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相続法改正11 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

2019/09/18
【相続人以外の親族が被相続人の療養看護等をしたとき、金銭請求ができるようになりました】

たとえば、被相続人の長男の妻が長年介護をするというような事案は、よくあります。
しかし、これまでの民法では、被相続人の遺産を相続できるのは長男を含む相続人だけで、長男の妻自身には遺産をもらう権利はありませんでした。
これでは、相続人以外の親族による介護などの貢献が報われません。
そのため、今回の改正により、相続人以外の親族が、被相続人の介護や療養看護などを無償でしていた場合、相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになりました。

【たとえば、長男の妻が長年介護をしていたケース】

例えば、被相続人の長男の妻が長年の介護を頑張ってきた事例で考えてみましょう。
長男の妻は親族ですが、相続人ではありませんので、通常は遺産をもらえない立場です。
それでも、被相続人の死亡時点で長男本人が健在であれば、長男の相続分を増やすことができる場合もあります。
しかし、もし被相続人より先に長男が亡くなっていたら、それすらもできません。
これでは、長男の妻の苦労があまりに報われず、不公平が大きいという問題が指摘されていました。
そこで、今回の改正で、長年無償で介護してきた長男の妻などの親族は、次男や長女などの相続人に対して、金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。

【特別寄与料の請求の要件】

特別寄与料の請求をするには、まず、被相続人に対する療養看護や介護、その他労務の提供をしていたことが必要です。
現在のところ、介護や看護が主に想定されているようですが、不動産などの財産管理や事業のサポートも含まれると考えられます。
また、これらは無償でやっていたことが必要で、被相続人から対価や報酬を受け取っていた場合には適用されません。
加えて、被相続人の財産の維持または増加に貢献したことも必要になります。

【特別寄与料の金額の定め方】

特別寄与料の金額と請求は、原則として当事者間での協議で決まりますが、協議が調わないときは、家庭裁判所に決定してもらうことができます。
このとき、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。
この算定にあたっては、相続人が自ら被相続人に対する療養看護を行った場合(寄与分といいます)と同様の算定方法がとられると考えられており、具体的には、以下のような計算式となります。

《計算式》
特別寄与料=第三者の日当額×療養看護日数×裁量割合

このうち、第三者の日当額とは、ヘルパーさんなどの第三者に療養看護をしてもらった場合にかかる日当額を目安にするとされていますが、介護報酬基準額を用いるという考え方もあります。
裁量割合とは、専門家(有資格者)に頼んだ場合よりは費用を控えめに計算するため、0.5~0.8を乗じて、寄与料を減額することになります。
たとえば、長男の妻が、被相続人を2年間にわたり、1日1時間程度介護していたという場合、身体介護(排泄、食事介助、入浴等)の介護費用がだいたい1時間あたり6000円として計算すれば、
  6000円×365日×2年間×0.7(裁量割合)=306万6000円
と計算され、介護をした長男の妻は、他の相続人らに対し、約300万円を特別寄与料として請求できるということになります。
ただ、家庭裁判所で判断をしてもらうことになれば、どの程度の介護をどのような頻度で何時間程度していたのかを何らかの形で立証することが必要になります。
そのため、日頃から介護日記をつけたり、関連する出費のレシートなどを保管したりしておくと良いでしょう。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい特別寄与制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
11:54 相続法改正 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

代位登記と遺言書の効力【Q&A №662】

2019/09/18


【質問の要旨】


・父死亡。公正証書遺言では、自宅不動産は長男が相続。
・自宅の固定資産税未納のため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記。
・長男が死亡し、公正証書遺言により長男の子が自宅を相続。
・長男の子が、自宅を自分の名義にするため、抹消登記請求。
・相談者は、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるか。
・なお固定資産税は、長男及び長男の子が分納。


【ご質問内容】

12年前に亡くなりました父は公正遺書を作成しています。
そこでそこに明記された相続人で貯金は分配済みです。
今問題になっておりますのは実家です。
公正書により長男が相続するはずでしたが未登記のうちに固定資産税未納で市により強制代位登記をされ当時の法定相続人5人が当分割で共同相続されています。(権利登記簿による)
長男の死により今孫(長男の子)が自分の名義にするため抹消登記のための手続きを要請してきました。
なお、固定資産税は分納しておりわたしたちへの和解金次第で完済するかどうか決めるようです。

わたしとしては固定資産税の5分の1の和解金のために共有物分割請求訴訟をしたいのですが可能でしょうか?

なお、実家は公正遺書により孫に遺贈すること、となっております。
私は代位のために債権者でもない一法定相続人ですが実家の5分の一の権利が代位されています。
なお私以外にもうひとりの法定相続人が和解金請求を長男の孫に要請しています。
債権者でない私の立場でできることをご教示下さい。
土地の鑑定は必要ですか?
よろしくお願いします。

662

(かっさん)



 ※敬称略とさせていただきます。

【ご質問内容の整理】

ご質問内容を以下の通り整理して回答いたします。
 ① 父が死亡した。父の公正証書遺言によれば、自宅不動産は長男が相続することになっていた。
 ② しかし、自宅の固定資産税が未納の状態であったため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記をしてしまった。
 ③ 長男が亡くなり、長男の公正証書遺言により自宅を相続することになった長男の子が、自分の名義に戻そうと、抹消登記請求をしようとしている。
 ④ 父の相続人としては、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるだろうか。
 ⑤ なお、実家の固定資産税は、長男及び長男の子が分納で支払っている。

【他の相続人が遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは難しい】

まず、結論としては、遺言の存在を知らない第三者ならまだしも、遺言の存在を知っている他の相続人が、遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは、法的には難しいと思われます。
以下、その理由を説明します。

【債権者代位による相続登記とは】

通常、相続登記をする場合には、相続人が申請するのが原則です。
しかし、相続人又は被相続人の債権者が、自らの債権を保全するために登記申請をすることも、例外的に認められています。
今回のご質問の事案でいうと、固定資産税の支払請求権を有する市が、相続人らの財産を差し押さえるため、まずは法定相続分通りに相続登記をしたということです(おそらくその後、市による差押え登記もされていると思われます)。

【長男は、遺言記載の事項を他の相続人に対して主張できる】

以上の通りの代位登記の仕組みからすると、法定相続分通りの代位登記がされているとしても、実体としては遺言書どおり、自宅は長男(長男が亡くなった後はそれを引き継いだ長男の子)のものです。
そのため、あなた方他の相続人が、相続登記に基づいて権利主張をすることはできません。
ご質問によると、共有物分割請求を考えておられるとのことですが、上記の通りあなた方は所有権等の権利を有しているわけではありませんので、「共有」の事実がなく、共有物分割請求はできません。

【ただ、長男の子から解決金を支払ってもらうことはありうる】

もっとも、ご質問によると、長男の子は抹消登記請求をしようとしているようです。
抹消登記をする際には、被相続人を登記権利者(実際には真実の相続人である長男の子)、相続登記の名義人を登記義務者として共同で申請する必要があります。
そのため、長男の子としては、相続登記の名義人であるあなた方の協力なしには抹消登記をすることができず、協力が得られなければ訴訟を提起して判決を得て、抹消登記をすることになります。
したがって、あなた方としては、この手続きに協力する代わりに、解決金としていくらかの金銭(長男の子が訴訟をする際には弁護士に依頼する必要があると思われますので、その弁護士費用相当額くらいが解決金として妥当なところかと思います)を支払うよう、長男の子に対して求めるとよいでしょう。
また、もしもあなた方が実家の固定資産税の一部でも負担してきた事実があるのであれば、あなた方は長男の子に対して、支払った固定資産税の返還を求める請求(不当利得返還請求といいます)をも合わせて行い、解決金や固定資産税分の支払があれば抹消登記に協力するという姿勢をとられるとよいでしょう。
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11:04 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続法改正10 相続財産に対する差押の効果見直し

2019/09/17
【父に借金があった場合に問題となる】

相続は財産も承継する代わりに、借金など負の財産(相続債務)も承継します。
今回はこの相続債務に関する法改正です。
相続債務というのは、亡くなったお父さんの負債、たとえば亡くなったお父さんに多額の借金があった場合、というイメージで捉えていただくとよいでしょう。

【知人に借金をしていた父の例】

今回の改正は非常に難しいため、参考ケースとして

・死亡した父は自宅不動産を所有していた
・父は、「自宅を長男に相続させる」と書いた遺言を残して死亡した。
・相続人は長男Aと二男Bの2名のみ
・その後、父は知人Xに1000万円の借金をしていたことが判明した。

という事例をベースに改正法を説明していきます。

相続法改正

【従来、二男の相続分は差押えできなかった】

従来の法律では、父が残した借金は次のような結果になっていました。

① 父の知人Xは、父に1000万円を貸しました。
 その際、父は「もしも返済しなかったら、自宅を差し押さえれば回収できる」と知人のXに説明していました。
② その後、父が死亡
③ 借金を返してほしい知人Xは、長男Aと二男Bにそれぞれ500万円ずつ、借金の返済を請求し、父名義の自宅不動産を差し押さえました。
④ これに対し、遺言で自宅を相続した長男Aは、遺言を使って登記をA名義に変更しました(相続登記)
⑤ すると裁判所から「この不動産は父の財産なので本来なら長男Aと二男Bとが共有する財産だったが、今回は後から遺言でA名義になった。そのため、二男Bの法定相続分はゼロになった。たとえ身内でも、二男Bに請求する借金で、別人であるA名義の財産を差し押さえることはできない。」と判断され、二男Bが引き継いだ借金(2分の1で500万円)を使って差し押さえをした自宅の相続分(2分の1)は差し押さえできませんでした。
⑥ その結果、知人Xは自宅を差し押さえても借金を返してもらえませんでした。
 
つまり、借金を返してほしい知人Xは、「自宅を差し押さえれば回収できる」と思って差し押さえをしたのに、後から遺言で長男名義にされると、二男に請求した金額(2分の1で500万円)の限度で差し押さえが無効になるということです。
自宅の売却代金の半分は借金返済に回してもらえない、という結果になってしまっていたのです。

このような従来の法律に問題があり、
「遺言があるかどうかは他人にはわからない。遺産である不動産を差し押さえた後に遺言が出てきて、自宅の名義を長男に変更されたら差し押さえが空振りに終わる、という法律は変えてほしい」という問題点が指摘されていました。

【改正後は二男の相続分も差し押さえが可能】

そこで、改正法では次のようになりました。

(改正後のルール)
「相続させる」旨の遺言があっても、法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件を具備しなければ、父の債権者など第三者に対抗できない。

上記は法律上の表現で難しいと思いますので説明しますと、遺言で自宅不動産をもらう長男Aは、知人Xより先に相続登記をしておかないと知人Xの差し押さえで長男A自身の法定相続分(2分の1)を超える部分(=二男Bの法定相続分)の差し押さえが優先することになったのです。
これを今回のケースで言えば、
長男Aが自宅をA名義に変更(相続登記)せず放置しているうちに知人Xが父の自宅を差し押さえた場合、長男Aの法定相続分を超える部分(=二男Bの法定相続分)は
(改正前)・・長男Aが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえは認められない
(改正後)・・・知人Xが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえが認められる。

「遺言で長男Aの財産になった」という反論は通用しなくなります。その結果、長男Aの法定相続分だけでなく、二男Bの法定相続分(自宅の2分の1)も有効に差し押さえられてしまうことになります。
逆に言えば、債権者である知人Xは、長男Aの相続登記より先に差し押さえをすれば、長男の法定相続分(2分の1)に加え、二男の法定相続分(2分の1)も差し押さえることができ、自宅の売却代金全額から借金を返してもらえることになったのです。

【「○○を相続させる」という遺言がある場合は早急に登記が必要】

このように、自宅などの相続財産を「相続させる」旨の遺言で財産を相続した長男Aは、早急に登記をしておかないと、父にお金を貸していた知人のXのような債権者から父の財産を差し押さえられてしまう、というリスクがあることになりました。
そのため、今後は遺言がある場合に早急に名義変更(相続登記)をしておかないと、せっかく相続することができた財産(自宅不動産など)も債権者の差し押さえが優先してしまう、ということを覚えておく必要があります。

【新制度は令和元年7月1日から施行】

この改正法は、令和元年(2019年)7月1日から施行されています。
つまり、同日以降に開始(死亡)した相続については、早急に遺言の有無を確認して相続登記を行っておかないと、債権者により法定相続分を超える持分の差し押さえを受ける可能性がある、ということになります。
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14:05 相続法改正 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

母に頼まれた?兄の出金【Q&A №661】

2019/09/13


【質問の要旨】


・母の生前、銀行から兄が500万円を引き出した。兄は「母に頼まれて引き出し、数日後に現金をもらった」と主張。
・「母が通帳を管理していたから、勝手に出金できない」という兄の主張は裁判で認められるか?
・500万円は贈与ではなかったことの証拠がないが、不利になるか?

【ご質問内容】

母の相続人は私(弟)と兄で、兄は母と同居してました。
母の生前に多額の預金引き出しがあり、その中のひとつに3年前に銀行の窓口で500万円を引き出した件があります。
これについて、払戻伝票の筆跡から兄が引き出したことは証明されていて、母の委任
状や意思確認が行われなかったことも証明されています。
この銀行では口座名義人の同居の家族なら本人の代わりに500万円まで引き出すことができるという回答があったからです。
今は兄側に弁護士が就いていこの500万円について兄は、「母に頼まれて引き出し、
500万円は母に渡した。
数日後、兄と妻(兄の妻)に母が250万円ずつ現金でくれた。」と言っています。
そこで兄夫婦で500万円もの高額な現金を受け取ったら銀行に預けるのが一般的かと
思い、受け取った現金の入金履歴などを求めましたが入金はしていないとのことで
す。
そして母と兄との贈与契約書、母のために使った領収書、母があげたというメモやも
ありません。
これから裁判を考えているのですが教えて下さい。
(1)兄は「母が通帳を持っていたのだから、500万も引き出されたら気付くはずだ。だから、勝手に引き出してない。」という反論をしています。
確かに母が当時自分の通帳を持っていたのは事実ですし。
この兄の反論は裁判で認められてしまいますか?
(2)私には、母が兄夫婦に500万円を贈与しなかったことを証明する証拠はないのですが、不利ですか?

661

(太郎)



 ※敬称略とさせていただきます。


【前提 兄の主張を整理】

今回、兄の主張を整理すると次のようになります。

①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

今回、法的には①委任の有無、③贈与の有無という2つの論点が問題となりますが、それぞれについて兄が主張をしていますので、今回は兄の主張を一つ一つ取り上げて回答していきます。

【「母が通帳を管理していた・・・」という兄の主張】

これは①委任の有無に関する兄の主張ですが、たとえ母が通帳を管理していても、母が金庫などに入れて厳重管理していたなどの事情が無い限り、同居者なら母に無断で通帳を持ち出すことは可能でしょう。
いずれにしても、兄が銀行に持ち込んだ事実は争いないわけですから、あとは「母に頼まれて引き出し」たか否か、という点が問題です。

【母に頼まれた、という主張について】

まず、一般論として高齢の母が息子に預貯金からの引き出しを任せる、ということは十分にありうる話です。
しかし、ご相談によれば多額の出金は多数存在するが、母に頼まれたのがこの500万円だけとすれば、なぜこの500万だけなのか、不自然さが残るところです。
さらに、500万円の引き出しについては、委任状も意思確認(銀行から母への電話等)も行われていないことから、兄の主張を裏付ける証拠はありません。
そのため、ほかに兄の主張を裏付ける証拠がなければ、そう簡単に裁判所は母に頼まれた、という主張を認めるわけではないものと思われます。

【あなたに証拠がなくともそう不利ではない】

では逆に、あなたの側に「贈与ではないこと」を裏付ける証拠がない、という事情ですが、もちろんあなたの側に証拠がある方がより安心です。
しかし、基本的には贈与を主張する兄が「贈与の合意があった」事を立証する責任を負うため、あなたの側に証拠がない、というだけで負けるわけではありません。

【最後は経過の合理性で判断する】

兄が引き出したお金を「母に渡した」証拠もおそらく見当たらず、現時点では兄が主張しているだけの状況と思われます。
このように、お互いに決め手となる証拠がない出金を裁判所では「預かり遺産」などと呼び(不正出金と同様に)預かり金を遺産に加えて遺産分割の判断を行う傾向があります。
このような預かり金が、母から贈与されたのか、それとも無断の出金なのか、兄の主張がいかに合理的か(不自然さがないか)という観点で裁判所は判断することが通常です。

前記しました兄の主張を再度示しますと、
①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

というものでした。この経過が合理的な経過か、という観点から検討していくことになります。
具体的には、母は兄に贈与するために出金を頼んだとすれば、引き出しの当日に兄とその妻に手渡すのが自然であり、いったん現金を母が受け取り、数日間手元で保管した理由が今ひとつはっきりしません。
ここに不自然さが残るといえるでしょう。
もちろん、兄には弁護士が就いているようですし、口で言うだけならいくらでもストーリーを述べることは可能でしょう。
しかし、結局のところ裁判所は当事者が述べる経過が合理的か否かを自らの感覚で判断します。
そのため、あなたの立場としては、兄の主張には裏付け証拠がないことや、兄が述べる経過がいかに不自然であるかを徹底的に裁判所にアピールしていくことが重要な作業となるでしょう。
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13:22 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

甥による不正出金や契約書偽造への対処法【Q&A №660】

2019/08/30


【質問の要旨】


・介護施設入所中の母の通帳や実印等が施設からなくなっていた。
・母死亡後、母の生前や死後に母の甥によって不正出金がなされていたことが判明した。
・母名義の不動産も母の甥を債務者とする根抵当権が設定されていた。
・母の甥の筆跡書類もあることから、施設入所時から文字も書けない状態であった母に無断で不正出金や根抵当権を設定した母の甥に対し、告訴することは可能か。

【ご質問内容】

① 介護施設へ入所していた母(90歳)のもとへ母の甥(70歳)が出入りし始め、
2年後母が亡くなり、同時に通帳や印鑑証明登録カード、実印、不動産登記情報等、施設からなくなっていました。
相続人である私が預貯金の履歴を金融機関へ申請したところ、母が亡くなった直後、100万がATMで引き出され、生前には総額600万円をATMで30回にわたり引き出しておりました。
犯人は母の甥とすぐにわかりました。

母の甥は5年前にも私の妹の預金口座から3度にわたり61万円を引き出した常習犯です。

更に母名義の自宅マンションに1500万を限度とする債務承認弁済契約に基づく根抵当権が設定され債権者はこれもまた母の甥でした。

そもそも母はすでに入所時からスプーン、ペンすら持てなくなっており文字はかけない状態でした。

母はキャシュカードも作らなかったので印鑑と通帳で引き出していましたので、現金を下ろすときは銀行員が施設に訪問して「渉外払戻請求書」に代筆してもらい現金を受けとっていました。

② 文字のかけない母が契約書にサインすることはできないので調査するとその署名は母の甥の筆跡でした。
親族ですが刑事訴訟法231条2項により

筆跡の証拠書類もあります。告訴可能でしょうか?

660

(snowfairy)



 ※敬称略とさせていただきます。

【告訴は可能だが、警察は受理しない可能性も】 

まず、ご質問の案件で、母の甥の行為に何らかの犯罪が成立するのかというと、母の通帳又はキャッシュカードを使ってATMで預貯金を引き出したということですので、法的には窃盗罪が成立する可能性があります。
また、母の実印を持ち出し、債務承認弁済契約書に勝手に母の署名押印をしているという点については、実印の持ち出しに窃盗罪が、契約書の偽造に私文書偽造及び同行使罪が成立する可能性があります。
刑法には、親族相盗例という制度があり、親子間や、直系血族等の間では窃盗罪の刑は免除されますが(刑法251条、同244条準用)、今回は、おばと甥という関係ですので、これにはあたりません。
そのため、あなた方相続人が筆跡資料等の証拠資料を持って警察に行けば、亡くなった母に代わって、窃盗罪や私文書偽造罪で告訴することは可能ではあります。
ただ、被害届とは違って、告訴を受理すると、警察に捜査義務が生じることから、警察は、「お母さんはすでに亡くなっているので、当時のお母さんの意思は知りようがない」とか、「まずは被害届で」「民事で解決できないか」などと言って、告訴の受理を避ける可能性も高いです。

【あなたは民事上の不当利得返還請求ができる】

ご質問によると、母の甥が母の介護施設に出入りして、通帳等を持ち出し、ATMで預貯金を引き出していたようです。
そのため、この不正出金については、あなた方相続人が、その相続分に応じて、民事上、不当利得返還請求という形で甥に対して返還を求めることが可能です。
この請求をする場合には、原則として、以下の3点をあなたの方で調査・立証する必要があります。
 ① 預貯金口座からの多額の出金の存在
 ② 出金した人はだれか
 ③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか
今回は、取引履歴は取得済みのようであり、甥が出金・取得したことも判明しているようですが、実際に請求をすれば、甥は「全く知らない」とか、「母からもらった」などと言い出すかもしれません。
甥が出金をしていること自体は、甥が通帳やカード等を持っており、ATMで引き出されているという事実から明らかかもしれませんが、母が贈与したというような主張に備えて、母当時の母の意思能力に関する資料(病院のカルテや、介護記録等)も集めておくべきかと思います。

【債務承認弁済契約については、無効を主張する】

また、債務承認弁済契約については、甥が母の実印や印鑑登録カードを勝手に盗み出し、勝手に母の署名押印をしたものであるということを、筆跡等をもとに主張し、契約の無効を理由に根抵当権登記を抹消すべきです。
おそらく、甥はすぐに認めて登記抹消に応じるようなことはないと思われますので、母の相続人であるあなた方としては、甥に対して、根抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟をする必要が出てきます。
上記の通り、告訴が受理されるかは警察の対応にもよりますが、民事の請求に関しては、訴訟等の手続きが必要になる場合もありますので、早急に検討されるとよいでしょう。
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相続法改正9 遺留分制度に関する見直し

2019/08/30
【遺留分制度とは】

遺留分制度とは、遺言や生前贈与などにより特定の者だけが多額の財産を取得した場合などでも、特別に最低限の財産の取り分(遺留分)の取り戻しを認める制度です。
遺留分を請求できるのは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人です。
遺留分は、多くのケースで法定相続分の2分の1です。
この遺留分制度に関して、今回の民法改正により以下の2点の見直しが行われることになりました。

【見直し①遺留分減殺請求の金銭債権化】

これまでの法律では、遺留分を主張する者(遺留分権利者)が、遺贈等を受けた者に対して遺留分を求める請求(遺留分減殺請求)をすると、遺贈等は、遺留分を侵害していた限度で効力を失い、遺贈された財産は、その限度で遺留分権利者のものになっていました。
このとき、遺贈等を受けていた者は、その財産そのものを返還(現物返還)するのが原則で、そのものの代わりに金銭を支払う(価額弁償)のは例外という位置づけでした。
しかし、たとえば、不動産が遺贈されていた事案で、不動産の一部を遺留分権利者に返還しなければならないとなると、その不動産は複雑な共有状態になり、売るにも貸すにも一人ではできないという事態が度々生じていました。
そこで、改正法では、従前の取り扱いを抜本的に見直し、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することができることとされました(これを「遺留分侵害額請求」といいます)。
例外はなく、そのものの返還をすることはできません。
ただ、必ず金銭で支払わなければならなくなったことにより、金銭を持っていない者については非常に困った事態になります。
そのため、この点に配慮して、遺留分侵害額請求を受けた者が、すぐにその額の支払いをすることができない場合には、支払いを一定期間猶予してもらうよう、裁判所に請求できることになりました。

【見直し②特別受益は相続開始前10年間にされたものに限る】

これまでは、遺留分を侵害しているとして問題にされる生前贈与の範囲について、法定相続人に対するものか、それ以外の者に対するものかで異なる取扱いがなされていました。
すなわち、法定相続人以外に対する贈与は、原則として相続開始前の1年間にされた贈与のみが対象になりますが、法定相続人に対する贈与のうち特別受益にあたるものは(特別受益については、【コラム】法定相続の概略と具体例その4:特別受益参照)、特段の事情がない限り時期を問わず(何年前の贈与でも)対象とされていました。
これが、今回の改正により、法定相続人に対する贈与(特別受益にあたるもの)について、相続開始前10年間にされたものに限ってその対象となり、従来の取扱いより、その範囲が限定されました。
ただし、贈与当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したものは、これまでと同様に、10年以上前の贈与であっても遺留分算定の基礎となる財産に含まれることには、注意が必要です。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい遺留分制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。
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相続法改正8 自筆証書遺言の保管制度

2019/08/29
【遺言を法務局が預かる制度が新設】

先日のブログでは、手書きで作成する自筆証書遺言(以下、「自筆遺言」と略称します)の一部がパソコンで作成できるようになり、財産が多い方でも手軽に作成できるようになった新法改正をご紹介しました。
今回はこれに加え、自筆遺言を法務局が預かってくれる、という新制度をご紹介します。

この制度のメリットは大きく2つ

①自宅で保管する必要がないため、家族に見つかる心配が無い
②検認手続が不要になるため、紛争になる前に遺産を相続できる

この2つのメリットについて、以下ご紹介していきます。

【メリット① 家族に見つからずに作成できる】

自筆遺言の問題点として、手書きで作成すると通常は自宅で保管するため、災害や引っ越しなどの際に紛失する、あるいは遺言を見つけた親族の方により破棄・改ざん、あるいは隠されるなどの問題があるといわれていました。
また、ご家族が破棄や改ざんしないとしても、「長男に全遺産を相続させる」という遺言を見つけた二男としては心穏やかではないでしょうし、ご家族の間でもめ事が起きてしまうという心配もありました。
そのため、家族に秘密で遺言を作りたい方は、(費用はかかりますが)公証役場に出向いて、公正証書遺言を作成する傾向が多かったのです。
しかし、今回は手書きで作成した自筆遺言も一定の様式を整えて法務局に届け出ることで、法務局が遺言を保管してくれます。
そのため、紛失の心配やご家族に見つかって破棄される、あるいはもめ事が発生することを防ぐことができます。
これが1つのメリットです。

【相続人には通知が届いて把握できる】

もっとも、遺言者が死亡した後、相続人の一人(たとえば財産をもらえる人)が法務局に遺言の写しを閲覧・交付申請した場合、他の相続人にも通知が届く制度になっていますので、遺言が存在することは相続人全員が把握できる制度になっています。
このような制度で、遺言の紛失や隠匿、不当な改ざんが行われることを防止しよう、というのが今回の法改正です。

【メリット② 検認手続が不要になる】

もう一つ、自筆遺言の問題点として、家庭裁判所の検認手続が必要、ということが指摘されていました。
検認手続とは、家庭裁判所に自筆遺言を提出して、相続人全員を家庭裁判所に呼び集め、自筆遺言の内容を相続人に知らせると共に、遺言内容を確認する手続です。
自宅の名義変更を行う法務局や、預金の解約手続を行う銀行などは、いくら自筆遺言を持ち込んでも、検認を受けた遺言でなければ相続手続には応じないため、自筆遺言は必ずこの検認手続を経る必要があります。
ところが、この検認手続では家庭裁判所に出頭し、さらに相続人全員を呼び集める手続のため非常に煩雑でした。
そこで、今回の改正では自筆遺言を法務局に届け出て保管してもらうことで、検認手続を不要とする、という制度に変わりました。
この改正で、自筆遺言も検認手続を経なくとも遺言を執行して自宅不動産や預金の相続手続を行うことが可能となったのです。

【新制度は令和2年7月10日から施行】

この自筆遺言の保管に関する改正は、令和2年(2020年)7月10日から施行される予定です。
そのため、現時点(令和元年8月)時点で遺言を作成される方は、従前通りの方法で自筆遺言を作っておき、暫定的に貸金庫や信頼ある専門家に依頼して保管するなどの対策を取る必要があります。
その上で、2020年に法改正が施行されたところで改めてこの遺言保管制度の利用を考える必要があるでしょう。
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【相続判例散策】遺産分割前の遺産不動産の賃料収入は、遺産分割によらず、当然に法定相続分に応じて取得される 最高裁平成17年9月8日(平成16年(受)第1222号)

2019/08/26
遺産分割前の遺産不動産の賃料収入は、遺産分割によらず、当然に法定相続分に応じて取得される

最高裁平成17年9月8日(平成16年(受)第1222号)

【ケース】

被相続人は多数の不動産を所有しており、その相続人は、後妻と前妻の子らであった。
相続人間では、これより前に遺産分割審判がなされ、収益不動産について、後妻が取得した。
ただ、遺産分割審判が確定するまでの賃料収入が約2億円あったことから、その分配方法が相続人間で争いになった。
第1審及び第2審は、後妻の主張する、遺産分割審判に沿った内容での計算(当該賃貸不動産を遺産分割で相続した後妻が相続開始後の賃料を全部取得する)が妥当だと判断したが、前妻の子らは、法定相続分に従って分割するべきだと主張して争った。

【裁判所の判断の概略】

上記の事案において、最高裁判所は、
① 共同相続財産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する
② 遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない
と判断した。
つまり、遺産分割で特定の者が相続することが決まっても、決まるまでの間の賃料については、法定相続人全員が、法定相続分に応じて取得することができ、遺産分割によってその不動産を取得した者が、全賃料を取得するのではない、と判断したということである。
 
【弁護士のコメント】

この判決は出る前は、1審・2審がとったような考え方、つまり、遺産分割の効力が相続開始の時にさかのぼる以上、遺産不動産から生じた賃料債権も、相続開始の時にさかのぼって、遺産分割でその不動産を取得した者に帰属するのだという考え方と、この判決のように、法定相続分で分割するという考え方とで分かれていて、判断の統一が求められていました。
そんな中、この判決により、遺産不動産の賃料については、被相続人の死後、遺産分割でその不動産の所有者が決まるまでの間は、法定相続分で分割するということが明らかになり、現在の実務はこれに従って進められています。
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相続法改正7 遺言執行者の権限の明確化②

2019/08/26
(前回の続きより)

【「相続させる」旨の遺言における遺言執行者の権限】

例えば、父が遺言書の中で「私の自宅土地をAに相続させる」と書き、遺言執行者を指定していた場合(このような遺言を「特定財産承継遺言」といいます)、父の死後に遺言執行者は、自宅土地の名義変更ができるのでしょうか。
当然にできるはずだと思われる方が多いのではないでしょうか。
しかし、旧民法下では、遺言執行者にそのような権限はありませんでした。
「相続させる」という書き方では、死亡と同時に権利が相続人に承継されるから、遺言執行者の出番はない、との考えからです。
ただ、これにより、相続登記が放置され、所有者が不明確となっている不動産が社会問題化している背景もあり、今回の改正で、遺言執行者が単独で所有権の移転登記手続きを行うことができるようになりました。
また、合わせて、遺言執行者に預貯金の払戻・解約の権限も認める文言も加えられました。
ただ、従来から実務上は、遺言執行者に預貯金の払戻・解約権限を認める扱いが金融機関に浸透していましたので、法律上正式に明文化されたというだけです。

《改正民法1014条2項、3項》
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。


【遺言執行者の復任権】

旧民法でも、やむを得ない事由があれば復任権(遺言執行者が第三者にその任務を行わせること)を認めるとの規定はありましたが、改正民法においても、復任権が規定されています。
これは、遺言の場合は、遺言執行者に任務を委任した遺言者はすでに死亡しているため、復任の自由を認める必要が大きいとの理由に基づくものです。
ただし、復任権を行使した場合には、遺言執行者は相続人に対して、その選任及び監督についての責任を負うことになります。

《改正民法1016条》
1 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

 
【遺言執行者から相続人への通知】

改正法では、遺言執行者は就任後に遅滞なく相続人に対して通知をしなければならないとの規定が加えられました。
改正により、上記の通り遺言執行者の権限が強化されたこともあり、遺言執行者に通知が義務付けられました。
これにより相続人は、遺言の内容や遺言執行者を知ることになります。

《改正民法1007条2項》
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。


【この改正の施行日は、基本的に2019年7月1日ですが、例外があります】

基本的に、遺言執行者に関する改正の施行日は、2019年7月1日です。
ただし、1007条2項の遺言執行者の通知義務や、1012条の遺言執行者の権限については、2019年7月1日より前に開始した相続であっても、遺言執行者が就任したのが施行日以後である場合は、改正法が適用されます。
また、1014条2項から4項に記載した「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)については、2019年7月1日以後に相続が開始しても、遺言の作成日が施行日前であれば改正法は適用されないため、遺言執行者は単独で登記等をすることができないということになりますので、注意が必要です。
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相続法改正7 遺言執行者の権限の明確化①

2019/08/23
【遺言執行者の権限が強化されました】
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有する者のことをいいます。
遺言執行者の制度が存在する意味は、遺言の執行を遺言執行者に委ねることによって遺言を適正かつ迅速に実現していくことにあると考えられています。
しかし、これまでの法律では、遺言執行者の立ち位置が曖昧で、迅速な実現化が妨げられるようなこともありました。今回の改正では、極力そのような事が無いように規定し直されています。

【明確化のための文言変更】
旧民法1015条には「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」という規定の仕方になっていましたが、今回の改正では、次のような内容に改められました。

《改正民法1015条》
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。


また、改正民法1012条1項も、以下のような規定になりました。

《改正民法1012条1項》
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。


これらの規定については、文言は変わっていますが、実質的に遺言執行者の権限内容が変わったわけではありません。
ただ、自身にとって不利益な内容を実現された相続人から、「必ずしも相続人の利益のために行動しているとはいえず、代理人ではないではないか」とのクレームが出ていました。
そのため、「代理人」という言い方をやめ、「遺言の内容を実現するため」という文言を加えるなどして、遺言執行者は必ずしも相続人にとって利益となる行為ばかりやるわけではない、ということを明確化したものです。
また、下記の通りの、遺贈の履行についての規定も、従来の扱いを明文化したものです。

《改正民法1012条2項》
遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。


この「遺贈」には、特定遺贈(「〇県×町の不動産をAに遺贈する」というように、特定の財産を指定して遺贈すること)だけでなく、包括遺贈(「遺産の4分の1をAに遺贈する」というように、相続財産の割合を指定して遺贈すること)も含まれます。
また、これは、遺言執行者がいる場合について規定したものですが、遺言執行者は必ず選ばなければならないわけではありませんので、もし遺言執行者がいなければ、相続人が遺贈の履行をすることになります。

(続きはまた次回に…)
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任意後見監督人の代理権の範囲【Q&A №659】

2019/08/23


【質問の要旨】

・死亡した母の遺言書があり、すべての財産を兄が相続する。
・相談者は兄に遺留分減殺請求中。
・父の任意後見人が兄。任意後見監督弁護士がついている。
・兄に対する父の遺留分減殺請求について、後見監督弁護士にお願いしていたが、
「任意後見契約書に遺留分減殺請求が載っていないからできない」と言われた。
・後見監督弁護士による父の遺留分減殺請求ができないのなら、誰に依頼すればいいか?


【ご質問内容】

母は2019年末に死亡。
相続人は父と兄と私(弟)。
母が遺言を3年前に作成し、すべての財産を兄に相続することが判明。
私は兄に遺留分減殺請求中。
父も3年前に任意後見人契約を兄と結んでおり、今年の4月末に受理されてしまった。
父には任意後見監督弁護士がついている。
父の遺留分請求は、任意後見第7条第4項の利益相反により、後見監督の弁護士にお願いしていた。
しかし監督弁護士によると、最初は検討していたが、「任意後見契約書の代理権目録が第1号様式で、これに遺留分減殺請求が載っていないからできない。第2号様式による代理権目録が必要。」と意見が変わってきた。
家裁からの指示らしい。
家裁に根拠を問い合わせると、「新成年後見制度の解説」の任意後見制度、監督以外の職務という項目(P256~257)。
本当だろうか?
公証役場の意見では、任意後見契約公正証書は雛形がきまっており、1つ1つ個別に作成するものではない。個別なものを作成すると法務局から注意される。代理権目録の6に訴訟行為(民事訴訟法第55条第2項の特別授権事項を含む)に関する事項、7に「以上の各事項に関する一切の事項」と書いてある。
訴訟行為が認められるのだから、遺留分減殺請求は7の中に含まれるはずだと。
そしてもし、後見人監督弁護士が父の遺留分請求をできないなら、どなたに頼めばよいのか?
兄が任意後見の際に提出した診断書の内容は、謄写申請却下されたので不明。

659

(とりあえず匿名で)



 ※敬称略とさせていただきます。

【任意後見人と本人との利益が相反する場合は、任意後見監督人が本人を代表する】

今回の事案においては、母がすべての財産を兄に相続させるとの遺言を残しているため、父の立場にたてば、兄に対して遺留分減殺請求をすべき事案です。
ただ、父の任意後見人は兄であり、兄と父は、利害が対立してしまっています。
このように、任意後見人と本人との間で利益が相反した場合には、任意後見人に代わって、任意後見監督人が本人の代表者となることができます。
任意後見監督人は、通常は、任意後見人がおかしなことをしないように監督する役割をしているのですが、今回の事案のように、本人と任意後見人との利益が相反している事案では、上記のとおり、本人の代表者になることができるのです。

【任意後見人や任意後見監督人は、契約で決めた代理権しかない】

任意後見契約という制度は、本人の意思能力が備わっている間に、自分の意思能力が衰えた場合に備えて、信頼できる人に代理権を付与する契約であり、どのような範囲で代理権を与えるかは、本人が自由に定めることができます。
そのため、本人が契約で定めた範囲内でしか、任意後見人や任意後見監督人は代理権を有することができません。
通常は、「遺産分割の協議、遺留分減殺請求、相続放棄、限定承認に関する事項」というような形で代理権目録に入れておくことが多いですが、父が兄と任意後見契約をした際に、上記のような項目を入れていなければ、基本的には、任意後見人や任意後見監督人に遺留分減殺請求をする権利はありません。
また、訴訟行為が代理権の範囲に含まれているとのことですが、遺留分減殺請求という意思表示は、訴訟行為の前段階となる意思表示であるので、訴訟行為には含まれないものと思われます。

【任意後見監督人が動かなければ、成年後見人を選任する】

今回、任意後見監督人が動こうとしない、もしくは、代理権がなく動けないと言うのであれば、あなたとしては、家庭裁判所に対し、法定後見(成年後見人)の申し立てをすべきです。
成年後見人であれば、遺留分減殺請求を行う権限を有しておりますが、成年後見人であれば請求をしなければならないというわけではないため、最終的には成年後見人の判断ということになります。
そのため、出来る限り成年後見人に動いてもらうために、成年後見の申し立てをする段階から、申立書に、「父のために遺留分減殺請求をしてもらいたいという事情があって申立をしている」ということを明示しておいたほうがよいでしょう。
なお、遺留分減殺請求の時効は、相続の開始を知ったときから1年ですので、選任の申し立てをしているうちに時効期間が過ぎてしまうかもしれませんが、この点は、最高裁において、「時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において、少なくとも、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は、完成しないと解するのが相当である」と判断されており、時効満了前に申立をすれば、後に成年後見人が就いてから6か月を経過するまでは、時効は完成しないとの判断がなされていますので、その点については心配はいりません。
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相続法改正6 自筆証書遺言の方式緩和

2019/08/19
【自筆証書遺言が作りやすくなりました】

亡くなった方が残す最後のメッセージ。それが遺言です。
一般には「ゆいごん」と呼ばれますが、法律上は「いごん」と読みます。
遺言には大きく分けて、本人の手書きで作成する「自筆証書遺言」と公証役場で作成する「公正証書遺言」の2つがあります。
今回の相続法改正では、手書きで作成する「自筆証書遺言」が一部パソコンで作成可能になるなど作りやすくなる改正がありましたので、ご紹介したいと思います。

【これまでは全文を手書きで作成】

これまで、自筆証書遺言はその名の通り、全文を遺言作成者本人が手書きで作成する必要がありました。
自筆証書遺言は、書き方さえ知っていればペンと紙、そして印鑑があればいつでも、どこでも無料で作成できるというお手軽さが大きなメリットです。
しかし、その手書き自体が困難を極める事態が起きていました。
たとえば、「全財産を長男Aに相続させる」というような簡単な一言で終わる遺言なら簡単に作成できます。
しかし、遺言を作るのは一般に高齢の方が多いため、
    「一戸建ての自宅は長男Aに・・・」
    「賃貸経営のマンションは長女Bに・・・」
    「○○銀行の預金は二女Cに・・・」
    「△△信用金庫の預金は二男Dに・・・」
    「その他の財産は甥のEに・・・」

…などと細かく遺産の分け方を書きたい場合、高齢の遺言者が全文を手書きで作成することが非常に難しかったのです。
しかも、土地を指定する場合は地番や面積、地目といった細かい情報記載が必要ですし、銀行預金の場合は金融機関名や取り扱い支店名、口座番号といった情報を記載する必要もあります。そのため、財産が多い高齢の方は、財産情報をすべて手書きで、しかも書き間違えないよう作成することは非常に難しいことでした。

【財産目録はパソコンで作成OK】

今回、全文を手書きする必要がある、という点が改正されました。
この土地や預金など、財産目録をパソコンで作ったり、通帳のコピーを遺言に添付したりすることで、遺言が簡単に作成できるようになりました。
この改正で、高齢の遺言者が土地や預金の細かい情報まで詳しく手書きしなくとも、家族や専門家にパソコンで作ってもらう方法が使えるようになりました。

【パソコン化でも偽造をしっかり防止】

他方で、パソコンで作成するなら誰かが勝手に財産目録を差し替えて遺言内容を偽造できるのでは?という懸念もありました。
そこで、改正法ではパソコンで作成された財産目録にも遺言者の署名および印鑑を押印することにして、他人が勝手に偽造できないよう防止する措置が設けられました。

【2019年1月13日以降に作成された遺言に適用】

この自筆証書遺言に関する改正は、すでに2019年1月13日から施行されています。
もっとも、施行日以降に死亡された方の遺言であっても、遺言作成が2019年1月13日以前の遺言には適用されません。
以前の遺言の場合、改正前の要件(全文自筆)を満たすことが必要ですので、遺言の作成日にはご注意ください。
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相続法改正5 相続開始後の共同相続人による財産処分

2019/08/16
【相続開始後に相続人の一人が財産処分をした場合の公平性を図る改正がなされました】

これまでの相続法では、特別受益のある相続人が、遺産分割前に遺産を処分した場合に、遺産を勝手に処分した相続人の方が、相続できる財産額が多額になるという不公平が生じていました。
そのため、この不公平をなくすため、今回法律が改正されました。

【これまでの相続法の問題点】

実際に、どのような不公平が生じていたのかを、事例をもとに説明します。

 例)相続人:長男、次男(法定相続分2分の1)
   遺産:預金2000万円
   特別受益:長男に対して、生前贈与2000万円


上記の通りの事案において、被相続人が亡くなった後に、長男が被相続人の預金2000万円のうち、さらに1000万円を引き出した場合、次男として何が請求できるかを考えてみます。
遺産総額は、預金2000万円と生前贈与2000万円の合計の4000万円となり、次男の相続分は2分の1であるため、計算上、次男が相続するべき額は2000万円となります。
しかし、実際に残された財産は1000万円しかありませんので、次男は、この1000万円を取得し、相続後に引き出された1000万円については、法定相続分である500万円の限度で、長男に対して、不当利得返還請求ができるにとどまるということになります。
その結果、長男及び次男の取得額は、以下の通りとなります。

  長男:生前贈与2000万円+出金額1000万円-返還請求額500万円 =2500万円
  次男:遺産分割1000万円+返還請求額500万円=1500万円

下線文
つまり、勝手に預貯金を引き出した長男の方が、次男よりも多くの財産を取得することになり、公平性に欠けることが問題とされていたのです。

【改正後の法律では、出金がなかった場合と同じ結果が実現できるようになりました】

上記と同じ事案で、改正後の法律によればどのような結論になるのでしょうか。
改正後の法律では、処分された財産を遺産に組み戻すことについて処分者以外の相続人の同意があれば、処分者の同意を得ることなく、処分された財産を遺産分割時に遺産として存在するものとして遺産分割をすることが可能になりました。
つまり、上記事案でいうと、長男によって引き出された1000万円の預金を、次男が遺産に組み戻そうと思えば、長男の同意がなくても組み戻して遺産分割ができると言うことになります。
具体的に上記事案で見てみると、同じく遺産総額は4000万円、次男の相続すべき額は2000万円であるところ、長男によって引き出された1000万円についても、遺産分割時に遺産として存在している(引き出されていない)と考えるため、2000万円が残されていたものとして遺産分割をすることができます。
つまり、次男としては、2000万円を取得することができ、1000万円については残された遺産から、残り1000万円については、長男から代償金という形で支払ってもらうことが可能になったということです。
その結果、長男が勝手に財産を引き出したとしても、結果として長男と次男が取得する財産は同じになり、不公平感が解消されました。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

相続開始後に相続人の一人が財産処分をした場合の公平性を図る改正の施行日は、2019年7月1日です。
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夏期休業のお知らせ

2019/08/16
いつも当ブログ「相続これで納得!弁護士に聞く無料相談」をご覧・ご利用いただき、ありがとうございます。

誠に勝手ながら、当事務所は2019年8月13日(火)から8月15日(木)まで夏期休業とさせていただきます。

そのため、その期間中、「相続問題Q&A」の新たな回答ができませんので、ご了承ください。

いただいたご質問については、上記休業期間は非営業日として算定しますことを予めご了承くださいますようお願い申し上げます。
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相続法改正4 遺産分割前の預金払い戻し制度ができました

2019/08/09
【遺産分割前にも預金の払い戻しが可能に!】

預金口座の名義人が死亡されると、預金が動かせなくなることはみなさんご存じの方も多いと思います。
たとえばお父さんがお亡くなりになると、銀行は口座を凍結し、お父さんの口座のお金が引き出せなくなるため、葬儀費用やこれまで支払っていた光熱費・家賃の支払いなど各種の支払いに困るというケースが多く出ていました。
銀行が口座を凍結するのは、各相続人が別々に「私に預金を渡せ」と言ってこられると誰に預金を渡してよいかわからず対応に困るからですが、この銀行実務を承認するような最高裁判決が平成28年に出されました。

【預金も遺産分割の対象とする最高裁判決】

最高裁判所は、平成28年12月19日判決により、共同相続人の一人が単独で払い戻しをすることはできないことを認めました。
要するに、上記の銀行の実務運用を法的にも正しいことだと認めたわけですが、このことで、葬儀費用や光熱費の支払いなど死亡後すぐに支払を要するものにどう対応するかが議論されることになりました。
その結果、今回の預貯金払戻制度ができました。

【一定額なら遺産分割しなくとも払い戻しができます】

今回できた新制度は、預貯金債権の一定割合(銀行1つについて150万円が上限)は、遺産分割ができる前にも払い戻しの請求が可能とするものです。
具体的な計算で払い戻しができる額を見てみましょう。


具体例)
 銀行に父の預金口座が1つあり、死亡時の残高は600万円
 父の相続人は長男と長女の2人だけ
 → 長男が払い戻しを請求した場合の処理は次の通り
(計算式)
 預貯金債権の額(600万円)×1/3×長男の相続分(1/2)
=100万円を限度として払い戻すことが可能



なお、このケースでは計算式で算出した金額を全額引き出すことができますが、上限額(150万円)を超える場合があることには注意しましょう。


【制度は2019年4月1日から施行されています】

遺産分割前の預貯金払い戻し制度は、2019年(平成31年)4月1日から施行されています。
この制度は、施行日前に開始した相続についても適用されますので、必要があれば新法の施行前に死亡があった相続でも払い戻しを求めることができます。
ぜひご活用ください。
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遺産の9割以上が生命保険【Q&A №658】

2019/08/09


【質問の要旨】

母の遺産は預金100万円と2000万円払込の生命保険のみ。
生命保険の受取人が相続人の一人であった場合、生命保険金も遺留分請求はできる?

【ご質問内容】

母が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人です。父は10年以上前に他界しました。
母は兄夫婦と同居していました。
兄と遺産分割の話し合いをした所、母の財産は100万円ほどの預金だけです。
しかし先日、母が2年前に加入した生命保険があることが分かりました。
金額は2000万円を一括で払込み、5年後に利子がついて戻ってくるものです。
そして保険金の受取人は兄になっていました。
ネットなどで調べると、保険金は相続財産に含まれないと知り、遺産分割できないと知りました。
生前贈与や、遺贈ならば遺留分請求もできるのに、それが保険金となると、遺留分請求ができないのではないかと不安です。
額も大きいので、何か方法があれば教えて頂きたいと思って相談しました。
このように、被相続人が死亡の数年前に加入した保険の保険金が、相続人の一人を受取人と指定した場合は、遺留分請求の対象にはできないのでしょうか?

658

(モニモニ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生命保険は遺産ではないとする見解が一般】

今回は相続人に残された財産の9割以上が生命保険金であり、いわゆる法律上の「遺産」がほとんど残っていないケースのようです。
生命保険は遺産ではありませんので相続人で分割することなく、受取人になった方全額受け取ることができます(生命保険が遺産に当たらないことについては当ブログ№598参照)。

【特別受益では解決できない・・・】

もっとも、裁判例の中には、相続人の一人が遺産総額の5割を超える多額の死亡保険金を受け取った場合に、特別受益に準じて遺産に持ち戻しを認めるものがあります(最高裁判決平成16年10月18日。相続ブログ№598参照)。
いわば保険金を生前贈与と同様に扱った判例だと理解すればよいでしょう。
しかし、特別受益は生前贈与した財産(今回は生命保険金)を返還させる制度ではありません。
あくまで現存する遺産(今回は預金100万円)の分け方について、生前贈与を考慮するにとどまります。
そのため、保険金が特別受益であることを主張しても、あなたは現存する預金100万円を相続できるだけであり、これを超えて生命保険金の返還請求はできません。そうすると、本件では特別受益を主張してもなんの解決にもならないでしょう。
そのため、今回は生前贈与や遺贈があっても相続人を保護する制度である「遺留分」を主張するしかありません。

【保険金は基本的に遺留分の対象外】

それでは、生命保険金は遺留分減殺請求の対象財産になるのでしょうか。
まず、生前贈与や遺贈なら遺留分減殺請求の対象となりますので、贈与された金銭の一部を返還するよう請求できます。
しかし、生命保険は(理屈上)生前贈与でも遺贈でもないため、遺留分減殺請求の対象財産には含まれないのではないか、ということがかつて争われました。
この問題について最高裁判所は、死亡保険金は遺留分減殺請求の対象財産に含まれないとしました(最高裁平成14年11月5日判決)。
もっとも、この判例で生命保険金を受け取ったのは相続人ではない第三者の方でした。そのため、今回のように相続人が保険金受取人であった場合とは状況が違います。むしろ、相続人の一人を特別扱いするという意味では生前贈与や遺言で財産を渡したケースと大きな違いはないでしょう。
そこで、あなたとしては、今回受け取られた生命保険金(2000万円)が現存する遺産(預金100万円)の20倍にもあたるという金額の大きさを繰り返し強調し、「このような生命保険を使った遺留分の抜け穴を認めるべきではない」と主張されるべきでしょう。

【今後の方針】

あなたが行うべき主張は上記のようなものですが、この問題は裁判所の判断も学説も意見が分かれていますので、現状で確かな回答ができる問題ではありません。
そこで、相続案件に詳しい弁護士に相談され、上記の主張を含めた法的な検討を早急に進めていくべきでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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11:43 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正出金や養子縁組をする相続人への対応【Q&A №657】

2019/08/09


【質問の要旨】

・義父に成年後見人を付けた。
・義理姉は後見人より預貯金返還請されている。
・義理姉が長男を義父の養子にしたが、無効裁判中である。
・義父は義理姉のリフォーム代を支払った。
・義父が亡くなったら、
① 養子縁組無効訴訟はどうなる?
② 預貯金返還請求は?
③ リフォーム代はどうなるか?

【ご質問内容】

義父には成年後見人を付けました。
それをよく思わないぎりの姉(相続人)が遺産の取り分を増やそうと自分の長男を義父の養子にしたり(裁判中)
後見人より預貯金返還請求されていますが中々裁判が進みません。
また家のリホームで多額のお金を義父に支払いさせていたことがわかりました。
義父にもしものことがあったらいまの裁判や使ったお金の行方がきになります。
私達が準備しておくことあるのでしょうか。
成年後見入っても遺言書の書換えは可能ですが。
長谷川式12点で後見入りました。
介護認定は2から1にさげてしまってますが認知度はⅡbとなっています。

657

(どうなるの)



 ※敬称略とさせていただきます。

【養子縁組無効訴訟・・・義父が原告なら当然に終了】

義姉が自身の息子を義父と養子縁組させた件については、「裁判中」ということですので、おそらく養子縁組無効確認訴訟が係属しているものと思われます。
上記訴訟は、人事訴訟といって、身分関係を争う訴訟であるため、当事者の一方が亡くなると、当然に訴訟が終了します。
そのため、この訴訟を提起したのが義父(又は義父の後見人)なのであれば、義父が途中で死亡すると、その時点で訴訟は終了し、新たに他の者(この養子縁組について利害関係のある者。義父の相続人など)が訴訟を提起し直す必要があります。
ただ、この訴訟を提起したのが義父ではないのであれば、義父が亡くなったからといって訴訟に影響はありません。
養子縁組無効訴訟が係属していれば、その結果によって遺産分割の割合も変わってきますので、遺産分割も訴訟の結果を待って行うことになります。

【後見人からの返還請求・・・相続人らが引き継ぐ】

義姉は、後見人から預貯金返還請求訴訟も提起されているようです。
これはおそらく、義姉が意思能力の衰えた義父の口座から、勝手に預貯金を引き出していたために、後見人が引き出した分の返還請求訴訟を提起したものと思われます。
この途中で義父が亡くなった場合には、被後見人の死亡により後見は終了し、義父の相続人らが裁判を引き継ぐことになります。
その上で、裁判の結果、義姉から引き出した金員を返還してもらった場合には、返還してもらった金員を法定相続分に従って分割し、それぞれが取得することになります。

【リフォーム代・・・特別受益もしくは不当利得返還請求をする】

最後に、リフォーム代ですが、もしも、リフォーム代を支払ったタイミングではまだ義父の意思能力はしっかりしていたというのであれば、これは義父から義姉への生前贈与ということになり、義父の遺産分割の際に、「特別受益」として持ち戻し、義姉の相続分を減らすということになります。
一方、リフォーム代を支払ったタイミングでもうすでに義父の意思能力に問題があったという場合には、義父から義姉への贈与は成立せず、義父(現在であれば後見人。義父が亡くなった後であれば相続人ら)は義姉に対して、リフォーム代の返還請求権を有するということになります。
義父の意思能力については、長谷川式認知スケールの結果だけで判断できるものではなく、また、行う行為の難易度によっても異なりますが、介護記録、通院・入院等していれば医療記録の記載をも合わせて確認し、主張していくことになります。

【今の段階でできることは】

このような事案では、これ以上財産を取得されることを防ぐ手段をとることを一番に考える必要がありますが、今回の事案では、すでに成年後見人もつけているとのことですので、今後財産が取得されることはないでしょう。
そうすると、今の段階でできることは、自身に有利な遺言書を書いてもらうことと、過去の贈与や不正出金の証拠(通帳のコピーを取っておくなど)くらいです。
ただ、遺言書については、「すべて〇〇に相続させる」というような簡単な内容であれば有効とされる可能性もありますが、すでに後見人が就いていますので、義姉を含む他の相続人から無効訴訟をされる可能性は非常に高いでしょう。
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11:40 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続法改正3 持戻し免除の意思表示の推定

2019/08/05
今回の相続法改正では、亡くなった方(被相続人)の配偶者を保護するための方策が多く取り入れられています。
そのうち、配偶者が被相続人の死後も自宅に居住し続けられるようにする権利(居住権)を保護する方策(短期居住権及び長期居住権)については、これまでに紹介してきました。
今回は、被相続人が生前又は遺言書によって、居住用不動産を配偶者に贈与した場合の保護について、解説します。

【長期間婚姻している夫婦間での居住用不動産の贈与等の保護】

今回の改正では、婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し、その居住のための建物又はその敷地(居住用不動産)を生前又は遺言書によって贈与した場合には、原則として、計算上遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてよいということにしました(これを、持戻し免除の意思表示推定といいます)。
わかりやすくいえば、居住用不動産の贈与を受けた配偶者は、遺産分割の際に、居住用不動産をもらったことを考慮せずに残りの遺産の分割を受けることができるということです。

【これまでの制度の問題点】

これまでは、生前に贈与を受けても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして、遺産分割時の取得分がその分だけ減らされていました。
たとえば、以下のような事例で考えてみましょう。
例)
  相続人:配偶者と子2名
  遺 産:居住用不動産・・・評価額2000万円
  その他の財産・・・6000万円
この事例で、配偶者が居住用不動産について、生前に贈与を受けていた場合、これまでの制度では、遺産分割時の配偶者の相続分は以下の通りでした。
  遺産の合計=2000万円+6000万円=8000万円
  配偶者の相続分=8000万円×1/2=4000万円
  遺産分割時における配偶者の取得額=4000万円-2000万円=2000万円
この結果、配偶者が得た財産は、生前に贈与を受けた居住用不動産2000万円と、遺産分割で得た2000万円の合計4000万円ということになります。
つまり、せっかく生前に贈与を受けても、その分が遺産分割時の取得額から控除されてしまうため、結果として配偶者が相続できる財産額は同じでした。
しかし、これでは、贈与をした被相続人の意思を尊重しているか疑問であった上に、配偶者の長年に渡る貢献に報いる意味や、老後の生活保障の意味でも、問題があると考えられていました。

【改正された結果、配偶者はより多くの財産を取得することが可能に】

今回の改正の結果、上記と同じ事案で、配偶者の相続できる財産は、以下の通りとなります。
  遺産の合計=6000万円(相続時に残っている財産)
  配偶者の相続分=6000万円×1/2=3000万円
  遺産分割時における配偶者の取得額=3000万円
この結果、配偶者が得る財産は、生前に贈与を受けた居住用不動産2000万円と、遺産分割で得た3000万円の合計5000万円ということになり、贈与を受けなかった場合よりも多くの財産を最終的に取得できることになります。

【持戻し免除の意思表示推定規定の施行日は、2019年7月1日です】

持戻し免除の意思表示推定規定は、2019年(令和元年)7月1日から施行されています。
そのため、施行日後に行われた贈与等についてのみ適用され、相続開始が施行日後であっても、施行日前にされた贈与等については適用されません。
ご注意ください。
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16:33 相続法改正 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続法改正2 配偶者(長期)居住権って?

2019/08/02
【配偶者の居住権を長期保護する制度ができました】

前回のブログでは配偶者「短期」居住権について解説しました。
今度はもう一つの新制度である配偶者(長期)居住権についてお話しします。
(なお、当記事ではこの制度を短期居住権と区別して、「(長期)居住権」と呼ぶことにします。)
配偶者「短期」居住権は、建物の所有者である夫が亡くなった場合に、残された妻が今まで通り夫と居住していた自宅に住み続けられるよう、最低6ヶ月の居住権を保護する、という短期の居住権を保護する制度でした。
これに対し、配偶者(長期)居住権は、もっと長期的に、配偶者が死亡するまで居住することができる権利です。
この制度が作られた背景には、遺産が自宅の土地建物しかなく、お金が少ないケースでは、配偶者が自宅土地建物を相続するとお金の大半は他の相続人が相続することになり、配偶者がその後の生活資金に困るケースが相次いだという事情があります。
これをクリアして配偶者の生活を保護しようとしたのがこの制度です。


【家の所有権を相続せず、「居住権」だけを取得できます】

(長期)居住権は、配偶者が、家の所有者が亡くなられた時点(相続開始時点)で、亡くなられた方の建物に住んでいた場合に認められます。
これには次のメリットがあります。

・自宅土地建物など不動産は一般に価値が高いため、自宅の「所有権」を丸ごと相続すると、現金や預金など他の遺産は他の相続人に譲る必要が出てくる。
・しかし、自宅の「(長期)居住権」だけなら財産的価値が低いため、(長期)居住権の他、十分な現金や預金を相続することができる。

(参考 自宅の「所有権」を相続した場合と「(長期)居住権」を認めた場合の比較)
被相続人  夫   
相続人   妻と長男
遺産  自宅(所有権) 1500万円
預金     1500万円

① 妻が自宅所有権を相続した場合

妻が相続する遺産 ・・・自宅(所有権)1500万円(預金はゼロ円)
長男が相続する遺産・・・    預金 1500万円


このような分割になり、妻は預金を1円も相続できず、生活資金に困る事態が考えられます。

② 配偶者(長期)居住権を認めた場合

妻が相続する遺産 ・・・自宅((長期)居住権) 500万円(※仮定)
            預金     1000万円
                     
長男が相続する遺産・・・自宅(所有権)1000万円
預金      500万円


 → 妻は自宅にそのまま居住でき、かつ現金も相続できるメリット
   これが配偶者(長期)居住権の大きな意味です。

※(長期)居住権の価格評価はあくまで暫定であり、個々のケースに応じて不動産の価値のほか、建物耐用年数や築年数、法定利率などを考慮して算定する必要があります。


【配偶者(長期)居住権が認められる2つの場合】

配偶者(長期)居住権は自動的に認められるわけではなく、次の①②③のいずれかの条件を満たす必要があります。

① 遺産分割で(長期)居住権を取得した場合
配偶者(長期)居住権を取得する最もストレートな方法です。
遺産分割を行う際に、配偶者が当該自宅への居住継続を希望し、他の相続人も配偶者(長期)居住権を認める内容で遺産分割協議が成立させることで、配偶者(長期)居住権が認められます。

② 遺言で配偶者(長期)居住権が指定された場合
亡くなった方(被相続人)の遺言で、配偶者に(長期)居住権を取得させることと記載されていた場合にも、配偶者(長期)居住権が認められます。

③ 家庭裁判所の審判で定められた場合
上記の①②以外にも、家庭裁判所の遺産分割審判で配偶者(長期)居住権が認められた場合も、配偶者(長期)居住権が認められます。


【上記期間中の賃料は不要です】


さらに、配偶者(長期)居住権により居住している期間中、賃料は不要です。
つまり、無償で住み続けられるということです。
他の相続人にとっては、所有権を取得しても自分で使用できず、第三者に貸して賃料収入を得ることもできませんが、(元々無償で居住していた)配偶者の保護のため無償とされたものです。


【配偶者【長期】居住権の制度の施行日は、2020年4月1日です】


配偶者(長期)居住権の制度は、2020年(平成32年)4月1日から施行されます(短期居住権と同じ)。
配偶者(長期)居住権の制度は、施行日後に開始した相続について適用され、施行日前に開始した相続については、適用されません。
ご注意ください。
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生活費の援助は特別受益か?【Q&A №656】

2019/08/01


【質問の要旨】

相談者は、母と暮らしていた5年間は母の年金で生活していた。
母の死後、「相談者のために支出した生活費などのすべてを持ち戻すこと」と母が書いた書面を姉から渡された。
生活費も相続財産に持ち戻さなければならないか?

【ご質問内容】

私は二人姉妹の妹です。
先月母が亡くなりました。
母が亡くなるまでの10年間のうち、前半の5年間は私と母の2人暮らしで、母の年金で生活していました。
しかし母との生活は、母の面倒を見なくてはならず、それが嫌で私だけ家を出ようと思いましたが、それを姉に伝えると、姉が母を引き取りました。なので後半の5年間は、と母は姉夫婦と同居しました。
今回、遺産分割にあたり、姉から母が書いた書面を渡されそこには「妹(私)との同居中に、妹(私)のために支出した生活費などの全てを持ち戻すこと」と書かれていました。
姉が言うには、母が私に支払った全ての支出を相続財産に戻して清算するという意味の様です。
このような書面があると、私はどうなってしまいますか?
生活費なんかも相続財産に戻さないといけないのですか?

656


(rogu)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生活費程度は特別受益から除外】
ご質問の件ですが、生活費は持ち戻しの対象にはならないと思われます。
以下、その理由を説明していきます。
まず、親から贈与されたお金を遺産に持ち戻す法律として、民法903条の特別受益という制度があります。
この法律では「生計の資本として贈与」を受けた場合は特別受益であり、受益の額を相続財産に持ち戻すものとされますので、いわばあなたは遺産の前渡しを受けたようなものとして扱われます。
この特別受益が適用されると、あなたは5年間にわたって母から受けた生活費の総額「特別受益」として遺産に持ち戻されてしまうことになりそうです。

【生活費程度は扶養の範囲内】
このような生活費と特別受益の問題は遺産分割調停でよく問題になります。
しかし、生活費が特別受益とされることはあまりありません。
その理由は、母が子供の扶養義務を負っているからです。
母が子を扶養する義務は子供が成人した後でも続くため、月に数万円程度の生活費提供であれば、「母が扶養義務を果たしただけ」であり、プレゼント(贈与)ではないと扱われることが多いでしょう。
常識的にも、母が子を扶養することを「贈与(プレゼント)」と呼ぶには違和感があるのではないでしょうか。
もちろん、「生活費」と称して毎月50万円や100万円といった多額の資金が提供されていれば別ですが、月数万円程度なら扶養義務の範囲内といって差し支えないでしょう。

【母の書面は法的効力なし】
ただ、今回は母が「生活費を持ち戻しなさい」という書面を書いていたようです。
亡くなった母が死亡後に法的効力のある書面を残す方法は遺言だけですが、これは遺言の形式的な方式を満たしている必要がありますが、今回はいかがでしょうか。
また、特別受益でないものを「生活費として渡したけど、そのお金は特別受益として持ち戻す」という遺言を書いても法的効力はありません。
いずれにしても、母の書面は法的な効力がありませんので、上記のように生活費として一般的な範囲の金額かどうかを検討されるとよいでしょう。
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相続法改正1 配偶者短期居住権って?

2019/07/30
【配偶者の居住権を保護する法制度ができました】

建物の所有者である夫が亡くなった場合に、残された妻は、夫と一緒に暮らしていた建物に住み続けられるのか、という問題は、これまでもたびたび問題になってきました。
最高裁判例で、妻に建物の無償使用を認める使用貸借が成立していたとするなど、ある程度保護はされてきました。
しかし、夫が建物を第三者に相続させる遺言を残した場合など、夫が明確に反対の意思を示していた場合には、夫の死亡によって建物の所有権を取得した第三者からの退去請求を拒めないなど、不十分な点がありました。
そのため、今回の相続法改正で、「配偶者短期居住権」という権利が創設されました。
今回は、この「配偶者短期居住権」の内容について、お話ししたいと思います。


【家の所有者が決まるまで住み続けられます(最低でも6か月は保障)】

短期居住権は、配偶者が、家の所有者が亡くなられた時点(相続開始時点)で、亡くなられた方の建物に無償で住んでいた場合に認められますが、その期間は、以下の通り、場合によって異なります。

① 配偶者を含む相続人間で遺産分割をすべき場合
まず、亡くなられた方の遺言がなく、配偶者が相続放棄もしていない場合、つまり、配偶者が他の相続人と遺産分割協議をして家の所有者を決めるようなケースでは、
 ⅰ 遺産分割によって家の所有者が確定した日
 ⅱ 相続開始の時から6か月を経過する日
のうち、いずれか遅い日まで住み続けられます。
つまり、配偶者は、最低でも相続開始から6か月は住み続けられ、また、遺産分割協議が長引けば、協議がまとまって家の所有者が決まるまでの間は、何年でも住み続けられるということになります。

② 家が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合
上記とは異なり、亡くなられた方に遺言があって、誰かに家が遺贈されていた場合や、配偶者自身が相続放棄をしたようなケースでは、
家の所有者となった者から「配偶者短期居住権の消滅の申入れ」をされた日から6か月を経過する日
まで、配偶者は家に住み続けられるということになります。
このケースでも、新しい所有者から「もう居住権は終わりにするので出て行ってくれ」と言われてから6か月の間は、居住が保障されています。

つまり、どんなケースでも、相続開始から最低6か月間は住み続けられるため、残された配偶者は、その間に新たな住居を見つけるなどといった準備をすることができるのです。


【上記期間中の賃料は不要です】

さらに、上記の期間中、配偶者が家の所有者なり他の相続人らなりに、賃料を支払わなければならないかというと、賃料は不要です。
法律で決められた上記期間については、無償で住み続けられるということです。


【配偶者居住権の制度の施行日は、2020年4月1日です】

配偶者短期居住権の制度は、2020年4月1日から施行されます。
配偶者短期居住権の制度は、施行日後に開始した相続について適用され、施行日前に開始した相続については、適用されませんので、ご注意ください。
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家族間の私文書偽造【Q&A №655】

2019/07/22


【質問の要旨】

法的手続きなく(父の同意は口頭ではとった)父の所有物件を姉名義に変えた。
父自身の署名はなかったため、今後の不動産売却の際に姉が刑罰を受ける可能性がないか心配。


【ご質問内容】

次女です。
父が脳梗塞になりリハビリ入院中から認知症になりつつあります。
父が所有していた土地などを母同意の元、姉名義に変えて(生前贈与)新たに姉名義の家を建てる計画が進んでいます。
母が一人で暮らせないため新居には母と姉が暮らす予定です。
名義を変えた手続きに関しては司法書士を挟まず母と姉自身で登記をしたそうです。
但し、書類に関しては父が署名をしておらずいわゆる私文書偽造になると思います。
意思に関しては 話がきちんとできる時に確認をしたそうです。
遠方に住んでいる私は権利の主張はないので姉名義になった事に文句はないのですが、私文書偽造がバレてしまった場合に母や姉が処罰をされないか心配をしています。
法律を犯してはいるのは承知していますが、名義を姉にした土地を売却し、新たに家を建てる事は問題になりますか?

(まどか)



 ※敬称略とさせていただきます。

実例Q&Aは、相続問題に限定、特化したブログであり、この趣旨を徹底するため、相続案件以外の質問をいただいた場合は、回答を控えさせていただいております。
ご質問は《認知症の父の署名押印を得ることなく生前贈与契約及びそれに伴う登記手続をした場合の問題点に関するご質問にとどまっており、相続分野の法律問題を含んでいない》ものと理解しました。
ただ、せっかくの質問ですので、弁護士の簡単なコメントを以下に記載させていただきます。

《弁護士コメント》
今回の事案は、
① 父から姉への生前贈与契約を締結し、
② 父名義の登記関係必要書類(但し、父は関与しないで作成された)を提出した
ものと思われ、有印私文書偽造罪(刑法第159条)、公正証書原本不実記載罪(同第157条)に該当します。
ただ、被害者の父や関係者(法定相続人など)が問題にしない限り、警察が特に調べに乗り出すようなことは、通常は考えられず、偽造に関与した者が処罰されることは考えにくいです。
また、父が姉への名義変更に同意していたというのであれば、署名捺印について、父が同意していたと推定される可能性も高く、この点からも刑事裁判で処罰される可能性は少ないでしょう。
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使途不明金を追及する際の調査立証方法【Q&A №654】

2019/07/16


【質問の要旨】

・亡くなった母の遺産が少なすぎる。
・母の生前中は、同居の兄が通帳、カード等を管理。
・母に要する費用とは関係なく出金されていた可能性がある。
・不正出金をどう立証できるか、又、兄は立証責任があるのか。


【ご質問内容】

亡くなった母の現金・預金が150万位しかありませんでした。
同居していた兄に確認したら「入院期間中は預金通帳、カードは管理していたが引き出したお金は病院で母に渡したが使途は一切わからない」とのこと。
5年間で約1,000万円がATMで引き出されていました。
1日に100万円の時もあります。
入院費用、自宅の光熱費など維持管理費はほとんど口座引き下ろしです。
母が病院で使うのはおやつを買う程度です。
兄が直接取り込んだ証拠はありません。
母はほぼ寝たきりなので外出は出来ません。
母は軽い認知症はありましたが生活に支障が出るほどではありませんでした。
訴訟を考えています。
こちらが勝訴するため立証しなければならないことと、兄に立証責任があることを教えてください。
銀行取引履歴は取り寄せてあります。
相続人は4名です。
なお入院前の10年間でも約1億円の使途不明金がありますが、こちらは母がまだ健康の時もあったので立証が難しく諦めています。
もちろん何かに投資した、高価な物を買った形跡はありません。

654

(さくら)



 ※敬称略とさせていただきます。

【証明は不正出金を主張する側にある】

遺産である預貯金口座から使途不明金(不正出金)があり、その返還を求める場合、その証明は返還請求を求める側にあります。
今回の質問では、不正出金があったと主張するあなたが証明する必要があります。
あなたが証明する必要があるのは、以下の3点です。
① 預貯金口座からの多額の出金が存在すること
② 出金した人が兄であること
③ 出金した金員を兄が使ったこと
以下、この点を順に述べていきます。

【多額の出金の存在を明らかにする】

まず、①の母の口座がわかっているのなら、多額の出金があることの証明は比較的簡単です。
母の口座の取引履歴を取り寄せ、いつどれだけの金員が出金されているかを確認すれば、使途不明金は簡単に把握することができます。
この取引履歴は既に取り寄せ済のようですので、多額の出金をチェックしていくことになります。
なお、本人の生活や入院治療費の支払いのため、ある程度の出金は当然必要になりますので、月額10~20万円程度の金額は不正出金とは評価できない場合がありますので、ご注意ください。

【兄が出金したことの証明も必要】

次に、各出金を誰がしたのかを明らかにする必要があります。
今回は、兄が通帳、カード等を管理していたということですが、訴訟にでもなれば、兄が《通帳やカードの管理はしていない》と言い出しかねません。
そのため、現段階で将来の訴訟に備え、兄が通帳、カード等を管理していたというような発言をするのをICレコーダー等で録音し、証拠として残しておかれるといいでしょう。

【出金した金員を誰が何に使ったのかを確認は・・】

今回、もっとも問題になりそうなのが、出金した金員を誰が何に使ったのかという点です。
兄が出金したことを証明できるのなら、《兄が自分で使ったのだろう》という推測も可能です。
そのため、裁判では兄の方が、母に渡したあるいは母のために使ったという証明をする必要が出てきます(法律的には《立証責任の転換》といいます)。
兄は裁判でどんな主張をするかは明らかではありませんが、あなたとしては、①入院中の母が金を使う必要はない、②病院で多額の金員を置いておくことはないという点を反論されるといいでしょう。

【入院前の10年間の約1億円の出金について】
なお、入院前の10年間の1億円の出金は母の健康なときの話ということであれば、兄の不正出金という可能性は少ないかもしれません。
しかし、母がそのような大金を使う可能性がないというのなら、出金伝票などを取り寄せ、その筆跡や代理人の有無など、兄が関与していたかどうかを確認する必要があるでしょう。
いずれにせよ、不正出金は話し合いで解決することは難しいです。
そのため、相続に詳しい弁護士に依頼し、必要な証拠を集めて裁判に臨まれるといいでしょう。
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12:06 遺産の調査・発見 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

兄弟名義の預金は父の遺産か【Q&A №653】

2019/07/10


【質問の要旨】

父の遺産分割調停中。
父がお金を出した兄弟名義の預貯金は特別受益にあたるか?
預貯金は既に解約済み。
兄弟は父より前に亡くなっている母から受け取ったものであり、父の遺産ではないと主張。
父の遺産と認めてもらう方法はあるか?

【ご質問内容】

現在遺産分割調停2年目の者です。
名義預金による生前贈与を受けたにも関わらず特別受益と認めない兄弟がおります。
生前父が書き記した相続人名義の通帳番号のメモ書きが出てきたのでそれを元に兄弟に開示を求めました所固有財産だと主張、なかなか開示に応じず一年以上かかりやっと開示に漕ぎ着けましたが既に解約済…
全額を受領した時点で生前贈与だと主張した所今度は父から受け取ったものではないので特別受益には該当しないと否認。
父が亡くなる数年前に母が亡くなっておりその母から受け取ったものなので現在の遺産分割協議には該当しない、
よって父からの特別受益には当たらないというものでした。
しかし母は専業主婦であり原資は父の収入のみですので父の遺産分割協議で扱うものだと主張したところ調停員の方から『民事で争ってはいかがですか?』と言われてしまいました。
理由は兄弟が認めない限り調停で扱うことはできないとの事でした。
本当にこのような主張が通るのでしょうか?
調停員の方からは後2回で終了だともいわれました。
ちなみに父は3年前、母は10年前に亡くなっております。
母が亡くなった際、父から遺産放棄をしてほしいと言われましたので遺産分割はしませんでした。
特別受益、もしくはそれ以外の主張はできますか?
今後認めてもらうにはどのような方法がありますか?
本当に困っております。
どうぞ宜しくお願い致します。

653

(ラベンダー)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生前父が書き記した《兄弟名義の通帳番号のメモ》の意味】

通常、このようなメモがある場合、お父さんが兄弟の名義を借用して預金(いわゆる借名預金)をしたのではないかという推測が成り立ちます。
もし、そうであればその口座は父の遺産になり、遺産分割の対象になります。
しかし、兄弟が借名口座であることを認めない場合、あなたの方が借名口座であることを証明する必要があります。
メモがあったというだけでは証明には不十分です。

【借名口座の証明のために必要な調査】

ただ、兄弟は、現時点では、母からもらった金でその口座を作ったのだと主張しています。
そのため、あなたとしては、次の事実を調査する必要があります。
① その口座の通帳及び取引印は誰が管理していたのか?
② その口座はいつ頃、解約されたのか?
③ その口座の原資はいつ、誰が出したのか(父の履歴から、その当時の原資に該当する出金はないのか)?
もし、上記①の通帳や取引印を父が管理していたというのなら、それは父の遺産であり、兄弟の口座を借名したにすぎないものだという可能性が高くなります。
②の解約時期も参考になります。父が死亡した後に解約されているのなら、父が管理していたが、父が死亡した後に兄弟が何らかの方法でその通帳を入手し、解約したのではないかという《推測》が成り立ちます。
兄弟は母からもらったと主張しているのなら、③の原資に関する調査が役に立ちます。
父の銀行預金口座の履歴を取り寄せし、原資と思われる出金を探すといいでしょう。
兄弟名義の口座が作られた時期に、ほぼ同額の出金が父の口座からあったというのであれば、父の借名口座の可能性が極めて強くなります。
逆に、原資に該当する出金がないというのであれば、借名口座の証明にとってはマイナスになります。
なお、父の口座から出金があったが、それが一旦、兄弟が管理する口座に送金されているというのなら、借名口座というよりは、父の兄弟に対する生前贈与となる可能性が高いです。

【調停委員の対応はやむをえない】

遺産分割調停の場合、遺産の範囲が決まらないと、調停のまとめようがありません。
もちろん、調停委員としては、《双方の言い分があるかもしれないが、遺産の範囲については適当なところで折り合いをつけて、分割案を考えませんか?》という対応をすることもあります。
しかし、今回の兄弟のように、父の遺産ではないという強硬な姿勢を示しており、妥協に応じないというのであれば、調停委員としては《その兄弟名義の預金が遺産になるかどうかを裁判ではっきりさせるしかないですね》としか言えないでしょう。
調停はあくまで、双方が互いに譲りあって解決する制度であるため、その妥協点がみつからないと不調にせざるをえません。
2年間も調停を続けているというのが調停としては異例の長さであり、後2回で解決しなければ、調停打ち切りという判断はやむをえないでしょう。

【裁判をする前に、弁護士に相談することも考える】

借名口座として遺産にはいるのかどうかについての判断方法は前記のとおりです。
ただ、どのような事実及びそれを裏付ける証拠があるのか、また、その事実で借名口座と証明できるかはかなり判断が難しいです。
もし、可能であれば、相続に詳しい弁護士に相談され、その結果、証明が難しいとなれば、不満であっても現在の調停で解決するしかないでしょう。
また、証明できる可能性があれば、裁判への道をお勧めします。
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10:01 相続財産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不当利得返還請求と遺留分【Q&A №652】

2019/07/02


【質問の要旨】

父が死亡。
相続人は後妻と相談者(二名)。
遺言書があり、後妻に遺留分減殺請求をした。
寝たきりの父には年間700万円の収入があるのにも関わらず、5年間のうちに後妻が
1500万円引き出している。
(後妻曰く、生活費1000万円と葬儀費用500万円)
この1500万円の不当利得返還請求をした場合、請求額はいくらになるか?


【ご質問内容】

公正証書遺言がある時の使途不明金は遺産分割の対象になるのでしょうか。
下記概略です。

父が他界して相続が発生しました。
相続人は後妻さんと私(先妻の子)の計2名。
公正証書遺言があり預金(500万円)は後妻さんと私(先妻の子)と折半、マンション1部屋(時価2,500万円)と「その他一切の財産・負債も含む」は後妻相続となっています。(後妻さんには遺留分減殺請求済み)

父(要介護5の寝たきり)の移動明細(銀行)から後妻さんによる5年間で1,500万円の預金引き出しが確認されたので後妻さんに説明を求めたところ1,000万円は生活費,残り500万円は葬儀費用等との回答でした。
父の年収は700万円ほどあり父の移動明細や後妻さんによる説明からは預金を引き出す必要はなかったと思われます。

仮に後妻さんにより引き出された預金(1,500万円)が、不当利得返還請求の対象になった場合、私が後妻さんに対しての請求額はどのように考えたらよいのでしょうか。

652

(フリーダム)



 ※敬称略とさせていただきます。


【不当利得返還請求権は誰のものか】
ご質問によると、後妻が5年間のうちに父の口座から、1500万円もの預金を引き出していたということです。
これが、父の意思によらずに引き出したものだということになると、おっしゃるとおり、父は後妻に対して、1500万円の不当利得返還請求権を有していたということになります。
そうすると、父の死亡により、上記返還請求権を誰が相続したのかが問題となりますが、遺言書によれば、その他一切の財産・負債は後妻が相続するとの内容になっているとのことです。
不当利得返還請求権は「債権」という財産ですので、「その他一切の財産」に含まれ、後妻がその請求権を全て相続すると判断されます。
そのため、あなたとしては、遺留分請求減殺をする必要があり、その遺留分の限度で不当利得返還請求ができるということになります。

【あなたは、1500万円も含めて遺留分減殺請求をすることになる】
前項の不当利得返還請求権という債権も被相続人の遺産だということになりますので、あなたの請求できる遺留分額もその分増えます。
《計算式》
遺留分計算の基礎となる遺産額:預金500万円+マンション2500万円+不当利得返還請求権1500万円=4500万円
あなたの遺留分額:4500万円×2分の1(法定相続分)×2分の1=1125万円
遺留分侵害額:1125万円-250万円(遺言でもらえる額)=875万円

以上の計算式で算定された875万円が、あなたが後妻に対して、遺留分減殺請求できる金額になります。

【父のための特別の使途であれば、1500万円から控除される】
ただし、後妻は、1500万円を引き出したことを認めているものの、1000万円は生活費に、500万円は葬儀費用に使ったと主張しているようです。
これに対しては、《あなたとしては父の年収が700万円もあれば、それ以外に1500万円もの引き出しをする必要はなかった》と主張されるといいでしょう。
ただ、例えば屋根の修繕費として、後妻が領収書等を示して父の特別の使途がために使ったことを立証できた場合には、その分は不当利得から控除される場合もありえます。
なお、葬儀費用は原則喪主負担ですが、分担すべき場合もありますので、念のため、領収書の提出を求めてみるといいでしょう。
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16:46 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

後見人から相続人への引き継ぎトラブル【Q&A №651】

2019/06/18


【質問の要旨】

後見人から相続人への引き継ぎについて


【ご質問内容】

相続人同士が不仲な為、現在控えている弁護士の後見人からの引継ぎに不安があります。

相続手続きを依頼する弁護士の先生(探し中)へ引継ぎの通帳等を後見人から弁護士先生への郵送は可能でしょうか。

651

(だいち)



 ※敬称略とさせていただきます。


【相続人の一方の弁護士に渡すことは、原則はしない】

亡くなった方(被相続人)に後見人が就いていた場合、ご相談にあるような通帳その他の財産引き継ぎの問題がいつも生じます。
後見人は速やかに財産を引き継ぐ義務を負っていますが、各相続人にとって中立な立場です。
特に後見人が弁護士であれば、うかつに通帳を返すと後見人自身が責任を問われるというリスクを当然、考えるでしょうから、相続人の一人に、たとえ弁護士がついても、通帳等を渡すことはしないでしょう。
ただ、相続人全員の同意で、代表受取人が決まれば、後見人はその代表に渡すということはあり得ます。

【遺言がある場合の注意】

遺言がある場合などは注意が必要です。
たとえば、公正証書遺言で「遺産はすべて○○に遺贈する」などと書かれている場合、後見人としては遺贈を受けた相続人から通帳を返すよう請求されると断る理由がありません。
(遺留分という問題は残りますが、あくまで後見人は速やかに引き継ぐ義務を負っている以上、後見人が引き継ぎを断る理由にはならないでしょう)

【保全手続を申し立てる手段もある】

なお、どうしても相手方に通帳に渡されることが不安、という方には、後見人のところから相続人に財産を引き継がないよう凍結させてしまう保全処分、という手段もあります。
当事務所では、過去に、遺言書があるケースで、その遺言書を無効であるとして、家庭裁判所に対して仮処分の申立てをし、預金通帳を渡すのをストップさせたことがあります。
この事件は遺言者が意思能力のない段階で作成された遺言の可能性も高かったために、裁判所が仮処分を認めたことから、通帳の引き渡しが法律的に停止されました。
結局、相手方が預貯金を引き出せなかったこと、もちろん遺言書に問題があったことも相まって、相手方は遺言書の無効を前提としての和解に応じました。
引き継がれる財産額が大きく、いったん相手方に渡ってしまった場合に不測の事態が考え得るのであれば、弁護士に依頼する費用がかかり、かつ裁判所の決定する保証金を納める必要がありますが、弁護士と相談され、この仮処分の有効活用を考えられてもいいでしょう。

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葬儀費用の分担【Q&A №650】

2019/06/12


【質問の要旨】

母の葬儀費用の負担分として相続割合に応じた額を香典という形で葬儀を取り仕切った兄に渡したが
別途、葬儀費用の負担分を請求された。
どう考えればよいか。

【ご質問内容】

先般、母が亡くなりました。
以前、父が亡くなった時、長男が喪主を務め、葬儀費用も負担してくれました。
土地や一切の資産は、母も、他の兄弟も遺産放棄して、長男が相続しました。
今回、母の葬儀があり、前回同様、香典として、葬儀費用を兄弟の数で割った額を喪主の長男にわたしました。
葬儀も、喪主の家族が仕切りました。
今回の葬儀で、父の時と違っていたのは、兄弟以外からの香典は受け取っていません。
先日、葬儀費用の当分割の金額を、持ってくるように要求されました。
わたしとしては、その金額は香典で持参しております。
どう考えればよいものでしょうか。
よろしくお願いいたします。

650

(モモコ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【香典と葬儀費用について】

 葬儀費用や香典は法律上の制度ではなく、地域の慣習により行われているもので、裁判例などでも明確な判断を示したものが少ないです。
ただ、葬儀費用が相続債務でないことについては、ほぼ異論がないように思います。
葬儀は喪主が行うものであり、その費用は喪主が負担するのが原則です。
ただ、相続人で葬儀に出席したものがいれば、公平の観点から相続分に応じた程度の負担をさせるという解決が、遺産分割調停でよく行われます。
次に香典ですが、葬儀費用の分担するようなときは、かかった葬儀費用から香典分を差し引きすることで解決している例が多いです。
葬儀費用を分担させながら、香典は喪主が取るというのは公平の観点から認めがたいということです。
更に話を進めていけば、香典返しをする場合はその分はどうするのかという問題も出てきます。
遺産分割調停の現場では、香典返しの話が出ても結局、どこかで金額に折り合いをつけて、話をつけてしまうことが多いです。

【今回の質問者の対応】

今回の質問者の対応を考えてみましょう。
まず、質問者としては、葬儀費用は本来、喪主が負担するべきものだということを最初に主張しておく必要があります。
弁護士なら、葬儀費用の分担を求める根拠は何かを明らかにせよというところでしょうか。
次に、今回の葬儀では一般の人から香典を取っていないが、相談者の方たちが香典を支払い、かつ、その額が一般の香典の額より高額であったのは葬儀費用分担の意味合いがあったと主張するといいでしょう。
なお、葬儀費用という明確な形では渡しておらず、香典という形で渡している点がやや気にかかります。
この点については、兄から聞いた葬儀費用を相続分に応じて算出した額であること、もらった兄としては当然、葬儀費用分担の意味合いをわかっていたはずであると主張されるといいでしょう。
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10:44 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺産分割協議に時効はないか?【Q&A №649】

2019/05/28


【質問の要旨】

遺産分割協議に時効はないか?


【ご質問内容】

7年前に父が亡くなりました
その時に自分の出世の事始めて聞きました

父の父は
T弁護士だったようです
T氏は結婚していて父の母とは不倫で
私の父Sですが認知しました
その後Sの母は終戦後再婚し
貞夫は姉の養子になりました

T氏が亡くなった時にも連絡はなく
孫である私たちは
財産相続の請求できますか?

もう時効ですか?

※当事務所の判断により質問文中の一部をイニシャルに変えました。ご了解ください。

649

(おそすぎたかな?)



 ※敬称略とさせていただきます。

【遺産分割に時効はない】
法律上、遺産分割を行うのに時効はありません。
 そのため、土地や建物など不動産が遺産としてある場合、持ち主の死亡後、50年以上過ぎた後に相続人を集めて遺産分割を行い、登記名義を変更することも可能です(当事務所でも、このような案件はめずらしくありません)。
 時効で遺産分割ができない、という点は心配されなくともよいでしょう。

【現実に遺産分割する上で問題となるのは預貯金などが判明しないこと】
不動産であれば、遺産分割をしていないと、いつまでの被相続人のT氏の名義で残っています。
そのため、不動産については現時点でも遺産分割協議をする実益があります。
しかし、預貯金などは、一体どの金融機関のどの支店にあるのかもわからず、実際、その存在が判明しないことが多いです。
仮に金融機関が判明しても、10年以上前なら履歴がないということで、照会に応じてもらえない場合もありますし、消滅時効ということも主張される可能性もあります。
結局、預貯金については、まず、あきらめざるをえないというのが実情です。

【不動産を名寄帳で探し、遺産分割協議をする】
不動産を探すには、T氏が居住していた自宅などがある市町村に、同氏名義の不動産があるかどうかの問い合わせ(名寄帳の取り寄せ)をするといいでしょう。
もし、不動産が発見されたなら、T氏の相続人が誰なのか、戸籍や除籍謄本を取り寄せし、全相続人が判明すれば、その人たちとの間で遺産分割協議をしていくということになります。
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相続放棄をしたはずが不当利得返還請求をされた【Q&A №648】

2019/05/28


【質問の要旨】

相続放棄をしたはずが不当利得返還請求をされた


【ご質問内容】

遠戚の遺産相続放棄に同意する署名をして2年ほど前に弁護士事務所に送りました。
事情は前妻との間に生まれたAさんが父親の後妻と長年親子として暮らしたものの父親が他界、
後妻が家を相続、
そのあとAさんは長年後妻の義母を実の母としての他界するまでお世話した、
が、彼らが養子縁組してなかったことが判明、
Aさんが義母の遺産相続できないので遺産放棄してほしい、という内容。
そこまでは良かったのですが、このたび訴状が送られてきました。
どうやらAさんも他界したらしく、原告はAさん奥様で、被告はずらずらっと私たち親戚一同の名前が並べられています。
奥様が不当利益変換請求権を取得したとのこと。
弁護士事務所からは、別紙にて私たち遠戚の財産などに強制執行は一切致しません、とあります。
被告扱いされることがなんだか腑に落ちませんし同意した内容とも話が変わっているように思うのですが、よくある手立てなのでしょうか?
つまり、相続問題が帰結せず、このような手段を取ることってよくあることなのですか?
またこのことに関する私どものリスクについて教えていただきたいのですが。

648

(ぽんぽん)



 ※敬称略とさせていただきます。

【事案の整理】
今回の質問内容が、やや抽象的でわかりにくいので、以下のように理解して回答しています。
① あなたは、後妻の相続人である。
② Aは先妻の子である。
③ 後妻が、被相続人(後妻の夫)の財産を、例えば預貯金の不正引き出し等で不正に取得したと、Aは主張している。

【事案の想定・・後妻が父の預貯金などを取り込んだと思われる】
Aさんの妻が不当利得返還訴訟をしたようですが、誰が誰から不当利得したのかを考える必要があります。
後妻と先妻の子とは相続で激しく喧嘩をします。
先妻の子が「後妻が金を不正出金した」と言うようなケースがよくあります。
本件もその例だといえば、今回の事案は次のようなものであったという前提で回答します。

父が死亡し、その相続が発生した。
子であるAが遺産を調査したところ、後妻は生前に父に無断で預貯金を引き出していた。
したがって、Aは後妻に対して不当利得返還請求権を有する。
ところが、Aが死亡した。
そのため、Aの有する後妻に対する返還請求権をAの妻が相続した。
ところが、後妻も死亡したので、後妻の負う不当利得返還請求債務をあなたが相続で引き継いだ。

【相続放棄をしたというが、それは本当の相続放棄ではない】
あなたらが後妻の相続で、相続放棄をしたのなら、財産をもらえないけれども、債務も引き継ぐことはありません。
そのため、Aの妻から後妻の債務を支払えという訴訟を起こされても、あなた方は相続放棄を主張すれば、Aの妻の請求は認められません。
ただ、相続放棄は家庭裁判所にその旨の申請をする必要があります。
弁護士に対してしたというのは相続放棄ではないと思われます。
あなた方がした相続放棄とはどのようなものであったのか正確に確認する必要があります。

【強制執行などしないということの意味】
後妻が死んだとき、あなた方は《相続放棄》をしたといわれています。
すると、後妻の相続で誰かが、後妻の遺産をもらった人がいるはずです。
そのような人がおれば、その人が後妻の債務を全部、支払うべきでしょう。
ただ、法律的に言えば、後妻の債務は、あなた方が正式な相続放棄をしていない以上、あなた方は後妻の債務をその法定相続分に応じて支払いする義務があるという結論にならざるを得ません。
おそらく、あなた方の相続放棄で後妻の財産を独り占めにした人が《債務を全部私が負担します》ということを言ったとしても、それはあくまで、相続人間の内部の人間同士の関係であり、債権者としてはそのような相続人間の合意などを無視することができます。

【早期に弁護士に相談することをお勧めします】
今回の質問では、わからない点が多々あります。
ただ、訴訟を提起され、被告になっているのなら、早急に相続に詳しい弁護士に相談され、そのアドバイスを受け、必要なら代理人として訴訟を依頼される必要があるように思われます。
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裁判所で、被後見人を除いて、死因贈与契約はできるか【Q&A №647】

2019/05/23


【質問の要旨】

裁判所で、被後見人を除いて、死因贈与契約はできるか


【ご質問内容】

被後見人であり、相続人でかあるものを除いて、
死因贈与契約を、裁判官、調停委員、弁護士と被贈与者だけの契約は有効ですか。

647

(てつ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【死因贈与とはなにか】
死因贈与とは、贈与者がその有する財産をある人に贈与するのですが、贈与者の死亡の時期にその効力が発生するという契約です。
遺言は法律で定められた要式で遺言者がその意思に基づいて作成する必要があります。
これに対して死因贈与は通常の契約と同じですので、要式は自由ですし、また、贈与者本人の依頼を受けた代理人の弁護士が契約書に署名し、あるいは調停で贈与者本人が出頭しない場合でも調停を成立させることができます。

【死因贈与の当事者】
死因贈与は贈与ですので、贈与を受ける者は相続人には限りません。
贈与する人と贈与を受ける人の2名の間で死因贈与契約が成立します。

【相続との関係】
相続との関係で言えば、死因贈与を受ける者は、法定相続人に限定されません。
相続とは全く関係のない第三者に死因贈与することも可能です。
調停がどのようなものか質問ではわかりにくいのですが、仮に財産を有する人がそれを受け取りたい人との間で調停が進行している場合、その両名間で死因贈与を内容とする調停が成立するということはあり得ます。
その場合、相続人が調停の当事者になっていなくとも、調停で死因贈与を成立させることは可能です。

【弁護士の関与について】
財産を贈与する側は本人が出ず、弁護士だけが出て、調停をまとめることはよくあります。
弁護士は、予め、裁判所に委任状を提出しており、代理権に基づいて調停を成立させるのですから、本人が出頭できなくても調停は成立します。

【被後見人である場合】
相続人が被後見人であっても、事情は同じです。
被後見人である相続人の同意や関与なしで、贈与者と受贈者との間で死因贈与契約をすることが可能ですし、そのような内容を調停で成立させることも可能です。
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