"家庭裁判所"に関連する記事一覧
 | HOME | Prev »

★預貯金の目減りが心配【Q&A №555】

2017/01/25


【質問の要旨】

母の通帳などを妹が管理している

記載内容 不正出金 預金

【ご質問内容】

父が亡くなり四年が経ち、母・長女(私)・妹・弟(八年前他界)がおり、両親の面倒を見ていた妹夫婦が今回建物のみ母への名義変更を言ってきました。

弟存命中は、いずれ両親と同居する前提でマンション代を出してもらっており、しかし弟亡き後は、それが叶わないので妹から、父へマンション代を返すよう弟の嫁に言い、嫁は返済しました。

以前、私は、妹から両親の面倒を見てほしいと言われましたが、その当時は両親も元気で二人で生活できていたし、私の家の状況等の理由もあり、それを断った経緯があります。

その後は一切を取り仕切り、財産を聞いても教えてもらえず、生前父から何となく聞いていた預貯金額より遥かに少ないぼんやりした額をのらりくらり言うだけです。

嫁も同じことを言っています。通帳と実印は妹が全て持っていますし、母は強い妹には何も言えません。母名義にさせたマンション代他の預貯金の目減りを防ぐ手立てはないのでしょうか

また、今後どのようにして対処していけば良いのでしょうか

(piano)





【お母さんの財産の管理を決定するのはお母さんです】

お母さんの預貯金を、現在は妹さんが管理されているようですが、もし、お母さんが自分の財産の管理を妹に任せているのであれば、それはお母さんの意志に基づくものであり、何ら違法なことではありません

あなたはお母さんが死亡した場合には、その遺産を相続できる立場です。

しかし、現段階では、お母さんの財産に関与するなんらの権利も権限もありません。

そのため、もし、現在の状況を変えたいのであれば、あなたではなく、お母さんがその意志で行動する必要があります。

あなたとしてできることがあるとすれば、それは、お母さんが《預貯金通帳や印鑑を返してほしい》と決断するように働きかけることだけでしょう。

お母さんがそのような決断をするのであれば、お母さんの意向に従い、あなたがお母さんの代理人として妹さんと返還や管理について交渉するということも法的には可能ですし、又、必要に応じてお母さんが弁護士に依頼するということを考えてもいいでしょう。


【成年後見人をつけることも考える】

現時点ではお母さんの判断能力があるようですが、もし、将来、お母さんの判断能力がなくなるようなことがあれば、親族であるあなたは家庭裁判所にお母さんの成年後見申立をすることができます。

家庭裁判所で選任された成年後見人はお母さんの全財産を管理します。

今回のような将来の法定相続人の間でお母さんをめぐって紛争が生じるおそれのある場合には、家庭裁判所は、お子さんではなく、司法書士や弁護士などの第三者を成年後見人に選任しますので、選任された以降はお母さんの財産の保全を図ることが可能です。


【現時点でできることは何か?】

ただ、将来、お母さんが死亡した場合、あなたは相続人となり、遺産をもらう立場になります。

その際、妹さんがお母さんの預貯金を勝手に使っていたのであれば、貴方は相続人として法定相続分に応じてですが、返還請求ができます。

そのため、現在、どの銀行のどの支店にお母さんが預貯金を持っているかは最低限、把握しておくといいでしょう

通帳等が手にはいらなくとも、お母さんの死亡後、その金融機関に連絡すれば、取引履歴の取り寄せが可能です。

履歴照会により、妹さんがお母さんの預貯金をどのように扱っていたかのかが明らかになります。

現時点であなたがするべきことはそのような手配だと思います。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:23 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

何かをする時期について【Q&A №554】

2017/01/19


【質問の要旨】

母が亡くなるまでにできることはないか

記載内容 公正証書 実家 請求

【ご質問内容】

私は姉妹の姉です。

父の死後、話し合いもなく、父の死後公正証書が送りつけられ、数か月後税理士の方からの書類が届いた時は、母に全部渡す預貯金は妹名義になっていました

数年前に母を施設に入れ、実家に移り一人で住み始めました

こういう場合母が亡くなる迄手立てがないのでしょうか

私は過分に欲しいと思っているわけではありませんが、

妹も不動産などを両家からたくさん相続していますので、裕福ですので

私もきちんと請求したいと思っています。

(さくら)






【お父さんの相続に関しては遺留分減殺請求はできたが…】

お父さんの相続に関しては、預貯金はすべて妹さんに相続させるとの内容の公正証書遺言が作成されていたと理解しました。

このような遺言書があり、他の相続人になんらの遺産も来ないような場合でも、最低限の遺産(子であれば法定相続分の半分)を取り戻す権利があります(遺留分といいます)。

ただ、この権利は自分に遺産が来ないという遺言書があることを知ってから1年間以内に、遺言書で遺産をもらう人に請求(遺留分減殺請求といいます)する必要があり、この期間を過ぎると請求することができません(民法1042条)。

そのため、妹さんが預貯金をすべて相続したことにより、あなたやあなたのお母さんの遺留分が侵害されていた場合には、1年以内であれば、遺留分減殺請求をすることができました。

しかし、お父さんが亡くなってから既に9年経過しているということですので、お父さんの相続に関して、妹さんに何らかの請求をすることは難しいでしょう。


【実家に妹が住んでいても、あなたからは請求することはできない】

妹さんは両親も住んでいない実家に一人で住んでいるとのことで、あなたとしては妹さんに何らかの請求をしたいという気持ちでおられることと思います。

ただ、妹さんの住んでいる家の所有者はお母さんだと思われます。

そのため、妹さんに何らかの請求をするとしても、請求者はお母さんであり、今の段階では家の使用については、あなたが妹さんに対して何らかの請求をするということはできません


【お母さんが亡くなれば特別受益の問題になる可能性もあるが…】

将来的にお母さんが亡くなると相続が発生します。

その段階では、お母さんの家に妹さんが無償で使用・居住していたことにより受けた利益を、お母さんから妹さんへの特別受益だと主張できる可能性が出てきます。

ただ、建物の無償使用というのは、恩恵的要素が強く、一般的に持戻し免除の意思表示がある(お母さんが無償で使うことを認め、相続の際にもその賃料や使用料というものを考慮しなくてよいと考えている)ものと評価されることが多く、特別受益と判断されることは稀です。


【お母さんの状態によっては成年後見も検討すべき】

また、現在妹さんがお母さんの財産を管理しているのであれば、妹さんによってお母さんの預金が引き出されているという事態もありえます。

今後の遺産の目減りを少しでも防止する観点からは、お母さんが自分の財産を十分に管理できる判断能力がないというのであれば、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、お母さんの財産を管理してもらうことができます

ただ、この場合の財産管理は、原則として後見人選任後のみであり、又、今回のような質問のケースでは後見人は司法書士や弁護士になる可能性が高いため、その場合には、後見人の報酬として月額3万円程度の出費が必要になります。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:03 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №553】

2017/01/17


【質問の要旨】

相続放棄したら仕送りしていた金銭はどうなるのか

記載内容 預金 引き出し 承認

【ご質問内容】

父の死亡後、多額の負債の連帯保証人をしていたことがわかり、子である私たちきょうだい三人全員が相続放棄をすることになりました。

遺産は預貯金40万円ほどと軽自動車1台。ほかにはありません。

父は年金と私たちきょうだいからの仕送りで生活していました。

相続を放棄してしまうと預貯金から仕送り分を返してもらうことはできない、という解釈であっていますか

(おがわ)






【仕送りは貸金ではない】

親子間では困っていたら助け合う義務(扶養義務といいます)があると定められています(民法第877条第1項。末記条文を参照ください)。

子が親に仕送りするような場合にはこの扶養義務の履行に該当すると考えられます。

そのため、子から親に対する仕送りは貸金ではなく、返還を要しない贈与となり、親は返還義務を負いません

そのため、お父さんの遺産から返還を受けることができないという結論になります。


【参考説明:子の親に対する貸金と子の相続放棄との関係】

前項で述べたように、親に対する仕送りは貸金ではないと考えられます。

ただ、本件の質問を離れて、仮に子が親に貸金があった場合、相続放棄との関係がどうなるかも説明しておきます。

相続放棄とは遺産の相続をしないということです。

子であるあなた方が相続放棄をした場合、お父さんの遺産である車や預貯金40万円を相続することはできません。

しかし、子が親に対して貸金のような債権を持っていた場合、子が相続放棄しても、その貸金債権はなくなりません。

相続放棄は親からの遺産をもらわないということであって、あなた方が従来から持っている親に対する貸金債権までなくなることはなく、あなた方は親の遺産に対して貸金の請求ができます


【参考説明:相続財産管理人の選任が必要】

問題は、この請求をした場合に、誰が支払いをしてくれるかです。

相続放棄をしない場合、法定相続人が遺産の権利者になりますので、その権利者の権限として遺産を自由に処分でき、債務の支払いもできます。

これに対して、相続放棄をした場合、その放棄した相続人は遺産を自由に処分する権限はなく、債務の支払いをすることができません

相続放棄をしない法定相続人がいれば、その人が遺産と債務を承継しますので、その人に支払い請求をすることになります。

もし、すべての相続人が放棄をした場合で、貸金を有している債権者が債権の支払いを求めたいのなら、その債権者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をする必要があります。

選任された相続財産管理人が遺産を管理・調査し、債権者に支払いをしてくれます。

ただ、財産管理人選任の申立をする場合、原則として、予納金として裁判所に90万円から100万円を納付する必要があります。
今回の質問の場合、遺産が少ないのでそのような手続きはするメリットはないでしょう。

なお、財産管理人が選ばれた場合、この申立をした債権者の債権の弁済が優先されるわけではなく、債権額に応じた平等弁済になることも理解しておかれるといいでしょう。


【勝手に遺産から弁済をうけた場合の扱い】

相続放棄したにもかかわらず、その放棄した方が遺産から勝手に貸金の返済を受けた場合、その相続人は遺産を取り込んだとして、相続放棄の効力がなくなることがあります

相続放棄が無効になった場合、その相続人は、お父さんの債権者から請求があれば債務の支払いをしなければならないこともありうることにご注意ください。

民法 第877条
(扶養義務者)
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(以下略)


(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
12:57 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★不正出金とその調査【Q&A №537】

2016/10/24



【質問の要旨】

交通事故で長年寝たきりだった祖父の遺産は調査できるのか?

記載内容 不正出金 医療費 成年後見人

【ご質問内容】
初めまして。

突然ですが祖父の遺産についてご相談があります。

私の父方の祖父が最近亡くなりました。
父には妹が二人居て三人兄弟です。

祖父が12年ほど前に交通事故で植物人間状態になり、ずっと寝たきりで最近亡くなり
ました。
祖父が寝たきりの状態の管理は全て次女に任せていたみたいです。
そして遺産整理をしてたところ、年金を二ヶ月で45万円をずっともらっていたはずな
のに祖父の口座には預金が全くなかったらしいです。
次女に聞いたところ医療費で消えたと言っていましたが寝たきりの状態なのにそこま
で費用がかかったとは自分は思えないのです。
しかも交通事故で寝たきり状態になったので加害者からの保険金が4000万円ほど入っ
てきてたそうです。

そこで質問なんですが

①本当に医療費で消えたのかを調べられる手立てがあるのか

②調べるとしたら父はどうしたらいいのか

を簡単に教えて頂きたいです。

よろしくお願いします。


(ゼン)







【成年後見人に確かめるのが一番、早い】

お祖父さんが交通事故で植物人間状態になった、損害賠償で4000万円をもらったということですが、もし、その点が間違いないのであれば、お祖父さんには成年後見人がついているはずです。
賠償額が極めて多額ですので、4000万円は保険会社が支払ったものと思われます。
保険会社としては、当然、交通事故の被害者であるお祖父さんの状態―植物状態で意識がなく、判断能力(意思能力)がないことを知っていますので、お祖父さんに成年後見人がついていない限り決して示談はしませんし、また、賠償金も支払うこともありません。
成年後見人の選任される場合には、家庭裁判所は必ず法定相続人であるあなたのお父さんの意向を確認しますので、お父さんに聞いて見られるとご存知だと思います。
成年後見人がついているのであれば、その成年後見人が(少なくとも成年後見人に就任以降の)お祖父さんの財産管理をしていますので、その内容の開示を求めるといいでしょう。
なお、お祖父さんが死亡し、相続が開始したのであれば、成年後見人から法定相続人に対して、通常の場合、財産引継ぎ等に関する連絡が間違いなくあるはずだということも覚えておいていいでしょう。


【成年後見人がつく前の取り込みの可能性があった場合の対処】

成年後見人が就任する前に、お父さんの妹が預貯金を使いこんだ可能性があるのであれば、お祖父さんの金融機関の取引履歴を調べるといいでしょう(調べ方については本ブログの相続問題Q&A№98に詳細に記載しておりますのでご参照ください)。
金融機関がわからない場合には、まず郵便局、そして郊外であれば農協等はかならず調査の対象にする必要があります。
なお、金融機関の調査ではどこの支店かというところまで調べる必要があります(但し、金融機関によっては全国の支店での口座の有無を照会してくれるところがあるが、それはごく一部のみです)。
支店がわからないのであれば、年金を受け取っていたのであれば、その年金の受け入れ口座を社会保険庁に確認することから、被相続人の口座が判明する場合があります。
また、同様に電気やガス等の引落口座を調査することにより、口座が判明することがあります。



【医療費の確認方法】

《本当に医療費で消えたのか》を調べるのなら、お祖父さんの入通院していた医療機関に医療費がどれだけ支払いされていたのかを確認されるといいでしょう。
お父さんは被相続人であるお祖父さんの法定相続人ですので、病院は回答をしてくれます。
ただ、その際、法定相続人であることの証明を要求されますので、予め戸籍や除籍謄本を用意されておくといいでしょう。
なお、死亡時の病院はわかっているが、それ以前の病院がわからないというのであれば、死亡時の病院のカルテも取り寄せが可能ですので、そのカルテの中の病歴等の欄を確認すると、それまでに治療を受けた病院等が記載されていることが多いです。


(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:13 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★★【相続判例散策】親族相盗例が適用されないケース(最高裁平成24年10月9日決定)

2016/10/06
親族である後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族であっても刑罰に問われます!
(親族相盗例が適用されません!)


(最高裁平成24年10月9日決定)

【ケース】

家庭裁判所から選任された成年後見人である成年被後見人の養父が、成年被後見人の財産を横領した事案。


【裁判所の判断】

裁判所はこのケースについて、次のような判断をしました。

「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから、成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである。」

【弁護士のコメント】

 刑法には、「親族相盗例」と呼ばれる規定があります(刑法244条)。
 この規定は、窃盗等だけではなく詐欺や横領などにも準用されており、これらの罪を親族間で起こした場合には、特例として刑を免除し、または告訴がなければ公訴を提起することができないとするものです。
 後見人が被後見人の親族であるという場合に、その後見人が被後見人の財産を横領した場合にも、この規定が適用されるように思えます。
 しかし、裁判所は、家庭裁判所の選任・監督のもとに被後見人の財産を占有・管理する後見人が、被後見人の財産を横領した場合については、その後見人が被後見人と親族関係にあったとしても、親族相盗例は適用されないと判断しました
 これはつまり、家庭裁判所に選任されて成年後見人になった以上、親族であっても、公的立場から職務を遂行する義務(判例では「成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務」と説明されています)を負っているということです。
 なお、この判決より前に、未成年後見人に選任されていた未成年被後見人の祖母が、後見の事務として業務上預かり保管中の被後見人の口座から貯金を引き出して横領した事案について、以下のような判決があります。


(最高裁平成20年2月18日決定)

【ケース】

未成年後見人に選任されていた未成年被後見人の祖母が、後見の事務として業務上預かり保管中の被後見人の口座から貯金を引き出して横領した事案。


【裁判所の判断】

「刑法255条が準用する同法244条1項は、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき、その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず、その犯罪の成立を否定したものではない。
 一方、家庭裁判所から選任された未成年後見人は、未成年被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが(民法859条1項)、その権限の行使に当たっては、未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条、644条)、家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。また、家庭裁判所は、未成年後見人に不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは、職権でもこれを解任することができる(同法846条)。このように、民法上、未成年後見人は、未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく、等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。
そうすると、未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。」


【弁護士のコメント】

 この判決は、成年後見ではなく未成年後見のケースではありますが、親族相盗例制定の背景を説明した上で、後見の事務が公的性格であることを示し、後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族相盗例は適用されないと判断しているものです。
 あわせてご参照ください。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:45 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★子どもの国民年金掛金と特別受益【Q&A №527】

2016/09/07



【質問の要旨】

肩代わりした国民年金約240万円は、特別受益に該当するか

記載内容 年金 継続的 扶養


【ご質問内容】

20才から支払う義務がある国民年金「金額240万円程度」を肩代わりして支払いました(アルバイトで支払い能力がなかったため)。

そろそろ遺言書を作成すべき時期かと思案していますが。

この過去に支払った金額は特別受益に該当するのでしょうか。

宜しくお願い申し上げます。
(素浪人)







【事案によっては特別受益にあたる場合もある】

被相続人であるあなたが、相続人に対して「生計の資本としての贈与」をした場合、特別受益として、遺産分割の際に遺産に持ち戻されます(当ブログQ&A №164Q&A №334等参照)。

問題はどのような金銭等の提供が、《生計の資本》としての贈与になるかです。

例えば、相続人である長男の自宅買入資金として500万円を援助したというのであれば、特別受益になることは間違いありません。

しかし、今回のご相談は、毎月数万円程度の金銭を渡した、あるいはその程度の債務を立替支払いしたような場合です。

このような、毎月は少額でも多年にわたると金額も大きくなるような場合に、特別受益になるかどうかという問題になります。

お金を渡していれば贈与ではないかという反論が出そうですが、被相続人である親が子である相続人にお金を渡す場合、親の子に対する扶養義務の履行として渡しているとされる場合もあり、その場合には渡した金銭は特別受益にはなりません。


【判断基準はどういうものか】

次に、扶養義務の履行か否かを判断する基準は何かということが問題になります。

遺産の総額、一度に渡されたものかどうか、又、月々の支払い等であればその額はどうか、渡された期間やその交付する理由などが判断基準となるでしょう。

過去の家庭裁判所での審判例では、遺産総額や被相続人の収入状況から考えて、月に10万円に満たない送金は扶養的金銭援助にとどまるが、月10万円を超えるものは生計の資本としての贈与になり、特別受益になると判断したものがあります(東京家審平成21年1月30日・家月62巻9号62頁)。

(詳しくは【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?をご参照ください。)


【遺言書の作成上の注意】

これから遺言書を作成するが、被相続人のした国民年金の立替分を特別受益にならないようにしたいというのであれば、次のような方法を考えられるといいでしょう。

① 国民年金立替分については《持ち戻しの免除する》との意思を遺言書に明記する。
② なぜ、持ち戻しの免除をするのかという理由を遺言書の付言事項として記載し、併せて他の相続人が特別受益という問題を持ち出さないようにという内容の遺言者の希望を記載する。

これらの①及び②の方法の双方を採用し、その内容を遺言書に記載することで解決されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:30 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★母の預貯金を成年後見人に取り戻してほしい【Q&A №519】

2016/07/11



【質問の要旨】

母名義の預金を成年後見人は取り戻してくれるのか

記載内容  成年後見人 不正出金 取り戻す

【ご質問内容】

アルツハイマーの母は実家で一人暮らしをしております

子供は私と姉の二人姉妹です

父(認知症)は5年前に他界いたしました

姉とはこの亡父の遺産(家屋・土地・融資産を姉が相続するという公正証書あり)のことで 私から家裁に申し立てをする関係となり 一応和解はいたしました 

現在母の介護に関することは母とは別居の姉が施設通所の手配等をやっています

ご相談したいのは 介護が始まってから 姉が母の金融資産すべてを自宅に持ち帰り管理し始めました

これまでそれらの開示を求めましたがそれには応じませんでした

姉は母から預かるように頼まれたと言います

実は 亡父の時も 公正証書を作成し 生前中に父名義の預貯金を全額おろしそれを自分名義の口座に移しておりました

恐らく 母にも同様のことをしている可能性が高いです

母に成年後見人を申し立てることを考えましたが 述べたように母名義の預貯金は前述のようになっているなら管理するものはもう0、ないという事態も十分考えられます

また、アルツハイマーの母は自分で判断は出来ません。相手の言いなりに行動します。

父の時と同様 母に姉はすべてを自分に預けることを一筆書かせているでしょう

このような状況でも母の預金を母名義に成年後見人で戻すことは可能ですか

アドバイスをよろしくお願いいたします

(林檎)







【預金の取り返しは難しい】

成年後見人は本人(お母さん)の権限のほぼすべてを代理する権限を持っていますので、理屈上はお母さん名義の預金をお姉さんから取り返す権限もあります。

たとえば借用書も整った相手から貸し金を返してもらう場合や、交通事故の加害者に対して損害賠償請求を行う、というように相手方の責任がはっきりしている場合であれば、後見人が積極的に権利を行使してお金の支払を請求するケースは確かにあります。

しかし、成年後見人があえて親族内での紛争を起こしてまで不正出金の取り返しに動き出すことはごく例外的なことであり、そうそう見ないケースです。 

というのは、お母さんが自分の意思で(意思能力を失う前に)お姉さんに預金を預けたのか、それとも無断で不正出金をしているのかは外形的にはわかりにくく、明らかな証拠をつかむのが難しいからです。


【お父さんの話は別問題】

ただ、今回はお姉さんがお父さんの相続について周到な対策を整えて遺産を独り占めした経緯があるようですので、お母さんの預金についても同様の不正出金をしている可能性が高いようです。

しかし、法律上はそれだけで不正出金があると断定できるわけではありません。あくまでお父さんの話とお母さんの問題は別物だ、ということです。

もしお姉さんの不正出金を明らかにしたいのであれば、お姉さんの預金引き出しがお母さんの意思に基づかないものであったことを確証づける証拠が必要です。

ただし、確証があっても、後見人は家庭裁判所の監督の下に動きを取るため、家庭裁判所がどのような判断をするかにより後見人の動きが変わってくる可能性があることはご理解ください。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:29 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

損害賠償請求権の相続【Q&A №512】

2016/06/27



【質問の要旨】

回収できない損害賠償も相続財産となるか

記載内容  損害賠償 盗難 相続税

【ご質問内容】

父の預金通帳が盗難により不正出金され、警察の捜査の結果、犯人は逮捕されました。

裁判の結果、初犯のため執行猶予付の有罪判決が下されましたが、高齢の犯人に財産はなく、ギャンブル等で費消したため被害弁償の支払い能力は全くありません。

判決を前に父は亡くなりましたが、この場合、犯人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権が発生し、それが相続財産になると聞きました。

犯人から全く弁償の見込みがないにも関わらず、請求権が相続財産になるのでしょうか。(被害額は数千万円になります)

また、相続財産となる場合、この請求権のみを放棄することは可能でしょうか

(鈴木)






【賠償請求権は相続財産になる】

お父さんの預金通帳が盗難にあったが、その犯人に弁済能力がないというケースでも、法律上はその損害賠償請求権は遺産になります

相続人としては、その債権を相続で取得しているのですから、その法定相続分に応じて、(実益はありませんが)犯人に対して損害賠償を請求することができますし、訴訟をすることもできます。


【一部の遺産だけを相続放棄することはできない】

法律上は相続放棄という制度があり、一定期間内に家庭裁判所に申述書を提出することで、相続財産を相続しない(正確には、相続人にならない)ことができます。

しかし、相続放棄はあくまで《全遺産を相続するか》、又は《全部を放棄するか》の二者一択であり、他の財産(預金や不動産)を相続しながら、賠償請求権だけを相続放棄するというようなことはできません


【相続税の課税対象は別問題】

ただし、上記の回答はあくまで法律の面からのものです。

法律上は相続財産でも、相続税上は相続財産にならないものがありますし、又、逆の場合もあります

例えば、生命保険金は原則として法律上は相続財産になりませんが、相続税の関係では相続財産として申告が必要です。

ところで、損害賠償請求権については、交通事故についてですが、末記のとおり、「被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償請求金は相続税の対象になりません」とする通達があります

税務上の問題として、この通達が本件のような《生前の盗難》という損害賠償にも適用されるのかということが問題になります。


【上記通達に対する弁護士コメント】

税務の問題であるので、最終的には税理士さんに相談されて結論を出されるといいでしょうが、参考として弁護士としてのコメントを付するとすると次のとおりとなります。

相続は、被相続人が《生前に取得した権利》を、相続人に移転させるものです。

これに対して、前記交通事故の場合の損害賠償請求権は、被害者である被相続人が《死亡後》に発生するものであり、生前に取得するものではありません。

そのため、《生前に発生した》盗難による損害賠償請求権については、《死亡後に発生した》前記交通事故の通達は適用されず、盗難の損害賠償請求権は相続財産になるものと考えられます。

ただ、この盗難の債権を全額遺産に入れるかどうかは別の問題です。

相続財産であるが、回収不可能で、実質的に価値がゼロであるとして申告する、そのような申告をどのように税務署に認めさせるのか、税理士の力の試されるところでしょう。

以上の記載はあくまで弁護士の見解です。

法律と税務とは異なりますし、税務署が私と同様な見解をもつかどうかもわかりませんので、より正確な意見を聞きたいのであれば相続に詳しい税理士に相談されるといいでしょう

【参考通達 タックスアンサーNo.4111 交通事故の損害賠償金

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:34 遺産 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

認知症の母が亡姉の相続人となった【Q&A №500】

2016/05/11

 【質問の要旨】

認知症の母の姉の相続問題

記載内容  認知症 後見人 判断能力

【ご質問内容】

母が認知症で施設にいます。

姉がなくなり相続が発生しました


姉の上にも長女がいて母と長女の相続になります。

長女と姉の周りには不動産関係の友人がリフォムや介護や高額定期の更新とかまでを管理していたので、法定後見の申し立てて財産を取り戻しました。

しかし今回は母に成年後見人の必要性が考えられて、弁護士に相続のみの依頼も考えましたけど、社会福祉協議会は家庭裁判所への相談を進められて当然に家庭裁判所も成年後見人の申し立てを、念頭に認知症の診断を主治医に作成することを勧められました。

後見申し立ては姉のものを自力でやりましたので手続きには問題がありませんけど、母は相続のお金で在宅介護を希望しています。

成年後見人を選任しないで息子である私が弁護士に依頼しても依頼する弁護士が正しく選定できるか成年後見が優先するかは判断ができません。

社会福祉協議会の話では第三者的な立場で成年後見を家裁に申し立てることを進められています。

弁護士を使い相続ができても将来は私の兄弟と争う結果になりかねません。

成年後見が妥当でしょうか?

(noumihaisou)







【あなたが弁護士に依頼することはできない】

お母さんに成年後見の申立をするのか、あるいはあなたが弁護士に依頼するのかどうかを悩んでおられるようですが、現在のあなたの立場では、お母さんの財産の管理を弁護士に依頼することはできません

お母さんの財産の管理を依頼することができるのは、その財産の持ち主であるお母さんだけです

※注:参考ケース
私(弁護士大澤)が経験したもので、相続人である母親ではなく、その息子が母親の相続問題を弁護士に依頼したというケースがありました。
母親は植物状態で寝たきりであるということを聞いておりましたので、不審に思って相手方の弁護士に「先生は誰から委任を受けたのですか」と尋ねましたところ、「息子さんが事務所に来られた」ということでした。
さらに聞いてみますと、弁護士は母親とは全く会っていなかったことが判明しました。
このような案件では相手方弁護士は依頼者である母親からは委任を受けていないことになり、それにもかかわらず代理人として行動したことについては弁護士会で懲戒の対象とされるものです。
そのため、私が相手方弁護士に対して、母親の代理人を辞任すること及び早期に母親の後見申立をすることをアドバイスして、相手方弁護士がそれに従われたことから、結局、成年後見人が選任され、結局、遺産分割問題も早期に解決することができました。



【成年後見人選任の申立をするのが望ましい】

あなたとしては、お母さんの成年後見人選任の申立をするか、申立をしないでそのまま放置しておく(ということは遺産分割ができないということになります)かのいずれかの選択肢しかありません

現在、3人姉妹(①お母さん②そのすぐ上のお姉さん③更にその上の長女)のうち、(上記②の)お姉さんが死亡されたことにより、既にその(上記②の)お姉さんの遺産分割問題が発生しています。

長女さんの周りに問題のある不動産業者がいるというのであれば、その人物がいつ、相続問題に介入して遺産の取込や横領等の不審な動きをするかもしれません。

その点を考えると、早期に成年後見人の申立を家裁にして、あなたが成年後見人になられることをお勧めします

もし、あなたが後見人に選任されない場合でも、弁護士等の専門家が成年後見人に選任され、その人が相続問題を解決してくれるはずです。


【成年後見人になってすぐ遺産分割解決の手配をする】

あなたが成年後見人になれば、あなた自身の意思で、弁護士に上記②のお姉さんの遺産問題の解決を依頼することもできます

その(上記②の)お姉さんの遺産分割を早期に解決し、お母さんが希望する《相続のお金での在宅介護》を実現されるのが、息子さんとしてのあなたとして、今、早急にとるべき方策でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:42 遺産分割 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

遺言書検認手続で提出する戸籍等【Q&A №496】

2016/04/01

【質問の要旨】


相続人が5歳で死亡しているとき、戸籍等はすべて必要か?

記載内容 戸籍謄本 出生 死亡

【ご質問内容】

遺言書検認申立に必要な戸籍謄本等について

相続人が「配偶者と子(第一順位)」または「子(第一順位)のみ」の場合

第一順位の相続人のうち死亡者がいる場合は、死亡者の出生時から死亡時まで 継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本となっているのですが、死亡者は5歳のとき死亡しているのですが、それでも、死亡者の出生時から死亡時まで 継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本は必要ですか?

戸籍の有効期限はありますか?

(wwe)






【遺産や遺言関係で裁判所に提出する書類】

家庭裁判所に遺産分割調停を申立するような場合には、被相続人の相続関係を明らかにするために、出生後から死亡までの間の戸籍(除籍、改製原戸籍を含む)が必要です。

これは死亡された被相続人の法定相続人としてどのような人がいるのか(第1順位の子や配偶者がいるのかどうか)の確認のために必要だからです。

次に、相続人については現在の戸籍の提出も必要です。

これは法定相続人が生存しているのかどうか、死亡している場合に相続あるいは代襲相続が発生し、配偶者や子が法定相続人になりますので、その点を確認するためです

遺言書の検認の場合も法定相続人に検認日を通知しますので、分割調停申立と同様の書類が必要です。


【5歳の時に死亡した相続人については】

今回は、遺言検認をするに際して、5歳で死亡した相続人についても出生から死亡までの戸籍が必要なのかという質問です。

5歳であれば婚姻年齢以下であり、婚姻できず、配偶者がいることはありえませんし、生殖能力も発達しておらず、子がいることもありえません。

ただ、戸籍にも誤記や脱落等がある場合も考えられますので、裁判所としてはやはり出生から死亡までの戸籍の提出を求めるのはやむをえないと思います


【戸籍の有効期限】

次に、戸籍謄本の有効期限ですが、相続人が「現在も生存していること」を立証する戸籍謄本(現在戸籍)は、原則として3か月以内の分を提出する必要があります

それ以外の相続関係(家族関係)は、父母の氏名や兄弟姉妹が「存在した」、あるいは過去に「死亡した」という事実の裏付けとして提出するものであり、このような事実は何十年経過しても変わることがないため、特に有効期限はないことになり、1年前に取り寄せした戸籍等でも提出できます

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:37 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

限定承認と相続放棄【Q&A №488】

2016/01/25

【質問の要旨】

相続放棄の注意点等

記載内容

返済 承認 遺品整理

【ご質問内容】

独居の叔父がなくなり甥である自分が相続人となりました。

若干の現金と一戸建ての遺産がありますが、人の良い叔父が連帯保証人になっていないか心配しております。

遠方に住んでおり、叔父の交友関係など全くわからないので、限定承認か相続放棄を考えております。

この場合注意することはありますか?

また、相続放棄をする場合、独り暮らしの叔父の遺品整理をしてしまうと単純相続したことになってしまいますか

相続放棄をした場合、家の後始末も全くしなくてよいと言うことでしょうか?

既に、叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配しています。

アドバイスのほどよろしくお願いいたします。

(ちょろ)





【遺産の整理と保証債務】

相続放棄は法定相続人が被相続人の相続をしないと家庭裁判所に申し立てることです。

相続放棄をすると遺産の中の預貯金や不動産、株式等、一切の財産を相続でもらうことはできなくなります。

反面、被相続人の債務(借金等)も相続されず、支払う必要はなくなります。

ただ、預貯金を払い戻す等、遺産を使うような行為があった場合には、相続放棄は認められません。

今回の場合は、遺産の整理ということですが、厳格にいうと遺品(例えば鍋・釜・布団等)の整理も遺産の処分に該当するので、放棄できないということになりそうです。

しかし、私としては、例示したような鍋等の価値のないものを処分する程度であれば単純承認とされることはなく、放棄が可能だと思います。

但し、価値ある物品(例えば絵画や彫刻等)を売却するような場合には、遺産の処分に該当し、法的には放棄ができない(正確にいうと、放棄してもその効果を被相続人の債権者に主張できない)ということになります。


【限定承認はほとんど使われていない】

民法の条文を見ていると限定承認は財産と借財を確認したうえで、相続をするという制度であり、合理的な制度のように見えます。

しかし、不動産の相続などで、税務上は相続とはみなされず多額の税金が課される等の使い勝手の悪い面があるため、私自身は今まで1回も扱ったことがなく、他の弁護士がこの手続きをしているのを見たこともありません。


【保証債務の有無の確認はむずかしい】

被相続人が保証債務を負っているのに、相続放棄をしなかった場合、この保証人の地位も相続人に承継される可能性があり、その場合には相続人が保証債務の支払いをする必要があります。

問題は、ほとんどの場合、保証人となっているかどうかが判明しないということです。

私の経験では、被相続人である母親が死亡した後、約10年経過してから、父親のしていた会社が破産し、会社の債務の連帯保証をしていた母親の保証債務が現実化したというケースがありました。

この場合には、被相続人からの何も財産などはもらっていなかったことから、相続放棄の手続きをし、結局、放棄が認められたことがあります。

叔父さんがどのような社会的な地位にいたのかを調べる必要があるでしょう。

もし、叔父さんが会社の社長や役員をしていたのであれば、会社の借財に連帯保証をしている可能性も考えられ、慎重に遺産調査をする必要があります。

相続放棄は相続開始を知ってから3ケ月以内に申立する必要がありますが、もし、調査に時間がかかるのであれば、放棄期間伸長願いを裁判所に提出するといいでしょう(ブログ【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。


【遺産の整理はしなくてもいいのか・・】

法律的には、相続放棄をするのであれば、遺産に手をつけない方がいいでしょう。

しかし、遺族としての立場から言えば最低限の遺産整理もしないと社会的な非難を受けかねません。

そのため、価値あるものは何らかの形で保管しておき、価値のないものは廃棄するということで折り合いをつけるのがいいでしょう


【自動車税や固定資産税、電気等の支払いについて】

叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配していることようですが、あなたが相続人としてその行為をしているのであれば、単純承認とみなされる可能性が高いです。

もし、そのような支払いの手配を停止できるのであれば、停止されるのが望ましいでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:19 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

生前の財産管理と相続対策【Q&A №485】

2016/01/13

 【質問の要旨】 

施設にいる叔母の財産管理をすることはできるか

記載内容

老人ホーム 財産管理 成年後見

【質問の内容】

15年ほど前に有料老人ホームに入居し、その後、問題を起こした関係から叔母の財産管理を施設がすることになりました。

同じ系列の施設間移動は3回ほどしているようなのですが、直近の施設に移ってからは、以前の所では請求書が届いていたのですが、現状の施設に移ってからは数回のお願いもしているのですが契約書も見せて頂けていない状況です。

このたび、高齢でもあり重度の肺炎のため、その施設を退所して系列の病院に入院した関係から現状までに出納状況、出来れば私物、資産等の管理を私の方に変更依頼もかけたのですが、たらいまわし状態で何の返事も頂けなく困っております。

対処方法ございますでしょうか?

叔母は現状、意識もはっきりしておりません。

(たんちゃん)







【あなたの立場について】

あなたと叔母さんとは親族という関係にはなりますが、それだけでは、叔母さんの財産に関与できる立場にはなりません。

あなたが叔母さんのことを心配しており、これまでに面倒を見てこられたとしても、法律的には他人であり、叔母さんの財産に関与することができるということにはなりません。

施設から見ればあなたは他人であり、あなたからの要望に対して何らの連絡もしないというのは、法律的には当然であり、その点で施設の対応は間違ってはいません。

むしろ、他人であるあなたに安易に叔母さんの財産内容を明らかにし、あるいは財産を渡したような場合には、施設として責任を問われることも考えられるということになります。


【叔母さんの後見人になると財産調査ができるが・・】

現在、叔母さんが意識もはっきりしていない状況であれば、財産管理も十分にできないでしょう。

このような状態にある叔母さんについては、家庭裁判所に成年後見人の選任申立をすることができます。

成年後見人になれば、叔母さんの財産を管理しますので、施設に契約内容や費用の照会も可能ですし、施設に預けた物件などがあればその引き渡しを求めることも可能です。

ただ、成年後見人になるのは、通常の場合は叔母さんの推定相続人(もし現在叔母さんが死んだ場合に相続人になると法律で定められている人)です。

あなたが推定相続人でない場合には成年後見人になれる可能性は少なく、その場合には、施設でも、また、現在入院中の病院でも、これまでに施設がしたと同様の扱いをされるのはやむを得ないでしょう。

他の人が成年後見人に選任されたというのであれば、事情を話してその後見人から調査をしていただくしかないでしょう。


(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:04 意思能力 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

被後見人の届出住所を私の自宅とすることの問題点【Q&A №479】

2015/11/25

【被後見人の住居の移転】

叔母に法定後見人(司法書士)がついていますが、叔母は重度の精神疾患で居住地には、ほぼ戻れる可能性は低く、誰も居住していない、未相続分(故 祖父の母屋)の住所に住所を置いてます。

後見人(家庭裁判所含む)及び相続人は、該当土地を売却する事で合意出来ていますが、後見人より、私の住所に別世帯で
叔母の住所を移したいと打診がありました(病院を住所にする事は病院に断られた様です)。

①将来私が、私の居住場所を売却等で移転する事が発生した時に家庭裁判所の許可が必要になるのでしょうか?

②一般的に、相談内容と同様の事態が発生した時にはどの様に解決されているのでしょうか?

③叔母の住所を私の住所に移した時のなんらかのリスクは有るのでしょうか?

記載内容

成年被後見人 家庭裁判所 住居 許可

(きーみん)







【被後見人の所有物件でなくても、売却に裁判所の同意が必要な場合がある】

相続人である叔母さんが共同相続した不動産の売却につき、他の相続人も、後見人も裁判所も同意しているというのですから、その売却についてはなんらの問題ありません。

そのため、今回のご質問は、相続について問題になる点はありません

ただ、折角、質問されているのですから、簡単に回答しておきます。

問題は、あなたの自宅に叔母さんの住所を置いた場合、あなたの自宅を売却する際に裁判所の同意が必要となる等、何らかの不利益があるかという点です。

成年後見については、被後見人が《居住の用に供する不動産》を処分(売却等)するには裁判所の許可が必要です(民法859条の3参照)。

この条文は、被後見人の所有を前提としていませんので、被後見人が所有していない物件(あなたの所有物件)でも、例えば叔母さんが《居住の用に供して》いるのなら、この規定の適用で裁判所の許可が必要になると思われます。

【元の住所に戻る場合でないので、結局、許可は必要がない】

《居住の用に供する》という意味についてはいろんな見解があります。

その中には《被相続人が現に居住しておらず、かつ居住の用に供する具体的な予定もあるわけではないが、将来においてなお生活の本拠として居住の用に供する可能性がある不動産》も含むというものまであります。

ただ、この条文は、被後見人をその生活環境から切り離すのは慎重にするべきだ(なぜなら、これまでの生活環境から切り離すのは酷だ、認知症が進む場合もある等)という観点から定められたものといわれています。

そうであれば、(あなたの自宅という)それまで住んだことのない場所に住所を移すというだけでは、《居住の用に供する》ことにはなりませんので、あなたが自宅売却の際、裁判所の許可は不要という結論になります

ただ、念のために、予め、何らかの形でその点を裁判所に確認されるといいでしょう

【住所移転に伴い発生する事態】

叔母さんの住所をあなたの自宅に移転した場合、叔母さん宛の郵便物があなたの自宅に届く、あるいは叔母さんの知人友人や叔母さんが債務を負っておれば、その債権者があなたの家を目指してくるというような事態もありうることも考慮に入れておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
17:08 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★認知症の母に代わり遺産分割協議書を代筆したい【Q&A No.472】

2015/10/07



父を亡くし、相続人は私と認知症の母二人です。

母に後見人を立てずに、代筆で遺産分割を行うことはできるででしょうか?



記載内容

  認知症 遺産分割協議書 偽造


【ご質問内容】

 父が亡くなりました。

 相続人は、息子の私と、認知症の母の二人です。

 私と母は、相続上、争う関係にあるので、後見人をたてなければならないといわれました。

 しかし、息子は私1人なので、母の財産もいずれは息子が引き継ぐことになるし、ましてや母に不利なことは一切する気もありません。

 できれば後見人ナシで(代筆で)1次相続、2次相続合計で最も相続税が少なくなるような相続分割をしたいと考えています。

 これは、犯罪になるのでしょうか。

 誰も、損害を受けないので、見逃されるのでしょうか。

 証券会社からの通報で、訴えられるのではないか心配です。

 母は、ただいま、病院の療養病棟にて入院中

 身体を動かすこと、意思表示はもちろん、飲み込むことも出来ず、点滴のみにて栄養を得ている状態が半年続いています。

 話を理解しているかも不明です。

 成年後見人が決まる前に、亡くなってしまう心配もあり、できれば、後見人ナシで相続を済ませたいと考えています。

(くんくん)







【成年後見人の選任が必要です】

 認知症にも程度がありますが、お母さんが意思表示できないというのであれば、お母さんは遺産分割協議することができません

 本件ご質問のような場合、代筆して作成された遺産分割協議書には、効力はありません。

 あなたとしてはお母さんの成年後見人選任の申立をし、家庭裁判所が選任した成年後見人との間で遺産分割協議をする必要があります。



【節税目的でも犯罪が成立してしまう】

 本件ご質問のような場合に、あなたがお母さんの署名捺印を代行することは認められません。

 もし、お母さんの代筆をした場合、有印私文書偽造等の犯罪末尾記載の刑法第159条、161条参照)になる場合もありえます。

 なお、節税という理由があっても犯罪が成立することに違いはありません。

 節税をはかる必要があるのなら、成年後見人の選任申立をし、その後見人との間で遺産分割協議し、その際、節税の必要性を説明して、成年後見人の了解を取りつける必要があります



【特別代理人が選任される場合】

 被後見人がお母さんの場合、息子さんが成年後見人になることもあります。

 しかし、今回のように遺産問題があり、利害対立するような場合には、裁判所は遺産とは関係のない第三者を後見人に選任することが多いです。

 もし、仮にあなたが後見人に選任された場合でも、遺産分割に関する限り、あなたはお母さんと利害が対立しますので、裁判所に特別代理人を選任申立をする必要があります

 この場合、あなたは裁判所が選任した特別代理人との間で遺産分割協議をすることになります

(弁護士 大澤龍司)

〔参照条文〕

刑法
159条1項(有印私文書偽造罪)
 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

161条1項(偽造私文書行使罪)
 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:42 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

甥を相続することはあるのか? 【Q&A №459】

2015/08/05



【質問のまとめ】

 甥が亡くなった後に姉が亡くなりました。

 甥の借金を私が返さないといけないことがあるのでしょうか?



記載内容

   相続順位 相続放棄


【ご質問内容】

 はじめまして、二次相続につき教えていただきたく投稿いたしました。

 姉の子(甥)が住民税や固定資産税を未払いのまま死亡したらしく市役所から自分に請求が来ています。

 法律上、被相続人の叔父叔母が相続人になることはなかったはずと思い、市役所に問い合わせました。

 まず甥が亡くなり姉が相続放棄をしなかった。その後に姉が亡くなり、姉には他に子もいないため、兄弟である私に甥→姉→私と納税する義務が相続されたとのことです。

 相続放棄を検討していますが、直接甥の相続人ではなくてもこの場合、私は相続人になってしまうのでしょうか。

 
(清左衛門)







【あなたが甥の債務を相続することもあります】

 お姉さんの子(甥)が死亡して相続が発生したケースです。

 まず、甥が、子供がなく死亡した場合、その方の母親(すなわち、あなたのお姉さん)が直系尊属として相続人になります。

 また、甥に子供がいても、その子供が相続放棄した場合にも、お姉さんが直系尊属として相続人になります。

 相続では財産だけでなく、負債も引き継ぎます。

 そのため、もし、甥の遺産が、財産よりも負債が多い場合には、お姉さんとしては相続放棄をするべきでした。

 もし、相続放棄をしていないというのであれば、甥の税金等の債務の支払義務は相続でお姉さんに引き継がれます。

 お姉さんが死亡した場合、お姉さんに子や親がいないか、あるいはこれらの方が相続放棄をした場合、兄弟であるあなたが相続人になります。

 以上に挙げたケースに該当するのであれば、市役所のいうように、甥の方⇒お姉さん⇒あなたの流れで税金の支払い義務が相続され、あなたが支払い義務を負います。


    甥 ⇒ お姉さん ⇒ あなた
      一次相続     二次相続




【相続放棄をするかどうかは調査をしてから】

 まず、あなたとしては、お姉さんの遺産(財産)や負債(債務)の内容を調査し、債務が多ければ家庭裁判所に相続放棄の申立をするといいでしょう。

 ただ、相続放棄は、相続開始を知ってから3ケ月以内にする必要があります。

 もし、調査には時間がかかるというのであれば、予め、家庭裁判所に相続放棄の期間を延ばしてもらう手続きをするといいでしょう。

 債務が多いことがはっきりしており、相続開始を知ってから3ケ月以内だというのであれば、すぐに相続放棄の手続きをするといいでしょう。

 手続きとしては弁護士に依頼しなければならないほど複雑なものではありません。

 もしわからない点があれば、家庭裁判所で教えてもらってもいいです。

 ただ、財産を調査する必要があれば、相続に詳しい弁護士に相談されるということも考えていいでしょう。



【遺産調査に時間がかかる場合の対処】

 遺産の調査に時間がかかるということを理由にすれば、家庭裁判所は放棄するまでの期間を(通常の場合)3ケ月程度延長してくれますので、相続開始から6ケ月程度、調査機関があることになります。

 その調査の結果、負債が多ければ家庭裁判所に対して相続放棄の手続きをするといいでしょう。

 なお、調査期間中に遺産の預貯金を使うなどということをすれば、相続放棄の効果が認められなくなりますので、この点は注意が必要です。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:15 相続人 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄はいつから数えて3か月【Q&A №455】

2015/07/15



【質問のまとめ】

「相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」の「知った時」とは、いつですか?

戸籍謄本類は、それぞれの相続人が各自揃えて提出すべきですか?



記載内容

  借金 起算日 3ヶ月


【ご質問内容】

 「相続の開始を知ったとき(日)」がいつに当たるのかがわかりません。

 最初に銀行からの手紙が来ました。

 亡くなった叔父の件で重要な案内があると、書かれていました。

 詐欺かなにかと思い、銀行へは電話せず、叔父の家族へ問い合わせました。

 それはもう済んだことだから放っておいていいと言われました。

 しかし、翌日になって直ぐに相続放棄の手続きをしてくれと言われました。

 このときに、初めて叔父に借金があり、叔父の家族は全員相続放棄をしていたことを知りました。

 1週間後に銀行へ電話をして、叔父の借金の額と、相続人である私に返済して欲しいと言われました。

 この場合、叔父の家族が相続放棄をしたと知った日なのか、それとも銀行の手紙が届いた日なのか、どちらになるのでしょうか?

 また、戸籍謄本類のことなのですが、同順位の相続人が先に提出していた場合でも、各自が揃えて提出した方がいいのですか?


(はちわれ)







【相続の開始を知ったときとは】


 相続放棄については相続開始を知って3ケ月以内家庭裁判所に放棄の申し出をする必要があります。

 第一順位の法定相続人の場合には、被相続人が死亡した日(正確に言えば、被相続人の死亡を知った日)が起算日になります(なお、初日を算入しないことになっていますので、例えば1月1日に相続の開始を知った場合には、4月1日が期限になります)。

 次に先順位の相続人が相続放棄をした場合には、その相続放棄があったために、あなたが相続人となったことを知ったときが起算日になります。

 銀行から手紙が来たとしても、その内容が「叔父の件で重要な案内がある」というだけでは、あなたが相続人になっていることは読み取れませんので、その手紙が来た日は起算日になりません。

 あなたが叔父の家族の全員が相続放棄をしたことを知ったという時点までいくと、あなたが相続人になったことが判明しますのでこの日が起算日になります。



【提出通数について】

 家裁に相続放棄の申立をする場合には、あなたと死亡された被相続人との間に相続関係があることを証明する書類(戸籍謄本や除籍謄本)の提出が必要です。

 提出通数ですが、違う時期に放棄をする場合にはその都度、戸籍等の謄本の提出が必要になります

 同時に一緒に申し立てをするのであれば一通で足りますが、同順位の相続人であっても、別々に申し立てるのであれば、通常は、それぞれの方が戸籍謄本類を提出する必要があります。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:36 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続不動産の時効取得はできるか【Q&A №449】

2015/06/02



【質問まとめ】
10年前に父がなくなったとき、父の不動産について

「いらない」

と言って相続放棄したはずの姉が

「不動産を売って法定相続分の金をよこせ」

と言ってきました。

私は、土地建物を時効取得したと主張できるでしょうか



記載内容

  長年 時効取得 


【質問詳細】
 父が死んで10年たつので、父名義の土地、建物の名義を私名義に変えようと思って、 姉にいうと「家を売って法定相続分の金をよこせ」というのです。

 父が死んだ後、父の貯金を姉と私2人で200万円づつ分けました。

 それで、その時、姉は「他の財産の家や土地はいっさいいらない」といいました。

 土地、建物の取得時効は10年だとおもいますが、姉は父が死亡する30年ぐらい前に結婚して遠方にすんでおり、父死亡後は私1人で、土地、建物を占有していました。

 この場合、土地、建物の取得時効を主張して時効取得時効による登記ができるでしょうか?

 裁判の場合、姉を相手におこすのでしょうか?

 善意は、他に相続人がいない場合ということだと思うのですが、姉は土地、建物の相続を放棄していましたので、私は、他に相続人がいない場合だと思っていました。

 相続人は私と姉2人です
(hukuda)





【相続放棄ではなく、遺産分割協議の話である】

 相続放棄とは、家庭裁判所に対して、お父さんの遺産は全て相続しませんという申し出をすることです。

 お姉さんが《家や土地は一切いらないとあなたに言った》ということは相続放棄ではありません

 法定相続はすることを前提として、どのように遺産分割をするのかということであり、それは遺産分割協議の話であるとご理解ください。




【他の財産はいらないという発言の意味】

 遺産分割する場合、通常、法定相続人間で《遺産分割協議書》という合意書を作成し、実印を押捺し、印鑑証明書を添付します

 遺産は多額の財産の分割ですので、分割に同意するという意思に間違いがないこと、分割内容も記載したとおりであるということ等、間違いや誤解を防ぐという配慮から書面化されるのです。

 口頭(会話)等だけで遺産分割協議が絶対に成立しないというわけではありませんが、遺産分割という重大な問題を口頭だけで処理するということが裁判で認められることは極めて可能性が低いということを理解する必要があります。

 裁判になると、遺産がいらないという発言があったことについてあなたの方が証明する必要がありますが言った、言わないの議論になりかねません。

 また、仮にそのような発言があったと認められても《そのような気持ちもあったというだけで、絶対にいらないと言ったわけではない》と反論されることも多く、裁判になれば必ずしも有利な判決が出るとは言えないでしょう。




【取得時効の成立について】

 土地や建物については、占有が長期間続くと時効取得が認められます。

 しかし、相続の場合に取得時効が認められることはむずかしいです。

 その理由は次のとおりです。

 時効取得が成立するには多くの要件がありますが、その一つに自主占有》の開始という要件があります。

 これは取得時効を主張する人が、その家の全部の所有者であるという外形を整えることです。

 質問のようなケースでは、あなたがお父さんの家に住んでいるだけでは不十分です。

 《全部が私の家である》ということが外見的にわかるような状況が必要です。

 説明をしにくいのですが、遺産分割協議が整い、単独登記をし、かつ単独で占有をし始めたが、実は分割協議は無効であったというようなケースがこれにあたります。

 そこまで行かなくても、少なくともあなたがお姉さんに《この家、私が全部の所有者になりますよ》ということを宣言する程度の事実が最低限、必要でしょう。



 また、本件では、期間の点でも時効の成立は難しいです。

 不動産の取得時効は《善意無過失》で10年、それ以外は20年です。

 《善意》とはこの家が自分の《単独の所有》と信じ、そう信じたことがもっともだというような場合ですが、本件の場合には、お姉さんに持ち分があるということは明らかですので、善意にはならず、そのため20年も経過していない現時点で取得時効の要件を満たすことはありません

 結局、取得時が成立する可能性はほとんどないと考えていいでしょう。




【どのようにして解決するか】

 以上に述べたように、法律的にはあなたの主張がとおることは少ないです。


 しかし、法律がすべてではありません。

《お父さんの面倒を見たのは私でしょう》と人情と義理をからめて攻め、

《お姉さんはあのときいらないと言ったのに・・》と足元をすくいつつ、最後の落としどころとしては少し譲って

《半分づつではなくて4分の1くらいでどうか》とか、あなたの人間力を総動員してお姉さんを説得していくといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:21 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★相続放棄と葬儀費用【Q&A №440】

2015/04/01



 母方の叔父が独身で、甥、姪に当たる人物が私だけです。

 母も叔父もまだ元気ですが、今のうちに知っておきたいので質問させていただきます。

 叔父の遺産は放棄するつもりです。

 母が亡くなり、その後叔父が亡くなったら葬儀代の負担はどのようになりますか?

 相続人が私しかいない場合、葬儀代は立て替えておけば、遺産を放棄しても葬儀代など請求できますか?

 その場合どんな手続きをしておいたらいいですか?

 領収書をもっておけばいいのでしょうか?


記載内容

  葬儀費用 立替 相続放棄 相続財産管理人 代襲相続  
(はるか)





【葬儀費用は相続債務ので、遺産に立替分の返還請求をできない】

 叔父さんが死亡したとき、資産や債務は法定相続人に引き継がれます。

 この相続人に引き継がれる債務とは、叔父さんが生前に負っていた債務です。

 質問の葬儀費用ですが、これは叔父さんが死亡した後に発生する債務ですので、相続債務にはなりません。

 なお、相続税の申告では、葬儀費用は必要経費として遺産から控除されます。

 しかし、それは税務上の扱いにすぎず、法律では相続債務としては扱われません。

 そのため、葬儀費用を立替えたからといって、その立替分を遺産から支払ってもらえることはないというのが法律的な回答になります。

 なお葬儀費用の扱いについては相続Q&A №140Q&A №424を参照ください。




【相続放棄の後の請求には手続的に費用もかかる】

 お母さんが先に亡くなり、その後に母方の叔父さんがなくなった場合には、あなたはお母さんの代襲相続人として叔父さんの遺産の法定相続人になります。

 あなたが相続放棄をした場合、他に相続人がおらなければ、叔父さんの遺産を管理する人はいなくなり、相続財産は宙に浮くことになります。

 もし、あなたが叔父さんの葬儀費用を立替えたということで請求がしたいのであれば、あなたが家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をし、これを受けて裁判所が弁護士を相続財産管理人として選任します。

 但し、この選任をしてもらうためには約100万円の予納金を裁判所に納める必要があります(この予納金は相続財産管理人の報酬等に充てられます)。

 このように手続き的にもややこしく費用もかかります。

 しかも、相続財産管理人としては、あなたから葬儀費用立替分の返還請求があったとしても、前項で記載した理由により、支払いを拒否する可能性が極めて高いことを理解しておく必要があるでしょう。





【葬儀をしなければならないなら、生前にその分をもらっておく】

 以上のとおりであり、相続放棄をした場合、立替えた葬儀費用は返還される可能性は極めて少ないと覚悟しておくべきでしょう。

 解決策としては、現在、叔父さんが生きておられるようですので、将来の葬儀費用を予めもらっておくことを考えられるといいでしょう。

 葬儀費用に使用するとの前提で叔父さんからお金を預かり、それを保管しておいて、叔父さんが死亡されたときにそのお金と使って葬儀をされるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:28 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺言書の検認を受けてからするべきこと【Q&A №430】

2015/02/18
 


 昨年母親が亡くなりました。

 父親は十数年前にすでに他界しております。

 私には姉が一人おります。

 姉は現在社会人、大学生2人の娘と夫の5人家族で私のほうは小学6年生の息子と主人の3人家族です。

 母の病院の付き添いなどの面倒は主に姉が行ってきました。

 私の方は育児期が重なり主に週末など行ける時に息子の顔を見せに行くという形で関わってきました。

 母が亡くなってから姉より、実は数年前に母から遺言状をもらっていたと聞かされました。

 もらう際、「財産は全部あなたに」といった内容の遺言状であると聞かされながらもらったそうです。

 そうはいっても、ということで一度は財産は等分にしようということになったのですが、実家の片付けをする過程で意見の不一致などが重なってきたところで「やっぱり検認するから」といわれ手続きにかかっているそうです。

 姉はそれまでにも母より子供の学費や生活費の援助を相当額うけていましたし、もっと遡れば子供の幼少期には母は定期を買って足しげく姉のところに通い面倒をみておりました。

 つまり、過去からずっと持ちつ持たれつの関係でした。

 私の方は子供の頃から冷遇、姉は母の愛情を一身に受けておりました。

 悔しくてなりません。

 遺言状の存在を知りながら教えてもらえなかったこと、姉が生前に受けてきた恩恵。

 最後にとどめの一発、どう考えたらよいのでしょうか。

 自分の尊厳を守りぬく方法を教えてください。


記載内容

  秘密 自筆遺言書 検認 遺留分 特別受益

(みなしごはっち)





【まずするべきことは遺言書の確認です】

 質問では、お姉さんは遺言書があると言っておられ、検認の手続きをされる方向のようです。

 公証役場で作った公正証書遺言の場合には検認が不要ですので、遺言書は自筆でかかれた自筆証書遺言だと思われます。

 あなたとしては次の点を確認する必要があります。

①まず、本当に遺言書が存在するのかを確認する。

遺言書の内容がどのようなものかを確認する。

遺言書が有効かどうかを確認する。


 自筆証書遺言の場合、法律に定められた書式に合致しない場合には、遺言書は無効になります。

 たとえば、ワープロで作成したものは効力を持ちませんし、日付が抜けている場合も効力がありません。



【遺言書を入手して、有効性を確認する】

 自筆証書遺言の場合、お姉さんが家庭裁判所に検認の申立をします。

 裁判所は遺言書を開封し、その内容を他の法定相続人等に見せます。

 この裁判所の検認は遺言書が出てきたことを他の法定相続人に見せるというだけの手続きであり、裁判所がその遺言書が有効であるかどうかの判断はしません。

 あなたとしては遺言書の検認に際して裁判所が作成する検認調書(遺言書のコピーが付けられています)をもらい、有効な遺言書かどうかを判断されるといいでしょう。

 なお、その判断ができないというのであれば、相続に詳しい弁護士に法律相談され、遺言書が有効かどうかについての見解を聞かれるといいでしょう。




【遺言書が有効な場合の対処法】

 仮に遺言書が有効なものであり、その内容がお姉さんに遺産全部を相続させるというものであっても、あなたには、本来の法定相続分の半分(相続人があなたとお姉さんだけだとすると4分の1)の限度で遺産をもらえる遺留分減殺請求という制度があります。

 遺言書の内容を見て、あなたが全く遺産をもらえないような内容である、あるいはもらえるけれども遺産の4分の1に届かないというのであれば、遺言書を見たときから1年以内に、遺留分減殺請求通知を出されるといいでしょう。

 なお、お姉さんが、お母さんの生前にかなりの財産をもらっているような場合には、その生前にもらった分を特別受益として遺産に持ち戻すという制度があります(このような持ち戻しが認められると、あなたが遺産からもらう遺留分が増加します)。

 この遺留分や特別受益については、この相続ブログの他のQ&Aに詳しく書いておりますので参照されるといいでしょう。(相続Q&A №243Q&A №393ご参照)

 ただ、遺留分や特別受益については、法律的に難しい分野ですし、最終的には訴訟等の法的手続きが必要になる可能性も高いことから、早期に弁護士に相談、依頼することも視野に入れるといいでしょう。
 

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:45 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

共有持分と相続放棄の関係【Q&A №402】

2014/10/09
 持分1/2の共有土地所有者がその土地を抵当に入れたまま死亡し、遺族が相続放棄しています。
 債権回収会社に私が代わりに支払い、抵当権抹消手続きをしたいのですが、可能でしょうか?
 抹消手続きに必要な書類一式はお金と引き換えにくれるとの事ですが、登記手続きの権利者は本人死亡なので、誰か代わりに手続きすることが可能でしょうか? 
 抵当が外れたら、相続財産管理人の選任を申し立てて、相続人不存在確定したら、共有者の自分に帰属するのを待つつもりです。
 他には債務も、遺産もないようです。よろしくお願いいたします。

記載内容

相続財産管理人 登記 共有 利害関係人 予納金
(みなみ500)


【共有持分と相続放棄】
 質問者の方は他の方(Aさんとしておきましょう)と土地を共有されていたが、そのAさんが死亡し、相続人が全部相続放棄したというケースです。
 このような場合、民法に《共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は他の共有者に帰属する(255条)》という条文があります。
 質問の場合は相続放棄の結果、相続人がいなくなったケースですが、この場合にも同条文が適用されると考えていいでしょう。
 その結果、質問者の方はAさんの共有持分を取得し、単独所有権者になっています。

【登記は相続財産管理人に対して請求する】
 質問者の方はAさんの借金を債権回収会社に支払い、抵当権の抹消書類をもらうようです。
 ところが、この抹消書類で抵当権抹消登記を申請できるのは持分権者であるAさんです。
 しかし、Aさんには相続人がいないのだから、一体、誰に抵当権抹消登記を請求するのか(登記義務者は誰か)という問題が発生します。
 次に、Aさんの持分が無くなり、質問者の方が単独所有になったのですが、この登記(所有権移転)もAさんに協力してもらう必要があります。
 しかし、Aさんの相続人がいない場合には、Aさんの持分移転登記を誰に請求するのだろうか(この場合の登記義務者は誰か)という問題も発生します。
 結論をいえば、遺産の管理をしてもらう相続財産管理人を選任してもらうことを家庭裁判所に申立する必要があります。
選任された相続財産管理人がAさんの遺産の管理人として登記をすることになります。

【利害関係人なら相続財産管理人の選任申立を急ぐ】
 「利害関係人」であれば相続財産管理人の選任を申し立てることができる(民法952条)と記載されています。
 質問者の方はAさんの借金を支払ったのですから、借金支払分の返還請求権を有する債権者ですし、又、登記を請求できる立場にもありますので、利害関係人であることは間違いなく、あなた自身が申立することは可能です。
 Aさんの抵当権抹消も共有持ち分移転も財産管理人の関与が必要ですので、相続財産管理人の選任を急がれるといいでしょう。

【財産管理人制度についての補足】
 なお、相続財産管理人について簡単に説明しておきます。
 相続財産管理人の選任申立をするには裁判所にお金(予納金)を納付する必要があり、その金額は大阪家庭裁判所では約100万円で、かなりの多額です。
 次に質問者が財産管理人の選任の申立をした場合でも、財産管理人は相続人の関係の手続きのみをするのではなく、遺産の総整理をします。
 そのため、相続財産管理人の手続きが終了するまでにはかなりの期間がかかり、質問者の方の手続きだけが優先されるわけではないことも理解しておく必要があります。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:58 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★親の生活費を負担しないことが特別受益になるか【Q&A №394】

2014/07/22

 20年親に生活費をいれてない弟夫婦、遺産相続の時この期間を特別受益と証明できますか?

記載内容

親の生活費 扶養義務 特別寄与
(ココ)


【親が生活に困っている場合には、子は扶養料を支払う義務がある】
 親子は直系血族ですので、互いに扶養義務を負います。
 そのため、親が生活に困っているようであれば、子供は扶養料を支払うべき義務があります(参照条文:民法877条。末記参照)。
 しかし、親が生活に困っていない場合には扶養義務はなく、子供が親の生活費を負担する必要はありません。

【親の生活費を負担しないということだけでは相続問題にならない】
 親が生活に困っているのに、弟さんが生活費を負担せず、あなたが生活費を負担したということであれば、それはあなたが扶養義務を尽くしたということであり、相続の問題ではありません。
 ただ、あなたの立場から言えば、自分が出した過去の養育料を弟さんに請求できるかという問題です。
 結論から言えば、弟さんの収入や生活状況とあなたの分とを比較して、同程度であればあなたが請求(求償)できる場合もあるということになりますが、むずかしい問題ですので、詳しくは家族問題に詳しい弁護士と相談されるといいでしょう。

【特別寄与になる場合がある】
 親が困っていないのに、親に仕送りをし、その分、親の財産の減少が食い止められたあるいは増加したというのであれば、相続の特別寄与の問題となる可能性があります。
 特に扶養義務を明らかに超えるというほど送金しておれば、特別寄与の対象となり、遺産から先に寄与分相当額を支払ってもらえるかもしれません。
 なお、この寄与分については、まず、法定相続人間で協議し、協議がまとまらない場合には家庭裁判所で決定することになります。

《参照条文》
民法第877条
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
 (以下略)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:50 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★兄弟の口座に移した両親のお金【Q&A №382】

2014/06/04
  両親が高齢のため施設に入るにあたり、これまで遠方にいた弟がそちらの施設に入れるという話になり、この度両親を転居させたのですが。 その際今後両親がボケてお金を引き出せなくなるからと、弟は自分の口座に両親の貯蓄したお金と、母親を銀行の窓口に連れて行き定期を解約し1000万円を移しました。 また実家も、今後の病気に備えるということで弟が売却の手続きをし、この度1400万円ほどで売れたのですが、こちらも自分の口座に入れる予定で、こちらには一切渡さないと明言しております。 この場合、両親の名義ではなくなってしまったお金・財産の相続はどうなるのでしょうか 相続そのものが発生しないのでしょうか こちらの言い分は一切を認めないため、本人とまともな対話もできず困っています、彼は両親に出す生活費を切り詰めており、親族のことながらあまりよくない予想を抱かざるおえません。 今後いずれくる時に介護で使いきったと言い切られれば追求も難しく、この場合はどうなるのか教えていただけたらと思います。

記載内容

介護 贈与 預かり金
(立川)


【介護費用の預託になる】
 弟さんとご両親との権利関係としては、ご両親が弟さんに《将来の介護費用》として《金銭を預けた》ということであり、少し難しく言えば《介護費用を預託》ということになります。
 そのため、弟さんとしては、両親の介護のためにのみ、預かった金銭を支出することができるはずです。
 しかし、現実の問題としては、介護のためだけではなく、弟さんの私的な目的に使用されるのではないか、あるいは介護のためと言っても本当に介護のためであることをどのように証明してくれるのか・・・等、いろんな疑問が浮かんできます。
 ただ、ご両親が生きている限り、あなたにはご両親の金銭問題について、なんらの意見をさしはさむ権利はありません。

【弟さんの管理している預託金の返還を求めることは・・】
 現時点では、ご両親は認知症等で物事の判断がつかないという状態ではなさそうですが、将来、認知症になり、その程度がひどくなった場合には、あなたとしては、ご両親につき成年後見人選任の申立を家庭裁判所に提出するという手段があります(その方法はQ&A №280Q&A №349Q&A №376をご参照ください。)。
 成年後見人がつけば、その時点でのご両親の財産は全て後見人が管理します。
 その段階で、ご両親が弟さんに預けていた金銭を、後見人が返還してもらい、その管理下に入れます。
 しかし、弟さんが既に私的に流用していた場合、その分の返還請求を成年後見人がしてくれるかというと、その可能性は必ずしも高くはないでしょう。
 成年後見人としては、とりあえず現在の財産の管理という点に重点があり、過去に散逸した財産の回復というところまでしない場合が多いようです。

【相続が開始したときにはどうなるか】
 お父さんあるいはお母さんが死亡したとき、相続が開始します。
 その時点で、預託していた金銭が残っているのであれば、その金銭の返還を求める権利(預託金返還請求権)は遺産になりますので、あなたは法定相続分に応じて返還請求ができます。
 又、預けた金銭のうち、弟さんが自分の必要に応じて使った金銭があれば、ご両親としては目的外使用として、損害賠償請求ができますので、この権利も遺産になり、法定相続分に応じてあなたが弟さんに賠償請求をすることができます。

【問題は証明できるかどうか】
 ただ、損害賠償を請求する側(あなた)としては、弟さんが私的に流用したという点を証明する必要があります。
 本来は生前からそのような証拠を集めるのが望ましいです。
 しかし、ご両親の死亡前には、法律的な意味では、あなたが弟さんに直接、預託金の使用状況を確認したり、裏付けとしての領収書等を請求することはできません。
 もちろん、あなたが請求して、弟さんがそれに応じてくれればいいのですが、そのような申入れは弟さんの反発を招くだけの結果に終わる可能性が高いと思われます。
 又、ご両親としては、法律上、使途や金額の報告を求め、あるいはその裏付けを請求できるので、あなたがご両親を説得して、そのような申入れをして頂くということも考えられますが、実現する可能性は低いでしょう。
 そうすると、ご両親が死亡した後に、早期に、弟さんにどれだけの金額を何に使ったのか、その裏付けはあるのかを確認されるといいでしょう。
 又、その一方で、ご両親のおられる介護施設等に支払った金額を確認されるといいでしょ。
 ただ、残存している金額が、介護した期間や介護内容を比較してあまりにも少額というのであれば、調停や訴訟で返還を請求することになります。
 そのような場合は、早期に相続に詳しいお近くの弁護士に相談され、その後の対処方法のアドバイスをもらうといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:31 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

夫を相続人から外す方法【Q&A №379】

2014/06/03
 初めまして。よろしくお願い致します。
 私は結婚していますが、子供がいません。
 病気の容体が良く無く、「死」を意識する様になりました。
 私の死後、保険金で葬儀を行って貰えると仮定して。
 主人用にも毎月少ないながらもお金を貯蓄しているので、私の通帳の中身は、妹の娘(姪)に譲渡したいと思います。
 その場合は、「夫の相続人手続きを外す」と聞きましたが、その様な手続きはどの様にしたら良いのですか?

記載内容

遺留分 生前の相続放棄の合意 生前の遺留分放棄 公正証書遺言の執行 廃除
(くるみ)


【相続人である夫の立場は・・・】
 ご主人に遺産を渡したくないが、どうすればいいかという質問です。
 まず、ご主人は配偶者になりますので、妻であるあなたが死亡した場合には、本件では子供がいないということですので、直系尊属(あなたのご両親等)が存在する場合にはあなたの遺産の3分の2が、又、ご両親等の直系尊属が死亡されている場合には4分の3が、法定相続分としてご主人が相続します。

【遺言書を書く】
 まず、何よりも遺言書を作成し、ご主人以外の人に遺産全部を相続あるいは遺贈する必要があります。
 又、なぜ、ご主人に遺産を与えないかを、穏やかな表現で《付言》として記載しておくといいでしょう。
 ご主人としては、そのような遺言書であれば、やむなしとして納得する可能性があり、あえて遺留分減殺請求まではしてこない可能性もあります。

【夫を相続手続きから外す《廃除》という方法があるが・・】
 質問には《「夫の相続人手続きを外す」と聞きましたが、その様な手続きはどの様にしたら良いのですか?》とあります。
 法律上、夫から強制的に相続人である資格を奪ってしまう《廃除》という制度(民法892条。条文は末記のとおりです)があります。
 この制度は、あなたが生前に、家庭裁判所に、ご主人から暴力や虐待を受けていたことを証明し、裁判所の裁判(審判)でご主人を相続人から除外してもらうものです。
 ただ、そう簡単には認めてくれないことが多いです。

【生前の相続放棄は法的に法的には無効で意味がない】
 生前、相続を放棄するのに同意をしてもらうことも考えられますが、残念ながら、生前の相続放棄は無効です。
 そのため、あなたの死後、ご主人が約束を翻して相続放棄をしなかったとき、ご主人は法定相続分どおりの相続することになっても、誰も文句をいうことができません。

【生前の遺留分放棄を考えてみるとよい】
 生前の相続放棄はできませんが、生前の《遺留分》の放棄は可能です(民法1043条。条文は末記のとおりです)。
 あなたとご主人は互いに法定相続人という関係にあるのですから、互いが遺留分を放棄しあうということで合意されてはいかがでしょうか。
 ただ、生前の遺留分放棄については、次の点をご注意ください。
① 家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
② 遺言書がないとご主人は法定相続します。

 そのため、あなたとしては遺言書を作り、ご主人に遺産を行かないことを明らかにしておく必要があります。
 遺留分放棄の審判申立については、当ブログのQ&A №381をご参照ください。

【公正証書遺言で遺言執行者を定め、秘密裏に執行すると・・】
 過去に扱った案件ですが、他の相続人に全く知らせることなく、遺言が執行されていたことがありました。
 公正証書遺言で遺言執行者が隠密裏に執行したのです。
 自筆遺言証書であれば、その実行をするために家庭裁判所の検認という手続きが必要であり、その手続きの通知が裁判所から全相続人に行きます。
 しかし、公正証書遺言の場合、検認の手続きが不要で、即時に執行できます。
 このような場合、他の相続人の知らない間に遺産が分配され、特定の法定相続人が相続から事実上、排除されるということになります。
 但し、遺言執行者としては相続の開始や遺言の存在を知らせ、遺産目録を作成して法定相続人にも交付する義務があります。
 前記のようなケースは、これらの義務を履行しなかったために遺留分減殺の機会を奪ったものだとして、他の相続人(たとえばご主人から)損害賠償請求をされるというリスクが発生しますので、お勧めできる方法にはなりません。

・参照条文①:民法第892条(推定相続人の廃除)
 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

・参照条文②:民法第1043条(遺留分の放棄)
 1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:18 遺言 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

紛失した父の実印は有効か【Q&A №372】

2014/05/02
 父親が死亡後、あるべき場所から実印が紛失しています。
 数ヶ月後、遺産相続を確認した上で実印を押した偽造借用書などで債務を負わされるのではないかと心配です。
 トラブル回避の方法はないでしょうか。

記載内容

実印 印鑑証明 偽造 悪用 紛失
(わたなべ)


【死ねば実印は無効であるとはいうものの・・・】
 被相続人の死亡後には、《お父さんは死んで、書面作成はできない》から、実印はあってもなくてもどちらでもよいというふうに考えられがちです。
 しかし、誰か、悪意の人が実印を入手したとなると、問題が発生する可能性があります。
 質問にもあるとおり、悪意の人が日付を遡らしたお父さんの借用書を作成することも考えられるからです。
 又、生前、お父さんの不動産の名義を動かしている可能性さえ考えられます。

【対策としては・・・】
 対策としては、警察に盗難の被害届を出すことも考えられます。
 しかし、果たして盗難にあったかどうかが明らかではなく、又、警察が現実に動いてくれることも期待薄でしょう。
 お父さん名義の実印を押した借用書が出てきたときの対策としては次のようにされるといいでしょう。
 まず、印鑑証明書があるのかどうかを確認しましょう。
 実印をつく場合には印鑑証明書の提出を求めることが多いです。もし、その借用書に印鑑証明書が添付されていないのであれば、死後に作成された可能性があります。
 次に、署名がお父さんの筆跡であるのか、又、現実に借用したとされる金銭がお父さんに手渡されていたのかどうかも確認し、その借用書が真実のものかどうかを判断しましょう。
 次に、実印をついたお父さんの生前贈与の書面が出てくる可能性もあります。
 この場合にも、印鑑証明書の有無、筆跡等を確認して、その書面が偽造されたものか否かを判断されるといいでしょう。
 いずれにせよ、実印を押捺した文書が出てきた場合には、紛争になる可能性が高いのですから、早期に相続関係に詳しい弁護士に相談し、そのアドバイスを受け、必要に応じて事件を委任をすることも考えましょう。

【最悪の場合には相続放棄も】
 もしそのような偽造借用書を突きつけられ、裁判でもその借用書を覆す証拠がない場合、あなたは相続人として、その法定相続分に応じた債務の支払いをする必要があります。
 遺産が少なく債務のほうが多い場合には、相続放棄という手段も考慮に入れておく必要があります。
 ただ、相続放棄はお父さんの死亡を知った後3ヶ月以内に手続をする必要があります。
 そのため、借金が判明した場合には、必要なら相続放棄期間の延長(伸長)願いを家庭裁判所に出す等の方法で放棄期間の延長をし、その借金の支払いの要否を早期に判断しなければなりませんが、そのためにも弁護士に早期に相談されるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
12:55 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

介護をした相続人と寄与分【Q&A №371】

2014/05/01
 母と二人で在宅介護をしてきた父が家で亡くなりました。
 父には遺言書などなく相続人は母と兄姉と自分の4人です。
 兄の方は父の介護を二人に押し付けていたのに遺産を貰うなんて出来ないと、放棄すると言われましたが姉の方は介護なんて自分には関係ないと遺産を要求してきました。
 そこで寄与分についてですが、父は10年前に介護度3が認定され5年前からは5に上がり認知症まで加わった寝たきり生活になりました。そして4年前からは重度のパーキンソン病を患い、2年前からは肺炎を患って胃ろうになりました。介護の間、訪問看護やヘルパーなど頼まず二人だけでしてきました。(胃ろうになってからは訪問看護の人に週一で30分だけ来てもらっていました。)
 介護度5になった辺りから痰が多く吸引機で取っていました、肺炎後からは肺炎防止の為に吸引回数も24時間体制で取っていました。床ずれも大きなポケットが3か所もあり床ずれの場所に圧を掛けない為に体の向きを2.3時間程度に一度は右に向けたり左に向けていました。
 訪問看護の方からはこんなに見てる家族は初めてとまで言われました、父には家族さんにこれだけ見てもらっこんな幸せな人はいないと皆さんから言われました。
 寄与分ですけど姉に対して主張が可能でしょうか、もし調停にまで行ったら寄与分は認められる可能性はあるでしょうか。
 駄文で申し訳ありませんけど、お願いします。

記載内容

介護 ヘルパー 相続分譲渡 相続放棄 特別寄与
(S-Ran)


【療養看護の寄与にあたる可能性があります】
 法定相続人が被相続人の療養介護に努めた場合、遺産の分割に際して特別寄与が認められることがあります。
 ただ、あなたについて言えば、父子関係にあったことから、療養介護は《親族間の扶養義務》の履行であり、《当然なすべき義務を履行しただけである》として、それほど多額の寄与分は認められないのが普通です。
 ただ、あなた方が介護したことにより、ヘルパー等の介護料金等を支払わなくてもよくなったと認められる場合には、その支払いが不要となった金額が特別寄与として認められる可能性があります。

【具体的には・・】
 質問を見ると、
《父は10年前に介護度3が認定され5年前からは5に上がり認知症まで加わった寝たきり生活になりました。》
《そして4年前からは重度のパーキンソン病を患い、2年前からは肺炎を患って遺漏になりました。》
《介護の間、訪問看護やヘルパーなど頼まず二人だけでしてきました。(胃ろうになってからは訪問看護の人に週一で30分だけ来てもらっていました。)》
《介護度5になった辺りから痰が多く吸引機で取っていました、肺炎後からは肺炎防止の為に吸引回数も24時間体制で取っていました。床ずれも大きなポケットが3か所もあり床ずれの場所に圧を掛けない為に体の向きを2.3時間程度に一度は右に向けたり左に向けていました。》
と記載されています。
① どの時期からヘルパーが必要になったのか?
② 週単位でどの程度ヘルパーが必要であったのか?
③ その時点でのヘルパーの料金はどの程度であったのか?

等を調査・確認した上で、その総額を特別寄与として請求されるといいでしょう。

【お兄さんには放棄ではなく、相続分の譲渡をしてもらう】
 お兄さんはあなたの努力を認めて、遺産を放棄すると言われているようです。
 この相続放棄が家庭裁判所に対する相続放棄の申述をするのか、あるいは遺産を請求しないのかがわかりませんが、いずれにせよ《相続放棄》だけでは不十分です。
 お兄さんには相続放棄ではなく、相続分をあなたに譲渡するようにお願いをしましょう。
 相続放棄をすると、お兄さんを除いて他の相続人で遺産分けをすることになり、妹さんの取り分が増えます。
 相続分の譲渡であると、お兄さんの取り分もあなたの取り分に加算されます。
 なお、お母さんも協力していただけるのであれば、その相続分をあなたに譲渡するといいでしょう。
 相続分譲渡については、相続分譲渡書に実印を押してもらい、印鑑証明書をもらっておくといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:30 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産となる車両の処分と相続放棄【Q&A №365】

2014/04/18
 弟がなくなり、相続人は両親でしたが、母は相続放棄しています。
弟の車は、ローンが二か月分残っていた為、所有者がローン会社でした。しかし、
ローンの一括返済額より、売却額が上回り、返済額を差し引いた額が父の手元に入り
ました。車の買取店をとおし処分したので、所有者を父には変更せずに、車売却に
至っています。(買取店との書類を交わしたのは、父のみです。所有者がローン会社
だった為、代表相続人のサインのみでよかったという事でした。)その場合、父は相
続放棄できるでしょうか。

記載内容

遺産の処分 売却 法定単純承認 単純承認
(プーさん)


【遺産を処分した後には、相続放棄ができない】
 相続放棄前に遺産を処分した場合、遺産の相続をしたものとして扱われますので、相続放棄はできません(末記の参照条文:民法第921条1項をご参照ください)。
 なお、相続放棄は家庭裁判所へ簡単な書類を提出するだけで受け付けられ、家庭裁判所から相続放棄の申述の受理証明が出されます。
 しかし、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したとしても、遺産を処分しておれば、普通の相続をしたと扱われますので、相続の放棄の効果はありません。
 そのため、弟さんの債権者(貸金業者など)が、お父さんの相続放棄は無効だとして請求をしてくれば、相続放棄は無効となり、お父さんとしてはその借金を支払う必要があるということになります。

《第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。(以下略)》

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
10:58 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

父親違いの姉妹から突然の連絡【Q&A №364】

2014/04/11
 突然のご質問で恐縮です。拙い文章ですが、数々の事例に精通されてる先生にアドバイスをいただければと思い投稿いたしました。
 先日、母(64)から私を育ててくれた祖父母は、育ての祖父母で血の繋がっている実祖母(A)が亡くなっていたと打ち明けられました。実祖母は実祖父と離婚し、別の男性(B)を婿入りさせ、娘(C)がいるのですが、娘(C)から母に男性(B)の生命保険の受取に母の印鑑証明と実印が必要だという連絡があったのです。
 1年程前に実祖母(A)が亡くなり、4ヵ月後に男性(B)が亡くなったと聞いています。娘(C)は嫁いでいるため性は変わっております。 
 娘(C)は母に生命保険と実祖母(A)の預金を受け取る権利があると言っているのですが、これは相続に当たるのでしょうか?
 母は60年全く付き合いが無く、相手のご家族、故人に関してはほとんど知らないので信用は全くありません。ですので、もし相続に該当するのであれば、債務を引き継ぐ可能性があるので、放棄しようと思うのですが、権利関係が複雑すぎてどう対応すればよいのか困っております。

記載内容

父親違い 生命保険
(あっちゃん)


【問題点の整理】
 今回の問題点を整理しておきましょう。
 まず、相続は2つ発生しています。
・最初は1年前に死亡した実祖母であるAさんの相続です・・第1の相続
・次にその後に死亡した、実祖母の再婚相手のBさんの相続です・・第2の相続


 次に生命保険金についても整理しますとおそらく次のとおりになります。
・Aさんが死亡し、その生命保険金の受取人がBさんであった。
 そのため、《生命保険金を受け取る権利》を有していたが、その保険金を受け取っていなかった・・・以上は第1の相続の問題
・Bさんはその生命保険金の受取前に死亡した。
 そのため、Bさんの《生命保険金を受け取る権利》は遺産となり、遺産分割の対象となる・・・以上は第2の相続の問題

【遺産分割における生命保険金の扱い】
 生命保険について少し詳しく説明しましょう。
 生命保険金は遺産にはなりません(Q&A №298Q&A №299参照)。
 そのため、Aさんが死亡した時点では、Aさんのした生命保険契約の受取人がBさんと指定されていると、Bさんが保険金全額を取得します(遺産ではないので、娘さんのCさんは生命保険金を請求できません)。
 すなわち、Aさんの保険契約の結果として、新たに受取人のBさんに保険金受取権が発生することになります。
 ここまでは第1の相続での生命保険金の問題です。
 次に、Bさんが、(Aさんの契約した)生命保険金をもらわずに死亡した場合には、既に発生してBさんが権利を持っている生命保険金を請求する権利を、Bさんの相続人間で遺産分割するという問題であり、この場合の生命保険請求権利は遺産分割の対象になります。
 これが第2の相続における生命保険金の扱いです。
 あなたのお母さんがBさんの養子になっているのなら、Bさんが死亡したことにより発生する第2の相続では、その法定相続人はCさんとあなたのお母さんになります。
 生命保険会社としては、Bさんが生きていて受け取る場合にはBさんだけの印鑑でよかったのですが、そのBさんが死亡したために遺産分割の問題となったので、Bさんの法定相続人であるあなたのお母さんの実印及び印鑑証明を必要としているのだと理解するといいでしょう。

【相続放棄について】
 相続放棄はAさん及びBさんの死亡を知った日から3ケ月以内に家裁に放棄の手続きをする必要があります。
 今回の質問ではAさん及びBさんとも死亡してから3ケ月は既に経過しています。
 そのため、相続期間伸長の手続きをしていない限り、現段階では相続放棄はできません。
 ただ、仮に3ヶ月を過ぎていても事情を説明することで裁判所が相続放棄を受け付けてくれるケースもないわけではありません。
 相続放棄したいのであれば、相続に詳しい弁護士に取り急ぎ、対応を検討されることをおすすめいたします。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:47 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

姉の入院費用の支払い義務【Q&A №359】

2014/03/28
 別居の姉が先日亡くなりました。
 入院にあたって、姉は、保証人の欄に自分で私の名前と住所、電話番号を書いていましたので病院から、生前の入院費と今回の入院費の請求をされています。(保証人の欄に押印はありませんでした)払わなければならないのでしょ
うか?
 姉の入院は亡くなってから知りました。両親も他界し、親族は私だけです。
 相続する預貯金、財産、生命保険等は一切ありません。

記載内容

保証 入院費用 扶養義務 相続放棄 他人の署名・捺印
(ごんちゃん)


【問題点は相続としての債務とあなた自身の債務の2点です】
 今回は、書面上であなたの署名がされた形になっているので、あなた自身が(保証人としての)債務を負うのかどうかという点、次にお姉さんの負っている債務(主債務)についてあなたがお姉さんの相続人として債務を負うかという点の、2点です。

【あなた自身の債務はない】
 まず、あなた自身の保証債務について回答します。
 あなたのお姉さんが、あなたの署名をすることについて、あなたが同意あるいは黙認していたような場合には、保証人としての責任を問われることがあります。
 しかし、そうでないなら、あなたが署名も捺印していないのだから、原則としてあなたが(保証人としての)債務者になることはありません。
 なお、あなたはお姉さんの兄弟姉妹になりますので、扶養義務があります(末記条文を参照ください)が、それは親族内部の関係であり、第三者である病院があなたの署名・捺印もなく、又、同意もしていないのにあなたに保証債務を請求することはできないでしょう。

【相続債務の対策・・相続放棄を考える】
 ただ、お姉さんは、病院に対して支払債務を負います。
 そのお姉さんが死亡したので、その債務は相続人に承継されます。
 その債務を負いたくないというのであれば、死亡を知って3ケ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをするといいでしょう。
 ただし、相続放棄をした場合、あなたは債務を引き継ぐことはなくなりますが、同時にお姉さんから遺産をもらえなくなります。
 従って、相続放棄をする場合には、お姉さんの財産と負債とを比較して、負債が多いというような場合に放棄をすればよいでしょう。
 なお、財産の方が多いということであれば、お姉さんの債務は支払わざるを得ないでしょう、
 具体的な相続放棄の手続きにつきましては、お近くの家庭裁判所に確認されるといいでしょう。親切に教えてくれると思います。

【弁護士に相談することも考える】
 質問では病院からの請求があるようですが、相続放棄をするのなら、その後に相続放棄をしたことを主張すればいいでしょう。
 なお、病院が保証人としての債務を主張してくるのであれば、署名捺印をしていないということを主張すればいいでしょう。
 それでも病院が納得しないのであれば、弁護士に相談して、対策を協議されることをお勧めします。

【参照条文】
《民法第877条(扶養義務者) 
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。》
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:45 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

長年相続登記をしていなかった土地の名義変更【Q&A №356】

2014/03/19
 約20年前に祖父が死亡し相続登記を行っていない不動産があります。
 相続人は祖父の配偶者と長女(実子)と養子です。
 長女と養子は昔の慣わしで結婚+祖父との婿養子として縁組をしていましたが、離婚後に離縁しています。
 長女(実子)に相続登記を行う場合、どのような書類が必要なのでしょうか?
 相続権放棄ではなく遺産分割で全て長女へ分割すればいいのでしょうか?

記載内容

養子 離縁 相続登記 土地
(Hide)


【相続人は誰か・・離縁した養子は相続人ではない】
 遺産分割については、まず相続人は誰かが問題となります。
 誰が相続人になるかは、相続開始時点(被相続人であるお父さんが亡くなった時点)で親族関係で判断します。
 婿養子の方は被相続人の生前に離縁していますので、相続人にはなりません。
 そのため、本件の場合、長女と配偶者のみが相続人になります。
 登記名義を変更するもっとも簡単な方法は、長女と配偶者で遺産分割協議書を作成(作成方法は、「相続コラム:遺産分割協議…話し合いによる遺産の分割」を参照)し、後は司法書士に依頼して、登記の手続きをするといいでしょう。なお、便法として、他の相続人であるお母さんが既に十分に遺産をもらっているので、あなたの単独登記をしてもよい、という同意書的な書面ですますことができる可能性もあり、昔はこの方法をよく使っていましたが、最近は使われていないようです(この点も司法書士に確認されるといいでしょう)。

【相続放棄は難しい】
 相続放棄は家庭裁判所への申立(申述)という手続きが必要です。
 この放棄の手続きは、お祖父さんの死亡を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。
 今回は祖父が亡くなってから20年以上も経っていますので、相続放棄の手続き(家庭裁判所への申述)はできません。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
16:33 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

養子縁組で相続関係はどう変わるのか。【Q&A №345】

2014/02/13
 昨年4月に祖母が亡くなりました。
 相続人としては実子2人(私の母・叔母(妹))と養子(私の父:婿養子のため養子縁組しておりました。)の計3人になると思います。
 祖母は負の財産があり、私の母は相続放棄しました。叔母も放棄する予定です。父は既に他界しております。
 この前、税務署から連絡があり、私と弟が相続人であるから、相続する意志があるのかを聞かせて欲しいとの事でした。
 私の母が相続放棄しているので、その子(祖母にとっての孫)の私達には相続の権利はないと思っていたのですが、税務署の言い分は私と弟は亡くなった父の代償相続人だという事でした。
 家庭裁判所に問い合わせると、父の養子縁組より前に出生している私と弟は代償相続人にはなり得ないと返答を頂きました。(放棄手続きについても、相続権がないのだから放棄の手続きをとっても受理されないだろうとも言われました。)
 その旨を税務署に伝えると、祖母と血の繋がりがあるだとか、放棄しない・できないのであれば相続を承認したとみなすと一方的に告げられて非常に困っています。
 そもそも私と弟に相続権があるのか(当然あっても放棄します)、またもし相続権がないのであれば税務署にどのような形で通告すればよいのか、アドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

(無礼な税務署職員)


【結論から言えば、家庭裁判所の見解が正しい】
 結論から申し上げますと、家庭裁判所の見解が正しいです。
 税務署にも納得して頂ける内容にするため、民法の条文と文献、判例を記載した回答にしました。
 難しいかもしれませんが、ご理解ください。

【子の代襲相続に関する民法の規定】
 民法の代襲相続の規定は次のようなものです。
《民法第八百八十七条
 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。》

 この条文の下線部分は、「被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になれない」という意味です。

【直系卑属でない者は代襲相続できない】
 父さんが被相続人の養子ですので、子になります。
 問題は、そのお父さんの養子縁組前の子供であるあなた方が、被相続人の直系卑属にあたるかどうかです。
 さきほど記載した民法887条2項の但し書き(上記の下線部分)は昭和37年の民法改正で新設された条文であり、「もっぱら養子の縁組前の子を相続から除く」目的でさだめられたものです(参考文献:有斐閣『新版 注釈民法(26)』247頁6行目以下。図書館などでこの本を探してご確認ください)。

【養子縁組前の子は直系卑属にならない】
 そうすると、問題は、養子縁組前に生まれた養子の子が被相続人の直系卑属になるかどうかという点に絞られます。
 この点については、養子縁組前に生まれた養子の子は、被相続人との間で血族関係をもたない、すなわち直系卑属にならないということが、古くからの確定した裁判例です(大審院判決昭和19年6月22日民集23巻371頁等。なお、これ以外にも判例がありますが、前記『注釈民法』に記載されていますのでご参照ください)。

【養子縁組前の子は代襲相続しない】
 以上のとおりであり、結局、あなた方は縁組前の子であるので、被相続人の直系卑属にはなりません。
 そのため、民法第887条2項の但し書きによりあなた方は代襲相続人にはならず、被相続人であるお祖母さんの相続をすることはありません。
 税務署にはこの回答を印刷してお見せするといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
13:22 相続人 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集
 | HOME | Prev »