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遺留分請求には相続放棄で良いのでしょうか?【Q&A №632】

2018/11/26


【質問の要旨】

遺留分減殺請求と相続放棄

記載内容  遺留分 相続放棄 特別受益 

【ご質問内容】

いつもこちらのブログを拝見し、相続について色々と学ばせて頂いております。
その中で遺留分というのは、法律で保証された最低限の取り分であるという認識でいるのですが、私の中で「遺留分でさえも相続放棄には敵わない」のではないかという気がしてなりません。

例えば、被相続人の財産(プラスの財産、マイナスの財産どちらも)がほとんど無い一方で、それまでに相続人の一人が何千万もの生前贈与を受けていたとします。
そうすると、何千万もの生前贈与が特別受益となり、この相続人は他の相続人から遺留分減殺請求を受ける可能性がでてくるかと思います。
そこで、この相続人は、被相続人の「ほとんど無い遺産」を相続するより、いっそのこと相続放棄を行い、はじめから相続人でなくなれば、他の相続人から遺留分減殺請求を受けずに済むのではないかと思うのです。

私の安易な考えですが、もしこれが可能なら先に述べた「遺留分さえも相続放棄に敵わない」が現実になってしまい、法律が保証する意味がなくなってしまうのではないかと思っています。
実際は、相続放棄を行う事で遺留分減殺請求を免れることは可能なのでしょうか?

632


(テルオ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【遺留分算定の基礎となる財産】
遺留分算定の際には、相続開始時に被相続人が有したプラスの財産に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して算定します(民法1029条)。
このとき加算される贈与の範囲は、次のとおりです。
① 相続開始前の1年間になされた贈与(民法1030条前段)
② 遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条後段)
③ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
④ 特別受益としての贈与(最高裁裁判例 リンク:【相続判例散策】特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?

【特別受益というのは、相続人に対する贈与】
上記のうち、特別受益というのは、相続人に対して、被相続人から生前になされた贈与又は相続開始後になされた遺贈のことを言います。
民法の条文には、特に記載はないのですが、相続人に対してなされた贈与については、相続開始1年前か否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべて遺留分減殺の計算の際の基礎財産に加算されます。

【相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされる】
ただ、相続放棄をすると、その効果として、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
そのため、生前に多額の贈与を受けた上で相続放棄をされてしまうと、その方への贈与は、上記④特別受益として遺留分算定の基礎に加算することはできません。
その結果、上記①相続開始前の1年間の間になされた贈与又は②遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与として遺留分の基礎に入れられないかを考えるしかありません。
したがって、あなたが考えておられるように、相続放棄をすることによって遺留分減殺請求を免れるということは、やりようによっては可能ということになってしまいます。
ただ、上に述べたような結論には当事務所の弁護士間で異論があります。
今回のようなケースで、遺産が1000万円しかなく、その全部をAが生前贈与を受けた後、相続放棄をすると、あなた方はAに遺留分減殺請求は一切できないことになります。
しかし、もともと、特別受益分を持ち戻すというのは条文にはないのに、最高裁が《公平の観点》から認めた制度です。
上記のケースでAが相続放棄したので、遺留分請求はできないというと、多額あるいは全部の遺産の生前贈与を受けた人にも遺留分請求できないという結論になります。
しかし、これはあまりに公平を害します。
遺言書などである人が全部の遺産を相続できると記載されていても、最低限度の遺産を他の法定相続人に取得させるというのが遺留分制度です。
この点を考慮すると、相続放棄しても、その人の生前贈与分は遺留分減殺の基礎財産になるというのが公平な結論であり、裁判にでもなればそのような結果になるということも考えておく必要がありそうです。

(岡井理紗、大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
17:53 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【相続判例散策】特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?最高裁平成10年3月24日(平成9年(オ)第2117号)

2018/11/26
特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?

最高裁平成10年3月24日(平成9年(オ)第2117号)

【ケース】

亡Aの相続人であり遺留分権利者であるBらが、Aからその生前に土地の贈与を受けたCらに対し、遺留分減殺請求権を行使し、Cらに帰属した土地の持ち分についての移転登記手続を求めた事案。
原審ではAの財産が減少するおそれはなく、遺留分権利者であるBらに損害を加えることを知ってされた贈与ではないとして、遺留分減殺の対象にならないとの判決であった。

【裁判所の判断】

民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である
けだし、民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法1044条、903条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法1030条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。

【弁護士のコメント】

被相続人が遺言で相続人の一人に多くの財産を遺贈した場合に、財産を相続できなかった相続人は、遺留分減殺請求権を行使し、一定の財産を受け取ることができます。
それと同様に、遺言でなく生前であっても、被相続人が特定の人物に多額の贈与をし、相続時には財産がなかったというようなケースでも、財産を相続できなかった相続人は、遺留分減請求が可能な場合があります。
遺留分減殺の際には、相続開始時に被相続人が有したプラスの財産に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、対象財産を算定します(民法1029条)。
このとき加算される贈与の範囲は、条文上は、次のとおりです。
① 相続開始前の1年間になされた贈与(民法1030条前段)
② 遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条後段)
③ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
この判例では、相続人の一人に対する贈与である特別受益の場合には、相続開始1年前か否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべての贈与分が遺留分減殺の計算の際の基礎財産に加算されるという判断がなされました。
これは、相続制度が遺族の生活保障という機能を有していることに鑑み、相続人の公平と保護を図ろうとの趣旨で遺留分減殺請求権が認められていることから、特別受益を期間や内容で限定してしまうと、遺留分制度の趣旨を没却するという理由でなされた判断です
特別受益制度と遺留分制度の性質を考慮した判断で、妥当なものであるといえます。
大澤龍司法律事務所
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17:45 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

このケースで遺留分の請求はできますか?【Q&A №631】

2018/11/13


【質問の要旨】

遺留分減殺請求の可否

記載内容  遺留分 贈与 遺言書 

【ご質問内容】

父が亡くなり、これから父の遺産相続について話し合いを行うのですが、相続人は兄と私(弟)の2人です。
父は6年間、兄と同居していました。その後亡くなる迄の4年間は私が引き取りました。
父が認知症となり、兄が面倒を見ることを放棄したからです。
引き取って、父の残高が少な過ぎることに気づき兄に聞いたら「贈与された」と言って父の自筆で書かれた覚書のようなものを提示してきました。
それには「〇(父)は〇(兄)に500万円贈与します。」と書かれていました。
父の自筆で書かれていたので、モヤモヤした気持ちでしたが反論できませんでした。
実際に兄の口座に送金されていました。
それから、何とか頑張ってみたのですが、父の入院などもあり、亡くなった時の残高は50万円しかありませんでした。
先日、遺言書が見つかり、そこには「残った遺産は〇(私)に全部あげる。」と書いてありました。
すると兄が「遺留分」ということを言い出し「12万5千円は俺に権利がある」と言うのです。
調べたところ「法定相続分の2分の1」との事でしたので、兄の言う事もあながち間違いではないのかと思います。
その一方で「兄さんは7年前に500万も贈与してもらっているのに。」という気持ちもあります。

そこで教えて頂きたいのですが、やはり兄は遺留分を受け取る事が出来てしまうのでしょうか?
そして、遺留分という制度は、前述の500万の贈与を考慮してはくれないのでしょうか?

631


(コウキ)



 ※敬称略とさせていただきます。


【兄の遺留分の問題ではなく、逆にあなたが遺留分を請求するケース】
すべての遺産をあなたに相続させるという内容の遺言書があったのに対して、他の相続人である兄が遺留分を請求してきたということですが、今回の案件では兄は遺留分を請求することはできません。
むしろ、あなたが遺留分の請求をすることができます。

【遺留分計算のしかた】
他の相続人が兄だけですので、あなたの遺留分は4分の1です。
問題は、遺留分を計算するときの前提となる遺産の範囲です。
死亡時に残っていた遺産(本件では50万円)だけではなく、生前の贈与も遺産に加算して、遺留分計算します。
今回の質問の場合、
死亡時の遺産:50万円+生前の兄への贈与:500万円=550万円
が、遺留分計算の基礎財産になります。
額は550万円であり、兄の遺留分は、その4分の1の137万5000円となります。
ただ、兄はすでに生前に500万円をもらっていますので、遺留分額を超えた財産をもらっており、兄は遺留分を請求できません。

【むしろあなたが遺留分減殺請求をすべき】
あなたも遺留分は4分の1の137万5000円です。
しかし、あなたは50万円の遺贈を受けただけですので、遺留分に達する金額をもらっていないということになります。
そのため、あなたは。遺産の50万円を全部もらう意外に、兄からさらに87万5000円を請求することが可能です。
法律では生前贈与を遺留分計算に算入するためには、相続開始前の1年間の贈与か、あるいは遺留分侵害を知って贈与された場合に限定されています。

(参考:民法第1030条)
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。


しかし、これまでの裁判所の判例(外部リンク:最三小判H10.3.24(民集52巻2号433P))で、法定相続人が生前贈与を受けるなど、特別受益がある場合には、当然に遺産に持ち戻して、遺留分計算をすることになっています。

【遺留分の請求は原則、相続開始から1年以内】
遺留分減殺請求は、原則として、相続の開始の日から1年以内にすることが必要です。
そのため、あなたが兄に遺留分請求をしたいのなら、この1年の期間が経過しないうちに、早急に請求をしたという証拠が残る内容証明郵便で、遺留分請求をされるといいでしょう。

【生前に不審な出金はないか、念のために調査する必要がある】
なお、今回の事案では、あなたがお父さんを引き取った際に、預金残高が少ないと感じられたとのことであり、500万円の贈与の他にも、兄が出金した金員がある可能性もあります。
お父さんの預貯金の取引履歴を取得し、使途不明な出金がないかどうかは、念のため調査された方がよいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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13:42 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

誰も相続手続きしていない亡父の土地、家の扱い【Q&A №628】

2018/10/29


【質問の要旨】

遺言による登記を放置した父の家

記載内容  遺言 登記 放置 


【ご質問内容】

20年前に父が亡くなり、現金は母と3人の子供で分けましたが、母の住む家土地は父名義のままです。

10年程前母がこの土地と家(1600万程)を可愛がっている地元に居る私の二男に相続させると遺言状を書いて私に渡されました。

私は母2分の1、子供が残り2分の1を3人で分けて6分の1ずつになる。と思っており、母が亡くなった場合、他の2人の兄弟には6分の1ずつの代金を支払えば済むかと思っておりました。

しかし、母が亡くなった場合、相続の手続き放置したままの父の土地家は母を飛び越えて3人で3分の1ずつで相続する事になると聴きました。

そうなら、母が私の二男にこの土地、家を相続させると書いた遺言状は意味が無いのでしょうか?

折角、母が可愛い孫に書いてくれた遺言状ですが、私が勝手に放棄すると罪になる様ですし、開示するには他の相続人も集めて家庭裁判所で開封と聞き、他の兄弟は不満に思うでしょうから、面倒な事になったなと思っております。

母が亡くなった場合、この遺言状に書かれている事は有効でしょうか?無効でしょうか?

追記
母は5年程前より認知症になり、今は相談出来る状態では有りません。
5年前より、ホームへ入り、家は空き家になっております。
よろしくお願い申し上げます。

628


(悩ましいです)



 ※敬称略とさせていただきます。

【父の名義の不動産の所有関係】
父は20年前に亡くなっていますが、その遺産分割がされていません。
そのため、父名義の不動産は
  母・・・2分の1
  3人の兄弟・・・それぞれ6分の1
で所有(共有)していることになります。
登記が変更されていなくとも、相続が発生した段階で当然に上記のような相続分に応じて、所有権が移転されていることになります。

【相続登記していなかった不動産はどうなるか】
父の死亡後、相続登記がされていなくとも、相続が発生した段階で当然に上記のような相続分に応じて、所有権が移転されていることになります。
そのため、母が亡くなったときには、母の持つ共有持ち分は(遺言書がなければ)母の相続人である子3人に3分の1ずつ相続されます(正確にいうと、母の持ち分が2分の1ですので、子3人は母からは不動産のそれぞれ6分の1ずつ相続することになります)。

【遺言書がある場合の母の死亡時の所有権】
母が、孫(あなたの二男)に不動産を相続させるという遺言書を書いたということですが、母は不動産全部を持っていません。
そのため、遺言書は母が現在、持っている2分の1の共有持ち分の限度で有効になります。
もし、母の相続が開始した段階では、不動産の所有関係は
  3人の兄弟・・・それぞれ6分の1
  孫(あなたの二男)・・・2分の1
ということになります。

【遺留分減殺請求も考えられる】
母の相続人はあなたを含めて子3人です。
子には遺留分減殺請求が可能ですので、もし、それを行使すると、あなた以外の他の子は、母の遺産につき6分の1の遺留分権を有していることになります。
減殺請求後の不動産の所有関係は次のとおりとなります。
  あなた・・・父からの相続6分の1(遺留分を行使しない前提です)
  他の2人の兄弟
      ・・・父からの相続分それぞれ6分の1+母の遺留分減殺相当分12分の1(=6分の1×2分の1)
  孫(あなたの二男)・・・12分の4

【まとめると次の結論になる】
遺言書は有効ですが、もともと母は2分の1の持ち分しかなかったので、孫分しか孫(あなたの二男)に行きませんし、その分も他の2人の母の子が遺留分減殺すると、その分、持ち分が減るということになります。
大澤龍司法律事務所
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13:07 相続財産 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

遺留分対象のマンション売却について【Q&A №625】

2018/10/22


【質問の要旨】

遺留分減殺請求後の不動産売却

記載内容  遺留分 不動産売却 同意書 


【ご質問内容】

遺留分対象の中古マンション売却についてご質問がありメールしました。宜しくお願い致します。

父が他界し、相続が発生。相続人は先妻の子(4名)と後妻の計5名です。
公正証書遺言があり預金は後妻と先妻の子らで折半、中古マンション(1部屋)は後妻相続(名義は後妻変更済)となっています。

現在、相手方代理人とFAXを使い話し合っています。
マンション売却について相続終了まで売却代金を相手方代理人口座で預かる事を条件にマンション売却に同意しました。
相手方代理人より不動産売却について署名捺印の同意書(売却予定金額2000万円と瑕疵担保責任免責が記載)の提出を求められています。
売却には同意したのですが、同意書の提出は同意したつもりはありません。

相手方代理人は、同意書がないと相続人5名のうちの誰かが途中で売却を中止してくださいと言った場合、買い手から5名に対して損害賠償請求される可能性があるから同意書がないと売却できないと主張しています。
現在、相手方にマンション売却の一時中止をお願いしていますが、相手方はマンションを売却中です。

ご質問

①こちらは相手方作成の同意書を提出しないと損害賠償を請求されるのでしょうか。

②相手方代理人が辞任や解任された時は、売却代金が後妻に行ってしまう可能性が分かったので、売却中止を求めると相手方より損害賠償等の請求をされる事はあるのでしょうか。

625


(雪男)



 ※敬称略とさせていただきます。

【後妻はマンションを単独で売れる】
父の死亡後、遺言書でマンションは後妻の単独名義になっています。
後妻以外の相続人(あなたを含む)は、売却代金を後妻の弁護士が預かることを条件に、後妻がマンションの売却をすることに同意しました。
以上の前提で考えると、後妻としては単独でマンションを売却するについては、何ら法的な障害はありません。
そのため、後妻としては、サッサと単独で契約し、その代金を弁護士が預かり、その後、これを他の相続人に分配するということで問題が解決するということになります。

【なぜ、同意書が必要なのか】
法的には同意書を出す必要はありません。
ただ、売買に関連する仲介業者としては、後妻以外の他の相続人が売買の邪魔をしない保証が欲しいのでしょう。
質問にははっきりとは記載されてはいませんが、おそらく、他の相続人としては遺留分減殺請求権を行使できる(あるいはした)立場にあります。
そのため、業者としては、売買契約締結の途中でそのような権利主張がでてきたら、契約が中途でストップする、そのようなことがないように同意書が欲しいと言ってきたのでしょう。

【法的には原則、同意書を出す必要はない】
あなたが同意書を出さなければならない法的な理由はありません。
ただ、気になるのは、弁護士が売却代金を預かることを条件にマンションの売却をすることに同意したようですが、その際、私なら、合意内容を文書化しておきますし、その中で《後妻以外の相続人は売買に協力する》という内容に加えて《売却に必要な書類の作成に協力する》との一文をいれておきます。
もし、これがあれば、あなたは同意書を作成する義務があります。
以上の前提で買主からあなたへの損害賠償を考えてみると次のような結論になります。
① あなたが、協力義務があるにもかかわらず、同意書を提出しないというのなら、後妻から債務不履行だということで損害賠償ということもありえます。
② もし、相手方弁護士が辞任あるいは解任された場合には、売買代金をその弁護士が預かれなくなった場合なら、代金の確保ができません。
そのため、売却に協力しないことが可能であり、その場合には損害賠償を受けることはないでしょう。
参考までに言えば、買主が損害賠償を請求するのは、売主である後妻に対してであり、あなたに損害賠償を請求することは考えにくいです。

【文書化されていなければ、この際、文書化をする】

今回のような売却代金を預かるという形で遺産を売却する場合に、一番、リスクが高いのは、後妻が代金全部を使うことでしょう。
そのリスクを避けるため、代金を弁護士が預かるということにした、弁護士の信用を担保にしたということでしょう。
ただ、弁護士が預かるということが売買契約を認める前提条件であるとの点は明確に証明できている必要があります。
もし、まだ、文書化されていないのなら、この際、同意書の提出と引き換えに弁護士預かりが条件だと明確に文書化するといいでしょう。

【リスクを回避するなら、処分禁止の仮処分】
次に、その弁護士が信頼できる人でないと将来の分配が心配になります。
仮にその弁護士が信頼できるとしても、後妻がその弁護士を解任した場合、弁護士は後妻に金を引き渡すのではないかという不安は消えません。
現在の業者は同意書を要求しているのでしょうが、そのような同意書なしで売却する業者も多いです。
もし、あなたが、後妻も弁護士も信頼できないというのであれば遺留分減殺を理由として、遺留分の限度で売買できないという内容の裁判(処分禁止の仮処分の申立)をされるといいでしょう。
この裁判が出ると、遺留分の限度であなたの登記が付き、あなたへの支払いが確保できます。
ただ、裁判が出るためにはいろいろな要件がありますので、是非、相続に強い弁護士と相談されるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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17:47 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

死亡保険金を叔母に横取りされた【Q&A №624】

2018/10/18


【質問の要旨】

死亡直前に書き換えられた保険金

記載内容  生命保険 受取人 変更 


【ご質問内容】

今から2年前に母から遺言書作った話は聞いていました。
内容は聞いてませんが、死亡保険金の受取人は私にしてあると聞いていました。
ところが、亡くなる2日前に叔母から呼ばれていくと、公正遺言書を見せられ、これがあなたの分よ。と通帳など
渡されましたが、その中には生命保険の証書がなく、解約したのかな?くらいに思っていましたが、税理士に全体表を見せられたとき、何で叔母に生命保険金が全部行ってるのだろうと、保険会社に問い合わせたところ、一社から亡くなる直前に受取人の変更があったことがわかりました。
受取人変更請求が、あったとされる日は、母は入院中であったため、本人がやったのではないと思います。
叔母に横取りされた保険金は取り戻すことは可能ですか?
出来るならその方法が、知りたいです。

624

(ルル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生命保険金は遺産に含まれない】
今回は母の公正証書遺言があったにもかかわらず、生命保険が財産の中に含まれていなかったということで疑問を感じておられるようです。
しかし、一般に死亡保険金は法律上、遺産には含まれておりませんので、遺言に記載されることはまずありません。
特に今回は公証人が関与している公正証書遺言ですので、仮に母が間違って生命保険を遺言に記載したいと述べたとしても、公証人が訂正するでしょう。
つまり、生命保険が遺言書に載っていないこと自体は特におかしなことではありません。

【入院中でも受取人変更が可能なことがある】
ところが、あなたが税理士から見せられた全体表(おそらくは相続税申告用の遺産目録)には生命保険の記載があり、しかもそのうち一社の保険については受取人が死亡直前に叔母宛に変更されたようです。
この受取人変更の時期に母は入院中だったとのことですので、あなたとしては「母に無断で変更された無効な受取人変更である」と争いたいところでしょう。
しかし、入院には様々な理由がある(意識不明の重体もあれば、意識はしっかりした病気やケガもある)ため、単に入院中だからということで、受取人変更がすべて無効になるとは限りません。
実際の訴訟では、入院先の病院から医療記録や看護記録を取り寄せ、入院の理由や入院時の判断能力や意識状態を細かく検討していくことが必要となります。
その上で、やはり母には生命保険の話を理解し、受取人変更の手続きを取る(=書類にサインをする)ことができない状態であったということをあなたが証明して、初めて、叔母に変更された生命保険の受取人変更が無効であったと認められ、変更前の受取人が(あなたであれば)保険金を取り戻すことができるでしょう。

【療養中や入院中でも手続きを行うことがある】
この点に関し、最近では銀行や保険会社(さらには遺言を作成する公証人)は、本人の意思確認のため、入院先の病院や療養中の自宅に出向いて手続きを行うことがあります。
特に、高齢の方で先行きを心配される状況の場合、周囲の方が手配をして遺言作成や入院費捻出のための預金解約手続きなどを行われることがあります。
そのため、入院中であっても受取人変更の手続きが行われた可能性があります。
あなたとしては、前記の通り受取人変更が行われた前後の医療記録を取り寄せ、その当時の判断能力の有無についての判断を医師などの協力を得て、早急にされるといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
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17:19 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺留分放棄の請求【Q&A №623】

2018/10/18


【質問の要旨】

遺留分放棄をするべきか

記載内容  遺留分放棄 家業 撤回 


【ご質問内容】

実家が自営業をしています。
長男が家業や家を守っていかないといけないと言う理由で、遺言書には、一切の財産を長男に。そして公正証書として残しておくと言われました。
それと、今のうちに遺留分放棄をしてくれと求められました。(長男は継ぐ事に前向きではありません)
ある程度の金額を提示されたものの、現時点で資産がいくらあるのかをしらされておりませんので、遺留分相当の額なのかも、不明です。
昔から、父はモラハラでハンコ押さないと今後の付き合いや財産は一切お前に与えないようにすると脅されました。
しかも、父と母の二人分の遺留分放棄と言われ、納得がいきません。果たして、両親ともの遺留分の放棄は出来るのですか?
また、遺留分放棄を撤回するのは、難しいと書いてありましたが、家庭裁判所で条件がつけられたり、こちらから長男が必ず家業を継続しているという条件や資産が嘘であった場合など、公正証書に残すとか。
有効な手段はありますか?
このままでは、親子関係、兄弟関係が悪くなってしまいます。

623


(トオル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【相続開始前の遺留分の放棄は可能です】
生前の相続分の放棄とは相続が開始する前に、あらかじめ遺留分を請求しないということを認めてもらう手続きです。
生前の相続分の放棄はできませんが、遺留分放棄は可能です。    
自営業の資産が細分化されるのを防ぐなど、相続財産の多くを後継者に残す必要性があるため、このような制度が認められていますが、被相続人やその他の人の不当な圧力で加わるような事態も想定されるため、相続開始前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。
裁判所の許可なく、生前に遺留分放棄をした場合、たとえそれが文書などで証明できるようなものであっても、放棄の効力は一切ありません。

【裁判所は、不当な強制を受けていないかを確認する】
生前の遺留分放棄をするには、遺留分を放棄する者が、家庭裁判所に対して、遺留分放棄の許可申立てをすることになります。
遺留分放棄の許可申立を受けた裁判所は、放棄の申立が、被相続人や他の相続人から不当な強制を受けてなされたものでないかという点を審査します。
具体的に言えば、裁判所は、遺留分放棄をする合理的な理由や必要性があるのか、また放棄の申し立てをした人がすでに十分な財産をもらっているのか等が判断材料になります。
許可が出た後は、遺留分を請求することはできません。
但し、法律上は撤回が可能です。

【参考条文:家事事件手続法】
第七十八条 家庭裁判所は、審判をした後、その審判を不当と認めるときは、次に掲げる審判を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。
 一 申立てによってのみ審判をすべき場合において申立てを却下した審判
 二 即時抗告をすることができる審判
2 審判が確定した日から五年を経過したときは、家庭裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその審判を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の取消し又は変更をする場合には、その審判における当事者及びその他の審判を受ける者の陳述を聴かなければならない。
4 第一項の規定による取消し又は変更の審判に対しては、取消し後又は変更後の審判が原審判であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。


しかし、裁判所の立場から言えば、一旦、決定を出した以上、簡単には生前の遺留分放棄の許可を撤回しません。
撤回のためには、放棄した人が、生前の放棄の許可を撤回するだけの事情の変化があったことを説明し、かつ証明する必要があります。
遺留分放棄の判断の前提になっていた事情が変更になり、遺留分放棄の状態を維持することが客観的に見て不合理・不相当になれば、裁判所が職権で放棄許可審判を取り消すことができることになっています。
そのため、仮に放棄の申立をする倍、その前提としてどれほど財産の開示を受けていたのか、わかる資料を裁判所にも提出し、また、自分自身も保存しておく必要があります。
いずれにせよ、遺留分放棄も許可が出た後はそれを撤回するかどうかは裁判所の判断ということになり、前もって合意をしていたからといって認められるわけではありません。
家族関係のこともあるようですので、法律的なことだけで結論を出すことはできませんが、可能であれば、生前の遺留分の放棄はできるだけしない方がいいでしょう。

【納得してから遺留分放棄の許可申立をすべき】
現段階では、あなたは、資産もわからないままに対価を示され、放棄を一方的に求められているようです。
ただ、上記に述べたとおり、一度遺留分放棄の判断をしてしまうと、それを取り消すためには、事情が変更になったとして裁判所の判断が必要になり、簡単ではありません。
そのため、遺留分放棄をする前に、資産の内容の開示を受けた上で、長男が家業を継ぐために、対価をもらって遺留分放棄をすることが妥当かを検討し、納得できる内容であれば、遺留分放棄の許可申立てをするということにすべきです。
なお、申し立てに際して、父と母の分は別々に申し立てる必要がありますが、別々に申し立てれば、双方について遺留分放棄をすることは可能です。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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15:32 遺留分 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

父親の相続対策について【Q&A №618】

2018/09/11


【質問の要旨】

遺言を使用した場合の相続税対策および遺留分

記載内容  遺言 不動産 相続税

【ご質問内容】

標記内容についてですが、父は現在老人ホームに入所し、1年になります。脳梗塞が原因での入所になりましたが、最近覇気が無く、認知症も発症してきている状況です。
家族構成は、父親、母親(自宅で1人暮し)、同じ敷地内に私(長男家族)、近所に父親との共有名義で次男、三男が、その土地にそれぞれ自宅を建てています。
敷地内には、4所帯の2階建てのアパートがあります。
この様な状況での質問です。
①遺言書(自筆)を使用すべきか。
遺言書の存在は、私と母親のみ知っていますが、内容には、長男に母屋、アパート、預貯金等を相続させ、次男、三男はそれぞれの土地を相続との内容です。
ここで心配な点は、母親の取り分が記載されていない(私に高額な相続税がかかる)ことです。
仮に遺言書を使用かつ、母親にのみ相続法定分の2分1を申請させることは可能でしょうか。
この様な場合、次男、三男にも6分1づつになるのでしょうか。また、現在次男、三男の土地が遺留分を満たしているかの確認や遺産分割協議は、次男、三男が申し出ない限り、する必要はないのでしょうか。
②現在の相続税(概算)と次男、三男の遺留分の確認
②に関しては、どちらで確認できるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

618

(キンカン)




【遺言書を使用した場合、虚偽の申告になる】
遺言書とは異なる内容の申告(遺言書では財産をもらわないはずの母が相続税の申告では2分の1を取得する)というようなことが可能かという質問です。
母は配偶者ですので相続制上、優遇されており、その相続した財産が遺産の2分の1以下であれば、原則、相続税の課税はありません。
あなたとしては、不動産は遺言書のとおりにもらって、相続税の申告では母の優遇税制を使用するという形で、あなたの相続税をなしにあるいは軽減することはできないかという考えをお持ちのようです。
ただ、結論から先にいいますと、そのような手法で相続税を軽減することはできません。
なぜなら、父の不動産をあなた名義に移転登記をした場合、その登記がなされたことは法務局で国税庁に通知されます(不動産の移転登記は全て税務署に通知されることになっています)。
そのため、あなたが遺言書に基づき、不動産の移転登記をした場合、その登記については国税庁は把握していることになります。
そのため、登記とは全く異なる内容の、母が2分の1を取得したということを前提とした相続税の申告書が出てきた場合、税務署は必ず、税務調査を開始します。
結局は、あなたは真実の権利関係と異なる申告をして、虚偽の申告をしたことになり、不申告加算税や延滞税を課される可能性が極めて高いです。

【遺産分割協議をする必要はあるか?】
相続人全員の同意がある場合、遺言書と異なる内容の遺産分割協議をすることは可能です。
但し、一旦、遺言書に基づいてあなたの名義に移転登記した場合には、税務署は遺産分割は既に終了していると扱うことが多いです。
そのため、その後に法定相続人全員が同意して遺産分割協議書を作成しても、税務署としては、それは、遺産分割協議に基づくものではなく、新たな不動産の移転として譲渡税課税をしてくる可能性がありますので、ご注意ください。

【遺留分減殺請求を満たしているかどうかの確認について】
二男及び三男の取り分が、遺留分を満たしているかどうかについては、遺産全体と二男及び三男の取り分とを比較して、各遺留分である12分の1に達しているかどうかで判断します。
ただ、生前の特別受益があれば、その分が遺産に持ち戻され、遺留分算定の基礎になることがありますので、その点も注意されるといいでしょう。

【相続税対策について】
父に認知症が出てきたということですが、認知症が軽度であれば遺言書の作成が可能です。
現時点で父の判断能力を確認したうえで、能力があるというのであれば、相続税節減の方策を税の専門家である税理士に確認された後、遺言書を書き換えを考えられるといいでしょう。
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14:00 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続財産開示について【Q&A №615】

2018/08/28


【質問の要旨】

生前の解約と取引履歴開示

記載内容  一部解約 明細 開示

【ご質問内容】

父は3年前に逝去、今年、母が逝去し、子供(長女・次女・長男)の3人が相続人です。

父の遺産は銀行の遺産信託で管理されていましたが母の場合は 母名義の銀行預金のみで、これについては 遺産分割についての遺言もエンディングノートもありません。

長男が母生前に 母名義預金を一部解約して自分名義にしていたらしいことがわかりました。

この自分名義口座から 母の老人施設費用、葬儀費用などを支払っていたようです。

Q1: 相続税対策のつもりだったかもしれませんが、これは正しいことでしょうか?

Q2: 母名義の口座の一部解約は2年近く前ですが、一部解約の明細は開示してもらうことはできるのでしょうか?

Q3: 長男名義になってしまった 元母名義口座の分については今後、どのような手段が可能でしょうか?

ご回答およびアドバイスを宜しくお願いいたします。

615

(パドミニ)





【正しいかどうかという質問について】
今回の質問の1は《正しいかどうか》という極めてユニークなものです。
遺産相続という法律(民法)では、遺産に属するかどうか、また、請求できるかどうかという場面で考えますので、正しいかどうかという観点で考えることはほとんどありません。
もし、あえて回答するなら次のとおりとなります。
① 母が自分の解約し、長男名義にすることを認めていたかどうかが、まず、問題になります。
 認めていたのなら、解約および長男名義への変更については何ら問題はなく、不正はありません。
 もし、母に無断でしたのであれば、不正ということになります(刑法という法律で処罰されるかどうかについてはQ&A №584をご参照ください)。
② 母が認めていた場合でも、それが長男への贈与であるのか、それとも長男に預けただけなのかという問題があります。
 もし、贈与であれば、生前にいくら贈与するかは母の自由であり、不正の問題は生じません。
 ただ、金額が基礎控除の110万円を超えるのであれば贈与税の申告が必要であり、それをしていないのなら、税務的には不正になります。
 また、仮に預けたのであれば、母のために使った分を控除して、残った残額を遺産に戻す必要があります。
 その返還分(返還請求権)は遺産ですので、相続税申告をする場合に記載しないと税務的には不正ということになるでしょう。

【解約預貯金の開示請求について】
母の生前に解約された口座の情報(取引履歴など)について、相続人が調査できるのかという点については裁判例があります。
平成23年8月3日に東京高裁で、被相続人の生前に解約された口座の取引履歴の開示を求めた事案で、「金融機関は、被相続人の生前に解約された預金口座の取引履歴を開示すべき義務は負わない」との内容の判決が出ています。
これは、金融機関としては、生前に、預金者による解約後に、従前の取引経過や解約の結果を報告しているので、それだけでよく、相続人に対しては開示義務はないというものです。
(最高裁の平成21年1月22日の判例で、法定相続人であれば被相続人の取引履歴の開示を求めることができると判断されていることとこの判例が矛盾しないのか、という問題がありますが、この点は判断が難しいところです)。
ただ、銀行によっては、相続人であることを示して開示を求めれば、開示をしてくれるところもありますので、開示請求はすべきでしょう。

【法律的に見た場合の問題点―不正出金か、または特別受益】
今回の質問を法律(民法)的にみると次のとおりの問題点を指摘することができます。
①一部解約が母の意思に反してなされた場合、無断出金として、母は長男に返還請求をすることができます。
ただ、母の用途に使われた分は、請求から控除し、残額を各法定相続人が相続分に応じて取得(相続)しますので、その分を長男に請求することになります。
②母の意思に基づくのなら、贈与なのか、それとも預けたのかが問題になります。
贈与なら、その分は特別受益として、遺産に持ち戻して計算することになります。
預けたのなら、母の用途に使った分以外を長男は返還する必要があります。
正確に言えば、母の用途に使った分を控除した残額につき、各法定相続人はその相続分に応じて返還請求ができます。
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09:49 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

混同により損害賠償請求権や遺留分は消滅するのか?【Q&A №614】

2018/08/27


【質問の要旨】

不正出金の責任も遺言で消滅するのか

記載内容  不正出金 混同 損害賠償

【ご質問内容】

原告(長男)は母に遺言書を書かせ相続し、被告側(三男)が生前母の治療保険金を不正費消したと損害賠償請求を起こしました。

被告側は全て治療費など母の費用に使用した主張。

被告は原告が母の生前多額の預金を不法に取得している事を反論し、原告の不法行為が認められ各相続人が損害賠償請求権があり、被告の遺留分を侵害していて、原告の訴えは全て棄却されましたが控訴してきました。

原告は控訴理由書にて不法行為でも損害賠償請求権は各相続人は取得するが、遺言書において母は全財産を長男に渡すと書いてあり、また混同で消滅するので、母が他の相続人に贈与する事を希望していないので遺留分も無いと主張してきました。

お聞きしたい事は

1、不法行為で損害賠償請求権を各相続人は取得すると思いますが、遺言書において母は全財産を原告に渡す(他の相続人を排除する事や目録含め具体的な事は書いていない)と書いてあり、原告分は混同で消滅すると思いますが、他の相続人に相続する
事を希望していない事と同様なので、混同によって他の相続人の損害賠償請求権や遺留分も消滅すると主張していますがそのような事は考えられるのでしょうか?

2、母が長男の事業の為に渡したと生前に言っている証拠がある場合、損害賠償請求権は無くなって、生前贈与となり特別受益と考えられますか?

614

(マッチ)





【他の相続人が取得するはずの損害賠償請求権が消滅するのか】
まず、本件では相続人が長男・二男・三男の3人とし、3分の1ずつ相続する場合を想定して回答します。
まず、《混同》とは、権利を持っているものが、義務を負う場合、権利と義務が同一の人に帰属するため、権利と義務がなくなるというものです。
義務が負う者が、権利を取得する場合にも同様に《混同》により権利義務がなくなります。
さて、今回の質問は、遺言があるので少しややこしいケースです。
(1)遺言がない場合と(2)遺言がある場合に分けて、混同で権利義務が消滅するかどうか、説明していきます。

(1) 遺言がない場合の混同について
遺言がない場合に不正出金による損害賠償請求権がどう相続されるのかを述べておきます。

①長男が母の預金の不正取得をしたのなら、母は長男に対し損害賠償請求権をもつ。
長男は母に対して損害賠償支払い義務を負う。
②母の死亡により相続開始すると、母が長男に対して有していた損害賠償請求権は、全相続人がその相続割合に応じて、分割相続する。
③上記②の分割相続の結果、・長男(相続分3分の1)は、母の損害賠償請求権の3分の1を取得する。
④長男は、損害賠償請求権全額の支払義務者でもあるので、相続した請求権(3分の1)の限度で、長男の損害賠償請求権は消滅する。
⑤しかし、残りの3分の2の損害賠償義務は消滅せず、他の相続人が請求をしてきた場合、その支払いに応じなければならない。

(2) 遺言がある場合の混同
①相続財産を全て長男に相続させる」という遺言がある場合、
母の有する損害賠償請求権はすべて長男に相続されます。
②長男は損害賠償全部の支払義務がありますが、①の結果、その請求権の全部を取得しますので、権利と義務の全てを取得するので、損害賠償請求権の全部が混同で消滅します。

【遺留分減殺請求権行使した後の混同について】
ところで長男以外の人が遺留分減殺請求権を行使した場合、このケースなら二男と三男がその遺留分(各6分の1。2人合計で3分の1)の限度で、損害賠償請求権を取得します。
そのため、長男としては、遺留分減殺の対象とならない3分の2の請求権を相続し、その限度で損害賠償請求権は混同で消滅します。
しかし、二男と三男が遺留分減殺で取得した3分の1については混同はせず、二男と三男に支払いをする必要があります。

【長男に対する生前贈与の扱い】
母が生前にその意思で長男に贈与した財産があれば、原則として特別受益になります。
長男の事業のために贈与したということなら、生計の資本としての贈与であり、特別受益になります。
法定相続人に対する特別受益であれば、遺留分を計算する際の計算の基礎となる相続財産に持ち戻されます。
なお、特別受益の場合、相続開始の1年以上前であっても、遺産に持ち戻されます。
その結果、二男・三男の遺留分が増えます。
 
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12:06 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産の対象と遺留分について【Q&A №612】

2018/07/13


【質問の要旨】

全遺産を遺贈する遺言があるが、遺留分はどうなるのか

記載内容  全遺産 遺贈 生命保険

【ご質問内容】

母が亡くなりました。父はすでに他界しているため、相続人は弟と私(姉)の二人です。

母は身体が不自由だったため、25年私が身の回りの世話をし、その後5年前に弟が母を引き取りました。(弟とは訳あって絶縁状態です)

母の死後、半年経っても相続についての連絡がないので、問い合わせると、公証役場で作成したすべての財産と権利を弟に相続させる、という内容の遺言書コピーが送られてきました。

また遺言執行者を弟に指名しているため、母の財産の一部を残し、すでに口座名義等を弟のものへ変更しておりました。

遺留分減殺請求を考えております。
下記は遺産の対象となるのでしょうか?

① 弟家族への生前贈与
  弟、妻、子、孫2(幼児)5人それぞれ×100万×5年間=2500万

② 一時払い生命保険の掛け金1000万
  契約者、被保険者、受取人すべて弟 
  弟から上記は遺産の範囲に含めないと主張されているのですが、納得できません。
  また、遺言書作成後の上記贈与の場合、遺留分侵害を分かっていた生前贈与と考えられないでしょうか。

612

(はな)




【遺留分減殺請求ができます】

今回のように遺言で、遺産が他の相続人(弟)に全部いくような場合には、遺産をもらえない相続人(あなた)は遺留分減殺請求をすることができます。
法定相続人が子2人なら、減殺請求で遺産の4分の1をもらえます。

【すべての生前贈与が遺産になるわけではない】

問題は、遺留分計算の前提となる遺産の範囲です。
法律では、すべての生前贈与が遺産になるとはされていません。
遺留分の計算上、遺産に組み入れられるのは次の2つの場合です。
①相続開始前の1年間になされた贈与
②1年を超える前の贈与であっても遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされたもの

【特別受益は1年以上前でも遺産に入る】
ただ、法律には記載されていませんが、裁判所は共同相続人の特別受益になるような生前贈与については、相続開始時から1年を超える生前贈与でも遺産に入るとしています(最高裁平成10年3月24日判決)。
その結果、母の遺産の共同相続人の立場にある弟への生前贈与は、1年を超える分でも遺産に組み入れられます。

【共同相続人以外の者に対する贈与は原則、遺産に入らないが・・】

弟の妻、その子や孫は、共同相続人という立場ではありません。
そのため、このような立場の者に対する生前贈与は相続開始の前、1年間のみに限って、遺留分の基礎財産には組み入れることができます。
ただ、特別受益に関する判例には、《実質上、相続人(弟)にしたと同視できる生前贈与は特別受益になる》としたものがあります(【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

そのため、弟の妻らに対する生前贈与が実質上、弟に対してしたものと同視できるとすれば、生前贈与の時期を問わず、遺産に組み入れすることができるという結論になります。
実質上という判断は諸般の事情を考慮してなされるものであり、簡単には言えませんが、弟とその家族にのみ生前贈与をしており、各人への贈与額が贈与税の基礎控除以内の同額であるというのであれば、実質上、弟に対する500万円の生前贈与を、贈与税を免れるために分割したにすぎないと考えることも可能かもしれません。
ただ、遺留分の分野は相続でも最も難しいところであり、かつ、特別受益であるかどうかが大きな論点になるケースです。
相続に詳しい弁護士に詳しい事情を説明した上で、その見解をお聞きするのがいいと思います。

【一時払い生命保険の掛け金の扱い】
被相続人が契約した生命保険については、その受取人が共同相続人の一人であっても遺産にはなりません(Q&A №298)。
ただ、今回は、弟が契約者であり、被保険者でかつ受取人であるなら、弟は本来自分が支払うべき1000万円の掛け金を母に支払ってもらったのであり、その全額が生前贈与になり、かつ特別受益に該当すると考えられ、遺留分減殺の対象になります。
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土地を相続 相手企業が地代を法務局供託【Q&A №611】

2018/06/26
【質問の要旨】

相続した土地の地代を供託されたが、供託金を受け取るには?

記載内容  地代 供託 承諾


【ご質問内容】

土地を相続したのですが、兄弟2人で話し合いがつかず、土地の相続ができません。
すると、土地を借りている相手企業が兄弟どちらに地代をしはらっていいのかわからない、といって法務局に供託しました。

1、この場合、供託金を法務局からうけとるには どうすればいいのでしょうか?
全額もらえますか?
もらうとき、兄弟の承諾書は必要ですか?
相続争いのため、兄の承諾はもらえそうにないです。
このままだと、誰も地代をもらえず、ということになるのでしょうか?

2、もらえない場合は、相続分に応じて請求できますか?
土地は父親(死亡)の名義になっていて、最近母親が死亡して、
その母親の遺言書(家裁検認済み)でわたしが全部母親の財産を相続することになったのですが、
この場合、母の法定相続分2分の1、と私の相続分4分の1、あわせて4分の3受け取れるとおもうのですが、
法務局には、母の遺言書とかも一緒にもっていかなくてはならないのでしょうか?
他に持っていく書類はありますか?

611

(オリエンタル)



 ※敬称略とさせていただきます

【賃料は遺産とは別物です】
遺産分割前の賃貸不動産で発生する賃料については、平成19年の最高裁の判決(最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決・民集59巻7号1931頁)で
①賃料は遺産とは別物である
②賃料は各法定相続人が各々の法定相続分に応じて取得する。
と判断されています。
そこで、遺産分割ができていない場合、各法定相続人がそれぞれの法定相続分に相当する賃料を取得する権利があるということになります。

【供託金を還付してもらうために必要な書類】
今回、借主が地代の支払先に困り、賃料を供託したということですが、この供託金についても、あなたの相続分に相当する額について、還付を受けることが可能です(なお、同様の事案において、供託金のうち法定相続分の還付を受けることができると判断した裁判例として、【相続判例散策】供託された株式の配当金、自分の相続分だけ受け取れるか?名古屋高判平成23年5月27日(平成23年(行コ)11号)参照)。

ただ、供託金を還付してもらうには、ご自身が当該土地の相続人である(つまり、当該土地の所有者の一人である)こと及びその相続分がどれだけかということがわかる資料が必要です。
あなたの場合、お父さんが先に亡くなり、次にお母さんが亡くなってお母さんについては遺言書があるというのであれば、具体的には、
①供託物払渡請求書(供託所にも置いてありますし、法務省のホームページにもあります)
②実印と印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)
③戸籍・除籍謄本、遺言書等相続人であることと相続分のわかる書類
が必要になると思われます。
ただ、念のため、法務局に行かれる前に、具体的事情を説明した上で、必要書類を確認されるとよいと思います。

【供託金の全額を還付してもらうには承諾書が必要】
前記のとおり、あなたの相続分のみを受け取るには、必要書類をもって法務局で申請すればよいです。
ただ、全額の還付にはお兄さんの承諾書が必要です。
お兄さんから承諾書がもらえそうにないのであれば、全額の還付を受けるのは難しいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
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代襲相続人謝礼金相場について【Q&A №610】

2018/06/12


【質問の要旨】

遺産を相続しない承諾料(ハンコ代)の相場

記載内容  ハンコ代 承諾料 放棄


【ご質問内容】

父方の叔父が亡くなり、叔父の書いた遺言書により叔母が家、土地、預貯金、生命保険、を相続する事になりました。
司法書士事務所より父が他界しているため遺産分割協議書が送られてきて、印鑑証明書とともに実印を押して、送り返して欲しいとの事でした。
私の方には貰える現金は無く、謝礼として、商品券5千円が同封されていました。
謝礼金の相場としては適正なのでしょうか。
ちなみに私には叔母がいくら相続するのかは知らされていません。

610

(みーちゃん)



 ※敬称略とさせていただきます

【兄弟には遺留分がないが、念のために遺言書の確認が必要】
配偶者や子のいない叔父が死亡したのであれば、叔父の兄弟である、あなたの父が相続人になります。
父が死亡しているのであれば、父の子(すなわちあなた)が代襲で相続人になり、叔父の遺産をもらうことができます。
ただ、叔父が遺言書を書いており、その内容が他の人に遺産を全部相続させるという内容であれば、あなたには遺産が来ることはありません。
これは兄弟には遺留分が認められない(民法第1028条、【コラム】遺留分とは)からです。
今回の質問の場合、遺言書に問題がないのであれば、あなたの同意や印鑑なしで登記ができるはずです。
にもかかわらず、あなたの印鑑が必要だというのはどうしてでしょうかという疑念があります。
そのため、遺言書が本当に叔父の意思に基づくものか、あるいは遺言書作成人時に叔父に意思能力があったかどうかは念のために確認しておくといいでしょう。
なお、公正証書遺言であれば、原則として遺言書としての有効性については問題がないと思われますが、その場合でも遺言書の内容を確認しておく必要があるでしょう。

【承諾料の基準はこんな事情を考慮して決定する】
承諾料というのは、不動産登記をする場合や不動産からの立ち退きをするような場合に、登記をしたい人や立ち退きをさせたい人が出す金銭のことであり、登記などのときにはハンコ代ということもあります。
ハンコ代がどの程度が妥当かは、ケースにより異なります。
例えば借地権譲渡の場合のように借地権価格の10%程度という、ある程度の基準が決まっていることもありますが、多くの場合には金額が決まっていないと言っていいでしょう。
ただ、次のような点を考慮されることが多いので、金額決定の際に参考にされるといいでしょう。
① あなたの側に何らかの権利があるのか、ないのか。
もし、権利があるのなら、その権利を金銭的に換算した金額が承諾料になるでしょう。
冒頭に遺言書が有効かどうかを確認しなさいと言ったのはこのような観点からです。
② 手続きの手間を省くための承諾料なら、その手間を省くことにより得る相手方の利益
  相手方に権利があるとしても、その権利を実現するためにはあなたの印鑑が必要なケースがあります。
 例えば、遺言書があっても自筆の場合には、金融機関によっては、相続人全員の同意が必要というところもあります。
そのような場合、相手方としては、あなたの印鑑がとれない場合、裁判をせざるをえません。
裁判すれば時間や手間もかかり、又、弁護士(費用)も必要でしょう。
その手間や費用等を省くためにどの程度を出すべきかを考えることになります。
③ 相手方との人間関係も考慮要素である。
あなたと相手方とがどのような人間関係にあるかも承諾料に影響します。
いつもお世話になっている人なら、相手方の申し出た金額に反論はむずかしいかもしれません。
反面、そのような関係にない場合には、前記①及び②も効力入れた金額を請求してもいいということになります。

【今回の商品券は妥当か】
以下は私(弁護士大澤龍司)の私見ですが、参考にされるといいでしょう。
あなたに何らの権利がないとした場合、
① 遺産総額が10万円程度なら、今回の承諾料が商品券5000円でもやむを得ないとは思います。
② 遺産総額が100万円ということなら3~5万円という程度。
③ 遺産総額が1000万円ということなら30~50万円程度。
以上はあくまで長年の経験からくるものであり、これらの金額を基準にして具体的な事情で増減していくというのが私のやり方です。
大澤龍司法律事務所
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12:06 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

自筆証書遺言は、絶対に遂行されるのですか【Q&A №608】

2018/05/11


【質問の要旨】

遺言があり、養育費の未払いがある場合は取り分はどうなる?

記載内容  養育費 遺言 遺留分


【ご質問内容】

父が亡くなり、遺言書が出てきました。
両親が離婚したので、私は生後3か月で母に引き取られました。
離婚の原因は、父と後妻の不倫です。
母は、慰謝料も請求した養育費も支払われず、仕方なく泣き寝入りしました。
父は、私が成人するまで一度たりとも養育費を支払わず、逃げ得したことになります。
そんな父が亡くなり、遺言書に後妻の長男に全ての遺産を譲渡すると書かれた遺言書が出てきました。
父親としての責任と義務を全く果たしてこなかったのに遺言書通りになるのでしょうか。
未払いの養育費は、5パーセントの法定遅延損害金を加算すれば、3,000万円以上になります。

608

(ミッキー)



 ※敬称略とさせていただきます

【遺留分を請求することができます】
まず、「後妻の長男に全遺産を遺贈する」という父の遺言ですが、仮に遺言が有効であるとしても、あなた自身には遺留分という権利が残されています。
遺留分とは、あなた自身が本来有していた法定相続分の2分の1の限度で、財産を遺贈された方(今回は後妻の長男)に請求することができる権利のことです。
遺留分を請求することを法律では「遺留分減殺請求」と呼びますが、具体的な遺留分の計算は、相続人が①後妻と②後妻の長男、そして③あなたの3人のケースの場合、次のように計算されます。

(父の相続人)・・・あなた、長男、後妻の3名と仮定した場合

(本来の法定相続分)・・・後妻 → 2分の1
                後妻の長男 → 4分の1
                あなた → 4分の1

このケースですと、あなたの遺留分は法定相続分(4分の1)の2分の1ですので、全体の8分の1と計算されます
このように、遺言があってもあなたは遺留分を請求し、遺産を一部受け取る権利があります。
なお、遺留分は遺留分の侵害(=遺言の内容)を知ってから1年以内に(内容証明郵便等で)請求を行わないと時効消滅してしまいます。くれぐれもこの点はご注意ください。

【取り決めた未払養育費や慰謝料は承継される】
今回は養育費や慰謝料の未払いがあるようです。
まず、なんらの約束事(書面)もしておらず、単に父から養育費をもらっていないだけ、ということであれば、そもそも養育費は請求できません。
しかし、書面等で金額や支払時期の取り決めをしていたのであれば、一般のお金の支払義務と同様に請求でき、未払いがあればお父さんの債務として、これも相続分に従って分割され、各相続人に引き継がれます。
 (なお、慰謝料は一般に母(前妻)の権利ですので、権利者はあなたではないことにご注意ください)

【養育費も一部は相続で消滅する】
上記のケースでは、未払いの養育費について、後妻が2分の1、後妻の長男が4分の1の支払義務を引き継ぎます。
しかし、4分の1の限度ではあなたも支払義務を引き継ぐことになるため、あなたが引き継いだ養育費の4分の1は権利と義務が相殺されて消滅し、請求できなくなることにご注意ください(このことを法律上は「混同」と呼びます)。

【実際には時効などハードルは高い】 
また、養育費の請求にはもう一つ大きな問題があります。
養育費もお金の貸し借りと同様、時効により消滅します。たとえば養育費の支払時期が毎月末日払いなど定期的な支払いの場合、毎月の支払日から5年で時効消滅します。そのためたとえば20歳で支払期間が終了した養育費は、あなたが25歳を超えていれば時効で全部消滅している可能性があります。
もっとも、途中で一部支払いがあったなどの事情があれば時効が中断することもありますので、ご心配でしたら遺留分の請求の見込みなども含め、お近くの専門家に一度ご相談された方がよいでしょう。

 (弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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13:56 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続手続き(株主名義変更手続き)に応じようとしない会社【Q&A №594】

2017/12/21


【質問の要旨】

遺言書があるのに、株主名簿変更手続きに応じてもらえない

記載内容 株主名義変更手続 非上場株式 遺言書


【ご質問内容】

非上場株式,譲渡制限株式を親が死んで相続したのですが、姉が勝手に会社に電話して、相続人兄弟3人で話し合うといったので、会社は3人相続人全員の話し合いをしてください、といいまし た。
ところが、その後、遺言書があって、私1人に全部相続させる、という遺言でした(家裁検認済み、遺言執行者も私)。
それで、それを会社に言ったら、それでも、「3人相続人全員の話し合いをしてください、」というばかりで何回請求しても相続手続き(株主名義変更手続き)の用紙も送ってこずに、完全に無視した状態です。
相続手続き(株主名義変更手続き)に応じようとしない会社に対して、遺言執行者として法的にどのように対応すべきでしょうか?

(cmpank)






【遺言書があれば、株主名義変更手続はできます】
遺言書が、あなたにすべて相続させるという内容になっていた場合、原則としてすべての遺産はあなたが相続し、遺産の中にある株式もあなた一人が相続します。
そのため、あなたが会社に株主名義変更手続をした場合、会社としてはこれを拒む理由はありません。
ただ、他の相続人が遺留分減殺請求をした場合、あなたとその遺留分減殺した人が株主になります(法律的には、株式がそれらの人の間で準共有になります)ので、会社としては遺留分権利者の同意も得てくれということで名義書き換えを拒むことができます。
遺産である株式について、複数の相続人がいる場合には、その全員の同意がない限り、名義変更もできず、又、株主として株主総会にも出席できないというのが裁判所の裁判例です。

【会社としてはトラブルに巻き込まれるのを避けようとしている可能性があります】
遺言書があり、検認も終わっているようですので、遺言執行者のあなたとしては、株主名義変更に必要と思われる書類(遺言書、被相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、遺言執行者の印鑑証明書など)を会社に送り、遺言書どおりの株主名義変更を求めるしかないでしょう。
会社の立場から言えば、お姉さんが「相続人兄弟3人で話し合う」との連絡をしてきたために、法定相続人間で合意をしてもらってから、名義変更をしたいと考えている可能性が高いです。
(参考までに言えば、上場株式については、証券会社、信託銀行その他銀行などの金融商品取引業者等が管理をしており、名義書き換え手続を行ってくれますが、その場合であっても、証券会社所定の「相続人全員の同意書」を求められることが多いようです。)
もし、遺留分減殺請求がなされていないのに会社が名義書き換えに応じない場合には、その旨を説明して会社を説得するしかないでしょう。
それでも、会社が応じてくれなければ訴訟を提起するしかありませんが、訴訟をする前に、念のために弁護士に相談されることをお勧めします。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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16:19 相続と借金 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

実家に居座り続ける兄に家賃請求はできるのか?【Q&A №593】

2017/12/08


【質問の要旨】

父の死後、実家に住む兄から賃料をとることはできるか?

記載内容  賃料 無償 使用貸借 

【ご質問内容】

父が亡くなり2年になります。
母は10年前に亡くなりました。
現在遺産分割で調停中です。
兄弟は3人です。
母が亡くなった後、兄夫婦が実家で父と同居を始めました。
父は兄夫婦と賃貸契約を毎月家賃を徴収していました。
父が亡くなった後も兄は住み続けています。
兄は土地家屋、預貯金1/3を主張していますが私と弟は土地家屋も1/3を主張しています。
兄に父との賃貸契約時の1/3の金額を遺産分割終了まで求めることはできますか?
また父は生前兄夫婦には土地家屋は渡さないと言っていました。
そのため賃貸契約をして住まわせていました。
毎月の領収証も帳簿で残っています。
父は遺言を作るため、色々とメモに思いを起こしていた最中に亡くなったため遺言はありませんが自筆メモで意志が残されています。
実家はこのまま住み続ける兄のものになってしまうのでしょうか?
また土地家屋の分割はどうなるのでしょうか?


(める)



 (「兄弟3人」とのことですので、回答文中は「兄」「あなた」以外のもう一人の兄弟を「弟」と表記します。)
(敬称略で記載しています。ご了承ください。)

【死亡後の賃貸借は継続し、相続人3人が家主になる】
一般には親子間で賃料を払ったり、賃貸借契約書を締結するケースは少ないのですが、今回の質問は、父と兄が契約を締結し、賃料の支払いもされていたケースですので、親子間で法的な賃貸借契約が成立しています。
そのため、家主である父が死亡したとしても契約は終了しません。
現状では父の相続人である兄弟3人が賃貸人(家主)の地位を引き継ぎます。
法律的に言えば、《賃貸人の地位が3人に準共有される》ということになります。
その結果、あなたの兄弟がそれぞれ3分の1の賃料を請求する権利があります。
兄としては、自らも3分の1の限度で賃貸人ですので、その分の賃料の支払いは不要ですが、残りの賃料の3分の2については、あなたと弟にそれぞれ3分の1の賃料を支払う必要があります。

【兄は賃借人として居住を続けることができる】
前項で述べたように、父の死亡後も賃貸借契約は存続しますので、相続が開始しても、兄は賃借人の地位を失うことはありません。
そのため、兄の居住する不動産を兄以外が取得した場合でも、賃借権がある限り、兄は居住不動産から退去する必要はありません。

【父のメモの効力】
父は兄に土地建物を相続させないというメモ書きを残されていたようですが、法律的に言えばそのようなメモは遺言書ではなく、その内容が法的効力を持つことはありません。
ただ、父の考えがそのようなものであったとして、あなたと弟の方が不動産を取得したいと申し出することは当然、可能です。

【兄以外の者の不動産取得と退去の関係】
しかし、あなたあるいは弟が不動産の単独の所有権を取得したとしても、兄は賃借権を持っているのですから、そこに居住を続ける法的な権利があります。
所有権を取得したとしても、その取得したあなたあるいは弟としては、兄を追い出すことはできないことはご承知ください。

【土地家屋の分割について】
遺産分割調停などでは、兄が居住している場合には、調停委員はその不動産の所有権を、居住者である兄に取得させることが多いでしょう。
その場合は、その不動産を取得した分、兄の取り分が減少することになります。
もし、兄がこの不動産を取得することによって、法定相続分でもらえるはずである金額以上を取得するということであれば、兄があなたと弟に対して代償金を支払う必要があるということになります。

(弁護士 大澤龍司)
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16:04 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続の権利があるのか?【Q&A №590】

2017/11/30


【質問の要旨】

兄と叔父が養子縁組した場合、姪の私に相続権はあるのか?

記載内容  叔父 養子縁組 遺産相続の権利 

【ご質問内容】

 はじめまして。お世話になります。
 法律に疎くご相談させて頂ければ幸いです。
 私には60代の結婚経験の無い独身の叔父がおります。(子供なし)
 私は兄と2人兄弟でその兄と叔父が養子縁組みをすることになりそうです。
 その場合、姪である私に遺産相続の権利はあるのでしょうか?

 叔父の身寄りは私の兄とその妻、息子、私の夫と息子のみです。
 宜しくお願い致します。



(ハルミ)



(敬称略で記載しております。ご了解ください)

【現在の叔父さんの相続人は、お兄さんとあなたです】
 はじめに、一般的に相続が発生する場合、その相続人が誰になるかについて簡単に整理しておきます。
 まず、法定相続人は2つの関係で考える必要があります。

1)配偶者関係
 被相続人に配偶者がおれば、その配偶者は常に相続人になります。

2)子や尊属、兄弟関係
 配偶者以外の者の中では、
  ①第一順位が被相続人の子
  ②第二順位が被相続人の直系尊属(父母等)
  ③第三順位が被相続人の兄弟姉妹となります。
 上の順位の者がおれば、後順位の者は相続権がありません。

【兄が養子になる前の相続関係】
 あなたの叔父については、配偶者もおらず、又、子もいないということですので、その状態で死亡した場合、前項の1)の配偶者がおらず、又、2)の①も②もいない状態であると思われますので、③の兄弟姉妹(例えば、あなたのお父さん)が相続人になります。
 ただ、兄弟が叔父より先に死亡していた場合には、その子が替わって(代襲といいます)、相続人になります。
 本件であなたの父が先に死亡されているのであれば、その子であるあなたの兄とあなたが(代襲)相続人になります。
 参考までに言えば、あなたの兄の配偶者やあなたの配偶者はいずれも(代襲)相続人にはなりません。

【養子縁組をすると、叔父さんの相続人は養子のみ】
 養子縁組をした場合、養子は実子と全く同じ扱いを受け、子としての地位を獲得します。
 そのため、叔父さんとお兄さんが養子縁組をすると、叔父さんに前記2)の第一順位の子がいることになります。
 この結果、相続人はあなたの兄のみであり、あなたには相続権はなくなります。

 お兄さんが叔父さんの養子になった場合に、あなたが叔父さんの財産を相続するためには、
  ①あなたも叔父さんと養子縁組をして、その子として叔父さんの法定相続人となる
  ②叔父さんに遺言を書いてもらう
 という2つの手段があります。

 ただ、「あなたに遺産すべてを相続させる」との遺言を書いてもらったとしても、養子であるお兄さんが遺留分減殺請求をすると、お兄さんにも遺産を渡す必要が発生することがありますので、この点、ご注意ください。

(弁護士 岡井理紗)
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14:36 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

結婚時の親の援助と奨学金について【Q&A №589】

2017/11/28


【質問の要旨】

奨学金(学費)は4割増しで遺産から引かれるのか?

記載内容  奨学金 結婚費用 学費 

【ご質問内容】

 相続人は私と妹と妹の3男(養子縁組)の3人です。
 父の日記より、私の結婚時、両親が買ってくれた着物の代金と私が既にローンで買っていた毛皮等の残金を払ってくれていました。(40年前)その他に持参金を数十万頂いております。

 妹の奨学金ですが、親の遺産から4割増しで引くとあります。
 法律は全くの門外漢で分からないのですが、奨学金が4割増しで親の遺産から引かれるものでしょうか?

 母は、20年ほど前に亡くなり、一人息子である父だけでした。何とかH11年からの5年もの日記を3冊持ち帰りましたが、葬儀の翌日妹家族が全て処分してしまいました。
 几帳面な父の遺品と遺言書はありません。
 H11年以前の5冊25年分は妹が持っています。


(ルミ)



【前提となる事実関係】
 今回は「妹さんの奨学金」の借入経過について少し抽象的な部分があるため、次のようなご相談と理解し、回答させていただきます。

① 妹さんは奨学金(学費)をかつて自力で借入、返済をした。
② 他方で、お姉さん(相談者)は結婚の際に着物や持参金をお父さんからもらっている。
③ お父さんの日記には、「妹の奨学金は4割増しで遺産から引く」という記述がある。(=お父さんとしては、妹は自費で奨学金を借入、返済させたので、遺産分けの時は妹に奨学金の分だけ多めに4割増しで渡して欲しい、という心情で日記を書いた。)
④ ③のような扱いは法律上正しいのか。奨学金が4割増しになるような理由があるのかを相談したい。


【日記は遺言としての法的効力を持ちません】
 まず前提として、日記は遺言としての効力を持ちません。
 そのため、日記のとおり遺産分けをする必要はありません。
 日記にあるお父さんのお気持ちを尊重して遺産分けをすること自体は珍しくありませんが、法的に従う義務がないことはご理解下さい。
 以上の前提でいえば、妹さんの奨学金を考慮して、遺産を妹さんに多めに渡さなければならない理由はありませんし、4割増しにする理由もありません。
  
【結婚費用・持参金は特別受益にならない可能性も高い】
 まず、お姉さんのいわゆる嫁入り道具や持参金は特別受益にあたる可能性があり、嫁入り道具として購入してもらった着物の代金や持参金数十万円などは、特別受益とされることと考えられます。
 (この点は当ブログQ&A №507に同様の質問がありますのでご参照下さい)
 ただ、家庭裁判所の調停では、妹さんや弟さん(養子)の結婚に際してもそれなりの資金提供をされているケースが多く、嫁入り道具や持参金額が格別に高い価額ではないような場合以外は、特別受益はお互い様として帳消しにしてはどうかという対応を調停委員が言われることが多いです。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
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12:52 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

未分割の土地を含む遺言分割指定がある時【Q&A №585】

2017/10/10


【質問の要旨】

被相続人が未分割の配偶者の不動産を子である相続人に譲ると遺言したが、裁判所ではどう判断されるのか?

記載内容  数次相続 共有 未分割 

【ご質問内容】
 被相続人の遺言に、先に死亡したその配偶者との未分割状態の共有の自宅を、3相続人(子供)中のAに引き続き住めるよう譲るとあり、法務局ではまず、配偶者の持ち分9分の6を法定分割した後、被相続人の持ち分9分の6をAに登記すると云う事でしたが、自宅が住所不銘記で却下、家裁では遺言分割の承諾が他の相続人B.Cから得られず、審判できないと云われ、取り下げさせられました、最終日全員の前に、裁判官が表れ(陪審員の要請があったと思わせる)ちらりと遺言に目を通し、配偶者の未分割分は直接3人の相続人に譲られると断定しました。
 法務局の説明では、全員の承諾のもとでは可能である、つまり遺言分割ではなく協議書による分割と解釈したので、家裁の裁判官の云う事には釈然としません、今後地方裁判も視野にこの点をはっきりさせて置きたいので宜しくお願いします。


(fumimasa)



【事案の整理・・父が死亡した後、その相続登記前に母が死亡したケースと理解】
 まず、事案の内容を整理します。
(以下の要約は、質問からは直接は読み取れないものの、弁護士3名がほぼこのような事実関係を前提にしての質問であろうと考えた内容を記載しております)

① 先にお父さん(配偶者)の方が死亡し、遺産である不動産の相続登記をしないうちにお母さん(被相続人)が亡くなった。
② そのお母さんは「未分割状態の共有の自宅を、3相続人(子供)中のAに引き続き住めるよう譲る」と遺言した
③ Aは、法務局で遺言に基づいて登記をしてもらおうとしたが、遺言書には自宅不動産の所在地等の記載がなかったため、このままでは物件が特定しておらず、登記はできないと言われた。
④ そのため、家裁に調停を申し立てたが、他の相続人B、Cの承諾が得られず、取り下げという結果になった。


と仮定して、説明をしていきます。
  なお、今回の質問には登記に関する部分が含まれています。
 わかる限度で説明はしていきますが、念のために登記の専門家である司法書士さんにも確認されるといいでしょう。

【相次いで相続が発生した場合のそれぞれの相続分】
 前項で記載したとおりの事実関係であると仮定すると、相続の経過は以下のとおりとなります。

① まず、お父さんが亡くなったことにより、自宅のうちお父さんの持分であった9分の6が、各相続人に相続されます。
 遺言書がなく、遺産分割協議もなされていないのだとすれば、法定相続分に従い、お母さんが9分の3、A~Cが各9分の1を相続します。
② 次にお母さんが亡くなり、「未分割状態の共有の自宅を、3相続人(子供)中のAに引き続き住めるよう譲る」との遺言があったとのことですので、お母さんの持分はAにすべて遺贈されたのであれば、お母さんの自宅持分(もともと有していた9分の3と、お父さんから相続した9分の3の合計である9分の6)をAが相続します。


 結局、自宅はAが9分の7、B及びCが9分の1という共有状態になるということになります。

【自宅が特定していない点についての法務局の見解について】
 ただ、遺言では前記のとおり、自宅不動産の所在地が明記されていないことから、法務局はこの遺言では不動産が特定されていないので、このままでは登記はできないと言われたのだと思われます。
その上で、もし登記をしたいのなら、法務局としては

① 遺言に記載された自宅とは被相続人が共有持分を有している自宅であることを判決で確定してもらうか、
② 相続人全員が遺言書の自宅とは、被相続人が共有持ち分を有している自宅であることを前提で遺産分割協議する。


のどちらかの方策を取れば、遺言の不動産が特定しないという点が解決し、登記が可能になるとの見解だったろうと思われます。

【遺言ではAが自宅全部を相続することはできない】
 お母さんの遺言の内容がはっきりはしませんが、仮にその内容が《Aの居住している自宅すべてをAに相続させる》というような内容であったとしても、そもそもお母さんの持分は9分の6でしかなく、未分割のまま放置されていたからといって、お母さんの自宅の持分が増えるわけではありませんので、Aが自宅全部を取得することできません。
 ただ、遺産をどのように分けるかについて、法定相続人全員が分割協議で合意をすれば、遺言と異なる内容でも、分割合意が優先します。
 そのため、Aが自宅を単独相続(全部をAの所有に)したければ、他のB及びCの同意を得て、《自宅名義はAの単独名義にするが、その代わりに代償金等を他の兄弟に支払う》等の合意をすれば、その合意の効力として自宅をAの単独名義にすることが可能です。

【裁判所が遺産分割の審判をしなかった理由】
 次に、裁判官が、「配偶者の未分割分(お父さんの持ち分)は直接3人の相続人に譲られると断定した」という点を考えてみましょう。
 Aとしては、お母さんの遺言には自宅全部をAに相続させると記載されているため、父の遺産の自宅全部の相続を主張したのに対して、《Aさんが全部取得するようなことはない。お父さんの持分が、法定相続分に従って子供らに9分の1ずつ相続されることについては、全員の同意がない以上、法的に動かしようがない》ということを言いたかったものと推測されます。
 B及びCから、自宅を全てAに譲るという内容で同意が得られず、遺産分割協議がまとまらなければ、遺言書の内容を実行するしかありません。
 しかし、家裁の審判では、遺言書の内容を実行せよという命令を出すことはできず、地裁で裁判をする必要があります。
 そのため、家庭裁判所は「審判できない」との判断をし、調停を取り下げさせたものと思われます。
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13:04 相続と借金 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

ゆうちょ銀行は詐欺罪で告訴しますか?【Q&A №579】

2017/09/13


【質問の要旨】

母の貯金を不正に出金した兄夫婦を詐欺罪で告訴できるか?

記載内容  詐欺罪 偽造 銀行 

【ご質問内容】
 昨年5月に母が亡くなりました。
 相続人は兄と弟の私、2人です。
 母は生前、約13年前に公正遺言証書(私には内緒で、おそらく兄に誘導されて)を作成していました。
 内容は母の死後、初めて、私は知ったのですが、土地、家屋(時価6千万円ぐらい)は全て兄に、預貯金は全て私に、という内容でした。

 その行為が許せなく、弁護士を通じて、立証できた金額1900万円あまりを返却してもらいました。
 つまり、民事的には一応解決となっています。
 然しながら、未だに、兄夫婦の今までの行為が許せなく、刑事的に何か罰則を与えることは、出来ないかと思っています。

 そこで、質問なのですが、兄の妻が、平成23年12月6日に、ゆうちょ銀行の窓口で母の定額預金70万円を解約しています。
 それは、母の委任状(母の偽署名をしたもの)を作成して解約しています。
 その70万円はゆうちょ銀行の母の普通預金口座に一旦入金されていますが、1か月ぐらいで、2~3回に分けてキャッシュカードで全額引き出されています。
 その時、母は介護施設に入所していて、外出することは出来ない状態でした。
 また、介護日誌では、認知による奇怪な行動が解約日の前後に見られます。
 また、認知度の長谷川式テストでも解約の意思表示など出来る意思判断は不可能な状態でした。

 この内容で、詐欺罪は成立しますか?
 ご回答お願いします。
(ultimora)



【犯罪ではあるが処罰されない】
 まず詐欺罪が成立するかどうかですが、お母さんの署名を装ってお兄さんが委任状に無断でサインをすれば、それは有印私文書偽造罪に当たる行為です。
 また、その委任状を銀行に提示してお母さんの預金を引き出せば、銀行に対する詐欺罪が成立しうる行為です。
 また、キャッシュカードでの引き出しについては預金を窃盗したという見方も可能です。
 しかし、これらの罪については、法律上は親族相盗例という制度が適用され、親子間の詐欺罪や窃盗は処罰されません(刑法251条、同244条準用)。

 親族相盗例とは、親子間や同居の親族間の窃盗や詐欺について処罰しないという規定であり、家庭内のもめ事は家族間で話し合って解決するべきであり、警察のような国家権力が介入するべきではない、という考え方から導入された制度です。
 そのため、詐欺罪や窃盗罪で刑事告訴しても、警察が捜査を開始することはまずありません

【銀行は告訴しません】
 次に、有印私文書偽造罪については親族相盗例が適用されないため、銀行などが告訴すれば警察が動き出す余地が一応残っています。
 しかし、銀行は大量の預金事務を処理しているため、告訴による警察の事情聴取の負担などで争いに巻き込まれる事による負担を回避したいでしょうから、銀行が相続人などを警察に告訴することはまずないと考えられるといいでしょう。 

【民事上の争いをするほかない】
 今回の様な不正出金は民事上で争うほかないのが実際のところです。そのため、弁護士を通じて民事上は一応の解決をしているのであれば、立証できた1900万円を返還すれば、これ以上請求できないことになっている可能性が高いと思います。
 おそらくは、民事裁判で不正出金を取り返すことができたのも長谷川式認知テストなどをきちんと踏まえられたからだと思いますし、それ自体は正しい方法と思われます。
 民事上も一応の解決を経ているのであれば、本件ではこれ以上の責任追及を行うことは諦めざるを得ないでしょう。
大澤龍司法律事務所
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母、兄家族と同居の独身女性【Q&A №574】

2017/08/01


【質問の要旨】

実家を出ていけといわれたが、どうすればいいか

記載内容  同居 相続対策

【ご質問内容】

 60年住み慣れた家を出て一人で暮らしてと兄より言われて困惑
 実家は母屋と離れの部屋もある。
 相続対策として何か出来ることは
 父の死後、家屋・土地が兄の名義になっているかも?
 家を出て生活する予定にしていなかったため蓄えもなく長年勤めた仕事も定年退職し現在パート勤務。
 10年後を考えると・・・

(十年後不安)





【不動産登記簿で家がだれの名義かを確認する】

1)登記名義がお父さんの名義のままの場合
まず、家の全部事項証明書(登記簿謄本ともいいます)を取り寄せして、所有者が誰かを確認する必要があります。
もし、家の所有権登記がお父さんの名義のままであった場合、遺産分割が終了していないと思われますので、あなたは家の所有権の4分の1を相続で取得していることになります。
そのため、「相続して、家の共有者であるはずの私がなぜ、家を出ていかないとだめなのか」という理由で弟さんに反論されるといいでしょう。
なお、下記3)項に記載した「お父さんから住むことを認められた」ということも、併せて主張することが可能です。

2)登記名義が3人の共有名義の場合
登記が法定相続人3人の名義になっている場合は前項と同じく、「共有者である私がなぜ、家を出ていく必要があるのか」という反論をされるといいでしょう。

3)登記名義が弟の単独の場合
弟さんの単独所有に登記されている場合には、共有であることを前提とする反論はできません。
しかし、その場合には《お父さんとあなたとの間で、「無償(ただ)で実家に住んでよい」という暗黙の合意ができていた》(これを法律的には「黙示の使用貸借契約が締結されていた」といいます)ということで反論されるといいでしょう。
実家の所有権がお兄さんに移っていたとしても、使用貸借契約は存続しており、お父さんの家に住まわせるという約束はお兄さんに引き継がれます。
参考までに言えば、あなたの無償で使用する権利がなくなるのは、
① 借主であるあなたが死亡する
② 使用貸借の目的が定められていたのなら、その達成されるまで

のいずれかです。
・・・例えば、《結婚するまで住んでいいよ》とお父さんが言ったのであれば、結婚で使用貸借契約は終了するということです。
以上の①又は②の事情がない限り、あなたは法律的には家を出ていく必要はありません。
そのため、あなたはお兄さんに対して、実家に住む権利を主張することができるということになります。


【相続対策としてできること】

実家不動産がお母さん単独の名義になっていた場合には、お母さんの元気なうちに実家不動産の生前贈与を受けておくか、あなたに相続させるという遺言書をお母さんに書いてもらうという方策を考えてもいいでしょう。
又、仮にお母さんの単独名義ではなくとも、お父さんの遺産分割が未了なら、お母さんに《私の遺産はすべて相談者の方に渡す》という趣旨の遺言書を作ってもらってもいいでしょう。


【お母さんを味方につける】

お父さんの遺産分割が未了であるかどうか、又、お母さんがどの程度の力をもっているのか、判断能力に問題はないか等、考慮するべき要素は多いのですが、可能ならお兄さんに対抗すると言う意味でも、又、あなたに有利な遺言書を書いていただくと言う意味でも、お母さんを味方につけるといいでしょう
なお、現実的な解決としては、母屋と離れがあるということですので、お兄さん家族とルールを決めて、母屋と離れとに住み分けるということも考えていいでしょう。
ただ、お兄さんの圧力が強い場合には、相続に強い弁護士に相談し、場合によれば依頼することも考える必要があります。
その際、弁護士に今回の居住問題だけではなく、お父さんの遺産分割がどのようになっているのかの説明をし、分割未了であれば必要に応じて、遺産分割の依頼も考えておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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不正出金と特別受益について【Q&A №573】

2017/07/31


【質問の要旨】

母の預金を使いこんだ弟から遺産を取り戻せるか?

記載内容  使い込み 住宅ローン 贈与

【ご質問内容】

  先日、妻の母が亡くなりました。(父は既に他界)
  妻は兄と弟の3人兄弟で、母は13年程前から弟と同居していました(住宅購入)。
 母の遺産は定期預金など(推定6000万円程)で2年ほど前から弟が通帳管理し死亡前にはすべて弟の口座に移されていました。 贈与か不正出金か不明。
 弟は遺産総額を開示もしません。
 信託で契約を結び(金額不明)、死後、弟にお金が入るようにもしていました。
 信託会社に詳細を聞いたところ、財産と遺留分対象とのこと。

 住宅資金推定5000万円(弟名義)を、母が頭金援助(推定2000万円)、去年あたり母が(推定2000万円)を出してローン完済させたようです。
 弟はギャンブル好きで他にも不正出金が多々あると推測し、まだ現金2000万円程は隠していると思われます。

 お聞きしたいのですが、住宅資金援助は母の通帳開示請求から追及できるでしょうか
 また弟のローン支払いの通帳も開示請求して照合できるのでしょうか
 遺言書はないようですので、法定相続分の3分の1で請求した場合妻の相続分はどれくらいになるのでしょうか?

 また、兄は相続争いに参加したくないとの事で、妻への譲渡証明書を書いてもらうつもりですが、その場合、不正出金の返還請求も、特別受益があった場合も兄の分と2人分の請求ができるのでしょうか
 どうぞご教授よろしくお願いいたします。

(papepon)





【住宅資金援助の追及・・まず登記簿謄本と取引履歴の双方を確認する】

弟さんが購入した住宅の資金援助とローン返済をお母さんが行ったかどうかの追及ですが、次のような方法でされるといいでしょう。
まず、弟さんの不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せし、不動産購入時期及びローン完済時期を調べます
購入時期は所有権移転登記の時期、又、ローン完済時期は抵当権抹消時期で推測(判断)できます。
次に、被相続人であるお母さんの金融機関の取引履歴を確認し、購入時期及びローン完済時期に、お母さんの口座から多額の出金があるかどうかを確認するといいでしょう。
もし、双方の時期に合致した出金があれば、それが頭金等の購入資金として、あるいはローン完済の資金として使われた可能性があるといえるでしょう。


【購入資金あるいはローンとして使われたものかのどうかの証明が必要】

前項の登記変更時期と取引履歴の出金が合致したというだけでは、あくまで可能性があるという程度の話であり、裁判で必要とされる証明としては不十分なことが多いです。
お母さんの口座からの出金が弟さんのための資金として使われたことを証明する必要があります。
ところで、お母さんの出金額がそれぞれ約2000万円ということであれば、現金で出金されていることは少なく、おそらく送金されているものと思います。
そのため、上記金銭が送金されたかどうかを通帳の備考欄などで確認し、送金されたということであれば、出金した金融機関に対して、誰の口座に送金されたかを確認されるといいでしょう。
弟さんの口座に送金されているとすれば、追及することが可能になります。
なお、お母さんの預金については相続人であれば確認できますが、弟さんの預貯金口座の確認は、兄弟でも他人ですので、弟さんの同意がない限り、金融機関はプライバシー侵害を理由に応じないでしょう。


【奥さんの相続分・・お母さんが贈与していた場合】

遺産としては、弟さんがお母さんの口座から出金した預貯金6000万円と住宅資金の関係の出金である4000万円が質問に記載されていますので、この1億円が財産であるとして説明します。
まず、住宅関係で4000万円がお母さんから弟さんに生前贈与され、6000万円は弟さんが無断で出金したという前提で考えた場合、
① 生前贈与分4000万円は特別受益として遺産に加算されます。
② 無断引き出し分の6000万円は、お母さんの弟さんに対する不法行為や不当利得に基づく賠償・返還請求権となります。
この場合、遺産総額は、(特別受益:4000万円)+(不法行為等の返還請求権:6000万円)=1億円になり、子ども3名の相続分は各3分の1の3333万円強になります。
ただ、弟さんの生前贈与による取得額が4000万円で、法定相続分の3333万円を超えています。
そのため、弟は4000万円を返還する必要はありません(特別受益制度は返還までさせる制度ではありませんQ&A №406をご参照ください。)が、残りの6000万円からは1円ももらうことはできません。
あなたの奥さんとしてはお兄さんと共に生前贈与分を除外した残額である6000万円を2人で分けて、各3000万円を相続でもらえることになります


【奥さんの相続分・・お母さんに無断で引き出していた場合】

なお、もし、住宅関係の4000万円もお母さんに無断で出金されたというのであれば、お母さんは弟さんに対して合計1億円の不法行為による損害賠償請求権を有することになります。
子供らは各3分の1ずつを相続することになりますので、あなたやお兄さんは弟さんに3333万円ずつの返還を請求することになります。


【相続分譲渡の場合は譲渡者の分を含め、請求する】

 奥さんはお兄さんから「譲渡証明書」をもらっているということですが、これが相続分の譲渡であれば、不正出金の返還請求も、特別受益の場合にも、あなたの奥さんはお兄さんの分を含めて、2人分を請求することができるようになります。


【こんな点にも注意しましょう】

注意点も付け加えておきます。
弟さんが他にも現金で2000万円ほど持っているとしても、それを発見することはなかなか困難です。「ない」と断言されれば、どうしようもないということも考えておくべきでしょう。
次に奥さん側が遺産問題で動き出したのを気づいた場合、弟さんは財産を隠す可能性があります。
もし、弟さんが不動産をもっていたり、あるいは預貯金口座にお金をもっているらしいということがわかるのであれば、その財産を動かせないようするために裁判所に仮差押等という手続きをしておく必要があります。
ただ、その手続きをするのであれば、相続に詳しい弁護士と依頼されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
14:10 遺産分割のトラブル | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

認知症の義母宛の父の遺言【Q&A №571】

2017/07/05


【質問の要旨】

再婚した父が遺言を書いていた場合の先妻の子の相続分

記載内容  再婚 義母 任せる  遺留分 先妻の子


【ご質問内容】

父と母は 再婚で、私は父の実の娘です。

幼い頃の離婚時に、実母方が弟を連れ、父が私を引き取りました。

現在は、私は結婚していて義母とは養子縁組はしてません

父は難病をかかえていますが数年前に母が認知症で、遠方の実の妹夫婦宅へ行きっぱなしで帰らず、今では 介護施設へ入居してます。

数ヶ月前に父が自宅で転び、一人暮らしが不可能となり今では療養型病院に入居してます。

もう自宅には帰れないので、私が自宅の片付け、売却を頼まれましたが片付けてたら、義母宛の銀行で作成した遺言書がでてきました。

現在、父名義の700万ほどの銀行預金通帳を私が預かり任されてます

他の預金は認知症の母がわかってるだけでも1000万円を持っていってしまいました

母の遺言書は見当たりません。

父が口頭では娘の私に全て任せると言うのですが、もしこのまま父が他界したらどうなるのでしょうか?又、義母が他界したらどうなるのでしょうか?

(mamis)





【事案の整理】

義母宛の遺言内容が明らかではないのですが、おそらくお父さんが「義母に全財産を相続させる」内容で作成したものと推測して回答いたします。

この状況でお父さんが死亡した場合、遺言に従って全遺産は義母が相続することになります(なお、あなたは遺留分の限度で権利がありますが、この点は後述します)。

【お父さんが死亡した場合・・遺言内容により異なるが、遺留分請求が必要になるかもしれない】

まず、お父さんが死亡した場合、お父さんには遺言書がありますので、その遺言書の内容で遺産を分けることになります。

ただ、その遺言書の内容が、義母に全部を相続させるという内容であれば、あなたはお父さんの遺産を相続できなくなります。

このような、遺言等で遺産が十分にもらえない場合には、法律で、遺産を多くもらう人から最低限度は返してもらえるようにする制度があります

遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求といい、遺言書の内容を知った日から1年以内に、遺産をくれと申し出る制度です。

あなたは被相続人であるお父さんの子ですので、減殺請求をすると法定相続分の4分の1の半分の、8分の1の遺産をもらうことができます。

なお、遺産としては義母が生前に貰った1000万円も遺産に組み入れて計算をしますので、あなたが遺留分としてお母さんに請求することができるのは次の計算式で算定される金額です。

遺留分=(義母が生前に貰った:1000万円+父名義の銀行預金+お父さんのその他の遺産)×8分の1

(なお、遺留分減殺請求については【コラム】遺留分とは参照)


【父より前に義母が亡くなった場合】

父より前に義母が亡くなったときは、あなたは義母の子ではありませんので、義母からは遺産を相続することができません

この場合、父の遺産がどうなるかですが、父の遺言書に《義母に遺産全部を相続させる》という記載があっても、既に義母が死亡しているのですから、遺言書は効力がなくなります

そのため、父が亡くなった時には、あなたと弟さんが父の遺産を2分の1ずつの割合で取得することになります。


【遺産が欲しいのなら遺言を書いてもらう】

最後に、お父さんが「口頭では娘の私に全て任せる」という発言されていますが、このような言葉は、葬儀の手配や自宅の整理、遺産分割完了までの通帳などの管理を任せるという趣旨として理解されるにすぎず、あなたに全遺産を贈与させる、あるいは相続(遺贈)させる意思を表示したものという理解をするには無理があります。

もし、あなたが父から財産をもらいたいというのであれば、新たに「全財産を相続させる」旨の遺言を作成してもらうことが必要でしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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16:29 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

認知症の母と公正証書遺言【Q&A №562】

2017/03/27


【質問の要旨】

複雑な内容の遺言書と、長谷川式認知スケールの点数

記載内容 認知症 公正証書遺言 無効


【ご質問内容】

去年4月に認知症と診断された母がおります。不動産と預貯金があり、診断される以前から、家をついだ長女にたくさんのこすと、次女にも口頭では伝えておりました。

が、次女の配偶者がいろいろと言ってきたため、12月に公正証書遺言を専門家と相談して作成しました

内容は、不動産はそれぞれこれは長女に、あれは次女にと記載されており、預貯金は、割合で書かれてあるとのことです。

不動産は、かなりの数があり、1つずつ指定しているので、細かい内容になっていると思われます。

認知症の場合、細かい遺言書は無効になりやすいともきき、不安です

なお妹の遺留分はちゃんとみたしております。

長谷川式での数値は11月で17でした

この遺言書の無効の裁判を妹におこされると仮定して、いま現在対処方法はあるのでしょうか?

また裁判をおこされた場合、勝てる可能性は、どのぐらいなのでしょうか?

(プリン)





【公正証書遺言は有効とされる可能性が高い】

お母さんは、公正証書遺言を作成されているようですが、公正証書遺言を作成する際には、裁判官や検察官を何十年もした経験のある公証人が関与します。

遺言書作成時には、公証人が遺言者であるお母さんに直接会い、遺言書が遺言者の意思どおりであるかを確認するとともに、遺言者に判断能力があるかどうかも確認します。

もし遺言者に判断(意思)能力がないというのであれば、公証人は遺言書を作成しません。

そのため、公正証書遺言が作成されているというのであれば、その公証人が意思能力ありと判断したということであり、それが無効とされる可能性は少ないと考えていいでしょう。


【長谷川認知スケールの点数が17点なら有効の可能性が高い】

お母さんは、遺言を作成する1か月前にした長谷川式認知スケール(満点30点)で17点だったとのことです。

これまでの裁判例から見れば、意思能力があったと判断される可能性が高いといえます(【長谷川式認知スケールと意思能力についての裁判例一覧表】参照)。

ただ、意思能力は長谷川式の点数だけで判断されるわけではありません。

たとえば、遺言書の内容が、例えば《全遺産は長男に相続させる》という簡単なものであれば点数が低くとも有効になる可能性が高くなり、逆に複雑な相続を定めていれば、それがわかる意思能力が必要とされるために、点数が高いことが要求されるということになります。

また、次項に記載して事項をも含めての総合判断ということになります。


【意思能力についての他の判断資料について】

なお、意思能力の判断資料としては、上記の長谷川式認知スケールだけではなく、病院に入院し、あるいは施設に入所などされていた場合には、その病院でのカルテ、施設の介護日誌などでお母さんの言動が記録されていることも多く、それも意思能力の有無の判断資料になることを憶えておかれるといいでしょう。

また、現在、お母さんに判断能力があるのなら、その元気な姿をビデオで撮影する等して将来の訴訟等に備えるといいでしょう。


【勝訴の可能性について】

意思能力の有無は長谷川式のテストやカルテ等の内容も含めての総合判断ですし、又、相手方の妹さんの主張や提出する証拠を見て、裁判所が最終的に判断するべきことですので、現段階で勝訴の可能性を聞かれたとしても、回答できません。

一般的に言えば、意思能力に関する裁判はなかなか難しいことが多く、当事務所で意思能力を争った訴訟でも、裁判官が迷いに迷ったことが判決内容から窺えるものすら存在するほどのものだ、ということも付言しておきます。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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09:54 相続と借金 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

預金の引き出しと居直りへの対応【Q&A №561】

2017/03/07


【質問の要旨】

不正出金を取り戻せるか

記載内容 凍結 預金 不正出金

【ご質問内容】

父親が昨年秋に死去しました。

私の兄は、管理していた父親名義の預金通帳からの使い込みが判りました

現在兄は遺産分割協議に協力しないばかりで困っています。

父は預貯金や株を所有していました。

父が10年前に脳梗塞発症後、半身不随になった後、24時間完全介護の老人ホームへ入所しました。入所時から、兄が、父親の全財産の管理を兄が預かっておりました

当時から兄はATMで現金を引き出しており、毎回限度額上限いっぱいの50万円や100万円の金額で、ホームの兵庫から遠く離れた東京の兄自宅近くのATM引き出してました

その金額が、10年間6000万円を超。父の同意が、有ったのか分からない一括保険金払い3000万円一括保険金払年金型生命保険にも入っています。

この保険からの年金の入金は、父の口座入金でしたが、保険金払い受取人が兄。

この年金の振り込み口座からも、兄は引き出しておりました。

父親の死後になって、心当たりの銀行証券会社に問い合わせたところ、わかりました。

兄は、死亡届を金融機関に未提出

父の死後の翌日や翌々日もATMから50万円や100万円単位で引き出していたのが判明しています。

私が金融機関に、死亡届を取引明細取り寄せと同時にしたことにより、父親の預貯金口座から、現金の引き出しが出来なくなった兄は激怒してます。

兄からは連日の暴言メールで、私は仕事も手につきません。

夜も眠れません。

兄は「お前はいらぬ事はせんでいい。お前の下らん策で迷惑きわまりない。」と、激しく私をなじる一方です。

遺言状も存在しないようです。

私はどうすればよいでしょう。

父の遺産を私が一部でも引き継ぐ事は諦めて、凍結した銀行口座を解除して兄に任せるべきなのでしょうか?

せめて、今ある預貯金のみの50%の分割で我慢すべきなんでしょうか?

(はなこ)






【あなたはお兄さんと同じ割合の遺産をもらう権利があります】

遺言書がないケースでは、あなたはお兄さんと同じ割合でお父さんの遺産をもらうことができます。

又、生前にお兄さんがお父さんの口座から無断で出金していたのであれば、お父さんはお兄さんに損害賠償請求ができることになりますが、その損害賠償請求する権利はあなたにも相続されますので、生前の引き出し分についてもあなたはお兄さんに請求することが可能です。


【わかっているすべての金融機関にも連絡をしておく】

お兄さんが、お父さんの死亡後もお父さんの遺産を引き出しているようであれば、わかっている金融機関の全てにお父さんが死亡したとの通知を出す必要があります

死亡の連絡があれば、金融機関は口座を閉鎖しますので、ATMでの出金を停止します。

利用しているかどうかわからなくても、その可能性があれば、死亡通知をし、遺産からの出金を停止させる必要があります。


【生前の引き出し分の調査】

前記のとおり、お兄さんの生前引出分は損害賠償請求権として遺産になります。

ただ、いつ、どの程度の額の金銭を引き出されたのか、その引出をお兄さんがしたのかをあなたの方で証明する必要があります

そのため、金融機関に対して入出金の取引履歴の調査をするとともに、大口の出金については誰がその手続きをしたのかを確認するために預貯金の払戻票などを取り寄せし、お兄さんが引き出したということをはっきりさせておくといいでしょう。

ATMの場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見るとどこで出金したのかがわかりますので、その取引履歴を証拠として準備しておくとよいでしょう。


【カルテの取り寄せも考える】

お父さんは脳梗塞であったということですが、もし、判断能力がないような状態であれば、お兄さんが出金した金銭の返還請求がしやすくなりますので、入通院された病院のカルテを取り寄せしておくといいでしょう

カルテにはお父さんの判断能力がわかる資料が多数、記載されていることが多いです。

お兄さんはお父さんの依頼で出金したという反論をすることもありえますので、そのような場合に備えて準備をしておくといいでしょう。


【保険契約及びその一括払い金の出金の調査も必要】

保険金の契約書にはお父さんの署名があるはずですので、保険会社から契約書の写しをもらって本当にお父さんの筆跡かどうかを確認するといいでしょう。

又、保険金の支払いが併せて一括支払いだとすると、預貯金から引き出して支払っていると考えられますので、預貯金を確認するとともに、その払戻票の筆跡を確認し、お父さんに無断でお兄さんが手続きをしたという証拠を集めておくといいでしょう。


【急いで手続きする必要があるのなら、弁護士に早期に相談を】

お父さんの遺産をお兄さんが勝手に動かしているように思われます。

お兄さんが預貯金から引き出した金銭をどのように使っているか、あるいは保管しているのかは明らかではありませんが、既にかなりの部分が消費されている可能性がありそうですし、出金分を隠している可能性もありそうです。

裁判に勝ってもお兄さんがお金を持っていないとお金を回収できません。

そのため、できるだけ早く、弁護士と相談され、お兄さんの財産を押さえる手続き(例えば仮差押手続き)などを考えられるといいでしょう

お兄さんの金融機関の口座がわかっているとすれば、それを差し押さえる方法はないのかどうか、また、これからの遺産分割協議を円滑に進めていくためにも、弁護士に相談され、必要に応じて早期に依頼をして、対処方策を講じることをお勧めします。

(弁護士 大澤龍司)

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18:01 遺産分割のトラブル | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続制度見直し:配偶者に対する新優遇案【コラム】

2017/03/07
相続制度見直し:配偶者に対する新優遇案


【配偶者に対する新優遇案が出されました】

現在の相続制度の見直しがされており、法制審議会の相続部会で審議されています。

平成29年2月28日、法務省から新たな案が出されました。

その内容は配偶者を相続上、現在より優遇しようというものです。

具体的に言うと、

①結婚から20年以上過ぎた夫婦間で

②居住用の建物や土地を

③生前贈与や遺言遺贈を受けた場合

これらの贈与や遺贈の対象の不動産を遺産の計算に含まないというものです。

贈与者あるいは遺言者としても、このような贈与等は、遺産の計算に持ち戻さない(含めない)という意思があるだろう点を根拠にする提案です。


【現在の相続制度との比較】

現在の相続制度では、亡くなった方(被相続人)と一緒に住んでいた配偶者が、これからもその家で暮らしていくために家を相続した結果、他の遺産をまったく相続できないというケースがありました。

また、自宅以外の他の財産が少ない場合には、家を相続したことによる代償金という形で、他の相続人にお金を支払う必要があるというケースもありました。

これに対して、今回の新優遇案では、自宅の贈与等を受けていても、配偶者は自宅を取得分とカウントされずに、別途、他の遺産についても自分の相続分に応じた遺産をもらえることになります。


【弁護士コメント】

残された配偶者優遇策としては法定相続分を上げるということも考えられますが、反対が多いようです。

そのため、居住用不動産に限定して配偶者を優遇しようとする考えがだされています。

たとえば、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、

①遺産分割により当該建物の帰属が確定するまでの間、その建物を無償で使用することができ、その間の使用料は遺産分割で取得すべき財産額に算入しないとする案や、

②終身又は一定期間、配偶者にその建物の使用を認め、長期居住権の財産的価値相当額を相続したものとして扱う(建物の所有権額よりは低額になる)という案もあります。

それらに比較すると、今回の新提案はこれらより一歩踏み込んで、残存配偶者が財産を多く取得できる方向での提案です。

ただ、

①結婚から20年以上過ぎた夫婦に限っていること

②被相続人から贈与や遺贈という積極的な行為が必要である

などの要件が必要とされています。

上記の要件が必要とされている点では、他の案よりもハードルが高くなっていますが、逆に、生前贈与や遺贈があれば、その額を遺産の計算に持戻すことなく、家の所有権を取得できるというのは、配偶者の優遇策として進んでいるといえるでしょう。

多数の賛成者があるようですので、今回の提案が立法化される可能性も高いかもしれません。
大澤龍司法律事務所
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母の建物に無償で住む妹に何か請求したい【Q&A №554】

2017/01/19


【質問の要旨】

母が亡くなるまでにできることはないか

記載内容 公正証書 実家 請求

【ご質問内容】

私は姉妹の姉です。

父の死後、話し合いもなく、父の死後公正証書が送りつけられ、数か月後税理士の方からの書類が届いた時は、母に全部渡す預貯金は妹名義になっていました

数年前に母を施設に入れ、実家に移り一人で住み始めました

こういう場合母が亡くなる迄手立てがないのでしょうか

私は過分に欲しいと思っているわけではありませんが、

妹も不動産などを両家からたくさん相続していますので、裕福ですので

私もきちんと請求したいと思っています。

(さくら)






【お父さんの相続に関しては遺留分減殺請求はできたが…】

お父さんの相続に関しては、預貯金はすべて妹さんに相続させるとの内容の公正証書遺言が作成されていたと理解しました。

このような遺言書があり、他の相続人になんらの遺産も来ないような場合でも、最低限の遺産(子であれば法定相続分の半分)を取り戻す権利があります(遺留分といいます)。

ただ、この権利は自分に遺産が来ないという遺言書があることを知ってから1年間以内に、遺言書で遺産をもらう人に請求(遺留分減殺請求といいます)する必要があり、この期間を過ぎると請求することができません(民法1042条)。

そのため、妹さんが預貯金をすべて相続したことにより、あなたやあなたのお母さんの遺留分が侵害されていた場合には、1年以内であれば、遺留分減殺請求をすることができました。

しかし、お父さんが亡くなってから既に9年経過しているということですので、お父さんの相続に関して、妹さんに何らかの請求をすることは難しいでしょう。


【実家に妹が住んでいても、あなたからは請求することはできない】

妹さんは両親も住んでいない実家に一人で住んでいるとのことで、あなたとしては妹さんに何らかの請求をしたいという気持ちでおられることと思います。

ただ、妹さんの住んでいる家の所有者はお母さんだと思われます。

そのため、妹さんに何らかの請求をするとしても、請求者はお母さんであり、今の段階では家の使用については、あなたが妹さんに対して何らかの請求をするということはできません


【お母さんが亡くなれば特別受益の問題になる可能性もあるが…】

将来的にお母さんが亡くなると相続が発生します。

その段階では、お母さんの家に妹さんが無償で使用・居住していたことにより受けた利益を、お母さんから妹さんへの特別受益だと主張できる可能性が出てきます。

ただ、建物の無償使用というのは、恩恵的要素が強く、一般的に持戻し免除の意思表示がある(お母さんが無償で使うことを認め、相続の際にもその賃料や使用料というものを考慮しなくてよいと考えている)ものと評価されることが多く、特別受益と判断されることは稀です。


【お母さんの状態によっては成年後見も検討すべき】

また、現在妹さんがお母さんの財産を管理しているのであれば、妹さんによってお母さんの預金が引き出されているという事態もありえます。

今後の遺産の目減りを少しでも防止する観点からは、お母さんが自分の財産を十分に管理できる判断能力がないというのであれば、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、お母さんの財産を管理してもらうことができます

ただ、この場合の財産管理は、原則として後見人選任後のみであり、又、今回のような質問のケースでは後見人は司法書士や弁護士になる可能性が高いため、その場合には、後見人の報酬として月額3万円程度の出費が必要になります。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
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17:03 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺言公正証書が偽って作成されていた【Q&A №552】

2016/12/22



【質問の要旨】

姉の公正証書遺言が知らないうちに作成されていた

記載内容 公正証書遺言 遺産相続 排除

【ご質問内容】

子供の居ない姉(84歳)が先日孤独死で亡くなりました。

主人は十三年前に亡くなっています。

姉の残した遺産についてお尋ねします。

姉弟は亡くなった姉、兄、私、妹の四人です。

姉は高齢で糖尿病も患い一人でいることを心配していました。

兄が実家を継いでおり一年半前兄嫁から姉を実家に引き取り面倒を見ることで姉と同意したので、ついては引取る為の手続きで戸籍謄本、住民票、印鑑証明が必要なので送ってほしいとの依頼があり了承し、下の妹も同様に兄嫁宛におくりました

姉は兄嫁に言われるまま預貯金先等を回って兄嫁は金額を把握したようです。

その後兄嫁から積極的に帰って来る様に姉への動きは無かった様です。

先日四十九日に皆が集まった際、兄嫁から遺言書が出て来たと言って公正遺言証書が作成(作成日は一年前)されていた。

兄嫁の兄が税理士をしておりその兄が証人もう一人は税理士仲間の方でした。

推定預貯金五千万、不動産三千万のうち兄と兄嫁、その娘二人に行くように明記されて、遺言執行者は兄の娘となっています。

私と妹はそれぞれ百万円となっていました。

お尋ねしたいのは姉を引取らずそして法に疎い姉を操り税理士の兄と結託した兄嫁が、私達姉妹を姉の遺産相続から排除する為に一年半前に兄嫁宛に送った印鑑証明等がまさかの公正遺言証書作成目的に流用されたと思われます

法的に対応できますか。

なお、兄は兄嫁に言われるままの人です。

(もっちゃん)






【公正証書遺言を作成するのはあくまでもお姉さん】

あなたとしては、お兄さんらがお姉さんを引き取ってくれると信じ、その手続きのために必要だということで戸籍謄本等を渡したのですから、それが公正証書遺言の作成に使われており、またその内容はあなたに不利なものであったとなれば、だまされたような気持ちでしょう。

しかし、お姉さんの公正証書作成にあなたの印鑑証明書はいりません

なお、遺言書にあなたが些少な財産を受け取ると記載されているので、あなたの戸籍は公証人に提出する必要がありますが、これも遺言書作成に必要だといえばお兄さん側で取り寄せが可能なものです。

そのため、あなたが印鑑証明書や戸籍を詐取されたということでは、お姉さんの遺言書は無効になることはありません

結論を言えば、遺言を作成するのはお姉さん自身ですので、お姉さんが納得して遺言を作成したのであれば、その遺言は有効だということになります。


【判断能力がない場合には遺言書は無効になるが・・】

お姉さんが兄嫁にだまされて遺言を書いただとか、遺言作成当時、お姉さんに判断能力(意思能力)がない状態だったというような場合には、公正証書遺言は無効となる場合があります

ただ、それを証明するのは、公正証書遺言が無効だと主張する側(本件ではあなた)です。

そのため、お姉さんの遺言書作成当時の判断能力を明らかにするための資料(もし、入院されておればそのカルテ、施設に入っておれば行動記録等)を取り寄せされ、当時のお姉さんの状況を確認する必要があるでしょう。

ただ、次の点は知っておかれるといいでしょう。

公正証書遺言は、自筆証書遺言とは異なって、公証人が遺言者であるお姉さんに判断能力があるか、遺言の内容がお姉さんの意思に沿ったものかどうかを直接お姉さんに確認した上で作成しますので、一般には公正証書が無効にされることは少ないです。

【遺留分減殺請求はできない】

兄弟姉妹の相続の場合、遺留分は認められていません

そのため遺言書が有効なら、貴方としてはその記載に従うしかありません。

あなたとしては前記しているように、お姉さんの判断能力がなかったという点でその裏付け資料をしっかりと収集されるべきでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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17:50 相続と借金 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

亡父の同居女性からの葬儀費用、保険金の請求【Q&A №549】

2016/12/14



【質問の要旨】

亡父の同居女性から立替金と死亡保険金を請求された

記載内容 立替金 死亡保険金 遺言書

【ご質問内容】

離婚し、音信不通だった父が病死したとの連絡がありました。

同居している彼女から生前の治療費、介護費、葬儀代等の立替金120万円と死亡保険金200万円の請求が弁護士を通じてきました。

保険金については、死ぬ前日の日付で遺贈するとの遺言書があるが、捺印はなしです。

父の預金通帳が見つかりましたが、100万円ほどの預金は亡くなるまでにほぼ全額引き出されており、使途は不明です。

彼女は預金のことは知らないと言っています。

この請求は妥当なもので、請求に応じなければならないのでしょうか?

あちらは訴訟の手続きを進めているようですので、こちらも弁護士に依頼することになると思いますが、その際にかかる費用と勝率はどれ位になりますか?

また、和解するならこちらは幾らくらい支払うのが妥当でしょうか?

(みち)





【生前の治療費・介護費は相続債務である】

お父さんの彼女から、生前の治療費、介護費、葬儀代等の立替金と死亡保険金を請求されているとのことですが、それぞれ法的な扱いが異なりますので、分けて説明いたします。

まず、生前の治療費、介護費は、被相続人自身の債務ですのでお父さんの相続人がその債務をそれぞれの相続分に応じて相続しますので、支払いをする必要があります

ただ、本当にそのような債務があったのか、又、その債務の支払いを彼女がしているのか(お父さんの財産から支払いされているのではないか)を確認する必要があります。

もし、そのような裏付証拠があるのなら、立替金を返還する必要があるでしょう。


【葬儀費用は相続債務ではない】

これに対し、葬儀費用は、被相続人の死亡後に発生するものですので、相続債務にはならず、原則として被相続人の葬儀の喪主を務めた人が支払うべき費用と考えられています

ただ、調停での解決では、実務では法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いた上で出席した他の相続人に分担してもらうことで解決する場合が多いです。

ただ、今回のケースは喪主である彼女は法定相続人ではありません。

このような法定相続人以外が喪主になったケースについては、過去の裁判例の中に、葬儀費用を相続人(2人のうち1人は葬儀にも参列しなかった)に請求できないと判断したものがあります(過去の相続ブログQ&A №545及び【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか)ので、この判例を参照の上、対応を考えられるといいでしょう。


【押印のない遺言書は無効である】

さらに、保険金については、亡くなる前日の日付で遺贈するとの遺言書があるようです。

遺言書は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています(民法968条1項)ので、押印のない遺言書は無効 です。

ただ、押印がなくても、遺言書を入れた封筒の封じ目に押印があれば、封筒と内容の遺言書本体とは一体と考えられ、捺印があったことになり、有効な遺言書になります(最判平成6年6月24日・家月47巻3号60頁)。

本当に封筒の方にも押印がなかったのかどうかの確認が必要でしょう。


【100万円の引き出しについて、証明はあなたがしなければならない】

さらに、お父さんの口座にあった100万円ほどの預金は、亡くなるまでにほぼ全額が引き出されていたとのことですが、お父さんの彼女が引き出したと主張する場合、その証明はあなたがする必要があります。

そのためには、あなたとしては預貯金の払戻書のコピーを取り寄せし、署名欄に記載された筆跡を検討し、彼女が引き出したことを確認する必要があります(この点について詳しくは、過去の相続ブログ【Q&A №502】をご参照ください)。


【弁護士費用と勝率、和解について】

弁護士費用については、以前は弁護士会の報酬規程がありましたが、現在は弁護士によって異なりますので、依頼する弁護士に直接確認する必要があります。

次に勝率、和解については、具体的な事案によって大きく異なりますので一概には言い切れません。

一度弁護士に相談に行き、具体的な事情やお持ちの資料等を説明した上でお聞きになるとよいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
15:44 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★叔父の葬儀費用を請求したい【Q&A №545】

2016/12/02



【質問の要旨】

連絡がとれない相続人に葬儀費用を請求できるのか

記載内容 お葬式代  請求

【ご質問内容】

叔父のお葬式代について質問があります・・・ぜひ回答ください。
まずは必要な情報としてプロフィールを見てください。

【叔父】
離婚歴あり娘が4人で叔父は今は独身
叔父や私たちは娘さんたちとは離婚したあとに連絡先を知らずにとれない状態です
でも娘さんたちが叔父の財産を引き継ぐとおもいます。

【私の父】
・叔父からみたら弟で男兄弟は父だけ。他の兄弟は叔父からみたら姉が4人います。
お葬式の喪主は父がしてお葬式代を父がだす形になるとおもいます。
ちなみに娘さんたちは探す予定です。財産分与の件もありますので。

ここから質問です。質問は3点あります。

① もし娘さんたちが見つかり、この場合は財産を引き継ぐ娘さんたちにはお葬式代は請求できないんでしょうか

② もし請求ができたら回収できる確率はどれくらいでしょうか?
(前例などあればいけるとおもっていますがこのような少し変わった事例などで裁判費用を回収できたということがあったのなら助かります)

③娘さんたちが叔父の財産を引き継ぐ引き継がないなどの2つのパターンでも請求ができるできないとかなどの選択肢が変わるようなこともあるんでしょうか。

お手数掛けますがどうぞ回答の方をよろしくお願いします。

(ゆき)







【叔父さんが死亡したときの相続関係】

叔父さんが遺言書を作成せずに死亡した場合、配偶者はないため、その遺産は叔父さんの娘4人(以下、娘4人と言います)が法定相続します

あなたのお父さんは、上記娘4人が全て相続放棄をしない限り、相続人になりません


【葬儀費用の負担について】

相続債務であれば、遺産から支払いを受けることが可能です。

例えば、叔父さんの治療費などが生前に支払いされていないのであれば、相続債務として、叔父さんの相続人である娘4人が支払義務を負います。

しかし、葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するものであり、相続債務ではありません

葬儀費用は喪主が負担するものです。

お父さんが喪主になるのであれば、葬儀費用を負担することになります。


【喪主が負担した葬儀費用の請求】

葬儀費用は前記のとおり相続債務ではありませんが、法定相続人の一人が喪主になり、葬儀費用を支払った場合、その費用の分担を他の相続人に請求可能かという点については、他の法定相続人が葬儀に出席している場合には、その葬儀費用が適正であり、かつもらった香典額を差し引いたうえで、他の相続人に分担してもらうことが実務上、多いです

この場合、遺産分割とは別に、その葬儀費用を別途支払いするというのではなく、遺産分割での取得額から分担額を減額するということが多いです。


【今回の質問のケースで葬儀代は請求できないか?】

しかし、今回のケースは喪主が法定相続人ではないため、遺産分割の中で葬儀費用を分担するという実務と同視できないでしょう。

今回のようなケースに参考になる過去の裁判例としては、次の裁判例が参考になります。
【相続判例散策】葬儀費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)

この裁判例は、《兄弟の葬儀費用を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できない》と判断しましたが、その理由は、《葬儀は行うか否か、どの程度の規模にするか、どこまで費用を掛けるかは喪主が決定するのだから、喪主が費用を負担するのが妥当》というものでした。

この裁判例に従えば、娘4人に葬儀費用を請求するのは法的にはむずかしいという結論になります。

ただ、前記判例では甥姪2人のうち、1人は葬儀に参加していたようですが、2人ともにつき、葬儀費用の分担をする必要はないとの判断でした。

もし、娘4人が葬儀に出席していたのであれば、法的にはむずかしい点はあるものの、請求し 、支払いを拒否されたのに納得できないのであればあきらめるというが妥当なところだと思われます。

なお、お父さんには、葬儀代は返還してもらえない可能性があることを前提に、葬儀の規模や費用を判断するようにアドバイスされるといいでしょう。


【叔父さんが生きているのなら】

ただ、叔父さんが現在も生きておられ、かつ判断(意思)能力があるのなら、現時点で叔父さんと話をし、葬儀費用を預かるといいでしょう。

この場合、葬儀費用としてお金を預かることを明確にし、もし、金銭的に過不足が出た場合にどうするかという点も書面などで明確にしておくといいでしょう。


【娘らが相続放棄をした場合】

仮に4名の娘全員が相続放棄をした場合には、お父さんらの兄弟が相続人になる可能性があります。

この場合、喪主であるお父さんから、遺産分割の際に、葬儀に出席された他の法定相続人に対して葬儀代の分担を求められるといいでしょう

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
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