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再度の遺産分割協議と税金の扱い【Q&A №541】

2016/11/21



【質問の要旨】

遺産分割調停とは異なる遺産分割協議書の作成は可能か

記載内容 調停 異なる 協議書

【ご質問内容】
 【前提】
過去に遺産相続を調停で土地の遺産相続をしたのですが相続人の一人は金銭のみの相続で土地の遺産分割を受けていません。(相続の無い事証明も受領済み)

【現在の問題点】
複数人が数筆を同一持ち分で相続した為(未登記)持ち分に応じた土地の単独所有をしようとすると諸税、免許登録税等が過大になり、土地を相続しなかった相続人を除いて新たに遺産分割協議書を作成して登記した場合、トラブルになる可能性は有りますか?
(NORURU)






【調停で成立すると権利関係は調停内容どおりに変わっている】

遺産分割の調停が成立した場合、権利関係はその調停調書のとおりに変更されます。

そのため、その調書に基づく不動産を取得した人は単独でその登記をすることができます。

又、代償金の支払を受けるとされた人はその金銭を請求できますし、もし、支払いがないのであれば代償金の支払いを求める強制執行ができます。


【調停成立後の「遺産分割協議」の扱い】

調停成立後に、法定相続人間の合意で異なる内容の「遺産分割協議」ができるかについては疑問があります。

相続人間で一旦、遺産分割協議が成立した後、その合意を解除し、新たな遺産分割協議をすることは可能であるとの判例があります(最判平成2年9月27日。判タ754号137頁)が、裁判所が関与する調停と当事者間での遺産分割協議とを同列に扱うことができるのかどうかという議論があります

もし、同列に扱えないのであれば、調停が成立後に、それと異なる内容の分割協議書を作っても、それは遺産分割協議ではなく、遺産分割とは関係のない財産交換あるいは譲渡契約となり、不動産譲渡益課税をされるということになります


【リスクは税務面にある】

遺産分割により不動産が法定相続人の一部に相続され、残りの人が代償金をもらった場合、それは遺産分割の仕方の問題であり、《代償金を受け取ることについては》不動産の譲渡益課税のような税務上の問題も発生しません。

しかし、遺産分割調停後に、それと異なる不動産の分け方をした場合、それを税務署が把握した場合、調停と異なる部分は、遺産分割とは関係のない不動産の譲渡であると理解され、贈与税や不動産譲渡益課税をされる可能性があります。

今回の質問のように、調停により共有になった物件を単独所有にする場合、無償であれば調停での共有者から単独所有者への
持ち分の贈与となり、単独所有者に対して贈与税が課税されます。

又、お金を支払うのであれば、調停による共有者がその持ち分を単独所有者に売却したとして、共有者に譲渡益課税がされることになります。

ただ、現在、未登記ということであれば、税務署としてはあらたに単独登記される内容しか知ることができないため、調停後に不動産が更に移動したことによる課税のしようがありません。

しかし、それは税務署に知られなかったから課税されなかったというだけの話です。

以上のようなリスクを了解された上で、法定相続人の間で協議されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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17:10 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★古い取引履歴を請求したい【Q&A №531】

2016/09/27

【質問の要旨】

古い取引履歴の開示請求をしたが、拒否された

記載内容 取引履歴 不正出金 拒否

【ご質問内容】

金融機関に相続人(本人)は、取引履歴の開示請求を、平成21年2月16日に求めたが、時効と言われ拒否された

長男夫婦共犯者の窃盗です兄弟姉の3人は、相続してません。

なお、長女は、精神障害者で生活保護にされ…母親契約で受取人は長女、また年金も38年掛けていた 

経歴(被相続人名義の経歴の開示を見れば、一目瞭然です。

被相続人死亡は昭和57年4月17日 相続手続きせず、昭和60年3月23日まで動きあり

残高、76円です と三井住友銀行が言った…平成21年1月22日の最高裁判決に矛盾を感じています。

(囲碁ばか)






【平成21年の最高裁判例の理解について】

今回の質問に記載されている平成21年1月22日の最高裁判決は、共同相続人の一人でも単独で取引履歴の開示を請求できることを認めたものであり、相続に関する極めて重要な判例です(詳細はコラム【相続判例散策】履歴照会に全員の同意不要参照)。

ただ、この判例は、何十年前の履歴であってもすべて開示せよと命じた判例ではなく、被相続人が無くなった直後(2ヶ月後)に開示を請求したものであり、請求した期間も死亡直前の6ヶ月程度にとどまるものです。

参考までに言えば、過去どこまで遡って照会に応じなければならないかという照会期間についての最高裁判例は当事務所の利用している判例検索で調べても見つけることができませんでした。


【一般には、履歴照会の回答は5年から10年以内の範囲である】

金融機関が履歴の照会に応じるのは、原則として申請日から5年ほどさかのぼった分であることが多く、特段の事情があるということであれば10年ほどはさかのぼるという扱いをする場合が多いです。

今回のあなたの請求では、昭和60年ころの取引履歴を平成21年になってから請求されたということであれば、すでに約25年が経過しており、金融機関としては関係資料及び取引履歴は廃棄済という対応をしています。

弁護士が、弁護士会を通じて金融機関に取引履歴の照会を出すことがありますが、その場合でも10年以上前の履歴が出ることは極めて少ないです(但し、この点は金融機関の扱いが一律ではなく、これまでの経験から言えば、三井住友銀行などは10年を超えて遡った分を提出してきたことがありました)。

あなたとしては、履歴がなければ長男の窃盗(不正出金)を暴くこともできず、納得しがたいところかもしれませんが、以上が取引履歴照会に関する実情です。


【なぜ銀行は古い取引履歴を出さないのか・・私の推測】

金融機関としては、最近はコンピューターで取引履歴を管理していますが、それとともに出金伝票などの文書を保管していますが、その情報あるいは文書の量は膨大なものになります。

そのため、一定の期間が経過した分については順次、削除あるいは廃棄している可能性があります。

金融機関がどの段階で削除しているのかは必ずしも明らかではありませんが、商法上の請求権は5年間、又、民法では10年間が消滅時効期間ですので、この長い方の10年間をめどに抹消及び廃棄している可能性があります

ただ、以下は私の推測ですが、不法行為の損害賠償請求権は最長、行為時点から20年間は消滅せず、金融機関としてはその間は請求されるリスクがあります。

そのため、金融機関は20年間は資料を保存している可能性があります(ただ、出金伝票などは電子ファイル化して保存している可能性が高いと思われます)。

ただ、10年を超える古いデータまで開示するという扱いをした場合、これに応じる金融機関の手間がかかりすぎるために、開示はあくまで10年を限度としているのではないかと思われます。

繰り返しますが、これはあくまで私の推測ですが、参考になれば幸いです。

(弁護士 大澤龍司)

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16:56 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

在宅介護費用と特別寄与【Q&A №507】

2016/05/31



【質問の要旨】

看護を負担した相続人が他の相続人に費用請求できるか

記載内容  介護 扶養 不公平

【ご質問内容】

私が、仕事を休んで、平成22年7月から平成25年1月まで自宅で看護(導尿行為、バイタルチェック、塩分1日8グラムの食事作り)を行ってきました。

相手(姉2人)は近所に住んでいながら、一切協力せずに遊びまわり、扶養義務調停にも出廷せず、扶養義務調停が終わる前に父親は亡くなりました。

一番上の姉は生前贈与(住宅購入資金の一部として現金300万円)を昭和48年頃に貰い、高校と短大も我儘を言って私立に通っていました。

私と下の姉は公立高校で終わっております。

短大卒業後すぐに結婚しましたので嫁入り道具と、結婚資金等は、両親が出しています。

なお、私は平成22年2月に腰に金属を入れる手術を行っておりその後絶対安静時に看護が始まり現在は酷い後遺症が出ております。

財産は私たちが住んでいる土地建物しかありません。

土地は路線化で2800万円位(約82坪)建物の名義は13分の11は、私の名義になっております。父親名義の分の建物の評価は53万円程です。

(くま)






【介護費用は請求できないが、特別寄与の可能性がある】

親子間では互いに扶養義務があります。

そのため、子であるあなたが約2年半もの間、自宅でお父さんの介護をしたとしても、これは扶養義務を履行しただけであり、これをしなかった他の扶養義務者(今回は2人のお姉さん)に請求することはできません。

親子間に扶養義務が定められている以上、子として介護等をするのは当然のことであり、他の扶養義務者に介護のための労力等の費用を請求することはできないというのが、今の法律です。

しかし、あなたが介護をしたことにより、ヘルパー代や看護師料、老人ホーム入居費用等が減り、その分、遺産の減少が食い止められたというような事情があれば、その減額分を《特別寄与》として請求すれば、遺産から支払ってもらえる可能性があります。

(なお、介護の努力がどのように遺産分割に反映されるかという点は、当ブログQ&A №386Q&A №254などにも同様の話が出ておりますのでご参照下さい。)


【住宅購入資金の生前贈与は特別受益になる】

一番上のお姉さんが住宅購入資金の一部として金300万円をお父さんからもらったというのであれば、特別受益になりますので、遺産に持ち戻した上で遺産分割をすることになります。


【短大への進学に関する費用は原則として特別受益にならない】

一番上のお姉さんが短大に行かせてもらった点ですが、教育については子の能力の問題もあり、又、親の子に対する扶養の問題であり、遺産の前渡しという意味は持たないという判例もあることから、原則として特別受益にならない可能性が高いです。

ただ、私の担当した案件ですが、私立の医大に行った場合には、その授業料額が莫大であることや医師という社会的に重要な資格を取得することから、特別受益として対応したことがあります(なお、当ブログQ&A №375を参照ください)。


【参考判例】
大阪高裁決定平成19年12月6日
「被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」



【結婚資金について裁判例は分かれるが・・】

結婚資金については、裁判例がわかれていますが、私は挙式費用などは、特別受益には当たらないと考えています。

その理由は、挙式費用は、結婚式という一過性の支出であり、後に残るものではないことや、結婚式が結婚する当事者のみならず、その両親や親戚のためにするという側面を有すること、更に親としても相続分の前渡しとして挙式費用を出すのだという意識はなく、持ち戻し免除が推測されること、更に通常の場合、すべての子が多かれ少なかれ親の援助で結婚式をしていると思われることなどからです。

なお、嫁入り道具や持参金などは金額が高額であれば特別受益に該当するでしょう。

【参考判例】
① 名古屋地裁平成16年11月5日
「嫁入り道具や持参金等がこれ(弁護士注:特別受益)にあたることはいうまでもない。しかしながら、結婚式や結納の式典そのものに生じた費用については、婚姻する者のみならずその両親ないし親戚一同にとって重要な儀式であることに鑑みると、両親が子の結婚式や結納の式典に生じた費用を支出したとしても、それを両親から子に対する「婚姻のため」の贈与と評価すべきではなく、特別受益にあたらない。」

② 仙台地裁平成5年9月7日
「右程度の援助(弁護士注:結婚披露宴費用のうち祝儀代を引いた残額二〇万円の援助)は、本来通常必要なものであるが、他の妹弟が結婚に伴う援助を受けていないことを考えると、特別受益に該当するものといわざるを得ない。」

③ 盛岡家裁昭和42年4月12日
「相続人が婚姻に際し、被相続人より挙式費用等を負担してもらっているが、その金額も高額でないので、いずれも民法903条にいう贈与として相続分の算定につき斟酌すべきではな」く、特別受益に該当しない。」



【その他の問題点・・土地使用借権が特別受益の可能性あり】


あなたがお父さん名義の土地の上に建物の持ち分を有しておられるのであれば、その土地をあなたの建物のために無償使用している(使用借権)の贈与と主張される可能性もあり、あなたの方でも特別受益が問題になりかねませんので、その点はご留意ください。

(弁護士 大澤龍司)
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17:43 寄与・生前贈与 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産分割協議後の使い込み【Q&A №491】

2016/02/08

 【質問の要旨】

遺産分割協議書で財産を相続した人が、遺産を生活費につかってしまった

記載内容

遺産分割 約束を破る 取り戻す

【ご質問内容】

家族構成は父、母、子供4人(長男=兄 離婚歴あり現在は独身で別世帯。長女=私次女=妹 二男=弟 

2年前父親が亡くなり、財産を母親、子供4人が相続するところですが、母親に家を購入してあげたい希望があり(母も強く希望しておりました)、

高齢である母の代わりに家の購入、父のお墓の購入手続きをしやすくする為に母、子供3人は相続を放棄して長男である兄一人だけに相続することに決め、遺産分割協議書を提出しました。

そして兄が母に家を購入するつもりでいましたが一度契約寸前まで行ったところ、兄と不動産屋担当者との相性が悪く、購入を断念してしまいました。

こうして1年半、母は貸家に住み続けましたが突然家で病死してしまいました(遺言はありませんでした)

遺産を管理していた兄に預金を問いただすと兄はほとんど預金を自分の生活費にしてしまったと言うだけで通帳どころか使い道もハッキリ言いません。

母へ購入してあげるべき家の代金を全額兄は自己消費してしまった上に父母のお墓も買う事が出来なくなりました

私は兄の身勝手な行動が信じられなく許せません。

泣き寝入りしかないのでしょうか

(kanasiineko)







【相続放棄ではなく、遺産分割の問題】

質問には、お兄さん以外の法定相続人が《相続放棄》をしたとあります。

相続放棄は家庭裁判所へ申立をすることが必要ですが、今回はそのような手続きはせず、遺産分割協議で、お兄さんが遺産を一人で取得し、他の相続人は遺産をもらわなかったということだと思われます。

以下の回答は、この前提で記載していきます。


【遺産分割協議書の記載内容はどうだったのか】

遺産分割協議書に《お母さんに家を購入すること》が条件で記載されていた場合には、その条件を充たしていないのですから、お兄さんが遺産を取得できないことになります。

次に、条件というほどではないにしても、《お母さんに家を購入すること》が義務として記載されていた場合には、その義務をお兄さんが履行しなかったことを理由にして、遺産分割協議を解除できるのかという問題があります。

この点については、裁判例があり、遺産分割協議で定められた義務を履行しなかった場合でも、遺産分割協議は解除できないという結論でした。

ただ、この裁判例では、その義務を負った者に対して義務を履行しなかったことを理由として損害賠償を請求できる余地があるとしています。

なお、遺産分割協議書に義務として記載されない場合でも、その義務があったことが証明できるのであれば、損害賠償が請求できると私は思いますが、この点については異論があるかもしれません


【他の相続人として何ができるか】

今回の質問の場合、お兄さんが債務負担者であり、お母さんが債権者になります。

お母さんはお兄さんに損害賠償を請求できる可能性がありました。

お母さんは死亡されたのであれば、あなたをはじめとする法定相続人が、お母さんの損害賠償請求権を法定相続分だけですが、相続します

そのため、あなたがその相続した賠償請求権を行使できる可能性があります。


【専門家に相談されることをお勧めします】

今回のようなケースは相続人の間だけで解決するのは難しいです。

できれば法律の専門家である弁護士に相談され、遺産分割協議書の内容や合意に至る事情、更には不履行に関する事実経過を説明して、弁護士の意見を聞き、今後の取るべき方針を決定されるのがいいでしょう。


参考判例⇒
【相続判例散策】遺産分割協議で負担させられた義務を実行しないとき、分割協議を無効にできるか?(東京高裁 昭和52年8月17日決定)

遺産分割協議で負担させられた義務を実行しないとき、分割協議が無効になるのではなく、債務不履行による損害賠償を請求するべきである。

(最高裁判所:平成元年2月9日判決、東京高裁:昭和52年8月17日決定)

(弁護士 大澤龍司)

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17:43 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★親の財産使い込みは罪になるか? 【コラム】

2015/08/17
後見人になった子による親の財産使い込みは罪になるか


記載内容

  使い込み 意思能力 横領


【子の使い込み】

 相続事件では、認知症の親の介護をしていた子が、親の生前に親の財産を使い込んでしまっていたという事例が数多くあります。

 このような使い込みをした子が罪に問われることはあるのでしょうか。




【同居親族の財産犯は刑が免除されるという原則】

 お父さんが認知症になったことから、子(例えば長男)がお父さんの財産を管理しているケースを考えてみましょう。

 後見人である長男が、被後見人であるお父さんの財産を使いこんだ場合、業務上横領罪が成立します。

 しかし、刑法は直系血族及び同居の親族らとの間で窃盗・詐欺・横領に当たる犯罪が行われたとしても刑は免除すると定めています(244条。末尾に条文を記載しておりますのでご参照ください)。

 刑法は「法は家庭に入らず」ということで、家庭内の問題は家庭内での解決しなさいという趣旨で定められています。

 そのため、このような関係にある場合には、警察に訴えても捜査が開始されることはないのが普通です。



【後見人は例外になる】

 しかし、最近、後見人になった親族の使い込みについては業務上横領罪の成立を認めて刑は免除しないという裁判が相次いでいます(最判平成20年2月18日、最判平成24年10月9日、東京高判平成25年10月18日など)。

 2つの最高裁の判例はいずれも、成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているから、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族 関係があっても、刑法上の処罰を免除もできないと明言しています。

 つまり、後見人という公的な責任を負った以上、その責任の方が優先され、親族だからといって刑が免除されることはないということです。

 現在のところ、業務上横領についての裁判例のみですが、同様の考えをすれば、後見人が被後見人の財産を窃盗したり、詐取した場合にも適用されそうです。

 最近、後見人の財産取込が問題となっています。

 遠からず、後見人が窃盗をし、あるいは詐欺を行うという具体的なケースが起訴されることになり、親族であっても刑罰に処せられるという裁判例が積み重なっていくことになると思われます。

(弁護士 大澤龍司)
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16:11 相続コラム | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

受取人が死亡した生命保険は誰のものか【Q&A №453】

2015/07/08

受取人がすでに死亡している場合、生命保険は誰のものか?



【ご質問内容】

 質問いたします。

 先日亡くなった母の生命保険の受取人が父になっていました。

 父は、33年前に亡くなっています。

 基本契約の保険料払い込み期間(10年)が昭和58年5月17日で終了しました。

 父が亡くなったのは、その三か月後でした。

 以降、終身特約の保険料は平成27年4月分までの33年間、長男である私の銀行預金から支払ってきました。

 特約の保険料は年額11,550円で、支払い合計381,150円です。

 配当金は死亡保険金25万円を加えて2,139,645円です。

 この保険金は他の法定相続人と分割する対象になるのでしょうか。

 分割する場合、2,139,645円―381,150円=1,758,495円÷法定相続人数でいいのでしょうか。

 よろしくお願いいたします。


記載内容

  生命保険 受取人 死亡

(ズボラマン)








【契約条項の確認が必要です】

 生命保険は保険会社と保険加入者との契約です。

 そのため、保険の受取人の方が被保険者より先に死亡し、受取人が変更されないままに被保険者が亡くなったような場合に、誰に保険金を渡すかについては、契約で決まることです。

 保険契約をした場合、小冊子を渡されますが、これは約款(やっかん)といい、この中に保険契約の内容が記載されています。

 この約款の中に今回の質問のような場合について、保険金を受け取る権利が誰にあるかということが記載されていますので、確認されるといいでしょう。

 なお、ほとんどの場合、死亡した受取人の法定相続人それぞれが《平等の割合》で取得すると定められているはずです。

 もし、その約款がないというのであれば、保険会社に事情を説明して、約款をもらわれるといいでしょう。



【原則は法定相続人が同じ割合で取得する】

万一、約款で決まっていない場合には、法律で決定することになります。

保険金請求権については最高裁の裁判例で遺産ではないとされています(【Q&A №298】生命保険が遺産に含まれる場合とは)ので、民法で定められた法定相続分に従って相続するということにはなりません。

保険法第46条には「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる」と定めています。

この条文では相続人にどのような割合で相続されるのかは記載されていませんが、最高裁の判決では各相続人が平等の割合で取得するものと判断しています(最高裁:平成5年9月7日判決。なお、この裁判例は旧法である商法676条2項に関するものですが、現在の保険法にも適用されます)ので、約款に何らの記載がない場合には、各法定相続人が平等の割合で取得するという結論になります。



【あなたが支払った分の扱い・・立替金返還請求】

あなたは33年間で計38万円を支払っています。

この支払いは、本来、保険契約者であるお母さんが支払うべき分です。

それをあなたが支払ったのであれば、お母さんの保険料を立替支払いしたということになりますので、お母さんに請求する権利があると主張され、他の相続人の同意を得て、保険金から相殺されることに同意してもらうといいでしょう。

ただ、このような請求権は10年で消滅しますので、他の人がこの点を知っておれば、法律的には10年分しか相殺できないことになります。

なお、特別寄与で請求できるのではないかという可能性もあります。

特別寄与なら時効は関係ありませんが、ただ、保険金は遺産ではありませんので、そもそも特別寄与制度が利用できるのかという大きな問題点があります。

いずれにせよ、あなたが掛け金を支払い続けていたことにより、保険金が出たということは事実ですので、相続人にその点を了解してもらい、その分を保険金からもらわれた後、残額を法定相続人で平等分配するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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16:26 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

子どものいない伯父の相続【Q&A №434】

2015/03/09



 子どももおらず奥さんにも先立たれた一人暮らしのおじを近くに住んでいた兄(おじからみたら甥)がいろいろ面倒をみていました。
ここ何年かはがんにかかり病院に連れて行ったりもしていました。

ところが以前からお金に困っていた別の甥が自分が引き取って面倒をみると連れて行ってしまったのです。

それから間もなくおじも亡くなり、保険金の受け取りも当初は兄になっていたのですが、その後どうなったかわかりません。
おじは最近では少し認知症の症状もあったらしいので保険の受取人も変えられてしまっていて、もしかしたら保険会社にお金を借りていたかもしれません。

このまま兄は泣き寝入りをしないといけないのでしょうか。
おじの兄弟はみんな亡くなっているのでむしろ相続放棄をした方がいいのでしょうか。


記載内容

  生命保険の受取人変更 生命保険の調査 相続放棄 期間延長 

(トン子)


【まず、相続放棄をするべきかを考える】
今回の問題について、どのように対処していくべきかを考えていきます。
まず、相続放棄をするかどうかが問題になります。
ただ、そのためには、遺産(資産)と被相続人の債務の内容を確認し、それを比較して判断することが必要です。
これについてはブログQ&A №431に詳しく記載しておりますが、そのポイントは次のとおりです。
① 遺産(資産)と債務の調査をする。
② 債務の方が多い場合には相続放棄の申し出を家庭裁判所にする。
③ 調査に時間がかかる場合には、期間延長(伸長願い)を裁判所に提出する。

【保険会社からの借り入れについて】
 保険会社から借り入れがあるかもしれないということですが、保険会社が保険金額あるいは保険の解約返戻金を超える貸し付けをすることはありません。
 したがって、保険会社からの借入金債務が残ることはまず考えられませんので、この点は安心されるといいでしょう。

【生命保険は、原則、遺産には入らない】
  生命保険の保険金は原則として遺産には入らないというのが最高裁の判例です(この点はブログQ&A №298をご参照ください)。
  ただ、遺産が少なく、生命保険しかない、あるいは遺産額の60%程度を超えるということであれば、遺産とされる可能性もあります。

【保険契約の確認】
  保険契約の内容はどういうものか、受取人の変更がいつなされ、保険金をいつ、誰が受け取ったかなどについては、法定相続人の立場で保険会社に確認されるといいでしょう(その際、戸籍謄本や除籍謄本が必要になりますが、この点は保険会社により要求する書類が異なりますので、予め、確認されるといいでしょう)。
 もし、どこの保険会社との契約かがわからない場合には、弁護士に依頼して、弁護士会照会という手続きで保険協会に問い合わせすることもできます。
 この場合には保険協会に加入している約50社前後の保険会社から、契約の有無や内容、支払い先等に関する回答が来ることになります。

【意思能力がないと受取人変更はできない】
 保険契約の受取人変更が有効になるためには、その変更をする時点で契約者である叔父さんが判断能力(意思能力)を有していることが必要です。
 質問では、《少し認知症》があったと記載されていますが、その程度がわかりません。
認知症でも、軽い場合(例えば長谷川式認知スケール30点満点で15点以上の場合。なお、《【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介》に過去の裁判例を整理しておりますので、ご参照ください)には意思能力があるとされることが多いようです。
 もし、おじさんが入院していたり、介護施設に入っていた場合などは、上記長谷川式認知スケール等の知的能力に関する検査がされている可能性があります。
 これらの病院や施設に確認し、検査がされているなら、その結果を取り寄せ、意思能力の有無を判断されるといいでしょう。
【調査に時間がかかる場合には伸長願いを出す】
 相続放棄は相続開始時点から3ケ月以内に家庭裁判所に申し出(申述)する必要があります。
 しかし、上記の各点についての調査をするには時間がかかります。
 そのため、とりあえずは裁判所に相続放棄申述の期間延長願いを出しておくといいでしょう。
 通常は、3ケ月の延長ならほぼ無条件で出ますし、その後も事情によっては同様の期間延長してくれる場合もあります。
 その伸長された期間を利用して、調査をした上で、相続放棄をするかどうかの最終決断をされるといいでしょう。

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13:33 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

脳梗塞の父から後妻が生前贈与を受けた【Q&A №398】

2014/08/25
 7年程前に重度の脳梗塞で倒れ介護生活を送っていた父が、半年前に亡くなりました。父は再婚で私には継母なのですが、その継母には娘(継母の連れ子)がいます。
 その連れ子と父が、脳梗塞で倒れた翌月に養子縁組をし、その半年後には継母と連れ子の名義で土地と家屋を購入するために、父の預金から継母と連れ子に現金を生前贈与していた、という事実を父が亡くなった数日後に初めて知りました。連れ子が嫁いでからの父の再婚だったので、連れ子は私や父と暮らした事もありません。父は重度でしたので半身麻痺、言語障害、記憶障害などがありました。連れ子は弁護士をたてて手続きをしたと言っています。そして私が7年間知らなかったという事を、自分も知らなかった事を知らなかったと、とぼけています。継母とは口をきいていません。
 土地と家屋は合わせて約5000万一括払いです。継母と連れ子でどんな割合で贈与してもったのかわかりませんが、この度の遺産分割で「遺産は預金400万で、あなたの分は100万」と言われました。あまりに不公平ですし、当時の父の状況からは考えられない疑問も多々あります。持ち戻し及びこの場合、遺留分減殺請求はでき・・・

記載内容

脳梗塞 生前贈与 意思能力
(にこりん)


【あなたの相続分は400万円である】
 本件では後に述べるように、
①お父さんの意思能力(判断能力)があったのか。
②遺留分減殺請求をするとどうなるのか。
という問題があります。
 ただ、その前にこれらの点を問題にしない場合のあなたの相続額を考えてみます。
 後妻と養子になった娘が生前に5000万円の贈与を受けていますので、その分は特別受益として遺産に持ち戻されます。
 そうするともともとの遺産額400万円にこの持ち戻しされる遺産5000万円を加算した額がみなし遺産になり、その額は5400万円になります。
 そのため、あなたと後妻の娘の計算上の相続分はこの4分の1である1350万円、後妻は2分の1の2700万円となります。
 後妻とその娘に対する生前贈与は合計で5000万円というだけで、その明細が不明です(簡単に推測する方法としては登記簿謄本で持ち分割合を確認されるといいでしょう)が、仮に後妻が2700万円の以上の贈与を受け、娘が1350万円以上の贈与を受けていた場合、いずれも計算上の相続分を取得していますので、後妻も娘も、今回の400万円から遺産をもらうことはできません。
 後妻側の主張するあなたの取り分100万円というのは間違いであり、あなたは今回の相続で400万円全額を取得することができます。

【意思能力喪失による贈与及び養子縁組の無効】
 ただ、問題は、生前贈与あるいは養子縁組した時にお父さんに意思能力があったかという点です。
 もし、意思能力がなかったらこれらの行為が無効となり、贈与分の返還を請求でき、また、養子縁組も無効となるため、後妻の娘が法定相続人でなくなります。
 お父さんは脳梗塞で言語障害や記憶障害があったというのであれば、養子縁組及び贈与当時、入院していた病院や入所していた施設のカルテ、介護記録等を取り寄せされて、お父さんの意思能力がどの程度であったかを判断されるといいでしょう。
 意思能力の有無に関する検査として有名なのは長谷川式認知スケールという検査(30点満点)です。(「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」参照)
 カルテにそのテスト結果が記載され、その点数が10点以下であれば、意思能力はなかったとされ、養子縁組や贈与が無効とされる可能性が高くなります。
 もし、贈与と養子縁組が無効になった場合にはあなたは5400万円の半分である2700万円の遺産を相続できますし、仮に贈与のみが無効となった場合でも1350万円の遺産をもらうことができます。

【遺留分減殺請求について】
 仮にお父さんに意思能力があった場合の対応としては遺留分減殺請求が可能です。
 被相続人の有していた財産のうち、ある一定限度を法定相続人(子などの直系卑属や父母等の直系尊属)にもらえることを認める制度です。
 今回の相続では被相続人に配偶者がおり、子が2名のケースですので、あなたの遺留分は全遺産(この場合の遺産も、 現在の遺産額に生前贈与分を持ち戻し加算した計5400万円になります)の8分の1の675万円ですが、あなたは今回の相続で400万円をもらえますので、残りの275万円を後妻及びその娘に遺留分返還請求することになります。

【その他の主張として、贈与の意思がなかったということも・・】
 その他の主張として、お父さんに仮に意思能力があったとしても、贈与の意思はなかったということも可能かもしれません。
 銀行の払い戻し伝票あるいは送金書類の筆跡がお父さんのものではなく、また、当時のお父さんの経済状況からみて、そのような多額の金銭を贈与できない、さらに言えば、贈与税の支払いもしていない等の事情があれば、お父さんとしては贈与を知らず、後妻らがお父さんに無断で金銭を動かしたのだという点を主張することも可能かもしれません。

【弁護士に相談を】
 今回のように、贈与等の無効を主張したり、遺留分減殺請求をするというのであれば、法的な知識と判断が必要になります。
 そのため、あらかじめ相続に詳しい弁護士と法律相談をし、詳しい事情を説明されるといいでしょう。
 適切なアドバイスをしてくれると思います。
大澤龍司法律事務所
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17:25 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★不正出金による窃盗罪は成立するか【Q&A №389】

2014/06/19
 父の死亡後、長男が父名義の預金(90万円と150万円)を2ヶ所の銀行から全額引き出しました。
 2ヶ所の銀行には「相続問題は発生してない」と嘘をついて引き出したようです。長男は相続の話し合いでは上記の件を隠していましたが、私が各銀行を尋ね、取引履歴や残高確認の調査をして発見しました。長男は返還する意思は全くないようです。
 相続財産は相続者全ての共有財産で、勝手に引き出す行為は窃盗罪になり犯罪暦が付く、最高裁の判例では、勝手に相続財産を(個人的に)引き出した者は「他の相続者が受け取る財産を盗んだ」事になっている。またこのような不法行為を行った者はその財産の相続権も失うと説明したところ、「最高裁の判例を具体的に示せ」「相続権も失うと書いてある法律は何か」と質問してきました。
 この長男の質問に回答できる情報を教えて下さい。

記載内容

不正出金 窃盗罪 銀行
(ももちゃん)


【詐欺罪ないし窃盗罪の余地はあるが】
 銀行は預金者から金銭を預かって占有保管をしています。
 名義人以外の人が、名義人になりすまして預貯金を引き出す場合、銀行が占有・管理する金銭を引き出すことになります。
 窓口で引き出す場合には、窓口担当者をだましてお金をもらうのですから、銀行に対する詐欺罪が成立しますし、又、銀行のATMでの引き出す場合なら、騙すという行為がない(ATMは機械ですのでだますということにはなりません)ので窃盗罪が成立することなります。

【親族相盗例の適用はないが・・】
 刑法には親族間の窃盗などの場合には、窃盗罪は成立しても処罰はしない(親族相盗例。末尾の条文をご参照ください)と定められています。
 ただ、預金の引き出しの場合、被害者は銀行ですので、厳密にいえば親族相盗例の適用はなく、処罰することは可能です。

【相続人の場合には・・】
 相続人が被相続人の死亡を隠して、被相続人名義で金銭を引き出す場合も同様であり、名義を詐称した法定相続人については、銀行に対する詐欺罪または窃盗罪が成立しますし、処罰されるはずです。
 ただ、相続人であれば少なくとも預貯金の一部は相続で受取る権利があり、遺産分割協議においてその相続人が引き出された預金を(協議の結果によれば全部を)相続する可能性もあることなどから、警察も積極的に捜査をせず、事件として立件されることがほとんどありません。

【最高裁判例について】
 当事務所の使用している判例検索システムで調査した限りでは、最高裁判例の中で、被相続人の預貯金を引き出した場合の、相続人の詐欺や窃盗について触れたような案件は、見当たりませんでした。

【相続人資格を失うといったことは考えにくい】
 相続人資格を失うのは欠格、廃除などがあります。
 欠格は、被相続人を殺害したり強迫等により遺言を書かせたりするなどの重大な事由がある場合に相続人から除外されるのであり、預貯金の引出とは関係がありません。
 又、廃除は被相続人に対して虐待あるいは重大な侮辱その他の非行があった場合に相続資格を失うものであり、遺産を勝手に引き出したような場合に適用されることはありません。
 そのため、法的に遺産たる預金の無断引き出しがあったからと言って、直ちに当該財産について相続権を失うことにならないという結論になります。

《参考条文》
刑法第244条(親族間の犯罪に関する特例)
1 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条(窃盗)の罪、第二百三十五条の二の罪(不動産侵奪罪)又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

     (以下略)
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10:35 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

養子縁組で相続関係はどう変わるのか。【Q&A №345】

2014/02/13
 昨年4月に祖母が亡くなりました。
 相続人としては実子2人(私の母・叔母(妹))と養子(私の父:婿養子のため養子縁組しておりました。)の計3人になると思います。
 祖母は負の財産があり、私の母は相続放棄しました。叔母も放棄する予定です。父は既に他界しております。
 この前、税務署から連絡があり、私と弟が相続人であるから、相続する意志があるのかを聞かせて欲しいとの事でした。
 私の母が相続放棄しているので、その子(祖母にとっての孫)の私達には相続の権利はないと思っていたのですが、税務署の言い分は私と弟は亡くなった父の代償相続人だという事でした。
 家庭裁判所に問い合わせると、父の養子縁組より前に出生している私と弟は代償相続人にはなり得ないと返答を頂きました。(放棄手続きについても、相続権がないのだから放棄の手続きをとっても受理されないだろうとも言われました。)
 その旨を税務署に伝えると、祖母と血の繋がりがあるだとか、放棄しない・できないのであれば相続を承認したとみなすと一方的に告げられて非常に困っています。
 そもそも私と弟に相続権があるのか(当然あっても放棄します)、またもし相続権がないのであれば税務署にどのような形で通告すればよいのか、アドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

(無礼な税務署職員)


【結論から言えば、家庭裁判所の見解が正しい】
 結論から申し上げますと、家庭裁判所の見解が正しいです。
 税務署にも納得して頂ける内容にするため、民法の条文と文献、判例を記載した回答にしました。
 難しいかもしれませんが、ご理解ください。

【子の代襲相続に関する民法の規定】
 民法の代襲相続の規定は次のようなものです。
《民法第八百八十七条
 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。》

 この条文の下線部分は、「被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になれない」という意味です。

【直系卑属でない者は代襲相続できない】
 父さんが被相続人の養子ですので、子になります。
 問題は、そのお父さんの養子縁組前の子供であるあなた方が、被相続人の直系卑属にあたるかどうかです。
 さきほど記載した民法887条2項の但し書き(上記の下線部分)は昭和37年の民法改正で新設された条文であり、「もっぱら養子の縁組前の子を相続から除く」目的でさだめられたものです(参考文献:有斐閣『新版 注釈民法(26)』247頁6行目以下。図書館などでこの本を探してご確認ください)。

【養子縁組前の子は直系卑属にならない】
 そうすると、問題は、養子縁組前に生まれた養子の子が被相続人の直系卑属になるかどうかという点に絞られます。
 この点については、養子縁組前に生まれた養子の子は、被相続人との間で血族関係をもたない、すなわち直系卑属にならないということが、古くからの確定した裁判例です(大審院判決昭和19年6月22日民集23巻371頁等。なお、これ以外にも判例がありますが、前記『注釈民法』に記載されていますのでご参照ください)。

【養子縁組前の子は代襲相続しない】
 以上のとおりであり、結局、あなた方は縁組前の子であるので、被相続人の直系卑属にはなりません。
 そのため、民法第887条2項の但し書きによりあなた方は代襲相続人にはならず、被相続人であるお祖母さんの相続をすることはありません。
 税務署にはこの回答を印刷してお見せするといいでしょう。
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13:22 相続人 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

遺産分割後の情報開示はできないのか【Q&A №344】

2014/02/13
 父が亡くなり遺産分割は終了したのですが、ここに来て被相続人が2つの銀行に預
金を持っており1つの銀行の預金を隠して遺産分割を終了した事がほぼ明るみになり
ました。

平成21年1月22日の最高裁判例では、遺産分割協議前の被相続人の預金開示は相続人1
人でも開示可能との判例が出されたようですが、遺産分割後では被相続人から権利が
移行しているのを理由に銀行は被相続人の預金開示を拒んでいます。

これからどのような戦いをしていけばよいのでしょうか?
遺産分割の無効を訴えて行けばおいのでしょうか?
御教授願います。

記載内容

名義変更 預金 情報開示 照会
(キューブ)


【取引履歴の開示は相続人一人でも請求できるのが判例だが・・】
 質問に引用されている判例(最高裁判決平成21年1月22日)により、相続人であれば、他の相続人の同意なしに預貯金口座の内容(履歴等)の開示を請求することができ、金融機関はこれを拒むことはできません。

【遺産分割後は事情が違う?・・・他の相続人が預貯金を取得する場合】
 ところが質問では、遺産分割が終了しているようであり、そのことを理由に金融機関があなたに対する履歴の開示を拒否しているようです。
 金融機関の立場に立ってどのような拒否理由があるかを考えてみましょう。
 まず、遺産分割協議により、開示を請求している預貯金口座があなた以外(たとえばAさん)が取得すると合意される場合があります。
 この場合にはその預金は既に被相続人のものではなく、Aさんという人の口座ともいうべきもの(要するに他人の口座)ですから、金融機関としては、その口座の履歴の開示を拒否することもできるという判断も可能かもしれません。

【遺産分割の対象となっていない預貯金は被相続人のもので開示が必要である】
 しかし、質問では遺産分割の対象となっていない預貯金の開示を拒否しているようです。
 被相続人の預貯金で遺産分割の対象となっていないのであれば、現在も被相続人のものですので、金融機関としては開示を拒否する理由はないと考えられます。
 あなたとしては、この点を根拠に金融機関に開示を請求するといいでしょう。

【それでも金融機関が開示に応じない場合には】
 あなたが頑張っても金融機関が開示に応じない場合には、一度、弁護士に相談されるといいでしょう。
 弁護士は弁護士会を通じて金融機関に照会をかけることができます。
 この照会は弁護士法という法律に基づく照会ですし、弁護士会から照会の書面が行きますので、金融機関が回答をする可能性もあると思います。
 なお、それでも、開示を渋るようであれば、弁護士が直接金融機関と交渉して、開示させるように働きかけることもできます(前記判例が出る前には当事務所でも、直接金融機関に開示するように説得し、これに応じて開示された場合もあります)。
 それでも開示しない場合には、弁護士から《開示しないと損害賠償請求をする》との内容証明を金融機関に出すという手も考えられます。
 遺産分割無効訴訟をするというのは最後の手段になりますが、無効を主張できるだけの根拠があるかどうか、弁護士と協議が必要でしょう。
 いずれにせよ、あなたとしてはできるだけの努力をし、その後は弁護士と相談して、対策を考えられるといいでしょう。
 なお、同種の問題を当ブログ、Q&A №342【遺産相続後のトラブル】でも取り上げていますので、ご参照ください。
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11:08 遺産調査 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

遺産がない場合の特別受益【Q&A №338】

2014/01/09
 現在相続について係争中です。おたずねしたいのは生前贈与についてです。相続係争を母と娘の間で審議中ですが、娘には多額の亡父からの生前贈与があるのですが、
裁判中に自宅不動産をやむなく双方合意の上任意売却致しました。
 当該弁護士によりますと、不動産を売却し、他にめぼしい資産がない場合は、特別受益をもはや主張できない、不動産売却前ならできたとか、との判断されてしまいました。
 どうやら最高裁の判例を元に判断されたようなのですが、相続裁判は売却前から進行しており、合点がいきません。よろしくご教授のほどお願い申し上げます。

記載内容

生前贈与 遺産がない場合
(マストロヤンニ)


【まず、質問の前提の整理】
 質問の内容が明らかではないのですが、今回のケースはおそらく亡くなったお父さんの相続について、その娘とそのお母さん(亡お父さんから言えば妻)との間で遺産分割を巡って争いがある中で、両者が合意で亡お父さんの遺産である自宅不動産を売却し、その売却代金を母と娘とで(おそらく2分の1ずつ)分割したという事情があったことと理解し、以下の回答をします。

【特別受益は遺産が現存する限度で役に立つ】
 特別受益がある場合、その特別受益を受けた人は、現在ある遺産からもらえる分が少なくなるだけであり、既にもらった特別受益を返還するまでの必要はありません。
 娘さんに多額の生前贈与があった場合、不動産の売却代金の分配の際に、お母さんの取り分を多めにするなどの合意をしておく必要がありました。
 しかし、そのような手当をせず、遺産がないような状態では、特別受益を主張しても意味がありません。

【具体的な計算例】
 今回は具体的計算で説明しましょう。
 たとえば娘さんへの生前贈与が1500万円であったが、不動産(=現存する遺産)の売却代金は500万円程度にしかならず、ほかにめぼしい遺産もなかった場合で計算すると、遺産分割は次のようになります。
 まず、みなし相続財産は売却代金500万円+贈与額(特別受益)1500万円=2000万円となりますので、お母さんとしては、みなし相続財産の2分の1である1000万円をもらえることになります。
 ところが、現存する遺産は不動産のみですので、その不動産はお母さんが取得することになります。
 従って、不動産の売却代金が500万円だとすると、その全額をお母さんが取得すると主張することができます。
 ただ、不動産額が500万円しかないということであれば、みなし相続財産を前提にして計算した1000万円より、500万円も少なくなります。
 しかし、この差額の500万円を返すよう娘さんに要求することはできません。
 これは、前記のように、特別受益は現存する遺産を分ける際に、生前に受益がある人の取り分を減らした上、受益のない人の取り分を増やそうという制度であり、すでに生前贈与などで散逸し無くなってしまった遺産を取り戻す制度ではないからです。

【依頼した弁護士に説明を求める必要がある】
 すでに依頼されている弁護士は、上記のような特別受益の考え方(判例・通説)を述べたものと思われます。
 本件のように、不動産以外に特にめぼしい遺産がない場合には、その遺産(不動産)の売却代金を多く(場合によれば全額)もらうことで特別受益の問題を解決するべきでした。
 その売却をし、いまや遺産がないような状況では特別受益を主張する意味がないということになります。
 なぜ、不動産売却の際、特別受益を反映させ、半額以上の代金をもらえなかったのかを、その依頼した弁護士に質問されるといいでしょう。
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16:10 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

生命保険が遺産に含まれる場合とは【Q&A №298】

2013/07/12

・父(既に死亡)の遺産(土地建物1500万)→長男が相続)
・母(先日死亡)の遺産は預貯金のみ1000万。(専業主婦のため、原資は父の遺
産の預貯金)
・相続人は長男と私。

 先日母は、「全ての遺産を長男に相続させる」旨の遺言書を残し死亡しました。
 
 長男は、預貯金だけでなく、死亡保険金(生命保険)を約1000万円も受け取っています。
 死亡保険金が遺産にならないことは調べましたが、その割合が大きいときや余りに不公平な時は、訴訟に於いて、遺産と認められる事があると知りました。

 父の相続時に土地建物は長男が相続しましたが、その他の一切の遺産については「家以外は何もない」と取り合ってもらえません。
 その内、母が余命宣告されたので、改めて父の遺産について問いただした所、父の遺産の預貯金は「全員で協議の上、母が相続した」「分割協議書は作成していない。日時も忘れた。」と主張しています。
 
 兄は、父の遺産の土地建物(1500万円)と生命保険1000万円を受け取り、母の遺産の貯金(750万円)を相続します。

 引きかえ、私は父の遺産も何一つもらえていないばかりか、今回母の遺産の遺留分しかもらえません。(およそ250万円)

 このような場合は、上記の不公平に当たりませんか?
 死亡保険金1000万円は、遺産と認められないのでしょうか?

記載内容

生命保険 受取人 不公平 特別受益 特段の事情


(ひびき)


【裁判例からみる判断基準】
 ご指摘の通り、生命保険は原則として遺産ではないものとして扱われ、受取人となった人物(今回は長男)が単独で全額を受領できます。
 ただ、この点に関する最高裁判所の裁判例では「保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には例外的に保険金も特別受益として持ち戻すことが可能であるとの判断が示されています。
 ここでいう民法903条とは、特別受益の遺産への持ち戻しに関する規定です。
 この判例では、不公平が民法903条の趣旨に照らし《到底是認することができないほどに著しい》ものであると評価すべき《特段の事情》と判断される場合にのみ、保険金の遺産への持ち戻しを認めています。

【具体的な数字でいうと・・】
 問題は、どの程度であれば、《到底是認することができないほどに著しい》ものであると評価すべき《特段の事情》とされるのかです。
 これまでの裁判例からいえば、遺産総額が約8423万円で、生命保険金額が約5150万円で、生命保険金の遺産総額に対する割合(5150万円÷8423万円)が約61%になるケースでは、持ち戻しを認めた高等裁判所レベルでの決定があります。
 遺産総額に対する割合だけで判断されるわけではありませんが、遺産総額の50~60%程度なら、《特段の事情》に該当する可能性があるといっていいでしょう。

【本件の場合には・・】
 質問ではお父さんの相続とお母さんの相続が記載されていますが、生命保険金はお父さんの相続の時の話ですので、お父さんの相続だけが問題になります。
 お父さんの遺産総額は建物が1500万円、預貯金が1000万円の合計で2500万円です。
 これに対して生命保険金が1000万円ですので、生命保険金は遺産総額の40%になります。
 遺産総額の半額以下ですので、著しく不公平とまではいかない可能性のある微妙なケースということになります。

【その他に考慮される事情】
 特段の事情の有無の判断には、前記のとおりの保険金額、遺産総額に対する割合の他に、
① 被相続人と受取人の同居の有無
② 被相続人の介護等に対する受取人の貢献の度合い
③ 各相続人の生活実態等

が考慮されますので、調停や裁判等になれば、これらの点を調査の上、必要に応じて有利な点を主張されるといいでしょう。


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15:25 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

特別受益か否か【Q&A №157】

2012/05/31
 ① 昭和51年3月に店舗付き住宅(土地78.09㎡)を父が3/5、私が2/5を共有所有し購入しました。
  また、隣の中古店舗付き住宅(土地78.38㎡)が売りに出て、② 昭和62年7月に父が1/2、私が1/2を共有所有し購入しました。
 その後、平成2年12月に①の所有権3/5を移転してもらいましたが、②については、父の1/2の所有はそのままです。

 兄弟の言い分として、
 当然②の1/2は父の相続財産であり、①の3/5は特別授与に当たる。
 また、父の所有していた部分について無償で使っていたのだから、土地と建物の使用料が特別受益に当たると言われ困っています。
 ①の無償使用期間が昭和51年3月から平成2年12月の179ヶ月間(108ヵ月分)
 ②の無償試用期間が昭和62年7月から平成24年1月の294ヶ月間(147ヵ月分)
 ①と②の賃貸分として特別受益に当たると言われています。

 仮に特別授与になるのでしたら、毎月の使用料はいくらぐらいが妥当でしょうか?

記載内容

特別受益 共有持分 使用貸借 


(すえっこ)


【贈与であれば特別受益】
 まず、①の店舗付き住宅の5分の3の所有権移転が贈与であれば、特別受益に該当すると考えられます。
 民法の条文では、「生計の資本としての贈与」を特別受益としていますが、実務では相続人に対して多額の財産を移転すると、特別受益とされると考えていいでしょう。

【無償使用の権利は特別受益になります】
 あなたが②の店舗付き住宅のお父さんの持分2分の1を無償で使っているのは、共有者間の合意に基づくものであり、使用借権のようなものです。
 この無償で使用する権利は、死亡後も続くものと考えられますので、使用借権と同様に特別受益に該当すると思われます。
 したがって、その無償使用を設定してもらったことで発生した権利は特別受益として扱われ、相続発生時点でその権利の価額が遺産に算入されます。

【死亡までの無償使用分は特別受益に該当しない】
 前項で記載したように、お父さんの土地建物の持分の無償使用権は特別受益に該当し、遺産に算入されます。
 しかし、特別受益は、受益の原因となる行為の効力を奪うものではありません。
 相続人間の公平を考慮して、特別受益として権利の価額を遺産に組み入れようとするものです。
 合意後の無償使用分は、前項で記載した権利の内容を実現するものです。
 その権利自体が特別受益として遺産に算入されている以上、この権利内容を実現する現実の無償使用は特別受益にはなりません。
 なお、この点については、判例をQ&A №109に記載しているので、その部分を再掲します。
 「使用期間中の使用による利益は、使用貸借権の価格の中に織り込まれていると見るのが相当で」あり、使用料を加算することには疑問がある。

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