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遺産の対象財産と計算方法【Q&A №559】

2017/02/14


【質問の要旨】

保険金や共有の不動産などを考慮すると、遺産分割はどうなるか

記載内容 共有 賃貸 保険金

【ご質問内容】

相続人兄と私のみ

遺産は共有名義の家(持分兄6:父4)

死亡保険金1450万円(受取人私)あり。

家は同居を前提に父が1450万円出したが、喧嘩により同居を断られ一度もその家には住まず、アパートを借り生活。

何度もお金をかえしてくれと頼んだが、聞いてもらえず。

少額の個人年金の受取と兄と私の援助で生活。

2年前父とのトラブルで兄家族は隣の市へ引越。

その1年後父が他界。

葬儀の際、家は父が亡くなる半年ほど前から人に貸していることを聞く。(父は知らない。)

今回、家を売りたいから、早くサインをしてと連絡が来る。

家は兄が相続。(2680万円で売却予定。)

生命保険は私が受取る。

父の葬儀代?円、アパートのリフォーム代192万円、他に亡くなった後かかった費用は兄と私の折半という遺産分割書を作成す
ると。

兄は1060万円しかもらえず、私は生命保険を全部受取るんだから文句ないよなという感じです。

生前父に兄は400万円程度、私は家賃など約350万お金を援助しています。

兄は共有なのに10年間自分たちだけで住み続け、その後無断で人に貸し収入(10万円程度/月)も独り占めにしていた。

実際のところ父の遺産はいくらと考えられますか?

兄は12年ほど前に土地(100万程度の価値)を譲り受けています。

分割の内容は後で決めるとして、取り急ぎ売ることの同意を早くしろとも言われています。

今同意するのは何か私の不利益となりますか?

(たいよう)






【遺産内容について】

まず共有名義の家(以下、家といいます)は、お父さんの持ち分が40%ですので、その40%の持ち分が遺産の中にはいります

これにお父さん名義のその他の財産(預貯金や株式等の有価証券、動産など)が遺産になります


【保険金は遺産ではありません】

あなたが受取人として受け取った死亡保険金は、遺産分割では、原則として遺産とは扱われません(相続税の申告では遺産の中に含まれますが、それは税金の問題です。法律的には、遺産分割の関係では原則としては遺産でないとの判例があります(当ブログQ&A №298)。


【お父さんの家を使っていた点は特別受益になるか】

家 は被相続人であるお父さんとお兄さんの共有ですので、もし、お兄さんが自ら居住していた場合には、その共有持ち分については無料で使用しているのですから、その無料使用分(使用借権)が特別受益になるのか、遺産に持ち戻されるかどうかが問題になります。

土地の無料使用については特別受益になると思われますが、家屋の無償使用については、権利性が低いとされ、特別受益になることは少ないです(当ブログQ&A №457)。

特に本件では家全部ではなく、共用持ち分ですので、お兄さんが使用しているのなら特別受益ではないということになるでしょう。

ただ、今回の質問ではお兄さんが他人に貸し、賃料という経済的な利益を得ています。

そのため、もし、お父さんがその賃貸を了承しているのであれば、その賃料のうちのお父さん持ち分相当分である40%分は特別受益という主張をしてもいいだろうと思います(この問題も当ブログQ&A №539に同様の記載があります)。

又、お父さんに無断で貸したというのであれば、不法行為に基づく賠償請求権という債権(賃料の40%相当分が損害額 ということになります)が成立する可能性があり、遺産に含まれるという主張も可能でしょう(ただ、従来、お兄さんが無償で使用するのを認めていたので、賃貸にしても損害はないはずという反論もあり得ます)。

なお、お父さん死亡後の賃料についていえば、相続人がその持ち分に応じて遺産とは別に請求できるという判例があります(当ブログQ&A №240)。


【債務の扱い】

お父さんの賃借しているアパートの リフォーム代とあります。

賃借物件を賃借人であるお父さんがリフォームし、その価額が192万円という高額であるというのは考えにくいので、賃借物件の立退きに際しての原状回復費用の可能性があります。

その前提で考えれば原状回復費用はお父さんの生前の賃借に関する費用ですので、お父さんの生前債務と同様に扱っていいでしょう。

次の葬儀代については相続債務ではありませんが、あなたが葬儀に出席されていたのなら、相続債務扱いで負担をするような解決例が多いです(当ブログQ&A №545)。

以上に記載したように、生命保険は除外して、《家の持ち分+他の預貯金+有価証券+動産+賃料の持ち分相当額 》が遺産になり、《家のリフォーム代と葬儀代》が相続債務になるものと思われます。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
18:12 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★亡父との共有名義マンションの使用借権【Q&A №539】

2016/11/08


【質問の要旨】

亡父が出資して共有所有者となっているマンションに、姉が居住したり、賃貸に出したりした場合

記載内容 購入資金 持ち分 特別受益

【ご質問内容】

父親が亡くなり姉妹で財産を分けることになりました。(母はすでに亡くなっています)
姉は生前父にマンション購入資金として1200万円出してもらいました
残りのローンは姉が払いました。

しかし税金対策だったのでしょう、父が出した分を共有所有者として登記していました。
父は生前、姉に自分の持ち分を買い取ってほしいとの話もしていましたが、姉も買い取ることはできず、相続分として父の分が残りました。

姉は最初は自宅として使用し、後にマンションを賃貸に出して収入を得ています
姉から父に賃貸の代金を一部払った時期も1年ほどありましたが後に払った様子はありません。
今ではその所有分の価値も1/3程になっています。

共有の持ち分になると、特別受益が1200万円だとは言えないのでしょうか

言えないのなら、共有所有者の父がもらわなかった賃料の一部をみなし財産として算入できますか?

あるいは、使用借権を無償で得ていたことにはなりませんか
その場合の金額の算定は?

私は姉だけが住宅資金をもらっているのに、遺産が1/2づつというのはどうも納得できません。

不平等感をなくすいい方法があればご教授ください。

(tomo)





【今回の質問は《購入資金援助》と言う意味では、特別受益にならない】

通常の場合であれば、被相続人が法定相続人のマンション購入資金の一部を出した場合には、金銭の生前贈与として特別受益になります。
ただ、今回の案件では、お父さんが出した分はお父さんが自分の持ち分として共有登記されていますので、金銭の移動はありません
したがって《購入資金援助》としての贈与はなく、お姉さんの特別受益は存在しません
マンションのお父さんの持分は、お父さん自身の遺産となり、遺産分割の対象となります。


【お父さんの共有持ち分の使用は、居住用であれば特別受益にならない】

お姉さんがマンションを居住用にしていたとき、お父さんの持分を無償で使用している点では、お姉さんはお父さん持ち分につき、使用借権(無償で使用する権利)をもらったということになり、特別受益となる可能性があります
そのため、マンションの使用貸借について判断した裁判例を検索しましたが、発見できませんでした(参考までに言えば、土地の使用貸借は特別受益になるとの裁判例はあります)。
学者の意見では、建物使用貸借は遺産の前渡しという性格が薄く、又、財産権として強い権利ではないこと、更に被相続人の意思としては遺産分割の持戻し免除の意思が推定されるということから、特別受益にはならないとの見解が多いです。


【お父さんの建物持分をお姉さんが他人に賃貸している場合】

問題は、お姉さんが自ら居住するのではなく、他人に貸して賃料を得ている場合です。
これについても参考になるような裁判例も学者の意見もみつかりませんでした。
ただ、あなたの立場から言えば、使用貸借は他人に賃貸した段階で終了しており、その後にお父さんの持ち分相当の賃料分もお姉さんが得ていたのは特別受益になると主張するか、あるいはお父さんが賃貸に出すのを知らない場合には不当利得にしないと不公平だと主張されるといいでしょう。
このような主張をした場合に裁判にまでいけばどのような結論になるか、興味のあるところではありますが、お父さんの持ち分に相当する賃料分は特別受益として遺産に持ち戻される可能性もあるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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16:03 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

証券会社に対する調査方法【Q&A №528】

2016/09/07



【質問の要旨】

国債や株の取引記録を取りたい

記載内容 証券会社 取引記録 取り寄せ


【ご質問内容】 

銀行預金の取引記録は取れました。

国債と株をやっていたと聞いていましたが、口座番号がわかりません。

証券会社も定かではありません。

どのように取引記録を請求すればいいですか?
(ねこ)







【支店まで調べる必要がある】

証券会社に調査をかける場合は、少なくとも取引支店名まで判明している必要があります。

支店さえわかれば、当該支店はその支店での被相続人の取引内容をすべて教えてくれますので、顧客番号や取引の種類などはわからなくても結構です。

そのため、まず、支店名までなんとかたどりつくように努力する必要があります。


【まず、被相続人の自宅の郵便物を調べる】

被相続人が国債と株をしており、証券会社と取引をしていた可能性があるというのであれば、その証券会社から被相続人に対して取引明細書等の取引内容の通知が送られていることが多いです。

そのため、被相続人の住んでいた家に送付されてきた郵便物を確認しましょう。

取引通知書やダイレクトメールなどがあれば、その送付をしてきた証券会社の支店に照会を掛けられるといいでしょう。

なお、郵便物だけではなく、自宅にある書類も念を入れて探しておくと、意外なところから証券会社の判明のヒントが出てくる時もありますので、根気よく調査されるといいでしょう。


【預貯金の取引履歴から調べる】

預貯金の取引記録を入手されているのであれば、念のために、入金の備考や適用欄に《配当》の記載があるかないかを確認しましょう。

配当の記載があれば、株を保有しておられたのであり、証券会社と取引していた可能性が高いです。

次に入金欄を見て、ある程度多額の入金を探してみましょう。

送金で入金されている場合、金融機関にその送金を誰がしたかを照会すれば、証券会社が判明する場合があります。


【自宅や職場の近くの証券会社を探す】

郵便物や預貯金の取引記録でも証券会社が判明しないような場合には、最後の手段として被相続人の自宅及び職場周辺の証券会社を調べるしかないでしょう。

ただ、金融機関と異なり、証券会社数は限られていますので、もし、株を保有し、あるいは国債を持っていたことが間違いないというのであれば、手間はかかりますが、被相続人が行っていた可能性のある地域の証券会社の各支店を軒並み調査する必要があるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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17:32 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

使用借権の価額と特別受益【Q&A №511】

2016/06/24

※同じ方から2つに分けてご質問いただきましたが、回答は1つにまとめています。

【質問の要旨①】

使用貸借の価額と空き地について

【ご質問内容】

父親名義の土地に兄が家を建てています。両親とは同居していません。

両親への仕送りも無く、固定資産税も払っていません。

両親を訪問する事も年に数回です。

父がが亡くなりましたので、この場合使用貸借は、その土地の実勢価格のどの位が妥当でしょうか

また、兄の家の土地の横に空き地があり、実質兄が使用していたのですが、その土地も使用貸借に入れるのでしょうか(そこには特に建物は建ってはいません)


【質問の要旨②】

使用貸借とは?

【ご質問内容】

基本的な質問で申し訳ありませんが、使用貸借で計算された金額は、全体の遺産金額に含め、相続計算をするのか、使用貸借をしている相続人だけで分割するのでしょうか

遺産金額に含めて計算するのか、その他の相続人(特に配偶者)で計算するのでしょうか

遺産金額に含めた場合、使用貸借者に贈与が発生しているみたいに、思えるので

記載内容  使用貸借 無償 土地

(ブブブブ)







【土地の無償使用と特別受益について】

亡くなられたお父さん名義の土地の上にお兄さんが建物を建築し、賃料の支払いもしない場合には、お父さんとお兄さんとの間で使用貸借契約が成立したものと考えていいでしょう。

特別受益との関係で言えば、お兄さんはお父さんから使用借権を与えられたのであり、この権利の設定により受ける利益を「贈与」されたことになります


【空き地の使用について】

お兄さんはお父さんの空き地を使用していますが、これもその空き地を独占的に使用している(他の人が使えないような)状態であれば使用貸借が成立する可能性があります

お父さんがお兄さんの使用を知っていたのであれば、それは暗黙の同意があったとして、使用借権が成立したとされる場合が多いです。

この場合も、この空き地の使用借権の贈与が特別受益になります。


【使用借権の価額】

土地を、賃料を支払って利用する場合には借地権とされ、国税庁の発表している路線価図でもその価額が明らかにされています(通常は更地価額の40~60%の範囲内であり、60%とされるケースが最も多いです)

しかし、使用借権については裁判例などで更地価額の10~30%程度とされることが多いです(当ブログQ&A №321参照)。

これは使用借権が、借地権ほど強い権利ではない(土地が第三者に売却されれば、土地使用が認められないこともある)こと、又、存続期間等が契約内容や使用の実情等に応じて種々様々であり、裁判所としては、ケースバイケースで判断せざるを得ないからです。

ただ、これまでの相続案件での私の経験から言えば10%~15%程度で考える場合が多かったように思います(使用借権を更地価格の15%に相当すると判断した裁判例として、東京地判平成15年11月17日があります)。


【特別受益があるときの処理】

特別受益がある場合には、特別受益を遺産に持ち戻します。

今回の質問の場合であれば、借地権価額を遺産に加えます

その後、遺産全体を法定相続分に応じて分割することになりますが、特別受益を受けた人はその使用借権分を先にもらったことになり、その分だけ、遺産からの取り分が減少します

例えば、子が2人のケースで遺産総額が預貯金1000万円、特別受益が500万円とすれば、特別受益をもらった人は《特別受益:500万円+預貯金250万円》を、又、もう一人の子は《預貯金750万円)を取得することになります。

(弁護士 大澤龍司)
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15:27 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

在宅介護費用と特別寄与【Q&A №507】

2016/05/31



【質問の要旨】

看護を負担した相続人が他の相続人に費用請求できるか

記載内容  介護 扶養 不公平

【ご質問内容】

私が、仕事を休んで、平成22年7月から平成25年1月まで自宅で看護(導尿行為、バイタルチェック、塩分1日8グラムの食事作り)を行ってきました。

相手(姉2人)は近所に住んでいながら、一切協力せずに遊びまわり、扶養義務調停にも出廷せず、扶養義務調停が終わる前に父親は亡くなりました。

一番上の姉は生前贈与(住宅購入資金の一部として現金300万円)を昭和48年頃に貰い、高校と短大も我儘を言って私立に通っていました。

私と下の姉は公立高校で終わっております。

短大卒業後すぐに結婚しましたので嫁入り道具と、結婚資金等は、両親が出しています。

なお、私は平成22年2月に腰に金属を入れる手術を行っておりその後絶対安静時に看護が始まり現在は酷い後遺症が出ております。

財産は私たちが住んでいる土地建物しかありません。

土地は路線化で2800万円位(約82坪)建物の名義は13分の11は、私の名義になっております。父親名義の分の建物の評価は53万円程です。

(くま)






【介護費用は請求できないが、特別寄与の可能性がある】

親子間では互いに扶養義務があります。

そのため、子であるあなたが約2年半もの間、自宅でお父さんの介護をしたとしても、これは扶養義務を履行しただけであり、これをしなかった他の扶養義務者(今回は2人のお姉さん)に請求することはできません。

親子間に扶養義務が定められている以上、子として介護等をするのは当然のことであり、他の扶養義務者に介護のための労力等の費用を請求することはできないというのが、今の法律です。

しかし、あなたが介護をしたことにより、ヘルパー代や看護師料、老人ホーム入居費用等が減り、その分、遺産の減少が食い止められたというような事情があれば、その減額分を《特別寄与》として請求すれば、遺産から支払ってもらえる可能性があります。

(なお、介護の努力がどのように遺産分割に反映されるかという点は、当ブログQ&A №386Q&A №254などにも同様の話が出ておりますのでご参照下さい。)


【住宅購入資金の生前贈与は特別受益になる】

一番上のお姉さんが住宅購入資金の一部として金300万円をお父さんからもらったというのであれば、特別受益になりますので、遺産に持ち戻した上で遺産分割をすることになります。


【短大への進学に関する費用は原則として特別受益にならない】

一番上のお姉さんが短大に行かせてもらった点ですが、教育については子の能力の問題もあり、又、親の子に対する扶養の問題であり、遺産の前渡しという意味は持たないという判例もあることから、原則として特別受益にならない可能性が高いです。

ただ、私の担当した案件ですが、私立の医大に行った場合には、その授業料額が莫大であることや医師という社会的に重要な資格を取得することから、特別受益として対応したことがあります(なお、当ブログQ&A №375を参照ください)。


【参考判例】
大阪高裁決定平成19年12月6日
「被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」



【結婚資金について裁判例は分かれるが・・】

結婚資金については、裁判例がわかれていますが、私は挙式費用などは、特別受益には当たらないと考えています。

その理由は、挙式費用は、結婚式という一過性の支出であり、後に残るものではないことや、結婚式が結婚する当事者のみならず、その両親や親戚のためにするという側面を有すること、更に親としても相続分の前渡しとして挙式費用を出すのだという意識はなく、持ち戻し免除が推測されること、更に通常の場合、すべての子が多かれ少なかれ親の援助で結婚式をしていると思われることなどからです。

なお、嫁入り道具や持参金などは金額が高額であれば特別受益に該当するでしょう。

【参考判例】
① 名古屋地裁平成16年11月5日
「嫁入り道具や持参金等がこれ(弁護士注:特別受益)にあたることはいうまでもない。しかしながら、結婚式や結納の式典そのものに生じた費用については、婚姻する者のみならずその両親ないし親戚一同にとって重要な儀式であることに鑑みると、両親が子の結婚式や結納の式典に生じた費用を支出したとしても、それを両親から子に対する「婚姻のため」の贈与と評価すべきではなく、特別受益にあたらない。」

② 仙台地裁平成5年9月7日
「右程度の援助(弁護士注:結婚披露宴費用のうち祝儀代を引いた残額二〇万円の援助)は、本来通常必要なものであるが、他の妹弟が結婚に伴う援助を受けていないことを考えると、特別受益に該当するものといわざるを得ない。」

③ 盛岡家裁昭和42年4月12日
「相続人が婚姻に際し、被相続人より挙式費用等を負担してもらっているが、その金額も高額でないので、いずれも民法903条にいう贈与として相続分の算定につき斟酌すべきではな」く、特別受益に該当しない。」



【その他の問題点・・土地使用借権が特別受益の可能性あり】


あなたがお父さん名義の土地の上に建物の持ち分を有しておられるのであれば、その土地をあなたの建物のために無償使用している(使用借権)の贈与と主張される可能性もあり、あなたの方でも特別受益が問題になりかねませんので、その点はご留意ください。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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17:43 寄与・生前贈与 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★建築費用の負担等と特別受益【Q&A №506】

2016/05/31



【質問の要旨】

次女夫婦が母名義の土地に家を建て、建築費用も一部負担してもらった

記載内容  同居 建築 負担

【ご質問内容】

父はすでに他界し、母と3姉妹という家族構成です。

母名義の土地に次女夫婦が新築で家を建て、母が同居することになりました

・土地名義は母のままで固定資産税も母が払い続ける

・建物は、次女夫婦の名義で、建築費用の3分の1程度を母が負担することになりそ
うです。

建築費用を援助する事が生前贈与にあたるのでしょうか?

また、同居する場合は、特別受益には該当しないのでしょうか?
(ゆずのん)






【次女夫婦名義の建物の建築資金補助は特別受益となる】

次女夫婦名義の建物を建築する際に、被相続人(お母さん)から建築資金の援助を受けたのであれば、それは「生計の資本としての贈与」として特別受益になり、遺産に持ち戻す必要があります。

なお、特別受益は相続人にのみ生じる問題です。

そのため、次女ではない他人(配偶者も他人です)に贈与した場合には特別受益の問題にはなりません。

質問では、次女《夫婦》への贈与と質問に記載されています。

仮に建物が次女ではなく、その夫の単独名義になっており、その資金をお母さんが出していたらどうかという問題があります。

この場合には、実質上、夫婦は一体であるとして特別受益の主張をされるといいでしょう

【参考判例】福島家裁白河支審 昭和55年5月24日
被相続人から共同相続人の1人の配偶者に対して贈与がなされた場合において、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質、これにより受贈者の配偶者である相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には被相続人から相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められるときは、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であっても、これを相続人の特別受益とみて遺産分割をすべきである。
【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)もご参照ください。)

【土地の無償貸与も特別受益になる】

お母さんの土地の上に次女夫婦が建物を建てるということになると、おそらく賃料の支払いはしないでしょうから、次女夫婦は他人であるお母さんの土地を無償使用で使用できるという利益を得ることになります。

この無償使用する利益を法的には使用借権といいますが、この権利を得ることも「生計の資本としての贈与」として特別受益になり、その権利の価額が遺産に持ち戻されることになります(この点については当ブログQ&A №321もご参照ください)。


【同居の場合、特別寄与や生活費援助も問題となる余地がある】

法律的に言えば、次女夫婦がお母さんと同居し、その介護に尽くしていたとしても、次女の特別受益分として遺産に持ち戻される額が減額されることはありません。

ただ、次女がお母さんを介護することにより、ヘルパー代等が助かったというような事情がある場合には、その分が《特別寄与》となって、遺産から次女に支払いされることはありえます(当ブログQ&A №254をご参照ください)。

逆に、お母さんが同居する次女夫婦の《生活費を支給》していたようであれば、この支給分が特別受益になるかどうかが問題になります(当ブログQ&A №321Q&A №505等をご参照ください)。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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★使用借権の承継と固定資産税の請求【Q&A №486】

2016/01/20

【質問の要旨】

相続した土地に相続人の一人が住んでいる場合、特別受益になるか

記載内容

無償 土地 居住

【質問の内容】

三年前に亡くなった父名義の土地に相続人の一人(A)が土地を担保にA名義の家を建て、現在も一人で住んでいます。

ローンはまだ10年程度残っていて、Aは毎月支払っています。

その家には存命中は父母も一緒に住んでいました。Aは賃料や生活費を一切支払っていず、父が固定資産税を払っていました。

両親の生活費の一部は私が銀行振り込みで仕送りをしていました。相続人は私とAの二人です。

父とAはとても折り合いが悪く、父は公正証書遺言で全ての財産を世話をした私に譲るとしています。

私は既に名義変更をして固定資産税も毎年支払っています

Aは三年前に遺留分減殺請求をしていて、Aの家屋の下の土地を相続すると言い張っています。

建蔽率は50%の地域で家屋下の土地は25%を超えます。

殆ど土地だけの相続ですが、この間、私はどうすることも出来ない状態でいます。

これは、Aの特別受益にならないでしょうか。

その土地を売却、或いは、利用する場合、Aの許可が必要なのでしょうか


(ココ)







【特別受益は生前の受益を意味する】

「特別受益」とは、被相続人(=お父さん)が生前に相続人(A)に与えた利益(金銭、不動産の所有権や使用権など)のことです。

そのため、遺言で土地を相続した後に、Aさんがあなたの土地上に住み続けていたとしても、それによる利益は「特別受益」にあたりません

特別受益という点で言えば、Aさんが、生前にお父さんから土地を無償(ただ)で使用させてもらうという使用権(使用借権)をもらった点が特別受益に該当します。

この使用借権の価額は、対象となった不動産の10~30%といわれることが多いですが、ケースにより異なりますが、私の経験から言えば10%程度で評価し、遺産に持ち戻すことが多かったです。


【Aに賃料の支払いを請求できない】

あなたがAさんに賃料を請求することができるかどうかも回答しておきます。

お父さんはAさんに土地を無償で使用させていましたが、死亡されたことから、あなたがお父さんの権利義務を引き継ぎました。

従って、あなたはお父さんの負っていたと同じ義務―土地をAさんに無償で使用させる義務―を承継することになりますので、賃料請求はできません


【固定資産税をAに負担させることはできないか】

 あなたは固定資産税の支払いを続けているのですが、この分をAさんに負担してもらうことはできないかという問題もあります。

お父さんが生きていたときは、固定資産税もお父さんが負担していました。

土地はAさんに使用借権が発生していますが、固定資産税の負担は土地の使用貸借とは別個の話であり、お父さんからAさんに対する固定資産税分の金額(あるいは利益)の贈与と考えてもいいでしょう。

あなたとしては、今後、このような贈与はしないとの意思をはっきりさせるために、固定資産税の相当分の返還をAさんに請求してもいいと思いますし、これが公平の観点からみて妥当なことだと思われます。


【土地の売却という解決方法について】

遺言であなたが土地の所有権を取得しており、既にその遺贈で単独所有の登記をしているのであれば、この土地を売却することも可能という考え方もあります。

もし、土地を売却した場合、Aさんは買主である第三者に使用借権を主張できませんので、Aさんは建物を撤去せざるをえないということになり、問題が一挙に解決するようにもみえます。

しかし、遺留分減殺請求がなされた以上、その土地の4分の1はAさんの所有になりますので、あなたが単独で売却をすれば、Aさんの共有持ち分を侵害したことになり損害賠償をすることになります

また、あなたはAさんに無償で土地を使用させる義務があるところ、土地を売却するとその義務を不履行したことになり、債務不履行により損害賠償義務が発生します

以上の点を考えれば、売却という選択肢は法的にも問題があり、また、新たにやっかいな問題を発生させるものであって、とるべき方策にはならないというべきでしょう。


【問題の解決は調停及び遺産分割審判で】

結局、あなたとしてはAさんと交渉することになりますが、もし話し合いで解決することができないというのであれば、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、調停委員の関与により円満な解決を目指すといいでしょう。

また、調停が成立しないのなら、遺産分割の審判(裁判)でAさんに代償金を支払ってもらって土地を取得してもらう方向を目指すといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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11:52 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★親の土地に家を建てて住んでいた長男【Q&A №396】

2014/08/12
 かなり前に現金を父からマンション購入の頭金として贈与を受けました。勉強不足で税金免除があるの知らず贈与税を支払ってしまい悔んでいます。
 兄弟全員、父が亡くなり遺産の中にそれを入れて計算せよと言っています。が、それを強く言う一人は40年近く親の土地に無償で家をたてさせてもらい、しかも新築資金も入手しています。
 この場合の私の贈与金額と比較できるような計算方法があったら教えてください。又その居住年数は関係ないのでしょうか。
 宜しくお願いします。

記載内容

特別受益 使用貸借
(yashian)


【マンションの購入資金や建築資金をもらえば特別受益になる】
 あなたがお父さんからもらったマンション購入の頭金は、その該当金銭が生前贈与として特別受益になり、遺産の計算の際、遺産に持ち戻すことになります。
 なお、税金を控除した額ではなく、もらった金銭全額が持ち戻しの対象になります。
 また、兄弟のうちの一人が、《40年近く親の土地に無償で家を建てさせてもらい、しかも新築資金も入手している》とのことですが、このうち、新築資金が生前贈与になり、遺産に持ち戻すことになります。

【親の土地を無償で使用している場合は特別受益になるか】
 次に、親の土地を、自分の敷地として無償で使用している点については、使用貸借権という権利を設定してもらったことが特別受益になる可能性があります。
 ただ、お父さんの意思として、このような遺産への持ち戻しを前提にしていない場合(いわゆる《持ち戻し免除》の意思表示がある場合)には、持ち戻しは認められません。

【持ち戻しされる価額】
 特別受益としては、使用借権の価額が遺産に持ち戻されます。
 使用借権の価額としてはその底地の更地価額の10~30%という程度で評価されることが多いですが、木造家屋の場合には約10%前後になることが多いです。
 ただ、特別受益として持ち戻しが認められる場合でも、遺産分割で、その使用借権者が底地を取得する場合には、使用借権額の持ち戻しをせずに、底地を更地価額で評価して取得させるという処理を行っている裁判所もあります。

【使用借権と無償利用の利益との関係】
 無償で使用した期間分の賃料相当額を特別受益にするべきではないかという見解もありえます。
 しかし、裁判などでは使用借権の設定したことを経済的に評価し、遺産への持ち戻しをしている以上、使用借権者は使用借権の効果として無償使用することができるのであって、それ以上に使用料を支払う必要がないという見解です。
 この前提に立てば、使用期間にかかわらず、使用借権者は使用料を一切支払う必要はないということになるでしょう。
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15:48 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

同居すれば自宅を相続できるという兄の主張【Q&A №391】

2014/06/23
 数ヶ月前に父が亡くなり、その遺産相続で兄と揉めております。
 母は既に無く、兄弟は兄と私の2人です。

 兄は結婚しておらず、亡父と同居していました。私は既婚で独立しています。家と土地は父の名義、定期預金、普通預金があります。

兄と次のように主張しています。
1)自分には使用借権があるのだから、土地家屋の3分の1は自分の物である
2)15年ほど前に、父に500万円貸したので、遺産から、差し引いて欲しい
3)1と2を差し引いた残りを、2分の1ずつ分ける


 調停、裁判などになった場合、兄の主張は通るのでしょうか?
 実際は父に依存していた生活も、父の面倒を見ていたと主張すると思いますし、家の恥を宣伝することもないので、世間では、親孝行な息子で通っています。
 父は急死したので、病床の面倒は2人ともみていません。

 兄は一種のギャンブル依存症で、働いてはいますが、給料ののうちのほんの一部を家にいれるだけで、実際は、父の年金で生活していたようなものです。が、証明はできません。
 ですから、父の預金はないと言っても良い金額で、葬式費用と同額程度です。

記載内容

使用貸借 同居
(困っている妹)


【使用借権と所有権とは無関係】
 お兄さんが無償でお父さん名義の不動産を使用していても、お兄さんがその不動産の所有権を取得するわけではありません。
 無償で使用する権利である「使用借権」を取得するだけです。
 又、今回のケースは、お父さん名義の家を無償で使用しているだけですので、正確な表現をすると「お兄さんはお父さんから、家を無償で使用する権利(使用借権という債権)を与えられていた」ということになります。
 「土地家屋の3分の1は自分の物」というお兄さんの主張は間違いです。

【使用借権の価額】
 家が使用貸借の対象となっている場合、その家の価額が減価されます。
 家の使用借権の場合、ケースによって異なるでしょうが、底地の更地価額の10%程度の減価はやむをえないでしょう。

【使用借権は特別受益である】
 お兄さんは、お父さんから無償で、家に居住する権利をもらいました。
 そうすると、その使用借権は生前贈与になる可能性が高いです。
 結局、お兄さんとしては使用借権を主張して、それが認められても、その反面、その使用借権が特別受益とされ、プラスとマイナスの面があるということになります。

【貸金の返還について】
 お兄さんがお父さんに対して500万円を貸していたという点が証明できるのであれば、その債務は相続債務であり、あなたは法定相続分の2分の1ですので、金250万円の返還義務を負います。
 しかし、15年も前の債務というのであれば、消滅時効にかかり、返還が不要だという反論もできます。

【特別寄与にはならないか】
 なお、ややこしいことを言いますが、仮に消滅時効としても、その分特別寄与をしているのだというお兄さん側の反論も出てきそうです。
 消滅時効になった場合、その分を特別寄与という形で請求できるか、議論のあるところですが、そのような問題点が持ち上がる可能性も考えておくといいでしょう。

【今後の対策について】
 とりあえずは、今回の回答を参考にお兄さんと協議されるといいでしょう。
 なお、円満な協議ができないのであれば、家庭裁判所で遺産分割の調停をし、第三者である調停委員の意見を参考に解決の道を探るといいでしょう。
 なお、協議がまとまらないのであれば、早期に相続に詳しいお近くの弁護士に相談され、場合により事件を依頼することも考えていいでしょう。
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14:22 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

特別受益は有りますか 遺産相続金額はいくらでしょう【Q&A №324】

2013/11/06
 姉の土地46坪に姉と兄の2人及び妹家族の妹夫娘の3人計5人が同居する予定で昭和52年11月30日に住宅が新築されました 
 工事費は姉が半分妹の夫が半分出しており姉と妹の夫が2分の1づつとする共有名義の登記がされています 
 トイレ浴室洗面は共同で台所は別々です
 入居する前の昭和52年12月10日に兄が亡くなり兄が使う予定の部屋を妹家族が無償で使い平成19年4月に姉が老人ホームへ転居した後は姉の部屋も妹家族が無償で使い続け平成24年3月に家が取り壊されるまで住みました
 平成24年7月10日に住宅の建て替えがされて妹の夫の個人名義となっています昭和52年11月より今日に至るまで妹家族は土地を無償で使ってきました
 平成24年12月2日に姉が死亡し遺産相続の話し合いとなりましたが妹は姉の土地や部屋を無償で借りたのは夫であり遺産相続とは関係が無いといっています
 不動産会社が出した土地査定額は5.400万円土地の路線価は3.490万円です
 兄が使う予定だった部屋は15.73㎡新築
  47.000円×410ヶ月=19.270.000円
 姉の部屋15.73㎡築30年
   31.000円×59ヶ月=1.829.000円
となります
 妹に土地や部屋の無償使用に伴う特別受益が有るのでしょうか金額はいくらになりますか又私と妹の遺産相続金額はいくらでしょうか
 亡くなった姉(被相続人)は独身で家族がありません 両親も死亡しています 私は別居していて相続人は私と妹の2人です

記載内容

無償使用 使用借権 特別受益の判例 遺産に対する比率
(みつや)


【原則は特別受益に当たらないが、例外的に認められる場合もある】
 被相続人が相続人に生前贈与していた場合、特別受益として遺産に持ち戻されます。
 ただ、被相続人が贈与したのが、相続人ではなく、その配偶者であったとき、その贈与分をその相続人の特別受益として認めるべきか、という点が問題になります。
 相続人が、その配偶者を通じて間接的に経済的利益を受けている場合、これをその相続人の特別受益とするかという点については否定的な見解が強いです。
 ただ、贈与の額が多額であり、贈与の経過から見て、他の共同相続人からすると特別受益としなければ公平に反すると感じられる場合には特別受益とされることも例外的にあります(「【判例散策】昭和55年5月24日 福島家庭裁判所白河支部」参照)。

【本件では特別受益と認められる可能性があるか】
 上記判例では生前贈与の額が多く、かつ贈与が相続人に対するものと同視できるケ―スでした。
 この判例では、特別受益の繰り戻し前の遺産に対する贈与額割合(生前贈与額÷繰り戻し前の遺産額)は約60%でした。
 本件では妹さんの夫が得たのは土地を無償で使用する権利(使用借権:土地価額の10~30%程度)です。
 土地上の建物は2分の1の共有ですので、使用借権を仮に20%とすると、妹さんの夫としては使用借権として土地価額の10%を取得したことになります。
 上記計算式に当てはめると、《特別受益割合》は12.5%(使用借権持分10%÷底地価額80%(=更地価額100%-使用借権20%))にしかならず、判例のケースを大きく下回ります。
 又、贈与した理由も、妹さんの夫に住宅建築資金の半分をだしてもらうというものであり、妹さんに対する贈与とは見なしがたい点もあります。
 従って、妹さんの夫への使用借権の設定は特別受益とはいいがたいということになります。
 但し、質問だけでは詳細な事情がわかりませんので、できれば相続に詳しいお近くの弁護士に法律相談で回答してもらうといいでしょう。

【特別受益となった場合の考え方】
 上記のとおり、今回のケースでは特別受益にはならない可能性があります。
しかし、仮に特別受益になると仮定した場合にも、賃料相当額が特別受益になるのではありません(この点については、Q&A №109参照)。
今回の質問の場合、建物の名義は共有で持分が2分の1ですので、使用借権として土地価額の10%程度が特別受益になります。
又、部屋を使用していたということならその部屋の使用分も特別受益になる可能性がありますが、その場合でも、その部屋を無償で使う権利の額が特別受益になると理解するといいでしょう。
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13:43 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

特別受益か否か【Q&A №157】

2012/05/31
 ① 昭和51年3月に店舗付き住宅(土地78.09㎡)を父が3/5、私が2/5を共有所有し購入しました。
  また、隣の中古店舗付き住宅(土地78.38㎡)が売りに出て、② 昭和62年7月に父が1/2、私が1/2を共有所有し購入しました。
 その後、平成2年12月に①の所有権3/5を移転してもらいましたが、②については、父の1/2の所有はそのままです。

 兄弟の言い分として、
 当然②の1/2は父の相続財産であり、①の3/5は特別授与に当たる。
 また、父の所有していた部分について無償で使っていたのだから、土地と建物の使用料が特別受益に当たると言われ困っています。
 ①の無償使用期間が昭和51年3月から平成2年12月の179ヶ月間(108ヵ月分)
 ②の無償試用期間が昭和62年7月から平成24年1月の294ヶ月間(147ヵ月分)
 ①と②の賃貸分として特別受益に当たると言われています。

 仮に特別授与になるのでしたら、毎月の使用料はいくらぐらいが妥当でしょうか?

記載内容

特別受益 共有持分 使用貸借 


(すえっこ)


【贈与であれば特別受益】
 まず、①の店舗付き住宅の5分の3の所有権移転が贈与であれば、特別受益に該当すると考えられます。
 民法の条文では、「生計の資本としての贈与」を特別受益としていますが、実務では相続人に対して多額の財産を移転すると、特別受益とされると考えていいでしょう。

【無償使用の権利は特別受益になります】
 あなたが②の店舗付き住宅のお父さんの持分2分の1を無償で使っているのは、共有者間の合意に基づくものであり、使用借権のようなものです。
 この無償で使用する権利は、死亡後も続くものと考えられますので、使用借権と同様に特別受益に該当すると思われます。
 したがって、その無償使用を設定してもらったことで発生した権利は特別受益として扱われ、相続発生時点でその権利の価額が遺産に算入されます。

【死亡までの無償使用分は特別受益に該当しない】
 前項で記載したように、お父さんの土地建物の持分の無償使用権は特別受益に該当し、遺産に算入されます。
 しかし、特別受益は、受益の原因となる行為の効力を奪うものではありません。
 相続人間の公平を考慮して、特別受益として権利の価額を遺産に組み入れようとするものです。
 合意後の無償使用分は、前項で記載した権利の内容を実現するものです。
 その権利自体が特別受益として遺産に算入されている以上、この権利内容を実現する現実の無償使用は特別受益にはなりません。
 なお、この点については、判例をQ&A №109に記載しているので、その部分を再掲します。
 「使用期間中の使用による利益は、使用貸借権の価格の中に織り込まれていると見るのが相当で」あり、使用料を加算することには疑問がある。

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16:42 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

特別受益と使用貸借【Q&A №109】

2012/01/17

①-1相続人(5人)の1人が30年前に親の土地に家を建て土地を無償にて使用しています。4年前に親が亡くなりました。特別受益になるのでしょうか?特別受益は 更地価格の1割~3割だけでよいのでしょうか?使用年数も乗じるのでしょうか?具体的な金額を教えて頂けますでしょうか? 更地価格(路線価)が1000万の場合は特別受益は100万~300万で宜しいのでしょうか?
①-2 別の相続人1人は、親が亡くなる1年前から親と同居し亡くなってから現在まで 親の土地の上にある建物に居住している
 この場合は 特別受益になるのでしょうか?特別受益に該当する場合は 建物の価格(固定資産税評価額?)の1割~3割になるのでしょうか? 具体的な金額を教えて頂けますでしょうか?


記載内容

  特別受益 使用貸借 使用借権

(気分快晴)


【使用貸借も特別受益になる】
 親の土地の上に子供が家を建築している場合、その土地の賃料を支払っている場合には借地権が設定されていることになり、この借地権の設定は特別受益に該当します。
 今回のご質問の場合は、建物を建築したが、被相続人に対して土地の賃料を支払っていないということですので、その相続人には使用借権が発生しています。
 このような場合、その相続人は被相続人から使用借権の贈与を受けたものとして、これが特別受益になります。
 その評価は、ご指摘通り、更地価格の1~3割程度のことが多いです。

【使用借権の価額とは別に使用による利益を加算できるか】
 特別受益としての使用借権の評価額は相続開始時点の価額です。
 なお、特別受益としては使用借権の価額が問題となるだけであり、それまでどれだけ長期間、無償使用したかは問題とされませんので、無償使用の利益相当額に相続までの無償使用の年数が乗じられるようなことはありません(この点については、「使用期間中の使用による利益は、使用貸借権の価格の中に織り込まれていると見るのが相当で」であり、使用料を加算することには疑問があるという裁判例もあります)。

【親と同居することは特別受益にはならない】
 単に親と同居していたというだけでだけでは、その相続人には特別な権利は発生しません。
 もし特別受益が問題になるとすれば、《部屋代に相当する賃料分の利益》を受けたという点でしょう。
 しかし、質問では相続開始時まで1年間のことであり、期間も少なく、額も小さいと思われることから、特別受益とまではいえません。
 なお、相続開始後の建物使用についても、特別受益の問題ではないことにもご注意ください。
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使用借権の評価【Q&A №103】

2011/11/25
 

 土地の相続問題です。相続人が甲と乙2名であり、乙は被相続人と23年前に被相続人の土地にその住居を取り壊し、新築して同居していました。
 相続協議において、乙は使用借権をかざして、地価額の2割は使用貸借権がある土地として評価額の低減を要求しています。
 甲は弁護士に相談し、第三者への売買目的でなく、自らが相続する土地に関し、その評価額を使用借権による低減するなどは無いと確認し、すすめもあって、家裁調停に持ち込みました。
 そこで、地価の公平なる算出に、土地鑑定士による評価を行おうと進めていましたが、調停員は、「裁判官の意見を聞いたところ、使用借権は有る程度認められ、土地の鑑定結果は使用借権相当額を引いたものになる」と言うのです。
 また、その使用借権に係わる評価減額率はどの様になるかを問うと、ハッキリ言いません。
 調停で言うこと、先に弁護士に聞いたこと、何故、食い違いが有るのでしょうか。もし、本当に使用借権が一定率認められるのであれば、それは、使用貸借権を無償で設定してもらっており、この権利に相当する額が特別受益といえると判断出来ませんか又、その場合特別受益の持ち戻し請求は出来ませんか。


記載内容

  使用貸借 路線価 特別受益
(仁)


【土地の使用借権の評価について】
 相続人の一人(乙)が、遺産の土地上に建物を建て、土地を無償で使用しているので、その土地には乙の使用借権が設定されています。そのため、その使用借権の分だけ、土地が低く評価されます。
 賃料を支払っている借地権などがある場合、その土地の価額は借地権価額を引いた金額になります。
 借地権価額は路線価図に記載されている借地権割合を参考にして算定する場合が多いですが、使用借権については、路線価図にはなんらの記載もありません。ただ、1~3割程度と評価される場合が多く、その分、遺産である土地の価額が低く評価されます。

【弁護士と裁判所の見解の相違について】
 相談した弁護士からは、減価されないと説明を受けたようですが、現に、乙の建物が存在し、使用借権が認められることを前提にすれば、その分、土地の評価が下がるという裁判所の見解が正しいと思われます。

【使用借権による減価の回復】
 甲の立場で、調停で主張できそうな点を考えてみましょう。
① まず、ご指摘のとおり、乙建物の底地を無償で利用させたこと、すなわち使用借権を設定したことが、生計の資本としての贈与であり、特別受益にあたると主張することも可能です。その場合には、その受益分は遺産に組み入れ(もち戻し)されることになります。
② 乙が、23年前に建物を建築した際、被相続人が建築費を出したということであれば、その点からも特別受益の問題が出てくる可能性があります。
 さらに全額を被相続人が出し、しかも固定資産税も支払っているというような場合には、この乙名義の建物は実質的に被相続人の遺産だということも可能かもしれません。

【調停の話と、先に弁護士に聞いたこと、何故、食い違いが有るのでしょうか】
 遺産については民法に定められていますが、その条文はわずかに160条程度です。
 多くの事案で、条文に書いていないことが問題となります。
 また、関連する条文があっても、立場が違えば、違う解釈をするでしょう。
 さらに言えば、弁護士がすべてを知っているわけでもありません(相続に詳しくないのなら、正しい答えを出すことができないケースもあるでしょう)。
 これらのいずれか、あるいは複数があいまって、調停や裁判の結果と弁護士の見解が相違することがまま発生します。
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