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親族相盗例における相続放棄【Q&A №616】

2018/08/30


【質問の要旨】

横領した父の相続放棄

記載内容  横領 法人 損害賠償

【ご質問内容】

先日、叔父が経営する企業(株式会社)で働く父が、会社のお金を横領した後、お金を使わずにそのまま病気で亡くなりました。
生前の父の行いを考慮し、私は相続放棄をする予定です。
父は過去に離婚しており、相続人候補は叔父のみですが、その叔父も相続放棄をしようと考えている所です。
このようなケースにおいて、叔父は横領分のお金を父の銀行口座から取り戻すことができるのでしょうか。
一見すると、叔父が相続放棄を選んだ時点で、父の横領分のお金も放棄しなければならないように思いますが、
そのお金を本来受け取る権利を有するのは叔父の会社ですので、叔父にとってあまりにも酷ではないかと思い、
実際どのように考えるべきなのかをご教示頂きたく質問させて頂きました。

616

(マサムネ)





【損害賠償請求権は会社が有する権利】
まず、お話を整理しますと、あなたの父は会社(法人)のお金を横領したまま死亡されたということですので、あなたの父に対して損害賠償請求を行い、横領されたお金を取り戻す権利を有しているのは会社(法人)です。叔父(個人)ではありません。
ここは区別が難しいのですが、被害者は会社(法人)であることをまずご認識下さい。

【横領の責任は現在、叔父が引き継いでいる】
他方で、本来なら横領の損害賠償責任は相続人であるあなたが相続します。
ただ、今回はあなたが相続放棄をされるようですので、その場合、残された唯一の相続人である叔父があなたの父を相続します。
その結果、叔父(個人)が会社(法人)に対する損害賠償責任も相続する、という状態になります。
元々叔父(個人)は被害者の立場ですので少し変な状況になりますが、法律上はこのような状態になります。

【叔父は相続人として預金の払い戻しができる】
この状況下であれば、叔父(個人)はあなたの父の相続人として、銀行に対し預金の解約・払戻などの相続手続を取ることができます。もちろん、あなたの父の横領の責任として、会社(法人)にお金を返すこともできます。
元々は被害者の立場であった会社の代表者である叔父が責任を取る、というのは非常におかしな話ですが、実際上、横領されたお金を取り戻すにはこれがもっとも簡易な方法と思われます。
(厳密には、あなたの父がほかの借金をしていた可能性も考えられますので、ほかに負債がないことを確認ができるまで預金に手を付けない方がよいでしょう。)

【叔父も相続放棄した場合は相続財産管理人の選任】
他方で、この状況から叔父も相続放棄した場合、相続人は不在の状況になります。
その場合、誰もあなたの父の相続預金を解約することができないため、叔父の会社(法人)は、横領されたお金の回収ができません。
この状況であなたの父から横領のお金を返してもらうには、会社から家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てをし、選任された相続財産管理人に対する交渉や裁判を行っていく必要が出てきます。ところが、これには裁判を行う手間はもちろん、一般に90万円前後の予納金を裁判所に納めて選任申し立てをすることになるため、非常に負担が大きく、あまりお勧めできません。
そのため、(ほかの負債の有無にもよりますが)叔父が相続放棄するべきかどうかは慎重な判断が必要でしょう。

(弁護士北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
13:17 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

自筆証書遺言は、絶対に遂行されるのですか【Q&A №608】

2018/05/11


【質問の要旨】

遺言があり、養育費の未払いがある場合は取り分はどうなる?

記載内容  養育費 遺言 遺留分


【ご質問内容】

父が亡くなり、遺言書が出てきました。
両親が離婚したので、私は生後3か月で母に引き取られました。
離婚の原因は、父と後妻の不倫です。
母は、慰謝料も請求した養育費も支払われず、仕方なく泣き寝入りしました。
父は、私が成人するまで一度たりとも養育費を支払わず、逃げ得したことになります。
そんな父が亡くなり、遺言書に後妻の長男に全ての遺産を譲渡すると書かれた遺言書が出てきました。
父親としての責任と義務を全く果たしてこなかったのに遺言書通りになるのでしょうか。
未払いの養育費は、5パーセントの法定遅延損害金を加算すれば、3,000万円以上になります。

608

(ミッキー)



 ※敬称略とさせていただきます

【遺留分を請求することができます】
まず、「後妻の長男に全遺産を遺贈する」という父の遺言ですが、仮に遺言が有効であるとしても、あなた自身には遺留分という権利が残されています。
遺留分とは、あなた自身が本来有していた法定相続分の2分の1の限度で、財産を遺贈された方(今回は後妻の長男)に請求することができる権利のことです。
遺留分を請求することを法律では「遺留分減殺請求」と呼びますが、具体的な遺留分の計算は、相続人が①後妻と②後妻の長男、そして③あなたの3人のケースの場合、次のように計算されます。

(父の相続人)・・・あなた、長男、後妻の3名と仮定した場合

(本来の法定相続分)・・・後妻 → 2分の1
                後妻の長男 → 4分の1
                あなた → 4分の1

このケースですと、あなたの遺留分は法定相続分(4分の1)の2分の1ですので、全体の8分の1と計算されます
このように、遺言があってもあなたは遺留分を請求し、遺産を一部受け取る権利があります。
なお、遺留分は遺留分の侵害(=遺言の内容)を知ってから1年以内に(内容証明郵便等で)請求を行わないと時効消滅してしまいます。くれぐれもこの点はご注意ください。

【取り決めた未払養育費や慰謝料は承継される】
今回は養育費や慰謝料の未払いがあるようです。
まず、なんらの約束事(書面)もしておらず、単に父から養育費をもらっていないだけ、ということであれば、そもそも養育費は請求できません。
しかし、書面等で金額や支払時期の取り決めをしていたのであれば、一般のお金の支払義務と同様に請求でき、未払いがあればお父さんの債務として、これも相続分に従って分割され、各相続人に引き継がれます。
 (なお、慰謝料は一般に母(前妻)の権利ですので、権利者はあなたではないことにご注意ください)

【養育費も一部は相続で消滅する】
上記のケースでは、未払いの養育費について、後妻が2分の1、後妻の長男が4分の1の支払義務を引き継ぎます。
しかし、4分の1の限度ではあなたも支払義務を引き継ぐことになるため、あなたが引き継いだ養育費の4分の1は権利と義務が相殺されて消滅し、請求できなくなることにご注意ください(このことを法律上は「混同」と呼びます)。

【実際には時効などハードルは高い】 
また、養育費の請求にはもう一つ大きな問題があります。
養育費もお金の貸し借りと同様、時効により消滅します。たとえば養育費の支払時期が毎月末日払いなど定期的な支払いの場合、毎月の支払日から5年で時効消滅します。そのためたとえば20歳で支払期間が終了した養育費は、あなたが25歳を超えていれば時効で全部消滅している可能性があります。
もっとも、途中で一部支払いがあったなどの事情があれば時効が中断することもありますので、ご心配でしたら遺留分の請求の見込みなども含め、お近くの専門家に一度ご相談された方がよいでしょう。

 (弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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13:56 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

預金口座の取引履歴を開示したい【Q&A №602】

2018/02/20


【質問の要旨】

祖母が開設した娘名義の口座の取引内容を確認することはできるか?

記載内容  離婚 借金 取り引き内容


【ご質問内容】

 離婚をして10年以上経ちます。娘が1人います。
 昨年、娘の父親が亡くなりました。元夫は母親と会社を経営してました。
 元夫の母からは借金しかなく娘には何も渡すものは無いと言われました。
 今まで父親からは養育費として少しは頂いてたので祖母は19歳まで生活費を渡すと言ってます。
 先日、祖母が生活費とは別に少しづつ貯金をしてあげるからと娘の銀行口座の開設に行きました。通帳と印鑑は祖母が持ってます。しかし周りからはその口座に遺産関係が入るからだと言われました。もしそうだとしたらどうなるのでしょうか?
 通帳、印鑑が無くても娘は口座の取り引き内容は閲覧できるのでしょうか?
 私は全く関わりたく無いのですが娘が大学に行きたいと言ってるので学費だけでもと思っています。


(aloha)



 ※敬称略とさせていただきます

【元夫の相続人は娘】
① 元夫の相続人は、元夫があなたとの離婚後に再婚しておれば、現在の配偶者と元夫の子(あなたの娘。もし、他に子がいればその子も相続人になります)。
② 結婚してもおらず、他に子供がいないのであれば、娘のみが相続人になります。
なお、上記①及び②のいずれの場合でも、元夫の母親やあなた自身は相続人ではありません。

【相続するということは借金も引き継ぐということ】
 相続するということは、元夫の財産も借金などの負債もすべて引き継ぐということです。
 なお、相続人である娘が未成年であれば、親権者であるあなたが娘の代理人として相続手続をすることになります。

【元夫の遺産や借金については調査をすべき】
 元夫の母親の話では、元夫には借金しかなく、娘に渡すものはないとのことです。
 もし、元夫の母親の話が正しいとすれば、娘は元夫の借金を相続してしまうことになります。
 又、ひょっとすると財産があるかもしれません。
 今後の娘の行動を考えるには、元夫に借金があるのかどうか、又、財産があるのかどうかを調査する必要があります。
 調査の結果、借金が多ければ相続放棄の手続きをし。借金もあるが財産もあるというのであれば、双方を比較して財産が多いと判断すれば相続人として財産を取得する手続きをすることになります。
 いずれにせよ、亡夫の財産調査は必要不可欠です。

【相続放棄するなら3ケ月以内に】
 相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申し立てする必要があり、3か月の期限内に調査が終わりそうにないなら、放棄をする期間を延長(これを熟慮期間の伸長といいます)する必要があります。

【印鑑を預けてはいけない】
 祖母に娘の口座を作ってもらうために印鑑を預けたということですが、もし実印を預け、印鑑証明書を渡したというのであれば、それは極めて危険な行為です。
 娘の実印と印鑑証明書があれば、遺産分割協議書が勝手に作成されたり、亡夫の遺産である預貯金が勝手に解約されるかもしれません。
 娘さんが未成年のようなので、親権者であり、法定代理人であるあなたが娘さんの口座を作ることができます。
 もし娘の口座を作るので、あればあなたがその手続きをし、口座を祖母に連絡すればよく、印鑑まで預ける必要はありません。

【遺産が入るかも??】
 遺産を渡す気があるのなら、当然、祖母は、亡夫の遺産は借金だけというような話もしないはずです。
 もし、あなたが渡した印鑑が実印であり、かつ印鑑証明書なども渡したのであれば、祖母としては銀行等で亡夫の預貯金を解約取得する手続きができる場合があります(法定相続人である娘のもらうべき遺産を元夫の母が勝手に引き出すという最悪のケースも想定されます)。
 あなたとしては、そちらを心配するべきでしょう。
 もう、遅いかもしれませんが、預けている娘の印鑑などもすぐに取り返した方がいいでしょう。

【まず、するべきことは遺産調査と印鑑の回収】
 あなたが娘の学費をなんとかしたいというのであれば、亡夫の預貯金など、遺産の調査をするべきです。
 娘さんは相続人ですので、元夫の預貯金の取引履歴を取り寄せすることは可能です
 亡夫の預貯金などは、娘が亡夫の子であることを証明する戸籍や実印などがあれば、過去の取引内容を含めて、調査が可能です。

(調査方法についてはリンク参照)
《過去の参考ブログ:相続放棄 借金の調べ方 預貯金等、遺産の調査


(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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14:48 遺産の調査・発見 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

認知症の義母宛の父の遺言【Q&A №571】

2017/07/05


【質問の要旨】

再婚した父が遺言を書いていた場合の先妻の子の相続分

記載内容  再婚 義母 任せる  遺留分 先妻の子


【ご質問内容】

父と母は 再婚で、私は父の実の娘です。

幼い頃の離婚時に、実母方が弟を連れ、父が私を引き取りました。

現在は、私は結婚していて義母とは養子縁組はしてません

父は難病をかかえていますが数年前に母が認知症で、遠方の実の妹夫婦宅へ行きっぱなしで帰らず、今では 介護施設へ入居してます。

数ヶ月前に父が自宅で転び、一人暮らしが不可能となり今では療養型病院に入居してます。

もう自宅には帰れないので、私が自宅の片付け、売却を頼まれましたが片付けてたら、義母宛の銀行で作成した遺言書がでてきました。

現在、父名義の700万ほどの銀行預金通帳を私が預かり任されてます

他の預金は認知症の母がわかってるだけでも1000万円を持っていってしまいました

母の遺言書は見当たりません。

父が口頭では娘の私に全て任せると言うのですが、もしこのまま父が他界したらどうなるのでしょうか?又、義母が他界したらどうなるのでしょうか?

(mamis)





【事案の整理】

義母宛の遺言内容が明らかではないのですが、おそらくお父さんが「義母に全財産を相続させる」内容で作成したものと推測して回答いたします。

この状況でお父さんが死亡した場合、遺言に従って全遺産は義母が相続することになります(なお、あなたは遺留分の限度で権利がありますが、この点は後述します)。

【お父さんが死亡した場合・・遺言内容により異なるが、遺留分請求が必要になるかもしれない】

まず、お父さんが死亡した場合、お父さんには遺言書がありますので、その遺言書の内容で遺産を分けることになります。

ただ、その遺言書の内容が、義母に全部を相続させるという内容であれば、あなたはお父さんの遺産を相続できなくなります。

このような、遺言等で遺産が十分にもらえない場合には、法律で、遺産を多くもらう人から最低限度は返してもらえるようにする制度があります

遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求といい、遺言書の内容を知った日から1年以内に、遺産をくれと申し出る制度です。

あなたは被相続人であるお父さんの子ですので、減殺請求をすると法定相続分の4分の1の半分の、8分の1の遺産をもらうことができます。

なお、遺産としては義母が生前に貰った1000万円も遺産に組み入れて計算をしますので、あなたが遺留分としてお母さんに請求することができるのは次の計算式で算定される金額です。

遺留分=(義母が生前に貰った:1000万円+父名義の銀行預金+お父さんのその他の遺産)×8分の1

(なお、遺留分減殺請求については【コラム】遺留分とは参照)


【父より前に義母が亡くなった場合】

父より前に義母が亡くなったときは、あなたは義母の子ではありませんので、義母からは遺産を相続することができません

この場合、父の遺産がどうなるかですが、父の遺言書に《義母に遺産全部を相続させる》という記載があっても、既に義母が死亡しているのですから、遺言書は効力がなくなります

そのため、父が亡くなった時には、あなたと弟さんが父の遺産を2分の1ずつの割合で取得することになります。


【遺産が欲しいのなら遺言を書いてもらう】

最後に、お父さんが「口頭では娘の私に全て任せる」という発言されていますが、このような言葉は、葬儀の手配や自宅の整理、遺産分割完了までの通帳などの管理を任せるという趣旨として理解されるにすぎず、あなたに全遺産を贈与させる、あるいは相続(遺贈)させる意思を表示したものという理解をするには無理があります。

もし、あなたが父から財産をもらいたいというのであれば、新たに「全財産を相続させる」旨の遺言を作成してもらうことが必要でしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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16:29 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

葬式費用の負担者と香典の取得者【Q&A №560】

2017/02/16


【質問の要旨】

父の葬儀の喪主が叔父、葬儀費用は遺産から払ったが、香典は誰が受け取る?

記載内容 香典 葬式費用 喪主

【ご質問内容】

母とは離婚、片親だった父がなくなり、葬式をあげる事になりました。

24歳の姉と21歳の私(2人姉妹)は知識も、まとまったお金も無いからと、何も費用などの相談も無いまま父の弟である叔父が喪主を務め、葬式費用も返してくれればいいからと立て替えてくれました。

後日かかった費用の領収書を受け取り、返すように言われ葬式費用は遺産から返したのですが、この場合香典は誰が受け取るべきですか

実際に喪主を務めた叔父が香典を受け取るとしたら、父の葬式なので葬式費用は私と姉で叔父に返すべきなのですか?

(麗華)





【葬儀費用は喪主が負担する】

葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するものであり、相続債務ではありません。

そのため、当然に遺産から支払われるべきものではなく、喪主が負担するものです。

したがって、今回叔父さんが喪主を務めてくれたのであれば、本来は叔父さんが費用を負担するべきだということになります。


【喪主が負担した葬儀費用の請求】

今回の事案とよく似た裁判例として、次の裁判例があります。

【相続判例散策】兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できない》と判断しましたが、その理由は、《葬儀は行うか否か、どの程度の規模にするか、どこまで費用を掛けるかは喪主が決定するのだから、喪主が費用を負担するのが妥当》というものでした。

この裁判例に従うと、やはり叔父さんが支払った葬儀費用をあなた方に請求することはできないという結論になりそうです。


【香典は葬儀費用を負担した者が取得する】

ただ、本件では、あなた方に代わって叔父さんに喪主を務めていただき、葬儀費用を支払うことについてあなた方が納得して遺産から葬儀費用を支払ったようです。

このとき、香典は誰が受け取るべきなのかが問題になりますが、香典には葬儀費用等の出費に対して金銭面で助けるという意味もありますので、本来香典は葬儀費用を負担した者が取得するべきだといえるでしょう。

本件において、あなた方が遺産から葬儀費用を支払ったのであれば、香典収入は叔父さんに渡すのではなく、遺産に含めるべきだと考えられます。


【本件ではどうする?】

そのため、今回の質問のケースでは、本来は、あなた方は叔父さんに葬儀費用を支払う必要はありませんでした

ただ、既に葬儀費用を支払った(もらった遺産からその分を返した)というのなら、葬儀費用の返還をしてもらっても良いということになります。

しかし、現実問題としてはそのような要求を出しても、応じてくれないでしょうから、せめて、香典は引渡すように請求されるといいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
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14:41 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の同居女性からの葬儀費用、保険金の請求【Q&A №549】

2016/12/14



【質問の要旨】

亡父の同居女性から立替金と死亡保険金を請求された

記載内容 立替金 死亡保険金 遺言書

【ご質問内容】

離婚し、音信不通だった父が病死したとの連絡がありました。

同居している彼女から生前の治療費、介護費、葬儀代等の立替金120万円と死亡保険金200万円の請求が弁護士を通じてきました。

保険金については、死ぬ前日の日付で遺贈するとの遺言書があるが、捺印はなしです。

父の預金通帳が見つかりましたが、100万円ほどの預金は亡くなるまでにほぼ全額引き出されており、使途は不明です。

彼女は預金のことは知らないと言っています。

この請求は妥当なもので、請求に応じなければならないのでしょうか?

あちらは訴訟の手続きを進めているようですので、こちらも弁護士に依頼することになると思いますが、その際にかかる費用と勝率はどれ位になりますか?

また、和解するならこちらは幾らくらい支払うのが妥当でしょうか?

(みち)





【生前の治療費・介護費は相続債務である】

お父さんの彼女から、生前の治療費、介護費、葬儀代等の立替金と死亡保険金を請求されているとのことですが、それぞれ法的な扱いが異なりますので、分けて説明いたします。

まず、生前の治療費、介護費は、被相続人自身の債務ですのでお父さんの相続人がその債務をそれぞれの相続分に応じて相続しますので、支払いをする必要があります

ただ、本当にそのような債務があったのか、又、その債務の支払いを彼女がしているのか(お父さんの財産から支払いされているのではないか)を確認する必要があります。

もし、そのような裏付証拠があるのなら、立替金を返還する必要があるでしょう。


【葬儀費用は相続債務ではない】

これに対し、葬儀費用は、被相続人の死亡後に発生するものですので、相続債務にはならず、原則として被相続人の葬儀の喪主を務めた人が支払うべき費用と考えられています

ただ、調停での解決では、実務では法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いた上で出席した他の相続人に分担してもらうことで解決する場合が多いです。

ただ、今回のケースは喪主である彼女は法定相続人ではありません。

このような法定相続人以外が喪主になったケースについては、過去の裁判例の中に、葬儀費用を相続人(2人のうち1人は葬儀にも参列しなかった)に請求できないと判断したものがあります(過去の相続ブログQ&A №545及び【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか)ので、この判例を参照の上、対応を考えられるといいでしょう。


【押印のない遺言書は無効である】

さらに、保険金については、亡くなる前日の日付で遺贈するとの遺言書があるようです。

遺言書は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています(民法968条1項)ので、押印のない遺言書は無効 です。

ただ、押印がなくても、遺言書を入れた封筒の封じ目に押印があれば、封筒と内容の遺言書本体とは一体と考えられ、捺印があったことになり、有効な遺言書になります(最判平成6年6月24日・家月47巻3号60頁)。

本当に封筒の方にも押印がなかったのかどうかの確認が必要でしょう。


【100万円の引き出しについて、証明はあなたがしなければならない】

さらに、お父さんの口座にあった100万円ほどの預金は、亡くなるまでにほぼ全額が引き出されていたとのことですが、お父さんの彼女が引き出したと主張する場合、その証明はあなたがする必要があります。

そのためには、あなたとしては預貯金の払戻書のコピーを取り寄せし、署名欄に記載された筆跡を検討し、彼女が引き出したことを確認する必要があります(この点について詳しくは、過去の相続ブログ【Q&A №502】をご参照ください)。


【弁護士費用と勝率、和解について】

弁護士費用については、以前は弁護士会の報酬規程がありましたが、現在は弁護士によって異なりますので、依頼する弁護士に直接確認する必要があります。

次に勝率、和解については、具体的な事案によって大きく異なりますので一概には言い切れません。

一度弁護士に相談に行き、具体的な事情やお持ちの資料等を説明した上でお聞きになるとよいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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★内縁の妻からの葬儀費用の請求【Q&A №547】

2016/12/07



【質問の要旨】

内縁の妻が立て替えていた葬儀費用と入院費用を回収できるか?遺族年金はどうなるか?

記載内容 葬儀代 喪主 内縁の妻

【ご質問内容】

内縁の夫がなくなり(重婚的関係)本妻が体裁もあるので喪主を努めたいと言い、本妻が喪主、施主が内縁の妻で葬儀を終えました。

葬儀費用はとりあえず施主が払いました。

葬儀費用は折半(口約束)と約束したのに払ってくれません。

そのほかに入院費もかなりの金額を内縁の妻が払いました内縁の夫の遺産から、葬儀費用、入院費用を請求する事は可能ですか?

また、葬儀費用、入院費用、をもらうことにより、遺族年金の申請をするにあたって、内縁の妻の証明に不利になりますか

(ban)






【入院費用は相続債務であり、返還請求ができるが・・】

内縁の夫の入院費は本来その夫が支払うべきものであるのが未払いになっているものですから、相続の債務であり、遺産から支払う必要があります。

そのため、相続人に立替入院費の支払いを請求できます

なお、その請求先は法定相続人全員であり、支払いは各法定相続分に応じた分です。

そのため、子がいる場合であれば、法律的に請求できるのは、配偶者である妻に対しては立替分の2分の1のみです。


【葬儀費用について】

葬儀の喪主は妻であり、施主は内妻であるあなた、費用はあなたと妻と折半するとの口頭の合意があったにもかかわらず、妻の方が折半分の支払いに応じないという前提で考えると、折半の合意が成立したことが証明できれば、あなたは妻に半額を請求することができます

ただ、口頭ですので、《言った、言わない》の議論となり、結局、合意の証明なしとして、内妻であるあなたの請求が認められない可能性も高いでしょう。


【遺族年金の請求について】

遺族年金については厚生年金保険法により、《配偶者》が第一順位の受給権を有しています(厚生年金保険法第59条の2項。末記条文を参照)。

民法における配偶者は戸籍上の妻のみですが、この厚生年金保険法における《配偶者》には、戸籍上の妻のみならず、内縁の妻も含まれます(末記の厚生年金保険法第3条を参照。なお、以下においては厚生年金保険法の配偶者の意味で使用する場合には《配偶者》と記載します)。

今回の件では、戸籍上の妻が存在し、かつ、内縁の妻も存在しますので、《配偶者》に該当する人が2名になり、どちらが《配偶者》と扱われるのかという問題があります。

仮に戸籍上の妻がいても、《事実上の離婚状態》であり、かつ、あなたが夫の収入で生計を維持しているという立場であれば、遺族年金をもらえる立場になります(平成27年10月2日大阪地裁の判決が参考になります。⇒【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?参照)

上記裁判例も参考にして述べれば、《事実上の離婚状態》とは、婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつその状態が固定化して近い将来に回復される見込みがない場合をいい、具体的には次のようないろんな事項を検討した結果で判断されることになります。

①別居期間 ②別居の経緯 ③別居期間中の婚姻当事者の婚姻関係修復の努力の有無 ④別居後の経済的依存関係の有無(婚姻費用的なものを支払っているか) ⑤別居している夫婦の連絡あるいは面会状況 ⑥夫の内縁の妻との生活状況

単に別居して長期間経過しているというだけで内縁の妻が遺族年金は受けることのできる《配偶者》になるわけではありませんのでその点をご留意ください。

なお、遺族年金の支給を受ける要件として、死亡した者の収入により生計を維持していることが要件となっています。

さて、入院費や葬儀費の請求すること自体は、遺族年金の受給と直接関係しません。

ただ、もし、あなたが独自に多額の財産を有しており、それで入院費を支払い、又、葬儀費を支払ったというのであれば、《死亡した夫の収入で生計を維持したとは言えない》ということで生計維持要件を欠き、受給できなくなる可能性があります

(弁護士 大澤龍司)


厚生年金保険法

(遺族)
第五十九条  
遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(略)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
(略)
2  前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。


(用語の定義)
第三条
2  この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。


大澤龍司法律事務所
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★【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?(大阪地裁 平成27年10月2日判決)

2016/12/07
戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?

大阪地判平成27年10月2日(平成25年(行ウ)256号)


【ケース】

厚生年金保険の被保険者であった被相続人と内縁関係にあったと主張する女性が老齢厚生年金及び老齢基礎年金の支給を請求したところ、被相続人と戸籍上の妻との婚姻関係が形骸化しているとは認められないとして支給しない旨の決定をされたため、その決定の取り消しを求めた事案。


【裁判所の判断の概略】

 厚生年金保険法の目的等に鑑み、同法上の「配偶者」には、戸籍上の配偶者のみならず、事実婚関係にある者も含まれるものとしている(同法3条2項)。
 戸籍上の配偶者を有する被保険者等が重ねて他の者と内縁関係にあるという、いわゆる重婚的内縁関係にある場合にあっては、原則として、戸籍上の配偶者が「配偶者」に当たるというべきである。
しかし、被保険者等が戸籍上の配偶者を有する場合であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、戸籍上の配偶者はもはや「配偶者」に該当せず、重婚的内縁関係にある者が「配偶者」に当たる。
 実体を失っており形骸化しているかどうかの判断基準としては、被保険者等と戸籍上の配偶者との婚姻関係が上記のような事実上の離婚状態にあるか否かについては、別居の経緯、別居期間、婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無、別居後における経済的依存の状況、別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況、重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮する必要がある。
 本件では、被相続人と戸籍上の配偶者の夫婦関係は別居前から芳しくなく、別居は一度も解消されないまま約6年10カ月という比較的長期間に及んでいること、婚姻関係の維持ないし修復するための努力を一切行っていないこと、別居後経済的依存関係は認められないこと、音信及び訪問は財産関係の清算を目的とするものがほとんどで、被相続人の死亡当時にはほぼ断絶状態であったこと、他方内縁の妻と約6年7カ月にわたって事実上夫婦としての共同生活を送っており、その関係も相当程度安定かつ固定していた。
 そのため、被相続人と戸籍上の配偶者とは事実上の離婚状態にあったと認められ、内縁の妻に対する老齢厚生年金等の不支給決定等は違法である。


【弁護士のコメント】

 戸籍上の配偶者と内縁の配偶者が存在する場合に、遺族厚生年金を受給できる「配偶者」とはどちらのことを指すのかが問題になります。
 原則として戸籍上の配偶者が受給することになるのだろうということは想像がつくと思いますが、この裁判例は、内縁の配偶者が受給できることができる場合も例外としてあるということを明らかにしました。
 その判断は、上記下線部で示したような様々な事情を総合的に考慮してなされ、戸籍上の配偶者との婚姻関係が形骸化していて、事実上の離婚状態にあるといえるような状態だといえる場合にのみ、内縁の配偶者が受給できるということになるのです。
 単に戸籍上の配偶者と別居して、内縁の配偶者と暮らしているというだけで内縁の配偶者が受給者になるという単純な話ではなく、それぞれの具体的な事情を考慮して判断されますので、注意が必要です。
大澤龍司法律事務所
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★叔父の葬儀費用を請求したい【Q&A №545】

2016/12/02



【質問の要旨】

連絡がとれない相続人に葬儀費用を請求できるのか

記載内容 お葬式代  請求

【ご質問内容】

叔父のお葬式代について質問があります・・・ぜひ回答ください。
まずは必要な情報としてプロフィールを見てください。

【叔父】
離婚歴あり娘が4人で叔父は今は独身
叔父や私たちは娘さんたちとは離婚したあとに連絡先を知らずにとれない状態です
でも娘さんたちが叔父の財産を引き継ぐとおもいます。

【私の父】
・叔父からみたら弟で男兄弟は父だけ。他の兄弟は叔父からみたら姉が4人います。
お葬式の喪主は父がしてお葬式代を父がだす形になるとおもいます。
ちなみに娘さんたちは探す予定です。財産分与の件もありますので。

ここから質問です。質問は3点あります。

① もし娘さんたちが見つかり、この場合は財産を引き継ぐ娘さんたちにはお葬式代は請求できないんでしょうか

② もし請求ができたら回収できる確率はどれくらいでしょうか?
(前例などあればいけるとおもっていますがこのような少し変わった事例などで裁判費用を回収できたということがあったのなら助かります)

③娘さんたちが叔父の財産を引き継ぐ引き継がないなどの2つのパターンでも請求ができるできないとかなどの選択肢が変わるようなこともあるんでしょうか。

お手数掛けますがどうぞ回答の方をよろしくお願いします。

(ゆき)







【叔父さんが死亡したときの相続関係】

叔父さんが遺言書を作成せずに死亡した場合、配偶者はないため、その遺産は叔父さんの娘4人(以下、娘4人と言います)が法定相続します

あなたのお父さんは、上記娘4人が全て相続放棄をしない限り、相続人になりません


【葬儀費用の負担について】

相続債務であれば、遺産から支払いを受けることが可能です。

例えば、叔父さんの治療費などが生前に支払いされていないのであれば、相続債務として、叔父さんの相続人である娘4人が支払義務を負います。

しかし、葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するものであり、相続債務ではありません

葬儀費用は喪主が負担するものです。

お父さんが喪主になるのであれば、葬儀費用を負担することになります。


【喪主が負担した葬儀費用の請求】

葬儀費用は前記のとおり相続債務ではありませんが、法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、その費用の分担を他の相続人に請求可能かという点については、他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いたうえで、他の相続人に分担してもらうことが実務上、多いです

この場合、遺産分割とは別に、その葬儀費用を別途支払いするというのではなく、遺産分割での取得額から分担額を減額するということが多いです。


【今回の質問のケースで葬儀代は請求できないか?】

しかし、今回のケースは喪主が法定相続人ではないため、遺産分割の中で葬儀費用を分担するという実務と同視できないでしょう。

今回のようなケースに参考になる過去の裁判例としては、次の裁判例が参考になります。
【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できない》と判断しましたが、その理由は、《葬儀は行うか否か、どの程度の規模にするか、どこまで費用を掛けるかは喪主が決定するのだから、喪主が費用を負担するのが妥当》というものでした。

この裁判例に従えば、娘4人に葬儀費用を請求するのは法的にはむずかしいという結論になります。

ただ、前記判例では甥姪2人のうち、1人は葬儀に参加していたようですが、2人ともにつき、葬儀費用の分担をする必要はないとの判断でした。

もし、娘4人が葬儀に出席していたのであれば、法的にはむずかしい点はあるものの、請求し 、支払いを拒否されたのに納得できないのであればあきらめるというが妥当なところだと思われます。

なお、お父さんには、葬儀代は返還してもらえない可能性があることを前提に、葬儀の規模や費用を判断するようにアドバイスされるといいでしょう。


【叔父さんが生きているのなら】

ただ、叔父さんが現在も生きておられ、かつ判断(意思)能力があるのなら、現時点で叔父さんと話をし、葬儀費用を預かるといいでしょう。

この場合、葬儀費用としてお金を預かることを明確にし、もし、金銭的に過不足が出た場合にどうするかという点も書面などで明確にしておくといいでしょう。


【娘らが相続放棄をした場合】

仮に4名の娘全員が相続放棄をした場合には、お父さんらの兄弟が相続人になる可能性があります。

この場合、喪主であるお父さんから、遺産分割の際に、葬儀に出席された他の法定相続人に対して葬儀代の分担を求められるといいでしょう

(弁護士 大澤龍司)

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★【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

2016/12/02
兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか

(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

【ケース】

被相続人は離婚し、2人の子とは20年以上疎遠になっていたが、自身の兄弟とは比較的密に交流があったため、亡くなったという連絡を受けた兄弟が喪主として葬儀をし、費用を支払ったという事案において、相続人に葬儀費用や埋葬等の行為にかかる費用を請求できるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は以下のような内容の判断をしました。

亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、同儀式を準備し、手配等して挙行した者が負担し、埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当である。
なぜならば、追悼儀式を行うか否か、同儀式を行うにしても、同儀式の規模をどの程度にし、どれだけの費用をかけるかについては、もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し、実施するものであるから、同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であるからである。
他方、遺骸、遺骨の埋葬等の行為に要する費用については、亡くなった者の祭祀を主宰すべき者が負担すべきものであるが、亡くなった者には二人の子があるものの、20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況である一方(なお、長男は葬儀にも出席しなかった。)、兄弟らとの間に比較的密な交流があった事情が認められることも考慮すると、亡くなった者の祭祀を主宰すべき者を子供らのいずれかとすることが慣習上明白であると断ずることはできない。


【弁護士のコメント】

葬儀費用は相続債務ではなく、喪主を務めた者が費用を負担すべきであると考えられています。
もっとも、法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、その他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いたうえで、他の相続人に分担してもらう形で遺産分割の中で解決することが実務上、多いです。
ただ、法定相続人でない人が喪主になり、葬儀を行った上葬儀費用を支払ったという場合には遺産分割の中で解決することもできませんので、話は別になります。
この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪には請求できない》という結論になっています。
しかし、この裁判例の事案は、20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況であり、また甥姪のうち一人は葬儀にすら出席していないという事情がありますので、この事情が違えば、別の判断がなされる可能性もあります。
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相続割合を教えてほしい【Q&A №530】

2016/09/21

【質問の要旨】

既婚(子あり)の兄がいる場合の相続分

記載内容 結婚 

【ご質問内容】

私は、埼玉県○○市に住む○○歳の男性です。

初めに私は障害者です。5年ほど前に『脳梗塞を患い』

○○市で介護保険の申請をし『要支援2』の認定を受けました。

・私は一人で住んでいます。

・私は字が書けません。

・言葉がやや不自由ぎみです。

・足が不自由で50mぐらいしか歩けません。

・今は殆ど歩け無いです。

【私はうまく喋る事が出来ないので】

【電話ではなくてメールで連絡を御願い致します。m(_ _)m】

それで相談なのですが

私には82歳に成る母親がいます。

なにぶん高齢なので、いつも『死んだら宜しくね。』と、言っております。

気になるのは遺産相続で、私以外には兄が一人おります。

兄は結婚してて義姉とその孫に成る息子が20代二人おります。

それと私には離婚した妻と23歳になる息子がいます。

こんな家族関係ですが、私の遺産相続は幾らに成るのでしょう?

※当事務所の判断により、一部伏字にしています。

(ほほほ)







【相続人はあなたとお兄さん】

まず結論から申し上げますと、このままお母さんが亡くなった場合、お母さんの相続人は、あなたとお兄さんのお二人です。

お二人はお母さんの「子」であり、相続人たる地位を有するからです。

このことは、たとえあなた方ご兄弟に子ども(お母さんから言えば孫)がいたとしてもなんら変わりません。また、あなたの障害や離婚もこの結論には影響しません。

そして、兄弟姉妹の相続分は頭数で平等に分けられますので、あなたもお兄さんも、相続分は2分の1ずつです。戦前の法律とは違い、特に長男の相続分が多いというような事はありません。

以上は、お父さんが既に亡くなっているものとして回答しています。

もし、お父さんが生きておられ、お母さんと婚姻しているのであれば、配偶者としてお父さんが遺産の2分の1を、又、お兄さんとあなたはそれぞれ4分の1の割合で遺産をもらえることになります。


【考えられるその他の可能性】

なお、お兄さんがもし不慮の事故などでお母さんより先に亡くなった場合、その後に発生したお母さんの相続は、あなたと、あなたのお兄さんの子が相続人になります(このような場合を代襲相続と言います)。

この代襲相続の場合でも、あなたの相続分が2分の1であることは変わりがありません。

また、仮にお義姉さんがお母さんと養子縁組をすれば、子は3人になりますので、相続分はそれぞれ3分の1ずつになります。

養子縁組をしているかどうかはお母さんの戸籍謄本を見ればわかりますので、もしご心配であればお調べになっても良いと思います。

(弁護士 北野英彦)

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弟の嫁が養子縁組をさせようとしている【Q&A №494】

2016/02/29

【質問の要旨】

弟の養子縁組をとめたい

記載内容

養子縁組 無効 判断能力

【ご質問内容】

2人姉弟ですが、病身の弟は子供がおらず嫁がニートの実弟を私の弟の養子にしようとしています。

弟は余命わずかで判断能力はありませんが書かせれば文字は書けます。

最近両親が相次いで亡くなり、弟がなくなれば僅かな遺産はわたしが引き継ぐことになります。

しかし養子縁組が認められれば、嫁兄弟に半分渡す事になります。

病身の弟に代わり、両親の葬儀もわたしが行ない、預金も凍結中のためすべて自分で負担しました。

両親存命中もほとんど交流のなかった嫁の行動に納得できず養子縁組不受理にしたいのですが。

ちなみに嫁は当時事実婚していた自分の父親の死ぬ間際に、数十年前離婚した母親と勝手に復縁させ年金を搾取したことがあります。

父親の内縁妻は無理矢理追い出しました。

勝手に養子縁組するなどた易いことのようです。

調停を申し立てて勝ち目はありますか?

申し遅れましたが、両兄弟ともに40代です。

(はるか)







【他人の養子縁組を止める方法はありません】

養子縁組をするかどうかは弟さんが決めることです。

兄弟姉妹であっても他人ですので、弟さんの養子縁組を止める権限はなんらなく、あなたが弟さんの養子縁組を止めることはできません

いずれにせよ、あなたとしては弟さんの養子縁組に関与する立場にない以上、裁判所や役所に何を申し立てても無関係の人間であるとして聞き入れてもらえないと思います。


【判断能力がない場合、養子縁組は無効となる】

養子縁組をするには、一定の判断能力(意思能力)が必要です。

もし弟さんが判断能力を欠くような場合には、養子縁組の届け出は無効になります


【養子縁組が相続に及ぼす影響】

お父さんとお母さんが既に死亡されていますので、その遺産は法定相続人とあなたに相続されています。

しかし、弟さんが死亡した場合、その段階で養子がいなければ、弟さんの遺産(その中にはお父さん及びお母さんの遺産も含まれます)の4分の3が弟の配偶者に相続され、残りの4分の1があなたの方に来ます。

もし、弟さんの死亡時点で養子がいれば、弟さんの遺産は配偶者と養子が各2分の1で相続しますので、あなたには弟さんの遺産は来ません。

養子がいることであなたにくる弟さんの遺産についてのあなたの増減分は4分の1であることにご注意ください


【相続の関係では養子縁組の効力が問題となる】

あなたとしては、弟さんの遺産分割の段階で、

① その養子縁組は弟さんが判断能力を欠いており、無効である。

② 養子は弟さんの遺産を相続できない。

③ 従って、弟さんの遺産は、その配偶者が4分の3を取り、残りの4分の1があなたに相続される。

と主張することも可能です。



【現時点で将来の紛争に備える】

ただ、養子縁組の無効を主張し、弟さんに判断能力がなかったことを証明するのはあなたです。

そのため、現段階から弟さんの医療や判断能力に関する情報は収集されておくといいでしょう

もちろん、弟さんの医療記録などを生前にあなたが取得することはできませんが、次善の策として、弟さんの健康状態や判断能力に関する状態を現時点で可能な限り聞き取っておくとか、現在の入通院している医療機関や入所通所している介護施設を確認しておくなど、将来の問い合わせ先を把握しておくなどの努力をされるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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17:33 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産分割した後の預金の使い込み【Q&A №491】

2016/02/08

 【質問の要旨】

遺産分割協議書で財産を相続した人が、遺産を生活費につかってしまった

記載内容

遺産分割 約束を破る 取り戻す

【ご質問内容】

家族構成は父、母、子供4人(長男=兄 離婚歴あり現在は独身で別世帯。長女=私次女=妹 二男=弟 

2年前父親が亡くなり、財産を母親、子供4人が相続するところですが、母親に家を購入してあげたい希望があり(母も強く希望しておりました)、

高齢である母の代わりに家の購入、父のお墓の購入手続きをしやすくする為に母、子供3人は相続を放棄して長男である兄一人だけに相続することに決め、遺産分割協議書を提出しました。

そして兄が母に家を購入するつもりでいましたが一度契約寸前まで行ったところ、兄と不動産屋担当者との相性が悪く、購入を断念してしまいました。

こうして1年半、母は貸家に住み続けましたが突然家で病死してしまいました(遺言はありませんでした)

遺産を管理していた兄に預金を問いただすと兄はほとんど預金を自分の生活費にしてしまったと言うだけで通帳どころか使い道もハッキリ言いません。

母へ購入してあげるべき家の代金を全額兄は自己消費してしまった上に父母のお墓も買う事が出来なくなりました

私は兄の身勝手な行動が信じられなく許せません。

泣き寝入りしかないのでしょうか

(kanasiineko)







【相続放棄ではなく、遺産分割の問題】

質問には、お兄さん以外の法定相続人が《相続放棄》をしたとあります。

相続放棄は家庭裁判所へ申立をすることが必要ですが、今回はそのような手続きはせず、遺産分割協議で、お兄さんが遺産を一人で取得し、他の相続人は遺産をもらわなかったということだと思われます。

以下の回答は、この前提で記載していきます。


【遺産分割協議書の記載内容はどうだったのか】

遺産分割協議書に《お母さんに家を購入すること》が条件で記載されていた場合には、その条件を充たしていないのですから、お兄さんが遺産を取得できないことになります。

次に、条件というほどではないにしても、《お母さんに家を購入すること》が義務として記載されていた場合には、その義務をお兄さんが履行しなかったことを理由にして、遺産分割協議を解除できるのかという問題があります。

この点については、裁判例があり、遺産分割協議で定められた義務を履行しなかった場合でも、遺産分割協議は解除できないという結論でした。

ただ、この裁判例では、その義務を負った者に対して義務を履行しなかったことを理由として損害賠償を請求できる余地があるとしています。

なお、遺産分割協議書に義務として記載されない場合でも、その義務があったことが証明できるのであれば、損害賠償が請求できると私は思いますが、この点については異論があるかもしれません


【他の相続人として何ができるか】

今回の質問の場合、お兄さんが債務負担者であり、お母さんが債権者になります。

お母さんはお兄さんに損害賠償を請求できる可能性がありました。

お母さんは死亡されたのであれば、あなたをはじめとする法定相続人が、お母さんの損害賠償請求権を法定相続分だけですが、相続します

そのため、あなたがその相続した賠償請求権を行使できる可能性があります。


【専門家に相談されることをお勧めします】

今回のようなケースは相続人の間だけで解決するのは難しいです。

できれば法律の専門家である弁護士に相談され、遺産分割協議書の内容や合意に至る事情、更には不履行に関する事実経過を説明して、弁護士の意見を聞き、今後の取るべき方針を決定されるのがいいでしょう。


参考判例⇒
【相続判例散策】遺産分割協議で負担させられた義務を実行しないとき、分割協議を無効にできるか?(東京高裁 昭和52年8月17日決定)

遺産分割協議で負担させられた義務を実行しないとき、分割協議が無効になるのではなく、債務不履行による損害賠償を請求するべきである。

(最高裁判所:平成元年2月9日判決、東京高裁:昭和52年8月17日決定)

(弁護士 大澤龍司)

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17:43 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

過去処分した不動産の売却代金調査と特別受益【Q&A №482】

2015/12/15

 【ご質問の要旨】

1 被相続人が事実婚時代に贈与等を行った場合、婚姻後に特別受益と扱われるか
2 被相続人が過去に売却した不動産の代金についての調査

記載内容 特別受益 不動産売却 取引履歴

【ご質問の内容】

被相続人は、結婚せずに20年以上同じ異性と暮らし、二人で家を購入し(名義がどうなっていたかは不明)共働きででローンの返済をしていましたが、異性が年金受給できる年齢に達する数年前に家を売り、ローン返済後の所得を持ち、異性の故郷のある土地へ二人で引越したのを機に結婚しました。

以来二人は働いていません。

私は被相続人の兄弟で、法定相続人です。

婚姻前の不動産所得は被相続人と配偶者の共用財産ですが、被相続人の財産分もあると思います。

こういった場合、調停か審判になった時、被相続人の不動産所得分として、配偶者の特別受益と見なされますか?

不動産所得額や財産分与があったのかなど、具体的には配偶者以外、誰もしらない状況です。

宜しくお願い致します。

(もっち)





 【財産分与は相続の対象にならない】

ご質問の中に、「財産分与」という言葉が出てきます。

財産分与というのは、法律的には、離婚の際に、財産をその夫婦間で分ける手続です。

この財産分与が遺産で問題になることは少ないといえます。

なぜなら、財産分与は、離婚した妻(場合によれば夫)に対する支払いであり、その内容は婚姻後に夫婦で形成した財産の分割なので、仮に妻が財産分与を受けてもそれは実質的に自分の財産を戻してもらったということであり、その分は遺産にはならないからです。
また、そもそも離婚しているのですから、復縁しない限り、その妻が相続人となることもありません。

ご質問の被相続人は、離婚しているわけではなさそうなので、財産分与の有無を考える必要はないといえます。


【生前の財産譲渡は特別受益になる可能性がある】

今回のご質問で財産分与という趣旨は、おそらく、生前に配偶者が財産をもらっているのではないか、その分は遺産計算上、どうなるのかということでしょう。

そのように生前に財産をもらっているのであれば、それは特別受益として、遺産の分割時に遺産に含めて計算されることになります。


【今するべきことは、なによりも調査です】

被相続人の財産が、その生前、残された配偶者に移されているかどうかについては調査が必要です。

なぜなら、調停にせよ、裁判にせよ、被相続人の財産が配偶者に移されていることを認めてもらうためには、裏付となる証拠を集めなければならないからです。

そのため、早急に遺産調査を始める必要があるでしょう。

   《不動産の調査》

まず、かなり前に不動産を売ったようですが、その辺から調査を開始しましょう。

① 売却後に故郷に居を移したということですので、自宅を売却した可能性が高いと思われます。そこで、住所の移動状況を探るために、被相続人の戸籍附票を取寄せましょう。ご質問内容からは、売却した不動産は、故郷に移る前の住所地であることがうかがわれます。

② さらに、その不動産のある市町村から名寄帳を取寄せ (【コラム】名寄帳の取り寄せ参照)、当該不動産の登記上の所在地や、そのほかの不動産所有の有無等を調査しましょう。

③ 不動産の所有状況が判明した場合は、法務局でその不動産の登記を調べることで、被相続人がいつ、誰に売却したのかが分かります。

   《金銭の動き・・取引履歴の調査》

前記不動産の調査によって不動産の売却時期が判明した場合には、続いて、金融機関の取引履歴を調べることが必要です。

どこの金融機関を調べるかは、支店名まで特定する必要があるので難しいところですが、不動産の登記に住宅ローンの抵当権などがついていた場合、その抵当権者である金融機関(あるいはその関連会社)から支店名を探り出し、その支店に対して取引履歴の照会を行うとよいでしょう。

そして、その取引履歴のうち、不動産売却当時の大きな入金があれば、それが売買代金の可能性が高いといえます。

その代金額が配偶者の共有持ち分と大きく異なる、あるいはその後引き出されているなどという事実があれば、その時点で財産が贈与等されていると理解して、その後の対応を考える必要があるでしょう。


【弁護士に相談してもいいでしょう】

ご質問からは、被相続人の遺産については、現在、ほとんど判明していないように見受けられます。

そこで、前記のような調査が必要不可欠となるわけですが、一方で、処分された不動産や金融機関の支店が判明するとは限りません

ただ、質問のケースに応じてどのような調査方法が最適なのか、調査の結果によりどのように対応するなかなどについて、相続に詳しいお近くの弁護士に相談することを考えられるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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11:51 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母の預金は夫婦の共有か【Q&A №441】

2015/04/10
  


 家族は父、母、兄弟3人です。

 母の面倒を父と三男で行っていましたが、 母の余命が分かった時に長男が母が父との老後のために貯蓄していた母名義の定期などを解約、また年金の一部を引出し全て持っていきました。

  一部は持っていかれる前に母から三男に贈与されていて手元にあります。

 ただし口頭での贈与です。

 お金までならともかく、面倒をみていた父と三男の嘘を言って母を不安にさせ、支配し父のもとから連れ去ってしまい、一ヶ月後に亡くなりました。

 その後遺言書がでてきて、全財産は長男に渡すとの内容でした。

 長男が書かせたものだと思います。

 母は生前全く仕事をしたことが無く、父の給与で生活をしていました。

 年金以外の収入はありません。

 もちろん父は母が貯金をしていたことはわかっていましたが、任せていたという気持ちもあり、正確な金額は分かっていなかったようです。

 母の貯めていたお金は、父との共有財産なのではないですか?

 とりあえず遺留分の意思を伝えたら、遺言書を元に三男が押さえていたお金の返却を求めて長男から提訴されています。

 なぜか父と次男もいっしょに提訴されています。

 逆に父がそのお金は相続以前に共有財産で遺産ではないのだから、返却を求める裁判を起こすことはおかしい事でしょうか?

 またこちらから提訴して、今訴えられている裁判の差止めを行うことはできますか?


記載内容

  夫婦 共有財産 遺留分減殺請求 持ち分 


(りんりんちん)





【遺産の範囲について】

 被相続人名義の遺産は原則、被相続人の遺産になります。

 したがって、被相続人であるお母さん名義の預金があれば、それはお母さんの遺産になります。

 今回の質問では、お母さんは専業主婦だったので、そのような預金をする金額を持っていたはずがないということですが、そのような主張をするのなら、お母さんの名義であるが、お父さんのものであるという点の証明が必要になります。

 過去に経験したケースでは、お母さんが専業主婦であったが、お父さんの会社の役員になっており、会社から役員報酬が出ていたケースがありました。

 このようなケースがあったことも考えると、お父さんの口座からお母さんの口座に金銭が移ったというような、お父さんの財産が移動したことの裏付け資料が必要になることも考慮に入れておくべきでしょう。






【夫婦の共有財産ではない】

 お母さん名義の預金を夫婦の共有財産と考えて、半分はお父さんのものであるということができないかという質問ですが、答えはノーです。

 離婚する場合には、夫婦のいずれかの名義であっても、婚姻期間中に夫婦が共同で作ったものとして、夫婦それぞれの名義の全財産を折半することになります。

 しかし、今回は離婚ではなく、相続ですので、折半という考え方はできません。
(もし、そのような考え方をするなら、お父さん名義の財産の半分はお母さんの遺産となるという結論になり、遺産の範囲が不明確になり、収拾がつかなくなります)




【生前のお母さん名義の預金の解約について】

 長男が、お母さんの生前に無断で預金の引き出しをしたというのであれば、お母さんは長男に対して不法行為による損害賠償あるいは不当利得返還請求をすることができます。

 しかし、すべてを長男にという内容のお母さんの遺言書が存在しているのなら、お母さんの請求権もすべて長男のものになりますので、他の法定相続人が返還請求をすることはできません。




【他の法定相続人がとるべき手段は・・】

 他の法定相続人がとるべき手段としては、まず、お母さんの遺言書の効力を争うという方法があります。

 お母さんが遺言書を書いた当時、十分な判断能力があったのかどうかを検討されるといいでしょう(相続ブログQ&A №423Q&A №301【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介》をご参照ください)

 次に、仮に遺言書が有効だとしても、他の法定相続人としては遺留分減殺請求をすることも考えていいでしょう。

 現在、長男は三男に対して生前贈与分の返還訴訟を提起したということですので、三男も弁護士に依頼することになるでしょう。

 他の相続人の方としても、相続に詳しい弁護士と相談され、遺言の有効性を争うメリットがあるのか、また、遺留分減殺請求をするのがいいのかを相談されることをお勧めします。

 なお、弁護士には長男との関係だけではなく、生前贈与を受けた金額次第では三男に対する法的処置の可能性もお聞きになるといいでしょう。

 最後に、あなたが長男に訴訟を起こしても、長男の訴訟が差し止めされることはありません。

 ただ、あなたが提訴したことによる裁判所の関与により、全体としての遺産問題が和解で終了することはよくありますし、事案によれば、そのような解決が一番望ましいこともありうることも申し添えておきます。
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12:47 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

内縁の妻への受取人名義変更【Q&A №422】

2014/12/26
 


 私は半年前に亡くなった父の娘なのですが、父は4年前に私の母と離婚してから一人暮らしをしており、その頃から付き合ったり、別れたりを繰り返していた彼女がいたみたいで、喧嘩をすれば私の母(父からすると前妻)のところへ戻ったり、仲直りすれば彼女の元へ行ったりというのを続けていました。そして、父が亡くなる1年前まではまだ私の母が生命保険の受取人だったのですが、亡くなる半年前くらいから急に住所だけを変えたりしていて、亡くなってから生命保険会社に電話したところ、父の生命保険は有効ではないとだけ言われました。何度聞いても受取人などは教えてもらえませんでした。私はその彼女が受取っているのではないかと勝手に思っているのですが、それを調べることは出来ないのでしょうか?また、もしも、その彼女が受取人になっていた場合訴えることは出来ないのでしょうか?

 葬式代も喪主も私がやりました。父が一人暮らししていた家の片付けも私と私の母がしました。その彼女は父が亡くなってから一切連絡はなく葬式にも参加していないし、お骨にさえ手を合わせておりません。本当に父は一人が嫌な人だったのでいつも彼女の言いなりのような状態でした。そんな彼女に生命保険を渡したくありません。
 何か方法はないのでしょうか?


記載内容

  内縁 生命保険 無断 変更

(みるく)


【法定相続人なら生命保険の調査は可能】
 あなたは法定相続人ですので、被相続人であるお父さんの契約していた生命保険の調査は可能です。
 ただ、あなたの質問には「生命保険会社に電話したところ、父の生命保険は有効ではないとだけ言われました。」「何度聞いても受取人などは教えてもらえませんでした。」と記載されています。
 電話だから教えてくれないというのかもしれません。
 あなたとしては、相続人であることを証明するあなたの戸籍謄本やお父さんの除籍謄本を用意し、文書で申し入れをしたとしても、回答してくれないのかどうかを、保険会社に再度、確認するといいでしょう。
 それでも回答してくれないというのなら、保険会社側に開示できない、何らかの事情があると思われますので、弁護士に生命保険の内容を調査するように依頼するといいでしょう。
 ある程度、弁護士費用が掛かりますが、弁護士に依頼すれば、お父さんの生命保険があるのかどうか、その受取人がどのように変遷したのか、又、保険会社が無効という内容など、プロである弁護士が保険会社に照会をし、確認をしてくれるでしょう。

【彼女を訴えることができるかはお父さんの意思能力次第】
 保険契約の受取人を契約者の意思で変更することは可能です。
 変更当時、お父さんが正常な判断能力(意思能力)をもっており、受取人を彼女に変更したのであれば、なんら法的に問題はなく、彼女を訴えることはできません。
 逆に、お父さんに正常な判断能力がなかったのであれば、受取人の変更の意思表示は効力がありません。
 そのため、変更前の受取人であったお母さんから彼女に対し、受け取った生命保険金の返還請求訴訟ができます。
 正常な判断能力があったかどうかについては、お父さんが生前に通っていた病院のカルテや介護施設の記録などを取寄せて判断することになります(相続Q&A №347、「【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」参照)が、訴訟なしで解決するような問題ではないと思いますし、カルテ等の判断にも専門的な知識が必要になります。
 相続に詳しい弁護士に調査を依頼し、必要に応じてその後の手続きも依頼するといいでしょう。

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16:24 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

死亡退職金と特別受益【Q&A №404】

2014/10/15
 法律婚の妻より、遺留分減殺が特定記録であり。被相続人と私との未成年の子供三人宛の請求。
 法律婚は、生命保険、死亡退職金で3200万受取。
 二十年間別居、音信なし。

 財産分与として、別居期間中4200万支払い。
 離婚調停一回。弁護士による離婚交渉一回。

 居宅固定資産税による評価900万。時価評価2000万。私の持ち分3/40。
 37/40は相続による子供たち3人に均等持ち分登記済み。
 その他の相続財産は、預金等800万。

 特別受益持ち戻しが認められ、出来れば改めて子供たちに遺産分割される方法はないものか、お伺いいたします。

記載内容

別居 死亡退職金 内縁 特別受益 生命保険
(ハナ)


【相続で事実婚はどこまで保護されるのか】
 今回の問題は、婚姻(法律婚)をしていた男性(以下、Aさんということにします)と長年にわたり生活を共にし、しかもAさんとの間に3人の子供を出生されていた女性の方(以下、あなたということにします)からの質問です。
 今回の問題は、《相続において事実婚の方がどこまで保護されるのか》という問題を含んでいます。
 結論から言えば、事実婚である限り、保護は極めて薄いということです。

【妻に遺産が行かないのなら、遺留分を請求できるが・・】
 まず、あなた方が遺留分減殺請求を受けたというのですから、Aさんは遺言をし、あなたの子供らに不動産を相続させることにされたようであり、当然のことながら法律上の妻には何も相続させないという内容だったのでしょう。
 ところで、婚姻をしていた妻の立場からは当然遺留分減殺請求がされることが想定されるケースです。
 妻の遺留分は4分の1ですので、遺言により子供らに所有権移転された37/40は、4分の1の限度で妻に相続されることになります。

【財産分与分を特別受益で遺産にもち戻しはできないか】
 あなたの対場から言えば、別居しており、しかも多額の《財産分与》(離婚していないのでおそらく婚姻費用の支払いのことでしょう)をもらっている妻にそんな請求ができるのかという気持ちだと思います。
 しかし、相続の上では、戸籍だけの妻であったとしても、法定相続分2分の1ですし、遺留分減殺請求は4分の1であり、これは妻が長年別居していようが、関係なく認められます。
 《財産分与(婚姻費用)》も多額であっても、それは贈与ではなく、夫婦関係から発生する夫の扶養義務であり、特別受益にはならないでしょう。

【生命保険は特段の事情がない限り、特別受益とはならない】
 生命保険金を妻が受け取ったようですが、生命保険は特段の事情がない限り、相続財産にはなりません。
 ただ、遺産総額と比較して多額と思われるような場合(ある裁判例では遺産額の約60%が目途)なら、遺産に持ち戻される場合があるにとどまります(相続Q&A №298をご参照ください。)

【死亡退職金は相続財産かどうかについては意見が分かれている】
① 公務員の場合
 死亡退職金というのはさまざまな意味でつかわれますが、この回答では、Aさんが在職中に死亡したために支払われる退職金と理解して回答します。
 まず死亡された人が公務員の場合には、退職金の受取人は法律の規定で定められています(相続の一般法である民法とは異なる範囲及び順位の人が受け取れる)ので、死亡退職金が遺産でないということが最高裁の判例で確立されています。

② 公務員以外の場合
 今回の質問では、妻が死亡退職金をもらったということですので、Aさんは公務員ではなかったのでしょう。
民間等の企業などで出される死亡退職金については、それが遺産になるか否かいついては見解がわかれており、一律に決定することはできません。
 具体的なケースごとに遺産に入るか否かを判断していくしかないでしょう。
 ただ、一つの判断要素を言えば、死亡退職金は、通常は勤務する支給規定に基づいて支払われるものですので、その規定で民法の定める順位や範囲と異なった規定が定められているようなら、遺産でない(ということは事実婚の方が死亡退職金を受給できる)とされる可能性が高くなるでしょう。
 参考までに言えば、退職金規定で《相続人に支給する》と記載されていたなら遺産になるが、単に《遺族に支給する》と記載されていたのなら、その退職金はあなたのようにAさんの収入により生活をしていた遺族の生活保障を目的とするものであり、あなたのような事実婚の立場の人が受給権を有するとした判例もあります《最判昭和60年1月31日 家裁月報37巻8号39頁》。
 しかし、いずれにせよ、裁判の最終結論は、退職金規定の条文のみだけではなく、諸般の事情を考慮して判断されることになりますので、簡単に結論を出すことはできないと言うしかありません。
 そのため、退職金や、前に述べた生命保険金などを妻が受け取ったのにつき、あなたが納得できないというのであれば、弁護士に具体的な事情を詳細に相談し、回収の可能性を判断して、必要に応じて、事件を依頼するしかないでしょう。
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12:00 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父親違いの姉妹から突然の連絡【Q&A №364】

2014/04/11
 突然のご質問で恐縮です。拙い文章ですが、数々の事例に精通されてる先生にアドバイスをいただければと思い投稿いたしました。
 先日、母(64)から私を育ててくれた祖父母は、育ての祖父母で血の繋がっている実祖母(A)が亡くなっていたと打ち明けられました。実祖母は実祖父と離婚し、別の男性(B)を婿入りさせ、娘(C)がいるのですが、娘(C)から母に男性(B)の生命保険の受取に母の印鑑証明と実印が必要だという連絡があったのです。
 1年程前に実祖母(A)が亡くなり、4ヵ月後に男性(B)が亡くなったと聞いています。娘(C)は嫁いでいるため性は変わっております。 
 娘(C)は母に生命保険と実祖母(A)の預金を受け取る権利があると言っているのですが、これは相続に当たるのでしょうか?
 母は60年全く付き合いが無く、相手のご家族、故人に関してはほとんど知らないので信用は全くありません。ですので、もし相続に該当するのであれば、債務を引き継ぐ可能性があるので、放棄しようと思うのですが、権利関係が複雑すぎてどう対応すればよいのか困っております。

記載内容

父親違い 生命保険
(あっちゃん)


【問題点の整理】
 今回の問題点を整理しておきましょう。
 まず、相続は2つ発生しています。
・最初は1年前に死亡した実祖母であるAさんの相続です・・第1の相続
・次にその後に死亡した、実祖母の再婚相手のBさんの相続です・・第2の相続


 次に生命保険金についても整理しますとおそらく次のとおりになります。
・Aさんが死亡し、その生命保険金の受取人がBさんであった。
 そのため、《生命保険金を受け取る権利》を有していたが、その保険金を受け取っていなかった・・・以上は第1の相続の問題
・Bさんはその生命保険金の受取前に死亡した。
 そのため、Bさんの《生命保険金を受け取る権利》は遺産となり、遺産分割の対象となる・・・以上は第2の相続の問題

【遺産分割における生命保険金の扱い】
 生命保険について少し詳しく説明しましょう。
 生命保険金は遺産にはなりません(Q&A №298Q&A №299参照)。
 そのため、Aさんが死亡した時点では、Aさんのした生命保険契約の受取人がBさんと指定されていると、Bさんが保険金全額を取得します(遺産ではないので、娘さんのCさんは生命保険金を請求できません)。
 すなわち、Aさんの保険契約の結果として、新たに受取人のBさんに保険金受取権が発生することになります。
 ここまでは第1の相続での生命保険金の問題です。
 次に、Bさんが、(Aさんの契約した)生命保険金をもらわずに死亡した場合には、既に発生してBさんが権利を持っている生命保険金を請求する権利を、Bさんの相続人間で遺産分割するという問題であり、この場合の生命保険請求権利は遺産分割の対象になります。
 これが第2の相続における生命保険金の扱いです。
 あなたのお母さんがBさんの養子になっているのなら、Bさんが死亡したことにより発生する第2の相続では、その法定相続人はCさんとあなたのお母さんになります。
 生命保険会社としては、Bさんが生きていて受け取る場合にはBさんだけの印鑑でよかったのですが、そのBさんが死亡したために遺産分割の問題となったので、Bさんの法定相続人であるあなたのお母さんの実印及び印鑑証明を必要としているのだと理解するといいでしょう。

【相続放棄について】
 相続放棄はAさん及びBさんの死亡を知った日から3ケ月以内に家裁に放棄の手続きをする必要があります。
 今回の質問ではAさん及びBさんとも死亡してから3ケ月は既に経過しています。
 そのため、相続期間伸長の手続きをしていない限り、現段階では相続放棄はできません。
 ただ、仮に3ヶ月を過ぎていても事情を説明することで裁判所が相続放棄を受け付けてくれるケースもないわけではありません。
 相続放棄したいのであれば、相続に詳しい弁護士に取り急ぎ、対応を検討されることをおすすめいたします。
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11:47 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡祖母が購入したピアノの所有者は誰か【Q&A №361】

2014/04/02
 10年ほど前に亡くなった祖母が、亡くなる前に私にピアノを買ってくれました。
 3年前に両親が離婚し、父は家に残り母が家を出て、私は母方につきました。ピアノは置き場に困ったことと父が「置いておいてもいい」と言っていたこともあり、その後も買ってもらった当時に住んでいた家(父が住んでいる家)に置いていました。ところが2年ほど前から、父が「このピアノは自分の家にあるんだから自分のものだ。」と主張するようになりました。言われる都度に私も「ピアノは私のものだ。」と主張していたのですが、先日用事で父の住んでる家に行った時にピアノが無くなっていることに気付き、父を問い詰めたところ「売った。あれは俺のものだからお前に売った金の請求権は無い。ここに置いていたお前が悪い。」といったようなことを言われました。また、売って手に入れたお金を何に使ったかを聞いたところ「色々」と口ごもるばかりで答えてくれません。私としてはピアノは祖母の形見でもあったので何とか売った分のお金だけでも取り返したいのですが、この場合は請求することが可能でしょうか?
それとも父の言う通り本当に請求出来ないのでしょうか?

記載内容

生前贈与 横領
(Mira)


【ピアノは誰の所有になるのか・・】
 今回の質問のキーポイントは、《ピアノの所有権は誰にあるのか?》という点です。
 この点により、回答が分かれてきます。

【お祖母さんがあなたに贈与した場合】
 あなたが、お祖母さんからピアノを贈与されたのであれば、ピアノはあなたの所有となります。
 従って、あなたの所有であるピアノを、お父さんに預かってもらっていただけなのに、それを無断でお父さんが売却したことになります。
 その場合、あなたとしてはピアノという物に対する所有権を侵害されたのですから、《ピアノの所有権を侵害された》ということで、お父さんに対してピアノの時価相当の損害賠償請求をすることが可能になります。
 通常の場合、あなたが請求できるのは、お父さんがした売買で受け取った売却代金額です。
 ただし、お父さんが、ピアノを安く叩き売ったのであれば、現実に受け取った売買代金ではなく、それより高いピアノの相当額を請求することも可能です。

【お祖母さんが自分の物と考えていた場合には】
 ただ、お祖母さんとしてはあなたに弾かせることは考えていたにしても、あなたにあげる(贈与)とまで考えていなかったというのであれば、所有権はお祖母さんのものであり、それを相続でお父さんが取得したということになります。
 この場合、お父さんがピアノを売却することについては、なんら問題はなく、あなたが売買代金を請求することはできません。

【所有権の証明はあなたがしなければならない】
 あなたは自分の所有権が侵害されたことを理由として、損害賠償請求をするのですから、ピアノがあなたの所有という点をあなたが証明する必要があります。
 もし、損害賠償請求をするのなら、生前、お祖母さんがピアノについてどのように言っていたのか、又、それを証言してくれる人は誰なのか、証拠集めをしておく必要があるでしょう。
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16:17 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

長年相続登記をしていなかった土地の名義変更【Q&A №356】

2014/03/19
 約20年前に祖父が死亡し相続登記を行っていない不動産があります。
 相続人は祖父の配偶者と長女(実子)と養子です。
 長女と養子は昔の慣わしで結婚+祖父との婿養子として縁組をしていましたが、離婚後に離縁しています。
 長女(実子)に相続登記を行う場合、どのような書類が必要なのでしょうか?
 相続権放棄ではなく遺産分割で全て長女へ分割すればいいのでしょうか?

記載内容

養子 離縁 相続登記 土地
(Hide)


【相続人は誰か・・離縁した養子は相続人ではない】
 遺産分割については、まず相続人は誰かが問題となります。
 誰が相続人になるかは、相続開始時点(被相続人であるお父さんが亡くなった時点)で親族関係で判断します。
 婿養子の方は被相続人の生前に離縁していますので、相続人にはなりません。
 そのため、本件の場合、長女と配偶者のみが相続人になります。
 登記名義を変更するもっとも簡単な方法は、長女と配偶者で遺産分割協議書を作成(作成方法は、「相続コラム:遺産分割協議…話し合いによる遺産の分割」を参照)し、後は司法書士に依頼して、登記の手続きをするといいでしょう。なお、便法として、他の相続人であるお母さんが既に十分に遺産をもらっているので、あなたの単独登記をしてもよい、という同意書的な書面ですますことができる可能性もあり、昔はこの方法をよく使っていましたが、最近は使われていないようです(この点も司法書士に確認されるといいでしょう)。

【相続放棄は難しい】
 相続放棄は家庭裁判所への申立(申述)という手続きが必要です。
 この放棄の手続きは、お祖父さんの死亡を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。
 今回は祖父が亡くなってから20年以上も経っていますので、相続放棄の手続き(家庭裁判所への申述)はできません。
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16:33 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父から名義変更を受けた保険契約【Q&A №350】

2014/03/04
 長男の私は少し離れたところで自分の家族ですんでおり、父は妹と同居しています。
 30年ほど前、妹が子供を2人生み離婚して実家の借家に住んでいたところいつの間にか実家で同居(子供男2人と)するようになっていました。

 父の年齢が80半ばになり、実家の内情を確認したら、

 父が簡易保険をかけており、
契約者が父で被契約者妹、受取人が父、
契約者が妹で、被契約者孫、受取人が妹、
などバラバラで契約し全部父が払っていました。

 昨年の初め、300万円の簡易保険が満期になったときに、バラバラの簡易保険を満期分支払い、約1000万円分契約者と受取人が妹名義に変えてしまっていました。
 約1000万円は妹名義で証書は妹が持っていました。
 父は今も同居しているのでうやむやでしたが、最近は妹にやったと言い出し始めました。

 妹は10年以上無職で子供の大学までの学費を親に出してもらっていることも確認済みです。

 数年後の生活費や約2000万円の簡易保険分は、遺産相続に含むことはできませんでしょうか? また、今準備すべきことはどのようなことでしょうか?

記載内容

生命保険 契約者 被保険者
(マッキー)


【生命保険金は遺産にはならない】
 お父さんが生命保険(死亡保険金)契約をし、その受取人を指定している場合には、その受取人の受ける生命保険金は、原則として遺産には入らないというのが裁判所の扱いです(Q&A №288Q&A №289Q&A №304を参照)。
 これは、生命保険金は、保険契約に基づいて生じる権利であり、お父さんから引き継いだ遺産ではないからです。

【他人の保険金を支払っていた場合】
 但し、お父さんではなく、それ以外の人の名義で生命保険契約をし、その保険金をお父さんが支払っている場合には、お父さんが支払っている保険料が特別受益になる可能性があります。

【契約名義の変更について】
 お父さんの名義の生命保険契約があり、お父さんが保険料を支払っていた場合、その解約返戻金はお父さんの財産です。
 そのような保険につき、契約名義が妹さんに変更された場合、その名義変更の時点で存在していた解約返戻金額がお父さんから妹さんに行くわけですから、その分が特別受益になるものと思われます。
 又、その後の保険料をお父さんが支払っていたというのであれば、その保険料支払い額が特別受益になる可能性があります。

【孫への学費と特別受益だが・・・】
 今回の質問では、お孫さんの学費をお父さん(おじいさん)が支払っています。
 2つの問題が発生します。
 まず、特別受益は相続人間の利害調整の問題であり、贈与を受けた者が相続人の場合に発生する問題です。
 お孫さんは法定相続人ではないので、本来ならば特別受益の問題は発生しません。
 ただ、お孫さんに対する贈与と言っても、実質的に妹さんに対する贈与であるといえるような場合には、法定相続人である妹さんの特別受益の問題が発生します(参考例:Q&A №324Q&A №327、又は【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

【生活費と特別受益について】
 生活費についても、月額10万円程度であれば、お父さんの扶養義務の範囲内であるとして、特別受益と認められない場合が多いでしょう。

【生命保険の経過を確認、記録しておく】
 以上のとおりであり、あなたの方としては生命保険を中心にして、遺産分割の話を進めるのがベストだと思います。
 そのため、現在のするべき事項としては、簡易保険の贈与経過をお父さんや妹さんから聞きだし、それを詳しく確認し、記録に残しておくといいでしょう。
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11:51 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★認知症の父の預金を引き出されたくない【Q&A №349】

2014/02/27
 私の父が認知症を患い介護認定も出てるのに関わらず再婚した義理の母が食事もろくに与えず父を放置した状態で、怒鳴りちらし悪意も感じられ、父親も怯えてる様子で、とても精神的ストレスを感じてるようです。
 財産目的で離婚にも応じず、離婚するなら多額な金額を請求します。
 最近では認知症の父親を連れて役所や銀行周りも始めてるようでこのままでは、財産も預金も取られた上何をされるかわかりません。
 何か離婚以外でも二人を離し父親を保護する方法はないのでしょうか。
 また、すでに認知症の診断書が出てる父を同行して名義変更等が可能というのはいくら父が名前を書けたとしても、無効ではないのでしょうか。

記載内容

成年後見 認知症 義母の預貯金引出
(新潟)


【財産保全としての成年後見】
 相続に関する法律相談で、よく問題になるのが認知症の被相続人の預貯金の引き出しや解約です。
 近親者の方が被相続人の預貯金を勝手に出金していたという問題です。
 今回のように、義理のお母さんがお父さんの財産に手を出している疑いがあるケースは、間違いなく将来における相続紛争の火種があるケースと言えるでしょう。
 そのような場合、お父さんの財産を保全するため、家庭裁判所に申し立てをして、お父さんに成年後見人をつけるという方法が考えられます。
 後見人が選任された場合には、お父さんの財産はすべて後見人が管理することになります。
 預貯金などもすべて後見人の名義の口座に移しますので、義理のお母さんが引き出すことはできなくなります。

【認知症はどの程度かが問題】
 お父さんは認知症のようですが、どの程度かが問題になります。
 全く判断能力がない(たとえば、自分の名前や子どもの名前も出てこない、家族か他人かも区別できない、簡単な計算もできないなど)ケースもあれば、衰えているが一部判断能力が残されている状態の場合もあり、程度によっては後見人がつけられない認知症もあります。
 その程度が判断する一つの基準としては長谷川式認知スケールというテストがあります。
 お医者さんにこのテストをしてもらって、10点以下(満点は30点です)の場合には後見人がつけられる可能性があります。
 後見人は全く判断能力がない場合ですが、そこまでではない場合にも、後見ではなく保佐や補助といった制度があり、これも家庭裁判所に問い合わせれば詳しく説明をしてくれます。

【弁護士などの第三者が後見人になる可能性も】
 通常は近親者の方が後見人になることが多いのですが、今回のように家族間で金銭管理が問題となっているケースでは、被後見人(お父さん)に財産がある場合には司法書士や弁護士などの専門家が、又、財産が少ない場合には家族と関係のない第三者が後見人になることになります。
 いずれにせよ、後見人が選任されれば、義理のお母さんも勝手にお金を引き出すなどの行為ができなくなり、お父さんの財産は守られることになります。
 一度、お近くの家庭裁判所に問い合わせていただき、後見や保佐、補助といった制度についてご確認いただくとよいでしょう。

【後見人選任申立の問題点】
 後見人の申立には、前項で述べたようなテストや診断書が必要です。
 そのようなテストができるのか、義理のお母さんが反対しないかがまず問題になるでしょう。
 次に、後見人を選任する場合、義理のお母さんにそのような申立が出ているという通知が裁判所から行きます。
 この通知を見て、後見人が選任されるまでの間に、預貯金が一挙に引き出される可能性もあります。
 後見人は、選任されてからはしっかりした管理をするでしょうが、選任以前の引出分まで取り戻してくれるかどうかということですが、通常は選任前の出金についてはあまり動かない人が多いようです。
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14:18 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

養育費は遺留分から控除できるか【Q&A №314】

2013/09/11
 
主人は再婚です、子供一人いて離婚し、私と結婚しました。
 私たち夫婦には、子供はいません。
 別れた子供が、高校卒業後、専門学校へ行く学費を2年間 毎月6万送金しました。
 この度、遺言書を作成しました。
 遺留分で、その分差し引いて貰えますか。


記載内容

養育費 学費 未成年 特別受益 専門学校

(あさちゃん)


【扶養義務の履行は特別受益に当たらない】
 父親は子に対して養育義務がありますので、養育費として相当な金額の支払いは、特別受益にはなりません。
 養育費としてどの程度が相当かは、家庭裁判所で用いる次のような養育費算定表がありますので、ご主人の収入を前提にこの表で判断されるといいでしょう。(養育費・婚姻費用算定表
 本件で問題となる専門学校の学費は、養育費としての送金だと思われます。
 そうすると、未成年者に対する父親としての扶養義務の範囲内での送金として扱われる可能性が高く、扶養を超える特別受益となることは少ないです。

【遺留分でも考慮されない】
 養育費が特別受益になった場合には、遺留分の算定の際にその受益分が遺産に持ち戻され、遺留分として受け取ったという扱いになります。
 しかし、前記のとおり、毎月送金した金額を特別受益とするのは難しいので、子どもの遺留分を減らすことはできないでしょう。
 参考までにいえば、学費で特別受益に該当するには、私立の医科大学・医学部のように多額の入学金や高額な学費を支払った場合などのかなり特別な事情が必要でしょう。


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10:21 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

借金を残して失踪した父の遺産調査【Q&A №305】

2013/08/12
 ・相続財産の有無の確認・請求・回収方法
 ・療養中に名義変更された財産が相続財産の対象になるか

<経緯>
 昨年実父が他界(住所は滋賀県)
 私(東京在住)と弟(6年前他界)と妹(東京都在住)は、両親離婚後母の籍に入っている。
 離婚時、父には多額の借金があり、連帯保証人に母がなっていた。離婚成立後、父が失踪、借金は母と私が返済した。
 弟の葬儀に父が出席。借金は返済し終えたことと、弟の遺産放棄手続きのため携帯電話に住所・電話番号を登録。
 父は離婚後、再婚しており、再婚相手の籍にはいった。
 昨年危篤の連絡と、亡くなった旨を電話で現妻から受けたが後、連絡なし。
 今年6月にこちらから配達証明郵便で
「相続財産目録もしくは、財産の明細が判る書類を写しでよいので書面にて送ってほしい」旨を郵送。
 配達記録にて受け取ったことは確認できたが連絡がない。住所しかわからず、電話などの連絡先不明。
 父名義の財産について入院中に名義変更された可能性あり。

<希望>
 母が入院費用捻出の為、相続財産を明らかにしてもらい、相続分があるなら相続したい。
 借金がありマイナスになるなら放棄したい。
 わかっているのは、父の再婚相手の現住所のみ。
 現妻は、父の電話を使って危篤の連絡をしてきているので、こちらの連絡先しっている。

 調査は不可能または、無駄でしょうか。

記載内容

簡単な遺産調査法 借金返済 名寄帳 公正証書遺言 相続放棄期間の伸長


(母子家庭の長女)


【質問を見た感じでは・・・】
 質問では、
①離婚成立当時、お父さんには多額の借金があった。
②お父さんは再婚相手の籍に入った(要するにお父さんは苗字を変えた)。
と記載されています。
 それだけ見ると、お父さんは借金も自ら返済する能力がなかった、債権者から追及を逃れるために苗字を変えた、という可能性も考えられ、多額の遺産がある見込みは少なく、借金がかなりあるのではないか、という可能性があります。
 債務超過の場合には相続放棄の手配をする必要があります。

【簡単な遺産調査方法】
 ただ、上記①及び②だけでは、まだ、お父さんの遺産がないとは確定できません。
 簡単で費用もそれほどかからない方法としては次のようなものがあります。

①お父さんの住んでいた家屋が自己所有か賃借かを確認します。
 この点は建物の登記簿謄本(全部事項証明書)を見て判断するといいでしょう。
 自己所有であれば、遺産がある可能性があります。
 ただ、その建物に抵当権登記が多数付けられていたり、税金その他の差押えの登記があったりすれば、結局かなりの借金がある、あるいは税金も支払えない状況だということになります。

②居住家屋が賃借の場合には、賃料が高そうな物件かどうかを現地調査やネットを利用して調査するといいでしょう。
 高そうな物件であれば、その賃料を払うだけの資力がある⇒遺産がある可能性が高くなります。

③ お父さんが公正証書遺言をしているかどうかを調べるのも一方法です。
 これは相続人であれば調べることが可能です(調査方法は相続コラム「公正証書遺言の検索及び確認について」 参照)。
 もし、公正証書遺言をしているのであれば、そのような遺言をする必要のある財産を持っている可能性が高くなります。

【本格的な遺産調査をするときは、相続放棄期間の延長を申請する】
 本格的な遺産調査には時間がかかります。
 相続放棄の期間は相続開始を知って3ケ月以内という短期間ですので、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長願いを出しておく必要があります(この点は、相続コラム「相続放棄期間の伸長」 参照)。

【本格的な遺産調査の方法】
 一般的に、遺産の中心は不動産と預貯金や有価証券です。
 不動産の調査は名寄帳の取り寄せが必要です(この点の詳細は、相続コラム「名寄帳の取り寄せ」 参照)。
 また、被相続人であるお父さんの利用していた金融機関(支店名まで必要)がわかれば、取引履歴を取り寄せ、遺産額を確認するとともに、不正出金がないかどうかを確認するといいでしょう(この点の詳細は、Q&A №98参照)。

【信用情報の調査も必要】
 借金の有無や額の調査も必要です。
 この点については信用情報機関(JICC・CIC・全銀協など)に問い合わせて確認するとよいでしょう。
 このように結局、遺産のうち、資産部分と借金の双方を確認して、相続放棄をするかどうかを判断されるといいでしょう。


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11:49 遺産の調査・発見 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

愛人に貢ぐ父も母の財産を相続するのか【Q&A №302】

2013/07/23
母は認知症で父と二人暮らしをしていましたが、母が認知症になる数年前から父は愛人を作り、母が認知症になってから勝手に母の通帳から年金や貯金を引き出し、愛人に貢いでいたことがわかり、母親を施設に移し、まだ残っていた母親の財産を父の手に届かないところに移しました。父は家族に発覚してからも愛人との関係は続けており、このような父に母親の財産を相続させたくないのですが、いい方法はございませんでしょうか。

記載内容

愛人 相続権 認知症

(TAT)


【認知症でも意思能力がある場合には遺言書を作成する】
 今回はお母さんが認知症ということですが、認知症の程度が軽く、意思能力がある(成年後見人をつける必要がない)というのであれば、遺言書を作成し、配偶者である夫以外の人に遺産を相続させると記載するといいでしょう。
 ただ、この場合でも、お父さんは配偶者ですので、遺留分減殺請求をすると、遺産の4分の1はお父さんが取得することになります。

【意思能力がない場合には父が遺産の2分の1を相続する】
 認知症の程度が重く、意思能力がないという場合には、遺言書を作成できません。 
 お父さんが認知症のお母さんのことを顧みず愛人に貢いでいるという話ですが、それでも離婚せず、戸籍上で夫となっている限り、お父さんはお母さんの相続人になります。
 そのため、お母さんが死亡すれば、お父さんがお母さんの遺産の2分の1を相続します。

【欠格事由も見当たらない】
 離婚以外にお父さんが相続権を失う方法としては、欠格という制度があります。
 しかし、これはお母さんを殺したり詐欺や脅迫により遺言をさせたりしたなど、かなり重大な事由がない限り簡単には認められません。
 お母さんの介護を全くしなかったとしても、欠格事由には該当しません。

【廃除の可能性があるかもしれない】
 そのほか、お母さんに対して虐待を繰り返し、あるいは重大な侮辱を加えた、または著しい非行があった場合、お母さんとしては、お父さんの相続人の地位を喪失させる廃除の申し立てを家庭裁判所にすることができます。
 愛人に貢いでいるというのが著しい非行になるかどうかですが、推定相続人廃除の申立てを認容した次のような裁判例があります(本件の場合、引用した判例ほどひどいケースかどうかは明らかではありませんが、参考にはなるでしょう)。
《参考判例:賭博行為を繰り返して作出した多額の借財をすべて申立人(被相続人)に支払わせ,かつ,妻子を顧みず,愛人と同棲して同女との間に男児をもうけ,愛人との生活を清算する意思もない推定相続人の行為は、「著しい非行」に該当する》

 なお、この廃除の申立は被相続人の専属権(被相続人本人だけができ、それ以外の人は申立できない)である可能性も高く、もし、この前提が正しいとすると、お母さんが認知症で意思表示ができないとなれば、この申立も難しいでしょう。


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14:25 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

見えない借金と限定承認【Q&A №286】

2013/06/19
 亡くなった父の遺産相続です。
 マンションの2分の1の相続と見えない負債に相続するべきか悩んでいます。信用情報を調査し、カードローンの代位弁済がわかり、債権回収会社を調べて支払金額が100万ほどありました。この負債については、父の母が死亡退職金をもらっているので、支払いを済ませています。同じように数社に残っていた借金も死亡退職金から支払いを済ませ、調べた借金は完済しています。
 本来、単純に相続すればいいのですが、離婚して生活を共にしていない私は不安でいっぱいです。まずこのような状況で、限定承認の申し立てが可能なのでしょうか。もし負債がある場合、マンションは競売になるのでしょうか?半分は私の母が所有権をもっており、父の母が居住中です。奨学金の返済のため、父の死亡退職金の一部をもらい、500万弱手元に現金があります。どうぞよろしくお願いします。

記載内容

死亡退職金 限定承認 負債調査
(ノラ黒)


【限定承認をするために必要な要件】
 限定承認とは、遺産があまったら、その余った分だけ相続をし、負債が多い場合には、遺産の限度で支払いをし、それ以上の債務を負わないという制度です。
 この限定承認をする前提として次の要件を満たしている必要があります。

① 相続開始を知って3ケ月以内であること。
② 相続人が複数いる場合には、相続人全員が限定承認の申請をしなければならない。


 これらの要件を満たしている場合には限定承認の申請をすることができます。
 ただ、遺産の金銭から支払いをするという単純相続に該当するような事実があれば限定相続はできませんが、質問の場合、遺産ではない死亡退職金からの支払いですので、限定承認は可能だと思われます。

【限定承認の手続をする人は少ない】
 限定承認は、家庭裁判所に限定承認の申請、債権者への公告、財産の換価と債権者への弁済などをはじめとする一連の煩雑な手続をする必要があります。
 加えて、限定承認の場合に、相続で移転される不動産については、相続税の扱いではなく、不動産譲渡税が課税されます(対象不動産の取得価額や取得費用等を控除した差額の約20%)。
 このように手続きが複雑で、かつ税務上の不利益もあり、限定承認をする人は極めて少ないのが実情です。
 それでも限定承認をするというのであれば、法律の専門家である弁護士に依頼するといいでしょう。

【金銭での支払いができない場合には競売される】
 相続債務があり、それを金銭で支払いできない場合には、不動産が競売されることになります。
 但し、競売の対象となるのは、遺産に含まれる不動産である持分2分の1(お父さん名義の分)のみです

【どこかで決断をしなければならない】
 本当は、お母さんが得た死亡退職金からの支払いの前に、限定承認の手続きをするかどうかを判断するべきでした。
 相続開始から3ケ月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長願いを出して、時間を稼ぎ(通常3ケ月程度の延長をしてくれます)、その間、新たな債務請求がないのであれば、単純承認をするというのが妥当な解決案でしょう。
 その間、新たな債務の請求があったのであれば、その債務の額と遺産とを比較して、支払いをするか限定承認をするかを検討されるといいでしょう。
 いずれにせよ、現実には100%安心して相続を承認することは不可能ですので、どこかで見切りを付け、相続放棄や限定承認などの安全策を重視するか、遺産のメリットを重視するかの決断をせざるを得ないでしょう。


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長年別居の妻の相続権【Q&A №284】

2013/06/19
 相続

 妻が別居6年家裁で家族調停が決まり夕食を作る家族の平和を守るの決定が出た。
 無視して家出以後交流なしでしたが夫が癌で余命1年と宣告されたら突然夜買のごとく家に入り1週間目です。夫の名義預金2000万と死亡保険金が目当てです 妻の住所が6年住民票付表を取るまでわからなかったが籍が入っているから預金は妻のものでしょうか?
 夫は少し判断力がないが後見制度は難しいかもしれない位考えは支離滅裂ですが長い時間一緒でないと医者は判断できないと思います。あくどい財産狙いどうしたら宜しいでしょうか?
 私は夫の家族です

記載内容

別居 保険金 遺言

(犬)


【別居していても、戸籍上の妻が相続人になる】
 たとえ長期にわたり別居していたとしても、結果として離婚をしていないのであれば、妻は第1位の相続人であり、預金の相続権を有します。
 妻が家に戻る方向での調停が成立していたにも関わらず、これを無視して同居せず家出をしていた点をみれば、感情的には許しがたいという気持ちもわかります。
 しかし、相続は戸籍を基準にして相続人を判断するので、離婚していない以上、戸籍に記載された妻が相続分2分の1を取得するのはやむをえないという結論になります。

【保険金は受取人の指定による】
 死亡保険金は、原則として遺産ではありません。
 そのため、相続とは関係なく、保険契約で指定された受取人が保険金を取得します。

【遺言書を作ってもいいかもしれない】
 お父さんは《少し判断力がないが後見制度は難しいかもしれない位》とあります。
 長谷川式認知スケールなどで検査をし、その点数が15点前後であれば、遺言をする能力があったと判断される可能性もありますので、思い切って遺言書を作成するといいでしょう(長谷川式認知スケールと意思能力関係については、当事務所作成の相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介を参照ください)。
 なお、遺言書を作成する場合には、遺言書をできるだけ簡単な内容にしておく必要があります。
 将来、妻側が遺言書の効力を争った場合、遺言書の内容が簡単なら、お父さんでも理解できた(遺言能力があった)とされる可能性が高くなるからです。
 また、遺言書については、公証人が関与する公正証書遺言をお勧めしますが、そのような時間がないなら自筆の遺言書でも残しておくといいでしょう。




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息子への死亡通知義務と死後の処理をする弁護士【Q&A №282】

2013/06/14
先日、役所から亡くなった父親の税金の支払い依頼書が届き、約1年程行方の分からなかった父の死亡を知りました。死亡日から10日程経ってからです。
 親戚に問い合わせると親戚は父の死亡を知っており、なぜ教えてくれなかったのか聞くと、父が生前契約した?弁護士が報告しなくてもいいといったそうです。
 すぐにその弁護士の番号を教えてもらい問合せると、父が息子には知らせないでくれと言ったようです。
 その弁護士が言うには、相続に関しての遺言はなく、現在父の負債や通帳整理の処理中との事でした。
 しかし遺言がないのであれば、母は離婚してるので息子の私に相続権がある事になりますよね?その相続権のある息子に死亡通知義務のようなものはないのでしょうか?
 整理が終われば全て報告して通帳も負債もお渡ししますと言われましたがイマイチ信用できません。
 最近は電話をしても出てくれないので確認したいことも確認できない状態です。
 このまま通帳などの処理をこの方におまかせしてもいいものでしょうか?
 ご教授お願いします。

記載内容

債務整理 相続人への通知義務 弁護士と連絡できない 成年後見


(noruno)


【弁護士の立場は・・】
 弁護士がお父さんの遺産の整理をしているようですが、弁護士がどのような立場でそのような作業をしているかを確認する必要があります。

【債務整理の委任か?】
 委任を受けたというのですから、お父さんが債務整理を弁護士に委任し、その関係で通帳などをその弁護士に預けていたということも考えられます。
 この場合、お父さんが《死亡しても息子に知らせないでくれ》といったのであれば、弁護士としては、あなたに死亡を知らせる義務はないでしょう。
 ただ、財産を預かっている弁護士としては、お父さんの死亡後は、お父さんの財産が相続人のものになるわけですから、いずれ相続人に連絡をし、財産を引き渡す必要があります。

【ひょっとすると後見人かも・・】
 その弁護士がお父さんの成年後見人である可能性もあります。
 もし成年後見人であった場合には、お父さんが死亡したことに伴い、成年後見が終了します。
 成年後見人は、被後見人であるお父さんの財産管理が主たる業務ですが、お父さんが死亡した場合、その遺産を相続人に引き渡す義務があります。
 ただ、質問にあるような《お父さんが死んだ場合に、相続人にすぐにその死亡を通知するべき義務》まではないと思われます。
 後見人である弁護士としては、遺産を整理した段階で、相続人に遺産を渡す手配をすればよいということになるでしょう。

【今、するべきことは・・】
 まず、弁護士と連絡を取り、その弁護士が財産を管理している根拠を確認し、相続人にいつ財産を渡してくれるのかを確認しましょう。
 もし、弁護士と連絡が取れないのなら、その弁護士の所属している弁護士会に電話して、《その弁護士と連絡が取れない》ということを訴えるといいでしょう。
 弁護士会のほうで、その弁護士に連絡を取るようにと伝えてくれる可能性もあります。
 それでも弁護士と連絡が取れない場合には、あなたのほうも別の弁護士に依頼して、その弁護士から連絡を取ってもらうという方法もあります。



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16:21 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

30年間音信不通だった父の借金【Q&A №281】

2013/06/11
肉親の借金と遺産相続についての相談です。
 つい先日、親が離婚してから、30年間一切音信不通だった実の父が死去したと、「父が借りていたサラ金」から封筒が届きました。
 内容は「親の借金残高が4万円あります。遺産を相続するしないに関わらず、同封されている書面を当社に送ってください。」という物でした。勿論 借金の連帯保証人になっていません。

 以上の条件で質問が幾つかあります。
・法律的には遺産を相続しない、かつ、借金の連帯保証人でなければ、親の借金は返す必要がないのでは?
・父親が実際 死去しているのかを確認するには?また、その死因は?
・父親の遺産、借金が幾らあるのか?
・生命保険などには加入しているのか?

という事項です。
 私が真っ先に考えたのが、「遺産相続権が無効になる1年間、放置。」 という考えです。

 念頭にあったのは
・借金が1社で済んでいるのかの危険性。
・遺産といっても殆どないだろうという目論見。

ですが、リスクとして
・もしも遺産が借金よりも多かった場合、損をする。
・時間が経てば借金が膨らみ、その勢いでサラ金が違法な取立てを行う危険性。

などがある為、詳細を知らないと最終判断が出来ません。
 とりあえずは父が死去した市役所で戸籍謄本などを習得するという事です。
 何か対策、または対応法があれば、御知恵を借りして頂ければ幸いです。

記載内容

音信不通 借金 保証人


(昴はすばらし)


今回はいくつか具体的な質問を頂いておりますので、一つ一つ回答していきます。

【質問】法律的には遺産を相続しない、かつ、借金の連帯保証人でなければ、親の借金は返す必要がないのでは?
【回答】法律上、遺産を相続しないためには、「死亡を知ったときから3ケ月以内に、家庭裁判所にて相続放棄の申述手続を行う」必要があります。
 すぐにお近くの家庭裁判所に連絡していただき、相続放棄手続についてお聞きいただければ手続の方法などを教えてくれます。相続放棄期間内に相続放棄の手続をすれば、借金を返還する必要はありません。
 ただ、遺産調査をするために時間がかかるというのなら、相続放棄の期間を延長してもらう手続をすれば、3ケ月程度の期間延長をしてもらうことが可能です。

【質問】父親が実際 死去しているのかを確認するには?また、その死因は?
【回答】お父さんの戸籍を本籍地の市役所にて申請されることで死亡の確認が可能です。
 死因については、死亡された病院などを探し、問い合わせするしかないでしょう。

【質問】父親の遺産、借金が幾らあるのか?生命保険などには加入しているのか?
【回答】遺産調査の問題ですが、基本的にお父さんの利用していた金融機関(支店名までわかる必要があります)がわかれば、そこに問い合わせをするといいでしょう。
生命保険については生命保険協会に問い合わせをするといいでしょう。
 音信不通で、そのような金融機関がわからないというのであれば、戸籍附票や住民票などを調査し、判明したお父さんの最後の住所地などにある金融機関の支店などに照会をするしかないでしょう(なお、郵便局については、どこの郵便局かを特定しなくとも照会が可能です)。
 サラ金業者などについては、お父さんに来た通知などを参考にして、その業者に一つ一つ問い合わせていく作業を繰り返すしかないでしょう。

【1年間放置しても無効にならない】
 「遺産相続権が無効になる1年間、放置。」 というような法律はありません。
 相続放棄をせずに放置していると、相続人としてお父さんの債務を請求されます。
 早めに財産や債務の調査をし、必要に応じて、相続放棄の手続きをしましょう。


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父の遺産を使い込んだ姉【Q&A №269】

2013/04/16
 父、母、私名義1/3づづの土地が有りました。父が死亡して遺産相続手続きはしていませんでした。5年後母が悪徳不動産に借金をしその後、母は破産し、返済できない分を競売にかけられた、土地の母の所有分1/3を悪徳不動産とられ(共有財産となり)、残りの父の所有分1/3を、唯一の姉妹である、姉が、私の同意もなく、法廷相続分の権利申告をし、自分の物としていました。姉1千万円ほどと母はその他全て、父の遺産現金部分ををすでに自分たちの生活の処理(姉は離婚裁判費用など、母は自分の借金くめんなど)に使い果たしていました。
 このような行為は法的に許されるのでしょうか?私が弁護士などを通して訴えれば、父の最後の遺産を私が全て処分する権利は得られるのでしょうか?
 因に、土地の権利書は姉が勝手に隠し持っていて、自分の弁護士に渡して処理をお願いしているからと返してくれません。私にはなにもするてだてはないのでしょうか?

記載内容

不正出金 使い込み 偽造
(こもも)


【相続分の確認】
 お父さんの共有持ち分3分の1は、遺言などがなければ、お母さんの法定相続分が2分の1ですので、お父さんの持分3分の1の半分である6分の1を、お母さんが相続することになります。
 お姉さんとあなたは法定相続分がそれぞれ4分の1ですので、お父さんの持分3分の1の4分の1である12分の1を、それぞれ相続することになります。

【あなたの相続分をなぜ取得できたのか】
 今回の質問では「父の所有分1/3を、唯一の姉妹である、姉が、私の同意もなく、法廷相続分の権利申告をし、自分の物としていました」と記載されています。
 しかし、なぜお姉さんはあなたの相続分(12分の1)を取得できたのでしょうか。
 お姉さんが、お父さんの持分を全部相続する遺言があったのであればともかく、そうでなければ、あなた及びお母さんの同意(さらには印鑑登録証明書も)が必要です。
 あなた達がもし、お姉さんに騙されて印鑑証明書を渡したというのであれば、詐欺などが成立する可能性があります。
 また、お姉さんがこれらの書類をあなたの知らないうちに偽造したということであれば、有印公文書偽造(さらには私文書偽造)等の刑法上の犯罪に該当しますし、相続登記が無効であるとして移転登記の抹消請求をすることができます。

【現金について】
 お父さんの遺産のうち、現金部分についても、前記のとおり、お母さんが2分の1、お姉さんとあなたがそれぞれ4分の1を相続で取得することになります。
 従って、あなたとしては、お姉さんやお母さんに対して、あなたの相続分に相当する現金の引き渡しを求めることができます。
 遺産である現金をお姉さんやお母さんが勝手に使ってしまったとしても、残念ながら親族間の問題として処罰されることはありません。
 返還請求をすることは法的には可能ですが、お母さんが借金を重ねた結果破産したというのであれば、お母さんに返還請求しても返金されることはないでしょう。
 結局、お姉さんに対して、あなたの相続分に相当する金額の返還を求めるしかないでしょうが、お姉さんが返金してくれる可能性も質問を見る限り少なそうです。

【遺産からの返還が現実的である】
 お父さんの遺産として預金などが残っているのであれば、そこから返還を受けるのが最も現実的な解決です。
 ただ、注意するべきことは、あなたが弁護士に依頼しても、お父さんの残された財産が、当然に全てあなたのものになるわけではありません。
 遺産分割調停や訴訟をして、使った分に相当する預金分などを引き渡せという手続きをした場合、その解決方法として、預金など、残された遺産があなたに相続されるようになることをお姉さんなどが認めることがあるというだけです。

【登記の移転を防ぐためには仮処分をする】
 お姉さんが、お父さんの持分3分の1を勝手に自分名義にしたということですので、お姉さんがその持分を第三者に譲渡する可能性がないわけではありません。
 それを防止するためには、弁護士に依頼して《不動産持分の移転を禁止する仮処分の手続》をしてもらうといいでしょう。
 この手続きで、お姉さん名義になったあなたの相続分(お父さんの共有持分の4分の1)について、売却処分などの権利移転を防止することができます。
 質問の事実関係でわかりにくい点もありますし、法律的に整理をする必要もありますので、いずれにせよ、早めにお近くの弁護士に相談されることをお勧めいたします。


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