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掛け金を契約者が支払っていない生命保険の解約返戻金について【Q&A №609】

2018/06/06


【質問の要旨】

父が掛金を支払った保険の解約返戻金は特別受益か

記載内容  掛金 解約返戻金 特別受益


【ご質問内容】

父を被相続人とし、兄と妹の私が相続人です。
父は生前、父が契約者で兄を被保険者とする(受取人は不明)生命保険に加入しており、掛け金は父の口座から引き落とされていました。
その後、父の存命中に契約者が兄に変更されましたが掛け金は父の口座からの引き落としのままでした。
そして、父の存命中に保険が中途解約されたのですがその際の解約返礼金690万円はすべて兄が受け取っております。
兄はそのうちの600万円を父の口座に振込み、父の遺産は2000万円ありました。
それを理由に、2000万円から600万円を差し引いた金額が遺産であると主張しております。
保険を中途解約した時点で父は存命中であり、掛け金は全て父が支払っていたわけですから兄が受け取った690万円は父の遺産とみなされるのではないのでしょうか。
また、受け取った兄に対する特別受益とはみなされないのでしょうか。

609

(ラベルト)




 ※敬称略とさせていただきます

【生命保険の名義変更は父の意思に基づく限り有効です】
生命保険契約は、父と生命保険会社の契約です。
その契約者である父がその意思でする限り、契約者の名義を兄に変更することは有効です。

【解約返戻金は兄が取得するが、生前贈与になる可能性がある】
父がその時点までに父が払い込んだ保険料については、保険契約が解約された場合、解約返戻金が支払われます。
この解約返戻金は、新たに契約者になった兄が受取れることになります。
とすると、今回の解約返戻金(690万円)は、父から兄から与えられる利益であり、実質的には生前贈与と扱っていいと思われます。

【生命保険金の受取と名義変更による解約返戻金の関係】
父が死亡したとき、受取人が兄であった場合、兄が受け取る生命保険金は遺産にはならず、生命保険金は遺産分割の対象にはなりません。
その理由は、死亡保険金は、相続とは別個の生命保険契約により、受取人が取得する財産だからです(当ブログQ&A №299参照)。

しかし、今回の場合には、父の死亡によるのではなく、父が生前にした行為により、兄が解約返戻金を取得できる立場になったのです。
そのため、兄に特別受益ありとして、その分を遺産に持ち戻して、遺産分割するということになります。

【特別受益は90万円】
ただ、兄は父の口座に600万円を入れたということです。
この入金がどういう趣旨でなされたのか明らかではありませんが、この入金分は父の遺産となると考えれば特別受益は90万円になります。
結局、90万円をお兄さんの特別受益として遺産に持戻し、父口座に入金された600万円を加算して算出された遺産総額が2090万円ですので、その2分の1の1045万円が、あなたが受け取る金額になります。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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13:21 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

19年前の自動車事故死亡保険の履歴記録を開示させたいのですが【Q&A №605】

2018/04/04


【質問の要旨】

19年前の交通事故保険金の支払い記録の開示はできるか

記載内容  19年前 任意保険 履歴記録


【ご質問内容】

19年前の父親の交通事故死による保険会社(当時住友損保、現三井住友損保))の任意保険支払いの記録を開示させることはできるのでしょうか?
それぐらい古いと記録は残っていないと担当者が一度回答してきました。
私以外のもう一人の相続人である弟が、当時相続税の上限にかかるので自分のところに入れるといって1400万円ほどを振り込んだのは間違いなく、戸籍謄本等を取り寄せて母親経由で提出した記憶があります。
当時のことを尋ねると弟はいつも恍けて憶えていないと答えてきます。
記録が出てくれば何とかなりそうなのですが,上手い方法はないものでしょうか?
ご教示よろしくお願いいたします。

605

(しまどじょう)



 ※敬称略とさせていただきます

【19年も前の交通事故の記録の開示を求める理由は?】
質問から見れば、父の死亡保険金を弟が全額、自分の口座に振り込ませたことをどうして証明するのかという質問だと思われます。
もし、そのような取り込みがあれば、弟の特別受益あるいは一時預かりであり、遺産に持ち戻しあるいは返還請求ができる可能性はあります。

【過去のお金の動きを確かめる方法】
お金の動きがあるのなら、その確認方法は
 ① 出金した保険会社を調べる。
 ② 入金した銀行を調べる。
 ③ 当時、入出金にかかわった関係先を調べる。
の3つの方法があります。

【保険会社には、金銭の動きのみに限定して再度の照会をしてみる】
保険会社が父の死亡金の支払いについての記録を作成しています。
問題は19年も前の記録を保存しているかということです。
19年もの昔ということであれば、《記録が残っていない》と言われればそれ以上に調べる方策はないでしょう。
ただ、保険にかかる全記録が欲しいのではなく、《いつ、誰に、いくらを送金したのか》というお金の動きが必要なケースです。
保険に関する全記録は廃棄していても、金銭の動きだけなら、コンピューターに保存されている可能性があるかもしれません。
そのため、《送金関係だけでいいから》と照会事項を限定して、コンピューターに履歴が残っていないかを調べてくれと、再度申し入れをしてもいいでしょう。

【入金した銀行の調査】
入金した銀行の調査も考えられますが、これは弟の口座であり、弟の同意がない限り、あなた側では調査ができません。
また、金融機関が19年も前の記録を保存している可能性は少ないでしょう。
なお、通帳が残っている可能性もありますが、それも弟が《そんな古い通帳は残していない》という対応をすれば、それ以上に追求するのは難しいでしょう。

【刑事記録の確認は保存期間の関係で難しい】
19年前の事故は死亡事故のようですので、加害者を被告人として刑事訴訟がなされた可能性があります。
その中に保険金の支払いのことが記載されている可能性もありえます。
しかし、刑事記録の保存期間は判決によって異なり、過失による事故であれば最長10年程度ですので、その記録が残っていることは、まず、ないでしょう。

【コピーや手紙、メールの履歴を確認する】
父が死亡したときに、その相続人の一人の口座に送金をする場合、保険会社としては他の相続人の同意の書面を取ります。
その同意をした書面自体は保険会社に渡しますが、その時にあなたや他の相続人がコピーをしているようなことはありませんか?
支払いに関してメールや手紙でやり取りをしたことはありませんか?
念のためにお調べになるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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14:33 その他 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

生前の一時金【Q&A №604】

2018/03/22


【質問の要旨】

車の修理代を援助してもらい、返したが、特別受益になるのか

記載内容  返済 ローン 自動車


【ご質問内容】

 亡くなった母から生前一時的に援助を受けました。
 経緯は10年前交通事故に合い車を修理しなくてはならず急きょ修理代を借りることになりました。
 しかしローンを組み中古車を購入することになり借りた一時金は母に返しました。
 借りていた期間は2~3カ月です。
 現在調停中で他の相続人の弁護士から特別受益との指摘を受けております。
 返金した証明、購入した中古車の登録証、ローン返済の書類証明の提出を要求されておりますがその中古車は既に手放しました。
 書類等はありません。
 以上の要求について証明、書類提出できなければ特別受益に値するといわれました。
 どのように対応したら宜しいのでしょうか?

604

(パキラ)



 ※敬称略とさせていただきます

【借りたお金の性格は貸金であるので、特別受益にはならない】
 まず、あなたがお母さんから借りたお金の性格が問題になります。
 あなたが母から贈与を受けたのなら特別受益になります。
 しかし、あなたが主張されているように母からの借り入れというなら、母はあなたに対して貸金債権を有することになります。

【貸金での問題点】
 貸金だとした場合には、あなたが母に返済をしたかが問題になります。
 もし、貸金の返済を証明できなければ、貸金債権として母の遺産になります。
 結局、貸金の場合には特別受益にはなりませんが、返済が証明できなければ、母のあなたに対する貸金債権は存続し、母の死亡時には「貸金返還請求権」という債権として遺産になります。
 贈与や借り入れのどちらにせよ、あなたが貸金の返済を証明できなければ、いずれの場合においても母の遺産として計算されることになります。

【返済の証明はどうするのか?】
 問題は返済を証明できるかどうかです。
 あなたが、返済時に、母から領収書をもらっていたなら、それを証拠に出せば返済を証明できます。
 領収書がないのなら、次のような方策を考えるといいでしょう。
 もし、あなたがお母さんの口座に送金して返済しているのなら、お母さんの預貯金口座の取引履歴を確認して返金を証明できる可能性があります。
 もし、手渡しで返金したというのなら、受け取った母が、返金分を自分の手元にはおかず、預貯金口座に入金した可能性がないかどうか、母の取引履歴で確認するといいでしょう。
 その場合、あなたの預貯金口座から引き出して返済したのだというのなら、あなたの預貯金口座の履歴も取り寄せするといいでしょう。
 あなたの口座から返金分が払い戻しされ、その一方で近接した時期に母の口座に返金額に相当する金銭が入金されているのであれば、返金が立証できる可能性が高いです。
 ただ、取引履歴は10年間程度しか取り寄せできません。
 貸金が約10年前のようですので、迅速に取引履歴の入手の手配をされるといいでしょう。

【返済が証明できない場合】
 貸金の返済を証明する責任はあなた側にあります。
 もし、あなたが返済を証明できないのであれば、借金は返済されていないということなり、母のあなたに対する貸金請求権が遺産になります。
 この場合、あなたは他の相続人に対して、その相続分に応じた返金をする必要があります。

【中古車を買ったことは返済の証明にはならない】
 あなたとしては、修理をせず、中古車の買入をされたとのことです。
 しかし、修理をしなかった、あるいは中古車を買入れたことは、借金の返済の証明としては極めて弱いです。
 修理をしなかったということが借金に返済とつながるというのも、更に中古車を買ったから借金を返済したということも、それだけでは、返済の証明にはならないでしょう。
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14:15 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

後妻による定期預金解約について【Q&A №600】

2018/02/19


【質問の要旨】

口座名義人の委任状があれば定期預金の中途解約はできるのか?

記載内容  定期預金解約 解約伝票 価格賠償


【ご質問内容】

質問①

 定期預金の中途解約についてご相談いたします。
 よろしくお願い致します。概略を記します。

 昨年、父が他界し相続が発生しました。相続人は4名(後妻+先妻の子3名)です。
 父は6年間ほど要介護度5(寝返りできない、痰の吸引が2時間毎に必要)で介護は後妻さんがしていました。後妻さんは定期預金(1,500万円)の中途解約を父の了解を得て行ったと言っています。
 銀行に口座名義人確認の方法を尋ねましたらキャッシュカードと暗証番号との説明でした。
 解約伝票の署名は口座名義人(父)の筆跡のようであり、預金の使途を後妻さんに聞いたら適宜使用と答えました。

 同銀行のお客様相談センターに問い合わせたころ支店の対応に任せているとの事でした。
 同銀行他支店に定期預金の中途解約について尋ねたら、口座名義人の委任状があっても解約は認めない、口座名義人が窓口に来れない場合は、何かしら他の方法で確認をとる、又は相続人全員の了承をとるとの事でした。銀行のダブルスタンダードといえる対応に対しどのように考え行動したらよいのでしょうか。ご教示お願い致します。

質問②

 相続で話し合いの最中なのですが、相手方が遺留分対象のマンションを売却しています。
 遺産額も決まらないのに相手方弁護士は、価格賠償を主張しています。
 どのような対応を考えたらいいのでしょうか?(マンションの仮差押えは、供託金の用意ができません。)



(雪男)



 ※敬称略とさせていただきます

質問①定期預金の解約の件と質問②マンションの売却の件の2件の質問をいただいていますので、2件まとめて回答いたします。

【質問①について…当該解約時の状況を確認するべき】
 被相続人の定期預金が後妻さんによって無断で解約されたのであれば、後妻の不法行為(ないし不当利得)ということになり、あなたが父の相続人として、返還請求をすることができます。
 無断であるかどうかの判断資料としては、誰が窓口で手続きをしたのかを確認する必要があると思われます。

【引き出しを勝手にしたかどうかの判断】
 銀行は、口座名義人の委任状があっても解約は認めず、口座名義人が窓口に来られない場合はほかの方法で意思確認するという対応だったようです。
 さて、上記銀行の対応と解約伝票の筆跡からすれば、父が書いた解約伝票を後妻が窓口に持っていき、後妻がキャッシュカードを持参し、又、暗証番号も答えたことから、銀行としては本人の意思を確認できたとして解約したと理解できます。
 銀行の対応に若干、疑問があるようにも思えるものの、父が委任状の意味を理解して署名捺印したのであれば、後妻が父の意思に反して勝手に解約したとは言えませんが、反面、父が6年程、要介護5の状態(身体的な面か、意思能力にも問題があったのかが明らかではありませんが)であれば、場合によれば、委任状を記載していても父には意思能力(判断能力)がなく、解約は不法行為に該当する可能性もあります。
 いずれにせよ、預金の引き出し時点の父の状態をカルテなどで確認する必要があります。

【父の意思能力がない場合】
 もし、父に意思能力がないというのであれば、後妻が勝手に引き出したものと主張できるでしょう。
 ただ、このような場合でも、後妻が解約したお金を父の介護のために使ったことを立証すれば、その分については後妻が取得したものとはいえず、返還を求めることはできないでしょう。

【父の意思で解約していたとしても、後妻が贈与を受けていれば特別受益になる】
 仮に父の意思で解約がなされたことが明らかになったとしても、それを後妻に贈与したのであれば、今度は特別受益の問題になります。
 特別受益だとすれば、1500万円を父の遺産に持ち戻して遺産分割をすることになりますので、あなたが取得する遺産額が増えます。

【質問②について…売却される前にマンションに登記をする】
 以下は、あなたがすでに遺留分減殺請求をしているとの前提でお答えいたします。
 遺留分減殺請求をした時点で、あなたと相手方とはマンションを共有する関係になります。
 しかし、第三者から見れば、この共有関係は明らかではありません。
 そのため、第三者に対して、あなたが遺留分権者としてマンションの共有持分権を持っていることを主張するためには、あなたが遺留分で所有権を取得したことの登記が必要です。
 この登記があれば、あなたは対外的にもマンションの共有者の一人ということになり、相手方はマンション(の全部)を勝手に売却できなくなります。
 現在、まだ、あなたへの遺留分登記がなされておらず、既に買受人である第三者に対する所有権移転登記が完了しているのであれば、あなたはこの第三者に所有権取得を主張することができません。
 売買契約はしたが、買受人の移転登記前であれば、早急に買受人に登記が移転されないように《仮処分》という手続きをする必要があります。
 既に買受人が移転登記を完了しているのであれば、あなたとしては相手方に遺留分相当額の価格賠償を求めることしかできず、相手方弁護士と交渉するしかないと思われます。

(弁護士 岡井理紗)
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14:07 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

特別受益にあたりますか?【Q&A №599】

2018/02/08


【質問の要旨】

祖父からの生前贈与を母の遺産分割時に証明する必要があるのか?

記載内容  祖父から 生前贈与

【ご質問内容】

 昨年母が亡くなり相続が開始致しました。
 父は既に他界しております。
 私は25年前父方の祖父から1200万円の生前贈与を受けました。両親も承知のことです。
 その後一人息子だった父が祖父から相続を受け他界、母がまた全てを相続し昨年他界致しました。
 現在兄姉私の3人が相続人です。遺産分割の話し合いの際弁護士をつけた姉は1200万円は特別受益だと主張、違うのであれば祖父から受けた生前贈与を証明せよと言われておりますが25年前のことですので証明できずにおります。
 調停員からは裁判になる可能性が高いといわれました。
 途方に暮れております。


(ゆり)



 ※敬称略とさせていただきます

【一般に祖父からの贈与は無関係】
 今回の遺産分割は母の遺産です。
 そのため、特別受益で検討すべきなのはあくまで「母からの生前贈与の有無」に限定されます。
 もし父や祖父からの生前贈与があったとしても特別受益にはあたりません。あなたとしては「祖父からの贈与の有無は本件に関係ない。」と回答すればされで済みます。

【例外的に特別受益とされる場合がある】
 ただ、事情によっては例外的に祖父からの贈与が実質的には母の贈与と同視できる場合があります。
 たとえば、親が娘の子(孫)に学費を贈与した場合、直接贈与を受けたのは孫(祖父から孫の口座に直接振り込み)であっても、本来は娘が負担するべき学費であることを考慮し、実質的には娘に対する贈与だと扱われることがあります。
 ご相談ではそのような例外的事情はなさそうですが、参考までに紹介しておきます。

【姉の側で立証する必要がある】
 他方で、あなたは姉の側から「祖父からの生前贈与を証明せよ」と言われているようですが、そのような照明をする必要はありません。
 母からの贈与であり、母の遺産の特別受益というのであれば、その証明は姉の側でするべきことであり、あなたが祖父からもらった証拠など示す必要はありません。
 
【調停は互譲で解決を図るもの】
 以上のとおり、あなたとしては、特別受益の証明は姉側でするべきであると述べるといいでしょう。
調停はあくまで話し合いですので、あなたがどれだけ正しい主張を述べても、姉が解決案を了解しなければ裁判になってしまうことはやむをえません。
 もし、あなたが裁判を望まないというあれば、どこかで妥協点を見つけるしかありません。
 その場合でも、あなたとしては、まず正しい言い分をしっかりと主張した上で、妥協できる点を探るという立場で対応されるといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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14:37 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続 調停から審判【Q&A №596】

2018/01/15


【質問の要旨】

姉名義だが、父と姉が債務を負っている住宅の残ローンの半分は相続しなければならないのか。

記載内容  住宅ローン 光熱費

【ご質問内容】

 審判をするか悩んでおります。現在調停をしており先日担当裁判官と直接話をしましたが納得が行くものではありません。
 弁護士を入れて進めていますが、同じ結果になったとしても調停と審判では違うと審判を勧められています。
 ※特別受益と住宅ローン:家は姉名義で住宅ローンは二人で払っていたのでそれは特別受益ではないかと主張した。

 ボーナス払年二回11万ずつ現金で渡し、月々支払は光熱費と相殺していた。
 2世帯住宅だがメーターはひとつで父の口座から引落しで支払をしていた。
 裁判官の見解:ボーナス払いの現金を渡してたと言う証拠がない、光熱費が父の口座から引落としされてるのは明確だが姉が現金を渡してたかも知れないし相殺してたとは認められない従って特別受益は認められない。
 住宅ローンの債務についても半分の300万を負担する事、相続の分配に含んで行う。
 ※定期預金引出:生前父から電話があり、障害を持つ弟が入所している施設に寄付しないと居られなくなると言われ定期を渡した。

 姉に確認したら父に対して制裁だと話し返すよう話したが弟の保険に入ったと嘘を言い返済しなかった。
 裁判官の見解:定期解約をしたのは金融機関の書類で姉なのは事実だが、その後どうなったかは明白でない為、戻せとは言えず本件とは別に返還請求を別途するようにと。


(なつ)



 ※敬称略とさせていただきます

【父の支払を示す証拠が大前提】
 まず、今回は姉の単独名義で取得した自宅の住宅ローンについて、そのローン代金について父と姉がそれぞれ別個に、分割して借り入れをしたケースです。
 ところで質問では、ローンの返済は姉の口座から引き落されていたということであれば、父が姉の口座にお金を入れていなければ父は実質的に1円も負担していないことになります。そうすると、父が支払った証拠がない本件では、調停や審判の場ではなによりも証拠が重視されるため、特別受益とは認められないものと思われます。

【親子間では光熱費の無償使用もありうる(ローンとの相殺)】
 次に、あなたは、父と姉との間に「父が姉に渡す(父名義部分の)ローンの支払資金と姉が父に支払うべき光熱費を相殺する」という約束があったことを主張されているようです。
 しかし、今回は父が姉にお金を渡した証拠がないため、第三者の立場から見れば「父は姉の家に無償で住ませてもらっていた」という状況に見えてしまいます。そのため、父はそもそも姉に光熱費を請求するつもりがなかったと裁判所は考えるしかない状況かもしれません。
 ここはあなたの側で父と姉との間に相殺の約束があったことを立証する必要があるでしょう。
 要するに、結局のところポイントは「父が姉にお金を渡していた証拠をいかに見つけ出すか」という点にあります。
 この証拠が見つけられないためにあなたの主張が通らないという事態が生じているのです。

【父名義のローン残債務は分担】
 父名義の住宅ローン残債務については、父の金融機関に対する債務ですので、相続人であるあなたと姉が相続分に応じて分割された債務を支払いする義務があることは間違いなく、対金融機関の関係で返済せざるを得ないでしょう。

【姉の家は遺産分割の対象にならない】
 そうすると、父の遺産分割の結果、姉はローンを分割してあなたに半分負担させることができるが、姉は自宅を丸ごと自分のものにできるという利益を受けることになります。これはたしかに不公平感があることでしょう。
 この点の解決方法としては、父の債務である住宅ローンで融資された金銭はその全額が、売買代金の決済の時点で姉の代金の支払いに充てられているはずであり、この分は贈与として特別受益に該当する可能性があります。
 裁判所はその点の立証ができていないといっているのであれば、その点を立証するよう全力を尽くされるといいでしょう。
 現在、弁護士に依頼されているようですので、その立証方法としてどのようなものがあるかどうか、その弁護士と協議されるといいでしょう。

【不正な預金解約は調停・審判で判断しにくい】
 最後に別途訴訟提起が必要と言われている点ですが、調停や審判は遺産であることが明らかな(ほぼ争いのない)遺産だけを取り扱う手続です。そのため、不正な預金解約(損害賠償請求)のように事実関係に大きな争いがあるものは調停で判断ができないのが通常です。その場合、別途訴訟を提起して遺産であることを確認することが必要であり、この点は裁判所の見解が一般的といえるでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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14:01 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

被相続人が、生前中建更の受取人を相続人の一人にした場合は?【Q&A №592】

2017/12/08


【質問の要旨】

相続人の一人が建更の受取人になっていたが、不公平ではないか?

記載内容  建更 積立式 受取人 

【ご質問内容】

JAの建更と一般に言われている「火災保険」の事です。
積立式の年払いです。

他の相続人である私には、高額に思えるのですが、この場合は全て受取人のものになるのでしょうか?

残っている金融資産はあまりなく、もの凄く不平等感をおぼえます。
どうか、お力を貸してください。


(ユリ)



 ※回答文中では、質問者を「あなた」、亡くなられた方を「被相続人」、相続人の一人を「Aさん」と表記します。

【建更の制度についての整理】
建物更生共済とは、火災だけでなく、地震や台風、豪雨等の自然災害も広く保障し、満期を迎えた際には満期共済金が支払われる損害保険のことです。
建物更生共済では、
①契約者
②被共済者
③満期共済金受取人
の3つの点を考える必要があります。
①契約者は、掛け金を支払う人で、建物所有者又はその親族が契約者となります。
②被共済者は、建物の所有者です。
③満期共済金受取人は、契約者又は被共済者のどちらかを指定することになります。
ご質問によると、被相続人が建物更生共済の受取人をAさんにしていたとのことです。
上記の整理を前提とすると、おそらく、
①契約者(掛金を支払う人)…被相続人
②被共済者(建物の所有者)…Aさん
③満期共済金受取人…Aさん
ということだと思われます。
以下はこの前提で回答します。

【建物更生共済は相続財産として遺産分割の対象になる】
生命保険金は遺産には入りませんが、建物更生共済は「相続財産」として、遺産分割の対象になります。
この共済では、相続発生によりAさんが共済金を受け取る権利を得るというものではありません。
また、契約者(被相続人)が死亡した場合には、共済契約は、相続人全員に承継されます。
そのため、相続時点での解約返戻金額が相続財産となり、遺産分割の対象になります。
ただ、Aさんとしては、今後も建更を継続させたいと考えるはずですので、あなたとしては、Aさんから、解約返戻金のうちあなたの相続分に該当する額を支払ってもらった上で、建更の契約者としての地位をAさんにすることを認めるとよいでしょう。

【被相続人が支払った掛金の一部が特別受益になる可能性がある】
なお、被相続人の生前、Aさんは、自分の建物についての保険の掛金を被相続人に支払ってもらっていたということになります。
被相続人が支払った掛金総額のうち、相続発生日までの年数に相当する分は、Aさんだけが利益を得ていたことになりますので、特別受益になる可能性があります。
あなたとしては、掛金の一部が特別受益ではないかという主張もした上で、できる限りあなたの相続額が増額できるよう交渉するとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
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15:53 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

結婚時の親の援助と奨学金について【Q&A №589】

2017/11/28


【質問の要旨】

奨学金(学費)は4割増しで遺産から引かれるのか?

記載内容  奨学金 結婚費用 学費 

【ご質問内容】

 相続人は私と妹と妹の3男(養子縁組)の3人です。
 父の日記より、私の結婚時、両親が買ってくれた着物の代金と私が既にローンで買っていた毛皮等の残金を払ってくれていました。(40年前)その他に持参金を数十万頂いております。

 妹の奨学金ですが、親の遺産から4割増しで引くとあります。
 法律は全くの門外漢で分からないのですが、奨学金が4割増しで親の遺産から引かれるものでしょうか?

 母は、20年ほど前に亡くなり、一人息子である父だけでした。何とかH11年からの5年もの日記を3冊持ち帰りましたが、葬儀の翌日妹家族が全て処分してしまいました。
 几帳面な父の遺品と遺言書はありません。
 H11年以前の5冊25年分は妹が持っています。


(ルミ)



【前提となる事実関係】
 今回は「妹さんの奨学金」の借入経過について少し抽象的な部分があるため、次のようなご相談と理解し、回答させていただきます。

① 妹さんは奨学金(学費)をかつて自力で借入、返済をした。
② 他方で、お姉さん(相談者)は結婚の際に着物や持参金をお父さんからもらっている。
③ お父さんの日記には、「妹の奨学金は4割増しで遺産から引く」という記述がある。(=お父さんとしては、妹は自費で奨学金を借入、返済させたので、遺産分けの時は妹に奨学金の分だけ多めに4割増しで渡して欲しい、という心情で日記を書いた。)
④ ③のような扱いは法律上正しいのか。奨学金が4割増しになるような理由があるのかを相談したい。


【日記は遺言としての法的効力を持ちません】
 まず前提として、日記は遺言としての効力を持ちません。
 そのため、日記のとおり遺産分けをする必要はありません。
 日記にあるお父さんのお気持ちを尊重して遺産分けをすること自体は珍しくありませんが、法的に従う義務がないことはご理解下さい。
 以上の前提でいえば、妹さんの奨学金を考慮して、遺産を妹さんに多めに渡さなければならない理由はありませんし、4割増しにする理由もありません。
  
【結婚費用・持参金は特別受益にならない可能性も高い】
 まず、お姉さんのいわゆる嫁入り道具や持参金は特別受益にあたる可能性があり、嫁入り道具として購入してもらった着物の代金や持参金数十万円などは、特別受益とされることと考えられます。
 (この点は当ブログQ&A №507に同様の質問がありますのでご参照下さい)
 ただ、家庭裁判所の調停では、妹さんや弟さん(養子)の結婚に際してもそれなりの資金提供をされているケースが多く、嫁入り道具や持参金額が格別に高い価額ではないような場合以外は、特別受益はお互い様として帳消しにしてはどうかという対応を調停委員が言われることが多いです。

(弁護士 北野英彦)
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認知症の義母から金庫の中身を渡すと言われてるが【Q&A №588】

2017/11/20


【質問の要旨】

認知症の義母からの贈与は受け取っても問題ない?

記載内容  認知症 義母 贈与 

【ご質問内容】

 金庫の中には散々娘や孫にあげた後のおもちゃのようなのが数点、寺の権利書(?)と80万くらいあると言い、私にあげると言ってききません。何時忘れるかわからない状況ですので、私は貰いたくありません。
 後で無い!盗られた!と言い出す可能性もありますし、絶対揉めないと義母は言いますが、娘さんが義母没後何も言わないとはかぎりませんし。
 言ってることが毎日変るし、以前1点だけ親戚中居る中で貰いましたが、私は預かってるつもりです。その事は言いません(忘れてるか?)なので預かるつもりで一旦受け入れておいた方がいいのかなとも思いますが正直面倒くさいです
法律的にどうなりますか?



(介護妻)



(敬称略で記載しております。ご了解ください)

【義母に意思能力がなかったとして、贈与が無効になる可能性がある】
 まず、義母の亡くなる前に発生が予想される問題について述べます。
 他人にものを預ける、あるいは贈与する場合、贈与する人に判断(意思)能力がない場合、その行為は効力がありません。
 義母は認知症だということですが、その程度によっては意思能力がなかったということで、金庫の中身を預ける行為も、あるいは贈与する行為も、無効になりかねません。
 この場合、義母からあなたが金庫の中身を受け取ったとしても、後に義母の後見人やその相続人から贈与行為等は無効だとして返還を求められる可能性があります。

 その際、金庫にはもっと多くの財産があり、それをもらったのだろうと主張される可能性も考えておく必要があります。
 そのため、可能な限り、そのようなものを受け取ることは避けられるのが賢明でしょう。
 もし、どうしても受け取らざるを得ないのなら、第三者に立ち会ってもらって、何をもらったのか(可能であれば他にはもらっていないことも)また、贈与なのか預かるだけなのかを書面化しておくといいでしょう。
 もし、預かるというのであれば、何の目的でいつまで預かり、いつ返還するのかという点を書面で明確にし、返還期限に返還を実行することが必要です。

【後に特別受益を主張される可能性もあるが、原則特別受益にはならない】
 次に、義母の死亡後の相続の観点から考えてみます。

1)判断能力欠如による返還請求の可能性あり
 まず、義母の死亡後には、その相続人となった子が、義母には意思能力がなかったから、贈与等は無効だ、返還せよと主張してくる可能性があります。

2)配偶者の特別受益を主張されるかもしれない
 次に、あなたの配偶者もまた相続人になります。
 相続人が生前に贈与を受けた分は、特別受益として遺産分割の際に遺産に持ち戻しする必要があります。
 ただ、今回の場合、贈与を受けたのは相続人であるあなたの配偶者ではなく、相続人ではないあなたですので、原則として特別受益にはならないでしょう。
 ただ、他の相続人としては、(それが法律的に認められにくいとしても)あなたが贈与を受けたということは、《あなたと一体の立場》にあるあなたの配偶者がもらったものだとして、配偶者の特別受益を主張してくる可能性がなくはありません。
 この点については、すでに述べたように、本来、特別受益は相続人本人に対してされた贈与のことを言いますので、相続人の配偶者であるあなたが贈与を受けたものは、原則として特別受益にはならないと反論するといいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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11:51 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

アパートの生前贈与【Q&A №587】

2017/11/10


【質問の要旨】

父からアパート(建物のみ)を生前贈与した。
父の死亡後、妹から土地を含めた評価額を元に計算した金額を特別受益として請求されたが、どこまで特別受益とみなされるのか。

記載内容  アパート建物 生前贈与 評価額 



【ご質問内容】

 平成23年に父より昭和63年に木造建築されたアパート建物のみ生前贈与を受け登記し、アパート経営をしておりましたが、27年6月に父が他界しました。
 23年固定資産税評価額は、約二百万円、他界した27年は約百五十万円です。
 相続人は私と妹の2人ですが、今になって、妹よりアパートの特別受益を主張しており、その評価は、収益還元法によれば、52,950,000円と固定資産税評価額とは、かけ離れた金額を請求されています。
 その根拠は、土地も含めた価格のようで、年額収入4,236,000円、投資家期待利回り8%によるものだそうです。しかし、土地は既に遺産分割により相続登記が長男である私に完了しております。
 地元の不動産屋によれば、土地と建物を分けての評価は難しく言われております。
本来遺産分割におけるアパート建物だけの特別受益評価額は、どのようになるのでしょうか?
 お忙しいところ、恐縮ではございますが、出来るだけ早急にご回答いただければありがたいです。よろしくお願い申し上げます。



(キンメダイ)



(敬称略で記載しております。ご了解ください)

【遺産分割協議が完了しているのかどうかで結論が異なる】
 父は、生前にあなたにアパート建物を贈与したとのことですので、この生前贈与分は特別受益として遺産に持ち戻して、遺産分割をするべきものです。
 ただ、質問には《土地は遺産分割によってあなたに相続登記されている》との趣旨の記載があります。
 もし、既に父の遺産全部について遺産分割協議が終了しているのであれば、今更、妹としては特別受益分を遺産に持ち戻せという主張はできません。
 妹の立場としては、遺産分割合意は錯誤や欺罔によるものであるとして、遺産分割協議の無効を主張するしかないということになります。
 
次に、遺産のうち一部(今回でいえば、アパートの敷地)のみの遺産分割合意をし、それに基づき登記を移転しただけで、預貯金や株式等他の遺産についてはまだ遺産分割協議が終了していないという場合には、いまだ特別受益の主張は可能ということになります。

【建物の評価は固定資産評価額が原則、ただし使用借権の上乗せもありうる】
 仮に遺産分割がすべて終了していないということであれば、特別受益が問題になりえます。
 その際の建物自体の評価は、遺産分割調停などでは固定資産評価額でされることが多いです。
 もし、違う額を主張するのであれば、その証明として鑑定等が必要になります。
 問題は建物額だけではなく、土地の使用権も生前贈与されたことになり、その価額を加算する必要があるということです。
 土地の賃料などを支払っていないということなら、建物底地の使用借権の贈与があったとされることになります。
 使用借権は土地価額の10~15%の場合が多いです。
 もし、あなたが賃料を支払っていたというのであれば、借地権ということになり、底地価額の40~60%を加算する必要があります。

【評価の時点及び賃料はどうなるか】
 評価の時点は相続開始時の建物価額や底地の価額を前提として計算します。
 なお、生前贈与を受けたのちの賃料収入などは、建物および底地利用権に含まれていますので、原則として、別途請求されることはありません。


(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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14:53 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

特別受益について【Q&A №586】

2017/10/27


【質問の要旨】

母の所有地の賃料を弟が受け取っていたが、母を弟の自宅に住まわせていた。
賃料は特別受益になるか?

記載内容  リフォーム 固定資産税 

【ご質問内容】

弟が、父より家を相続し、そこに母が長年住んでいました
弟は、若くしてその家を出てしまいましたので、母は一人暮らしでした。
弟がその固定資産税を支払っていましたが、母の土地を人に貸していて、その賃貸料は母の名前の契約ですが、弟の口座に入っていました
この度、母が亡くなり、弟は、その賃貸料一千万円ほどをその家のリフォームやエアコンなどの備品の購入にあてたので、特別受益ではないと言っています。
弟も時々帰ってきて使っていて、今も自分の家なのですが、特別受益といえるのでしょうか。

追加です。

母の土地は母が固定資産税を払っていました。母は、弟が人に貸したことで、貸す前より、固定資産税や保険料、施設の利用料などが一年で100万円増えました。
不動産所得の関係です。
母が住んでいる弟の家の光熱水費、新聞代、屋根を治すなどの修繕は母が出していました。
弟の家は、父が亡くなった後、土地区画整理が入り、家が道にかかりましたので、補償金の一部で弟が立て替えたものです。



(コスモス)



※ご質問は2つに分かれていましたが、1つにまとめて回答しています。

【事案の整理】
今回のご相談は、①母の所有地から発生した賃料と、②弟が支出したリフォーム費の2つが同時に問題となっており、弟の主張をまとめると「賃料は特別受益かもしれないが、母を自宅に住ませ、リフォーム費も出したので特別受益にはならない」というもののようです。
このような場面は、まず①賃料と②リフォーム費の2つを分けて別々に整理することが理解のコツです。

【貸地の賃料は母のものであり、弟が取得した分は特別受益として遺産に持ち戻される】
1)母がその所有する土地を自分が賃貸人になって第三者に貸しているのですから、その賃料は母の収入になります。
2)母が、弟の口座に賃料が入ること及びそれを弟が使用するのを認めているのなら、毎月発生する賃料を母が弟に生前贈与したと考えていいでしょう。
生前贈与についてはその合計額が特別受益となり、遺産分割に際しては遺産に持ち戻されます

【自宅のリフォームやエアコン購入の扱い】
自宅のリフォーム費用は自宅の価値を増加させますが、自宅は弟名義ですので、弟の有する不動産の額が増加するだけです。
同様にエアコンについても、弟が購入したもののようですので、弟の財産が増えたということにすぎません。
いずれも弟の財産が増えるのであり、母の財産が増えるものではないということになります。

【弟名義の自宅を母が無償使用している点をどう考えるか】
ただ、自宅は弟名義であるのに、母に無償で使用させている点については問題がありそうです。
1)弟の特別寄与の主張
弟名義の自宅を、賃料を払わずに母が無償で使用している
⇒母としては自宅の賃料相当分の支払いを免除されている
支払いを免れた賃料相当分だけ、母は経済的利益を受けている
⇒その分、弟が特別寄与と主張して、遺産からの支払いを求める可能性もあります。
2)自宅の賃料分として、母名義の地代をもらっているとの弟の主張
また、母親が貸している土地の賃料をもらっているのは、自宅の使用分としてもらっているのだという主張をすることも考えられます。
3)こんな反論が可能
これに対しては、弟が父の遺産分割のとき、母にその自宅を無償使用させるという話があったことから多くの遺産をもらったではないか、というような反論も可能です。
また、子が母の面倒を見るのは子としての扶養義務であり、今になって、賃料を無償にしたからそれを考慮せよなどというような主張はできないという反論も用意しておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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16:19 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

弟夫婦にのみ生前に孫への教育費にお金を父が渡していました【Q&A №578】

2017/09/05


【質問の要旨】

孫への教育費は特別受益になるか?

記載内容   教育費 遺産分割 考慮

【ご質問内容】
 亡くなった父の財産分割をするに辺り、兄弟二人で遺産分割をする事になりました。
 父の預貯金を調べてみたところ、弟夫婦に父が生前孫の教育費にと200万を渡していた事が判明しました。
 財産分割について、生前父から一切お金を貰っていなかった私としてはその差額分を考慮して欲しいと弟にお願いしたのですが、弟は残った財産は兄弟なのだからきっちり二分の一に別けるべきだと聞く耳を持ちません。
 父が生前に弟夫婦へ渡したお金は財産分割には含まれないのでしょうか?
(長男の嫁)



【原則は特別受益にならない】
 遺産分割のときに考慮される贈与(特別受益といいます)は、基本的に、相続人が被相続人から贈与を受けた場合のことをいいます。

 したがって、相続人の配偶者や子供(被相続人の孫)が贈与を受けた場合には、相続人以外の者ですので、原則として特別受益にならない(つまり、遺産分割時に考慮しなくてよい)ということになります。

 今回のご質問では、亡くなったお父さんが、孫への教育費として、子供である弟夫婦にお金を渡していたという事案です。
 弟さん夫婦には渡されていますが、お孫さんは未成年者ですので、親権者の弟夫婦が受け取った、現にお孫さんの教育資金として使われている(あるいは使われそうである)というような事情であれば、それは孫への贈与と考えるべきですので、弟夫婦の特別受益にはならないということになります。

【場合によっては特別受益と判断されることもあるが、限定的】
 相続人本人ではなく、配偶者に対して贈与をしたという事案で、福島家庭裁判所白川支部昭和55年5月24日(家裁月報33巻4号75頁)は、「贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であってもこれを相続人の特別受益とみて、遺産の分割をすべきである。」と判示しています。(【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)参照)

 この裁判例を見ると、経緯や額を考慮して、場合によっては特別受益と判断されることもありえると考えられます。
 特にそのお金がお孫さんの教育資金としてではなく、弟さんが使ったということであれば、特別受益になる可能性もあり得ます。

 又、あなたとしては、孫の教育費だとはいっても、お父さんが出さなければ弟夫婦が出さなければならなかったものなのだから、実質的には弟夫婦への贈与だと主張することも可能でしょう。

 ただ、孫への贈与が、その親への特別受益と認められるケースは決して多いとは言えないということだけは覚えておかれると良いでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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14:47 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

特別受益だと認めさせたい【Q&A №577】

2017/09/04


【質問の要旨】

①子や孫への生前贈与は特別受益にあたるか?
②預貯金のみを相続したいが、どのように協議を進めればいいか?

記載内容  特別受益 生前贈与 調停

【ご質問内容】
 父が被相続人。相続人は私・兄・妹です。 
 兄は兼業農家の跡取りとして、遺産全部を受け継いで当然と考えており、妹も同意しています。
 私はこれまで、父からまとまった金銭を受け取ったことが全くなく、この相続では預貯金の3分1を受け取ることを希望しています。 

①父が生前、兄や兄の子(孫)に金銭を渡したことは、特別受益にあたるでしょうか。
 特別受益にあたるなら、相続遺産に加えたいですが、妥当でしょうか。
 心配なのは兄がすんなり認めるかです。認めさせる方法を教えて下さい。

②遺産分割協議は駆け引きの場だと思います。
 どんなことに注意すればいいでしょうか。
 大切なことを教えてください。


(のえる)



【あなたの申し出はどう評価できるか】
 あなたの相続分は3分の1ですが、それは遺産全部について、その3分の1です。
 遺産の中には不動産もあると思いますが、その不動産についてもあなたは3分の1の相続分があります。

 もし、遺産の中に不動産があるのに、あなたが預貯金の3分の1のみの相続で我慢するというのであれば、不動産については法定相続分を取得しないという大幅な譲歩をしていることになります。
 お兄さんとしては決して損な話ではありません。

【生前引渡分の扱い】
 生前にお父さんがお兄さんに金銭を渡していたのであれば、おそらく生前贈与に該当するでしょうから、遺産分割の際には、特別受益として遺産に持ち戻される可能性が高いです。

 ただ、お孫さんについての生前贈与ですが、お兄さんとその子であるお孫さんとは、別の人格ですので、お兄さんの特別受益と見なされる可能性は低いでしょう。

【お兄さんはすんなりとは認めない可能性が高い】
 あなたの提案する預貯金の3分の1の相続でお兄さんがすんなりと認めるかという点についても述べます。
 都会では相続をお金で割り切ることが多く、あなたの提案でお兄さんが納得することも多いでしょう。

 しかし、郊外などで農業をされているような方については、跡取りが遺産全部を取得するものだという考えを持つ方が多く、又、周囲の親族もそのような方向で圧力をかけてくるということも多いようです。

 このような地域性に加えて、妹さんが遺産はいらないという意向であるなら、お兄さんとしては《あなたにだけなぜ遺産を与えるのか》ということで、あなたの提案に難色を示す可能性が高いと思われます。

 又、お兄さんの立場から言えば、お父さんの農業を手伝ったので、特別寄与として遺産から優先的に支払いをせよと主張することも考えられます。

【調停制度の利用をお勧めします】
 このように本来は当然遺産分割するべきなのに、遺産分割をしないというようなケースでは調停制度を利用されるといいでしょう。
 調停はお兄さんの住んでいる地域の家庭裁判所に申立をします。
 手続き等がわからないのであれば、家庭裁判所に行って、どのように申立をすればいいかをお聞きになるといいでしょう。

 調停のいいところは、調停委員という第三者がお兄さんとあなたの話の双方を聞き、円満な解決の助けをしてくれるということです。
 裁判所で第三者が法律を前提に解決しますので、お兄さんとしても納得せざるを得ない場合が多いですし、あなたのように預貯金の3分の1でいいということであれば、調停委員としてもお兄さんを鋭意説得してくれるものと思います。

【調停での対応のコツ】
 調停のコツとしては、最初は全部の財産の3分の1を請求し、その後、調停委員の説得で預貯金の3分の1に応じる形をとるといいでしょう。
 調停は互いに譲り合って解決するという制度ですので、最初に譲ったところから出発すると更なる譲歩を求めれらますので、この点はよく覚えておかれるといいでしょう。

【調停は裁判ではない】
 なお、お兄さんや親戚の方などは、《裁判沙汰にして》などというかもしれません。
 しかし、調停は裁判ではなく、円満な解決を望む制度です。
 相続についての話し合いは本当に難しく、私(弁護士大澤)の経験でも話し合いで解決することは本当に少ないです。
 お兄さんがあなたの希望に従った解決をしないのなら、早期に調停を申し立てることを考えるといいでしょう。

【弁護士の知恵も借りる】
 なお、あなたの遺産問題で何が問題になるかを知っておくためにも相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
 何が問題であり、あなたが本来はどの程度の財産をもらえるのかを教えてくれるはずです。
 あなたの考えで間違っているところはないかどうか、弁護士の眼からみれば何が問題点になるのか、それらを知った上で、調停の申立をして、問題を解決するのがベストだと思います。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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15:09 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正出金と特別受益について【Q&A №573】

2017/07/31


【質問の要旨】

母の預金を使いこんだ弟から遺産を取り戻せるか?

記載内容  使い込み 住宅ローン 贈与

【ご質問内容】

  先日、妻の母が亡くなりました。(父は既に他界)
  妻は兄と弟の3人兄弟で、母は13年程前から弟と同居していました(住宅購入)。
 母の遺産は定期預金など(推定6000万円程)で2年ほど前から弟が通帳管理し死亡前にはすべて弟の口座に移されていました。 贈与か不正出金か不明。
 弟は遺産総額を開示もしません。
 信託で契約を結び(金額不明)、死後、弟にお金が入るようにもしていました。
 信託会社に詳細を聞いたところ、財産と遺留分対象とのこと。

 住宅資金推定5000万円(弟名義)を、母が頭金援助(推定2000万円)、去年あたり母が(推定2000万円)を出してローン完済させたようです。
 弟はギャンブル好きで他にも不正出金が多々あると推測し、まだ現金2000万円程は隠していると思われます。

 お聞きしたいのですが、住宅資金援助は母の通帳開示請求から追及できるでしょうか
 また弟のローン支払いの通帳も開示請求して照合できるのでしょうか
 遺言書はないようですので、法定相続分の3分の1で請求した場合妻の相続分はどれくらいになるのでしょうか?

 また、兄は相続争いに参加したくないとの事で、妻への譲渡証明書を書いてもらうつもりですが、その場合、不正出金の返還請求も、特別受益があった場合も兄の分と2人分の請求ができるのでしょうか
 どうぞご教授よろしくお願いいたします。

(papepon)





【住宅資金援助の追及・・まず登記簿謄本と取引履歴の双方を確認する】

弟さんが購入した住宅の資金援助とローン返済をお母さんが行ったかどうかの追及ですが、次のような方法でされるといいでしょう。
まず、弟さんの不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せし、不動産購入時期及びローン完済時期を調べます
購入時期は所有権移転登記の時期、又、ローン完済時期は抵当権抹消時期で推測(判断)できます。
次に、被相続人であるお母さんの金融機関の取引履歴を確認し、購入時期及びローン完済時期に、お母さんの口座から多額の出金があるかどうかを確認するといいでしょう。
もし、双方の時期に合致した出金があれば、それが頭金等の購入資金として、あるいはローン完済の資金として使われた可能性があるといえるでしょう。


【購入資金あるいはローンとして使われたものかのどうかの証明が必要】

前項の登記変更時期と取引履歴の出金が合致したというだけでは、あくまで可能性があるという程度の話であり、裁判で必要とされる証明としては不十分なことが多いです。
お母さんの口座からの出金が弟さんのための資金として使われたことを証明する必要があります。
ところで、お母さんの出金額がそれぞれ約2000万円ということであれば、現金で出金されていることは少なく、おそらく送金されているものと思います。
そのため、上記金銭が送金されたかどうかを通帳の備考欄などで確認し、送金されたということであれば、出金した金融機関に対して、誰の口座に送金されたかを確認されるといいでしょう。
弟さんの口座に送金されているとすれば、追及することが可能になります。
なお、お母さんの預金については相続人であれば確認できますが、弟さんの預貯金口座の確認は、兄弟でも他人ですので、弟さんの同意がない限り、金融機関はプライバシー侵害を理由に応じないでしょう。


【奥さんの相続分・・お母さんが贈与していた場合】

遺産としては、弟さんがお母さんの口座から出金した預貯金6000万円と住宅資金の関係の出金である4000万円が質問に記載されていますので、この1億円が財産であるとして説明します。
まず、住宅関係で4000万円がお母さんから弟さんに生前贈与され、6000万円は弟さんが無断で出金したという前提で考えた場合、
① 生前贈与分4000万円は特別受益として遺産に加算されます。
② 無断引き出し分の6000万円は、お母さんの弟さんに対する不法行為や不当利得に基づく賠償・返還請求権となります。
この場合、遺産総額は、(特別受益:4000万円)+(不法行為等の返還請求権:6000万円)=1億円になり、子ども3名の相続分は各3分の1の3333万円強になります。
ただ、弟さんの生前贈与による取得額が4000万円で、法定相続分の3333万円を超えています。
そのため、弟は4000万円を返還する必要はありません(特別受益制度は返還までさせる制度ではありませんQ&A №406をご参照ください。)が、残りの6000万円からは1円ももらうことはできません。
あなたの奥さんとしてはお兄さんと共に生前贈与分を除外した残額である6000万円を2人で分けて、各3000万円を相続でもらえることになります


【奥さんの相続分・・お母さんに無断で引き出していた場合】

なお、もし、住宅関係の4000万円もお母さんに無断で出金されたというのであれば、お母さんは弟さんに対して合計1億円の不法行為による損害賠償請求権を有することになります。
子供らは各3分の1ずつを相続することになりますので、あなたやお兄さんは弟さんに3333万円ずつの返還を請求することになります。


【相続分譲渡の場合は譲渡者の分を含め、請求する】

 奥さんはお兄さんから「譲渡証明書」をもらっているということですが、これが相続分の譲渡であれば、不正出金の返還請求も、特別受益の場合にも、あなたの奥さんはお兄さんの分を含めて、2人分を請求することができるようになります。


【こんな点にも注意しましょう】

注意点も付け加えておきます。
弟さんが他にも現金で2000万円ほど持っているとしても、それを発見することはなかなか困難です。「ない」と断言されれば、どうしようもないということも考えておくべきでしょう。
次に奥さん側が遺産問題で動き出したのを気づいた場合、弟さんは財産を隠す可能性があります。
もし、弟さんが不動産をもっていたり、あるいは預貯金口座にお金をもっているらしいということがわかるのであれば、その財産を動かせないようするために裁判所に仮差押等という手続きをしておく必要があります。
ただ、その手続きをするのであれば、相続に詳しい弁護士と依頼されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
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遺産の対象財産と計算方法【Q&A №559】

2017/02/14


【質問の要旨】

保険金や共有の不動産などを考慮すると、遺産分割はどうなるか

記載内容 共有 賃貸 保険金

【ご質問内容】

相続人兄と私のみ

遺産は共有名義の家(持分兄6:父4)

死亡保険金1450万円(受取人私)あり。

家は同居を前提に父が1450万円出したが、喧嘩により同居を断られ一度もその家には住まず、アパートを借り生活。

何度もお金をかえしてくれと頼んだが、聞いてもらえず。

少額の個人年金の受取と兄と私の援助で生活。

2年前父とのトラブルで兄家族は隣の市へ引越。

その1年後父が他界。

葬儀の際、家は父が亡くなる半年ほど前から人に貸していることを聞く。(父は知らない。)

今回、家を売りたいから、早くサインをしてと連絡が来る。

家は兄が相続。(2680万円で売却予定。)

生命保険は私が受取る。

父の葬儀代?円、アパートのリフォーム代192万円、他に亡くなった後かかった費用は兄と私の折半という遺産分割書を作成す
ると。

兄は1060万円しかもらえず、私は生命保険を全部受取るんだから文句ないよなという感じです。

生前父に兄は400万円程度、私は家賃など約350万お金を援助しています。

兄は共有なのに10年間自分たちだけで住み続け、その後無断で人に貸し収入(10万円程度/月)も独り占めにしていた。

実際のところ父の遺産はいくらと考えられますか?

兄は12年ほど前に土地(100万程度の価値)を譲り受けています。

分割の内容は後で決めるとして、取り急ぎ売ることの同意を早くしろとも言われています。

今同意するのは何か私の不利益となりますか?

(たいよう)






【遺産内容について】

まず共有名義の家(以下、家といいます)は、お父さんの持ち分が40%ですので、その40%の持ち分が遺産の中にはいります

これにお父さん名義のその他の財産(預貯金や株式等の有価証券、動産など)が遺産になります


【保険金は遺産ではありません】

あなたが受取人として受け取った死亡保険金は、遺産分割では、原則として遺産とは扱われません(相続税の申告では遺産の中に含まれますが、それは税金の問題です。法律的には、遺産分割の関係では原則としては遺産でないとの判例があります(当ブログQ&A №298)。


【お父さんの家を使っていた点は特別受益になるか】

家 は被相続人であるお父さんとお兄さんの共有ですので、もし、お兄さんが自ら居住していた場合には、その共有持ち分については無料で使用しているのですから、その無料使用分(使用借権)が特別受益になるのか、遺産に持ち戻されるかどうかが問題になります。

土地の無料使用については特別受益になると思われますが、家屋の無償使用については、権利性が低いとされ、特別受益になることは少ないです(当ブログQ&A №457)。

特に本件では家全部ではなく、共用持ち分ですので、お兄さんが使用しているのなら特別受益ではないということになるでしょう。

ただ、今回の質問ではお兄さんが他人に貸し、賃料という経済的な利益を得ています。

そのため、もし、お父さんがその賃貸を了承しているのであれば、その賃料のうちのお父さん持ち分相当分である40%分は特別受益という主張をしてもいいだろうと思います(この問題も当ブログQ&A №539に同様の記載があります)。

又、お父さんに無断で貸したというのであれば、不法行為に基づく賠償請求権という債権(賃料の40%相当分が損害額 ということになります)が成立する可能性があり、遺産に含まれるという主張も可能でしょう(ただ、従来、お兄さんが無償で使用するのを認めていたので、賃貸にしても損害はないはずという反論もあり得ます)。

なお、お父さん死亡後の賃料についていえば、相続人がその持ち分に応じて遺産とは別に請求できるという判例があります(当ブログQ&A №240)。


【債務の扱い】

お父さんの賃借しているアパートの リフォーム代とあります。

賃借物件を賃借人であるお父さんがリフォームし、その価額が192万円という高額であるというのは考えにくいので、賃借物件の立退きに際しての原状回復費用の可能性があります。

その前提で考えれば原状回復費用はお父さんの生前の賃借に関する費用ですので、お父さんの生前債務と同様に扱っていいでしょう。

次の葬儀代については相続債務ではありませんが、あなたが葬儀に出席されていたのなら、相続債務扱いで負担をするような解決例が多いです(当ブログQ&A №545)。

以上に記載したように、生命保険は除外して、《家の持ち分+他の預貯金+有価証券+動産+賃料の持ち分相当額 》が遺産になり、《家のリフォーム代と葬儀代》が相続債務になるものと思われます。

(弁護士 大澤龍司)

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亡母が出してくれた治療費と持戻し免除【Q&A №556】

2017/01/26


【質問の要旨】

過去に治療費を出してもらった場合、相続時に考慮するのか

記載内容 治療費 相続分 引く

【ご質問内容】

昨年暮れ母親が亡くなったのですが、不動産の相続で問題が起きています

兄弟が4人いるのですが長兄が母の看病を嫌い闘病中に急に連絡がとれなくなり、そうこうするうちに母が亡くなりました。

葬儀にも来ず、残った兄弟で葬儀をあげたのですが、いざ相続の事になると急に出てきてお金をもらう事を主張し始めました。

長兄の言い分は4人で平等に分けるのは不公平というのです。

と、いうのは私が数年前ガンにかかりその治療費を母がだしてくれたのですが、その分の金額を私の相続分から引かなければ不公平だというのです

母が元気な時の話ですし、そんな事を言われるとは夢にも思いませんでした。

長兄のいうように均等に分けて相続するのは不公平にあたるのでしょうか

また、長兄にはどのように対処すればいいのでしょうか。

(るる)





【治療費は特別受益にならない】

あなたはお兄さんから、数年前病気になったときにお母さんに出してもらった治療費をお母さんの相続に際して考慮するべきだと主張されているようです。

これは、法律的に言えば、あなたがお母さんからもらった治療費が特別受益となるかどうかという問題です。

特別受益になるなら、治療費の額を遺産の中に組み入れて、各相続人の遺産額を計算する必要があり、その結果、あなたは遺産を治療費として先にもらっているから相続での取り分が少なくなる(場合によればゼロになる)こともあります。

この特別受益とは、民法903条で、「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」場合であると規定されています。

本件のような治療費は、お母さんが生きておられる間にもらったものですので遺贈ではありません。

また、婚姻、養子縁組や生計の資本のためにもらったものであれば、その贈与が相続財産の前渡しとみられる贈与であるか否かを基準として判断しますが、病気の治療のためのお金ですので、婚姻、養子縁組や生計とは関係がなく、相続財産の前渡しとは考えにくいでしょう。


【仮に特別受益になったとしても持戻し免除を主張することができる】

前項に記載したように治療費が仮に生計の資本としての贈与だと判断されたとしても、あなたの治療費として、お母さんがあなたのことを心配してお金を出してくれたというのであれば、通常お母さんとしては「治療費としてあげたお金は遺産分割において考慮しなくてよい」と考えていたと考えられます。

そこで、病気の治療費として出してくれたという事実から、持戻し免除の黙示の意思表示があったと考え、主張するとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

大澤龍司法律事務所
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15:50 生前贈与・特別受益 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

何かをする時期について【Q&A №554】

2017/01/19


【質問の要旨】

母が亡くなるまでにできることはないか

記載内容 公正証書 実家 請求

【ご質問内容】

私は姉妹の姉です。

父の死後、話し合いもなく、父の死後公正証書が送りつけられ、数か月後税理士の方からの書類が届いた時は、母に全部渡す預貯金は妹名義になっていました

数年前に母を施設に入れ、実家に移り一人で住み始めました

こういう場合母が亡くなる迄手立てがないのでしょうか

私は過分に欲しいと思っているわけではありませんが、

妹も不動産などを両家からたくさん相続していますので、裕福ですので

私もきちんと請求したいと思っています。

(さくら)






【お父さんの相続に関しては遺留分減殺請求はできたが…】

お父さんの相続に関しては、預貯金はすべて妹さんに相続させるとの内容の公正証書遺言が作成されていたと理解しました。

このような遺言書があり、他の相続人になんらの遺産も来ないような場合でも、最低限の遺産(子であれば法定相続分の半分)を取り戻す権利があります(遺留分といいます)。

ただ、この権利は自分に遺産が来ないという遺言書があることを知ってから1年間以内に、遺言書で遺産をもらう人に請求(遺留分減殺請求といいます)する必要があり、この期間を過ぎると請求することができません(民法1042条)。

そのため、妹さんが預貯金をすべて相続したことにより、あなたやあなたのお母さんの遺留分が侵害されていた場合には、1年以内であれば、遺留分減殺請求をすることができました。

しかし、お父さんが亡くなってから既に9年経過しているということですので、お父さんの相続に関して、妹さんに何らかの請求をすることは難しいでしょう。


【実家に妹が住んでいても、あなたからは請求することはできない】

妹さんは両親も住んでいない実家に一人で住んでいるとのことで、あなたとしては妹さんに何らかの請求をしたいという気持ちでおられることと思います。

ただ、妹さんの住んでいる家の所有者はお母さんだと思われます。

そのため、妹さんに何らかの請求をするとしても、請求者はお母さんであり、今の段階では家の使用については、あなたが妹さんに対して何らかの請求をするということはできません


【お母さんが亡くなれば特別受益の問題になる可能性もあるが…】

将来的にお母さんが亡くなると相続が発生します。

その段階では、お母さんの家に妹さんが無償で使用・居住していたことにより受けた利益を、お母さんから妹さんへの特別受益だと主張できる可能性が出てきます。

ただ、建物の無償使用というのは、恩恵的要素が強く、一般的に持戻し免除の意思表示がある(お母さんが無償で使うことを認め、相続の際にもその賃料や使用料というものを考慮しなくてよいと考えている)ものと評価されることが多く、特別受益と判断されることは稀です。


【お母さんの状態によっては成年後見も検討すべき】

また、現在妹さんがお母さんの財産を管理しているのであれば、妹さんによってお母さんの預金が引き出されているという事態もありえます。

今後の遺産の目減りを少しでも防止する観点からは、お母さんが自分の財産を十分に管理できる判断能力がないというのであれば、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、お母さんの財産を管理してもらうことができます

ただ、この場合の財産管理は、原則として後見人選任後のみであり、又、今回のような質問のケースでは後見人は司法書士や弁護士になる可能性が高いため、その場合には、後見人の報酬として月額3万円程度の出費が必要になります。

(弁護士 岡井理紗)

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17:03 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父が連帯保証した姉の住宅ローンの相続【Q&A №551】

2016/12/21



【質問の要旨】

姉の家の住宅ローンを父が連帯、相続で自分も負担するのは納得できない

記載内容 住宅ローン 連帯保証 

【ご質問内容】

姉が結婚したとき二世帯住宅に建て替えました

土地・建物は姉の名義です(母が亡くなり名義変更/父婿養子)。

住宅ローンは姉が組みましたが父も連帯になっていました

相続になりその負債が1200万あり父の分が600万で相続人で割ると私の負担が300万と言われました。

今まで父は月々5万と年2回:各11万(ローン半額)支払ってました。

家は全て姉の物になり負債だけ私が負担するのは納得できません

父が支払っていた分、特別利益とかにはなりませんか。

(チョコ)







【ローン債務の承継】

被相続人であるお父さんの住宅ローン残債務が600万円あり、お姉さんとあなたのみが法定相続人であれば、あなたは300万円の債務を負担することになり、その点ではお姉さんの話は間違っておりません。

ただ、住宅ローンについては、債務者が死亡した場合には保険会社から残額を一括支払いするという保険に入っていることが多いです。

そのため、念のために金融機関に債務残高及び保険の有無等を確認することをお勧めします。


【建物資金の半額を出した点が特別受益になります】

質問を整理します。

お母さんが土地を持っていたが、これはお姉さんが相続した。

その後、お父さんが死亡した。

上記土地の上にお姉さんが単独名義の建物を建築したが、住宅ローンについては半額がお父さんであり、ローンの支払いが未了である。

以上の前提で回答を記載していきます。

お父さんは住宅ローンでお金を借りましたが、そのお金はお姉さんの単独名義の家の建築資金になっています。

そのため、その借入額が、生計の資本としてのお姉さんへの贈与と考えられ、この生前贈与額は特別受益になります。


【特別受益とした後の遺産分割】

特別受益になるお姉さんの生前贈与を受けた額については、遺産に持ち戻します。

そのため、お父さんの遺産は、《生前受益分+死亡時の財産》の合計額になります。

この額を前提に法定相続分で各人の取り分を計算し、もし、お姉さんの生前贈与額がこの各人取り分を超えている場合には、死亡時にあった遺産はすべてあなたが相続するということになります。

(当ブログQ&A №506などもご参照ください。)

(弁護士 大澤龍司)

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14:00 相続債務 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★名義貸し預金の調査はできるか【Q&A №548】

2016/12/13



【質問の要旨】

名義貸しの預金は誰のものか

記載内容 名義貸し 借名預金 履歴

【ご質問内容】

母が子や孫の名前で定額貯金をし、満期が来たのでそれぞれの名義の者が勝手に払い戻してしまいました。

母は名義を借りていただけだとメモで残していたので、母の死後、相続人同士で話し合って等分に分けることになったのですが金額もバラバラのようだし、ウヤムヤにしたいようです。

母の預金の履歴を調べる方法はあるのでしょうか

やっぱりもう無理なのでしょうか。

名義貸しとか税金の払い方とかのこともよくわからず要領をえない質問ですみません。

よろしくお願いします。
 
(あきらめかけてる相続人1)







【名義人にしか開示しないのが原則】

本件のように、別人の名義で預金をする(例えば親が子供の名義で預金する)ことが、昔は多く行われており、「名義貸し預金」「借名預金」などと呼ばれていました。

このような名義貸し預金は、預金をした(=お金を出した)人物と口座の名義人が一致しないため、取引履歴の開示請求を受ける金融機関も慎重な対応をします。

実際には名義人である子どもさん自身が履歴照会を求めれば、金融機関は誰がお金を預けたかはわかりませんので、名義人の照会には問題なく応じます。

反面、お母さんが自らのお金を預けたとしても、名義が他人であれば、お母さん(その相続人であるあなた)が請求しても、他人名義であるというそれだけの理由で金融機関は取引履歴を開示しない可能性が高いです。

なお、本件のような名義貸し預金(借名預金)の払戻手続や一般論については当ブログQ&A №300に記載しておりますので、合わせてご参照ください。


【名義人の承諾をとるしかない】

もし、名義人(子どもさんら)の了解がとれるのであれば、金融機関としても名義人の了解があるのですから、履歴を開示することに同意するでしょう。

開示に際して、具体的にどのような同意手続きが必要かは金融機関により異なります。

そのため、同意が取れそうな場合には、予め、金融機関に必要書類等を確認されるといいでしょう。


【お母さんのいた場所で通帳を探す】

被相続人が他人名義で預金を作っていた場合、相手方からはその名義人に贈与をしたのだという主張が出されることが多いです。

そのようなケースでは、私は通帳や印鑑を名義人に渡していたのなら、贈与の可能性が高いが、これらが被相続人の手元にあれば名義を借りただけだと判断することにしています。

もし、お母さんが単に子供さんの名義を借りただけというのであれば、預金通帳やその取引印はお母さんの手元にあるはずですので、それを探して、履歴を確認されるといいでしょう。

もし、通帳も印鑑も子どもに渡していたというのであれば、それはお母さんから子供への生前贈与だったとされる可能性があり、その場合には特別受益の問題が発生します。

なお、お母さんの手元に通帳が見つかった、あるいは少なくともお母さんが死亡するまでは通帳がお母さんの手元にあったというのであれば、生前贈与ではなく、遺産の一部になり、相続の対象になります。

遺産分割協議をしても、話し合いが進まないような場合には、早めに法律相談され、遺産であるとして証拠を残す方法や、解約された預貯金についての保全措置の要否、今後の取るべき方策等も弁護士にお聞きになるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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16:02 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

被相続人との共有マンションの家賃の扱い【Q&A №546】

2016/12/06



【質問の要旨】

マンションの共有者である長男が、被相続人に対し収益の返還請求権を持っていると主張している

記載内容 共有物 賃料 時効

【ご質問内容】

被相続人と長男が一棟建て賃貸マンションを所有していました。

分割協議が進まず調停へと進む状況です。

これまで賃貸マンションの収入は被相続人が管理し、収入も返済や税金の支払も行ってきました

長男代理人は2分の1所有の賃貸マンションからあがる収益は本来自分の物であり、返還請求権をもっていると主張しています。

この主張は認められるのでしょうか?

またこの被相続人に対する債権は何年前まで有効なのですか?

時効はあるのでしょうか

この債務を遺産に加えると他の相続人の相続分はなくなるといっています。

(mujun)





【兄が本当に共有者であるかどうかを念のために確かめる】

お父さんと兄で共有持ち分が各2分の1であるのに、被相続人が賃料収入全部を得ていたということですが、2つの面で疑問(あるいは問題といってもいいでしょう)がありそうです。

まず、第1は、兄の持ち分2分の1というが、実質はお父さんが建築資金を出しており、名義だけを長男のものにしていたのではないか?という点です。

この疑問は①長男名義の2分の1は実質上はお父さんの遺産ではないのか?

あるいは②お父さんがお兄さんに建築資金を生前贈与(特別受益)したのではないか?

という問題に発展しますので、念のために上記の①及び②の観点から、是非、調査されるといいでしょう。

なお、ローンがあるようですので、その借入名義がお父さんだけか、兄でもあるのか、又、頭金などは誰が負担したのかを、お父さんの取引履歴等なども参考にして調査されるといいでしょう。


【兄はお父さんに賃料の返還請求はできない可能性が高い】

次に、兄としてはお父さんが賃貸に出していることぐらいは知っていたと理解するべきでしょう。

にもかかわらず、賃料の半額を請求しなかったのはなぜかという疑問があります。

この点については、賃貸を始めるときにお父さんと兄との間で、お父さんが賃料を全部取得するということで合意(暗黙を含めて)があり、管理はお父さんがし、賃料収入はお父さんがもらう、ローンの支払いや固定資産税の支払いは全てお父さんがするとの合意があったと考えるのが普通の理解でしょう。

もし、その前提が正しいとすると、お父さんが全額を取得することを、兄は了解していたのですから、兄が被相続人であるお父さんに不当利得等の請求はできないことになります。


【仮に無断で賃貸していた場合には】

しかし、万一、お父さんが兄に知らせず、勝手にマンションの賃貸をしていたのだとすると、兄からお父さんに対して不法行為による損害賠償請求及び不当利得返還請求として賃料額のうちの兄持ち分額に相当する金額を請求することが可能になります。

この場合、お父さんが兄の分のローンの支払いをし、かつ固定資産税も立替支払いをしていたのであれば、その分は請求額から控除されますし、場合によれば管理料相当分も控除することも可能です。

なお、不法行為で請求する場合には、勝手に貸していることを知ってから3年で、不当利得返還請求をする場合なら10年で請求権が消滅時効にかかりますので、それ以前の分は時効を主張されると、兄は請求できないということになります。


【兄請求の債務を遺産に加えるどうなる?】
  
今回の質問のケースでは兄の請求が成立しない可能性があります。

仮に請求できるとしても、お父さんが賃料から兄のローンの支払いをし、かつ、兄の分の固定資産税も支払っていたというのであれば、法的に認められる返還額はそれほど多額にはならず、請求すると遺産が無くなるようなことはないと思われます。


【特別寄与について】

兄に賠償あるいは返還請求ができない場合でも、賃料全額をお父さんに取得させたということが特別寄与として認められ、兄がその額を取得できる可能性はあり得ます。

ただ、この場合でも、兄の分のローンの支払いや固定資産税の立替支払い、管理料相当額等が考慮されますので、兄の寄与分としてはそれほど多くないように思います。

(弁護士 大澤龍司)

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13:23 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

娘婿への贈与について【Q&A №540】

2016/11/16



【質問の要旨】

母が私の夫名義の家に1000万円を出してくれた

記載内容 娘婿 住宅購入 同視

【ご質問内容】

母は生前に私の夫名義の家(私も住んでいます。)を買うときに1000万円出してくれました

その母が亡くなり、遺産分割協議をしているのですが、夫名義の家であっても私に対する特別受益になりますか

よろしくお願いします。

(なし)







【贈与は誰になされたのか】

今回は住宅購入資金として父から贈与された1000万円が特別受益にあたるかどうかが問題となっています。

特別受益はあくまで相続人に対する贈与が対象ですので、1000万円が娘さんに贈与されたのか、それとも夫(娘婿)に対して贈与されたかによって結論が変わってきます。

娘であるあなた自身に1000万円を贈与されたのであれば、問題なく特別受益とされるでしょう。

しかし、もし夫(娘婿)に対する贈与であった(たとえば、夫名義の口座に1000万円を振り込んだ)のであれば、娘婿は相続人ではない以上、原則として特別受益にはなりません


【娘への贈与と同視できるか否か】

ただ、このような相続人以外の人物(配偶者)への贈与であっても、裁判所は、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には相続人自身の特別受益と扱う余地があることを認めています

具体的には、贈与の額が多額であり、贈与の経過から見て、他の共同相続人からすると特別受益としなければ公平に反すると思われる場合には、相続人以外の人物(今回でいえば娘婿)への贈与を特別受益とすることを例外的に認めています。

今回のケースでどう判断されるかは詳しい贈与の経過を確認する必要がありますが、たとえば住宅資金として贈与した額と遺産総額の大小、贈与の話をまとめたのは娘さんか娘婿か、娘婿名義の口座に振り込んだ理由(業者への支払の都合か否か)、そのほか、娘さんや娘婿の居住期間などといった事情を考慮し、実質上は娘への贈与であったか否かが判断されるでしょう。


【参考裁判例】

これについては、当ブログQ&A №324及び【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)に同様のテーマで記事がありますので、ご参照下さい。

(弁護士 北野英彦)

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10:39 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★亡父との共有名義マンションの使用借権【Q&A №539】

2016/11/08


【質問の要旨】

亡父が出資して共有所有者となっているマンションに、姉が居住したり、賃貸に出したりした場合

記載内容 購入資金 持ち分 特別受益

【ご質問内容】

父親が亡くなり姉妹で財産を分けることになりました。(母はすでに亡くなっています)
姉は生前父にマンション購入資金として1200万円出してもらいました
残りのローンは姉が払いました。

しかし税金対策だったのでしょう、父が出した分を共有所有者として登記していました。
父は生前、姉に自分の持ち分を買い取ってほしいとの話もしていましたが、姉も買い取ることはできず、相続分として父の分が残りました。

姉は最初は自宅として使用し、後にマンションを賃貸に出して収入を得ています
姉から父に賃貸の代金を一部払った時期も1年ほどありましたが後に払った様子はありません。
今ではその所有分の価値も1/3程になっています。

共有の持ち分になると、特別受益が1200万円だとは言えないのでしょうか

言えないのなら、共有所有者の父がもらわなかった賃料の一部をみなし財産として算入できますか?

あるいは、使用借権を無償で得ていたことにはなりませんか
その場合の金額の算定は?

私は姉だけが住宅資金をもらっているのに、遺産が1/2づつというのはどうも納得できません。

不平等感をなくすいい方法があればご教授ください。

(tomo)





【今回の質問は《購入資金援助》と言う意味では、特別受益にならない】

通常の場合であれば、被相続人が法定相続人のマンション購入資金の一部を出した場合には、金銭の生前贈与として特別受益になります。
ただ、今回の案件では、お父さんが出した分はお父さんが自分の持ち分として共有登記されていますので、金銭の移動はありません
したがって《購入資金援助》としての贈与はなく、お姉さんの特別受益は存在しません
マンションのお父さんの持分は、お父さん自身の遺産となり、遺産分割の対象となります。


【お父さんの共有持ち分の使用は、居住用であれば特別受益にならない】

お姉さんがマンションを居住用にしていたとき、お父さんの持分を無償で使用している点では、お姉さんはお父さん持ち分につき、使用借権(無償で使用する権利)をもらったということになり、特別受益となる可能性があります
そのため、マンションの使用貸借について判断した裁判例を検索しましたが、発見できませんでした(参考までに言えば、土地の使用貸借は特別受益になるとの裁判例はあります)。
学者の意見では、建物使用貸借は遺産の前渡しという性格が薄く、又、財産権として強い権利ではないこと、更に被相続人の意思としては遺産分割の持戻し免除の意思が推定されるということから、特別受益にはならないとの見解が多いです。


【お父さんの建物持分をお姉さんが他人に賃貸している場合】

問題は、お姉さんが自ら居住するのではなく、他人に貸して賃料を得ている場合です。
これについても参考になるような裁判例も学者の意見もみつかりませんでした。
ただ、あなたの立場から言えば、使用貸借は他人に賃貸した段階で終了しており、その後にお父さんの持ち分相当の賃料分もお姉さんが得ていたのは特別受益になると主張するか、あるいはお父さんが賃貸に出すのを知らない場合には不当利得にしないと不公平だと主張されるといいでしょう。
このような主張をした場合に裁判にまでいけばどのような結論になるか、興味のあるところではありますが、お父さんの持ち分に相当する賃料分は特別受益として遺産に持ち戻される可能性もあるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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第三者の寄与と遺言【Q&A №532】

2016/09/29



【質問の要旨①】

相続人の配偶者が費用負担すると寄与分になるか


【ご質問内容①】

被相続人(父)の介護費用(老人ホーム入居関係費用、医療費など)の一部、不要となった父所有の家屋の固定資産税や解体費用、家財道具の撤去費用などを相続人である子(女)の配偶者(夫)が負担した場合、将来被相続人が逝去時、相続される過程の中で寄与分として認められますか?

(相続人は専業主婦により収入はなく、かかった費用は夫に委ねざるをえない状況による理由から。)

(九州女児)



【質問の要旨②】

特別受益の持ち戻しを遺言書に記載した場合、有効か

【ご質問内容②】

被相続人より住宅資金の援助として生前贈与を受けたという証明を取り付けるのが困難である場合、遺言書に「遺言者は相続人Aが家屋を購入するに際し、相続人Aに住宅資金として200万円を援助した。

相続人Aはこれを特別受益として持ち戻すこと」と記載した際、遺言書として認められますか?

記載内容 介護費用 援助

(博多っ子)




※同一人物と思われる方から2つに分けてご質問いただいていますが、回答は一つにまとめています。ご了解ください。

【寄与分の問題ではなく、相続債務の問題ではないのか?】

被相続人のお父さんの介護費用(老人ホーム入居関係費用、医療費など)の一部を負担したことについては、被相続人の支払うべき分の立替支払いをしたとして理解することが可能です。

その前提に立てば、寄与分という以前に、被相続人は立替支払いをした人に対して返還債務を負い、この分は相続債務として法定相続人に承継されます。

同様に《不要となった父所有の家屋の固定資産税や解体費用、家財道具の撤去費用など》についても被相続人が立替費用返還債務を負い、これが相続人債務になると理解することが可能ですし、その方が実態に見合うでしょう。


【寄与分としてみた場合の問題点】

もし、上記費用の返還を求めないという前提で出したということであれば、寄与分の問題となります。

寄与分は認められることが少ないですが、例えば、付添看護をしたというような場合には、付添等をした分、ヘルパーの料金の支払いを免れた分程度しか、寄与分は認められません。

ただ、今回の質問のケースは、上記各支払いにより、被相続人の遺産が減少を免れたことが明らかですので、寄与分として認められる可能性はあると思われます。

問題は、寄与分は法定相続人間で認められる制度だという点です。

今回の質問は、法定相続人ではなく、その配偶者(夫)が寄与したという点にあります。

夫婦であり、一体と見て、夫の寄与分も妻の寄与と同視するという考え方が多いようですが、これらの問題点があることを考えれ
ば、やはり前項で記載した立替金返還請求債務として処理するのが妥当だと思います。


【特別受益に関する記載の効力】

遺言の効力を考える場合、

① その記載をして、遺言書全体が無効になるのかどうか?

② 遺言書全体としては無効にならないとしても、その記載が有効なのか?

という2つの方向からの検討が必要になります。

まず、最初の①の観点から言えば、「遺言者は相続人Aが家屋を購入するに際し、相続人Aに住宅資金として200万円を援助した。相続人Aはこれを特別受益として持ち戻すこと」という内容は遺言書本体ではなく、遺言者の希望を書いた《付言事項》というものにすぎず、そのため、遺言書全体が無効になるということはありません

次に、上記②の付言事項として効力があるかという点ですが、仮に上記のような記載をしても、住宅資金を援助した事実があることの決定的な証拠にはならず、又、特別受益になるものでもありません。

前者はそのような事実があるかどうかの問題であり、後者はそのような事実があった場合にどのように法的評価するかの問題であり、いずれも遺言者が決定するべき事項ではなく、最終的に裁判所が判断するべき事項です。

もし、200万円を特別受益したから、その分、その受益者の取り分を減らしたいのであれば、その受益者の相続額を減額した配分の内容の遺言書を作成するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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20年前に妻に名義変更された土地は遺産か【Q&A №529】

2016/09/21

 【質問の要旨】

20年ほど前に父から母へ名義切り替えした不動産は、父の遺産か

記載内容 名義 贈与 土地

【ご質問内容】

父が他界し、遺産相続について質問です。

実家は土地も建物も父がなくなる随分前に(20年程前)母名義に切り替えしておりますが、父の遺産に含まれるのでしょうか?

名義は母なので、父の遺産には含まれないのでしょうか?

教えていただけますか。

宜しくお願い致します。

(ふーちゃん)






【他人名義の不動産は被相続人の遺産に含まれないのが原則】

元々はお父さんの所有であった不動産が、生前にお母さん名義に移転されていた場合、その不動産は原則として、お父さんの遺産に含まれません。

ただ、債権者対策として偽装登記したとかいう事情があり、かつ、その事実を証明することができるのであれば、遺産に含めることが可能です。

ただ、現在の名義人としては、そのような偽装登記ではなかったのだと主張する場合が多いでしょうから、話し合いがつかなければ、最終的にはお母さん(登記名義人)を相手に、「この土地はお父さんの遺産である」という訴訟を起こして決着をつけざるを得ないでしょう。

なお、20年ほど前の移転ということですが、その時点でお父さんが認知症にかかっており、意思能力(判断能力)がないような状態であったというのであれば、(それも証明が必要ですが)その不動産の移転は無効であって、お父さんの遺産に属するということになります。


【夫から妻への不動産の移転の場合】

お父さんがお母さんに不動産を移転したとしか、質問には記載されていません。

何を原因とする移転なのかは、移転の際の事情をお母さんにお聞きになるとともに、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取り寄せて、登記原因を見れば判明しますが、おそらく、贈与で移転されたものと思います。

ご存知だとは思いますが、婚姻後20年間を経過した後の夫婦間での居住用不動産等の贈与はその不動産価額が2000万円以下なら贈与税が全くかかりません。

そのため、お父さんとしてはその制度を利用し、贈与税を支払うことなく、お母さんに不動産を贈与したのだと思われ、それ以外の売買などというのが原因となる可能性は極めて低いでしょう。


【特別受益等の問題が生じるが・・】

仮に被相続人であるお父さんからお母さんへの贈与があった場合、その贈与は特別受益になり、お父さんの遺産分割の際に、遺産に持ち戻して計算することになります。

この特別受益については当ブログQ&A №164Q&A №334をご覧ください。

(弁護士 大澤龍司)
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10:11 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★子どもの国民年金掛金と特別受益【Q&A №527】

2016/09/07



【質問の要旨】

肩代わりした国民年金約240万円は、特別受益に該当するか

記載内容 年金 継続的 扶養


【ご質問内容】

20才から支払う義務がある国民年金「金額240万円程度」を肩代わりして支払いました(アルバイトで支払い能力がなかったため)。

そろそろ遺言書を作成すべき時期かと思案していますが。

この過去に支払った金額は特別受益に該当するのでしょうか。

宜しくお願い申し上げます。
(素浪人)







【事案によっては特別受益にあたる場合もある】

被相続人であるあなたが、相続人に対して「生計の資本としての贈与」をした場合、特別受益として、遺産分割の際に遺産に持ち戻されます(当ブログQ&A №164Q&A №334等参照)。

問題はどのような金銭等の提供が、《生計の資本》としての贈与になるかです。

例えば、相続人である長男の自宅買入資金として500万円を援助したというのであれば、特別受益になることは間違いありません。

しかし、今回のご相談は、毎月数万円程度の金銭を渡した、あるいはその程度の債務を立替支払いしたような場合です。

このような、毎月は少額でも多年にわたると金額も大きくなるような場合に、特別受益になるかどうかという問題になります。

お金を渡していれば贈与ではないかという反論が出そうですが、被相続人である親が子である相続人にお金を渡す場合、親の子に対する扶養義務の履行として渡しているとされる場合もあり、その場合には渡した金銭は特別受益にはなりません。


【判断基準はどういうものか】

次に、扶養義務の履行か否かを判断する基準は何かということが問題になります。

遺産の総額、一度に渡されたものかどうか、又、月々の支払い等であればその額はどうか、渡された期間やその交付する理由などが判断基準となるでしょう。

過去の家庭裁判所での審判例では、遺産総額や被相続人の収入状況から考えて、月に10万円に満たない送金は扶養的金銭援助にとどまるが、月10万円を超えるものは生計の資本としての贈与になり、特別受益になると判断したものがあります(東京家審平成21年1月30日・家月62巻9号62頁)。

(詳しくは【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?をご参照ください。)


【遺言書の作成上の注意】

これから遺言書を作成するが、被相続人のした国民年金の立替分を特別受益にならないようにしたいというのであれば、次のような方法を考えられるといいでしょう。

① 国民年金立替分については《持ち戻しの免除する》との意思を遺言書に明記する。
② なぜ、持ち戻しの免除をするのかという理由を遺言書の付言事項として記載し、併せて他の相続人が特別受益という問題を持ち出さないようにという内容の遺言者の希望を記載する。

これらの①及び②の方法の双方を採用し、その内容を遺言書に記載することで解決されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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17:30 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?(東京家審平成21年1月30日)

2016/09/07
毎月の送金が特別受益にあたるのか?

(東京家審平成21年1月30日)


【ケース】

平成4年から平成6年の間、被相続人から相続人の一人に対して一月に2万円から25万円の送金がなされていた事例で、相続人の一人への特別受益にあたるかが問題になった。


【裁判所の判断】

裁判所は、以下のような内容の判断をしました。

遺産総額や被相続人の収入状況からすると、一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であると認められるが、これに満たないその余の送金は親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは認められないと思慮する。

一月に10万円未満の送金については、親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは直ちに認められないと思慮するが、その余の送金はいずれも一月に10万円以上の送金がなされており、返済されたと認められる証拠がないことからすると、これらの一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であり、いずれも特別受益と認められる。


【弁護士のコメント】

裁判所は、この事案については、月に10万円程度なら扶養義務の範囲での援助といえるが、それ以上の送金については、扶養義務の範囲を超えた「生計の基礎として役立つような財産上の給付」であると言えるので、特別受益になると判断したということです。

月に何万円程度が扶養義務の範囲といえるかどうかは、遺産総額や被相続人の収入状況によって変わりますので、月に10万円というのは固定額ではないことに注意が必要です。

大澤龍司法律事務所
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17:15 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

詐欺による特別受益証明書の取消し【Q&A №518】

2016/07/08



【質問の要旨】

虚偽の説明で実印を渡したら、相続は無効になるのか?

記載内容  実印 騙された 詐欺

【ご質問内容】

祖父が40年ほど前に亡くなりました。

祖父には、妻(祖母)と7人の子供がいました。

私は、次男の子供です。

祖父の相続にて、長男が、妻(祖母)と自分以外の兄弟6人の特別受益証明書を作成し、祖父の不動産を独り占めしました。

当時、遺産分割協議は実施されていなく、特別受益をしてもらっていない兄弟が2人いて、どのように実印が長男に渡ったのか覚えていません。

また、1人は、虚偽の説明で、実印を渡したと言っています。

他の兄弟は、すでに他界し、どのような経緯で実印が長男に渡ったのかわかりませんが、いとこの話によると、半強制的に持っていかれたらしいと言っていました。

現在、長男が3,4年前に他界(現在、祖父の土地は長男の嫁の名義)し、どのようにして実印を集めたのかわかりません。

そこで質問です。

実印を渡してしまった兄弟は、祖父の相続をあきらめるしかないのでしょうか?

虚偽の説明で実印を渡した場合は、無効になるのでしょうか

長男がもはや他界しているので、生存者の叔父の証言の方が有効でしょうか?

もし、有効だったならば、祖父の相続をやり直すことはできますか?

長男の嫁と争わなければいけませんか?

(姪っ子)







【詐欺ならば取り消しが可能です】

詳しい話はわかりませんが、もし虚偽の事実を告げられて実印を押印してもらった場合、その意思表示は詐欺行為に基づく意思表示として、取り消しの対象になることがあります。

たとえば、「車の名義変更に実印が必要なので貸して欲しい。」などと、全く違う用途を説明されて実印を渡したら特別受益証明書に実印を押されてしまった、というような場合であれば、その実印(意思表示)は取り消しうる、ということになります。


【取り消し期間は5年間】

ただ、詐欺に基づく取り消し権は、詐欺に気づいた時点から5年で消滅します(気づかない場合も20年で消滅)。

そのため、今回のように40年も前の話であればもはや取り消し期間が経過し、実際に取り消すことは難しいでしょう。


【証言だけで覆すのは難しい】

仮に期間の問題を無視するとしても、叔父さんの「騙されて実印を渡した。」という証言だけで特別受益証明書を取り消すことは難しいでしょう。

「死人に口なし」と言いますが、たとえ反対の証言がなくとも、裏付けのない証言だけでは、裁判所も証言の信用性を認めることができず、あなたの主張は認められないままとなる可能性が高いでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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17:38 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

20年前の土地売買と特別受益【Q&A №513】

2016/06/29



【質問の要旨】

祖父の土地を叔母たちが売買で手に入れたら、相続はないのか?

記載内容  売買 特別受益 

【ご質問内容】

私の母はわたしが5歳の時なくなりました。

それから30年後母かたの祖父が亡くなりわたしが代襲相続することになりましたが。

2人の叔母はすでに祖父の土地を売買で手にいれていて、土地の登記も済んでいました

日付を見ると20年前に土地は祖父から叔母たちのものになっています。

この場合わたしには土地の相続はもうないということでしょうか

よくわからないので、教えていただければありがたいです。

(たんぽぽ)







【不動産の移転が贈与でない限り、特別受益にならない】

お祖父さんの遺産が叔母さん2人の名義になっているようですが、それが贈与で移転されたものなら特別受益の問題になります。

しかし、売買で移転したのであれば、特別受益の問題は発生しません

ただ、当時の相場から見て、特別に安い金額で売買されたというのであれば、その相場価額との差額分が特別受益となる可能性はなくはありません。

しかし、特別安い金額であったという点は、あなたの方で証明する必要があります。

その証明ができないとすると、お祖父さんの土地は既に生前に叔母さんらに売却されており、その登記も完了している以上、この土地は遺産にはならないでしょう

(弁護士 大澤龍司)
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10:39 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

使用借権の価額と特別受益【Q&A №511】

2016/06/24

※同じ方から2つに分けてご質問いただきましたが、回答は1つにまとめています。

【質問の要旨①】

使用貸借の価額と空き地について

【ご質問内容】

父親名義の土地に兄が家を建てています。両親とは同居していません。

両親への仕送りも無く、固定資産税も払っていません。

両親を訪問する事も年に数回です。

父がが亡くなりましたので、この場合使用貸借は、その土地の実勢価格のどの位が妥当でしょうか

また、兄の家の土地の横に空き地があり、実質兄が使用していたのですが、その土地も使用貸借に入れるのでしょうか(そこには特に建物は建ってはいません)


【質問の要旨②】

使用貸借とは?

【ご質問内容】

基本的な質問で申し訳ありませんが、使用貸借で計算された金額は、全体の遺産金額に含め、相続計算をするのか、使用貸借をしている相続人だけで分割するのでしょうか

遺産金額に含めて計算するのか、その他の相続人(特に配偶者)で計算するのでしょうか

遺産金額に含めた場合、使用貸借者に贈与が発生しているみたいに、思えるので

記載内容  使用貸借 無償 土地

(ブブブブ)







【土地の無償使用と特別受益について】

亡くなられたお父さん名義の土地の上にお兄さんが建物を建築し、賃料の支払いもしない場合には、お父さんとお兄さんとの間で使用貸借契約が成立したものと考えていいでしょう。

特別受益との関係で言えば、お兄さんはお父さんから使用借権を与えられたのであり、この権利の設定により受ける利益を「贈与」されたことになります


【空き地の使用について】

お兄さんはお父さんの空き地を使用していますが、これもその空き地を独占的に使用している(他の人が使えないような)状態であれば使用貸借が成立する可能性があります

お父さんがお兄さんの使用を知っていたのであれば、それは暗黙の同意があったとして、使用借権が成立したとされる場合が多いです。

この場合も、この空き地の使用借権の贈与が特別受益になります。


【使用借権の価額】

土地を、賃料を支払って利用する場合には借地権とされ、国税庁の発表している路線価図でもその価額が明らかにされています(通常は更地価額の40~60%の範囲内であり、60%とされるケースが最も多いです)

しかし、使用借権については裁判例などで更地価額の10~30%程度とされることが多いです(当ブログQ&A №321参照)。

これは使用借権が、借地権ほど強い権利ではない(土地が第三者に売却されれば、土地使用が認められないこともある)こと、又、存続期間等が契約内容や使用の実情等に応じて種々様々であり、裁判所としては、ケースバイケースで判断せざるを得ないからです。

ただ、これまでの相続案件での私の経験から言えば10%~15%程度で考える場合が多かったように思います(使用借権を更地価格の15%に相当すると判断した裁判例として、東京地判平成15年11月17日があります)。


【特別受益があるときの処理】

特別受益がある場合には、特別受益を遺産に持ち戻します。

今回の質問の場合であれば、借地権価額を遺産に加えます

その後、遺産全体を法定相続分に応じて分割することになりますが、特別受益を受けた人はその使用借権分を先にもらったことになり、その分だけ、遺産からの取り分が減少します

例えば、子が2人のケースで遺産総額が預貯金1000万円、特別受益が500万円とすれば、特別受益をもらった人は《特別受益:500万円+預貯金250万円》を、又、もう一人の子は《預貯金750万円)を取得することになります。

(弁護士 大澤龍司)
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15:27 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★成年後見人に対する損害賠償請求【Q&A №509】

2016/06/17

※同じ方から2つに分けてご質問いただきましたが、回答は1つにまとめています。

【質問の要旨①】

後見開始前の不正出金はどうなるか

記載内容  時効 後見人 不正出金

【ご質問内容①】

認知症の母に成年後見人が付いています。(弁護士)

弟2人が、成年後見が開始される2ケ月前、母が認知症になったのを境に、母の預金、国債、年金型生命保険を2,700万ほど勝手に解約しています。

財産保全処分の審判も、成年後見申したてから1ケ月ほどで出ました。

成年後見人と面談しました弟達は、母がくれると言ったので、もらっただけだと言いました。

解約したもので300万で、それ以前にも3000万ほど預金を引き出しています。

2人は、3000万円は母から贈与されたお金だと、認めたとのちに、成年後見人からお聞きしました。

ですが、現時点でも預金が、1億以上あるため返還請求はしないという後見人の判断です。

弟達がもらったというお金は遺産相続時に特別受益として扱う物との判断です。

そこで質問なのですが、現在成年後見人が返還請求をしないと、このお金が、不当利得というものに当たる場合時効がくると、3000万+3000万のお金は遺産相続時には無効になるのでしょうか?

裁判所に申し立などした方がいいのかと思っていますが、よく判りません。教えてください。


【質問の要旨②】

自分が受取人であった保険を成年後見人が解約した

【ご質問内容②】

母に,成年後見人(弁護士)がついております。

母の財産に生命保険の、変額個人個人年金保険GFというものがあり、母自身で加入しました。

一時払い方式で500万円支払、目標額550万円年金支払い開始日 平成29年4月21日となっています。

母がもしも、平成29年4月21日までに亡くなると、死亡保険金受取人である私が550万円を受け取る事になっていました。

平成29年4月22日以降は母の年金として支払われるという保険です。

成年後見人の元に保険会社から目標金額に達したので、年金受け取り開始日を早めることができる旨連絡がありました。

このまま置いておいても1円も増額しないと思い込まれ、解約手続きされ、1年後5、503、630円振り込まれました。

3、630円増額されていました。

母から私に残す保険だからと、聞いておりました。

最近、後見人になぜ解約したのか聞きましたら、【置いていても1円も増額しないと勝手に思い込みました。】と言われました。

平成29年4月21日までにもしも母が亡くなったら、遺産相続の分に組みこまれるお金でなかったが、現在は組み込まれています。

私が遺産相続人になった時には、成年後見人にこの保険の解約の損失550万円を損害賠償できますか?

(アン)






【債権は10年間の時効で消滅】

弟さんたちが引き出した多額の預金が、お母さんの意思に基づかない場合(お母さんが認知症で判断能力がない場合を含みます)、お母さんは引き出した弟さんに対して不当利得返還請求をする権利(債権)を持つことになります。

この権利は10年で時効にかかりますので、お母さんが長生きした場合、時効消滅する可能性があるというのは質問で指摘されているとおりです。


【就任前の不正出金についての成年後見人の動きは鈍い】

不正出金の被害者はお母さん自身であり、あなたとしては法的には何らの権利もなく、後見人が動かない限り、不正出金分の回収もできません。

成年後見人にはお母さんの財産を保全すると役目がありますので、お母さんの預貯金からの不正引き出しがあれば、引き出した者に対して返還を請求するべきだとも言えます。

しかし、成年後見人は将来の財産保全に動くが、過去の財産の散逸については中々動こうとはしないというのが実情です(正確に言えば、後見人次第です。私の経験でも後見人が過去の不正出金を取り戻したというケースが1件だけですが、ありました)。

なお、成年後見人は裁判所が選任するものであり、後見人が職務を果たしていないのであれば、裁判所に事情説明書的なもの(上申書という題名でよい)を提出し、その中でどんな不正出金があったのかを証拠をつけて提出するといいでしょう。

成年後見人が成年被後見人の財産を横領していたというケースですが、裁判所の後見人に対する監督が不十分であったことから後見人の監督裁判所に損害賠償を命じた判決もあります。

参考判例:広島高判平成24年2月20日
家事審判官が、成年後見人が被後見人の財産を横領していることを認識していたのに、これを防止する監督処分をしなかったことは、家事審判官に与えられた権限を逸脱して著しく合理性を欠くとして裁判所の責任を認めた。


そのため、上申書が出てくれば、裁判所としても、そのまま放置するのではなく、後見人から意見を聞く可能性が高く、場合によれば後見人が不正出金分の回収に動き出すことも考えられます。


【特別受益と消滅時効】

不正出金分を返還請求する権利は10年で時効にかかりますが、特別受益には時効はなく、10年以上前の生前贈与分でも遺産に持ち戻されます。

ただ、特別受益は被相続人の意思に基づく贈与などで問題にされるものですが、質問の場合は被相続人の意思とは関係なく引き出されたものであり、特別受益ではなく、単なる不法行為等の請求権の問題にすぎないと見れば、10年間で消滅時効になるということも考えられますので、ご留意ください。


【後見人の保険解約等の行為には口は出せない】

お母さんが生きておられる以上、あなたはお母さんの財産について、法的には何らの権利権限もありません。

後見人としてお母さんの財産の維持・保全という立場で対応すればよく、あなたの保険金受け取りにまで配慮して保険を維持する義務はありません。

ただ、お母さんとしてはかなりの財産をお持ちであり、判断(意思)能力があった当時にあなたのことを思って保険に入り、あなたを受取人としていたのであれば、財産が極端には減ったような場合ではない限り、保険解約をする必要もないようにも思います。

しかし、仮に後見人が保険解約をし、それによって受取人であったあなたが損害を受けることになるかもしれないとしても、あなたが法的に損害賠償できません。

このことは、お母さんが、判断能力がある時点で保険を解約した場合に、あなたがお母さんに損害賠償をすることができないのと同じことだと思えば理解がしやすいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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14:30 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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