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息子の妻による年金の使込みと不当利得【Q&A №673】

2020/01/21


【質問の要旨】


・祖母が息子夫婦と同居。
・息子の妻が、祖母の年金を全額出金し、使途の報告もない。
・遺言書作成を提案したが断られた。
・息子の妻が使い込んでいる祖母の年金を取り戻せるか?

673

 


【回答の要旨】


・祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない
・相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる
・今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる
・相続人である母として今すべきことは証拠集めです

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

二世帯住宅で一階には祖母一人、二階には息子夫婦が住んでいます。
祖母は買い物、ご飯の支度を同居の嫁に依頼しているのですが買い物を頼んでも『売り切れていた』『買いに行けない』等と言われるため孫の私が月一回程度祖母の家を訪ね買い物をしています。
そして夜とお昼は『お金を払わないと作ってもらえない』と祖母は毎月数万円を払っているそうです。
ですが嫁が用意するのは惣菜やレトルト。
温めるだけのうどんに3切れのカステラの日も。
栄養も愛情もないご飯を祖母は一人で食べています。
嫁は習い事やアルバイトや実家に帰るなどほとんど家にいません。
とても祖母の世話をしているとは言えないし、祖母が大事にしてもらっていない事はよくわかります。

年金も全額嫁が出金し、何に使っているのか報告もないと祖母は言っています。
以前祖母や実の娘(私の母)がお金の事を聞くと怒り出したそうで、旦那すら怖くて口を出さない状況になっています。

以前祖母は『死んだらお金は全部嫁がとるだろうね。あの人は怖い人。』と言っていました。
遺言書を提案したのですが高齢の母には面倒だと断られています。
祖母もボケはじめ、体調も悪く、この先の相続などを考えても嫁がいいようにするのが目に見えており許せません。

嫁が使いこんでいる祖母の年金を取り返す事は出来るのでしょうか?

(鳥越孫)



 ※敬称略とさせていただきます。

【祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない】

祖母は、息子の妻に勝手に使い込まれた年金について、返還請求(根拠は不当利得返還請求又は不法行為の損害賠償請求)をすることができます。
ただ、祖母が生きておられますので、その請求ができるのは祖母だけです。
もっとも、本件では、祖母は遺言書の作成ですら面倒であると拒んでいる状態であり、祖母に返還請求する意思があるか疑問です。
むしろ、祖母の置かれている状況から見れば、返還請求は難しいかもしれません。

【相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる】

祖母が亡くなられた場合、あなたの母は法定相続人になります。
そのため、祖母の持っているその息子の妻に対する請求権も相続され、法定相続分の限度で請求することが可能です。
また、息子の妻の使い込みに、息子が協力しているのであれば、息子も共同不法行為をしたものとして賠償責任を負いますので、母としては息子に対する請求も考えられるといいでしょう。

【今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる】

現在、祖母の判断能力が低下してきているということですが、まったく判断能力がなくなれば、成年後見制度(補助、補佐、成年後見)を利用して、家庭裁判所によって選任される弁護士や司法書士といった専門家等に祖母の財産管理を委ねることが考えられます。
母からの申立ても可能ですので、検討されるといいでしょう。
ただ、祖母が返還請求を行う場合や成年後見制度を利用する場合、祖母と息子の妻は同居しているので、息子やその妻との関係が悪化し、祖母が家に居づらくなること等が考えられます。
今、一番に考えるべきは、祖母の残されたこれからの生活を実りあるものとすることでしょう。
その観点からいかなる対応が望ましいのかを検討されるといいでしょう。

【相続人である母として今すべきことは証拠集めです】

最後に、母としては、将来の遺産分割を考え、現段階で祖母にどのような預貯金があるのか、また、無断で出金されているのはどれなのかという証拠集め(祖母からの聞き取り、預貯金通帳のコピーなど)をしておき、将来の発生するかもしれない争いに備えておかれるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
13:08 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

預金使い込みと相続税【Q&A №672】

2020/01/14


【質問の要旨】


・認知症で施設に入所中の父の貯金から、弟が不正に出金している(10年間で4000万円)。
・不正出金については、黙認するつもりでいる。
・父の死亡時、不正出金についても相続税の課税対象となるか?
(弟は相続税を支払えない見込みである。)

672

 


【回答の要旨】


・法律上、父の有する不当利得返還請求権は遺産になり、相続税の課税対象になる。
・遺産に入れると相続税の基礎控除額にほぼ匹敵する額になるので、税理士に相談し、具体的な相続税申告のための対策を検討するのが望ましい。

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

長文ですが、よろしくお願い致します。
まず、被相続人・相続人としての家族関係は、父、私(兄)、弟の3人になります。
母は他界しております。

父は重度の認知症と診断されてから今に至るまでの10年間、施設にお世話になっております。
(後見人制度は使っておりません)
父の入居から今に至るまで、弟が父の貯金をキャッシュカードを使って勝手に引き出してることがわかりました。
その額は10年間で4千万円になります。

弟に事情を聞くと、生活費や旅行代として弟の家族の為に使っていたことがわかりました。
また、父に無断での使い込みであり、贈与でないこともわかりました。

弟には持病があり、収入もかなり低く、また子沢山であることから経済的に困窮していることを、私は知っていますので、使い込みを責めるつもりはありません。
また、将来父が亡くなり相続が発生する際にも不当利益返還請求などをするつもりもありません。
むしろ、甥や姪達の為に今後も使い込みを黙認するつもりです。
よって、相続争いにはなりません。

ここからが質問となります。
父が亡くなった際の相続税を懸念しております。
既に使い込んだ金額も相続税の課税対象になるのでしょうか?
対象となる場合、弟は相続税を支払うことができません。
ご多忙の中恐縮ですが、ご教示をお願い致します。

(もんじろう)



 ※敬称略とさせていただきます。

ご相談内容は、相続税に関するものです。
弁護士は法律の専門家ですので、主として法律面からの回答をします。
税金の専門家は「税理士」ですので、正確なことは税理士に相談されるよう、お勧めします。

【法律上は、父の有する不当利得返還請求権は遺産だと言わざるをえない】

弟が父の財産を無断で使いこんだことが間違いないのであれば、法律上、父は不当利得返還請求権という債権を有していることになり、この権利は遺産を構成することになります。
父からもあなたからも、不当利得返還請求をするつもりはないとのことですが、権利者が請求をしなくとも、権利は存在します。
そのため、税務署から遺産だと言われれば反論はできないでしょう。

【専門家である税理士に相談を】

前項に記載したように、法律上はこの請求権も遺産になりますので、相続税を申告するのならこの権利を加算する必要があると言わざるをえません。
ただ、父の相続人は2名ですので、相続税の基礎控除額は4200万円になります。
不当利得請求権額4000万円は、この基礎控除額にほぼ匹敵する額です。
他に高額な不動産などの遺産があれば、かなりの多額の相続税を支払う必要があります。
特に弟が税の支払いができないということになると、あなたが税を全額負担するということになります。
《ここからが税の専門家である税理士の出番になります》
そのため、どのような税務申告をしたらいいか、相続税をできるだけ安くする方法はないか、税理士の知恵を借りるために税務相談をなさるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
16:45 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

叔父による無断解約と不当利得【Q&A №671】

2020/01/14


【質問の要旨】


・祖母は現在施設に入所中。相談者がキーパーソンとなったが、以前同居していた叔父夫婦が頻繁に不正出金していた。
・年金の引き出し、死亡保険の解約、定期預金解約、100万円の取り込みなどがあった。
・祖母のお金から毎月10万円を叔父に振り込むようにいわれた。払う必要はあるか?

671

 


【回答の要旨】


・祖母の口座からの出金は無断で祖母のために使われていないのなら返還請求できる
・保険の解約返戻金を叔父が取得したなら返還請求できるし、贈与なら遺産に持ち戻しができる
・定期預金を解約したお金を叔父が取得した場合、無断なら返還請求できる
・叔母が受け取った100万円の出金は無断なら返還請求できる
・同居していた時の慰謝料を支払う必要はない

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

祖母は元々、父の兄夫婦と一緒に暮らしておりました。
今は、老人ホームへ入っています
老人ホームに入ってからは私がキーパーソンとなり身の回りのことをやっていますがそこで疑問があります。
◎叔父から預かった祖母の年金が振り込まれる通帳を見ると、年金が振り込まれた当日か翌日には全額が引き出されていました。叔父の話では2ヶ月で十万の生活費をもらっていると言う事でしたが全額
◎祖母は死亡保険を毎月2万払っていましたが、その保険を叔父は独断に解約していました。計算してみると数百万です
◎定期のお金があり、叔父が祖母の定期を解約したと話していたのですが、叔父がしてもいいものなのでしょうか??そのお金も祖母のお金に振り込まれた形跡はありません。
◎祖母の通帳を私達に渡す時叔母が結婚前に貯めた貯金がなくなってしまったからと祖母のお金から100万円もらったと言っていましたが、叔父の独断でもらっていいものなのですか??
◎叔母の結婚前のお金と言っても今から40年以上も前の話で家も2回も立て直してたらお金はなくて当然だと思うのですが。
◎通帳を私達に、渡す時、毎月約10万のお金を叔父に振り込むように言われました。
同居してた時の慰謝料だと話していますが、払う必要はありますか??
私がキーパーソンとなってからは、叔父家族は全く祖母に関わらなくなり、そんな叔父家族にお金だけ取られる事に疑問を感じています。

(やま)



 ※敬称略とさせていただきます。

【祖母の口座からの出金は無断で祖母のために使われていないのなら返還請求できる】

まず、祖母との同居時、年金が振り込まれるたびに年金分が引き出されていたとの点ですが、これを叔父が無断でしたのであれば、不正出金として、祖母から叔父に対して返還請求をすることができる可能性があります。
返還請求できるためには、
① 叔父が祖母に無断で出金したこと
② 叔父が出金した金員を取り込んだこと
を証明することが必要です。
ただ、同居している者が出金してはいるが、その額が多額でなく、祖母の生活費のために使用していたような場合には、祖母のために使われたものとして、②の要件を満たさず、返還請求ができません。
ご質問には、叔父が「2か月に10万円程度」もらっていたとの記載もあります。
祖母のもらう年金の中から、その一部である月5万円を叔父に渡していたというのであれば、それに祖母が同意していれば、叔父の生活費の補助あるいは同居して祖母の面倒を見たお礼の意味合いもあり、返還を請求をすることは難しいでしょう。
ただ、年金額がかなり多額であり、生活費を大幅に上回っている場合に叔父がその全額を出金して行方不明であれば、祖母が同意していないことを条件として、叔父の取り込みとして返還請求が可能になります。

【保険の解約返戻金を叔父が取得したなら返還請求できるし、贈与なら遺産に持ち戻しができる】

次に、祖母の保険契約を解約することができるのは、契約の当事者である祖母だけです。
そのため、叔父が独断で、祖母の保険を無断で解約したのであれば当然、解約の効果はなく、無効です。
ただ、保険解約には、本人の署名又は祖母から実印付きの委任状を保険会社に提出する必要があります。
本件においても、祖母の署名及び実印付きの委任状が保険会社に提出されているものと思われます。
そのため、保険会社にどのような書類が提出されたのかを確認する必要があります。
祖母の筆跡で叔父に委任状を渡している書類が存在する場合には、祖母の同意があったと判断される可能性が高いでしょう。
同意があったと判断される場合でも、解約返戻金は祖母が受け取るべきものですので、叔父がその解約返戻金を祖母に無断で取得していた場合には、不当利得となり、祖母は叔父に対して返還請求ができます。
なお、祖母が、叔父が出金・使用することを同意していた場合には、その分は生前贈与であり、「特別受益」として、遺産分割の際に遺産に持ちもどされ、叔父が遺産の先払いを受けたものとして扱われることを知っておくといいでしょう。(リンク:Q&A №334をご参照ください。)
【定期預金を解約したお金を叔父が取得した場合、無断なら返還請求できる】

定期預金についても、基本的には保険と同じです。
叔父が祖母に代わって解約するのであれば、祖母の取引印と委任状が必要になりますので、それが提出されている限りは、叔父が祖母に無断で解約したと立証するのはなかなか難しいです。
ただ、解約したお金を叔父が祖母に無断で取り込んでいるのであれば、不当利得になりますし、祖母が叔父にあげたのであれば、贈与になります。

【叔母が受け取った100万円の出金は無断なら返還請求できる】

叔母が受け取った100万円についても、基本的に前記と同じで、祖母に無断であれば叔母に不当利得として返還請求が可能になりますし、また、そのような行為をした叔父について不法行為で損害賠償を求めることもできます。
そのため、ここでも預貯金の払い戻し書類を確認しておく必要があります。
ただ、キャッシュカードでの出金の可能性もありますが、その場合にはそのカードを保管していた者(おそらく叔父)が引き出したと推定される可能性も高いです。
なお、祖母が同意していた場合には、叔母は法定相続人ではないため、原則として特別受益としての持ち戻しができませんのでご注意ください(リンク:Q&A №668をご参照ください)。

【同居していた時の慰謝料を支払う必要はない】

叔父が「同居していた時の慰謝料」という主張している点については、細かな事情が分かりませんが、まず、このようなケースで慰謝料が認められることはないでしょう。
 又、叔父への月10万円の支払いも、祖母の意思を確認する必要がありますが、明確に《そのようにして欲しい》という回答でない限り、支払いの必要はありません。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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16:37 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

年末年始休業のお知らせ

2020/01/08
本年の業務は12月27日(金)の午前まで、
新年の業務は2020年1月8日(水)から

とさせていただきます。

そのため、上記期間中に頂いたお電話・FAXまたはメールについては、
1月8日(水)以降に順次返信させていただきますので、
予めご了解くださいますようよろしくお願い申し上げます。

また、上記期間中は「相続問題Q&A」の回答期間が伸長しますことを、
予めご了承くださいますようお願い申し上げます。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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11:39 お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父から母への贈与と特別受益【Q&A №670】

2019/12/19


【質問の要旨】


・亡父が生前、母と姉に土地を贈与。
・母は病気がちの父を助けるため農業に尽力し、一方で姉は何もしなかった。
・母への贈与は、姉と同様に特別受益になる?寄与分は認められる?

670

 


【回答の要旨】


・原則として、父からの生前贈与は遺産の先渡し(特別受益)となる
・持戻し免除の意思表示があったといえれば持戻しは不要
・母は、持戻し免除の意思表示の主張をすべき
・寄与分についても主張はすべき

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

今年の3月に父が91歳で亡くなり、母(90歳)と姉と私の間で遺産分割協議を進めています。
30年前、姉は家を建てるとき父から土地の贈与を受けていました。
姉もこの土地が特別受益になると認めています。
また、25年前、母も父から住んでいる家の敷地(2/3)の贈与を受けています。ところが、姉は母が父から贈与を受けた土地についても特別受益になると主張しています。
私の両親は農業を営んでいて、父は病気がちで、母が中心となって働いていました。
父は生前、母が農家を維持するのに多大きな貢献をしてくれたことへの感謝と、自分が亡くなっても母が困らぬように母に土地を贈与したと言っていました。
姉は父に何の貢献もしなかったのに土地をもらいましたが、母は農家の嫁として一生懸命に働き、父に尽くしてきました。
このことから私は、母が贈与を受けた土地を特別受益とする姉の主張は不公平で納得がいかなく、逆に母に寄与分が認められるのではと思いますが?

(ももクロ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【原則として、父からの生前贈与は遺産の先渡し(特別受益)となる】

生前に法定相続人のうちの誰かが被相続人から財産の贈与を受けている場合には、《特別受益》として遺産に持ち戻します。
これは、相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えてのことです。
そのため、父から姉への土地の贈与も、父から母への自宅敷地の贈与も、原則的には特別受益となり、遺産分割の際には、遺産に持ち戻して計算することになります。

【持戻し免除の意思表示があったといえれば持戻しは不要】

ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません。
黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断すると考えられています。
具体的には、
①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させる必要がある場合
②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている場合(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)
③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)
などでは、明示的な持戻し免除の意思表示がなくても、黙示の持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性があります。

【母は、持戻し免除の意思表示の主張をすべき】

ご質問の事案の場合、父が生前に、母が農家を維持するのに大きな貢献をしてくれたことへの感謝と、自分が亡くなっても母が困らぬように母に土地を贈与したと言っていたとのことですので、母は上記父の発言を理由に、持戻し免除の意思表示があったと主張すべきです。
実際に、母は病気がちの父のために農業に尽力されたとのことですし、上記具体例の中の③妻の老後の生活を支えるための贈与との意味もあると考えられますので、持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性は高いと思われます。
※なお、相続法改正により、2019年7月1日以降に、婚姻期間が20年以上である配偶者に対して、居住用建物又はその敷地を贈与した場合には、原則として、持戻し免除の意思表示を推定し、遺産に持ち戻さないことになりました。
今回の事案では、直接この改正の対象になるわけではありませんが、亡くなられた方の配偶者を保護しようとする最近の流れからすれば、今回の事案でもある程度有利に働くのではないかと思われます。

【寄与分についても主張はすべき】

最後に、寄与分についてですが、寄与分とは、「被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした」場合に認められるものであり、通常期待される程度を超える貢献が必要とされています。
母は病気がちの父に代わって、必死に働き、家計を支えてきたものと思われますが、寄与分はなかなかハードルの高い制度ではあります。
仮に認められたとしても、その額は200万円~300万円程度であり、また、特別受益と寄与分の両方が認められるということは通常ありません。
被相続人のために寄与した分は、特別受益という形で評価されていると考えられるからです。
そのため、寄与分の主張はすべきですが、なかなか認められないですし、特別受益の持ち戻し免除のほうが母の利益としては大きいということはご理解いただいたほうがよいと思います。
大澤龍司法律事務所
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16:55 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母に代わって不正出金を取り返すには【Q&A №669】

2019/12/13


【質問の要旨】


・母の預貯金から兄が不正出金。兄は贈与を主張。
・母の長谷川式は10点で、認知症との診断。
・母が遺言を理解できる旨の診断書作成を医師に依頼したが、断られ、弁護士との委任契約を理解できる旨の診断書も断られた。

669

 


【回答の要旨】


・生存中は、不正出金の返還請求は母のみができる
・長谷川式10点では判断(意思)能力なしの可能性が高い
・今、すべきことは、後見人の選任でしょう
・兄がもらった分は、将来の遺産分割に遺産に持ち戻される
・証拠集めもしておくとよい

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

母の預貯金を管理していた兄が、不正出金し、自分名義の通帳に100万入金、兄嫁に16万使用させ、その分は、返済。
500万ちかくあった預金は、280万に減り、2年前に、満期になった100万は店頭で受取取得。
返済要求に対してもらったと主張。(証拠はない)
母の記憶力の低下が、気になり、病院を受診し、弁護士との委任契約の理解の診断書をお願いしましたが、アルツハイマー型認知症と診断され、長谷川式の点数が10点でした。
病院の先生は、好意的で診断書を作成かしてくれようとしていましたが、公正証書遺言も重ねて考え、遺言の理解の診断書(簡単な内容の物)まで、お願いしましたら、結局、両方、断られてしまいました。

現在は、私の家の近くの施設に入居し、今後の、母の生活のためにも、不正出金の返済をしたいのですが、母の状態での医師の診断書の取得は、難しいのでしょうか?

(バラ好きな母)



 ※敬称略とさせていただきます。

今回は母がまだご存命の案件ですので厳密には相続案件ではありませんが、相続案件でも同じことが問題となりますので、認知症と不正出金の問題として回答します。

【生存中は、不正出金の返還請求は母のみができる】

この点はすでにご理解されていることと思いますが、母の生存中は、預貯金口座からの不正出金の返還請求ができるのは母のみです。
たとえ子であっても、あなた自身が返還請求することはできませんので、この点はご注意ください。

【長谷川式10点では判断(意思)能力なしの可能性が高い】

弁護士に依頼するのなら、母自身が依頼する必要があります。
その場合、母には判断(意思)能力が必要です。
長谷川式認知スケールは30点満点ですが、母の検査結果が10点となれば、判断(意思)能力がかなり衰えているようです。
そのため、意思能力がないということで、弁護士に依頼もできないことも考えられます。
また、仮に遺言を作っても無効と判断される可能性はかなり高いといえるでしょう。

【今、すべきことは、後見人の選任でしょう】

あなたの立場から言えば、早急にすべきなのは、これ以上の兄の使い込みを防止することです。
そのためには早期に後見人選任の申立てをされるといいでしょう。
後見人が選任されると、財産は全て後見人に移され、不正出金は防止されます。
なお、長谷川式認知スケールは、精神科あるいはメンタルクリニックでなくとも簡単に検査できるので、お近くの開業医に検査してもらい、そのテスト結果をつけて、家庭裁判所に申立てをするといいでしょう。
ただ、後見人はその選任前の不正出金につき、その返還を求めるということは少ないと考えていいでしょう。
特に今回の質問のように、兄がもらったものだと言えば、後見人はそれ以上の追及はせず、あなたに対して、《母が亡くなったのちに、相続問題として争ってくれ》ということになりそうです。

【兄がもらった分は、将来の遺産分割に遺産に持ち戻される】

不正出金の場合、その返還請求権は法定相続分に応じてあなたも相続しますので、母が死亡した場合に兄に請求をされるといいでしょう。
なお、兄がもらったと言っているのなら、それは生前贈与で特別受益になり、その金額が遺産に持ち戻されることになります(http://isansouzoku.osawalaw.com/qa/category/seizenzouyo/" target="_blank" title="生前贈与(特別受益)">生前贈与(特別受益))。

【証拠集めもしておくとよい】

ただ、いつどのような出金があったのか、それを兄が(不正に取得したのであるか、もらったのであるかは別として)取得して、自分の用途に使用したことはあなたが証明する必要があります。
そのため、裏づける資料を集め、将来の裁判の証拠として提出できるように、今から準備をされておくといいでしょう。
具体的には、録音などの方法も駆使することも考えていいでしょう。
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15:26 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続人の配偶者への贈与が相続人の特別受益となるか【Q&A №668】

2019/11/27


【質問の要旨】


・被相続人(父)は生前、姉に土地(2000万円)を贈与。
・その土地の登記は、姉とその夫の1/2ずつの共同名義。
・姉の夫の名義分は、特別受益には該当しないのか。

668

 


【回答の要旨】


・姉への贈与と同視できるか否かで姉の特別受益になるかが決まる
・原則は特別受益に当たらないが、例外的に認められる場合もある
・相続人の配偶者への贈与について、特別受益と認めた審判例がある

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

被相続人の父が死亡し、その相続人は母と姉と私です。
父は、生前に姉に居住用の土地(2000万円相当)を贈与しました。
ところが、土地の登記名義が、姉とその夫の1/2ずつの共同名義になっていました。
姉は、土地の持ち分の1/2は姉の夫への贈与であり、姉の特別受益には該当せず、あくまで1000万円が特別受益だと主張しています。
このような主張は認められますか。

(くまもん)



 ※敬称略とさせていただきます。

【原則は特別受益に当たらないが、例外的に認められる場合もある】

被相続人が相続人に生前贈与していた場合、特別受益として遺産に持ち戻されます。
そのため、被相続人が贈与をした相手が、相続人ではなく、その配偶者であったとき、その贈与分をその相続人の特別受益として認めるべきか、という点が問題になります。
原則としては、被相続人が相続人の配偶者・子らに対して贈与をしたとしても、これは相続人に対する贈与ではないから、特別受益にはなりません。
ただ、例外的に、真実は相続人に対する贈与であるのに、名義のみ配偶者や子にしたような場合には、特別受益に該当すると考えることができる場合があります。

【相続人の配偶者への贈与について、特別受益と認めた審判例がある】

被相続人から相続人の配偶者への贈与について、実質的には相続人の特別受益であると認めた審判例があります。
この審判例では、贈与の遺産に対する割合、贈与の経過や相続人の受けている利益などを考慮して、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、相続人の特別受益とみて遺産分割をすべきと判断し、実際に、相続人の配偶者への贈与について、相続人の特別受益と認めました。(詳しくは【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)参照。)

【姉への贈与と同視できるか否かで姉の特別受益になるかが決まる】

今回は、父から姉夫婦に対して贈与された、居住用土地(2000万円相当)のうち、姉名義の2分の1が姉の特別受益になることは当然として、姉の夫名義の2分の1相当額が特別受益にあたるかどうかが問題となっています。
今回のケースで、姉の夫名義にした2分の1について、実質的に姉への贈与といえるかどうかは、詳しい贈与の経過等を確認する必要があります。
たとえば、遺産に対する割合が大きく、また、姉に贈与する意思であるが、姉の婚姻生活の末永い幸せを願って夫婦の共有という形にしたというような経過があるかなどの事情を考慮し、実質上は姉への贈与であったか否かが判断されるでしょう。
特に姉の夫が父の家業を手伝っていたなど父への貢献があったような場合でなければ、実質的には姉への贈与であると認められる余地があるのではないかと思われます。
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調停申立による遺留分の時効中断【Q&A №667】

2019/11/25


【質問の要旨】


・ 遺留分の調停をしている場合、消滅時効にかからないのか?

667

 


【回答の要旨】


・以前の回答《№54 調停と時効中断の関係の記事》の訂正
・今回の質問の場合、調停中は時効成立しない
・提訴する遺留分減殺請求の内容
・遺留分減殺の消滅時効や時効中断などの法律が改正されています!

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

貴ブログを拝読致しております。
Q&A No.54のA【消滅時効について】です。
「調停を申し立ててから1ヶ月以内に金銭債権について訴えを提起しなければならないのでこの点はご注意ください」と書かれています。
小生の調停は調停開始から既に半年経っています。
まだ具体的な金銭債権についての訴えは提起していません。
父の相続発生は10年近く前です。
遺留分請求は父死後1年以内に行いました。
調停の時効中断がないと、問題終結までに時効に至る可能性がありそうな状況です。
既に調停開始後1ヶ月以上経っていますが、
「どういう形で金銭債権の訴えを提起すれば良いのでしょうか」
「どういう理由で1ヶ月以内でしょうか」
「1ヶ月以上経った現在、何か対応方法はあるのでしょうか」
をご教示頂けたらと存じます。

(柚子胡椒)



 ※敬称略とさせていただきます。

【以前の回答《№54 調停と時効中断の関係の記事》の訂正】

当ブログNO.54についてご指摘を頂いたことから、内容を確認しました。
下線部分が次のとおり間違っておりました。
すみませんでした。

誤「調停申し立てから1ヶ月以内に・・・訴えを提起」
正「調停が不成立に終わった時点から1ヶ月以内に訴えを提起」

以前のブログでは、
調停を申し立てた後、1ヶ月以内(通常はこのような時期は調停が係属中の時期です)に、別途訴訟提起しなければ時効中断しないという回答になっておりました。
しかし、正しくは
調停が不成立(不調)で終了した時点から1ヶ月以内に訴訟提起すれば、時効の効力は中断されるということになります。
要するに、(時効完成前に申し立てられた)調停が続いている間は訴えを起こさなくとも時効は完成せず、調停が不成立に終わった場合でも《1ヶ月以内に》に訴訟を提起すれば時効中断の効果は維持され、時効消滅はしないということです。

【今回の質問の場合、調停中は時効成立しない】

今回の質問では、調停申し立てから半年経っていますが、調停申し立てによる消滅時効中断の効力は維持されます。
また、調停がまとまらず、不成立となった場合でも、その日から《1ヶ月以内》であれば、時効中断の効力が継続しますので、この間に訴訟を提起すればよいということになります。
※誤解と混乱を招いたようで大変申し訳ありませんでした。
(すでにNO.54は訂正を致しましたので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。)

【提訴する遺留分減殺請求の内容】

どういう訴訟を提起したらよいかとの質問ですが、遺留分減殺請求の金銭債権が請求できるケースであれば、遺留分減殺請求に基づく金銭支払請求訴訟を起こすことになります。
ただ、遺留分減殺請求は、弁護士でもかなりややこしい分野と理解されています。
そのため、訴状にどういうことを書くのかを含めて、相続事件に詳しい弁護士に相談をし、できれば事件を依頼することをお勧めいたします。

【遺留分減殺の消滅時効や時効中断などの法律が改正されています!】

今回のご相談は相続開始が10年近く前であるため、その当時の法律が適用されるので、その前提で回答しました。
しかし、平成30年の相続法改正で、遺留分減殺請求権は、新たに「遺留分侵害額請求権」と名称も内容も改正されました。
遺留分侵害額請求権についての消滅時効についても相続開始から10年で消滅するということになり、なんら期間制限のなかったそれまでに比べ、大きく短縮されました。
また、平成29年債権法改正(但し、その効力発生は令和2年4月1日から)で、遺留分減殺の調停を申し立てた場合、調停終了後から6ヶ月以内に訴訟を提起すれば時効は完成しない(調停係属中に時効は完成しない)こととされ、旧法に比べ、訴訟提起するまでの猶予期間が増加することになります。
ご注意ください。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
15:43 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正出金の返還請求の可否【Q&A №666】

2019/11/15


【質問の要旨】


・亡母の預金から3000万円以上を、兄とその子供がATMで出金。
・預金通帳は母が持っていた。
・母が書いた出金メモはあるが、実際の出金額と約1000万円以上の差がある。
・不正出金につき裁判をしても負けるか?

666

 


【回答の要旨】


・判断(意思能力)の確認が必要ではないか
・母の手帳のメモがある分は無断出金とはいえないが、生前贈与で特別受益になる可能性がある
・差額の1000万円は無断出金で、相続分に応じて請求できる可能性がある
・通帳を管理できていたかは極めて疑問
・相続に詳しい弁護士に相談される必要がある

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

去年亡くなった母の預金の不正出金がありました。
85~90歳までの5年間に3000万以上も引き出されていて、母と同居していた兄とその子供がATMで引き出したことを認めました。
兄に説明を求めたら母の手帳を渡されて「○月○日10万円」と書かれていたりしていました。
でも、通帳の出金総額と手帳の出金総額に約1000万円以上の差があるので、近くの法律事務所に相談に行きましたがその弁護士さんからは、出金についての記載が半分以上あるから裁判は負けると言われました。
そして通帳は誰が持っていたかを聞かれ、母が持っていたと伝えるとなおさら無理だと言われました。
なんとなくモヤモヤするのですが仕方ないことなのでしょうか?

【ご質問内容の追加】

法律相談を受けた時にその弁護士さんから「通帳を本人がもっていたなら裁判所は訴えを認めない」と言っていました。
母は自分で通帳を持っていたので無理みたいです。
でも1ヶ月に5~60万引き出されていて普通の高齢者が使う額じゃないので怪しいのですが。
その弁護士さんは、母が植物人間だったり、亡くなってた後だったり絶対に母が引き出せない状況じゃないと裁判はできないと言っていました。本当でしょうか。
もし裁判ができる可能性があるなら、植物人間でもなく、母が通帳を持っていたとしてもそれを跳ね返せるのでしょうか?

(カタアク)



 ※敬称略とさせていただきます。

【判断(意思能力)の確認が必要ではないか】

5年間で預貯金から3000万円もの多額の出金がなされた、その時の母の年齢が85~90歳と聞けば、母に判断能力があったのかどうかが気になります。
ただ、質問はその点に全く触れていませんので、深入りは避けますが、念のために通院していた医院や病院などのカルテを取り寄せすることを考えていいケースです。

【母の手帳のメモがある分は無断出金とはいえないが、生前贈与で特別受益になる可能性がある】

母の手帳に約2000万円の出金のメモがあるようです。
この分については、母が出金を認めていた可能性があります。
ただ、出金を認めていても、母のために使われていないのなら、その出金分は兄が取得していた可能性があり、生前贈与と理解することができます。
法定相続人への生前贈与は、遺産分割においては特別受益として遺産に持ち戻すことができますので、その点を主張されるといいでしょう。
又、母の死亡時にめぼしい遺産が存在しないというのなら、遺留分減殺請求をして、特別受益分2000万円を遺留分減殺の計算の対象となる遺産に持ち戻すという主張をしてもいいでしょう。

【差額の1000万円は無断出金で、相続分に応じて請求できる可能性がある】

問題は差額の1000万円ですが、この分についてはメモがないというのなら、母の知らないうちに出金された可能性があり、無断出金と主張できる余地があります。
母は無断出金者に出金額の返還を請求できる権利(不当利得返還あるいは不法行為に基づく損害賠償請求権)を有することになります。
母が死亡した後は、この請求権は法定相続分に応じて相続人に相続されますので、あなたは出金者に相続分に応じた金額を返還請求されるといいでしょう。
ただ、母にも、当然ながら生活費がかかるので、その分は1000万円から控除する必要がある可能性を考慮されるといいでしょう。

【通帳を管理できていたかは極めて疑問】


相談された弁護士は母が通帳を管理していたのなら、請求はますます困難と回答されたようです。
しかし、管理とはどういう意味なのでしょうか。
管理とは言いながら、約5年間に3000万円も出金があったという事実、しかも同居する兄らがATMで2000万円の出金をしていた事実を考えると、キャッシュカードは兄らが自由に使える状態であり、母が預貯金をきちんと管理していたとは到底言えない状態です。
管理ができていなかったというのが本当のところではないかと思います。

【相続に詳しい弁護士に相談される必要がある】


今回の質問で正確な回答するには、例えば、
① 出金された金がどういう使途に使われたのか?
② なぜ、母のメモの記載している分と記載されていない分があるのか?
③ 母のメモは、出金ごとに記載されたのか、あるいは一時にまとめて記載されたものか?
④ 冒頭の認知症の有無、程度
など、今回の案件について訴訟の結果を予測するには、資料を綿密に検討し、又、いかなる主張ができるのかを判断することが必要です。
そのため、相談料はかかっても、相続に詳しい弁護士に法律相談をされることをお勧めします。
大澤龍司法律事務所
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16:39 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

立て替えた葬儀費用を返してほしい【Q&A №665】

2019/11/11


【質問の要旨】


・6年前に亡くなった息子の葬儀費用の立替分(50万)を喪主から返してもらいたいが、時効にはならないか?
・喪主は、息子の妻(嫁)。

665

 


【回答の要旨】


・時効は10年。6年経っても請求できる
・喪主が立替金を支払う義務がある
・葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある

Q&Aの全文を読む



【ご質問内容】

2013年9月に遠隔地に住んでいる43歳の息子が心不全で急逝しました。
喪主は息子の嫁が務めましたが、心労だろうとの思いから香典の開封集計は嫁が立ち合いの上で近親者4名で行いました。
私はもちろんですが、嫁には相続する財産もなく生命保険金が支給されるまで金銭的余裕が無いだろうとの思いやりから、葬儀社やお寺への支払いは香典だけでは50万円ほどたりず不足分を私が立替えて支払いました。
後日、収支報告書を作成し嫁に渡しましたが、立替えた件は報告書を見ればわかるだろうと敢えて口頭での報告はしませんでした。
遠隔地に住んでいるので、その後顔を合わせたのは数度で 先日、7回忌法要をしましたが金銭の話は切り出しにくく、嫁から話があるかと思っていましたが何もありませんでした。
もしかしたら支払う気持ちが無いのではないか?と不安になりご相談させて頂きます。
喪主に代わって立替えたお金を6年以上経った今でも支払ってもらうことはできますでしょうか?
ご回答よろしくお願いします。

(与太郎)



 ※敬称略とさせていただきます。

【時効は10年。6年経っても請求できる】

まず、今回のように6年も経つと今更葬儀費用の話を言い出しにくい、というのが人情だろういうお話はよく理解できます。
しかし、法律上はこのような個人間の立替金は時効期間が10年です。支出時から10年間は返還請求ができますので、現時点では問題ないでしょう。
これを前提に、以下返還請求できる金額について回答していきます。

【喪主が立替金を支払う義務がある】

今回のお話を整理しますと、葬儀費用は香典から支払い、不足額は追加であなた(被相続人の母)が50万円ほど立て替えて支払ったとのことです。
葬儀社は喪主に費用を請求しますので、あなたとしては喪主に立替えた葬儀費用を請求することになります。
喪主としては、葬儀社から請求されれば支払いをする立場ですので、あなたは立替金を喪主に請求することができます。

【葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある】

ただ、喪主が立替金の支払い義務があることを前提としても、喪主が最終的に、葬儀費用の全部を負担する必要があるのでしょうか。
葬儀費用の負担者については法律に明確な定めがなく、裁判所の判断も扱いが分かれています。
最近の裁判例の傾向としては、基本的には葬儀内容を手配した喪主が全額負担し、香典も喪主が全額受け取るという判断が多い印象があります。
家裁の遺産分割の調停では、葬儀に出席した相続人に対して、葬儀費用が適正であるということを前提として、分担をしてもらう方向で話を進めることも多いです。
もし、その方向で話しが進むのなら、立替金のうち、あなたの負担分(もちろん葬儀費用から香典を引いた残額を、喪主を含む出席相続人の数で分割負担することになると思われる)という解決も考慮しておくといいでしょう。
(なお、相続ブログNo.560に同様の論点が掲載されていますので参考までに。)
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13:34 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正出金とじん肺訴訟【Q&A №664】

2019/10/24


【質問の要旨】


・相談者の祖父が死亡。相続人は、相談者の母とその弟。
・相談者の母の弟が、祖父のお金を不正に引き出していた。その分を返還させることは可能か?
・祖父の死因はじん肺であるが、母の弟の委任状だけで訴訟できるか?
・その場合、勝訴したら、慰謝料は弟がすべて受け取るのか?
・祖父の財産を母が受け取るような方策はあるか。

【ご質問内容】

先日祖父が亡くなり、母とその弟(祖母は亡くなっており受け取りは姉弟の2人)で遺産を分けようとしたところ祖父の生前に弟がお金を引き出していたことが判明。
その詳細はお願いしても見せてもらえず行方が不明。
世話していたのは自分たちだから使っても当然だとの言い分でした。
弟が着服していた分を支払わせることは可能でしょうか。
また、祖父はじん肺が原因で亡くなったため、弟が訴訟を起こすと言っているのですが弁護士への代理依頼の委任状は弟のものだけで訴訟は可能なのでしょうか。
勝訴して慰謝料が支払われる場合、弟が全て受け取ることになるのでしょうか。
どうにかして祖父の生前の財産を母に渡るようにできないでしょうか。
弟の後ろには税理士も弁護士もいるとのことでどう動いてよいのかわからず教えて頂きたいです。

664

(くっく)



 ※敬称略とさせていただきます。


【母は弟に対して、生前引出分についての請求ができる】

遺言書がない場合は、法定相続人は法定相続分に応じて遺産を相続します。
今回のように、子が2人のケースでは、あなたの母とその弟が2分の1ずつ相続するということになります。
生前に、弟が祖父の口座から無断で出金していたのであれば、祖父は弟に対して、損害賠償請求権を持っていたということになります。
祖父死亡後は、祖父の持っていた損害賠償請求権は、あなたの母にも相続されますので、生前の引き出し分についても、母の法定相続分(2分の1)の限度で、母は弟に対して請求することができます。

【生前引出分については、調査と分析が必要】

ただ、母が弟に対して、損害賠償請求をするためには、母の側で、弟が祖父の口座から多額の出金をしたということを証明する必要があります。
具体的には、
① 預貯金口座からの多額の出金の存在
② 出金した人はだれか
③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか
の三点を主張・立証しなければなりません。
このうち、①については、祖父の口座の取引履歴を取得すれば、明らかになります。
取引履歴は、相続人であれば、最長で過去10年分遡って取得することができますので、早急に取り寄せ手続きをされるとよいでしょう。
また、②及び③に関して、今回弟は、「世話していたのは自分たちだから使っても当然だ」などと言っているとのことですので、出金の事実をある程度認めているのかもしれませんが、いつ言い分を変えてくるかわかりません。
そのため、預貯金の払戻伝票などを取り寄せし、筆跡などから、弟が出金に関与したという証拠をできるだけ集める必要があります。
ATMで引き出されている場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見ることにより、どこに置かれた機械で出金したのかがわかり、出金者の特定に役立ちます。
弟が出金したことが判明すれば、③の取得者と使途については、出金した弟が、自分ではないというのならその主張立証をする責任があります。

【意思能力の主張のため、カルテの取り寄せも考える】


無断出金の証明には、カルテが役立つことがあります。
祖父はじん肺で亡くなられたとのことですので、入通院された病院や医院のカルテを取り寄せましょう。
カルテの記載内容や看護日誌の内容等により、祖父の意思能力が判明し、その程度によっては、本人には出金ができなかったと主張立証できる可能性があります。
また、祖父が入院していた時期に多額の出金があれば、それも弟が関与したと主張できる可能性があります。

【じん肺の訴訟は、弟だけでも可能】

次に、弟が弁護士に依頼して進めようとしているじん肺訴訟ですが、これも、祖父が国や企業に対して有していた損害賠償請求権を母や弟が相続して請求するものです。
そのため、母と弟は、祖父が有していた損害賠償請求権の2分の1ずつをそれぞれ有しており、それぞれが国や企業に対して、2分の1の損害賠償請求をすることができるということになります。
したがって、弟は、自分の相続分である2分の1については、一人で訴訟をすることが可能であり、その分だけ弁護士に依頼することももちろん可能です。
その場合、弟がした訴訟の結果には、弟だけが縛られますので、勝訴すれば、祖父の損害額の2分の1を弟だけが受け取る権利を持ちます。
反対に、弟が敗訴したとしても弟だけがその結果に縛られます。
そのため、母としては、弟のした訴訟の結果にかかわらず、別途自分の相続分2分の1について訴訟をすることができます(もちろん、弟が敗訴した場合には、母は訴訟をしないという選択もできます)。

【母が祖父の財産を受け取れるように、今母がすべきこと】

以上の通り、母としては、調査をした上で、
① 弟に対する損害賠償請求(無断引き出し分)
② 国や企業に対する損害賠償請求(じん肺)
をすべきです。
それ以外にも、不動産、預貯金、有価証券等をきちんと調査して、残された財産については、弟との間で遺産分割協議をすべきです。
また、調査する中で、弟が生前に祖父から贈与を受けていることがわかれば、それについては特別受益として遺産に持ち戻して計算することにより、母の受け取り額が増額できることもあります。
いずれにせよ、専門的な知識が必要ですし、調査すべき内容も請求すべき内容も多岐にわたりますので、お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。
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17:00 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産分割の話し合いが難航した場合の手続【Q&A №663】

2019/10/23


【質問の要旨】


・亡父名義の土地・家屋を相続登記しないうちに、母死亡。
・母の遺言書は「相談者にすべての財産を相続させる」という内容。
・姉と遺産分割協議がまとまらない。
・固定資産税を相談者が支払っているが、姉にも支払わせる方法はあるか?
・税未納で競売になった場合、競売代金は相談者に全額支払われるか?

【ご質問内容】

父が死んで、(土地、家名義は父親)、相続登記しないうちに、母が死にました。
母の遺言書は(検認済み)は、私(長男)にすべての財産を相続させる、との内容でした。
それで、他の相続人である姉(結婚して遠方に住んでいる。)との話し合いがつかなかったので、市から送られてきた固定資産税の代表者を放置しておいたところ、勝手に市が職権で私を代表者にして、固定資産税の納入書類を送ってきました。
それには、○○(私の名前)外、と書かれていました。
1、それで、姉に連帯債務だから、固定資産税の相続分を支払ってくれ、といっても、応じてくれません。
それで、差し押さえされると困るので、私が全額支払っている状態です。
年間10万円ぐらいですが、5年間払っているので、姉にも支払わせたいのですが、何か方法はありませんか?(代表者の変更にも応じてくれない)
訴訟しても、金額が低いので、訴訟もできません。
2、このまま、しはらわないで、固定資産税が未納の状態であったため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記をしてしまって、差し押さえ、競売と進んでいった場合、競売代金は、相続人代表者である私に全額支払われるのでしょうか?
受け取って、後で、姉に相続分をわたせばいいのでしょうか?

663

(nanba)



 ※敬称略とさせていただきます。


【現段階での不動産の帰属と固定資産税の負担について】


母はあなたに遺産全部をくれるという遺言書を作成しています。
ただ、父の遺産分割を終わっていませんので、父の遺産分割の手続きが必要になります。
そのため、遺産である不動産は
 あなた  合計4分の3(父から4分の1+母から(遺言で)2分の1)
 姉    父から相続した4分の1
の割合で所有していることになります。
そのため、あなたは姉に固定資産税の負担を請求することができます。
現在、既に請求されているようですが、姉には4分の1の負担を求めるのが相当でしょう。
ただ、あなたがその不動産に居住しているようであれば、あなたが全額を負担することになるでしょう。

【姉が支払いをしない場合は調停を申し立てる】

姉との話し合いが難航しており、遺産分割協議がまとまらないのなら、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てるのが解決への近道です。
調停はあくまで双方の合意を成立させるための手続にすぎず、裁判のように一刀両断に判決を下す手続ではありません。
調停では、主として不動産をどのようにするのか、あなたが全部取得し、代償として姉に不動産の4分の1に相当する金銭の支払いをするのか、などの解決を目指すことになります。
その過程で、姉の未払い分の固定資産税も精算され、問題も解決するものと思われます。
なお、調停が不調になれば、裁判所が審判(家裁でする裁判)で結論を出します。

【滞納固定資産税の扱い】

行政としては、固定資産税等が未払いの場合、滞納処分として問題の不動産を公売することがあります。
この場合、売却代金ですが、全額があなたに配当されるわけではありません。
この代金は、固定資産税のような租税債権や公売費用などの必要経費が控除され、残額は相続分に応じて配分されます。
その結果、売却代金残額の4分の1は姉にも配当されることになります。
なお、あなたが立て替えた固定資産税5年分の金額は、別途姉に対し請求するほかなく、公売代金から直接差し引いてあなたが受け取ることはできません。
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10:04 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続法改正11 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

2019/09/18
【相続人以外の親族が被相続人の療養看護等をしたとき、金銭請求ができるようになりました】

たとえば、被相続人の長男の妻が長年介護をするというような事案は、よくあります。
しかし、これまでの民法では、被相続人の遺産を相続できるのは長男を含む相続人だけで、長男の妻自身には遺産をもらう権利はありませんでした。
これでは、相続人以外の親族による介護などの貢献が報われません。
そのため、今回の改正により、相続人以外の親族が、被相続人の介護や療養看護などを無償でしていた場合、相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになりました。

【たとえば、長男の妻が長年介護をしていたケース】

例えば、被相続人の長男の妻が長年の介護を頑張ってきた事例で考えてみましょう。
長男の妻は親族ですが、相続人ではありませんので、通常は遺産をもらえない立場です。
それでも、被相続人の死亡時点で長男本人が健在であれば、長男の相続分を増やすことができる場合もあります。
しかし、もし被相続人より先に長男が亡くなっていたら、それすらもできません。
これでは、長男の妻の苦労があまりに報われず、不公平が大きいという問題が指摘されていました。
そこで、今回の改正で、長年無償で介護してきた長男の妻などの親族は、次男や長女などの相続人に対して、金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。

【特別寄与料の請求の要件】

特別寄与料の請求をするには、まず、被相続人に対する療養看護や介護、その他労務の提供をしていたことが必要です。
現在のところ、介護や看護が主に想定されているようですが、不動産などの財産管理や事業のサポートも含まれると考えられます。
また、これらは無償でやっていたことが必要で、被相続人から対価や報酬を受け取っていた場合には適用されません。
加えて、被相続人の財産の維持または増加に貢献したことも必要になります。

【特別寄与料の金額の定め方】

特別寄与料の金額と請求は、原則として当事者間での協議で決まりますが、協議が調わないときは、家庭裁判所に決定してもらうことができます。
このとき、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。
この算定にあたっては、相続人が自ら被相続人に対する療養看護を行った場合(寄与分といいます)と同様の算定方法がとられると考えられており、具体的には、以下のような計算式となります。

《計算式》
特別寄与料=第三者の日当額×療養看護日数×裁量割合

このうち、第三者の日当額とは、ヘルパーさんなどの第三者に療養看護をしてもらった場合にかかる日当額を目安にするとされていますが、介護報酬基準額を用いるという考え方もあります。
裁量割合とは、専門家(有資格者)に頼んだ場合よりは費用を控えめに計算するため、0.5~0.8を乗じて、寄与料を減額することになります。
たとえば、長男の妻が、被相続人を2年間にわたり、1日1時間程度介護していたという場合、身体介護(排泄、食事介助、入浴等)の介護費用がだいたい1時間あたり6000円として計算すれば、
  6000円×365日×2年間×0.7(裁量割合)=306万6000円
と計算され、介護をした長男の妻は、他の相続人らに対し、約300万円を特別寄与料として請求できるということになります。
ただ、家庭裁判所で判断をしてもらうことになれば、どの程度の介護をどのような頻度で何時間程度していたのかを何らかの形で立証することが必要になります。
そのため、日頃から介護日記をつけたり、関連する出費のレシートなどを保管したりしておくと良いでしょう。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい特別寄与制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。
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11:54 相続法改正 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

代位登記と遺言書の効力【Q&A №662】

2019/09/18


【質問の要旨】


・父死亡。公正証書遺言では、自宅不動産は長男が相続。
・自宅の固定資産税未納のため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記。
・長男が死亡し、公正証書遺言により長男の子が自宅を相続。
・長男の子が、自宅を自分の名義にするため、抹消登記請求。
・相談者は、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるか。
・なお固定資産税は、長男及び長男の子が分納。


【ご質問内容】

12年前に亡くなりました父は公正遺書を作成しています。
そこでそこに明記された相続人で貯金は分配済みです。
今問題になっておりますのは実家です。
公正書により長男が相続するはずでしたが未登記のうちに固定資産税未納で市により強制代位登記をされ当時の法定相続人5人が当分割で共同相続されています。(権利登記簿による)
長男の死により今孫(長男の子)が自分の名義にするため抹消登記のための手続きを要請してきました。
なお、固定資産税は分納しておりわたしたちへの和解金次第で完済するかどうか決めるようです。

わたしとしては固定資産税の5分の1の和解金のために共有物分割請求訴訟をしたいのですが可能でしょうか?

なお、実家は公正遺書により孫に遺贈すること、となっております。
私は代位のために債権者でもない一法定相続人ですが実家の5分の一の権利が代位されています。
なお私以外にもうひとりの法定相続人が和解金請求を長男の孫に要請しています。
債権者でない私の立場でできることをご教示下さい。
土地の鑑定は必要ですか?
よろしくお願いします。

662

(かっさん)



 ※敬称略とさせていただきます。

【ご質問内容の整理】

ご質問内容を以下の通り整理して回答いたします。
 ① 父が死亡した。父の公正証書遺言によれば、自宅不動産は長男が相続することになっていた。
 ② しかし、自宅の固定資産税が未納の状態であったため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記をしてしまった。
 ③ 長男が亡くなり、長男の公正証書遺言により自宅を相続することになった長男の子が、自分の名義に戻そうと、抹消登記請求をしようとしている。
 ④ 父の相続人としては、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるだろうか。
 ⑤ なお、実家の固定資産税は、長男及び長男の子が分納で支払っている。

【他の相続人が遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは難しい】

まず、結論としては、遺言の存在を知らない第三者ならまだしも、遺言の存在を知っている他の相続人が、遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは、法的には難しいと思われます。
以下、その理由を説明します。

【債権者代位による相続登記とは】

通常、相続登記をする場合には、相続人が申請するのが原則です。
しかし、相続人又は被相続人の債権者が、自らの債権を保全するために登記申請をすることも、例外的に認められています。
今回のご質問の事案でいうと、固定資産税の支払請求権を有する市が、相続人らの財産を差し押さえるため、まずは法定相続分通りに相続登記をしたということです(おそらくその後、市による差押え登記もされていると思われます)。

【長男は、遺言記載の事項を他の相続人に対して主張できる】

以上の通りの代位登記の仕組みからすると、法定相続分通りの代位登記がされているとしても、実体としては遺言書どおり、自宅は長男(長男が亡くなった後はそれを引き継いだ長男の子)のものです。
そのため、あなた方他の相続人が、相続登記に基づいて権利主張をすることはできません。
ご質問によると、共有物分割請求を考えておられるとのことですが、上記の通りあなた方は所有権等の権利を有しているわけではありませんので、「共有」の事実がなく、共有物分割請求はできません。

【ただ、長男の子から解決金を支払ってもらうことはありうる】

もっとも、ご質問によると、長男の子は抹消登記請求をしようとしているようです。
抹消登記をする際には、被相続人を登記権利者(実際には真実の相続人である長男の子)、相続登記の名義人を登記義務者として共同で申請する必要があります。
そのため、長男の子としては、相続登記の名義人であるあなた方の協力なしには抹消登記をすることができず、協力が得られなければ訴訟を提起して判決を得て、抹消登記をすることになります。
したがって、あなた方としては、この手続きに協力する代わりに、解決金としていくらかの金銭(長男の子が訴訟をする際には弁護士に依頼する必要があると思われますので、その弁護士費用相当額くらいが解決金として妥当なところかと思います)を支払うよう、長男の子に対して求めるとよいでしょう。
また、もしもあなた方が実家の固定資産税の一部でも負担してきた事実があるのであれば、あなた方は長男の子に対して、支払った固定資産税の返還を求める請求(不当利得返還請求といいます)をも合わせて行い、解決金や固定資産税分の支払があれば抹消登記に協力するという姿勢をとられるとよいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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相続法改正10 相続財産に対する差押の効果見直し

2019/09/17
【父に借金があった場合に問題となる】

相続は財産も承継する代わりに、借金など負の財産(相続債務)も承継します。
今回はこの相続債務に関する法改正です。
相続債務というのは、亡くなったお父さんの負債、たとえば亡くなったお父さんに多額の借金があった場合、というイメージで捉えていただくとよいでしょう。

【知人に借金をしていた父の例】

今回の改正は非常に難しいため、参考ケースとして

・死亡した父は自宅不動産を所有していた
・父は、「自宅を長男に相続させる」と書いた遺言を残して死亡した。
・相続人は長男Aと二男Bの2名のみ
・その後、父は知人Xに1000万円の借金をしていたことが判明した。

という事例をベースに改正法を説明していきます。

相続法改正

【従来、二男の相続分は差押えできなかった】

従来の法律では、父が残した借金は次のような結果になっていました。

① 父の知人Xは、父に1000万円を貸しました。
 その際、父は「もしも返済しなかったら、自宅を差し押さえれば回収できる」と知人のXに説明していました。
② その後、父が死亡
③ 借金を返してほしい知人Xは、長男Aと二男Bにそれぞれ500万円ずつ、借金の返済を請求し、父名義の自宅不動産を差し押さえました。
④ これに対し、遺言で自宅を相続した長男Aは、遺言を使って登記をA名義に変更しました(相続登記)
⑤ すると裁判所から「この不動産は父の財産なので本来なら長男Aと二男Bとが共有する財産だったが、今回は後から遺言でA名義になった。そのため、二男Bの法定相続分はゼロになった。たとえ身内でも、二男Bに請求する借金で、別人であるA名義の財産を差し押さえることはできない。」と判断され、二男Bが引き継いだ借金(2分の1で500万円)を使って差し押さえをした自宅の相続分(2分の1)は差し押さえできませんでした。
⑥ その結果、知人Xは自宅を差し押さえても借金を返してもらえませんでした。
 
つまり、借金を返してほしい知人Xは、「自宅を差し押さえれば回収できる」と思って差し押さえをしたのに、後から遺言で長男名義にされると、二男に請求した金額(2分の1で500万円)の限度で差し押さえが無効になるということです。
自宅の売却代金の半分は借金返済に回してもらえない、という結果になってしまっていたのです。

このような従来の法律に問題があり、
「遺言があるかどうかは他人にはわからない。遺産である不動産を差し押さえた後に遺言が出てきて、自宅の名義を長男に変更されたら差し押さえが空振りに終わる、という法律は変えてほしい」という問題点が指摘されていました。

【改正後は二男の相続分も差し押さえが可能】

そこで、改正法では次のようになりました。

(改正後のルール)
「相続させる」旨の遺言があっても、法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件を具備しなければ、父の債権者など第三者に対抗できない。

上記は法律上の表現で難しいと思いますので説明しますと、遺言で自宅不動産をもらう長男Aは、知人Xより先に相続登記をしておかないと知人Xの差し押さえで長男A自身の法定相続分(2分の1)を超える部分(=二男Bの法定相続分)の差し押さえが優先することになったのです。
これを今回のケースで言えば、
長男Aが自宅をA名義に変更(相続登記)せず放置しているうちに知人Xが父の自宅を差し押さえた場合、長男Aの法定相続分を超える部分(=二男Bの法定相続分)は
(改正前)・・長男Aが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえは認められない
(改正後)・・・知人Xが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえが認められる。

「遺言で長男Aの財産になった」という反論は通用しなくなります。その結果、長男Aの法定相続分だけでなく、二男Bの法定相続分(自宅の2分の1)も有効に差し押さえられてしまうことになります。
逆に言えば、債権者である知人Xは、長男Aの相続登記より先に差し押さえをすれば、長男の法定相続分(2分の1)に加え、二男の法定相続分(2分の1)も差し押さえることができ、自宅の売却代金全額から借金を返してもらえることになったのです。

【「○○を相続させる」という遺言がある場合は早急に登記が必要】

このように、自宅などの相続財産を「相続させる」旨の遺言で財産を相続した長男Aは、早急に登記をしておかないと、父にお金を貸していた知人のXのような債権者から父の財産を差し押さえられてしまう、というリスクがあることになりました。
そのため、今後は遺言がある場合に早急に名義変更(相続登記)をしておかないと、せっかく相続することができた財産(自宅不動産など)も債権者の差し押さえが優先してしまう、ということを覚えておく必要があります。

【新制度は令和元年7月1日から施行】

この改正法は、令和元年(2019年)7月1日から施行されています。
つまり、同日以降に開始(死亡)した相続については、早急に遺言の有無を確認して相続登記を行っておかないと、債権者により法定相続分を超える持分の差し押さえを受ける可能性がある、ということになります。
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母に頼まれた?兄の出金【Q&A №661】

2019/09/13


【質問の要旨】


・母の生前、銀行から兄が500万円を引き出した。兄は「母に頼まれて引き出し、数日後に現金をもらった」と主張。
・「母が通帳を管理していたから、勝手に出金できない」という兄の主張は裁判で認められるか?
・500万円は贈与ではなかったことの証拠がないが、不利になるか?

【ご質問内容】

母の相続人は私(弟)と兄で、兄は母と同居してました。
母の生前に多額の預金引き出しがあり、その中のひとつに3年前に銀行の窓口で500万円を引き出した件があります。
これについて、払戻伝票の筆跡から兄が引き出したことは証明されていて、母の委任
状や意思確認が行われなかったことも証明されています。
この銀行では口座名義人の同居の家族なら本人の代わりに500万円まで引き出すことができるという回答があったからです。
今は兄側に弁護士が就いていこの500万円について兄は、「母に頼まれて引き出し、
500万円は母に渡した。
数日後、兄と妻(兄の妻)に母が250万円ずつ現金でくれた。」と言っています。
そこで兄夫婦で500万円もの高額な現金を受け取ったら銀行に預けるのが一般的かと
思い、受け取った現金の入金履歴などを求めましたが入金はしていないとのことで
す。
そして母と兄との贈与契約書、母のために使った領収書、母があげたというメモやも
ありません。
これから裁判を考えているのですが教えて下さい。
(1)兄は「母が通帳を持っていたのだから、500万も引き出されたら気付くはずだ。だから、勝手に引き出してない。」という反論をしています。
確かに母が当時自分の通帳を持っていたのは事実ですし。
この兄の反論は裁判で認められてしまいますか?
(2)私には、母が兄夫婦に500万円を贈与しなかったことを証明する証拠はないのですが、不利ですか?

661

(太郎)



 ※敬称略とさせていただきます。


【前提 兄の主張を整理】

今回、兄の主張を整理すると次のようになります。

①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

今回、法的には①委任の有無、③贈与の有無という2つの論点が問題となりますが、それぞれについて兄が主張をしていますので、今回は兄の主張を一つ一つ取り上げて回答していきます。

【「母が通帳を管理していた・・・」という兄の主張】

これは①委任の有無に関する兄の主張ですが、たとえ母が通帳を管理していても、母が金庫などに入れて厳重管理していたなどの事情が無い限り、同居者なら母に無断で通帳を持ち出すことは可能でしょう。
いずれにしても、兄が銀行に持ち込んだ事実は争いないわけですから、あとは「母に頼まれて引き出し」たか否か、という点が問題です。

【母に頼まれた、という主張について】

まず、一般論として高齢の母が息子に預貯金からの引き出しを任せる、ということは十分にありうる話です。
しかし、ご相談によれば多額の出金は多数存在するが、母に頼まれたのがこの500万円だけとすれば、なぜこの500万だけなのか、不自然さが残るところです。
さらに、500万円の引き出しについては、委任状も意思確認(銀行から母への電話等)も行われていないことから、兄の主張を裏付ける証拠はありません。
そのため、ほかに兄の主張を裏付ける証拠がなければ、そう簡単に裁判所は母に頼まれた、という主張を認めるわけではないものと思われます。

【あなたに証拠がなくともそう不利ではない】

では逆に、あなたの側に「贈与ではないこと」を裏付ける証拠がない、という事情ですが、もちろんあなたの側に証拠がある方がより安心です。
しかし、基本的には贈与を主張する兄が「贈与の合意があった」事を立証する責任を負うため、あなたの側に証拠がない、というだけで負けるわけではありません。

【最後は経過の合理性で判断する】

兄が引き出したお金を「母に渡した」証拠もおそらく見当たらず、現時点では兄が主張しているだけの状況と思われます。
このように、お互いに決め手となる証拠がない出金を裁判所では「預かり遺産」などと呼び(不正出金と同様に)預かり金を遺産に加えて遺産分割の判断を行う傾向があります。
このような預かり金が、母から贈与されたのか、それとも無断の出金なのか、兄の主張がいかに合理的か(不自然さがないか)という観点で裁判所は判断することが通常です。

前記しました兄の主張を再度示しますと、
①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

というものでした。この経過が合理的な経過か、という観点から検討していくことになります。
具体的には、母は兄に贈与するために出金を頼んだとすれば、引き出しの当日に兄とその妻に手渡すのが自然であり、いったん現金を母が受け取り、数日間手元で保管した理由が今ひとつはっきりしません。
ここに不自然さが残るといえるでしょう。
もちろん、兄には弁護士が就いているようですし、口で言うだけならいくらでもストーリーを述べることは可能でしょう。
しかし、結局のところ裁判所は当事者が述べる経過が合理的か否かを自らの感覚で判断します。
そのため、あなたの立場としては、兄の主張には裏付け証拠がないことや、兄が述べる経過がいかに不自然であるかを徹底的に裁判所にアピールしていくことが重要な作業となるでしょう。
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13:22 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

甥による不正出金や契約書偽造への対処法【Q&A №660】

2019/08/30


【質問の要旨】


・介護施設入所中の母の通帳や実印等が施設からなくなっていた。
・母死亡後、母の生前や死後に母の甥によって不正出金がなされていたことが判明した。
・母名義の不動産も母の甥を債務者とする根抵当権が設定されていた。
・母の甥の筆跡書類もあることから、施設入所時から文字も書けない状態であった母に無断で不正出金や根抵当権を設定した母の甥に対し、告訴することは可能か。

【ご質問内容】

① 介護施設へ入所していた母(90歳)のもとへ母の甥(70歳)が出入りし始め、
2年後母が亡くなり、同時に通帳や印鑑証明登録カード、実印、不動産登記情報等、施設からなくなっていました。
相続人である私が預貯金の履歴を金融機関へ申請したところ、母が亡くなった直後、100万がATMで引き出され、生前には総額600万円をATMで30回にわたり引き出しておりました。
犯人は母の甥とすぐにわかりました。

母の甥は5年前にも私の妹の預金口座から3度にわたり61万円を引き出した常習犯です。

更に母名義の自宅マンションに1500万を限度とする債務承認弁済契約に基づく根抵当権が設定され債権者はこれもまた母の甥でした。

そもそも母はすでに入所時からスプーン、ペンすら持てなくなっており文字はかけない状態でした。

母はキャシュカードも作らなかったので印鑑と通帳で引き出していましたので、現金を下ろすときは銀行員が施設に訪問して「渉外払戻請求書」に代筆してもらい現金を受けとっていました。

② 文字のかけない母が契約書にサインすることはできないので調査するとその署名は母の甥の筆跡でした。
親族ですが刑事訴訟法231条2項により

筆跡の証拠書類もあります。告訴可能でしょうか?

660

(snowfairy)



 ※敬称略とさせていただきます。

【告訴は可能だが、警察は受理しない可能性も】 

まず、ご質問の案件で、母の甥の行為に何らかの犯罪が成立するのかというと、母の通帳又はキャッシュカードを使ってATMで預貯金を引き出したということですので、法的には窃盗罪が成立する可能性があります。
また、母の実印を持ち出し、債務承認弁済契約書に勝手に母の署名押印をしているという点については、実印の持ち出しに窃盗罪が、契約書の偽造に私文書偽造及び同行使罪が成立する可能性があります。
刑法には、親族相盗例という制度があり、親子間や、直系血族等の間では窃盗罪の刑は免除されますが(刑法251条、同244条準用)、今回は、おばと甥という関係ですので、これにはあたりません。
そのため、あなた方相続人が筆跡資料等の証拠資料を持って警察に行けば、亡くなった母に代わって、窃盗罪や私文書偽造罪で告訴することは可能ではあります。
ただ、被害届とは違って、告訴を受理すると、警察に捜査義務が生じることから、警察は、「お母さんはすでに亡くなっているので、当時のお母さんの意思は知りようがない」とか、「まずは被害届で」「民事で解決できないか」などと言って、告訴の受理を避ける可能性も高いです。

【あなたは民事上の不当利得返還請求ができる】

ご質問によると、母の甥が母の介護施設に出入りして、通帳等を持ち出し、ATMで預貯金を引き出していたようです。
そのため、この不正出金については、あなた方相続人が、その相続分に応じて、民事上、不当利得返還請求という形で甥に対して返還を求めることが可能です。
この請求をする場合には、原則として、以下の3点をあなたの方で調査・立証する必要があります。
 ① 預貯金口座からの多額の出金の存在
 ② 出金した人はだれか
 ③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか
今回は、取引履歴は取得済みのようであり、甥が出金・取得したことも判明しているようですが、実際に請求をすれば、甥は「全く知らない」とか、「母からもらった」などと言い出すかもしれません。
甥が出金をしていること自体は、甥が通帳やカード等を持っており、ATMで引き出されているという事実から明らかかもしれませんが、母が贈与したというような主張に備えて、母当時の母の意思能力に関する資料(病院のカルテや、介護記録等)も集めておくべきかと思います。

【債務承認弁済契約については、無効を主張する】

また、債務承認弁済契約については、甥が母の実印や印鑑登録カードを勝手に盗み出し、勝手に母の署名押印をしたものであるということを、筆跡等をもとに主張し、契約の無効を理由に根抵当権登記を抹消すべきです。
おそらく、甥はすぐに認めて登記抹消に応じるようなことはないと思われますので、母の相続人であるあなた方としては、甥に対して、根抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟をする必要が出てきます。
上記の通り、告訴が受理されるかは警察の対応にもよりますが、民事の請求に関しては、訴訟等の手続きが必要になる場合もありますので、早急に検討されるとよいでしょう。
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相続法改正9 遺留分制度に関する見直し

2019/08/30
【遺留分制度とは】

遺留分制度とは、遺言や生前贈与などにより特定の者だけが多額の財産を取得した場合などでも、特別に最低限の財産の取り分(遺留分)の取り戻しを認める制度です。
遺留分を請求できるのは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人です。
遺留分は、多くのケースで法定相続分の2分の1です。
この遺留分制度に関して、今回の民法改正により以下の2点の見直しが行われることになりました。

【見直し①遺留分減殺請求の金銭債権化】

これまでの法律では、遺留分を主張する者(遺留分権利者)が、遺贈等を受けた者に対して遺留分を求める請求(遺留分減殺請求)をすると、遺贈等は、遺留分を侵害していた限度で効力を失い、遺贈された財産は、その限度で遺留分権利者のものになっていました。
このとき、遺贈等を受けていた者は、その財産そのものを返還(現物返還)するのが原則で、そのものの代わりに金銭を支払う(価額弁償)のは例外という位置づけでした。
しかし、たとえば、不動産が遺贈されていた事案で、不動産の一部を遺留分権利者に返還しなければならないとなると、その不動産は複雑な共有状態になり、売るにも貸すにも一人ではできないという事態が度々生じていました。
そこで、改正法では、従前の取り扱いを抜本的に見直し、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することができることとされました(これを「遺留分侵害額請求」といいます)。
例外はなく、そのものの返還をすることはできません。
ただ、必ず金銭で支払わなければならなくなったことにより、金銭を持っていない者については非常に困った事態になります。
そのため、この点に配慮して、遺留分侵害額請求を受けた者が、すぐにその額の支払いをすることができない場合には、支払いを一定期間猶予してもらうよう、裁判所に請求できることになりました。

【見直し②特別受益は相続開始前10年間にされたものに限る】

これまでは、遺留分を侵害しているとして問題にされる生前贈与の範囲について、法定相続人に対するものか、それ以外の者に対するものかで異なる取扱いがなされていました。
すなわち、法定相続人以外に対する贈与は、原則として相続開始前の1年間にされた贈与のみが対象になりますが、法定相続人に対する贈与のうち特別受益にあたるものは(特別受益については、【コラム】法定相続の概略と具体例その4:特別受益参照)、特段の事情がない限り時期を問わず(何年前の贈与でも)対象とされていました。
これが、今回の改正により、法定相続人に対する贈与(特別受益にあたるもの)について、相続開始前10年間にされたものに限ってその対象となり、従来の取扱いより、その範囲が限定されました。
ただし、贈与当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したものは、これまでと同様に、10年以上前の贈与であっても遺留分算定の基礎となる財産に含まれることには、注意が必要です。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい遺留分制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。
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相続法改正8 自筆証書遺言の保管制度

2019/08/29
【遺言を法務局が預かる制度が新設】

先日のブログでは、手書きで作成する自筆証書遺言(以下、「自筆遺言」と略称します)の一部がパソコンで作成できるようになり、財産が多い方でも手軽に作成できるようになった新法改正をご紹介しました。
今回はこれに加え、自筆遺言を法務局が預かってくれる、という新制度をご紹介します。

この制度のメリットは大きく2つ

①自宅で保管する必要がないため、家族に見つかる心配が無い
②検認手続が不要になるため、紛争になる前に遺産を相続できる

この2つのメリットについて、以下ご紹介していきます。

【メリット① 家族に見つからずに作成できる】

自筆遺言の問題点として、手書きで作成すると通常は自宅で保管するため、災害や引っ越しなどの際に紛失する、あるいは遺言を見つけた親族の方により破棄・改ざん、あるいは隠されるなどの問題があるといわれていました。
また、ご家族が破棄や改ざんしないとしても、「長男に全遺産を相続させる」という遺言を見つけた二男としては心穏やかではないでしょうし、ご家族の間でもめ事が起きてしまうという心配もありました。
そのため、家族に秘密で遺言を作りたい方は、(費用はかかりますが)公証役場に出向いて、公正証書遺言を作成する傾向が多かったのです。
しかし、今回は手書きで作成した自筆遺言も一定の様式を整えて法務局に届け出ることで、法務局が遺言を保管してくれます。
そのため、紛失の心配やご家族に見つかって破棄される、あるいはもめ事が発生することを防ぐことができます。
これが1つのメリットです。

【相続人には通知が届いて把握できる】

もっとも、遺言者が死亡した後、相続人の一人(たとえば財産をもらえる人)が法務局に遺言の写しを閲覧・交付申請した場合、他の相続人にも通知が届く制度になっていますので、遺言が存在することは相続人全員が把握できる制度になっています。
このような制度で、遺言の紛失や隠匿、不当な改ざんが行われることを防止しよう、というのが今回の法改正です。

【メリット② 検認手続が不要になる】

もう一つ、自筆遺言の問題点として、家庭裁判所の検認手続が必要、ということが指摘されていました。
検認手続とは、家庭裁判所に自筆遺言を提出して、相続人全員を家庭裁判所に呼び集め、自筆遺言の内容を相続人に知らせると共に、遺言内容を確認する手続です。
自宅の名義変更を行う法務局や、預金の解約手続を行う銀行などは、いくら自筆遺言を持ち込んでも、検認を受けた遺言でなければ相続手続には応じないため、自筆遺言は必ずこの検認手続を経る必要があります。
ところが、この検認手続では家庭裁判所に出頭し、さらに相続人全員を呼び集める手続のため非常に煩雑でした。
そこで、今回の改正では自筆遺言を法務局に届け出て保管してもらうことで、検認手続を不要とする、という制度に変わりました。
この改正で、自筆遺言も検認手続を経なくとも遺言を執行して自宅不動産や預金の相続手続を行うことが可能となったのです。

【新制度は令和2年7月10日から施行】

この自筆遺言の保管に関する改正は、令和2年(2020年)7月10日から施行される予定です。
そのため、現時点(令和元年8月)時点で遺言を作成される方は、従前通りの方法で自筆遺言を作っておき、暫定的に貸金庫や信頼ある専門家に依頼して保管するなどの対策を取る必要があります。
その上で、2020年に法改正が施行されたところで改めてこの遺言保管制度の利用を考える必要があるでしょう。
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【相続判例散策】遺産分割前の遺産不動産の賃料収入は、遺産分割によらず、当然に法定相続分に応じて取得される 最高裁平成17年9月8日(平成16年(受)第1222号)

2019/08/26
遺産分割前の遺産不動産の賃料収入は、遺産分割によらず、当然に法定相続分に応じて取得される

最高裁平成17年9月8日(平成16年(受)第1222号)

【ケース】

被相続人は多数の不動産を所有しており、その相続人は、後妻と前妻の子らであった。
相続人間では、これより前に遺産分割審判がなされ、収益不動産について、後妻が取得した。
ただ、遺産分割審判が確定するまでの賃料収入が約2億円あったことから、その分配方法が相続人間で争いになった。
第1審及び第2審は、後妻の主張する、遺産分割審判に沿った内容での計算(当該賃貸不動産を遺産分割で相続した後妻が相続開始後の賃料を全部取得する)が妥当だと判断したが、前妻の子らは、法定相続分に従って分割するべきだと主張して争った。

【裁判所の判断の概略】

上記の事案において、最高裁判所は、
① 共同相続財産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する
② 遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない
と判断した。
つまり、遺産分割で特定の者が相続することが決まっても、決まるまでの間の賃料については、法定相続人全員が、法定相続分に応じて取得することができ、遺産分割によってその不動産を取得した者が、全賃料を取得するのではない、と判断したということである。
 
【弁護士のコメント】

この判決は出る前は、1審・2審がとったような考え方、つまり、遺産分割の効力が相続開始の時にさかのぼる以上、遺産不動産から生じた賃料債権も、相続開始の時にさかのぼって、遺産分割でその不動産を取得した者に帰属するのだという考え方と、この判決のように、法定相続分で分割するという考え方とで分かれていて、判断の統一が求められていました。
そんな中、この判決により、遺産不動産の賃料については、被相続人の死後、遺産分割でその不動産の所有者が決まるまでの間は、法定相続分で分割するということが明らかになり、現在の実務はこれに従って進められています。
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相続法改正7 遺言執行者の権限の明確化②

2019/08/26
(前回の続きより)

【「相続させる」旨の遺言における遺言執行者の権限】

例えば、父が遺言書の中で「私の自宅土地をAに相続させる」と書き、遺言執行者を指定していた場合(このような遺言を「特定財産承継遺言」といいます)、父の死後に遺言執行者は、自宅土地の名義変更ができるのでしょうか。
当然にできるはずだと思われる方が多いのではないでしょうか。
しかし、旧民法下では、遺言執行者にそのような権限はありませんでした。
「相続させる」という書き方では、死亡と同時に権利が相続人に承継されるから、遺言執行者の出番はない、との考えからです。
ただ、これにより、相続登記が放置され、所有者が不明確となっている不動産が社会問題化している背景もあり、今回の改正で、遺言執行者が単独で所有権の移転登記手続きを行うことができるようになりました。
また、合わせて、遺言執行者に預貯金の払戻・解約の権限も認める文言も加えられました。
ただ、従来から実務上は、遺言執行者に預貯金の払戻・解約権限を認める扱いが金融機関に浸透していましたので、法律上正式に明文化されたというだけです。

《改正民法1014条2項、3項》
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。


【遺言執行者の復任権】

旧民法でも、やむを得ない事由があれば復任権(遺言執行者が第三者にその任務を行わせること)を認めるとの規定はありましたが、改正民法においても、復任権が規定されています。
これは、遺言の場合は、遺言執行者に任務を委任した遺言者はすでに死亡しているため、復任の自由を認める必要が大きいとの理由に基づくものです。
ただし、復任権を行使した場合には、遺言執行者は相続人に対して、その選任及び監督についての責任を負うことになります。

《改正民法1016条》
1 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

 
【遺言執行者から相続人への通知】

改正法では、遺言執行者は就任後に遅滞なく相続人に対して通知をしなければならないとの規定が加えられました。
改正により、上記の通り遺言執行者の権限が強化されたこともあり、遺言執行者に通知が義務付けられました。
これにより相続人は、遺言の内容や遺言執行者を知ることになります。

《改正民法1007条2項》
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。


【この改正の施行日は、基本的に2019年7月1日ですが、例外があります】

基本的に、遺言執行者に関する改正の施行日は、2019年7月1日です。
ただし、1007条2項の遺言執行者の通知義務や、1012条の遺言執行者の権限については、2019年7月1日より前に開始した相続であっても、遺言執行者が就任したのが施行日以後である場合は、改正法が適用されます。
また、1014条2項から4項に記載した「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)については、2019年7月1日以後に相続が開始しても、遺言の作成日が施行日前であれば改正法は適用されないため、遺言執行者は単独で登記等をすることができないということになりますので、注意が必要です。
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相続法改正7 遺言執行者の権限の明確化①

2019/08/23
【遺言執行者の権限が強化されました】
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有する者のことをいいます。
遺言執行者の制度が存在する意味は、遺言の執行を遺言執行者に委ねることによって遺言を適正かつ迅速に実現していくことにあると考えられています。
しかし、これまでの法律では、遺言執行者の立ち位置が曖昧で、迅速な実現化が妨げられるようなこともありました。今回の改正では、極力そのような事が無いように規定し直されています。

【明確化のための文言変更】
旧民法1015条には「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」という規定の仕方になっていましたが、今回の改正では、次のような内容に改められました。

《改正民法1015条》
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。


また、改正民法1012条1項も、以下のような規定になりました。

《改正民法1012条1項》
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。


これらの規定については、文言は変わっていますが、実質的に遺言執行者の権限内容が変わったわけではありません。
ただ、自身にとって不利益な内容を実現された相続人から、「必ずしも相続人の利益のために行動しているとはいえず、代理人ではないではないか」とのクレームが出ていました。
そのため、「代理人」という言い方をやめ、「遺言の内容を実現するため」という文言を加えるなどして、遺言執行者は必ずしも相続人にとって利益となる行為ばかりやるわけではない、ということを明確化したものです。
また、下記の通りの、遺贈の履行についての規定も、従来の扱いを明文化したものです。

《改正民法1012条2項》
遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。


この「遺贈」には、特定遺贈(「〇県×町の不動産をAに遺贈する」というように、特定の財産を指定して遺贈すること)だけでなく、包括遺贈(「遺産の4分の1をAに遺贈する」というように、相続財産の割合を指定して遺贈すること)も含まれます。
また、これは、遺言執行者がいる場合について規定したものですが、遺言執行者は必ず選ばなければならないわけではありませんので、もし遺言執行者がいなければ、相続人が遺贈の履行をすることになります。

(続きはまた次回に…)
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任意後見監督人の代理権の範囲【Q&A №659】

2019/08/23


【質問の要旨】

・死亡した母の遺言書があり、すべての財産を兄が相続する。
・相談者は兄に遺留分減殺請求中。
・父の任意後見人が兄。任意後見監督弁護士がついている。
・兄に対する父の遺留分減殺請求について、後見監督弁護士にお願いしていたが、
「任意後見契約書に遺留分減殺請求が載っていないからできない」と言われた。
・後見監督弁護士による父の遺留分減殺請求ができないのなら、誰に依頼すればいいか?


【ご質問内容】

母は2019年末に死亡。
相続人は父と兄と私(弟)。
母が遺言を3年前に作成し、すべての財産を兄に相続することが判明。
私は兄に遺留分減殺請求中。
父も3年前に任意後見人契約を兄と結んでおり、今年の4月末に受理されてしまった。
父には任意後見監督弁護士がついている。
父の遺留分請求は、任意後見第7条第4項の利益相反により、後見監督の弁護士にお願いしていた。
しかし監督弁護士によると、最初は検討していたが、「任意後見契約書の代理権目録が第1号様式で、これに遺留分減殺請求が載っていないからできない。第2号様式による代理権目録が必要。」と意見が変わってきた。
家裁からの指示らしい。
家裁に根拠を問い合わせると、「新成年後見制度の解説」の任意後見制度、監督以外の職務という項目(P256~257)。
本当だろうか?
公証役場の意見では、任意後見契約公正証書は雛形がきまっており、1つ1つ個別に作成するものではない。個別なものを作成すると法務局から注意される。代理権目録の6に訴訟行為(民事訴訟法第55条第2項の特別授権事項を含む)に関する事項、7に「以上の各事項に関する一切の事項」と書いてある。
訴訟行為が認められるのだから、遺留分減殺請求は7の中に含まれるはずだと。
そしてもし、後見人監督弁護士が父の遺留分請求をできないなら、どなたに頼めばよいのか?
兄が任意後見の際に提出した診断書の内容は、謄写申請却下されたので不明。

659

(とりあえず匿名で)



 ※敬称略とさせていただきます。

【任意後見人と本人との利益が相反する場合は、任意後見監督人が本人を代表する】

今回の事案においては、母がすべての財産を兄に相続させるとの遺言を残しているため、父の立場にたてば、兄に対して遺留分減殺請求をすべき事案です。
ただ、父の任意後見人は兄であり、兄と父は、利害が対立してしまっています。
このように、任意後見人と本人との間で利益が相反した場合には、任意後見人に代わって、任意後見監督人が本人の代表者となることができます。
任意後見監督人は、通常は、任意後見人がおかしなことをしないように監督する役割をしているのですが、今回の事案のように、本人と任意後見人との利益が相反している事案では、上記のとおり、本人の代表者になることができるのです。

【任意後見人や任意後見監督人は、契約で決めた代理権しかない】

任意後見契約という制度は、本人の意思能力が備わっている間に、自分の意思能力が衰えた場合に備えて、信頼できる人に代理権を付与する契約であり、どのような範囲で代理権を与えるかは、本人が自由に定めることができます。
そのため、本人が契約で定めた範囲内でしか、任意後見人や任意後見監督人は代理権を有することができません。
通常は、「遺産分割の協議、遺留分減殺請求、相続放棄、限定承認に関する事項」というような形で代理権目録に入れておくことが多いですが、父が兄と任意後見契約をした際に、上記のような項目を入れていなければ、基本的には、任意後見人や任意後見監督人に遺留分減殺請求をする権利はありません。
また、訴訟行為が代理権の範囲に含まれているとのことですが、遺留分減殺請求という意思表示は、訴訟行為の前段階となる意思表示であるので、訴訟行為には含まれないものと思われます。

【任意後見監督人が動かなければ、成年後見人を選任する】

今回、任意後見監督人が動こうとしない、もしくは、代理権がなく動けないと言うのであれば、あなたとしては、家庭裁判所に対し、法定後見(成年後見人)の申し立てをすべきです。
成年後見人であれば、遺留分減殺請求を行う権限を有しておりますが、成年後見人であれば請求をしなければならないというわけではないため、最終的には成年後見人の判断ということになります。
そのため、出来る限り成年後見人に動いてもらうために、成年後見の申し立てをする段階から、申立書に、「父のために遺留分減殺請求をしてもらいたいという事情があって申立をしている」ということを明示しておいたほうがよいでしょう。
なお、遺留分減殺請求の時効は、相続の開始を知ったときから1年ですので、選任の申し立てをしているうちに時効期間が過ぎてしまうかもしれませんが、この点は、最高裁において、「時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において、少なくとも、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は、完成しないと解するのが相当である」と判断されており、時効満了前に申立をすれば、後に成年後見人が就いてから6か月を経過するまでは、時効は完成しないとの判断がなされていますので、その点については心配はいりません。
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相続法改正6 自筆証書遺言の方式緩和

2019/08/19
【自筆証書遺言が作りやすくなりました】

亡くなった方が残す最後のメッセージ。それが遺言です。
一般には「ゆいごん」と呼ばれますが、法律上は「いごん」と読みます。
遺言には大きく分けて、本人の手書きで作成する「自筆証書遺言」と公証役場で作成する「公正証書遺言」の2つがあります。
今回の相続法改正では、手書きで作成する「自筆証書遺言」が一部パソコンで作成可能になるなど作りやすくなる改正がありましたので、ご紹介したいと思います。

【これまでは全文を手書きで作成】

これまで、自筆証書遺言はその名の通り、全文を遺言作成者本人が手書きで作成する必要がありました。
自筆証書遺言は、書き方さえ知っていればペンと紙、そして印鑑があればいつでも、どこでも無料で作成できるというお手軽さが大きなメリットです。
しかし、その手書き自体が困難を極める事態が起きていました。
たとえば、「全財産を長男Aに相続させる」というような簡単な一言で終わる遺言なら簡単に作成できます。
しかし、遺言を作るのは一般に高齢の方が多いため、
    「一戸建ての自宅は長男Aに・・・」
    「賃貸経営のマンションは長女Bに・・・」
    「○○銀行の預金は二女Cに・・・」
    「△△信用金庫の預金は二男Dに・・・」
    「その他の財産は甥のEに・・・」

…などと細かく遺産の分け方を書きたい場合、高齢の遺言者が全文を手書きで作成することが非常に難しかったのです。
しかも、土地を指定する場合は地番や面積、地目といった細かい情報記載が必要ですし、銀行預金の場合は金融機関名や取り扱い支店名、口座番号といった情報を記載する必要もあります。そのため、財産が多い高齢の方は、財産情報をすべて手書きで、しかも書き間違えないよう作成することは非常に難しいことでした。

【財産目録はパソコンで作成OK】

今回、全文を手書きする必要がある、という点が改正されました。
この土地や預金など、財産目録をパソコンで作ったり、通帳のコピーを遺言に添付したりすることで、遺言が簡単に作成できるようになりました。
この改正で、高齢の遺言者が土地や預金の細かい情報まで詳しく手書きしなくとも、家族や専門家にパソコンで作ってもらう方法が使えるようになりました。

【パソコン化でも偽造をしっかり防止】

他方で、パソコンで作成するなら誰かが勝手に財産目録を差し替えて遺言内容を偽造できるのでは?という懸念もありました。
そこで、改正法ではパソコンで作成された財産目録にも遺言者の署名および印鑑を押印することにして、他人が勝手に偽造できないよう防止する措置が設けられました。

【2019年1月13日以降に作成された遺言に適用】

この自筆証書遺言に関する改正は、すでに2019年1月13日から施行されています。
もっとも、施行日以降に死亡された方の遺言であっても、遺言作成が2019年1月13日以前の遺言には適用されません。
以前の遺言の場合、改正前の要件(全文自筆)を満たすことが必要ですので、遺言の作成日にはご注意ください。
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相続法改正5 相続開始後の共同相続人による財産処分

2019/08/16
【相続開始後に相続人の一人が財産処分をした場合の公平性を図る改正がなされました】

これまでの相続法では、特別受益のある相続人が、遺産分割前に遺産を処分した場合に、遺産を勝手に処分した相続人の方が、相続できる財産額が多額になるという不公平が生じていました。
そのため、この不公平をなくすため、今回法律が改正されました。

【これまでの相続法の問題点】

実際に、どのような不公平が生じていたのかを、事例をもとに説明します。

 例)相続人:長男、次男(法定相続分2分の1)
   遺産:預金2000万円
   特別受益:長男に対して、生前贈与2000万円


上記の通りの事案において、被相続人が亡くなった後に、長男が被相続人の預金2000万円のうち、さらに1000万円を引き出した場合、次男として何が請求できるかを考えてみます。
遺産総額は、預金2000万円と生前贈与2000万円の合計の4000万円となり、次男の相続分は2分の1であるため、計算上、次男が相続するべき額は2000万円となります。
しかし、実際に残された財産は1000万円しかありませんので、次男は、この1000万円を取得し、相続後に引き出された1000万円については、法定相続分である500万円の限度で、長男に対して、不当利得返還請求ができるにとどまるということになります。
その結果、長男及び次男の取得額は、以下の通りとなります。

  長男:生前贈与2000万円+出金額1000万円-返還請求額500万円 =2500万円
  次男:遺産分割1000万円+返還請求額500万円=1500万円

下線文
つまり、勝手に預貯金を引き出した長男の方が、次男よりも多くの財産を取得することになり、公平性に欠けることが問題とされていたのです。

【改正後の法律では、出金がなかった場合と同じ結果が実現できるようになりました】

上記と同じ事案で、改正後の法律によればどのような結論になるのでしょうか。
改正後の法律では、処分された財産を遺産に組み戻すことについて処分者以外の相続人の同意があれば、処分者の同意を得ることなく、処分された財産を遺産分割時に遺産として存在するものとして遺産分割をすることが可能になりました。
つまり、上記事案でいうと、長男によって引き出された1000万円の預金を、次男が遺産に組み戻そうと思えば、長男の同意がなくても組み戻して遺産分割ができると言うことになります。
具体的に上記事案で見てみると、同じく遺産総額は4000万円、次男の相続すべき額は2000万円であるところ、長男によって引き出された1000万円についても、遺産分割時に遺産として存在している(引き出されていない)と考えるため、2000万円が残されていたものとして遺産分割をすることができます。
つまり、次男としては、2000万円を取得することができ、1000万円については残された遺産から、残り1000万円については、長男から代償金という形で支払ってもらうことが可能になったということです。
その結果、長男が勝手に財産を引き出したとしても、結果として長男と次男が取得する財産は同じになり、不公平感が解消されました。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

相続開始後に相続人の一人が財産処分をした場合の公平性を図る改正の施行日は、2019年7月1日です。
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夏期休業のお知らせ

2019/08/16
いつも当ブログ「相続これで納得!弁護士に聞く無料相談」をご覧・ご利用いただき、ありがとうございます。

誠に勝手ながら、当事務所は2019年8月13日(火)から8月15日(木)まで夏期休業とさせていただきます。

そのため、その期間中、「相続問題Q&A」の新たな回答ができませんので、ご了承ください。

いただいたご質問については、上記休業期間は非営業日として算定しますことを予めご了承くださいますようお願い申し上げます。
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相続法改正4 遺産分割前の預金払い戻し制度ができました

2019/08/09
【遺産分割前にも預金の払い戻しが可能に!】

預金口座の名義人が死亡されると、預金が動かせなくなることはみなさんご存じの方も多いと思います。
たとえばお父さんがお亡くなりになると、銀行は口座を凍結し、お父さんの口座のお金が引き出せなくなるため、葬儀費用やこれまで支払っていた光熱費・家賃の支払いなど各種の支払いに困るというケースが多く出ていました。
銀行が口座を凍結するのは、各相続人が別々に「私に預金を渡せ」と言ってこられると誰に預金を渡してよいかわからず対応に困るからですが、この銀行実務を承認するような最高裁判決が平成28年に出されました。

【預金も遺産分割の対象とする最高裁判決】

最高裁判所は、平成28年12月19日判決により、共同相続人の一人が単独で払い戻しをすることはできないことを認めました。
要するに、上記の銀行の実務運用を法的にも正しいことだと認めたわけですが、このことで、葬儀費用や光熱費の支払いなど死亡後すぐに支払を要するものにどう対応するかが議論されることになりました。
その結果、今回の預貯金払戻制度ができました。

【一定額なら遺産分割しなくとも払い戻しができます】

今回できた新制度は、預貯金債権の一定割合(銀行1つについて150万円が上限)は、遺産分割ができる前にも払い戻しの請求が可能とするものです。
具体的な計算で払い戻しができる額を見てみましょう。


具体例)
 銀行に父の預金口座が1つあり、死亡時の残高は600万円
 父の相続人は長男と長女の2人だけ
 → 長男が払い戻しを請求した場合の処理は次の通り
(計算式)
 預貯金債権の額(600万円)×1/3×長男の相続分(1/2)
=100万円を限度として払い戻すことが可能



なお、このケースでは計算式で算出した金額を全額引き出すことができますが、上限額(150万円)を超える場合があることには注意しましょう。


【制度は2019年4月1日から施行されています】

遺産分割前の預貯金払い戻し制度は、2019年(平成31年)4月1日から施行されています。
この制度は、施行日前に開始した相続についても適用されますので、必要があれば新法の施行前に死亡があった相続でも払い戻しを求めることができます。
ぜひご活用ください。
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遺産の9割以上が生命保険【Q&A №658】

2019/08/09


【質問の要旨】

母の遺産は預金100万円と2000万円払込の生命保険のみ。
生命保険の受取人が相続人の一人であった場合、生命保険金も遺留分請求はできる?

【ご質問内容】

母が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人です。父は10年以上前に他界しました。
母は兄夫婦と同居していました。
兄と遺産分割の話し合いをした所、母の財産は100万円ほどの預金だけです。
しかし先日、母が2年前に加入した生命保険があることが分かりました。
金額は2000万円を一括で払込み、5年後に利子がついて戻ってくるものです。
そして保険金の受取人は兄になっていました。
ネットなどで調べると、保険金は相続財産に含まれないと知り、遺産分割できないと知りました。
生前贈与や、遺贈ならば遺留分請求もできるのに、それが保険金となると、遺留分請求ができないのではないかと不安です。
額も大きいので、何か方法があれば教えて頂きたいと思って相談しました。
このように、被相続人が死亡の数年前に加入した保険の保険金が、相続人の一人を受取人と指定した場合は、遺留分請求の対象にはできないのでしょうか?

658

(モニモニ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生命保険は遺産ではないとする見解が一般】

今回は相続人に残された財産の9割以上が生命保険金であり、いわゆる法律上の「遺産」がほとんど残っていないケースのようです。
生命保険は遺産ではありませんので相続人で分割することなく、受取人になった方全額受け取ることができます(生命保険が遺産に当たらないことについては当ブログ№598参照)。

【特別受益では解決できない・・・】

もっとも、裁判例の中には、相続人の一人が遺産総額の5割を超える多額の死亡保険金を受け取った場合に、特別受益に準じて遺産に持ち戻しを認めるものがあります(最高裁判決平成16年10月18日。相続ブログ№598参照)。
いわば保険金を生前贈与と同様に扱った判例だと理解すればよいでしょう。
しかし、特別受益は生前贈与した財産(今回は生命保険金)を返還させる制度ではありません。
あくまで現存する遺産(今回は預金100万円)の分け方について、生前贈与を考慮するにとどまります。
そのため、保険金が特別受益であることを主張しても、あなたは現存する預金100万円を相続できるだけであり、これを超えて生命保険金の返還請求はできません。そうすると、本件では特別受益を主張してもなんの解決にもならないでしょう。
そのため、今回は生前贈与や遺贈があっても相続人を保護する制度である「遺留分」を主張するしかありません。

【保険金は基本的に遺留分の対象外】

それでは、生命保険金は遺留分減殺請求の対象財産になるのでしょうか。
まず、生前贈与や遺贈なら遺留分減殺請求の対象となりますので、贈与された金銭の一部を返還するよう請求できます。
しかし、生命保険は(理屈上)生前贈与でも遺贈でもないため、遺留分減殺請求の対象財産には含まれないのではないか、ということがかつて争われました。
この問題について最高裁判所は、死亡保険金は遺留分減殺請求の対象財産に含まれないとしました(最高裁平成14年11月5日判決)。
もっとも、この判例で生命保険金を受け取ったのは相続人ではない第三者の方でした。そのため、今回のように相続人が保険金受取人であった場合とは状況が違います。むしろ、相続人の一人を特別扱いするという意味では生前贈与や遺言で財産を渡したケースと大きな違いはないでしょう。
そこで、あなたとしては、今回受け取られた生命保険金(2000万円)が現存する遺産(預金100万円)の20倍にもあたるという金額の大きさを繰り返し強調し、「このような生命保険を使った遺留分の抜け穴を認めるべきではない」と主張されるべきでしょう。

【今後の方針】

あなたが行うべき主張は上記のようなものですが、この問題は裁判所の判断も学説も意見が分かれていますので、現状で確かな回答ができる問題ではありません。
そこで、相続案件に詳しい弁護士に相談され、上記の主張を含めた法的な検討を早急に進めていくべきでしょう。
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不正出金や養子縁組をする相続人への対応【Q&A №657】

2019/08/09


【質問の要旨】

・義父に成年後見人を付けた。
・義理姉は後見人より預貯金返還請されている。
・義理姉が長男を義父の養子にしたが、無効裁判中である。
・義父は義理姉のリフォーム代を支払った。
・義父が亡くなったら、
① 養子縁組無効訴訟はどうなる?
② 預貯金返還請求は?
③ リフォーム代はどうなるか?

【ご質問内容】

義父には成年後見人を付けました。
それをよく思わないぎりの姉(相続人)が遺産の取り分を増やそうと自分の長男を義父の養子にしたり(裁判中)
後見人より預貯金返還請求されていますが中々裁判が進みません。
また家のリホームで多額のお金を義父に支払いさせていたことがわかりました。
義父にもしものことがあったらいまの裁判や使ったお金の行方がきになります。
私達が準備しておくことあるのでしょうか。
成年後見入っても遺言書の書換えは可能ですが。
長谷川式12点で後見入りました。
介護認定は2から1にさげてしまってますが認知度はⅡbとなっています。

657

(どうなるの)



 ※敬称略とさせていただきます。

【養子縁組無効訴訟・・・義父が原告なら当然に終了】

義姉が自身の息子を義父と養子縁組させた件については、「裁判中」ということですので、おそらく養子縁組無効確認訴訟が係属しているものと思われます。
上記訴訟は、人事訴訟といって、身分関係を争う訴訟であるため、当事者の一方が亡くなると、当然に訴訟が終了します。
そのため、この訴訟を提起したのが義父(又は義父の後見人)なのであれば、義父が途中で死亡すると、その時点で訴訟は終了し、新たに他の者(この養子縁組について利害関係のある者。義父の相続人など)が訴訟を提起し直す必要があります。
ただ、この訴訟を提起したのが義父ではないのであれば、義父が亡くなったからといって訴訟に影響はありません。
養子縁組無効訴訟が係属していれば、その結果によって遺産分割の割合も変わってきますので、遺産分割も訴訟の結果を待って行うことになります。

【後見人からの返還請求・・・相続人らが引き継ぐ】

義姉は、後見人から預貯金返還請求訴訟も提起されているようです。
これはおそらく、義姉が意思能力の衰えた義父の口座から、勝手に預貯金を引き出していたために、後見人が引き出した分の返還請求訴訟を提起したものと思われます。
この途中で義父が亡くなった場合には、被後見人の死亡により後見は終了し、義父の相続人らが裁判を引き継ぐことになります。
その上で、裁判の結果、義姉から引き出した金員を返還してもらった場合には、返還してもらった金員を法定相続分に従って分割し、それぞれが取得することになります。

【リフォーム代・・・特別受益もしくは不当利得返還請求をする】

最後に、リフォーム代ですが、もしも、リフォーム代を支払ったタイミングではまだ義父の意思能力はしっかりしていたというのであれば、これは義父から義姉への生前贈与ということになり、義父の遺産分割の際に、「特別受益」として持ち戻し、義姉の相続分を減らすということになります。
一方、リフォーム代を支払ったタイミングでもうすでに義父の意思能力に問題があったという場合には、義父から義姉への贈与は成立せず、義父(現在であれば後見人。義父が亡くなった後であれば相続人ら)は義姉に対して、リフォーム代の返還請求権を有するということになります。
義父の意思能力については、長谷川式認知スケールの結果だけで判断できるものではなく、また、行う行為の難易度によっても異なりますが、介護記録、通院・入院等していれば医療記録の記載をも合わせて確認し、主張していくことになります。

【今の段階でできることは】

このような事案では、これ以上財産を取得されることを防ぐ手段をとることを一番に考える必要がありますが、今回の事案では、すでに成年後見人もつけているとのことですので、今後財産が取得されることはないでしょう。
そうすると、今の段階でできることは、自身に有利な遺言書を書いてもらうことと、過去の贈与や不正出金の証拠(通帳のコピーを取っておくなど)くらいです。
ただ、遺言書については、「すべて〇〇に相続させる」というような簡単な内容であれば有効とされる可能性もありますが、すでに後見人が就いていますので、義姉を含む他の相続人から無効訴訟をされる可能性は非常に高いでしょう。
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相続法改正3 持戻し免除の意思表示の推定

2019/08/05
今回の相続法改正では、亡くなった方(被相続人)の配偶者を保護するための方策が多く取り入れられています。
そのうち、配偶者が被相続人の死後も自宅に居住し続けられるようにする権利(居住権)を保護する方策(短期居住権及び長期居住権)については、これまでに紹介してきました。
今回は、被相続人が生前又は遺言書によって、居住用不動産を配偶者に贈与した場合の保護について、解説します。

【長期間婚姻している夫婦間での居住用不動産の贈与等の保護】

今回の改正では、婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し、その居住のための建物又はその敷地(居住用不動産)を生前又は遺言書によって贈与した場合には、原則として、計算上遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてよいということにしました(これを、持戻し免除の意思表示推定といいます)。
わかりやすくいえば、居住用不動産の贈与を受けた配偶者は、遺産分割の際に、居住用不動産をもらったことを考慮せずに残りの遺産の分割を受けることができるということです。

【これまでの制度の問題点】

これまでは、生前に贈与を受けても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして、遺産分割時の取得分がその分だけ減らされていました。
たとえば、以下のような事例で考えてみましょう。
例)
  相続人:配偶者と子2名
  遺 産:居住用不動産・・・評価額2000万円
  その他の財産・・・6000万円
この事例で、配偶者が居住用不動産について、生前に贈与を受けていた場合、これまでの制度では、遺産分割時の配偶者の相続分は以下の通りでした。
  遺産の合計=2000万円+6000万円=8000万円
  配偶者の相続分=8000万円×1/2=4000万円
  遺産分割時における配偶者の取得額=4000万円-2000万円=2000万円
この結果、配偶者が得た財産は、生前に贈与を受けた居住用不動産2000万円と、遺産分割で得た2000万円の合計4000万円ということになります。
つまり、せっかく生前に贈与を受けても、その分が遺産分割時の取得額から控除されてしまうため、結果として配偶者が相続できる財産額は同じでした。
しかし、これでは、贈与をした被相続人の意思を尊重しているか疑問であった上に、配偶者の長年に渡る貢献に報いる意味や、老後の生活保障の意味でも、問題があると考えられていました。

【改正された結果、配偶者はより多くの財産を取得することが可能に】

今回の改正の結果、上記と同じ事案で、配偶者の相続できる財産は、以下の通りとなります。
  遺産の合計=6000万円(相続時に残っている財産)
  配偶者の相続分=6000万円×1/2=3000万円
  遺産分割時における配偶者の取得額=3000万円
この結果、配偶者が得る財産は、生前に贈与を受けた居住用不動産2000万円と、遺産分割で得た3000万円の合計5000万円ということになり、贈与を受けなかった場合よりも多くの財産を最終的に取得できることになります。

【持戻し免除の意思表示推定規定の施行日は、2019年7月1日です】

持戻し免除の意思表示推定規定は、2019年(令和元年)7月1日から施行されています。
そのため、施行日後に行われた贈与等についてのみ適用され、相続開始が施行日後であっても、施行日前にされた贈与等については適用されません。
ご注意ください。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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16:33 相続法改正 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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