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★★【相続判例散策】預金債権は遺産分割の対象になる(最高裁平成28年12月19日判決)

2017/02/03
・・最高裁が従来と全く異なる判例を出しました・・

預金債権は遺産分割の対象になる

最高裁平成28年12月19日判決


【ケース】

相続人のうちの一人が生前に被相続人から5500万円の贈与を受けていたというケースで、生前贈与を受けていない法定相続人が、被相続人の預貯金約3800万円を生前贈与などと合わせて遺産分割するよう求めた事例。

1審及び2審は、従来の最高裁判例に従い、「預金は相続によって当然に分割されるので、遺産分割の対象外である」とし、預貯金の遺産分割を認めない判断を下していた。


【裁判所の判断の概略】

最高裁判所は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判断しました。

その理由は以下のとおりです。

本判決は、まず、預貯金一般の性質を説明しています。

「共同相続人間の実質的公平を図るため、一般的には、遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましく、また、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する。

預貯金は、決済手段としての性格を強めてきており、また、預貯金債権の存否及びその額が争われる事態は多くなく、預貯金債権の価値が低下することはないことから、現金との差をそれほど意識させない財産であると受け止められているといえる。」

また、それぞれの預金の特殊性を踏まえて、以下のような趣旨の理由づけも行っています。

「普通預金契約及び通常貯金契約について、預貯金債権が相続開始時の残高 に基づいて当然に相続分に応じて分割され、その後口座に入金が行われるたびにそれぞれの相続人の預貯金債権額が入金に応じて変わるとなると計算が煩雑になる。

定期貯金債権については、定期貯金債権が相続により分割されると解すると、それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる上、預入期間内に貯金を払い戻す場合には一部払戻の取り扱いをしないという制限があるため、共同相続人は共同して全額の払い戻しを求めざるを得ず、相続により分割されると解する意義は乏しい。」

 
【弁護士のコメント】

1.従来の判例の紹介と本判決の持つ意味

1)最高裁判事全員が本判決に賛成した。

最高裁判所は、貯金が分割債権かが問題となった平成16年4月20日の判決(判時1859号61頁)で相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと言っていますが、本判決は、預貯金債権について従来の判例と全く逆の結論をしたものであり、重大な判例変更です(なお、本判決は大法廷で審理されましたが、関与した裁判官15名全員が、本判決を支持しており、反対意見はありませんでした。)

2)法律的性質からみると、以前の判決は正しいが・・・

従来の最高裁判決は《預貯金債権は金銭債権であり、《法律上》は相続と同時に各相続人にその法定相続分に応じて分割取得される》と考えました。

たしかに金銭債権はそのような性質をもっており、法律的には従来の最高裁判例は間違いではありません。

参考までに言えば、不動産の価額は法定相続人の立場により異なってきます。

その不動産を取得したい側は低く言いますし、代償金をもらう側は高く評価します。

又、評価がまとまらない場合、預貯金なら計算で取得額が計算でき、分配も可能ですが、不動産は簡単に分割することができません。

ケーキなら簡単に分けることができますが、不動産は現物では簡単には分割できません。

不動産については共有にするということも考えられますが、これは問題の先伸ばしであり、最終的な解決にはなりません。

このように不動産は分割という困難な問題が生じますが、預貯金にはそのような問題がなく、分割が容易です。

その意味では、従来の最高裁判決は、預貯金の法律的性質に着目したものであり、その限度では《正しい判決》です。

3)実務では問題が生じた。

ただ、遺産分割訴訟で、当事者の一方が預貯金債権は遺産分割の対象にしないということになると、不動産等しか扱えず、調停が円滑にいかない可能性があります。

又、遺産分割調停が成立しない場合には、家庭裁判所の裁判官(審判官)が遺産分割審判(要するに判決のようなものです)をしますが、その場合には双方の当事者の同意があっても、不動産等しか分割の対象にできず、預貯金を増減して調整のために使うということは全く不可能でした。

本判決により、遺産分割調停では当事者の同意がなくとも、調停の対象とされ、又、遺産分割審判でも預貯金が対象ですので、ある相続人には不動産を、他の相続人には預貯金を与えるという柔軟な解決が可能になります。

調停や審判にかかわる実務家として、歓迎すべき点が多い判決です。

以下、論点を絞って、当事務所弁護士の本判決に対するコメントを記載しておきます。

2.本判決に対するコメント

1)預貯金債権は遺産分割の対象になる

これまで述べてきたように、従来の最高裁判決では、預貯金等の可分債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと判断されていました。

その上で、実務上では、当事者間で衡平妥当な解決を図るため、預金債権についても遺産分割の対象とする合意がある場合には、遺産分割の対象とする扱いがなされていました。

そして今回、上記のとおり、預貯金債権は相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になるという
判断が最高裁でなされました。

これにより、今後は相続人の同意の有無にかかわらず、預貯金は遺産分割の対象となるということになります。
その結果、遺産調停では預貯金が当然、分割されるべき遺産の内容(対象)となります。

同様に前記のように審判でも預貯金を考慮して審判ができることになります。

2)他の可分債権についても遺産分割の対象になるのか?

本判決で問題にされたのは預貯金債権ですので、預貯金以外の可分債権(貸金債権等)についても、当然に遺産分割の対象になるのかどうかは明らかではありません。

本判決に際して述べられた各裁判官の補足意見を見ても、この結論は預貯金債権について共同相続が発生した場合に限るという意見や、額面額をもって実価(評価額)とみることができない可分債権については、合意がない限り遺産分割の対象とならないという意見など、様々です。

ただ、本判決の中で、遺産分割において被相続人の財産をできる限り幅広く対象とし、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請があると判断されていますので、他の可分債権についても遺産分割の対象になると考えてよいのではないかという考えもありえます。

しかし、遺産の範囲に入れるということは遺産審判になればそれについても判断をしなければならないということでもあります。
例えば、遺産に貸金債権があった場合、その貸金額が決まっている場合を考えてみましょう。

貸金債権は典型的には金銭債権ですが、回収が困難であるという債権の場合、例えば1000万円の債権額であっても実質的な値打ちが0円の場合もあります。

このような場合には、遺産分割の対象とはならないというべきでしょう。

なぜなら、このような貸金も分割しなければならないとすると、その債権の評価をめぐって争いが生じる可能性があるからです。

本判決が、おそらく調停が成立しやすくするためや審判を容易にするためという目的に出たものであるとすると、金銭債権でもその実質的な額に争いがあるものも遺産分割の対象とすることは新たな紛争の種を持ち込むということになります。

本判決が、調停や審判の制度設計にかかわる枠組みを作る意図でなされたものであるとすれば、金銭債権であっても回収可能性に争いがあるような債権は遺産分割の対象外ということになりそうです。

3)取引経過の開示請求について影響はあるのか?

共同相続人の一人が単独で預貯金等の取引経過の開示を求めることは可能であることについては最高裁の平成21年1月22日(判タ1290号132頁)の判例があります。

そこで、本判決で預金債権が相続分に応じて当然に分割されないと判断されたことにより、単独での取引経過の開示請求の可否に影響するのではないかという懸念もあります。

取引経過の開示に関する上記判例は、「預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる」と判断しています。

このように、預金債権の帰属とは別に、共同相続人各自が「預金契約上の地位」を有しており、その地位に基づいて取引経過の開示を単独で求めることができるという理論構成を取る限り、今回の判例変更にもかかわらず、法定相続人の一人からの履歴照会には応じなければならないとの点は維持されるべきものと考えていいでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
11:35 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★税務調査で判明した口座【Q&A №480】

2015/12/03

 税務署は被相続人の口座を教えてくれないのでしょうか。

【ご質問内容】

相続が始まると、税務署は被相続人のみならず家族名義の銀行から証券会社の口座をすべて把握するというような話を耳にしたのですが、だとするならば、せめて被相続人の口座ぐらいは相続人に知らせてくれないものでしょうか?

【Q&A №98】預金の取引履歴を調べる方法を読みますと、「どこの金融機関だけでなく、支店名も調査しましょう。」とあり、口座を見つけるのも苦労する様子が伝わります。

果たして税務署は本当に全ての口座を把握しているのでしょうか?それとも知っていても教えてくれないのでしょうか

記載内容 税務署 相続税

(磯野家)





 今回は税理士業務の問題ですが・・

今回の相談は税務調査の話です。

そのため、詳しいことが知りたいのであれば、税理士にお尋ねいただく必要があります。

ただ、弁護士の理解している限度で以下の回答をします。

【税務署は調査結果を教えてくれないが、修正申告でわかる場合がある】

相続税の未納付がないか、あるいは申告された相続税の内容に誤りがないかどうか、税務署が調査することがあります。

その際、税務署は被相続人のみならず、必要に応じて家族名義の金融機関口座や証券会社などの取引内容を調査することがあります。

ただ、税務署はあくまで徴税の都合で調査するのであり、その内容は他の相続人に教えてくれません

【過去の経験からいえば・・】

私(大澤)は過去に一度、税務署に《節税された可能性がある》との情報提供をしたことがあります。

遺産総額が億を超す事件であり、相手方が被相続人の預金を取り込んだケースでした。

そのとき、税務署は調べた結果を教えてくれませんでした。

ただ、隠された財産がある場合には、通常の場合は修正申告が必要となります。

その際、共同相続(要するに相続人が複数)であれば、隠した人以外の相続人も相続税を支払う必要があり、そのために修正申告書に捺印をする必要があります。

その修正申告書に、新しく記載された財産があれば、それが税務調査で新たに判明した財産だということがわかります。

その限度では、遺産の詳細がわかることになります。

ただ、民主党政権下で国税通則法等の税務関連法が改正されましたので、取り扱いが変わっている可能性もなくはありません。

詳しくは税理士にお尋ねください。

【税務署がすべての口座を把握しているわけではない】

十数年前の話ですが、私が破産管財人に選任された破産事件について、破産者が財産隠しをしているのではないかとして、大阪の全金融機関に対し、関係口座の有無について照会を出したことがあります。

この時には、大阪管内の支店ベースで約900店舗の金融機関がありました。

合併等で現在はそれよりも少なくなっているでしょうが、いずれにしても支店数が膨大です。

税務署がその全てに調査を入れていることはまずないと思われ、被相続人や問題となる相続人の全部の口座を調査・把握している可能性は極めて少ないでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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13:04 遺産調査 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★遺留分をもらうための遺産調査【Q&A №185】

2012/08/16
 既に分割されてしまった財産の遺留分請求
 去年の年末に母が他界しました。5人の子供(そのうち私だけが前夫の子供)がいますが、遺言が(見せてくれませんが)があるらしく、私以外の4人に相続させると書いてあるそうで、既に私抜きで4人で印鑑をついて財産を分割してしまったようです。

 なんの財産があったのか全く私には絶対教えてくれません。

 調査会社に依頼して銀行等の財産を調査したのですが、もう既に4人で分けてしまった後なので預金はありませんでした。

 私の分の遺留分を請求したいのですが、このように既に分割されてしまった財産を知るにはもう相続税申告書を開示するように調停で言うしかないのでしょうか。

記載内容


相続税申告書の調査 連絡なき遺言執行 公正証書遺言 遺留分減殺請求 
(はなたれ)


【遺言書の内容を確認する】
 遺言書には被相続人が自分で作成する《自筆証書遺言》と公証人に作成してもらう《公正証書遺言》があります。
 自筆の遺言書の執行をするには、家庭裁判所で相続人全員を集めて遺言書を見せる《検認》という手続きが必要です。
 今回の質問ではそのような手続きがなされていないようですので、公正証書遺言に基づき執行されたのでしょう。
 公正証書遺言であれば、公証役場で内容を閲覧謄写することが可能です。
 遺言書の中には、遺産の内容を記載している場合もありますので、まず遺言書を確認されることをお勧めします。

【相続税の申告がされている場合の調査】
 相続税の申告がなされている場合、共同相続人であれば、調停で他の相続人に提出を求めるまでもなく、税務署で相続税申告書のコピーをもらえます。
 ただ、今回の質問の場合は、あなた以外の人が相続した(ということは、相続税申告書にあなたの記名押印がない)という場合ですが、その場合でも相続税の申告書を見せてもらえる可能性がありますので、是非、税務署に行き、戸籍謄本等の相続人であることがわかる書面や免許証等の本人確認のための書面を示して、コピーを貰えるように交渉するといいでしょう。

【過去の取引履歴の調査も必要】
 遺産調査をされたようですが、死亡時点で預金がなくなっていたとしても、死亡前に多額の預金が出金されていることもよくあります。
 遺留分減殺として、過去の出金分も対象にすることができることもありますので、是非、取引のあった金融機関支店でのお母さんの入出金状況を確認しましょう。

【減殺請求は一年以内に】
 遺留分減殺請求は、遺留分の侵害を知ったとき(通常は遺言の内容を知ったとき)から1年以内に請求する必要があります。
 遺言書の内容が判明し、あなたに遺産が相続されない内容であるのが間違いないのであれば、できるだけ早く遺留分減殺請求をしましょう。



 
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
15:57 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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