"損害賠償"に関連する記事一覧
 | HOME | 

兄の使い込みと居直りへの対応【Q&A №561】

2017/03/07


【質問の要旨】

不正出金を取り戻せるか

記載内容 凍結 預金 不正出金

【ご質問内容】

父親が昨年秋に死去しました。

私の兄は、管理していた父親名義の預金通帳からの使い込みが判りました

現在兄は遺産分割協議に協力しないばかりで困っています。

父は預貯金や株を所有していました。

父が10年前に脳梗塞発症後、半身不随になった後、24時間完全介護の老人ホームへ入所しました。入所時から、兄が、父親の全財産の管理を兄が預かっておりました

当時から兄はATMで現金を引き出しており、毎回限度額上限いっぱいの50万円や100万円の金額で、ホームの兵庫から遠く離れた東京の兄自宅近くのATM引き出してました

その金額が、10年間6000万円を超。父の同意が、有ったのか分からない一括保険金払い3000万円一括保険金払年金型生命保険にも入っています。

この保険からの年金の入金は、父の口座入金でしたが、保険金払い受取人が兄。

この年金の振り込み口座からも、兄は引き出しておりました。

父親の死後になって、心当たりの銀行証券会社に問い合わせたところ、わかりました。

兄は、死亡届を金融機関に未提出

父の死後の翌日や翌々日もATMから50万円や100万円単位で引き出していたのが判明しています。

私が金融機関に、死亡届を取引明細取り寄せと同時にしたことにより、父親の預貯金口座から、現金の引き出しが出来なくなった兄は激怒してます。

兄からは連日の暴言メールで、私は仕事も手につきません。

夜も眠れません。

兄は「お前はいらぬ事はせんでいい。お前の下らん策で迷惑きわまりない。」と、激しく私をなじる一方です。

遺言状も存在しないようです。

私はどうすればよいでしょう。

父の遺産を私が一部でも引き継ぐ事は諦めて、凍結した銀行口座を解除して兄に任せるべきなのでしょうか?

せめて、今ある預貯金のみの50%の分割で我慢すべきなんでしょうか?

(はなこ)






【あなたはお兄さんと同じ割合の遺産をもらう権利があります】

遺言書がないケースでは、あなたはお兄さんと同じ割合でお父さんの遺産をもらうことができます。

又、生前にお兄さんがお父さんの口座から無断で出金していたのであれば、お父さんはお兄さんに損害賠償請求ができることになりますが、その損害賠償請求する権利はあなたにも相続されますので、生前の引き出し分についてもあなたはお兄さんに請求することが可能です。


【わかっているすべての金融機関にも連絡をしておく】

お兄さんが、お父さんの死亡後もお父さんの遺産を引き出しているようであれば、わかっている金融機関の全てにお父さんが死亡したとの通知を出す必要があります

死亡の連絡があれば、金融機関は口座を閉鎖しますので、ATMでの出金を停止します。

利用しているかどうかわからなくても、その可能性があれば、死亡通知をし、遺産からの出金を停止させる必要があります。


【生前の引き出し分の調査】

前記のとおり、お兄さんの生前引出分は損害賠償請求権として遺産になります。

ただ、いつ、どの程度の額の金銭を引き出されたのか、その引出をお兄さんがしたのかをあなたの方で証明する必要があります

そのため、金融機関に対して入出金の取引履歴の調査をするとともに、大口の出金については誰がその手続きをしたのかを確認するために預貯金の払戻票などを取り寄せし、お兄さんが引き出したということをはっきりさせておくといいでしょう。

ATMの場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見るとどこで出金したのかがわかりますので、その取引履歴を証拠として準備しておくとよいでしょう。


【カルテの取り寄せも考える】

お父さんは脳梗塞であったということですが、もし、判断能力がないような状態であれば、お兄さんが出金した金銭の返還請求がしやすくなりますので、入通院された病院のカルテを取り寄せしておくといいでしょう

カルテにはお父さんの判断能力がわかる資料が多数、記載されていることが多いです。

お兄さんはお父さんの依頼で出金したという反論をすることもありえますので、そのような場合に備えて準備をしておくといいでしょう。


【保険契約及びその一括払い金の出金の調査も必要】

保険金の契約書にはお父さんの署名があるはずですので、保険会社から契約書の写しをもらって本当にお父さんの筆跡かどうかを確認するといいでしょう。

又、保険金の支払いが併せて一括支払いだとすると、預貯金から引き出して支払っていると考えられますので、預貯金を確認するとともに、その払戻票の筆跡を確認し、お父さんに無断でお兄さんが手続きをしたという証拠を集めておくといいでしょう。


【急いで手続きする必要があるのなら、弁護士に早期に相談を】

お父さんの遺産をお兄さんが勝手に動かしているように思われます。

お兄さんが預貯金から引き出した金銭をどのように使っているか、あるいは保管しているのかは明らかではありませんが、既にかなりの部分が消費されている可能性がありそうですし、出金分を隠している可能性もありそうです。

裁判に勝ってもお兄さんがお金を持っていないとお金を回収できません。

そのため、できるだけ早く、弁護士と相談され、お兄さんの財産を押さえる手続き(例えば仮差押手続き)などを考えられるといいでしょう

お兄さんの金融機関の口座がわかっているとすれば、それを差し押さえる方法はないのかどうか、また、これからの遺産分割協議を円滑に進めていくためにも、弁護士に相談され、必要に応じて早期に依頼をして、対処方策を講じることをお勧めします。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
18:01 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続制度見直し:配偶者に対する新優遇案【コラム】

2017/03/07
相続制度見直し:配偶者に対する新優遇案


【配偶者に対する新優遇案が出されました】

現在の相続制度の見直しがされており、法制審議会の相続部会で審議されています。

平成29年2月28日、法務省から新たな案が出されました。

その内容は配偶者を相続上、現在より優遇しようというものです。

具体的に言うと、

①結婚から20年以上過ぎた夫婦間で

②居住用の建物や土地を

③生前贈与や遺言遺贈を受けた場合

これらの贈与や遺贈の対象の不動産を遺産の計算に含まないというものです。

贈与者あるいは遺言者としても、このような贈与等は、遺産の計算に持ち戻さない(含めない)という意思があるだろう点を根拠にする提案です。


【現在の相続制度との比較】

現在の相続制度では、亡くなった方(被相続人)と一緒に住んでいた配偶者が、これからもその家で暮らしていくために家を相続した結果、他の遺産をまったく相続できないというケースがありました。

また、自宅以外の他の財産が少ない場合には、家を相続したことによる代償金という形で、他の相続人にお金を支払う必要があるというケースもありました。

これに対して、今回の新優遇案では、自宅の贈与等を受けていても、配偶者は自宅を取得分とカウントされずに、別途、他の遺産についても自分の相続分に応じた遺産をもらえることになります。


【弁護士コメント】

残された配偶者優遇策としては法定相続分を上げるということも考えられますが、反対が多いようです。

そのため、居住用不動産に限定して配偶者を優遇しようとする考えがだされています。

たとえば、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、

①遺産分割により当該建物の帰属が確定するまでの間、その建物を無償で使用することができ、その間の使用料は遺産分割で取得すべき財産額に算入しないとする案や、

②終身又は一定期間、配偶者にその建物の使用を認め、長期居住権の財産的価値相当額を相続したものとして扱う(建物の所有権額よりは低額になる)という案もあります。

それらに比較すると、今回の新提案はこれらより一歩踏み込んで、残存配偶者が財産を多く取得できる方向での提案です。

ただ、

①結婚から20年以上過ぎた夫婦に限っていること

②被相続人から贈与や遺贈という積極的な行為が必要である

などの要件が必要とされています。

上記の要件が必要とされている点では、他の案よりもハードルが高くなっていますが、逆に、生前贈与や遺贈があれば、その額を遺産の計算に持戻すことなく、家の所有権を取得できるというのは、配偶者の優遇策として進んでいるといえるでしょう。

多数の賛成者があるようですので、今回の提案が立法化される可能性も高いかもしれません。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:20 相続コラム | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

葬式費用の負担者と香典の取得者【Q&A №560】

2017/02/16


【質問の要旨】

父の葬儀の喪主が叔父、葬儀費用は遺産から払ったが、香典は誰が受け取る?

記載内容 香典 葬式費用 喪主

【ご質問内容】

母とは離婚、片親だった父がなくなり、葬式をあげる事になりました。

24歳の姉と21歳の私(2人姉妹)は知識も、まとまったお金も無いからと、何も費用などの相談も無いまま父の弟である叔父が喪主を務め、葬式費用も返してくれればいいからと立て替えてくれました。

後日かかった費用の領収書を受け取り、返すように言われ葬式費用は遺産から返したのですが、この場合香典は誰が受け取るべきですか

実際に喪主を務めた叔父が香典を受け取るとしたら、父の葬式なので葬式費用は私と姉で叔父に返すべきなのですか?

(麗華)





【葬儀費用は喪主が負担する】

葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するものであり、相続債務ではありません。

そのため、当然に遺産から支払われるべきものではなく、喪主が負担するものです。

したがって、今回叔父さんが喪主を務めてくれたのであれば、本来は叔父さんが費用を負担するべきだということになります。


【喪主が負担した葬儀費用の請求】

今回の事案とよく似た裁判例として、次の裁判例があります。

【相続判例散策】兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できない》と判断しましたが、その理由は、《葬儀は行うか否か、どの程度の規模にするか、どこまで費用を掛けるかは喪主が決定するのだから、喪主が費用を負担するのが妥当》というものでした。

この裁判例に従うと、やはり叔父さんが支払った葬儀費用をあなた方に請求することはできないという結論になりそうです。


【香典は葬儀費用を負担した者が取得する】

ただ、本件では、あなた方に代わって叔父さんに喪主を務めていただき、葬儀費用を支払うことについてあなた方が納得して遺産から葬儀費用を支払ったようです。

このとき、香典は誰が受け取るべきなのかが問題になりますが、香典には葬儀費用等の出費に対して金銭面で助けるという意味もありますので、本来香典は葬儀費用を負担した者が取得するべきだといえるでしょう。

本件において、あなた方が遺産から葬儀費用を支払ったのであれば、香典収入は叔父さんに渡すのではなく、遺産に含めるべきだと考えられます。


【本件ではどうする?】

そのため、今回の質問のケースでは、本来は、あなた方は叔父さんに葬儀費用を支払う必要はありませんでした

ただ、既に葬儀費用を支払った(もらった遺産からその分を返した)というのなら、葬儀費用の返還をしてもらっても良いということになります。

しかし、現実問題としてはそのような要求を出しても、応じてくれないでしょうから、せめて、香典は引渡すように請求されるといいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:41 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★亡父からお金を詐取した姉への請求【Q&A №550】

2016/12/21



【質問の要旨】

姉が「寄付」と言って父からお金を引き出していた

記載内容 使い込み 数次相続

【ご質問内容】

父が亡くなり相続となりました。

障害を持った弟がおり母が亡くなった後施設にお世話になっています。

父の生前、姉が弟の施設に寄付をしないといられなくなると父からお金を摂取しました。

父から確認の電話があり嘘だから返してもらうよう伝えましたが再び電話があり返してもらえないと。

私から姉に電話して父に返すよう話しましたが、制裁だといい返金しませんでした。

それから数ヵ月し確認したら弟の保険に入ったといい證券見せてと言っても連絡がつかなくなりました。

相続になりそれは特別利益になるのではと話しましたが返したと嘘をつき始めました。

父の相続人は姉、私、弟(成年後見人弁護士/姉でしたが使い込みをし外されました)でしたが、話し合いの途中(今年夏)弟が亡くなったため二人で進めることになります

どう進めてたら良いか、また父から寄付と言って引き出したお金を相続に含ませる事はできないか方法があればご教授頂きたい。

(なつ)







【お姉さんの詐取したお金の返還請求権は遺産になる】

お姉さんがお父さんに嘘をついてお金をだましとったということなら、お父さんはお姉さんに対して不法行為による損害賠償請求権を持つことになります。

お父さんが死亡したときには、この請求権は遺産に含まれます。

弟さんが死亡されたので、現時点ではあなたとお姉さんだけが相続人です。

そのため、あなたはこの金額の半額を請求する権利を相続していますので、他の遺産に加えて、詐欺による不法行為に基づく返還請求権として、詐取された金額の半額を請求されるといいでしょう。


【遺産分割の話の進め方】

質問から見る限り、お姉さんが誠意をもって遺産分割の話をすすめるようには到底思われません。

そのため、第三者の手を借りる必要がありそうです。

まず、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てることができます。

調停は申立費用も安く、調停委員も解決に尽力をしてくれます。

弁護士がつかなくても手続きができますので、ご利用を考えられるといいでしょう。

手続きについては家裁でお聞きになればていねいに教えてくれます。


弁護士を依頼するのも解決のために必要かもしれません。

調停はあくまで、お姉さんが解決しようという気にならないと成立しません。

話し合いの余地がない可能性も高いケースですので、当初から相続に詳しい弁護士に依頼することも選択肢です。


なお、調停を含め、今後、どのような対応をした方がいいのか、相続に詳しい弁護士のアドバイスをもらうことも考えられるといいでしょう。

市町村の相談では時間が短いために納得のいく説明を得られにくいので、お金がかかっても(1時間あたり1万円が相談料の相場です)、弁護士事務所で法律相談をされるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:56 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

被相続人との共有マンションの家賃の扱い【Q&A №546】

2016/12/06



【質問の要旨】

マンションの共有者である長男が、被相続人に対し収益の返還請求権を持っていると主張している

記載内容 共有物 賃料 時効

【ご質問内容】

被相続人と長男が一棟建て賃貸マンションを所有していました。

分割協議が進まず調停へと進む状況です。

これまで賃貸マンションの収入は被相続人が管理し、収入も返済や税金の支払も行ってきました

長男代理人は2分の1所有の賃貸マンションからあがる収益は本来自分の物であり、返還請求権をもっていると主張しています。

この主張は認められるのでしょうか?

またこの被相続人に対する債権は何年前まで有効なのですか?

時効はあるのでしょうか

この債務を遺産に加えると他の相続人の相続分はなくなるといっています。

(mujun)





【兄が本当に共有者であるかどうかを念のために確かめる】

お父さんと兄で共有持ち分が各2分の1であるのに、被相続人が賃料収入全部を得ていたということですが、2つの面で疑問(あるいは問題といってもいいでしょう)がありそうです。

まず、第1は、兄の持ち分2分の1というが、実質はお父さんが建築資金を出しており、名義だけを長男のものにしていたのではないか?という点です。

この疑問は①長男名義の2分の1は実質上はお父さんの遺産ではないのか?

あるいは②お父さんがお兄さんに建築資金を生前贈与(特別受益)したのではないか?

という問題に発展しますので、念のために上記の①及び②の観点から、是非、調査されるといいでしょう。

なお、ローンがあるようですので、その借入名義がお父さんだけか、兄でもあるのか、又、頭金などは誰が負担したのかを、お父さんの取引履歴等なども参考にして調査されるといいでしょう。


【兄はお父さんに賃料の返還請求はできない可能性が高い】

次に、兄としてはお父さんが賃貸に出していることぐらいは知っていたと理解するべきでしょう。

にもかかわらず、賃料の半額を請求しなかったのはなぜかという疑問があります。

この点については、賃貸を始めるときにお父さんと兄との間で、お父さんが賃料を全部取得するということで合意(暗黙を含めて)があり、管理はお父さんがし、賃料収入はお父さんがもらう、ローンの支払いや固定資産税の支払いは全てお父さんがするとの合意があったと考えるのが普通の理解でしょう。

もし、その前提が正しいとすると、お父さんが全額を取得することを、兄は了解していたのですから、兄が被相続人であるお父さんに不当利得等の請求はできないことになります。


【仮に無断で賃貸していた場合には】

しかし、万一、お父さんが兄に知らせず、勝手にマンションの賃貸をしていたのだとすると、兄からお父さんに対して不法行為による損害賠償請求及び不当利得返還請求として賃料額のうちの兄持ち分額に相当する金額を請求することが可能になります。

この場合、お父さんが兄の分のローンの支払いをし、かつ固定資産税も立替支払いをしていたのであれば、その分は請求額から控除されますし、場合によれば管理料相当分も控除することも可能です。

なお、不法行為で請求する場合には、勝手に貸していることを知ってから3年で、不当利得返還請求をする場合なら10年で請求権が消滅時効にかかりますので、それ以前の分は時効を主張されると、兄は請求できないということになります。


【兄請求の債務を遺産に加えるどうなる?】
  
今回の質問のケースでは兄の請求が成立しない可能性があります。

仮に請求できるとしても、お父さんが賃料から兄のローンの支払いをし、かつ、兄の分の固定資産税も支払っていたというのであれば、法的に認められる返還額はそれほど多額にはならず、請求すると遺産が無くなるようなことはないと思われます。


【特別寄与について】

兄に賠償あるいは返還請求ができない場合でも、賃料全額をお父さんに取得させたということが特別寄与として認められ、兄がその額を取得できる可能性はあり得ます。

ただ、この場合でも、兄の分のローンの支払いや固定資産税の立替支払い、管理料相当額等が考慮されますので、兄の寄与分としてはそれほど多くないように思います。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:23 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【相続判例散策】預貯金等の金銭債権は相続開始後どのように扱われるのか?

2016/03/01
相続判例散策

預貯金等の金銭債権は相続開始後どのように扱われるのか?


【判例紹介】

損害賠償請求権という金銭債権について、最高裁判所の裁判例で次のようなものがあります。


【事件の概要】

立木の所有権の侵害を原因とする損害賠償請求事件で係争中に原告が死亡し、その妻及び三名の子が訴訟手続を引き継ぎました。

この場合に、この損害賠償請求権は相続により、誰にどのような形で相続されるかが問題となりました。

【判決の概要】

損害賠償請求権のような金銭請求をする債権について、「相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」と判断しました。

最一小判昭和29年4月8日 民集第8巻4号819頁)


【弁護士コメント】

預貯金を金融機関に預けていると、預金者は銀行に対して預貯金の払戻請求権を持つことになります。

この払戻請求権は金銭の請求を求めるものであり、金銭債権の一種になります。

上記最高裁判例は、損害賠償債権という金銭債権に関するものです。

この判例は、金銭債権は相続開始とともにそれぞれの相続人が独自に取得するということを言っています。

この判例があることから、仮に損害賠償請求権額が900万円であり、相続割合が同じ3人の相続人がいた場合、各相続人が300万円を相続することになり、また、他の相続人とは別個に(ということは他の相続人の同意を得ることなく、独自に)請求することができるということになります。

預貯金債権も金銭債権のため、相続開始時点で各法定相続人に分割して相続されます。

そのため、各相続人が独自に金融機関にその相続持ち分に応じた請求をすることができます。

この点を明確にした裁判例としては、預貯金債権について「預貯金は遺産分割を待つまでもなく、相続開始と同時に当然に分割されるのである」とした高等裁判所段階の決定があります(東京高決平成14年2月15日 家庭裁判月報54巻8号36頁)。

ただ、金融機関としては、遺言書があるかどうかなど全くわからない状態ですので、原則として一人の相続人からの払い戻しに応じることは少なく、代表相続人の指定の手続きを求めてくるのが通例であり、金融機関の立場からすればこのような扱いもやむを得ない面があります。

ただ、本来、法定相続分を取得しているのですから、各相続人としては訴訟で払い戻し請求が可能であり、その訴訟をすることについて他の相続人の同意は不要ですし、遺言書が出てきた等の特段の事情がないかぎり、法定相続分の支払いを命じる判決が出されます。

(関連ブログ未分割の財産について【Q&A №493再質問】参照)

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:42 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【相続判例散策】遺産分割協議の不履行と契約解除

2016/02/08
【相続判例散策】

遺産分割協議で決まった義務を実行しないとき、分割協議を無効にできるか?

(東京高裁 昭和52年8月17日決定)



【結論:分割協議の無効ではなく、債務不履行で損害賠償をすることになる】

(最高裁判所 平成元年2月9日判決。
なお、東京高裁 昭和52年8月17日決定も同様の結論です)


【ケース】

遺産分割協議書で、相続人のうちの一人がお母さんの面倒を見るということになりました。

ところが、その相続人がその義務を実行しなかったため、他の相続人が母親の面倒を見るように求めました。

しかし、それでも母親の面倒をよく見なかったとき、他の相続人はその遺産分割協議を無効にできるでしょうか?


【裁判所の判断】

最高裁判所は、遺産分割協議の解除はできないと判断しました。

遺産分割協議はその性質上、遺産分割協議により終了しているため、債務不履行により解除できないと結論つけています。

遺産分割協議は多くの財産を多数の法定相続人に配分するものですので、
それが無効にすると、
相続人が遺産分割協議の結果もらった不動産を売却していたような場合はどうするのか、
あるいは相続人がもらった金を使い切ったようなときは・・・等の
非常にややこしい法律的な問題がいろいろと出てくることも配慮して、
遺産分割協議の無効を認めなかったものです。

ただ、お母さんは何もできないというのではなく、定められた義務を果たさない相続人に対して損害賠償できることになります。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:28 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡兄に使い込まれた私のお金を請求できないか【Q&A №463】

2015/08/31



【ご質問のまとめ】

40年ほど前に私のお金を800万円使い込んだ兄が、先日亡くなりました。

兄は1億円の財産を遺し、すべて姉が相続しました。

お金を取り返すことはできないですか?



記載内容

  相続債務 消滅時効 包括遺贈


【ご質問内容】

兄弟は8人で私は末っ子です。

去年長男の兄が亡くなり、その兄には私が若い頃40年前貯金をしていた800万円使われていましたが返してもらえないまま亡くなりました。

遺産は1億万円位あったそうです。

しかし相続人は姉になっていました。

それから兄は奥さんには先だたれてます。

子供もいませんでした。

証人は沢山いますが、借用書がないのがだめかなと諦めようと思っていても何か悔しくて何とかならないものでしょうか!?


(ノンちゃん)







【40年前の使い込みの返還請求について・・・時効で消滅している可能性が高い】

わかりやすくするために、まず、お兄さんが現在も生きておられるとして、考えてみます。

あなた自身の預貯金をお兄さんが使いこんだということですが、それがあなたに無断であったのなら、あなたとしてはお兄さんにその使い込まれた金額の返還請求が可能です。

その根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求権です。

但し、請求権には消滅時効があります。

消滅時効の期間は次のとおりです。

上記①の不法行為であれば使い込まれたことを知ってから3年間です、ずーっと、使い込みを知らなかった場合には使い込みの時点から20年間です。

②の不当利得の場合には返還請求できる日(使い込みの翌日から)10年間です。

現在まで40年間が経過しているということであればいずれにしても消滅時効にかかりますので、お兄さんが消滅時効と主張するのであれば、請求はできません。



【消滅時効にならない・・時効中断がある・・場合】

ただ、お兄さんが使い込みを認めていた(但し、あなたがその点を証明する必要があります)のであれば、その認めた時点から10年以内なら消滅時効は完成しません。

これを時効の中断といいます。

そのように請求を認めた事実がないかどうか、例えば最近10年間以内にお兄さんから使い込みを認めたような謝罪の書面を送付されていないか、あるいはそのような内容を録音したことがないかどうかを確認されるといいでしょう。

もしあれば、それで時効中断になるかどうか、弁護士に相談されることをお勧めします。



【時効中断している場合はお姉さんに請求する】

以上に説明したことを前提に、本件について考えてみます。

もし、あなたの持っている請求権が時効で消滅していないのなら、お兄さんに請求できることになるはずですが、本件ではお兄さんは既に死亡されており、相続人がお姉さんということのようです。

その詳しい事実関係は明らかでありませんが、おそらくお兄さんが《すべての遺産をお姉さんに相続させる》という遺言書を作成されていたのでしょう。

もしそうであれば、お姉さんは、お兄さんの遺産全部を相続するとともに、その債務を承継します民法990条、民法896条:末尾に記載した条文をご覧ください)。

そのため、あなたとしては、お姉さんに対して債務を承継したとして請求をすることが可能です。


【兄弟には遺留分減殺請求がない】

質問者の方はご存知と思いますが、念のために遺留分がないことも記載しておきます。

ある法定相続人に遺産の全部が行くような場合、他の相続人には遺留分減殺請求が認められています。

しかし、兄弟姉妹には遺留分減殺は認められておりません。

そのため、本件では1億円の遺産がお姉さんに行ってもあなたは遺留分減殺請求ができないということになります。

(弁護士 大澤龍司)


〔参照条文〕

民 法

(包括受遺者の権利義務)
第990条  包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

(相続の一般的効力)
第896条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:15 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

委任状で許される出金 【Q&A №460】

2015/08/05



【質問のまとめ】

父は長男に全財産の現金を預けて、その管理処分について長男に委任しています。

長男が勝手に使ってしまうことが心配です。

相続が開始した後に、法定相続分を主張することができますか?



記載内容

 委任状 処分 財産管理


【ご質問内容】

 三人兄弟です。

 15年前に母は他界し、その直後に父が長男に委任状を手渡した上で、全財産の現金を預けています。

 委任状は全て父の直筆で書かれ、預けた金銭の管理と処分の一切の権限を長男に委任する旨と、委任状の効力は父の死亡を
以て終了とする旨が記載され、作成年月日と氏名、拇印と実印が押印され、印鑑証明書も添付されています。

 預けている金額は三千万円ですが、委任状の文面に金銭の「管理」のみならず「処分」まで書かれている場合、処分と題して、長男が勝手に消費してしまい、父の相続が開始された時点でその金額が目減りしていたとしても、その目減り分を長男に請求することはできないのでしょうか?

 要するに、「預けたお金はお前(長男)の自由に使って良いよ」と父が言っているような気がしてなりません。

 父に問い質しても、「長男に全て一任してあるから、口を挟むな」と言われる始末です。

 父は昔から長男を頼り、溺愛していたことから、その一切の権限を委ねたものかと想像しますが、あくまでも委任状であり、遺言書でない以上、遺留分等に縛られることなく、堂々と法定相続分を主張することはできますか?

 委任状の役割や効力の範囲がいまいちよく分からないため、処分の権限まで与えられたからと言って、兄が勝手に処分(消費)していた場合の対応が気になり心配です。

(カマちゃん)







【弁護士により回答が異なる可能性があります】

 今回の質問は弁護士により回答が異なる可能性があります。

 あくまで私(弁護士大澤)の見解ということで理解ください。

 まず、今回の質問ではお父さんが長男さんに「委任」したという前提になっています。

 ただ、委任内容が明らかではありません。

 具体的に言えば、何について委任したかが明らかではありまえん。

 例えば使途についていえば、お父さんの病院費や生活費についての出金の管理を依頼したのか、それ以外の事項も依頼したのかが明らかではありません。

 次に処分まで認めたということですが、現金の処分というのはどういうものでしょうか。

 預かり現金からの支払いを認めたというのか、それ以上に長男さんの個人的の使途に使ってもいいというのでしょうか。

 これらの点についてはより深く事情をお聞きした中で判断するべきことです。

 ただ、現在の質問で記載された限度で次項のとおり回答をします。



【委任であるという点を重視した場合の回答】

 今回は「委任」ということが前提になっていますので、その前提で考えます。

 委任であれば、長男さんとしてはお父さんのために預かり現金を利用するという制限があるので、自由勝手に処分した場合には委任の趣旨に反するということになります。

 ただ長男さんが自由勝手に処分することを認めるのなら、委任という言葉を選択することはないでしょう。

 預り金を私的に使用することを認めるのなら、それは委任ではなく、その分については「贈与」というべきものになります。

 委任という言葉にこだわる限りでは、お父さんのために必要な使途にのみ使うべきであり、それ以外に長男さんが自由勝手に使うことを認めるという趣旨ではないと理解せざるを得ません。

 なお、委任契約はお父さんの死亡した場合にはその効力を失うという内容になっています。

 法律(民法)の委任契約の条文では、委任者が死亡した場合には委任契約は終了することになっています。

 ただ、今回の委任契約では、そのような条文があるにも関わらず、わざわざ、お父さんが死亡すれば委任が終了するとされているのなら、その理由はやはり《私のために使ってほしい》とお父さんが考えたことによると推測できるのではないでしょうか。



【長男さんが勝手に使った場合の対応】

 長男さんが自分の私的目的に預金を使ったということであれば、お父さんは長男さんに対して、委任契約で指定した目的に反して金銭を支出したとして、債務不履行に基づく損害賠償請求権を持つことになります。

 お父さんが死亡されたが遺言書がなかった場合、各相続人はその相続分に応じて上記請求権を相続することになります。

 あなたとしては相続したこの権利を行使し、相続分に応じた金額を長男さんに請求するといいでしょう。



【贈与の趣旨も含んでいるとした場合】

 仮に委任契約が、長男さんが私的に使うことも認めていると理解できるのであれば、贈与的な部分も含んでいるということになります。

 この場合、長男さんが私的に使った部分は贈与と同視していいでしょう。

 そのため、その長男さんの私的使用分は生前贈与になり、遺産に持ち戻して、遺産分割することになります。

 また、遺言書があり、遺留分を計算する場合には、遺留分の計算の基礎にその贈与金額を算入することもできるでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:43 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

認知症の父の口座からの不正出金【Q&A №435】

2015/03/12



要介護5で全く意思疎通ができない父の預金から兄が、過去8年にわたり年に2~3回、1回の金額は100万円程度を母に頼まれたという理由で引き出していることが最近になってわかりました。

キャッシュカードはなく、すべて伝票に署名捺印で下しています。

不公平感が否めなく、生前贈与を認めさせ、私の相続分を取り戻したいと思っています。

父がまだ生存中なのでどうするのがベストなのかお聞きしたいです。

ちなみに、現在、父の成年後見制度申請中です。


記載内容

  使い込み 認知症 要介護

(てる)





【相続開始前にはあなたには法的にはなんらの権利もない】

 お父さんに意思能力がないのであれば、お父さんはその預金を引き出すことができませんし、又、お母さんやお兄さんに引き出しを依頼することもできません。

 又、その預金はお父さんの財産ですので、お母さんが同意しても、その引き出しが正当になるようなものでもありませんので、お兄さんの預金引き出し行為は無断引き出しとなります。

 そのため、お父さんはお兄さんに対して不法行為や不当利得を理由として、その引出額相当の損害賠償請求権あるいは返還請求権を持つことになります。

 これらの権利は、将来、お父さんが死亡した場合には、法定相続分に応じてあなたが相続することになりますので、相続開始後であれば、あなたからお兄さんに損害賠償あるいは返還請求ができることになります。

 ただ、現時点では、お父さんが生存しておられますので相続は開始しておりません。

 あなたは、将来、相続人となる立場(推定相続人といいます)ですが、現時点では、法律的にはあなたには何らの権利もありません。

 お父さんの財産がなくなるような事態が発生しても、又、お父さんが前記のような権利を取得していても、残念ながら、あなたとしてはなんらの法的手段も取ることはできません。



 
【成年後見人の選任とお兄さんへの返還請求について】

 現在、お父さんの成年後見人を選任する手配をされているようです。

 たしかに、現時点である財産を減少させないということでは成年後見人の選任は極めて有効な手段です。

 ただ、後見人が、既に無断で払い戻しされている金銭を取り戻すというところまで積極的に動くことはまずありません。





【現時点でとるべき手段は資料や情報の入手です】

 将来、お父さんが亡くなられた場合、あなたは法定相続人として、お父さんが有している損害賠償(不当利得)請求権を法定相続分で相続することになります。

 その時点で、あなたとしてはお兄さんにその請求権に基づき金銭の返還請求をすることが可能です。

 そのための資料として、どこの金融機関のどの支店からいくら引き出されたのかという資料や情報が必要になりますので、現時点で入手できるものは、できるだけ入手しておくといいでしょう。

 なお、将来、あなたが請求されてもお兄さんが簡単に引き出した金銭を返還するとは思われません。

 お父さんが死亡された場合には、早期の段階で弁護士と相談され、お兄さんに対する素早い対応が可能かどうかを検討されるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:37 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★多額の使途不明金と葬儀費用の請求【Q&A №424】

2015/01/20



【ご質問詳細】

 去年の春に母が亡くなりました。

 年金や私達が住んでいた家を売ったお金などが入金された母名義の通帳は、母の実家である本家の親戚が管理してました。

 数千万の貯金があった筈なのですが、葬式代や病院代などを、今になって請求されています。

 手続きなど私達兄弟が行い、かかった経費は母の口座から出すという事だったのですが、年金のみでそんな貯金は無かったと言い張ります。

 すべてが口約束なので、文面で残ってません。

 亡くなる前の施設に居た3年間は、脳卒中の後遺症で意思の疎通が出来なかったので、本人が指示を出すとか、引き出したり使ったとは考え難いです。

 私達に支払いの義務はあるのでしょうか? 


記載内容

  葬儀費用

(まもる)





【入院費用及び葬儀費用の支払い義務はある】

 お母さんの入院費用については、お母さんが負担するべきものです。

 その支払いを親戚の方がしたのであれば、お母さんはその親戚に立替費用返還義務を負います。

 お母さんが死亡された後は、相続放棄をしない限り、相続人がその法定相続分に応じて債務負担をしますので、相続人が支払い義務を負います。

 次に葬儀費用ですが、葬儀はお母さんの死後に行われる行事であり、喪主の方(通常は長男さん)が負担することになります。

 長男の方が、その葬儀で喪主になられているのであれば、喪主の方が負担すべきものです。もし親戚の方が立て替えて支払ったのであれば、喪主の方はその親戚に支払うべき義務があります。



【もし、親戚が預金を引き出していたとすると・・】

 お母さんが数千万円の預金を有していたのに、その分がないということであれば、預金口座を管理していた親戚の方が引き出した可能性があります。

 もし、親戚の方が引き出して使っているのであれば、お母さんはその親戚の方に対して、不当利得あるいは不法行為に基づいて返還請求損害賠償請求をすることが可能です。

 この請求権は相続されますので、相続人の方は、その請求権があるということで、入院費用立替金返還請求権とを相殺するとして、前項の支払い請求を拒否することができます。



【金融機関への履歴の照会・開示について】

 「銀行で調べたところ、脳卒中の後で施設に入った時期に、全額母の口座から引き出されているようですが、詳しい事は教えてもらえませんでした」と質問に記載されてあります。

 現在、金融機関が相続人に、被相続人の口座の内容を知らせないということは考えにくいです。

 もう一度、銀行に開示するように交渉されるといいでしょう。

 その際、銀行から次のような資料を求められますので、予め取り寄せておくといいでしょう。

①相続が開始したことを証明するための資料・・被相続人の除籍謄本

②あなたが相続人であるということを証明するための資料・・あなたの戸籍謄本

③あなたの身分証明書・・免許書または健康保険証



 なお、あなたが銀行に開示を求める(聞く必要がある)事項は次の事項です。

①相続開始時(お母さん死亡時点)の残高

②被相続人の口座の入出金状況(取引履歴)

③多額の金銭の引き出しがある場合には、その引き出しに際して提出された書類(払い戻し伝票等の写し)
(これは筆跡により、誰が引き出したかを確認するために必要です)。




【銀行関係の調査が終了した場合はどうするか・・】

 銀行での調査が終了した後に、出金の中に使徒不明金がないかどうかを検討しましょう。

 使途不明金がある場合にはその出金を誰がしたのかを払い戻し伝票で確認しましょう。

 その後、使徒不明金が多額に及ぶのなら、親戚の方からの支払い請求を拒否するだけではなく、その親戚の方が預金を取り込んでいるとして返還請求をすることも可能です。

 ただ、返還請求をしたいが、人間関係から見て難しいというような場合には、銀行の調査も含めて、相続に詳しい弁護士に依頼されることも検討されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
12:04 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★★不正出金の全額返還を請求できるか【Q&A №423】

2015/01/16



【ご質問詳細】

 母親の死後、残された自筆遺言書を原告(長男)、被告ら(弟・妹)立会いの下、検認したところ、原告に、預貯金全額を相続させる旨が確認されました。

 原告は、母親の預貯通帳・カードを母親の近くに住む被告らに厳重保管の覚書を交わし委託しておりましたが(母親の生活費は、年金収入で賄える範囲)、被告らは母親の生前中(預貯金が下されたこの時点では、母親は痴呆も進み寝たきりで、何ら判断能力も無い)、母親が自筆遺言書を作成していたこをを知りながら、無断で、預貯金2千万円を、共謀して、カード限度一杯で、定期的に全額を引き落としておりました(銀行入出金推移表で確認済み)。

 これから、訴訟をスタートしますが、相続分である3分の1ではなく、全額を請求できる戦略・進め方のアドバイスがございましたらご伝授ください。

 なお、原告は代理人無しで、被告らは弁護士を擁立しております。


記載内容

  不正出金 全額

(moriken)





【気持ちはわかりますが・・・】

 被相続人であるお母さんが遺産である預貯金全額を長男であるあなたに相続させる内容の自筆の遺言書を作成したのに、お母さんの生前に弟や妹が無断で出金し、使ってしまったという事案です。

 あなたとしては、預貯金の引き出しがされなければ、預貯金全額を相続できたのにという気持ちでしょうし、その気持ちはよくわかります。

 ただ、法律的に考えると以下のとおりとなります。


【まず、3分の1の主張は可能です】

 あなたもわかっておられるようですが、無断で引き出し使用された預貯金額の3分の1の返還は可能です。

 念のために確認しておきましょう。

 お母さんの預貯金を弟らが無断で引き出して使用したのであれば、お母さんは弟らに対して引き出した金を返還せよという請求権(不法行為に基づく損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権)を持つことになります。

 ただ、この請求権は預貯金そのものではありませんので、単なる請求権(債権)として相続され、あなたが相続できるのは法定相続分(3分の1のようですが)だけです。

 あなたとしては、お母さんの有する前記請求権の3分の1を相続で取得したとして、無断引き出しをした弟さんらに請求することは可能です。


【あなたに対する権利侵害として、全額の返還を求めることはできない】

 ただ、あなたとしては、弟さんらが預貯金を引き出さなければ、預貯金全額を相続できるはずであったと無念に思われており、何とか預貯金額全額の請求ができないかという気持ちがあり、それが今回の質問になったものと思います。

 一つの考え方は、無断引き出しがされない場合、あなたとしては預貯金額全額を相続できたはずであるのに、弟さんらがこれを違法に侵害したので、不法行為による損害賠償請求ができないかということがあります。

 あなたが将来、遺言により預貯金全部を相続できるのに、それを侵害したので不法行為が成立するという考え方です。

 しかし、無断引き出しをされたのはお母さんであり、お母さんが権利侵害として不法行為に基づく損害賠償請求ができるのは前記のとおりであり、それとは別に、あなたが独自の権利を有しているとは考えにくいです。

 もちろん、預貯金がそのままあれば、将来あなたが預貯金を相続できるという期待を持たれたでしょうが、それは単なる《期待》にすぎず、権利とまでいえるようなものではありませんので、不法行為が成立しないと考えられます。


【法定相続人の資格を喪失させることも考えられるが・・・】

 全額取得するための方策としては、弟さんらを相続人でなくするという方向もあります。

 民法上には相続人の欠格(末記の条文をご参照ください)という制度があり、これに該当するなら弟さんらは法定相続人の資格を失います。

 しかし、相続人資格を否定するには、被相続人を殺害した、あるいは遺言を偽造したなどの極めて違法性の高い行為が裁判所で認定される必要がありますが、それは現実問題として主張立証が困難でしょう。

 よって、本件ではやはり相続分を超えて不正出金の全額返還請求をすることは難しいと言わざるを得ないでしょう。


【特別受益などを主張して相続分を増やすしかない】

 結局、あなたの立場としては、弟さんらに特別受益などがあったとして、その相続取り分の減額を主張するしかないという結論になります。

 なお、裁判ですので、あなたの期待を侵害したとして全額返還を請求を(それが認められる可能性は低いにしても)主張することは自由ですし、そのような主張をしていると裁判所が3分の1以上を出さないかと和解で被告を説得するかもしれませんので、存分に自分の気持ちを訴訟に反映させられるといいでしょう。


《参考条文》
相続法 第891条 (相続人の欠格理由)
 
次に掲げる者は、相続人となることができない。
1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は 至らせようとしたために、刑に処せられた者
2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又 は変更させた者
5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者


大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:27 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続による所有権取得前の不動産の管理責任【Q&A №405】

2014/10/23
 調停で遺産相続が確定している土地、建物の管理責任は調停での確定範囲で負うと、考えて宜しいのでしょうか? (登記は死亡した祖父名のままです)

*遺産相続取得以外の建屋(未居住)から、強風で瓦が飛び隣地の家に損害を与えてしまいましたが、該当する
土地建屋を取得した、他の相続人の主張は遺産相続登記が完了していないので、私にも損害賠償を案分して支払え
と言ってきています。

ご教示宜しくお願い致します。

記載内容

相続登記 管理責任 損害賠償 所有者責任 占有者責任
(Sunny)


【まず、占有者が責任を負う】
 建物の管理(補修等)に不備があったため、台風などの強風で隣宅に被害を与えた場合、まず、建物占有者が隣宅に対して損害賠償請求をする義務があります。

【次に所有者が責任を負う】
 ただ、占有者がいない場合や占有者が十分な管理をしていたような場合には、建物の所有者が責任を負って損害賠償をすることになります。
 本件では占有者がいないということですので、所有権者が責任を問われることになります。

【調停後の事故の場合】
 ご質問の場合、被害を与えた時期が調停の後であれば、たとえ相続登記が完了していなくとも、調停により所有権を取得した人が、確定的に所有者になりますので、損害賠償責任があります。
 他の相続人は、所有権を全くもっていないのですから、損害賠償をする必要はありません。

【調停前の事故の場合】
 調停成立前に隣家に被害をあたえたというのなら、その時点では遺産分割は完了しておらず、法定相続人間で共有状態になります。
 この場合には、共有者全員が損害賠償責任を負うことになります。
 ただ、その範囲がどこまでかは難しい問題です。
 仮に法定相続人が2名であり、損害賠償額が200万円であるとした場合、100万円ずつ損害賠償をするのか、それとも共有者各人が連帯して200万円(要するに全額)の支払い債務を負うのかという疑問があります。
 私個人としては、持ち分(法定相続分)の限度でしか責任を負わない(先程の例で言えば、100万円の限度での責任になる)ということで理解していますが、この点をはっきり明言した文献や判例を見つかりませんでしたので、あくまで個人的な見解としてご参照ください。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:50 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★★生前の預金の使い込みは、隠した者勝ちなのか?【Q&A №395】

2014/08/12
  昨年母が亡くなりました。

 父は10年前に亡くなっており、相続人は私と弟の2人です。

 母の相続に際し、同居していた弟が母の預貯金を勝手に引出していたことが預金履歴の調査で判明しました。

 母は10年前から介護老人保健施設に通入所しており、亡くなる4年ほど前には胃瘻を施し、痴呆も進んでおりました。

 元々生活が質素だったこともあり、施設の費用を含め、生活費は年金で充分賄えていたはずですが、10年間で預金が1500万目減りしていました。

 銀行の取引履歴は全て入手しており、預金の引出しはATMではなく窓口で行われているので、銀行に照会すれば弟またはその嫁が引き出したことは明らかになります。

 調停や訴訟は不可避と考え弁護士に相談していますが、弁護士からは、「相手側は母親に頼まれただのいくらでも言い訳は言ってくるはずで、結局のところ隠した者勝ちになるのが実情なんですよね、、」と言われ落胆しました。

 引出伝票などで弟が預金の引出しをしたことが明らかになっても、使い込みの充分な証拠にはならないのでしょうか?

 ご教示ください。

記載内容

不正出金 使い込み 隠す
(なお)





【そんな弁護士いるんですね・・】

 相談した弁護士が「相手側は母親に頼まれただのいくらでも言い訳は言ってくるはずで、結局のところ隠した者勝ちになるのが実情なんですよね」と言われたとのこと。

 あなたががっかりと落胆する気持ち、よくわかります。

 難しい面があるのは事実ですが、そこを何とかするのが弁護士なのに・・というのが私の率直な気持ちです。



【出金伝票を確認する】

 まず、《誰が引き出したのか》という点が問題になります。

 カードではなく、窓口で引き出したようですので、金融機関に払い戻し伝票のコピーをもらうといいでしょう。

 過去10年間という長い期間にわたる預金の引き出しの場合、私が経験したケースでは、当初はお母さんが引き出していたが、途中から弟さんが代理人として、その後、弟さんがお母さんの署名を偽造して引き出していました。

 もし、伝票の筆跡が弟さんであれば、弟さんが引き出したことになり、その分を不当利得あるいは不法行為を理由として、返還請求損害賠償請求するといいでしょう(当事務所の扱った事件で返還を認めさせたケースは多数あります)。

 次に、弟さんが代理人として引き出した場合にも、お母さんに渡したことが立証できない限り、弟さんが使いこんだという前提で対応するといいでしょう。

 ただ、お母さんの筆跡であるとすると、その分は、お母さんが引き出したということになり、弟さんがお母さんから生前贈与してもらったというような証拠を探す必要があります。

 なお、お母さんが多額の金銭を必要としないような場合、その引き出した金銭は手元現金として残っているはずです。

 その点も訴訟になった場合の争点になります。

 いずれにせよ、まず、出金伝票を取り寄せ、その内容を検討することが第一の作業です。



【使途は何かを確認する】

 次に、《出金したお金を何に使ったのか》という点が問題になります。

 既に死亡しているお母さんから使途を聞くことはできませんので、何に使ったかは弟さんから聞くことになります。

 お母さんが多額の出金をして、弟さんに生前贈与されている場合も多いでしょう。

 もし、生前贈与ならその分を遺産に持ち戻して、遺産分割計算されることになります。

 ただ、同居している弟さんの生活費に使われたというのなら、親子間の扶養義務の履行として、その生活費として支出された分は生前贈与とみなされない可能性があります。




【財産が残っているのかどうかも要確認事項です】

 いずれにせよ、この種の案件は訴訟まで行くことも想定しておいた方がいいでしょう。

 なお、最初から《弱気で逃げを打つ》ようであれば、弁護士を替えることも考えるといいでしょう。

 なお、遺産がほとんどのこっておらず、また、弟さんも財産を持っていないような場合、裁判に勝っても、結局は回収できない場合もあります。

 回収の可能性があるのかどうか、この点も弁護士と相談されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:40 遺産分割 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

息子名義の借名預金という言いがかりと名誉毀損【Q&A №388】

2014/06/17
 おじいちゃんが亡くなり、面倒を見ていた父が遺産相続をすることになったのですが、父の弟が、きっちり半額相続するだけでなく、父名義の口座も、実はおじいちゃんの口座で借名口座だから、その口座のお金も半額払えと言っています。
 もちろんそれは叔父の妄想?お金が欲しいだけ?の言いがかりです。
 叔父は裁判を起こすと言っています。
 父は何も後ろめたい事はないのですが、法律系のテレビ番組で弁護士の意見がわれることがあるので、もし、裁判で負けてしまったらこれから老後の蓄えが減ってしまうと心配しています。
 私は父が一生懸命働いて貯めたお金を、叔父の嘘で取られてしまうのはかわいそうすぎてなんとかしてあげたいです。
 裁判でどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
 また、言いがかりに対しての労力や経費を、名誉毀損で叔父を訴えて、取り返すことはできるのでしょうか?

記載内容

借名預金の立証方法 名誉毀損 元手
(かっぱ)


【預金原資を誰が出したのかが最重要】
 このブログでも何度か取り上げておりますが(Q&A №358Q&A №300Q&A №274ほか参照)、以前には家族など他人の名義で預金を作る《借名預金》または《借名口座》が多数存在した時期がありました。
 その結果、預金口座を実際に動かしていた人物と名義人との間にずれが生じ、裁判で争われたケースは少なくありません。
① このような裁判で一番重視されるのは、「誰がその預金の元手となる金銭を出したのか」という点です。
 当時の被相続人(お祖父さん)と口座名義人であるお父さんの収入状況を確認し、その預金がお父さんが出したものであるという証拠を集めておく必要があるでしょう。
② 次に、預貯金通帳とその取引印を誰が保管していたのかも重要な点になります。
 もし、あなたのお父さんがその預金の原資を出しており、かつ、預貯金通帳と印鑑も持っておられたというのなら、お父さんの口座と認定され、訴訟を起こされても負けることはないでしょう。

【裁判は証明責任を負う方が証明する必要がある】
 裁判には証明責任というものがあります。
 証明責任を負う者が証明できない場合、その人の主張は認められません。
 言い換えれば、証明責任を負う者がその主張する事実を証明できない場合、その人が敗訴するということになります。
 今回の質問の場合、口座名義人がお父さんですので、それが被相続人であるお祖父さんのものであることを主張するなら、叔父さん(お父さんの弟)が、前項の①の預貯金の元手を出したのはお祖父さんであることや、②の通帳や印鑑の管理などはお祖父さんがしていたことなどを証明する必要があり、それができなければ、叔父さんが訴訟を起こしても敗訴することになります。

【名誉棄損の損害賠償は難しい】
 名誉棄損で叔父さんに損害賠償をしたいということですが、難しいです。
 預金が誰の財産であるかについて、法定相続人である叔父さんがその見解を主張することはなんら違法行為ではありません。
 結果として裁判で叔父さんの主張が通らなかったとしても、その主張を展開したことが不法行為であるとして損害賠償義務を負うことは考えにくいです。
 その理由は、まったく関係のない第三者の名義ならともかく、前述の通り以前は借名預金が多数存在しましたので、そのような借名預金の一つではないか、と疑ってかかることも(たとえ結果的にはなんら根拠のない主張であったとしても)違法行為とまでは言えず、損害賠償の請求をすることは困難であるからです。
 参考まで言えば、名誉毀損行為とは、「あの男は父親の財産を横取りした犯罪者だ」などと町中に張り紙をしたり、新聞や雑誌で報道したりするなど(現代ならインターネットで書き立てることもこれに該当するケースがあるでしょう)、お父さんに対する社会的評価(世間の評価)を低下させる発言を(基本的には第三者に対して)行うことであり、今回の相続の当事者間で遺産に対する評価を主張し合うこと自体は、なんら名誉毀損とは言えないでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
12:01 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★兄弟の口座に移した両親のお金【Q&A №382】

2014/06/04
  両親が高齢のため施設に入るにあたり、これまで遠方にいた弟がそちらの施設に入れるという話になり、この度両親を転居させたのですが。 その際今後両親がボケてお金を引き出せなくなるからと、弟は自分の口座に両親の貯蓄したお金と、母親を銀行の窓口に連れて行き定期を解約し1000万円を移しました。 また実家も、今後の病気に備えるということで弟が売却の手続きをし、この度1400万円ほどで売れたのですが、こちらも自分の口座に入れる予定で、こちらには一切渡さないと明言しております。 この場合、両親の名義ではなくなってしまったお金・財産の相続はどうなるのでしょうか 相続そのものが発生しないのでしょうか こちらの言い分は一切を認めないため、本人とまともな対話もできず困っています、彼は両親に出す生活費を切り詰めており、親族のことながらあまりよくない予想を抱かざるおえません。 今後いずれくる時に介護で使いきったと言い切られれば追求も難しく、この場合はどうなるのか教えていただけたらと思います。

記載内容

介護 贈与 預かり金
(立川)


【介護費用の預託になる】
 弟さんとご両親との権利関係としては、ご両親が弟さんに《将来の介護費用》として《金銭を預けた》ということであり、少し難しく言えば《介護費用を預託》ということになります。
 そのため、弟さんとしては、両親の介護のためにのみ、預かった金銭を支出することができるはずです。
 しかし、現実の問題としては、介護のためだけではなく、弟さんの私的な目的に使用されるのではないか、あるいは介護のためと言っても本当に介護のためであることをどのように証明してくれるのか・・・等、いろんな疑問が浮かんできます。
 ただ、ご両親が生きている限り、あなたにはご両親の金銭問題について、なんらの意見をさしはさむ権利はありません。

【弟さんの管理している預託金の返還を求めることは・・】
 現時点では、ご両親は認知症等で物事の判断がつかないという状態ではなさそうですが、将来、認知症になり、その程度がひどくなった場合には、あなたとしては、ご両親につき成年後見人選任の申立を家庭裁判所に提出するという手段があります(その方法はQ&A №280Q&A №349Q&A №376をご参照ください。)。
 成年後見人がつけば、その時点でのご両親の財産は全て後見人が管理します。
 その段階で、ご両親が弟さんに預けていた金銭を、後見人が返還してもらい、その管理下に入れます。
 しかし、弟さんが既に私的に流用していた場合、その分の返還請求を成年後見人がしてくれるかというと、その可能性は必ずしも高くはないでしょう。
 成年後見人としては、とりあえず現在の財産の管理という点に重点があり、過去に散逸した財産の回復というところまでしない場合が多いようです。

【相続が開始したときにはどうなるか】
 お父さんあるいはお母さんが死亡したとき、相続が開始します。
 その時点で、預託していた金銭が残っているのであれば、その金銭の返還を求める権利(預託金返還請求権)は遺産になりますので、あなたは法定相続分に応じて返還請求ができます。
 又、預けた金銭のうち、弟さんが自分の必要に応じて使った金銭があれば、ご両親としては目的外使用として、損害賠償請求ができますので、この権利も遺産になり、法定相続分に応じてあなたが弟さんに賠償請求をすることができます。

【問題は証明できるかどうか】
 ただ、損害賠償を請求する側(あなた)としては、弟さんが私的に流用したという点を証明する必要があります。
 本来は生前からそのような証拠を集めるのが望ましいです。
 しかし、ご両親の死亡前には、法律的な意味では、あなたが弟さんに直接、預託金の使用状況を確認したり、裏付けとしての領収書等を請求することはできません。
 もちろん、あなたが請求して、弟さんがそれに応じてくれればいいのですが、そのような申入れは弟さんの反発を招くだけの結果に終わる可能性が高いと思われます。
 又、ご両親としては、法律上、使途や金額の報告を求め、あるいはその裏付けを請求できるので、あなたがご両親を説得して、そのような申入れをして頂くということも考えられますが、実現する可能性は低いでしょう。
 そうすると、ご両親が死亡した後に、早期に、弟さんにどれだけの金額を何に使ったのか、その裏付けはあるのかを確認されるといいでしょう。
 又、その一方で、ご両親のおられる介護施設等に支払った金額を確認されるといいでしょ。
 ただ、残存している金額が、介護した期間や介護内容を比較してあまりにも少額というのであれば、調停や訴訟で返還を請求することになります。
 そのような場合は、早期に相続に詳しいお近くの弁護士に相談され、その後の対処方法のアドバイスをもらうといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:31 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡祖母が購入したピアノの所有者は誰か【Q&A №361】

2014/04/02
 10年ほど前に亡くなった祖母が、亡くなる前に私にピアノを買ってくれました。
 3年前に両親が離婚し、父は家に残り母が家を出て、私は母方につきました。ピアノは置き場に困ったことと父が「置いておいてもいい」と言っていたこともあり、その後も買ってもらった当時に住んでいた家(父が住んでいる家)に置いていました。ところが2年ほど前から、父が「このピアノは自分の家にあるんだから自分のものだ。」と主張するようになりました。言われる都度に私も「ピアノは私のものだ。」と主張していたのですが、先日用事で父の住んでる家に行った時にピアノが無くなっていることに気付き、父を問い詰めたところ「売った。あれは俺のものだからお前に売った金の請求権は無い。ここに置いていたお前が悪い。」といったようなことを言われました。また、売って手に入れたお金を何に使ったかを聞いたところ「色々」と口ごもるばかりで答えてくれません。私としてはピアノは祖母の形見でもあったので何とか売った分のお金だけでも取り返したいのですが、この場合は請求することが可能でしょうか?
それとも父の言う通り本当に請求出来ないのでしょうか?

記載内容

生前贈与 横領
(Mira)


【ピアノは誰の所有になるのか・・】
 今回の質問のキーポイントは、《ピアノの所有権は誰にあるのか?》という点です。
 この点により、回答が分かれてきます。

【お祖母さんがあなたに贈与した場合】
 あなたが、お祖母さんからピアノを贈与されたのであれば、ピアノはあなたの所有となります。
 従って、あなたの所有であるピアノを、お父さんに預かってもらっていただけなのに、それを無断でお父さんが売却したことになります。
 その場合、あなたとしてはピアノという物に対する所有権を侵害されたのですから、《ピアノの所有権を侵害された》ということで、お父さんに対してピアノの時価相当の損害賠償請求をすることが可能になります。
 通常の場合、あなたが請求できるのは、お父さんがした売買で受け取った売却代金額です。
 ただし、お父さんが、ピアノを安く叩き売ったのであれば、現実に受け取った売買代金ではなく、それより高いピアノの相当額を請求することも可能です。

【お祖母さんが自分の物と考えていた場合には】
 ただ、お祖母さんとしてはあなたに弾かせることは考えていたにしても、あなたにあげる(贈与)とまで考えていなかったというのであれば、所有権はお祖母さんのものであり、それを相続でお父さんが取得したということになります。
 この場合、お父さんがピアノを売却することについては、なんら問題はなく、あなたが売買代金を請求することはできません。

【所有権の証明はあなたがしなければならない】
 あなたは自分の所有権が侵害されたことを理由として、損害賠償請求をするのですから、ピアノがあなたの所有という点をあなたが証明する必要があります。
 もし、損害賠償請求をするのなら、生前、お祖母さんがピアノについてどのように言っていたのか、又、それを証言してくれる人は誰なのか、証拠集めをしておく必要があるでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:17 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

印鑑を無断盗用した遺産分割協議書【Q&A №340】

2014/01/15
 ①遺産相続協議書の見せられたのは母親死亡後の相続の件時で訪問した平成22年6月29日に初めて知った。弟Aは(平成21年7月死亡)は昭和51年5月1日に遺産相続協議書を作成して所有権移転登記は昭和51年5月30日完了していた。 勝手に弟の配偶者(B)に署名させて印鑑を押印後に印鑑登録を要請、印鑑署名書は代理人申請で取得していた 印鑑登録は昭和51年5月15日です。署名の事実もなく正本も渡されていない。 母親(平成22年5月11日死亡)と父親(昭和37年7月30日死亡)の相続調停で相手方4名は弟Aの相続人配偶者とその子3人 申立人2名は私Cと妹は弁護士に相談して立川裁判所に調停を平成22年7月申請した。調停で父親の相続は訴訟で争うとの回答書に対して申立人弁護士は「父親の相続は経費が掛かる、時効が成立しているから・・
 経費対成果を考えると母親の調停で進めましょう」との事で母親の所有権のある建物の20分の9を相手側が支払うことで調停平成23年5月27日に成立しました。
②配偶者(B)とその子Dは敷地内に弟Aが不正な方法で土地所有権を得た敷地364,52㎡の一部を121,58㎡土地文筆登記平成14年6月14日して家を新築した。 当時弟Aに確認したら借地代として税金分は貰っていると話をしていたのである。調停前平成22年6月17日に配偶者とその子D.E2人持ち分242,94㎡を3/1づつ移転登記され、且配偶者(B)はその子Fは文筆登記された121,58㎡土地移転登記していた。

記載内容

実印 印鑑登録 偽造
(知世子)


【時効制度について損害賠償請求にも時効がある】
 ご相談内容に質問部分が記載されておりませんでしたので、当方で問題点を推測し、回答します。
 まず、お父さんの遺産分割について、あなた(さらには妹さんの)印鑑が勝手に印鑑登録され、その実印が使用されて、遺産分割協議書が作成されたとすれば、それはあなた方の意思に基づかない違法かつ無効な遺産分割協議であり、その協議書を使ってお父さんの遺産である土地等の不動産登記もされたのであれば、その登記も効力がありません。
 ただ、法律では、無効な権利関係といえども、権利者としての外形が長く続くのであれば、その外形を権利として認めようということで、取得時効という制度を設けています。
 又、権利を長く行使しないのであれば、その権利の行使を認めなくする消滅時効という制度も認めています。

【弟さんの行為については不法行為基づく損害賠償請求が可能だったが・・】
 弟さんのした行為はあなた方の遺産を取得することを妨害したもので、あなた方としては不法行為による損害賠償請求ができることになります。
 しかし、不法行為はその行為を知ったときは、知ってから3年間、知らない場合にも不法行為時から20年で時効に消滅します。
 今回のケースでは、その行為があった昭和51年から約40年近くが経過しています。
 あなたの委任された弁護士が時効というのは、その消滅時効のことを言っているのでしょう。
 また、仮に本件が私文書偽造罪などにあたるとしても、やはり公訴時効という制度があり、警察が捜査し裁判にかけることができる期間も制限されています。

【登記の無効を争うことは可能かもしれないが・・】
 ただ、弟さんのした相続登記が無効というのなら、現在もその点を指摘して、登記無効の訴訟を提起することも可能です。
 しかし、この裁判ではあなた方が、弟さんが不法行為を行ったことを証明する必要があり、それができなければ敗訴することになります。
 あなた方の依頼された弁護士としては、あまりにも過去のことであるので、その点の立証も難しいと考え、お母さんの相続だけに限定したものと思います。
 又、弟さんが登記してから約40年間、弟さん及びその家族はその不動産を自分の名義で使用し、かつ、固定資産税等の税金を支払っており、所有者としての外形を維持してきましたので、取得時効が完成している可能性が極めて高いです。
その判断が正しかったのかどうかは、詳しい事情を知らないためなんとも判断できませんが、約40年近く前の事実を証明するのはかなり困難なことであると思います。
又、取得時効も完成しているものと思われるので、あなた側の弁護士の判断もやむをえないものではないでしょうか。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:08 遺産分割 | コメント(3) | トラックバック(0) | 編集

★消えてしまった母の預金【Q&A №330】

2013/11/25
 昨年10月に母が亡くなり、現在遺産分割調停中です。姉(三女)は実家の隣に養子義兄と住み母の面倒を見てました。葬儀の後預金通帳を見せず隠したり破ったり、履歴を改ざんしたりしてました。一度は使い込んだことを認めましたが、後日弁護士をたて、母の同意のもとに引き出したといいだしました。
 平成13年、母は転倒した事がきっかけで認知症が出ていました。正常な判断はできなかったと思います。姉夫婦が使った金額は12年間で2~3000万円はあります。先日、留守中に入るとこまるからと実家のカギをつけかえたと言われました、母を参ることもできません。遺産は姉夫婦も平等に分けないといけませんか。。使ったお金を取り戻すことはできないのでしょうか。
 鍵の件は住んでるものが優先すると相手方の弁護士に言われました。残ったお金は3人(4人姉妹)で分けたいと思うのですが法的にどうなんでしょうか。

記載内容

預金 使い込み 認知症
(ひまわり)


【不正出金か?特別受益か?】
 ご相談いただいたお母さんの預金からの多額の出金が、お母さんに無断(あるいは認知症で判断能力を失っていた状況下)であった場合、お姉さんが不正出金したものとして、お姉さんに対して不当利得の返還請求ないし損害賠償請求をすることが可能と思われます。
 正常な判断ができたかどうかは、当時の事情を知る人や、転倒時に通っていた病院のカルテなどから判断する必要があると思いますので、一度問い合わせてみるとよいでしょう。
 他方で、相手方弁護士が主張するとおり、お母さんの同意を得て引き出したと言うことであれば、(使途にもよりますが)お母さんからお姉さんへの生前贈与があったとされる可能性が高いように思います。その場合、いわゆる特別受益として、お姉さんが本来相続する財産を生前に前渡ししたかのような扱いがなされる可能性があります。

【特別受益を考慮した遺産分割を】
 仮にお姉さんの出金が特別受益にあたるとされた場合、相続分に関しては、現存する遺産を平等に分けるのではなく、お姉さんの相続分はすでに前渡しされているかのように扱い、遺産分割をすることになります。現時点でどの程度の預金が残っているのかは定かではありませんが、もし生前贈与の額が遺産の大半に及ぶ場合であれば、現時点でのお姉さんの相続分は残っておらず、結果として現存する遺産を他の3人の姉妹で分割することになることもありうるでしょう。

【それでもお姉さんの合意が必要】
 ただ、仮にお姉さんの相続分が残っていないとした場合でも、お姉さんが相続人であることに変わりはありません。そのため、他の3人の姉妹で遺産を分けるとした場合でも、お姉さんから遺産分割内容について同意してもらう必要があることにはご注意下さい。
 なお、実家の鍵については、基本的に居住者であるお姉さんが立ち入りを認めなければ、たとえ親子(さらには兄弟)であっても、お参りという理由があっても立ち入りはできません。そのため、鍵を変更されたとしても違法ではありません。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:38 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

無断で名義変更された株式【Q&A №329】

2013/11/25
 相続財産に土地や建物、株があります。
 このうちの株はタンス株でしたが相続人の一人【以後Aとします】が勝手に持ち出し、ほかの相続人の同意なしにAの名義としてしまいました。
 本来同意なしにできないはずですが、預けてある証券会社によると株の電子化の前はできていて、現在Aの同意なしに内容の開示はできないとのことでした。

 このままではAに使われてしまうか他人に譲渡する可能性があります。
 まず弁護士会照会で相続財産を把握しようと思ったのですが、名義を元の被相続人に戻すか、差し押さえるかどちらかができないと照会する意味もないかと思い、その可否をおたづねしております。

 おそらく死んだ人の名義にはできないと思われるので、差し押さえになるかとおもいますが、被相続人のものであり他の相続人が同意していないことを証明できれば差し押さえは可能ですか? またこの場合弁護士を通さず自分ですることはできますか?
 弁護士会照会や調停になると費用が高いため、相続財産の照会をするかなど迷っています。

記載内容

株式 取引履歴照会 無断名義変更

(すぎもと)


【名義の返還より損害賠償を考える】
 遺産である株式については、法定相続分に応じて、各相続人が共有(正確には準共有)しています。
 その株式をAさんが無断で単独名義にしたということですので、他の相続人としては、自分の相続分に対応する株式を、自分に返還せよと請求することができます。
 ただ、株券の電子化により手続きが複雑になります。
 そのため、株券の返還を求めるより、株券の名義の無断変更で損害を受けたとして、損害賠償請求をするのがいいでしょう。

【仮処分や仮差押も考える】
 「このままではAに使われてしまうか他人に譲渡する可能性があります」ということですが、そのような移転の可能性があるなら、仮処分又は仮差押えという手続きをするといいでしょう。
 株券の返還を求める権利があるという前提で株券の移転を禁止する仮処分も考えてもいいでしょうし、損害賠償請求権があるという前提でAさんの財産を仮差押えしてもいいでしょう。
 仮処分や仮差押えは、保証金を積んで、裁判所に株券や財産の移動を暫定的に禁止してもらう手続きですが、このような手続を希望されるのであれば、専門家である弁護士に依頼するといいでしょう。
 なお、仮処分・仮差押えをしながら、訴訟をすることも可能ですが、詳しくは依頼した弁護士にご相談ください。

【株式の履歴は、被相続人の方からの調査を考える】
 前記損害賠償請求や仮処分、仮差押えの手続きをする場合には、株式がAさんに無断移転されたという点だけではなく、いつ、どこのどのような株式が誰に移転されたのかを明らかにする必要があります。
 質問によると、名義移転された株式に対する照会について、「現在の名義人の同意なしに内容の開示はできない」という回答があったようです。
 相続人Aはあなたにとっては他人になりますので、Aさんの履歴であれば、その同意なしには開示されないのはやむをえないところでしょう。
 しかし、被相続人名義の株式の照会なら開示される可能性があると思われます。
 次の事項を照会されるといいでしょう。
① 被相続人保有の株式が現在あるか、あるいは過去10年間の間に存在したかどうか。
② あるとしたらその種類、数量等の明細
③ 現在ないが、過去にあったとしたら、いつ、どの種類の株式及びその数量が誰に移転したのか

 なお、被相続人の照会では、現在、株式がどうなっているのか(たとえば現時点でAが保有しているのか)は明らかにはなりませんが、それでも最小限度の事実は確認できるでしょう。


大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:20 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母の預金が生前に引出された場合【Q&A №306】

2013/08/19
 母が亡くなり、遺産がほとんど残っていないのをおかしいと思い、母の銀行口座を調査しました。2年間で主にATMから2000万円がおろされていました。しかし、母と同居していた兄がしらをきっています。母の入院中も引き落とされており、通帳も兄が管理していたので兄がおろしたことに間違いないと思っています。遺産相続の対象にしたいと思っていますが、難しいでしょうか?
よろしくお願いします。


記載内容

生前贈与 預金からの引出 不正出金 入院 同居 不当利得返還請求 特別受益

(jinjing)


【お母さんが同意していない場合は不当利得返還請求ができる】
 お母さんの生前の預金引き出しについては、お母さんがその出金を了解していたのかどうかが問題になります。
 お母さんが入院しており、かつ、お兄さんがお母さんと同居し、預金も管理していたというのであれば、お兄さんが独断で出金をした可能性が高いと思われます。
 その場合には、お母さんとしてはお兄さんに出金分の返還請求をすることができます(不当利得返還請求権また不法行為による損害賠償請求権)。
 お母さんが死亡すると、この返還請求権は遺産の内容になりますので、各相続人に相続されます。
 そのため、各相続人がその法定相続分に応じて、お兄さんに対して引き出した金銭の返還請求が可能です。

【もし、お母さんの同意があれば、特別受益の問題となる】
 もし、お母さんの同意で預金からお金を引き出していたというのであれば、お母さんが生前にお兄さんに贈与したという可能性があります。
 この場合、金額が多額ですので、お兄さんは生計の資本としてお母さんから特別受益を受けたということになり、その贈与額を遺産に持ち戻して、遺産分割することになります。

【専門家に相談を】
 お兄さんがしらを切っているということであれば、調停や訴訟等の手続きが必要です。
 不当利得返還請求や特別受益がからむ案件は当事者間ではなかなか解決が困難です。
 できれば、早期に弁護士に相談され、必要に応じて事件を委任されるといいでしょう。


大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:27 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

贈与を装って母の家を売却【Q&A №287】

2013/06/19
 50代主婦。二人姉妹の妹が母が施設に入所する際、生前贈与を母から受けたとして、家、土地を名義変更し売買していた事がわかりました。母は売られたことは知りません。また、母が加入していた入院給付つきの保険も解約されていました。母は再
婚し義理の父が亡くなったあと1人で暮らしており私たちは養子縁組をしていなかったので後継人制度を申し込む事になり、私は署名捺印し郵送しましたが申し込みはされていませんでした。
 施設入所も実家のかたずけも一切知らされず、こんな事は許されるのでしょうか?保険の解約は母が具合が悪くなり病院に搬送された時わかりました。実家は遠方で私たちは東京在住です。

記載内容

生前贈与 意思能力 情報提供 保険解約


(ママつる)


【お母さんに判断能力はあったのかが問題】
 お母さんの不動産が妹さん名義になったということですが、その名義変更をした時点で、
① お母さんが本当に贈与をする意思があったのか。
② また、お母さんに正常な判断能力(法的には意思能力といいます)があったかどうか
が問題となります。 
 このうち、①については、お母さんが死亡していれば、《贈与する意思がなかった》という点の証明が困難です。
 そのため、②の意思能力のなかったことを証明して、生前贈与が無効であるという主張をするといいでしょう。
 意思能力の有無については、介護施設に入所された当時の記録を施設や病院から取り寄せて、判断することになります。
 もし、お母さんに意思能力がなかったのであれば、お母さんから妹さんへの名義移転は無効であり、また、第三者への売買も無効になり、その不動産が遺産として戻ってくる可能性があります。
 ただ、この意思能力の判断や資料の取り寄せは難しいので、できれば法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

【保険解約について】
 保険解約についても、もしお母さんの意思に基づかないか、あるいはお母さんに意思能力がなければ、解約は本来、無効です。
 ただ、現実に保険が解約されているのであれば、妹さんが受け取った返戻金があればその半分の返還請求をすることが可能です。
 不当利得返還請求あるいは不法行為の返還請求というものですが、弁護士に相談される場合には、この点も相談されるといいでしょう。

【法的な情報提供義務はない】
 妹さんとしては、お母さんを施設入所させ、実家の片付けをしたようですが、常識的に、姉であるあなたにこのような事実は知らせるべきことです。
 ただ、法的な義務があるかといえば、そこまでの義務はありません。
 お母さんが自宅を処分する際に、妹さんに贈与するということを知らせる義務があるかといえば、やはりそのような義務までは法的にはありません。


大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:30 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

借地上にあった父の家の使用料【Q&A №285】

2013/06/19
 30年前に父が亡くなりましたが、兄妹の間で遺産(家、借地権)分割の手続きをせずに放置してきました。
 約10年前に地主の希望で家を壊し、その場所にマンションを建て、借地権と交換に1フロアを与えられました。
 そのマンションはどういう理由か兄の名義になっていて、兄夫婦は10年間住み続けています。
 私は別居で何の利益も得ていません。
 近々、遺産分割の協議を予定していますが、仮にそのマンションを兄妹で50%ずつ共有名義に変更できた場合、過去にさかのぼって、兄夫婦から、過去10年間住み続けた費用に相当する金額をもらう権利があるでしょうか。
 よろしくお願い申し上げます。

記載内容

借地 使用貸借


(nob)


【自分の家に住んでいるので、賃料相当分の請求はむずかしい】
 お兄さんの住んでいるマンションの1フロアは、遺産そのものではありません。
 お兄さんが、家主からマンションの1フロアをもらって、自分の単独所有名義にしているのですから、お兄さんとしては自分の家に居住していることになり、そこに居住することでは、なんらあなたの権利を侵害しているわけではありません。
 従って、お兄さんがマンションの1フロアをもらった後の過去10年間の賃料に相当する分をお兄さんに請求することはむずかしいでしょう。

【借地権を消滅させられたことの損害請求は可能】
 問題は、お兄さんがマンションの1フロアをもらうときに、あなたの借地権を消滅させたことです。
 お父さんが死亡した時点では借地権とその上の家はあったのですから、あなたも法定相続分に応じて、その借地権及びその上の家を相続しています。
 それなのに、お兄さんは、地主の希望で家を壊して借地権を消滅させました。
 この借地権等を消滅させることについては、共同相続人であるあなたの了解が必要です。
 あなたの意向を聞き、借地権についてのあなたの相続分を尊重するべきでした。
 それをせずに、借地権を消滅させ、マンションの1フロアをもらったという点で、お兄さんの行動はあなたの権利(相続分に応じた借地権及び家の持分)を侵害しており、権利侵害行為ということができます。
 あなたとしては、お兄さんに対して、あなたが相続した限度での借地権等を侵害されたとして、その損害(金銭請求)を主張することができます。

【金銭賠償が原則だが、交渉であるので・・】
 マンションの1フロアの半分をもらうことをお考えのようです。
 あなたの相続した借地権等を消滅させられたことによる損害は、本来は金銭で賠償されるべきものです。
 ただ交渉ごとですので、あなたとしては、その金銭賠償の価額がマンションのワンフロアの2分の1に相当すると理解して、1フロアの2分の1の所有権移転を請求することも可能ですし、もちろん、損害賠償請求として金銭で請求することも可能です。
 相手方の出方に応じて、どちらかの方法を選択するといいでしょう。

 あとはお兄さんとの人間関係にもよるでしょうが、前記のような話をお兄さんと交渉しつつ、本来ならお父さんの家(とそれに代わるマンション)の利用権について交渉されるのがよいでしょう。
 また、ご質問からは明らかではありませんが、マンションのフロアを地主さんからもらうまで、お父さんの建物は誰が住んでいたのでしょうか?
 もし、お父さんの生前からお兄さんが住んでいて、その流れのままお兄さんが住み続けていたということであれば、お父さんとお兄さんの間には、無料で住み続けることができることの合意(=使用貸借契約と言います)が成立していた可能性があります。
 このような使用貸借契約が成立していた場合には、お父さんが亡くなった後も、遺産分割協議が成立するまではお兄さんが引き続き無償で使用することができるというのが裁判所の扱いです。
 あとは、お兄さんのほうから、「使用利益を請求するなら固定資産税も半分負担するように」との反論が返ってくるでしょうが、使用利益に比べればそれほど高いものではないでしょう。


大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:58 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

扶養義務と特別受益【Q&A №249】

2013/03/04
 相続人Aが、17歳11ヶ月の時にひき逃げ死亡事故を起こし、被相続人から出しもらった約450万円で、弁護士費用・示談金を賄うことができた為、特別受益に該当すると思うのですが、相続人Aは、未成年であったので、親の扶養義務であり特別受益にはあたらないと主張しています。未成年とは言っても、15歳の春で専門学校を辞めており、フリーターのような感じで仕事はしておりました。
 未成年時に受けた贈与が特別受益として認められた判例を探しているのですがなかなか見つかりません。
 相続人Aが言うように、未成年時の贈与は特別受益にあたらないのでしょうか?
 また、そのような判例を探すにはどうしたら良いのでしょうか?
 宜しくお願い致します。

記載内容

扶養義務 損害賠償 交通事故 未成年

(ムーニー)


【損害賠償は本人である子の責任】
 交通事故を起こした本人は約18歳ですので、この年齢なら十分な判断能力(意思能力)があり、したがって事故の損害賠償は両親ではなく、その事故を起こした本人が責任を持って賠償するべき義務があります。

【扶養と特別受益との関係】
 未成年の子に対する贈与が特別受益にあたりうるのは、当該家庭の経済事情などに照らして一般的な扶養を超える部分のみであると考えられています。
 交通事故による賠償責任は、事故を起こした本人独自の責任であり、又、金額も高額で、通常の扶養義務をはみ出るものとして、特別受益に該当する可能性があると思われます。

【損害賠償の肩代わりと「生計の資本」】
 もっとも、特別受益にあたるには、「生計の資本」としての贈与であることが必要です。
 損害賠償金は事業資金や不動産購入資金などとは違い、「生計の資本」と言えないのではないかという疑問があります。
 しかし、相続人間の公平という観点から見れば、損害賠償金であっても持ち戻しを認めるべきという見解も主張可能です。
 参考までに言えば、住宅ローンや事業資金の借入金を親が連帯保証し、後に返済できなくなった子の債務を肩代わりして返済したケースでは特別受益にあたるとされた例もありますので、損害賠償金の肩代わりでも特別受益にあたる可能性があると考えていいでしょう。

【判例検索は裁判所のホームページで】
 最後に、判例の探し方ということですが、一般の方でもhttp://www.courts.go.jp/)">裁判所のホームページ(URL:http://www.courts.go.jp/にアクセスしていただければ、裁判所がキーワード等から裁判例を無料検索できるシステムを設置しています。
 その中で、ご自身の事例とよく似た事例を探し出し、今回の事例でもこれと同様の判断を下すべきだと主張されるとよいでしょう。
 又、大きな図書館なら判例検索システムを備えているかもしれませんので、電話等で確認され、利用されるといいでしょう。

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:37 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

虚偽の遺産分割協議書に押印をした場合について【Q&A №192】

2012/08/27
 虚偽の遺産分割協議書は有効なのでしょうか…?

 兄と妹の二人です。
(兄には嫁と子供二人・長女と長男がおります)
 父が平成17年、母が平成20年6月17日に亡くなりました。
 その後、遺産相続のことについては、縁を切ると脅されていました。
 平成22年12月4日に、急に、一方的に連絡があり、兄が勝手に作成してきた遺産分割協議書(同二枚)を差し出され、謝らないといけないことがあると、いきなり泣き出し私の相続金を借金の穴埋めに遣い込んでしまい私への遺産金が無くなってしまったと訴えられ、自分の(兄)家も手放さなければならいし…ばれたら、嫁とも別れなくてはならないと泣き脅しされ、泣く泣く、その場では、私が泣いてあげれば全てが丸く納まるのか!?と思ってしまい虚偽の遺産分割協議書(同二枚)の一枚(兄の保管用)のみにサインと捺印(実印)をしてしまいました。
 私の保管用の虚偽の遺産分割協議書には、兄のサイン捺印(実印)はありますが、私は白紙にしています。(納得は出来ていなかった為)それでも?
 一方の虚偽の遺産分割協議書にサイン捺印(実印)をしてしまった以上、無効にはならないのでしょうか。
 私は、結局、遺産金はもらえず仕舞いです。しかし一年前に、私に内緒で、新しい家を購入して引越しもされていました。

記載内容

詐欺 遺産分割協議書

(クマコ)


【遺産分割協議書は1通あればよい】
 遺産分割協議書は1通作成されれば、それで有効です。
 あなたが持っている協議書に印鑑を押していなくとも、お兄さんの持っている分割協議書は無効にはなりません。
 お兄さんの持っている分割協議書に相続人全員の実印が押され、印鑑証明書がついていると金融機関から遺産である預金の払い戻しも受けることができ、登記もできます。
 お兄さんはその1通を使って、遺産を自分のものにしたのでしょう。

【詐欺等で取り消しや損害賠償を求めることも考えられるが・・】
 お兄さんが述べた事情が虚偽であったとすれば、詐欺を理由として分割協議を取り消しできる可能性がありますし、不法行為による損害賠償も可能かもしれません。
 ただ、問題は、お兄さんの詐欺を証明できるかどうかです。
 裁判に勝つためには、詐欺であることをあなたが証明する必要があります。
 具体的に言えば、お兄さんが、質問にあるようなことを言ったことやそれが嘘であったことなどを裁判所にわかってもらう必要がありますが、その点の証明ができるかどうかという問題です。

【今後の手続きは?】
 さて、問題はどのような手続きでお兄さんから遺産を取り戻すかということです。
 もし詐欺を働くようなお兄さんであれば、返還せよと言っても、簡単に返還してくれないでしょう。
 通常は、遺産分割協議書が無効であるとして、遺産分割調停をするのが望ましいです。
 しかし、調停をしても、もし詐欺を働くようなお兄さんであれば、返還せよと言っても、簡単に返還してくれないでしょう。
 当事務所は、質問と似たようのケースを扱うこともよくありますが、残念ながら調停でまとまったケースは一例もありません。
 訴訟になった場合、勝訴の可能性もありますが、敗訴の可能性もあります。
 いずれにせよ、訴訟になる可能性があるケースですので、早期に、相続に詳しい弁護士に相談され、詳しく事情を説明した上で、その意見をお聞きになるといいでしょう。
 その上で、訴訟のリスクもわかった上で、事件を依頼するかどうかを検討されたことをお勧めします。
   http://www.hyogoben.or.jp/">兵庫県弁護士会 (URL:http://www.hyogoben.or.jp/)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
20:59 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
 | HOME |