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亡母が出してくれた治療費と持戻し免除【Q&A №556】

2017/01/26


【質問の要旨】

過去に治療費を出してもらった場合、相続時に考慮するのか

記載内容 治療費 相続分 引く

【ご質問内容】

昨年暮れ母親が亡くなったのですが、不動産の相続で問題が起きています

兄弟が4人いるのですが長兄が母の看病を嫌い闘病中に急に連絡がとれなくなり、そうこうするうちに母が亡くなりました。

葬儀にも来ず、残った兄弟で葬儀をあげたのですが、いざ相続の事になると急に出てきてお金をもらう事を主張し始めました。

長兄の言い分は4人で平等に分けるのは不公平というのです。

と、いうのは私が数年前ガンにかかりその治療費を母がだしてくれたのですが、その分の金額を私の相続分から引かなければ不公平だというのです

母が元気な時の話ですし、そんな事を言われるとは夢にも思いませんでした。

長兄のいうように均等に分けて相続するのは不公平にあたるのでしょうか

また、長兄にはどのように対処すればいいのでしょうか。

(るる)





【治療費は特別受益にならない】

あなたはお兄さんから、数年前病気になったときにお母さんに出してもらった治療費をお母さんの相続に際して考慮するべきだと主張されているようです。

これは、法律的に言えば、あなたがお母さんからもらった治療費が特別受益となるかどうかという問題です。

特別受益になるなら、治療費の額を遺産の中に組み入れて、各相続人の遺産額を計算する必要があり、その結果、あなたは遺産を治療費として先にもらっているから相続での取り分が少なくなる(場合によればゼロになる)こともあります。

この特別受益とは、民法903条で、「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」場合であると規定されています。

本件のような治療費は、お母さんが生きておられる間にもらったものですので遺贈ではありません。

また、婚姻、養子縁組や生計の資本のためにもらったものであれば、その贈与が相続財産の前渡しとみられる贈与であるか否かを基準として判断しますが、病気の治療のためのお金ですので、婚姻、養子縁組や生計とは関係がなく、相続財産の前渡しとは考えにくいでしょう。


【仮に特別受益になったとしても持戻し免除を主張することができる】

前項に記載したように治療費が仮に生計の資本としての贈与だと判断されたとしても、あなたの治療費として、お母さんがあなたのことを心配してお金を出してくれたというのであれば、通常お母さんとしては「治療費としてあげたお金は遺産分割において考慮しなくてよい」と考えていたと考えられます。

そこで、病気の治療費として出してくれたという事実から、持戻し免除の黙示の意思表示があったと考え、主張するとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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15:50 生前贈与・特別受益 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

何かをする時期について【Q&A №554】

2017/01/19


【質問の要旨】

母が亡くなるまでにできることはないか

記載内容 公正証書 実家 請求

【ご質問内容】

私は姉妹の姉です。

父の死後、話し合いもなく、父の死後公正証書が送りつけられ、数か月後税理士の方からの書類が届いた時は、母に全部渡す預貯金は妹名義になっていました

数年前に母を施設に入れ、実家に移り一人で住み始めました

こういう場合母が亡くなる迄手立てがないのでしょうか

私は過分に欲しいと思っているわけではありませんが、

妹も不動産などを両家からたくさん相続していますので、裕福ですので

私もきちんと請求したいと思っています。

(さくら)






【お父さんの相続に関しては遺留分減殺請求はできたが…】

お父さんの相続に関しては、預貯金はすべて妹さんに相続させるとの内容の公正証書遺言が作成されていたと理解しました。

このような遺言書があり、他の相続人になんらの遺産も来ないような場合でも、最低限の遺産(子であれば法定相続分の半分)を取り戻す権利があります(遺留分といいます)。

ただ、この権利は自分に遺産が来ないという遺言書があることを知ってから1年間以内に、遺言書で遺産をもらう人に請求(遺留分減殺請求といいます)する必要があり、この期間を過ぎると請求することができません(民法1042条)。

そのため、妹さんが預貯金をすべて相続したことにより、あなたやあなたのお母さんの遺留分が侵害されていた場合には、1年以内であれば、遺留分減殺請求をすることができました。

しかし、お父さんが亡くなってから既に9年経過しているということですので、お父さんの相続に関して、妹さんに何らかの請求をすることは難しいでしょう。


【実家に妹が住んでいても、あなたからは請求することはできない】

妹さんは両親も住んでいない実家に一人で住んでいるとのことで、あなたとしては妹さんに何らかの請求をしたいという気持ちでおられることと思います。

ただ、妹さんの住んでいる家の所有者はお母さんだと思われます。

そのため、妹さんに何らかの請求をするとしても、請求者はお母さんであり、今の段階では家の使用については、あなたが妹さんに対して何らかの請求をするということはできません


【お母さんが亡くなれば特別受益の問題になる可能性もあるが…】

将来的にお母さんが亡くなると相続が発生します。

その段階では、お母さんの家に妹さんが無償で使用・居住していたことにより受けた利益を、お母さんから妹さんへの特別受益だと主張できる可能性が出てきます。

ただ、建物の無償使用というのは、恩恵的要素が強く、一般的に持戻し免除の意思表示がある(お母さんが無償で使うことを認め、相続の際にもその賃料や使用料というものを考慮しなくてよいと考えている)ものと評価されることが多く、特別受益と判断されることは稀です。


【お母さんの状態によっては成年後見も検討すべき】

また、現在妹さんがお母さんの財産を管理しているのであれば、妹さんによってお母さんの預金が引き出されているという事態もありえます。

今後の遺産の目減りを少しでも防止する観点からは、お母さんが自分の財産を十分に管理できる判断能力がないというのであれば、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、お母さんの財産を管理してもらうことができます

ただ、この場合の財産管理は、原則として後見人選任後のみであり、又、今回のような質問のケースでは後見人は司法書士や弁護士になる可能性が高いため、その場合には、後見人の報酬として月額3万円程度の出費が必要になります。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
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17:03 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

在宅介護費用と特別寄与【Q&A №507】

2016/05/31



【質問の要旨】

看護を負担した相続人が他の相続人に費用請求できるか

記載内容  介護 扶養 不公平

【ご質問内容】

私が、仕事を休んで、平成22年7月から平成25年1月まで自宅で看護(導尿行為、バイタルチェック、塩分1日8グラムの食事作り)を行ってきました。

相手(姉2人)は近所に住んでいながら、一切協力せずに遊びまわり、扶養義務調停にも出廷せず、扶養義務調停が終わる前に父親は亡くなりました。

一番上の姉は生前贈与(住宅購入資金の一部として現金300万円)を昭和48年頃に貰い、高校と短大も我儘を言って私立に通っていました。

私と下の姉は公立高校で終わっております。

短大卒業後すぐに結婚しましたので嫁入り道具と、結婚資金等は、両親が出しています。

なお、私は平成22年2月に腰に金属を入れる手術を行っておりその後絶対安静時に看護が始まり現在は酷い後遺症が出ております。

財産は私たちが住んでいる土地建物しかありません。

土地は路線化で2800万円位(約82坪)建物の名義は13分の11は、私の名義になっております。父親名義の分の建物の評価は53万円程です。

(くま)






【介護費用は請求できないが、特別寄与の可能性がある】

親子間では互いに扶養義務があります。

そのため、子であるあなたが約2年半もの間、自宅でお父さんの介護をしたとしても、これは扶養義務を履行しただけであり、これをしなかった他の扶養義務者(今回は2人のお姉さん)に請求することはできません。

親子間に扶養義務が定められている以上、子として介護等をするのは当然のことであり、他の扶養義務者に介護のための労力等の費用を請求することはできないというのが、今の法律です。

しかし、あなたが介護をしたことにより、ヘルパー代や看護師料、老人ホーム入居費用等が減り、その分、遺産の減少が食い止められたというような事情があれば、その減額分を《特別寄与》として請求すれば、遺産から支払ってもらえる可能性があります。

(なお、介護の努力がどのように遺産分割に反映されるかという点は、当ブログQ&A №386Q&A №254などにも同様の話が出ておりますのでご参照下さい。)


【住宅購入資金の生前贈与は特別受益になる】

一番上のお姉さんが住宅購入資金の一部として金300万円をお父さんからもらったというのであれば、特別受益になりますので、遺産に持ち戻した上で遺産分割をすることになります。


【短大への進学に関する費用は原則として特別受益にならない】

一番上のお姉さんが短大に行かせてもらった点ですが、教育については子の能力の問題もあり、又、親の子に対する扶養の問題であり、遺産の前渡しという意味は持たないという判例もあることから、原則として特別受益にならない可能性が高いです。

ただ、私の担当した案件ですが、私立の医大に行った場合には、その授業料額が莫大であることや医師という社会的に重要な資格を取得することから、特別受益として対応したことがあります(なお、当ブログQ&A №375を参照ください)。


【参考判例】
大阪高裁決定平成19年12月6日
「被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」



【結婚資金について裁判例は分かれるが・・】

結婚資金については、裁判例がわかれていますが、私は挙式費用などは、特別受益には当たらないと考えています。

その理由は、挙式費用は、結婚式という一過性の支出であり、後に残るものではないことや、結婚式が結婚する当事者のみならず、その両親や親戚のためにするという側面を有すること、更に親としても相続分の前渡しとして挙式費用を出すのだという意識はなく、持ち戻し免除が推測されること、更に通常の場合、すべての子が多かれ少なかれ親の援助で結婚式をしていると思われることなどからです。

なお、嫁入り道具や持参金などは金額が高額であれば特別受益に該当するでしょう。

【参考判例】
① 名古屋地裁平成16年11月5日
「嫁入り道具や持参金等がこれ(弁護士注:特別受益)にあたることはいうまでもない。しかしながら、結婚式や結納の式典そのものに生じた費用については、婚姻する者のみならずその両親ないし親戚一同にとって重要な儀式であることに鑑みると、両親が子の結婚式や結納の式典に生じた費用を支出したとしても、それを両親から子に対する「婚姻のため」の贈与と評価すべきではなく、特別受益にあたらない。」

② 仙台地裁平成5年9月7日
「右程度の援助(弁護士注:結婚披露宴費用のうち祝儀代を引いた残額二〇万円の援助)は、本来通常必要なものであるが、他の妹弟が結婚に伴う援助を受けていないことを考えると、特別受益に該当するものといわざるを得ない。」

③ 盛岡家裁昭和42年4月12日
「相続人が婚姻に際し、被相続人より挙式費用等を負担してもらっているが、その金額も高額でないので、いずれも民法903条にいう贈与として相続分の算定につき斟酌すべきではな」く、特別受益に該当しない。」



【その他の問題点・・土地使用借権が特別受益の可能性あり】


あなたがお父さん名義の土地の上に建物の持ち分を有しておられるのであれば、その土地をあなたの建物のために無償使用している(使用借権)の贈与と主張される可能性もあり、あなたの方でも特別受益が問題になりかねませんので、その点はご留意ください。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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17:43 寄与・生前贈与 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★持ち戻し免除を受けたい【Q&A №503】

2016/05/19

【質問の要旨】

特別受益の持ち戻し免除について

記載内容  特別受益 免除 相続対策

【ご質問内容】

司法書士のもとで生前贈与の手続き、および遺言書作成をしましたが、現在、他の相続人から遺産分割申立書が来ました。

生前贈与手続き、遺言書作成を、司法書士に確認し、これなら生前贈与を受けたものは守られると聞いていたのですが、今になって、みなし相続財産として組み込まれることが分かりました

また、特別受益の免除を証明をしておけば、生前贈与を受けたものは持ち戻ししなくてよいという説明は一切ありませんでした

この場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか

宜しくお願い致します。

(あずき)






【税金の問題と相続の問題は別個である】

相続税対策として、被相続人の生前に金銭を贈与することがありますが、このような対策は節税にはなるものの、遺産分割については特別受益になります。

税務と相続(民法)の違いの例としては、死亡保険金は税務上は遺産として扱われるのに、民法上は遺産としては扱われない等、多々あります。


【相続分割(民法)では生前贈与は遺産の先渡しと考える】

生前に法定相続人の一部の人が財産の贈与を受けている場合には、相続に関する法律である民法では、《特別受益》として遺産に持ち戻します

これは相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えるということです。

具体的なケースで言うと、死亡時の遺産額が4000万円だが、あなたが生前に暦年贈与で合計1000万円を被相続人からもらっていたというケースであれば、その生前贈与金額を遺産に加算した遺産総額(5000万円)を前提に、これを法定相続分で分割することになります。

相続人が2人であるとすると、あなたの相続分は2500万円ですが、既に生前に特別受益があります。

そのため、あなたとしては2500万円から生前受益分を差し引いた1500万円しか相続できないということになります。


【持ち戻し免除について】

ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません

そして、黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断することになります

具体的には、

①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させた

②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)

③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)

などの場合には持ち戻し免除を主張するといいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
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17:55 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★使用貸借と特別受益【Q&A №484】

2015/12/17


【質問の要旨】

賃料相当額を特別受益として引かれるのか

記載内容

賃料 使用借権 持ち戻し

【ご質問内容】

裁判認知により相続人となりましたが、被相続人所有の空き家に住んでいた年数分の賃料(1000万円)を、特別受益として遺留分から差引くと言われています。

建物は、数年前に贈与の約束(契約書)があり、私(婚外子)の母が建替え、被相続人の死亡以前に母名義となっています。

土地は、私に遺贈の遺言があります。

それでも特別受益として賃料相当額を引かれなければならないのでしょうか

(カピバラ)





 【使用貸借であれば賃料の支払いは不要】

被相続人であるお父さん所有の空家をあなたが使用していたということを法律的に考えてみます。

お父さんがあなたに賃料を請求するようなことはなかったのであれば、あなたはお父さんから無償(ただ)でその家を利用することを認められたということになり、法律的には使用貸借という関係になります。

あなたの立場から言えば、無償で使用する権利(使用借権)をお父さんから与えられたということになりますので、賃料を支払う必要はないでしょう。


【使用借権が特別受益になる可能性がある】

ただ、あなたが、被相続人からただで使用する権利(使用借権)をもらったということが特別受益とされる可能性があります。

使用借権の価額については当該対象物件の5~10%程度の価値があるものだとされることが多いです(但し、裁判例の解説などを読むと10~30%ではないかという見解もあります)。

しかし、建物価額は評価証明額を前提として算定されることが多いですが、建物の評価証明額が極めて少額な場合も多く、そのため、上記の割合では使用借権価額が極めて少額になります。

一方で、被相続人であるお父さんは土地や建物の固定資産税分を負担しています。

その物件をあなたが無償使用しているのであれば、最低限、土地や建物の固定資産税分の支払い分程度は免れたという利益を受けていたことになり、その相当額が特別受益とされる可能性があります


【建物贈与の影響】

建て替える前の建物は、生前に贈与されていますが、誰に贈与されたのかがご質問では明らかではありません。

もし、あなたに贈与されたのであれば、建物価額があなたの特別受益として持ち戻されますが、その場合の特別受益額は、《建物価額-使用借権額》でいう計算式で算定されます。

贈与があったとしても、あなたが使用借権を取得した事実は消えませんので、使用借権取得が特別受益となる点は否定できません

但し、上記考え方はあくまで一つの考え方にすぎず、異なる見解もありえます。


【持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を】

なお、今回のご質問から受ける印象ですが、お父さんとしては遺産への持ち戻しを免除するという意思をお持ちであった可能性もあります。

また、前項に記載したように使用借権を設定した後、その建物を取得した場合にどのような形で特別受益に反映させるかについても、弁護士により見解の相違がありえます。

いずれにせよ、今回のご質問が含む問題については、難しい点も多いので、近くの相続問題に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、相談されることをお勧めします


(弁護士 大澤龍司)
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18:13 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★亡母の年金収入からの支出と特別受益【Q&A №400】

2014/09/10
 11年8カ月間、2病院を継続入院していた母が、95歳10カ月で亡くなりました。
 その間の他の病院、医院への搬送、見守り、介護、諸用事などが、伴いました。
 葬儀終了後の翌々日、遠く離れた都会に住む弟(故人)家族から、遺産について、唐突に詰問するような長電話をうけました。
 亡き弟には2人の子(成人)がおり、二男がその母同席の下、かけたと後日、弟の妻が話しました。
 相続人は弟の子2人と私の3人です。
 母には遺族年金、厚生年金併せて月当たり28万円位(年330万円)あり、自己の葬儀、法要、墓の移転整備費用として480万円残して逝きました。

 母は93歳1カ月時、認知症発症とレセプトにしるされてました。
 入院中の病院への支払いは月約10万円(年120万円位)です。
 
 49日忌法要には相続人の2人は欠席、弟の妻が出席、その際、法要後、用意した書類をみるか、と聞くと、「みなくていい、田舎の風習があるようだから」と、納得したものだとおもってました。
 ところが唐突に、調停を申立ててきましたので、驚いて困っています。
1 2年弱の入院期間中、弟の遺族は延べ……回病院へ顔だしたか? 

 葬儀、墓地の購入、墓の整備、法要関連費用に700万円超の出費です。

 弟の遺族は入院期間中の年金や遺産を公平?に半額分要求です。
 年金からの出費は、病院、後期高齢者保険料、雑費、家族の生活費などです。

 特別受益、持ち戻し免除とか、ご教示のほど、よろしくおねがいします。

記載内容

不正出金 入院費 介護費
(ろうねんろまん)


【特別寄与の主張について】
 お母さんが死亡し、相続人はあなた(法定相続分2分の1)と、亡くなった弟の2人の子供(代襲相続人、法定相続分は各4分の1)という案件です。
 さて、弟さん側はお母さんの面倒をほとんど見なかったようですが、このような場合でも弟さんの子供らには相続する権利があり、その法定相続分は上記のとおり4分の1です。
 親の面倒を見ないのに相続分を請求するのには不満がおありでしょうが、現在の民法の規定では相続人から除外することはできません。
 ただ、あなたがお母さんの面倒を見ていたのですから、遺産の減少を防止し、あるいは遺産を増加させたという点を主張して、特別寄与の申し立てをすることも可能です。
 ただ、一般的には生活の面倒を見たことだけで、特別寄与として認定されることは少ないのが実情です。
 特別寄与と認定されると、遺産の分割に先立ち、その寄与分があなたに支払いされます。

【特別受益について】
 生前、お母さんから金銭等の贈与を受けたような場合には特別受益の問題が発生します。
 あなたの家族の生活費がお母さんから出ているということであれば、この金額が特別受益と主張される可能性があります。
 あなたが生活に困っていたため、お母さんから生活費を援助してもらった、しかもその金額が月額で10万円程度であれば、それは親族間の扶助義務の履行であり、特別受益にはなりません。
 しかし、あなたが生活に困っていない、あるいは毎月もらう額が10万円をかなり超すというのであれば、その10万円を超す総計額が特別受益とされる可能性があります。
 そのため、お母さんが病院費や生活費に使った費用が多く、あなたが生活費としてもらったという金額が少ないという点を証明できるように用意されるといいでしょう。

【持ち戻し免除について】
 特別受益になる場合には、その特別受益額を遺産に持ち戻して(加算するということで、その分、分割の対象となる遺産額が増加します)、遺産分割をすることになります。
 ただ、特別受益になる場合でも、お母さんが《遺産への持ち戻しをしなくてもいい》と言っておられたような場合には、《持ち戻しの免除》の意思表示として、特別受益の持ち戻しをする必要はありません。
 生前に《遺産分割において持ち戻しをする必要がない》と発言したり、書面で書かれたりするような明示の意思表示をする場合だけではなく、状況からみて、そのような意思を推測できる(黙示の意思表示をしている)場合には、持ち戻しの免除が認められます。
 たとえば、相続人が病気や障害のある相続人のためにまとまった財産を生前に贈与しているケースなどは、持ち戻し免除とされる可能性があります。
 また、親と同居のために建物を建設する場合に、その親の敷地を無償で使用する権限をもらう場合も黙示の意思表示とされる場合があります。
 あなたの場合も、万一、毎月の生活費が特別受益に当たるなら、《親と同居してその世話を見ることを条件として援助を受けたのであり、持ち戻し免除があった》と主張されるといいでしょう。

【葬儀費用等の扱い】
 なお、お母さんは自己の葬儀、法要、墓の移転整備費用としてお金を遺していかれたということですが、葬儀費用は相続の際、債務や費用としては認められない場合もありますし、また、法事費用や墓の移転費用などは相続の費用としては認められない場合が多いです(相続 Q&A №308 をご参照ください)。
 そのため、安易に遺産である預貯金を葬儀や法事等のために使うのはかなりリスク(危険性)のある行動だということも記憶されておくといいでしょう。


※ご質問の文中、一部文字化けしているところがありましたが、ご質問の本旨には影響がないと思われますので、文字化け部分は「……」と表記し掲載させていただきました。
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13:23 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★親の土地に家を建てて住んでいた長男【Q&A №396】

2014/08/12
 かなり前に現金を父からマンション購入の頭金として贈与を受けました。勉強不足で税金免除があるの知らず贈与税を支払ってしまい悔んでいます。
 兄弟全員、父が亡くなり遺産の中にそれを入れて計算せよと言っています。が、それを強く言う一人は40年近く親の土地に無償で家をたてさせてもらい、しかも新築資金も入手しています。
 この場合の私の贈与金額と比較できるような計算方法があったら教えてください。又その居住年数は関係ないのでしょうか。
 宜しくお願いします。

記載内容

特別受益 使用貸借
(yashian)


【マンションの購入資金や建築資金をもらえば特別受益になる】
 あなたがお父さんからもらったマンション購入の頭金は、その該当金銭が生前贈与として特別受益になり、遺産の計算の際、遺産に持ち戻すことになります。
 なお、税金を控除した額ではなく、もらった金銭全額が持ち戻しの対象になります。
 また、兄弟のうちの一人が、《40年近く親の土地に無償で家を建てさせてもらい、しかも新築資金も入手している》とのことですが、このうち、新築資金が生前贈与になり、遺産に持ち戻すことになります。

【親の土地を無償で使用している場合は特別受益になるか】
 次に、親の土地を、自分の敷地として無償で使用している点については、使用貸借権という権利を設定してもらったことが特別受益になる可能性があります。
 ただ、お父さんの意思として、このような遺産への持ち戻しを前提にしていない場合(いわゆる《持ち戻し免除》の意思表示がある場合)には、持ち戻しは認められません。

【持ち戻しされる価額】
 特別受益としては、使用借権の価額が遺産に持ち戻されます。
 使用借権の価額としてはその底地の更地価額の10~30%という程度で評価されることが多いですが、木造家屋の場合には約10%前後になることが多いです。
 ただ、特別受益として持ち戻しが認められる場合でも、遺産分割で、その使用借権者が底地を取得する場合には、使用借権額の持ち戻しをせずに、底地を更地価額で評価して取得させるという処理を行っている裁判所もあります。

【使用借権と無償利用の利益との関係】
 無償で使用した期間分の賃料相当額を特別受益にするべきではないかという見解もありえます。
 しかし、裁判などでは使用借権の設定したことを経済的に評価し、遺産への持ち戻しをしている以上、使用借権者は使用借権の効果として無償使用することができるのであって、それ以上に使用料を支払う必要がないという見解です。
 この前提に立てば、使用期間にかかわらず、使用借権者は使用料を一切支払う必要はないということになるでしょう。
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15:48 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

私立大医学部の学費は特別受益か【Q&A №375】

2014/05/26
 養父が亡くなりました、私は養父と養子縁組をしています。私は実父に大学費用などを出してもらい、私が独立したときに母は養父と再婚しました。
 養父は前の結婚で医師になった一人息子がいます。
 医師であった養父ですが25年まえに彼の私大医学部の予備校費用や入学金、学費など彼に多大な費用が掛かり大変だったとよくこぼしていました。これは特別受益になりますか?

記載内容

私立大学 医学部 学費
(花)


【医学部の学資、独立後の養子の2点が問題】
 本件では、まず、第1点として、学資、特に私大の医学部(きわめて多額になる)の学資の支払いをしてもらったことが特別受益になるのかどうかが問題になります。
 次に、あなたが養子になったのが、あなたの《独立》後であるという点が、特別受益問題にどのように影響してくるかという点も問題になります。

【学資の支払いについて】
 2人の子供が相続人であった場合、一方は大学卒で、他方は高校卒で、いずれも被相続人から学資を出してもらったケースについて考えましょう。
 親としては、子供たちにそれなりの教育を受けさせてやりたいと考えるのが普通でしょう。
 ただ、その学力や本人の希望などもあり、一方は大卒、他方は高卒ということもありえます。
 大卒と高卒の場合、大卒の人が特別受益を受けたという考えもあります。
 しかし、大卒と高卒になった点に合理的な理由があれば、被相続人である《親の扶養義務の履行の範囲内であり、親の裁量》であるとして、特別受益にはならないというべきでしょう。
 参考までにいえば、過去の判例で次のようなものがあります。
「……子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般的であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情がない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」
(大阪高裁決定平成10.12.6)

【私大医学部などの膨大な学費の支払いについて】
 但し、学費の額が極めて高い場合、例えば本質問のように私大医学部ということになると、額が非常に多い(私が聞いているところでは、入学金や学費で5000万円を超すところも少なくない)のであれば、特別受益とするべきでしょう。
 遺産全体の額とのバランス(たとえば遺産が10億円程度もあれば、それほど問題にするべきものではないでしょうが)を考えて、その学資支払い分が多額というのであれば、他の相続人間にとってあまりにも不利な結果になるような場合は、特別受益として考えてもいいというのが私の意見です。

【独立後の養子であることが結論に及ぼす影響について】
 質問では、あなたは実のお父さんから学費を出してもらい、その後、あなたが、《独立してから養子になった》というように読み取れます。
 もし、そうであれば、お父さん(養親)は実子さんに学資を出された当時、特別受益というようなことを考えてはいなかったのではないでしょうか。
 養子になる以前は、いずれも当時のそれぞれの実親の扶養により、大学に行っていたのであり、その学費に差があったとしても、それは当時の実親の経済的な資力やあなたの志望等の問題であり、学費に差があってやむを得ない面があります。
 特別受益が相続人間の不平等を是正する趣旨をもっている点を考慮すると、学費の差は、当時の状況としてはやむを得ないものということもできると思います。
 又、養親としても、養子になる以前の実子の学費まで相続で問題にされるとまでは考えていなかったと推測すべきであり、持ち戻し免除が適用される可能性もあります。
 ただ、今回の質問は、確定的な答えをできる内容ではありません。
 そのため、できれば、相続に詳しいお近くの弁護士に法律相談され、より具体的な事情をお話された上で、弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。
大澤龍司法律事務所
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12:58 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

組み戻されない特別受益【Q&A №311】

2013/08/30
 
 他の相続人の遺留分を侵害しない範囲で、住宅資金贈与を生前に受けた場合です
が、贈与契約書なりに、特別受益の免除をするとの記載があれば、相続時に組み入れ
られることはないのでしょうか?

記載内容

特別受益 持ち戻し免除 意思表示 無効確認

(ワン)


【特別受益持ち戻し免除の意思表示】
 特別受益は原則として相続財産に持ち戻され、遺産分割協議における相続分に組み入れることができます。
 しかし、ご相談にありますとおり、被相続人が生前にこの持ち戻しを免除し、特別受益として扱わない旨の意思表示をしていた場合には、法律上、相続財産の持ち戻しがなされません。

【遺言や契約書・さらには黙示の場合も】
 この持ち戻し免除の意思表示の具体例としては、ご相談にありますような贈与契約書に「持ち戻しを免除する」旨の記述が含まれていることが典型例ですが、そのほか、遺言などで持ち戻し免除の意思表示がなされることもあります。
 さらには、明確な書面上の意思表示がなくとも、贈与がなされた動機や背景事情などに鑑みて持ち戻し免除する意思があったことが推認されるケースもあります。

【意思表示自体が無効の場合には要注意】
 贈与契約書や遺言など明確な形式で持ち戻し免除の意思表示がなされていた場合、相続財産に組み入れられることはまずないでしょう。
 ただし、例外的に、当該意思表示自体が無効の場合には持ち戻し免除の意思表示も無効であり、持ち戻しが可能となります。
 具体的には、贈与契約あるいは遺言作成時に被相続人が重度の認知症のため意思能力を欠いていた場合などが考えられます。
 このような事情がなかったかどうかについては一度ご確認されるとよいでしょう。


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15:49 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

持ち戻し免除に該当するか【Q&A №304】

2013/07/31
 相続人は兄、私、妹の3人です。生前兄が家を購入する際父親から300万円の援助をしてもらっています。
 今回父が亡くなり自筆遺言書が出てきました。
 内容は「私の所有する全財産を兄に3割、私に4割を、妹に3割相続させる。私へは生活面で世話になったので多少多くした」と言う内容ものでした。
 財産は預金、年金で2400万円ほどと1000万ほどのマンションです。
 このような遺言書がある場合には持ち戻し免除の意思表示と解釈し特別受益を考慮できないのでしょうか?
 その他にも今回は葬儀などにも出ず墓守もしないという兄に墓守費用として死亡受取人兄指定の200万の保険も墓守もしないのに受け取られ、墓守をしなければならなくなった私も自分の取り分から今後の費用を捻出しなければならずとっても不公平感を感じています。
 出来ればせめてこの分を特別受益とし今後の費用に充てたいと思っています。
 解答よろしくお願いします。

記載内容

生命保険 持ち戻し免除 特別受益


(nekonosippo)


【特別受益とした場合】
 まず、お兄さんが住宅購入費を親に支出してもらったなどの特別受益がある場合、いわば相続分を前渡し済みかのように扱い、受益者であるお兄さんの相続分を減らすように扱うことを、相続財産への持ち戻しと呼びます。
 生前にお兄さんがもらった金300万円の援助(贈与)は特別受益の可能性があります。
 特別受益とすれば、その金額を遺産の中に組み入れて(見做し相続財産といいます)、遺産分割の計算をしますので、お兄さんの相続額は少なくなります。
 参考までに特別受益に該当する場合の遺産の配分は次のようになります。
 見做し遺産額=2400万(預金等)+1000万円(マンション)+300万円(特別受益)=3700万円
 これを遺言どおりに分割し、お兄さん特別受益分を控除することになりますから、お兄さんの取り分は次のとおりとなります。
 お兄さんの具体的な相続分=3700万円÷10×3-300万円=810万円

【持ち戻し免除をすれば、あなたの不利になる】
 この持ち戻しを免除し、生前の受益を特別受益として持ち戻しを行わないのが持ち戻し免除の意思表示です。
 ところで、お兄さんの特別受益分が持ち戻し免除になると、300万円が遺産に持ち戻す必要がなくなりますので、お兄さんの遺産からの取り分が増えます。
 念のために計算しておきましょう。
 遺産額=2400万(預金等)+1000万円(マンション)=3400万円
 お兄さんの具体的な相続分=3400万円÷10×3=1020万円

 結局、持ち戻し免除がある場合には、お兄さんの取り分が増え、あなたの取り分が減少します。
 あなたとしては持ち戻し免除がない方が有利になります。

【もち戻し免除が認められる場合】
 参考までにいえば、持ち戻し免除の意思表示の典型例としては、遺言で「兄の住宅購入資金300万円については特別受益の持ち戻しを免除する」などと記載されている場合があります。
 もっとも、ここまで明確な意思表示がなくとも、障害のある子に親が生活資金を贈与した場合など、持ち戻しを認めることが受益者である子にとって酷であるという事情等がある場合には、持ち戻し免除の黙示の意思表示が存在したとして、持ち戻しを免除した裁判例もあります。
 もし、仮にあなたに特別受益がある場合を例にすると、今回遺言のような「生活面で世話になったので多くした」という内容であれば、お父さんとしては持ち戻しを前提にせずに遺言していることになります。
この点について、当事務所内での弁護士の意見が分かれており、持ち戻し免除を認められる可能性があるかどうか、微妙な案件であるということになります。

【保険金は原則として特別受益とはならない】
 生命保険金は原則として特別受益にはなりません。
 この点は当ブログQ&A №298Q&A №299などに類似の記事がありますのでご参照ください。
 他の事情にもよりますが、今回のケースでも、遺産が預金2400万円に加えて1000万円ほどのマンションということですので、保険金200万円程度であれば保険金が特別受益扱いされる可能性は低いと考えられます。


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