(死亡時の配偶者)だけが相続人になります


    【連れ子の養子縁組は重要な意味がある】

ただ、今回はあなた自身も再婚相手もそれぞれ連れ子さんがいるということです。

あなたの連れ子はあなたの実子ですので、当然に法定相続人になりますが、後妻の連れ子は養子縁組をしているかどうかで結論が異なります。

後妻の連れ子とあなたが養子縁組をしていないのなら、長年同居して生活を共にしていたとしても、後妻の連れ子はあなたの相続人とはなりません

養子縁組をしているなら、養子である後妻の連れ子は、あなたの実子と同じ割合で法定相続することになります。

なお、養子縁組ができない事情があるけれども、それでも後妻の連れ子に遺産を与えたいというのなら、遺言書で遺贈するといいでしょう(このような場合には、紛失する可能性がある自筆遺言書ではなく、公正証書遺言にするのが望ましいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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15:59 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続人の金融機関に対する裁判【Q&A No.471】

2015/10/05



私は相続人の一人です。

他の相続人が、金融機関を相手に訴訟を起こして、預金を手に入れようとしています。

私も弁護士に依頼して訴訟に参加しなければ、預金を受け取れないのでしょうか?



記載内容

金融機関に対する裁判


【ご質問内容詳細】

 初めてまして。

 父が亡くなりゆうちょ銀行に父の預金があります。

 母と弟そして私が相続人ですが相続金の分配が決まり相手方(母と弟)から当事者参加申出書が届きました。

 相手方は弁護士に依頼しゆうちょ銀行を訴えるという恰好で相続金を手に入れようとしています。

 やはり私も弁護士に依頼しなければ相続金を受け取れないのでしょうか?

 独自で依頼して受け取れる方法はないのでしょうか?ほったらかしにしたらどうなるのでしょうか?

 教示お願い致します。

(positive)







【通常の場合の預貯金の分配手続き】

 遺産の中に預貯金がある場合、その支払いを受けるためには、通常の場合、

①法定相続人が誰かがわかる被相続人が出生以降の除籍や戸籍謄本を提出する。

②各金融機関の定める相続人代表者選定届けを出す(各相続人の実印を押捺し、かつ印鑑証明書の添付が必要です)。

ことが必要です。

 この場合にはその代表相続人に指定された人が代表で預貯金の払い戻しを受け、他の相続人に渡すということになります。
(ただ、この手続きは金融機関により異なりますので、予め、どのような手続きが必要かを当該金融機関に確認しておく必要があります)



【相続人が預貯金の分配のための訴訟を起こす理由】

 遺産に預貯金があった場合、各相続人がその法定相続分に応じた預貯金額を相続で取得します。

 しかし、相続人の意見が一致せず、代表相続人が決定できない場合、自分の法定相続分に応じた預貯金を払ってほしいと金融機関に申し出をしても、金融機関がこれに応じることは少ないです(金融機関の中には他の相続人に支払っていいかどうかの質問状を出し、他の相続人が同意する場合には支払ってくれるところもありますが)。

 金融機関としては、例えば《ある特定の人に預貯金を相続させる》などという遺言状があった場合、その相続人から抗議をうけることも想定しておく必要があります。

 そのため、金融機関は、各相続人に裁判をしてもらい、裁判所の判決を出してもらえば何の心配もなく支払いができるようになります。

 これが金融機関が裁判を求める理由です。

 なお、金融機関としては裁判があったことを他の相続人に知らせる手続きをとっていますが、これはその裁判での請求に異議がある人は申し出てくださいということを知たせるためです。



【あなたのとるべき対応】

 訴状のコピーなどがあなたに送付されていると思います。

 あなたとしてはその内容を確認する必要があります。

 今回は当事者参加の申し出書という書面が来たようです。

 これは請求しているお母さんや弟さんがそのような書面送付手続をしたのか、あるいは金融機関がしたのかわかりませんが、訴訟で請求されている内容に異論がないようなら、訴訟に参加するためにあなたご自身で裁判所に出頭し、異論がないことを主張されるといいでしょう

 そうすれば、裁判所としては請求の内容に従って、金融機関にお母さんと弟さんに対する支払いを命じるだけではなく、あなたの分についても支払いを命じるようにする手配をするか、和解で支払いをしてくれるような手続きをしてくれるでしょう。

 なお、請求に異論があれば早急に弁護士に相談された方が良いでしょう

(弁護士 大澤龍司)
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17:49 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

第三者が支払った保険金掛金と相続放棄【Q&A No.469】

2015/09/29



 Bが死亡して、Bの相続人Cが相続を放棄しました。

 Cは、Bの生命保険金500万円を受け取りました。

 その保険金の掛金約200万円は、BやCではなく、Aが支払いました。

 Aは、Cから200万円を請求することはできないでしょうか。



関連記事

  相続放棄 生命保険


【ご質問詳細】

 債権者Aは、債務者Bの契約した生命保険について特約を結び、当初より死亡時まで保険料約200万円を支払った。

 受取人Cは相続放棄後、保険金500万円を死亡日に請求、14日後に受け取った。

 Aは保険証券を占有し質権も設定したが、保険会社には通知しなかった。

 保険会社には請求できなくとも、受取人から払い込んだ保険料200万円相当額は請求できないか。ご教示ください。

(asakatsato2)







【相続放棄と生命保険金の受け取り】

 Aは、本来の契約者であるBが支払うべき生命保険契約の掛け金を立替払いしているのですから、AはBに立替えて支払った分の金銭の返還請求ができるはずです。

 ところで、Bが死亡すると、Bの法定相続人はBの債務を引き継ぎます。

 しかし、相続放棄されると、債務を引き継ぐ人が不在になり、債権者Aはその債務の支払いを求めることができなくなります。



【相続放棄しても生命保険の請求はできる】

 生命保険金は遺産ではないというのが裁判所の考え方です。

 保険金は、相続とは関係なく、生命保険契約に基づいてCが独自に取得するものですので、受取人Cとしては相続放棄をしても、保険金を受け取ることができます(Cとしては生命保険金を受け取ることはできるが、債務を負わないということになります)。

 不当利得ではないかと思われる方もおられるかもしれません。

 しかし、Cとしては保険契約に基づき、保険金の受領をする権利を有しており、不当利得にはなりませんので、債権者AにはCに対する返還請求権はありません。



【質権設定の通知等がない場合は打つ手がない】

 質権を設定した今回のケースであっても、保険会社に質権設定の通知をしてなかったため、今回はすでに生命保険金が支払われてしまっています。

 これによって、質権の目的物(目的債権)であった死亡保険金債権は消滅しています。

 したがって、現段階で、質権を受取人に対して主張することはできないという結論になります。

(弁護士 大澤龍司)
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17:31 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★亡弟の預金を母が法事の費用に使ってしまった【Q&A No.466】

2015/09/11



【ご質問内容】

 私の母のことで相談させていただきます。

 13年前に亡くなった弟の預金、約50万円を銀行で相続手続きをしないまま、弟の法事や、弟の友人の冠婚葬祭の費用に充てる為に引き出していたことが分かりました。

 約10万円を使い、残金は40万円の様です。

 このような場合、今後どのような手続きをすれば良いのか。

 また、母に対し罰則等はないのか心配しております。

 ご教示の程宜しくお願い致します。


記載内容

  不正出金 法定相続分 親族相盗例

(ななこ)







【息子の死後にその預金を引き出した母は処罰されない】

 被相続人である息子(弟さん)の死亡した後に、そのお母さんが遺産である預貯金を引き出した場合、窃盗等の犯罪が成立しますが、刑法で親族間の窃盗は処罰しないと定められていますので、お母さんが処罰されることはないでしょう(この点については過去のブログ【Q&A №389】不正出金による窃盗罪は成立するかに詳しく記載していますのでご確認下さい)。



【今後、遺産分割協議をする】

 今回の質問では、相続関係が不明です。

 お弟さんに配偶者(妻)がいるのかどうか、また、子がいるのかどうかが明らかではありません。

 もし配偶者や子がおれば法定相続人になりますので、その人らの間で遺産分割協議をすることになります。

 法事の費用は相続費用ではありませんので、お母さんが相続人でないとした場合、他の相続人はお母さんが引き出した50万円の返還を求めることができます。

 ただ、そのうち、10万円は弟さんの法事費用ということであれば、その分を除外して残額を返還してもらうという解決もあり得ますが、この点も含め、法定相続人間で遺産分割協議で解決するべき事項でしょう。

 お母さんが法事費用に支出したということのようですので、弟さんには配偶者も子もいないということかもしれません。

 その場合には、お母さんが直系尊属として法定相続人になりますし、お父さんが生きておられるのであれば、お母さんとお父さんの間で遺産分割の協議をすることになります。


(弁護士 大澤龍司)
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いらない山林を放棄できないか【Q&A №462】

2015/08/26



【ご質問のまとめ】

いらない山林の固定資産税を払わないで済むようにする方法はありますか?


記載内容

 山林 固定資産税 放棄


【ご質問内容】

親父が出身地の山林の一部の共有者の一人となっています。

親父は十数年前に亡くなっていますが、母親に固定資産税の請求がわずかな金額ですが毎年あります。

なにも所有メリットもないのでこの権利を放棄したいのですが、どのような手続きをとれば良いのかまた仮に弁護士事務所に依頼した場合費用はどれくらいかかるのか教えて下さい。

(よっちゃん)





【所有権の放棄はできない】

 私は多くの相続案件を扱ってきましたので、今回の質問と同様のケースで悩んだことがあります。

 所有権を放棄できたらいいのですが、そのようなことはできません(ブログ【Q&A №273】もご参照ください)。

 所有権放棄をする場合、他の相続人(共有者)の持ち分が広がります。

 そのため、放棄の登記をするには他の相続人の同意が必要です。

 しかし、放棄したいような不動産は他の所有者ももらいたくない場合が多く、放棄登記に協力できないというのが実情です。

 昔と異なり、山林や農地は買い手がほとんどありません。

 特に相続人が故郷を出たのち、故郷にある土地が遺産分割の対象になった場合、どの法定相続人も田舎の土地がいらないということで引き取り手がいなくて困るケースがあります。



【解決方法として考えられるのは・・】

 他の共有者がいるのであれば、その人に不動産を買ってもらう方法があります。

 場合によりば無償(要するに贈与)で譲り受けてもらう場合もあります(譲受人から登記費用も出してくれといわれたケースさえあります)。

 他の共有者がいらないというのであれば、地元の人に無償あるいはそれに近い値段で不動産を売却する方法があります。


【弁護士費用について】

 法律的には、共有物については共有物分割調停という手続きがあります。

 これは共有状態を解消してほしいということを裁判所に求めるものです。

 他の共有者を相手に訴訟をしますが、他の共有者が土地を取得する意向を示さないのであれば、結局は《共有物を競売して、その代金が持ち分に応じて分割する》という判決が出ます。

 しかし、競売の手続きをするためには90万円から100万円の予納金(競売手続費用)を裁判所に納める必要があります。

 次に競売手続きが開始しても、(おそらく)買受申し出はないことがほとんどでしょう。

 そのため、このような訴訟を受任する際、値段が決めにくいですが、私なら着手金25~30万円程度でしょうか。

 むしろ、私なら、競売されても競落される見込みがないようなら事件を受任しないということになるでしょう。

 もし受任するという弁護士がいるのであれば、着手金をできるだけ少なくしてもらい、売却できたら報酬を多額にするという契約で対処されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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★20年以上前の不正出金【Q&A №456】

2015/07/15




【質問のまとめ】

17年前に亡くなった祖母の遺産であったはずの預貯金から、不正出金したと思われる伯父の妻からお金を取り返すことはできますか?


記載内容

  不正出金 生前贈与 時効


【ご質問内容】

 17年前に亡くなった祖母の遺産のことでご相談します。

 祖母は戦死した祖父の遺族年金受給し、亡くなる3年前に施設入所(世帯分離)。

 共同相続人の伯父は7年前に他界。

 母は現在、障害のため出廷不可。

 先日、伯母(伯父の妻)より祖母の郵貯の残高証明が送られてきました。

 残額は247円。

 手紙には、以下の主張が書かれておりました。

1.祖母の入所前に、私に通帳と印鑑を渡した。生前だから法的に問題がない(公正証書も通帳もなく、使途不明。)

2.私の父の借入書が残っていたため、それで相殺する(伯母の誤認識で完済済み。)

3.当時母と私に預金があるため、相続は不要

 3回忌の連絡すらなく、今回初めて生前贈与の話を聞きました。

 伯母は表見相続人であり、真正相続人である母の相続権を侵害しているのではないでしょうか?この内容は、相続権回復請求できるのでしょうか?

 自身が不正を働いている事実をきちんと認識して情報を開示し、分割協議に応じてもらうにはどうしたらよいでしょうか?

 祖母が入所する前に金額は1600万程度あったそうです。

 伯母は我が家の三文判を自分で購入していました。勝手に委任状を作成されたのか、農協の口座も解約されていました。

 伯母の父は出征せず、戦争で苦労していません。生涯一度も働いたことのないのに、母に祖母が亡くなったら金をとりに来ると罵ったそうです。

 お知恵を拝借したく、どなたかお願いします。


(hiro)







【相続回復請求はできない】

 相続回復請求ができないかという点にお答えします。

 法律で相続回復請求権が定められています(民法884条)が、この権利は戸籍上では相続人だが、実際は相続人でない人表見相続人といいます)が遺産を引き継いだ場合に、本当の相続人真正相続人といいます)が引き継いだ遺産を返せという権利です。
例えば、被相続人である養親の同意もなく、勝手に養子縁組届出をした養子が遺産を全部取得した場合、他の相続人(例えば被相続人の兄弟)から遺産を返せという請求をする権利です。

 今回の質問の場合、伯母さんは戸籍上の相続人ではありませんので、遺産を不正に取得していたとしても相続回復請求をすることはできません

 ただ、次にのべるような手段が考えられます。




【お祖母さんに無断出金で着服の場合は、消滅時効が問題となる】

 もし、お祖母さんの生前に、伯母さんがお祖母さんから預かった預貯金通帳から無断でお金を出金し、着服したというケースで考えてみます。

 この場合、お祖母さんには伯母さんに対する不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権が発生します。

 お祖母さんが死んだ場合には、これらの請求権は法定相続人が法定相続分で相続します。

 お祖母さんに配偶者はなく、子が叔父さんとあなたのお母さんだけだとすると、お母さんの法定相続分は2分の1であり、あなたのお母さんは伯母さんに対する返還請求権や損害賠償請求権の2分の1を相続で取得したことになります。

 ただ、お祖母さんの死亡したのが17年前のことだとすると、伯母さんの着服は更にそれ以前のことになりますので時効で消滅しているかどうかが問題となります。

 不当利得返還請求権であれば消滅時効は10年ですので、既に時効で請求できません。

 そのため、請求するとすれば不法行為に基づく損害賠償請求でしょう。

 この場合は着服という不法行為があった日から20年間で時効になりますので、着服行為から20年以内であれば請求が可能です。




【お祖母さんが生前贈与した場合】

 通常、多額の生前贈与があった場合には、遺留分減殺請求をすることができる場合が多いです。

 ただ、遺留分減殺請求権は、相続開始の時から10年を経過したときは消滅してしまいますので、本件の場合は、減殺請求はできないという結論になります。





【現在、するべき作業は何か】

 以上に述べたように、相続回復請求はできませんし、遺留分減殺請求もできません。

 そのため、法的に請求をするとなれば、不法行為に基づく損害賠償請求しかありません。

 伯母さんがいつ着服したのか(この点は時効に関連します)、また、どこの金融機関のどの支店からいくらを出金したのか、果たして伯母さんが取り込んだといえるのか(これらのの点は不法行為の証明に必要です)も確認し、その裏付資料も入手しておく必要があります。

 これらの確認のためにはお祖母さんの金融機関に問い合わせをする必要がありますが、10年以上経過した分については多くの金融機関が関係資料を処分していることも多く、その点の解明ができない可能性も高いでしょう。





【分割協議に応じてもらえるかどうか・・】

 本来ならば、伯母さんが遺産総額を明らかにし、着服した額も明らかにしてくれればいいのでしょうが、現実問題としてはそのような対応をすることは期待できないでしょう。

 結局は前項に述べたように証拠を示して、追及していくしかないということになるでしょう。

 ただ、いずれにせよ、多くの法的な問題点があり、また、資料収集の必要性もありますので、できれば相続問題に詳しい弁護士に相談し、どのような手段が取れるのかを確認されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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14:34 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

受取人が死亡した生命保険は誰のものか【Q&A №453】

2015/07/08

受取人がすでに死亡している場合、生命保険は誰のものか?



【ご質問内容】

 質問いたします。

 先日亡くなった母の生命保険の受取人が父になっていました。

 父は、33年前に亡くなっています。

 基本契約の保険料払い込み期間(10年)が昭和58年5月17日で終了しました。

 父が亡くなったのは、その三か月後でした。

 以降、終身特約の保険料は平成27年4月分までの33年間、長男である私の銀行預金から支払ってきました。

 特約の保険料は年額11,550円で、支払い合計381,150円です。

 配当金は死亡保険金25万円を加えて2,139,645円です。

 この保険金は他の法定相続人と分割する対象になるのでしょうか。

 分割する場合、2,139,645円―381,150円=1,758,495円÷法定相続人数でいいのでしょうか。

 よろしくお願いいたします。


記載内容

  生命保険 受取人 死亡

(ズボラマン)








【契約条項の確認が必要です】

 生命保険は保険会社と保険加入者との契約です。

 そのため、保険の受取人の方が被保険者より先に死亡し、受取人が変更されないままに被保険者が亡くなったような場合に、誰に保険金を渡すかについては、契約で決まることです。

 保険契約をした場合、小冊子を渡されますが、これは約款(やっかん)といい、この中に保険契約の内容が記載されています。

 この約款の中に今回の質問のような場合について、保険金を受け取る権利が誰にあるかということが記載されていますので、確認されるといいでしょう。

 なお、ほとんどの場合、死亡した受取人の法定相続人それぞれが《平等の割合》で取得すると定められているはずです。

 もし、その約款がないというのであれば、保険会社に事情を説明して、約款をもらわれるといいでしょう。



【原則は法定相続人が同じ割合で取得する】

万一、約款で決まっていない場合には、法律で決定することになります。

保険金請求権については最高裁の裁判例で遺産ではないとされています(【Q&A №298】生命保険が遺産に含まれる場合とは)ので、民法で定められた法定相続分に従って相続するということにはなりません。

保険法第46条には「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる」と定めています。

この条文では相続人にどのような割合で相続されるのかは記載されていませんが、最高裁の判決では各相続人が平等の割合で取得するものと判断しています(最高裁:平成5年9月7日判決。なお、この裁判例は旧法である商法676条2項に関するものですが、現在の保険法にも適用されます)ので、約款に何らの記載がない場合には、各法定相続人が平等の割合で取得するという結論になります。



【あなたが支払った分の扱い・・立替金返還請求】

あなたは33年間で計38万円を支払っています。

この支払いは、本来、保険契約者であるお母さんが支払うべき分です。

それをあなたが支払ったのであれば、お母さんの保険料を立替支払いしたということになりますので、お母さんに請求する権利があると主張され、他の相続人の同意を得て、保険金から相殺されることに同意してもらうといいでしょう。

ただ、このような請求権は10年で消滅しますので、他の人がこの点を知っておれば、法律的には10年分しか相殺できないことになります。

なお、特別寄与で請求できるのではないかという可能性もあります。

特別寄与なら時効は関係ありませんが、ただ、保険金は遺産ではありませんので、そもそも特別寄与制度が利用できるのかという大きな問題点があります。

いずれにせよ、あなたが掛け金を支払い続けていたことにより、保険金が出たということは事実ですので、相続人にその点を了解してもらい、その分を保険金からもらわれた後、残額を法定相続人で平等分配するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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16:26 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続不動産の時効取得はできるか【Q&A №449】

2015/06/02



【質問まとめ】
10年前に父がなくなったとき、父の不動産について

「いらない」

と言って相続放棄したはずの姉が

「不動産を売って法定相続分の金をよこせ」

と言ってきました。

私は、土地建物を時効取得したと主張できるでしょうか



記載内容

  長年 時効取得 


【質問詳細】
 父が死んで10年たつので、父名義の土地、建物の名義を私名義に変えようと思って、 姉にいうと「家を売って法定相続分の金をよこせ」というのです。

 父が死んだ後、父の貯金を姉と私2人で200万円づつ分けました。

 それで、その時、姉は「他の財産の家や土地はいっさいいらない」といいました。

 土地、建物の取得時効は10年だとおもいますが、姉は父が死亡する30年ぐらい前に結婚して遠方にすんでおり、父死亡後は私1人で、土地、建物を占有していました。

 この場合、土地、建物の取得時効を主張して時効取得時効による登記ができるでしょうか?

 裁判の場合、姉を相手におこすのでしょうか?

 善意は、他に相続人がいない場合ということだと思うのですが、姉は土地、建物の相続を放棄していましたので、私は、他に相続人がいない場合だと思っていました。

 相続人は私と姉2人です
(hukuda)





【相続放棄ではなく、遺産分割協議の話である】

 相続放棄とは、家庭裁判所に対して、お父さんの遺産は全て相続しませんという申し出をすることです。

 お姉さんが《家や土地は一切いらないとあなたに言った》ということは相続放棄ではありません

 法定相続はすることを前提として、どのように遺産分割をするのかということであり、それは遺産分割協議の話であるとご理解ください。




【他の財産はいらないという発言の意味】

 遺産分割する場合、通常、法定相続人間で《遺産分割協議書》という合意書を作成し、実印を押捺し、印鑑証明書を添付します

 遺産は多額の財産の分割ですので、分割に同意するという意思に間違いがないこと、分割内容も記載したとおりであるということ等、間違いや誤解を防ぐという配慮から書面化されるのです。

 口頭(会話)等だけで遺産分割協議が絶対に成立しないというわけではありませんが、遺産分割という重大な問題を口頭だけで処理するということが裁判で認められることは極めて可能性が低いということを理解する必要があります。

 裁判になると、遺産がいらないという発言があったことについてあなたの方が証明する必要がありますが言った、言わないの議論になりかねません。

 また、仮にそのような発言があったと認められても《そのような気持ちもあったというだけで、絶対にいらないと言ったわけではない》と反論されることも多く、裁判になれば必ずしも有利な判決が出るとは言えないでしょう。




【取得時効の成立について】

 土地や建物については、占有が長期間続くと時効取得が認められます。

 しかし、相続の場合に取得時効が認められることはむずかしいです。

 その理由は次のとおりです。

 時効取得が成立するには多くの要件がありますが、その一つに自主占有》の開始という要件があります。

 これは取得時効を主張する人が、その家の全部の所有者であるという外形を整えることです。

 質問のようなケースでは、あなたがお父さんの家に住んでいるだけでは不十分です。

 《全部が私の家である》ということが外見的にわかるような状況が必要です。

 説明をしにくいのですが、遺産分割協議が整い、単独登記をし、かつ単独で占有をし始めたが、実は分割協議は無効であったというようなケースがこれにあたります。

 そこまで行かなくても、少なくともあなたがお姉さんに《この家、私が全部の所有者になりますよ》ということを宣言する程度の事実が最低限、必要でしょう。



 また、本件では、期間の点でも時効の成立は難しいです。

 不動産の取得時効は《善意無過失》で10年、それ以外は20年です。

 《善意》とはこの家が自分の《単独の所有》と信じ、そう信じたことがもっともだというような場合ですが、本件の場合には、お姉さんに持ち分があるということは明らかですので、善意にはならず、そのため20年も経過していない現時点で取得時効の要件を満たすことはありません

 結局、取得時が成立する可能性はほとんどないと考えていいでしょう。




【どのようにして解決するか】

 以上に述べたように、法律的にはあなたの主張がとおることは少ないです。


 しかし、法律がすべてではありません。

《お父さんの面倒を見たのは私でしょう》と人情と義理をからめて攻め、

《お姉さんはあのときいらないと言ったのに・・》と足元をすくいつつ、最後の落としどころとしては少し譲って

《半分づつではなくて4分の1くらいでどうか》とか、あなたの人間力を総動員してお姉さんを説得していくといいでしょう。
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★相続放棄と遺留分【Q&A №447】

2015/05/27
 


生前贈与を受けた人が相続放棄をした場合,特別受益はどうなりますか?

また,生前贈与を受けた人が相続放棄して,遺留分減殺請求をされた場合はどうですか?



記載内容

  生前贈与 遺留分 相続放棄 


【質問詳細】

被相続人(父)、相続人A(長女)B(次女)C(長男・末)がいます。

Aは生前に1,000万、B・Cは500万ずつ贈与を受けています。

父の遺産は現金500万、不動産1000万です。

Aは上記1,000万円の他に、父が生前の2年前にAの子二人(孫にあたる、共に成人)

に100万円ずつ生活支援のお礼としてお金を渡したこと、それ以前に色々な事象にて

お金(総額で2~300万円か)を貰っていたことを考慮し、遺産を放棄することにしました。

相続人BとCは父生前のA及び子に対する過大な贈与を受けたことが不満で、遺産1,500万円に各々の生前贈与(特別受益)を加算し、分配すべきと主張しています。

Aとして相続を放棄するのに、差額をB・Cに払う義務あるのですか?

併せてB・Cの遺留分について減殺請求権があった場合どうなりますか?



(goo)





【相続放棄すると特別受益の問題は発生しない

 Aさんが、お父さんの遺産について相続放棄をする前提で回答していきます。

 相続放棄をすると、Aさんは法定相続人ではなくなり、遺産分割の問題は発生しません。

 遺産分割はBさんとCさんとの間でするだけになります。

 特別受益は、遺産分割の際、法定相続人に生前贈与分などがある場合にその贈与分を遺産に持ち戻すという制度です。

 しかし、その生前贈与を受けた人が法定相続人でなくなれば、特別受益の問題は発生しません




【相続放棄しても遺留分の問題は発生する

 相続放棄をした場合でも、その人が多額の生前贈与を受けていたのであれば、他の法定相続人(正確に言えば遺留分権利者)から遺留分減殺請求を受ける場合もありえます


 例えば、生前に1億円の贈与を受けた人がいたため、遺産が0円であったような場合で、その贈与を受けた人が相続放棄をするケースを考えてみましょう。

 贈与を受けた人は相続放棄をしているのですから、特別受益の問題は発生しません。

 しかし、遺留分は法定相続人にある程度の遺産(法定相続分の半分程度)だけは渡るようにしようという制度ですので、生前贈与を受けた人は請求に応じて、遺留分に該当する遺産を渡さなければならないということになります。




本件のケースでは遺留分減殺請求はできない

 遺産は法定相続人AさんとBさん、Cさんに生前贈与計2000万円遺産が計1500万円その他に200万円と2~300万円の生前贈与分があるとの前提ですので、遺留分計算の基礎となる遺産額は4000万円になります。

 Bさんとしては生前贈与分500万円と今回の遺産分の半額である750万円の1250万円がお父さんの遺産から入ることになります。

 Aさんの相続放棄によって、Bさん及びCさんの遺留分は本来の法定相続分2分の1の半分(4分の1)になっています。そうするとBさんCさんのそれぞれの遺留分は1000万円となります。


 (Bさんの)得た額    (Bさんの)遺留分 


 遺留分が侵害されていませんので、Aさんが遺留分減殺請求をされることは法的にはないケースでしょう。
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14:53 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

父の言葉を代筆した遺言書の効力【Q&A №446】

2015/05/22




口頭で言ったことを、ほかの人が代筆して文書にして、

本人が自筆で署名押印した場合、将来の遺産分割協議で有利になりますか?



記載内容   遺留分 


【質問詳細】
 義父より自身が死んだ時のために相続人間で争い事が起きぬよう残しておきたいことがあるので、協力して欲しいと言われました。

 相続人(子)はA男・B男・C子で(私はC子夫)、C家が父を看ています(A・Bとソリが合わないことから)。

 父は今までにC家に対して自身の生活支援のお礼として事ある度に幾らかのお金を渡してきました。

 家屋購入資金(C子夫名義)、孫の入学祝いや就職祝い、孫の結婚祝い、等です。

 A家とB家にも相応にお金を渡していましたが、C家までには至らなかったようです。

 それがA・Bとして不満であり、大きな騒動になりました。

 C家は相続人であるC子が直接貰い受けていないお金もあるが、総括してA・Bより多くのお金をもらっていることから、父没後の遺産を放棄するつもりです(A・Bより色々理由つけられて遺留分を請求してくることが予想されることから)。

 これを義父に話したところ、「遺産は平等に受けろ。A・Bは今まで何も支援してくれない上に渡した金額差に文句を言っているだけ。二人が自分にしたことを明確に列記し、何で差がついたか、今まで幾ら渡したかを言うので、自身の宣言書として書き残して欲しい」とのことです(父は口は達者ですが体力が衰え書き事ができない)。

 内容はこれから考えるとの事ですが、とりあえず私がそれを聞き代筆し、父自筆で署名捺印した書面について将来の相続協議に有利となるのでしょうか?


(Noppo)





【それは遺言書ではない】
 
 質問者の方はおわかりのようですが、念のために記載しておきます。

 お父さんが考えた内容を、あなたが《とりあえず私がそれを聞き代筆し、父自筆で署名捺印した書面》は遺言書にはなりません

 遺言書は遺言者が全文を自分で記載し、日付及び署名・捺印をしたものです。

 お父さんの意思に基づいたとしても、その内容をあなたが記載したのでは遺言書にはなりません。



【お父さんの意思を書いた文書は相続協議に役に立つか】

 遺言書ではないにしても、死亡された人の意思がはっきりしている場合、それが遺産分割協議に役立つかは場合により異なります。

 法定相続人間でお父さんの意思についての共通了解があり、しかも法定相続人の間及びお父さんと法定相続人間で人間関係が円満な場合には、お父さんの意思が尊重される場合が多いでしょう。

 しかし、本件ではお父さんとあなた以外の法定相続人との関係も、法定相続人間の関係もぎくしゃくしていることを考えると、あなたが質問で記載したような書面を残しても、相続のためには役立たない可能性が極めて高いでしょう。




【相続放棄と遺留分】

 あなたは相続放棄をするということもお考えのようです。

 おそらく相続放棄をし、相続人にならないことによって、相続問題に巻き込まれないということをお考えになっていることと思います。

 あなたが相続放棄をするのであれば、あなたは相続人ではなくなりますので、法定相続分を前提とする遺産分割問題は発生しません

 しかし、あなたが生前に贈与を受けていたという事実はなくなるわけではありませんので、他の相続人としては、あなたに対して遺留分減殺請求をする可能性があります

 その場合、生前の贈与分は遺留分の算定の基礎財産に含まれることになります。

 相続放棄をしたからといって、遺産争いがなくなるわけではないということを理解しておく必要があるでしょう。




【遺留分減殺請求への対処が必要】

 本件では、遺産分割であれば他の相続人はあなたの特別受益を主張するであろうし、また、相続放棄をしても遺留分減殺をする可能性が高いです。

 そうであればあなたとしては、そのような事態に対処する方策を現時点で取っておく必要があります。

 そのような場合には、あなたとしては金銭を他の法定相続人に支払って解決することが多いです。

 その点を考えると、あなたとしてはお父さんから金融財産(預貯金等)をもらう内容の遺言書を書いてもらい、不動産等は他の法定相続人に渡すということで、将来の金銭支払いに対処するという必要があると思われます。

 いずれにせよ、具体的な金銭勘定がわかりませんが、この点については相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。

 なお、お父さんが遺言書をご自分で書けないというのであれば、公正証書遺言を公証人に作成してもらうという方法もありますので、この点も併せて弁護士と相談されるといいでしょう。

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11:43 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

90歳独り身の叔母の相続人は誰?【Q&A №444】

2015/05/20
 


 独身で、子供がいない人の相続人は誰ですか?

 その人の親も、兄弟も他界しています。



記載内容

  叔母 生涯独身 嫁ぐ 甥・姪 代襲 婿養子


【質問詳細】

叔母の両親(他界)、

兄弟は3人で

叔母と同居していた長男(夫婦共他界)、

長女(夫婦共他界)、

次女(今回他界した独身の叔母)

叔母は生涯独身で子供がおりません。

長男夫婦には婿養子(甥)と娘(姪)、

長女夫婦2人の嫁いだ姉妹(姪)

このような場合、法廷相続人は誰々となるのですか?


(まさ)





【法定相続人の決定方法】

 法定相続人には順位があります。

 まず、第1順位で、配偶者が相続人になります。

 今回の質問では配偶者も、子もいないということですが、

このような場合には両親(正確にいうと直系尊属)第2順位の法定相続人になります。

 ただ、両親も死亡されているということですので、

その場合には第3順位兄弟姉妹が相続人になりますが、

兄弟姉妹である長男及び長女も死亡されていますので、長男や長女も法定相続人にはなりません。




【本来の相続人が死亡しているが、子がいる場合は代襲相続する】

 長男及び長女は死亡されていますが、その人たちには子がいますので、その子が、長男及び長女に替わって法定相続人になります(これを代襲相続といいます)。


 今回の質問では、長男の娘(姪)とその夫(婿養子ということですので、この娘の夫は長男と養子縁組をしているという前提で説明していきます)が代襲相続で法定相続人になります。

 養子も子であることに変わりはありませんので、なんら問題なく相続ができます。

 また、長女の娘(姪)2人が代襲相続で法定相続人になります。

 この姪は2人とも嫁いでおられるようですが、嫁いでも長女の子である立場にはなんら変化がありませんので、当然、相続権があります。




【相続分について】

 結局、質問のケースでは、長男の子である姪夫婦及び長女の子である姪2人の計4名が法定相続人になります。

 なお、法定相続分は各人が4分の1づつになります。

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母の預金は夫婦の共有か【Q&A №441】

2015/04/10
  


 家族は父、母、兄弟3人です。

 母の面倒を父と三男で行っていましたが、 母の余命が分かった時に長男が母が父との老後のために貯蓄していた母名義の定期などを解約、また年金の一部を引出し全て持っていきました。

  一部は持っていかれる前に母から三男に贈与されていて手元にあります。

 ただし口頭での贈与です。

 お金までならともかく、面倒をみていた父と三男の嘘を言って母を不安にさせ、支配し父のもとから連れ去ってしまい、一ヶ月後に亡くなりました。

 その後遺言書がでてきて、全財産は長男に渡すとの内容でした。

 長男が書かせたものだと思います。

 母は生前全く仕事をしたことが無く、父の給与で生活をしていました。

 年金以外の収入はありません。

 もちろん父は母が貯金をしていたことはわかっていましたが、任せていたという気持ちもあり、正確な金額は分かっていなかったようです。

 母の貯めていたお金は、父との共有財産なのではないですか?

 とりあえず遺留分の意思を伝えたら、遺言書を元に三男が押さえていたお金の返却を求めて長男から提訴されています。

 なぜか父と次男もいっしょに提訴されています。

 逆に父がそのお金は相続以前に共有財産で遺産ではないのだから、返却を求める裁判を起こすことはおかしい事でしょうか?

 またこちらから提訴して、今訴えられている裁判の差止めを行うことはできますか?


記載内容

  夫婦 共有財産 遺留分減殺請求 持ち分 


(りんりんちん)





【遺産の範囲について】

 被相続人名義の遺産は原則、被相続人の遺産になります。

 したがって、被相続人であるお母さん名義の預金があれば、それはお母さんの遺産になります。

 今回の質問では、お母さんは専業主婦だったので、そのような預金をする金額を持っていたはずがないということですが、そのような主張をするのなら、お母さんの名義であるが、お父さんのものであるという点の証明が必要になります。

 過去に経験したケースでは、お母さんが専業主婦であったが、お父さんの会社の役員になっており、会社から役員報酬が出ていたケースがありました。

 このようなケースがあったことも考えると、お父さんの口座からお母さんの口座に金銭が移ったというような、お父さんの財産が移動したことの裏付け資料が必要になることも考慮に入れておくべきでしょう。






【夫婦の共有財産ではない】

 お母さん名義の預金を夫婦の共有財産と考えて、半分はお父さんのものであるということができないかという質問ですが、答えはノーです。

 離婚する場合には、夫婦のいずれかの名義であっても、婚姻期間中に夫婦が共同で作ったものとして、夫婦それぞれの名義の全財産を折半することになります。

 しかし、今回は離婚ではなく、相続ですので、折半という考え方はできません。
(もし、そのような考え方をするなら、お父さん名義の財産の半分はお母さんの遺産となるという結論になり、遺産の範囲が不明確になり、収拾がつかなくなります)




【生前のお母さん名義の預金の解約について】

 長男が、お母さんの生前に無断で預金の引き出しをしたというのであれば、お母さんは長男に対して不法行為による損害賠償あるいは不当利得返還請求をすることができます。

 しかし、すべてを長男にという内容のお母さんの遺言書が存在しているのなら、お母さんの請求権もすべて長男のものになりますので、他の法定相続人が返還請求をすることはできません。




【他の法定相続人がとるべき手段は・・】

 他の法定相続人がとるべき手段としては、まず、お母さんの遺言書の効力を争うという方法があります。

 お母さんが遺言書を書いた当時、十分な判断能力があったのかどうかを検討されるといいでしょう(相続ブログQ&A №423Q&A №301【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介》をご参照ください)

 次に、仮に遺言書が有効だとしても、他の法定相続人としては遺留分減殺請求をすることも考えていいでしょう。

 現在、長男は三男に対して生前贈与分の返還訴訟を提起したということですので、三男も弁護士に依頼することになるでしょう。

 他の相続人の方としても、相続に詳しい弁護士と相談され、遺言の有効性を争うメリットがあるのか、また、遺留分減殺請求をするのがいいのかを相談されることをお勧めします。

 なお、弁護士には長男との関係だけではなく、生前贈与を受けた金額次第では三男に対する法的処置の可能性もお聞きになるといいでしょう。

 最後に、あなたが長男に訴訟を起こしても、長男の訴訟が差し止めされることはありません。

 ただ、あなたが提訴したことによる裁判所の関与により、全体としての遺産問題が和解で終了することはよくありますし、事案によれば、そのような解決が一番望ましいこともありうることも申し添えておきます。
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12:47 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母が支出したリフォーム費用と相続【Q&A №437】

2015/03/19
  


 およそ3000万円で建築した家のリフォームを検討しています。

 持分は、家族4人全員の共有名義です。

 持分は、父4、母1、長男2、長女(私)3です。

 ただ、父は、平成19年に亡くなりましたが、相続登記はまだしておりません。

 おそらく、長女が相続する予定です。(または、長男長女で相続)

 リフォームは、増築は行わず、お風呂、トイレ、キッチンのリフォームを約500万円で行う予定です。

 このリフォームの費用を、母が全額負担した場合、将来、母からの相続の時に相続税に組み込まれますか?

 又は、リフォーム時、贈与税が掛かりますか?

 母が、負担した金額分、母の持分を増やす必要があるのでしょうか?

 私は、共有名義者の1人が負担するのだから問題無いと思っていたのですが、これは間違いでしょうか?

 父からの相続登記はリフォームより前にした方がいいのでしょうか?もちろん、本来なら当然、すでに相続登記していないといけないものなのですが・・

 教えてください。

 よろしくお願いします。


記載内容

  リフォーム 贈与 請求権 特別受益


(いち)





【リフォーム代金の負担と相続との関係】

 共有している自宅をリフォームする場合、その費用は共有者がその共有持ち分に応じて負担するべきものです。

 そのため、その代金をお母さんが一人で負担した場合、他の共有者との関係では次の①か②にいずれかに該当します。

①他の共有者は、お母さんに対して持ち分に応じた負担金を支払う義務を有する。

  この権利は、母さんから見て請求権となりますので、お母さんの債権として、その遺産の一部を構成します。

②お母さんは、他の共有者にリフォーム代金の返還を求めないというのであれば、各共有者はその持ち分に応じた額のリフォーム資金の《贈与》を受けたということになります。

 この場合には、その贈与分が法定相続人にとっては《特別受益》になります。(特別受益については【コラム】生前贈与を受けていたらご参照)。



【贈与か否かの判断基準】

 前項の①か②かは次の基準で判断していいでしょう。

 お母さんがリフォーム代金を全額だすが、そのとき、他の共有者に返還を求めないということであり、他の共有者がそれでよいというのであれば、それは贈与です。



【贈与税がかかるかどうか】

 お父さんが死亡されているということですので、相続が発生しています。

 お父さんの持ち分が10分の4ですので、法定相続であれば、お母さんが10分の2を相続し、長男とあなたが10分の1を相続することになります。

 その結果、従前の持ち分と合算して、お母さんは10分の4、長男は10分の3.あなたは10分の4の共有持ち分となります。

 この前提でいうと、お母さんが500万円を出した場合、あなたとしてはその10分の4の200万円分のリフォーム資金の贈与を受け、長男さんは150万円の贈与を受けたことになります。

 贈与の基礎控除は110万円ですので、あなたとしては90万円に対する贈与税の支払いが必要ですし、長男さんとしては40万円分に対する贈与税の申告が必要です。




【お母さんの持ち分を増やす必要はありません】

 この代金支出は、法的にはお母さんからの贈与か、あるいはお母さんの他の共有者に対す請求債権という形に変わりことになりますが、所有権の持ち分にはなんら影響を与えません。

 そのため、お母さんの持ち分を増やす必要はありません。




【お父さんの相続登記とも関係がありません】

 前項に記載したように、リフォームすることと家の所有権(及びその登記)とは何ら関係がありません。

 そのため、相続登記も急いでする必要はありません。
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17:39 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

大叔母から預金の引き出しを頼まれた【Q&A №427】

2015/01/26



 私の母の叔母は高齢で一人で住んでいました。

 その叔母が脳梗塞で入院しました。

 私は今叔母の面倒を見ています。

 叔母は、私に私に委任状を書いたから、代理人として叔母の普通預金と定額預金のお金を受け取って病院の支払いなどに使ってほしいと言います。

 叔母の脳梗塞はさらに進んでいます。

 普通預金と定額と合わせるとかなりの額です。

 叔母に何かあった場合、相続人は高齢で意識のはっきりしていない母になります。

 私が叔母の委任状で代理人としてその貯金を受け取り、病院の支払いや、叔母の葬儀に使ってお金が残った場合、母にそのお金を返さないと税金もかかってくるでしょうし、叔母が言うように受け取るべきか迷っています。


記載内容

  代理人 財産管理 脳梗塞

(あきら)





【もらうのか、預かるのか?】

 「委任状を書いたから、代理人として叔母の普通預金と定額預金のお金を受け取って病院の支払いなどに使ってほしい」とお母さんの叔母さん(あなたからすれば大叔母)が言っておられるようですが、大叔母さんは払い戻しを受けた金銭をあなたにあげる(贈与)気持ちなのか、それとも預かって欲しいというだけなのでしょうか。

 その点に関する大叔母さんの意志をはっきりと確認しておく必要があります。

 質問からははっきりとしませんので、場合分けして回答します。




【預かる場合の対処法】

 大叔母さんとしては、あなたに財産をあげるのではなく、管理してほしいということであれば、あなたは金銭の保管者になります。

 ただ、金銭についてはトラブルがつきものです。

 大叔母さんの預貯金を全部解約して、あなたの名義で預貯金するような場合には、《大叔母をだまして財産を取り込んだ》などという影口が聞こえそうです。

 法律以前の問題ですが、もしあなたの名義の預金口座を作るにしても、必要最小限の金額を移動するだけにするのがいいでしょう。

 どうしても預貯金全額を預からなければならない必要性があるというのなら、あなた自身の口座とは別に、大叔母さんから預かった分だけの独自の口座を作り、その分からは自分の用途に使わないようにする・・大叔母さんから預かった財産とあなたの独自の財産をはっきり区別する必要があります。

 なお、大叔母さんが認知症など、意思能力が乏しくて、《金銭の管理ができないような状態》だから預からなければならないというのであれば、成年後見人の選任を考えるべきでしょう。




【預かった場合の相続との関係】

 預かっている最中に、大叔母さんが死亡した場合には相続が発生します。

 その場合には、あなたが預かった金銭の残金は大叔母さんの相続人(あなたのお母さん)に渡すことになります。

 預かっているだけであれば、預かった金銭は相続人に渡すということになるだけですので、相続税の問題は発生しません。

 ただ、あなたの名義に移したということで、贈与があったのではないかと税務署から疑われることも考えておくといいでしょう。

 そのため、預かったということをはっきりとさせるために、金銭管理の方法や解約、返還等についてきっちりとした契約書を作成するとともに、あなたの分とは異なる独自の財産であるとして管理をしておく必要があります。




【もらう場合は贈与税がかかる】

 もし、大叔母さんの意志があなたにあげるというのであれば、贈与になります。

 病院の費用を支払うという負担付の贈与となりますし、更には大叔母さんの面倒を見るという負担付の贈与も考えられますので、その点についても大叔母さんの意志をはっきりと確認する必要があるでしょう。

 贈与の場合には贈与税の申告が必要ですが、法定相続人に対して金銭を渡す必要はありません。

 但し、法定相続人から遺留分減殺請求されることもありますので、ご留意ください。

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13:11 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

生前に引き出された預金と遺言【Q&A №426】

2015/01/23
 


 親が死んで、遺言書が見つかって、3人子供がいて、私が全財産もらうことになったのですが、親の財産は貯金だけで不動産その他ありません。

 ところが、貯金をみたら、すでに、親が死亡する前に1000万円ぐらい全額ひきおろされてました。

  姉が、親と一緒にきて、おろしていったそうです。

 ところが、そのお金はあねが管理するとかいって、親にわたさずに自分の預金口座に入金してしまっており、電気代とかは そこから引き落とししてたようです。

 しかし、お金の大部分はのこっているはずなのですが、 姉はじぶんのものにしてしまいました。

 この場合、どう対応したらいいのでしょうか?



記載内容

  全財産 遺言 死亡直前 贈与 預け金 法定相続人への特別受益

(fandango)





【お金を預けたのか、贈与したのかにより結論が異なる】

 親御さんと一緒に行って預金1000万円を引き出したというのですから、預金の引き出し自体は親御さんが納得されていたのでしょう。

 ただ、その後、その金銭をお姉さんが保管することになったことをどう見るかという問題があります。

 親御さんの電気代等はその口座から引き落とされていたという点から見れば、お姉さんに管理してもらっていたということも考えられ、親御さんがお姉さんに1000万円を預けていたということになる可能性があります。

 しかし、お姉さんの口座に入金している点からは贈与と考えられる余地も出てきそうです。

 結局は預金引き下ろし時点でどのような話が親御さんとお姉さんとの間であったかで決まることであり、質問からはどちらとも断定することはできません。

 以下のように場合分けした回答をします。




【預け金の場合・・全額、返還請求できる】

 親御さんがお姉さんにお金を預けていたのであれば、親御さんはその預けた金銭の返還を請求できます。

 遺言書であなたが全財産を相続することになったのですから、預け金の返還請求権はあなたに相続されます。

 したがって、電気代等で引き落とされた分を差し引いた残額を請求するといいでしょう。




【贈与の場合は、特別受益であり、遺留分請求の問題となる】

 贈与となる場合には、遺留分減殺請求で返還を求めることしかできません。

 遺言で全財産をもらうことになっていたとしても、親が死亡した当時、遺産が何もないのであれば、その遺言は役に立たず、あなたは遺産をもらえません。

 ただ、生前にお姉さんに贈与されており、あなたに遺産が全く来ない(あるいは少ししか来ない)場合には法律であなたに本来の法定相続分の半分を返還するように請求(遺留分減殺請求といいます)することができると定められています(民法第 1031条末尾参照)。

 法定相続人の特別受益については、時期を問わず、原則として遺留分に持ち戻しされます。

 今回のお姉さんの1000万円の贈与は遺留分減殺の対象になるでしょう。




【あなたとしては預け金と主張する方が有利である】

 以上の説明からお分かりのように、あなたとしては預け金として返還を請求する方が有利です。

 ただ、その主張が通るとは限りませんので、万一、そうでないとしても遺留分減殺請求をするという二段構えで対応する必要があります。

 なお、お姉さんが簡単にあなたの請求に応じるようにも思われませんし、預け金か贈与かという訴訟でしか解決できないような問題もありますので、早期に弁護士に依頼するということも選択肢の一つとされるといいでしょう。


《参考条文》
民法 第1031条 (遺贈又は贈与の減殺請求)


 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

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11:56 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父が横取りした祖父の預金と遺留分計算【Q&A №425】

2015/01/21



 8年前、母方の祖父が亡くなりましたが、亡くなる迄の10年間、母ひとりで介護をしておりました。祖父には、母を含めて、長男、長女と3人の子どもがいます(祖母は20年前に他界)。祖父が存命中(軽度の認知症があり施設に入所中)、父が祖父の預金に目を付け、自宅の新築に600万をつぎ込み、さらに、700万円の預金も母ではなく父名義に変更してしまいました。母の姉、弟との協議もなく母に詰め寄り、新居の建築費に流用・預金の名義変更をしてしまいました(結果として、母がそれを許してしまった)。叔母、叔父はこのことを知りません。祖父の死亡時には、残りの預金(祖父の入所費用預金)で母の姉、弟に200万円ずつ分け与えた次第です(少しでも姉弟に分けてやりたいという思いですが、母の取り分は100万円程度)。

 母はこのことで壮絶な苦しみを感じておりましたが、現在、意識がない状態で入院中です。この1300万円は、本来、母を含めた姉弟のものではないのでしょうか?また、母が私に生前分与としてこの100万円をもらいましたが、この100万円について、父が「祖父の墓じまいのための金額であり、すぐに返却しろ。お前のせいで墓じまいができない。」と返却を迫ってきますが、祖父の墓じまいの費用は、父が横取りした700万円の中でまかなうことになっていると母から聞かされていました。父に返却すると、自分のものにしてしまう可能性がありますが、この100万円は返却しないといけないのでしょうか?
 また、父が横取りした1300万円を母のものにしてやることはできないでしょうか?


記載内容

  横取り 祖父 預金

(キノコ狩り)


【お祖父さんの意志を無視したのであれば返還請求ができる】
 お父さんが1300万円の預金の引き出しを、被相続人であるお祖父さんに無断でしたのであれば、お祖父さんの法定相続人であるお母さんとしては法定相続分が3分の1ですので、不当利得または不法行為に基づき433万円の返還請求ができます。

【お祖父さんが認めたのであれが、返還請求はできない】
 いろいろな事情があるにしても、お祖父さんが最終的に贈与を了解したのであれば、贈与は有効であり、お祖父さんとしては返還請求できる余地はありません。
 お祖父さんが返還請求できないのですから、相続人であるお母さんとしても、お父さんに返還請求ができないことになります。

【遺留分減殺請求ができるかもしれない】
 ただ、民法には、法定相続人に、最低限度の取り分の遺産(遺留分)を渡そうという制度があります。
 これを使うと、本来の法定相続分の半分(お母さんの場合には6分の1)の限度で遺産を取り戻すことができます。
 ただ、遺留分減殺請求が認められるためには
①お父さんに対する生前贈与によりお母さんの遺留分が侵害されていること
②相続開始から1年を超える場合には、生前贈与の双方の当事者が「遺留分権利者に損害を加えることを知って」いたこと

が必要です(末記の民法の条文を参照ください)。
 上記①の要件については、質問からは、被相続人の預金としてはお父さんが使用した1300万円の他にどのような遺産があったのかがわかりませんが、仮に、他の預金が500万円だけであり、それ以外には遺産がなかったのであれば、次の通りの計算でお母さんの遺留分は300万円となります。
   計算式:(みなし)遺産総額・・1800万円(=1300万円+500万円)÷6=300万円
   ※注:生前贈与分は遺産に組み入れて遺留分計算をします。
 お母さんが100万円もらっているとすると、遺留分は差額の200万円になり、この分の限度で。お母さんの遺留分が侵害されていることになり、お父さんから返還してもらえる権利があるということになります。
 上記②の要件については、お父さんが贈与を受けたのは1年より前のようですので、その贈与の時点で遺留分権利者に損害を加えることを知っていたという事実が必要になります。
 当時、被相続人の遺産として、前記1800万円しかなかったということを、お父さんらが知っていたのであれば遺留分減殺請求が認められることになります。

【お母さんからあなたへの100万円の贈与の返還は必要ない】
 お母さんから受け取った生前贈与の100万円ですが、お母さんからの贈与ですので、あなたがお父さんに返還する必要はありません。
 お父さんが墓じまいのために必要だと主張しても、それはあなたに言うべきことではなく、お母さんにいうべきことです。お母さんとしては既に支払った1300万円で処理するようにお父さんに反論するとよいでしょう。


《参考条文》
民法 第1030条 (遺留分の算定)


 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

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内縁の妻への受取人名義変更【Q&A №422】

2014/12/26
 


 私は半年前に亡くなった父の娘なのですが、父は4年前に私の母と離婚してから一人暮らしをしており、その頃から付き合ったり、別れたりを繰り返していた彼女がいたみたいで、喧嘩をすれば私の母(父からすると前妻)のところへ戻ったり、仲直りすれば彼女の元へ行ったりというのを続けていました。そして、父が亡くなる1年前まではまだ私の母が生命保険の受取人だったのですが、亡くなる半年前くらいから急に住所だけを変えたりしていて、亡くなってから生命保険会社に電話したところ、父の生命保険は有効ではないとだけ言われました。何度聞いても受取人などは教えてもらえませんでした。私はその彼女が受取っているのではないかと勝手に思っているのですが、それを調べることは出来ないのでしょうか?また、もしも、その彼女が受取人になっていた場合訴えることは出来ないのでしょうか?

 葬式代も喪主も私がやりました。父が一人暮らししていた家の片付けも私と私の母がしました。その彼女は父が亡くなってから一切連絡はなく葬式にも参加していないし、お骨にさえ手を合わせておりません。本当に父は一人が嫌な人だったのでいつも彼女の言いなりのような状態でした。そんな彼女に生命保険を渡したくありません。
 何か方法はないのでしょうか?


記載内容

  内縁 生命保険 無断 変更

(みるく)


【法定相続人なら生命保険の調査は可能】
 あなたは法定相続人ですので、被相続人であるお父さんの契約していた生命保険の調査は可能です。
 ただ、あなたの質問には「生命保険会社に電話したところ、父の生命保険は有効ではないとだけ言われました。」「何度聞いても受取人などは教えてもらえませんでした。」と記載されています。
 電話だから教えてくれないというのかもしれません。
 あなたとしては、相続人であることを証明するあなたの戸籍謄本やお父さんの除籍謄本を用意し、文書で申し入れをしたとしても、回答してくれないのかどうかを、保険会社に再度、確認するといいでしょう。
 それでも回答してくれないというのなら、保険会社側に開示できない、何らかの事情があると思われますので、弁護士に生命保険の内容を調査するように依頼するといいでしょう。
 ある程度、弁護士費用が掛かりますが、弁護士に依頼すれば、お父さんの生命保険があるのかどうか、その受取人がどのように変遷したのか、又、保険会社が無効という内容など、プロである弁護士が保険会社に照会をし、確認をしてくれるでしょう。

【彼女を訴えることができるかはお父さんの意思能力次第】
 保険契約の受取人を契約者の意思で変更することは可能です。
 変更当時、お父さんが正常な判断能力(意思能力)をもっており、受取人を彼女に変更したのであれば、なんら法的に問題はなく、彼女を訴えることはできません。
 逆に、お父さんに正常な判断能力がなかったのであれば、受取人の変更の意思表示は効力がありません。
 そのため、変更前の受取人であったお母さんから彼女に対し、受け取った生命保険金の返還請求訴訟ができます。
 正常な判断能力があったかどうかについては、お父さんが生前に通っていた病院のカルテや介護施設の記録などを取寄せて判断することになります(相続Q&A №347、「【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」参照)が、訴訟なしで解決するような問題ではないと思いますし、カルテ等の判断にも専門的な知識が必要になります。
 相続に詳しい弁護士に調査を依頼し、必要に応じてその後の手続きも依頼するといいでしょう。

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生前の不正出金を防ぐ方法【Q&A №415】

2014/12/05



 私の父は、私たち子どもとは30年前から別居中で疎遠です。父は、5年程前に脳梗塞で倒れ、現在失語症と軽度の認知症を患っています。

 父が倒れて以降、父の家の近くに住む叔父と伯母が父の家を頻繁に訪れ、父に、父の預貯金、証券、財産を全部よこしてくれと迫っているようです。

 お金に対する執着心が強い父は、今は気丈に「誰が渡すか」と言って何とか断っているようですが、叔父も伯母も隙あらば奪ってやるという姿勢で、通帳や印鑑の場所を調べたり、家の鍵まで保管していて、いつ全財産を奪われるかわかりません。

 特にこれから父の認知も進んできますし、子どものときに別居している私達より、近くに住む叔父や叔母の方が事情に精通しているので心配です。

 私達は父の財産がどのくらいあるのか、どこにあるのかも一切知りません。でも、父は公務員でしたし、退職後は市会議員を20年もしていましたし、株でも大儲けもしたと聞きました。また、母と結婚してからも、家に生活費を一銭も入れたことがなく、大変お金に執着していたので、多額の財産があるはずです。この先どうしたら父の財産を叔父や叔母に奪われないようにできるでしょうか。そしてもし勝手もし勝手に預貯金や証券の名義を変えられたりした場合は、取り戻すことはできるのでしょうか


記載内容

  不正出金 無断 名義変更

(香住)


【結局、お父さんに財産管理を確実にするように説得するしかない】
 人間は誰でも、年齢とともに体力も頭脳も衰えていくものであり、あなた方が心配するのもわかります。
 しかし、お父さんの財産は、お父さんが生きている限りはお父さんのものです。
 お父さんが亡くなった場合には子供らの相続人の財産になりますが、お父さんが生きている限り、相続人(正確にいえば《推定相続人》)であるあなたたちには何らの権利もありません。
 そのため、現段階では、あなたたちがお父さんを説得し、死亡時まで財産確保されるようにお願いするしかないでしょう。
 当事務所が相談を受けたもので、お父さんに女性ができ、その女性がお父さんからお金を引き出そうとしているというケースがありましたが、現実に相続が発生していないということで、推定相続人の立場ではほとんど何も手出しができずに困った案件がありました。

【意思能力がかなり衰えた段階では後見人制度等の利用を考える】
 お父さんが認知症などになり、意思能力が衰えてきたときには、すぐさま保佐人や成年後見人の選任の申し立てをし、財産の散逸を防止する必要があります。
 成年後見人が選任された場合には、お父さんの財産は全て成年後見人が管理しますので、財産の散逸を確実に防ぐことができます。

【現時点ではできることは限られる】
 最初に言いましたように、現時点では、あなた方が法的にできることはほとんどありません。
 そのため、お父さんに主な通帳や印鑑を貸金庫などに入れて厳重に保管してもらう、 お父さんを説得して、《財産を取られないように注意してね》と注意するというようなことしかないでしょうが、長年、別居していたあなたたちが言ってもわかっていただけるかどうか、難しい問題があると思います。
 説得をするということであれば、あなた方より、プロの方が上手でしょう。
 例えば、お父さんが懇意にしていた弁護士がいるのであれば、その弁護士からお父さんを説得してもらうという方法もあります。
 弁護士との間での財産管理契約を締結して、プロに財産管理をしてもらい、その後、お父さんが認知症になった場合には、そのまま成年後見人に就任してもらうシステム(任意後見契約)を作るという方向での財産管理を考えれば、更に安心でしょう。
 もちろん、無料ではありませんが、お父さんとしては一種の保険みたいなものですので、その点を強調してお話をされればいいでしょう。

【預貯金や証券の名義を換えられてしまった場合はどうするか?】
 無断で名義を変更されてしまった場合には私文書偽造になり、警察問題になります。
 しかし、そもそも変更されたということがわからないと警察にも相談できないでしょう。
 仮に、そのような無断変更があったとしても、警察沙汰になるのは別として、お父さんが生きている限りは、あなた方のような推定相続人の立場では裁判をすることもできず、法律的にはほとんど何らの手段も講じることができません。
 ただ、お父さんが死亡した後には、法定相続人として、叔父さん等が無断で名義変更して出金したお金の返還請求をすることが可能ですが、それも叔父さん等の手元にお金が残っていなければ取り戻しようがありません。
 そうならないためにも、お早めにお父さんを説得し、なんらかの形で財産管理方法を整えられることをお勧めいたします。 

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遺産が何もない場合の特別受益による持ち戻し【Q&A №406】

2014/10/28
 兄弟三人のうちの一人に対し、親が住宅取得資金という名目で1,000万円を贈与しています。
 他の二人には何もありません。
 その後、やがて親が他界した場合、他界した時点、つまり相続開始時において親の財産が何もない場合には、遺産分割の対象物がないということになりますし、その場合、特別受益の持ち戻しも、遺留分の減殺請求も、何もできないということになりますか?
 どちらも相続開始時に遺産が存在して初めて成り立つ制度ですか?そうだとすれば、兄弟のうち一人だけが得をし、後の二人はもらえず仕舞いということになりますか?

記載内容

持ち戻し 生前贈与 遺産がない 遺留分減殺
(鎌ちゃん)


【特別受益制度としては、特別受益者が生前贈与分を返還する義務はない】
 特別受益では、その特別受益分を遺産に持ち戻し(組み入れ)て、次の式で算定されるみなし遺産を前提に各相続人の相続分を算定していきます。
   《現存する遺産》+《特別受益》=《みなし遺産》
 この《みなし遺産》につき、各法定相続人に対する配分を計算します。
 今回のケースでは、特別受益が1000万円であり、法定相続人が子3人ですので、そのままの状態で相続が開始した場合、各人の法的相続分は次のとおりです。
   《現存する遺産》0円+《特別受益》1000万円=《みなし相続財産》1000万円
 各人の具体的法定相続はみなし相続財産を3分した333万円強です。
 ただ、特別受益というのは現実に生前にもらった財産を返還させるというものではなく、現存する遺産分割の際、その特別受益を受けた分はその人が既にもらったとして、後の遺産分けをしなさいという制度です。
 特別受益は既に生前にもらったお金を出しなさいという制度ではありません。
 そのため、今回のケースでは、特別受益を受けた人については、本来は333万円強しかもらえないはずですが、それ以上に1000万円の生前受益があるので、遺産から配分はなしというにすぎず、その人が差額の666万円強の金銭を返還させるということはありません。

【特別受益という制度では、遺産がない場合の不公平はやむを得ない】
 「これでは生前に多く贈与を受けた人の一人勝ちになってしまう。不公平ではないか。」というお気持ちを持たれる方が少なくないでしょう。
 しかし、親が、(生存中に)三人いる子のうち、誰にどれだけの財産を贈与するかは親自身の自由なのです。その結果、今回のケースのように、全財産を誰か一人に贈与してしまい、他の人には遺産が残されないという不公平は、法律上やむを得ないものと考えられています。

【遺留分なら、返還をしてもらえる】
 生前に多額の財産が、特定の相続人に贈与されている場合、それを取り戻す制度としては、遺留分というものがあります。
 本来、遺産はその被相続人が自由に処分してよいものであり、全額を一人の子供に生前贈与しても、また、遺言書で一人の子供に与えてもなんら差支えのないはずのものです。
 ただ、他の相続人のためにある程度の財産を与えるようにするというのが遺留分という制度です。
 本件のように全財産1000万円が一人の相続人に贈与されていた場合であれば、他の相続人は本来の相続分の2分の1(本件では6分の1の限度)を遺留分として、返還請求ができます。
 ただ、遺留分は被相続人の死亡を知って1年以内に遺留分を行使する(遺留分減殺)という意思表示をする必要がありますので、期間を経過しないようにご注意されるといいでしょう。
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