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遺留分請求には相続放棄で良いのでしょうか?【Q&A №632】

2018/11/26


【質問の要旨】

遺留分減殺請求と相続放棄

記載内容  遺留分 相続放棄 特別受益 

【ご質問内容】

いつもこちらのブログを拝見し、相続について色々と学ばせて頂いております。
その中で遺留分というのは、法律で保証された最低限の取り分であるという認識でいるのですが、私の中で「遺留分でさえも相続放棄には敵わない」のではないかという気がしてなりません。

例えば、被相続人の財産(プラスの財産、マイナスの財産どちらも)がほとんど無い一方で、それまでに相続人の一人が何千万もの生前贈与を受けていたとします。
そうすると、何千万もの生前贈与が特別受益となり、この相続人は他の相続人から遺留分減殺請求を受ける可能性がでてくるかと思います。
そこで、この相続人は、被相続人の「ほとんど無い遺産」を相続するより、いっそのこと相続放棄を行い、はじめから相続人でなくなれば、他の相続人から遺留分減殺請求を受けずに済むのではないかと思うのです。

私の安易な考えですが、もしこれが可能なら先に述べた「遺留分さえも相続放棄に敵わない」が現実になってしまい、法律が保証する意味がなくなってしまうのではないかと思っています。
実際は、相続放棄を行う事で遺留分減殺請求を免れることは可能なのでしょうか?

632


(テルオ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【遺留分算定の基礎となる財産】
遺留分算定の際には、相続開始時に被相続人が有したプラスの財産に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して算定します(民法1029条)。
このとき加算される贈与の範囲は、次のとおりです。
① 相続開始前の1年間になされた贈与(民法1030条前段)
② 遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条後段)
③ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
④ 特別受益としての贈与(最高裁裁判例 リンク:【相続判例散策】特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?

【特別受益というのは、相続人に対する贈与】
上記のうち、特別受益というのは、相続人に対して、被相続人から生前になされた贈与又は相続開始後になされた遺贈のことを言います。
民法の条文には、特に記載はないのですが、相続人に対してなされた贈与については、相続開始1年前か否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべて遺留分減殺の計算の際の基礎財産に加算されます。

【相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされる】
ただ、相続放棄をすると、その効果として、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
そのため、生前に多額の贈与を受けた上で相続放棄をされてしまうと、その方への贈与は、上記④特別受益として遺留分算定の基礎に加算することはできません。
その結果、上記①相続開始前の1年間の間になされた贈与又は②遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与として遺留分の基礎に入れられないかを考えるしかありません。
したがって、あなたが考えておられるように、相続放棄をすることによって遺留分減殺請求を免れるということは、やりようによっては可能ということになってしまいます。
ただ、上に述べたような結論には当事務所の弁護士間で異論があります。
今回のようなケースで、遺産が1000万円しかなく、その全部をAが生前贈与を受けた後、相続放棄をすると、あなた方はAに遺留分減殺請求は一切できないことになります。
しかし、もともと、特別受益分を持ち戻すというのは条文にはないのに、最高裁が《公平の観点》から認めた制度です。
上記のケースでAが相続放棄したので、遺留分請求はできないというと、多額あるいは全部の遺産の生前贈与を受けた人にも遺留分請求できないという結論になります。
しかし、これはあまりに公平を害します。
遺言書などである人が全部の遺産を相続できると記載されていても、最低限度の遺産を他の法定相続人に取得させるというのが遺留分制度です。
この点を考慮すると、相続放棄しても、その人の生前贈与分は遺留分減殺の基礎財産になるというのが公平な結論であり、裁判にでもなればそのような結果になるということも考えておく必要がありそうです。

(岡井理紗、大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://osawalaw.com/
 
17:53 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

【相続判例散策】特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?最高裁平成10年3月24日(平成9年(オ)第2117号)

2018/11/26
特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?

最高裁平成10年3月24日(平成9年(オ)第2117号)

【ケース】

亡Aの相続人であり遺留分権利者であるBらが、Aからその生前に土地の贈与を受けたCらに対し、遺留分減殺請求権を行使し、Cらに帰属した土地の持ち分についての移転登記手続を求めた事案。
原審ではAの財産が減少するおそれはなく、遺留分権利者であるBらに損害を加えることを知ってされた贈与ではないとして、遺留分減殺の対象にならないとの判決であった。

【裁判所の判断】

民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である
けだし、民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法1044条、903条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法1030条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。

【弁護士のコメント】

被相続人が遺言で相続人の一人に多くの財産を遺贈した場合に、財産を相続できなかった相続人は、遺留分減殺請求権を行使し、一定の財産を受け取ることができます。
それと同様に、遺言でなく生前であっても、被相続人が特定の人物に多額の贈与をし、相続時には財産がなかったというようなケースでも、財産を相続できなかった相続人は、遺留分減請求が可能な場合があります。
遺留分減殺の際には、相続開始時に被相続人が有したプラスの財産に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、対象財産を算定します(民法1029条)。
このとき加算される贈与の範囲は、条文上は、次のとおりです。
① 相続開始前の1年間になされた贈与(民法1030条前段)
② 遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条後段)
③ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
この判例では、相続人の一人に対する贈与である特別受益の場合には、相続開始1年前か否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべての贈与分が遺留分減殺の計算の際の基礎財産に加算されるという判断がなされました。
これは、相続制度が遺族の生活保障という機能を有していることに鑑み、相続人の公平と保護を図ろうとの趣旨で遺留分減殺請求権が認められていることから、特別受益を期間や内容で限定してしまうと、遺留分制度の趣旨を没却するという理由でなされた判断です
特別受益制度と遺留分制度の性質を考慮した判断で、妥当なものであるといえます。
大澤龍司法律事務所
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17:45 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

使途不明金問題の被告の反論について【Q&A №629】

2018/11/06


【質問の要旨】

使途不明金の主張立証責任

記載内容  使途不明金 引き出し 返還 


【ご質問内容】

亡くなった母の相続の際に、母と長年同居していた兄が通帳の開示を拒んでいました。
怪しいと思い、取引履歴を取り寄せたら予想通り多額の使途不明金の存在がありました。
その総額は、母が亡くなる5年前からで4000万にもなります。
引き出しは一度に20万~50万で、引き出し額の合計が100万になる月もありました。
ATMを使えない母でしたので、引き出し行為を行ったのは兄があっさりと認めました。
一方で、「母から頼まれて引き出した。引き出したお金は全部母に渡している。その後、母が何に使ったのかは知らない。」と言っています。
先日、役所で開催された法律相談で弁護士に相談したら「兄が母親に渡したと言うのであれば、母親が受け取っていない事をこちらが立証しないと無理です。
従って裁判では返還を求めるのは無理に近い。
ほとんどの裁判で、被相続人に渡したと言って逃げることができてしまっている。」と言われました。

今回、初めて相続に強い弁護士さんの質問コーナーを発見し、ご質問させて頂きました。

629


(フルホビ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【訴訟で争われる典型的なケースです】
今回の質問のケースは、同居の法定相続人が被相続人の財産をカード出金していたということで、世間でよくあるケースです。
実は、当事務所が扱うケースのほとんどが、このような案件です。

【証明する責任は誰にあるのか?】
死んだ母の口座から生前に出金されていた場合、その出金を兄が取り込んでいたという事案では、取り込んだという点の証明はあなたがする必要があります。
具体的には次の2点の証明が必要です。
① 母の口座から出金があること。
② その金を兄が取り込んだということ。
上記の①は取引履歴を取れば簡単に証明できます。
問題となるのは②の証明ですが、今回の質問では、兄がカード出金をしたことを認めています。
役所で相談された弁護士が、証明責任はあなたにある言ったことは正しいです。
しかし、兄が自分がカード出金をしたことを認め、しかも母の口座に、カード出金した金銭の入金がないというのであれば、兄が勝手にその金銭を使ったのではないかと考えるのが妥当な結論です。
そこまで行けば、兄が取り込んだという証明、100%ではないにしても、かなりの程度できていると思われます。
このようなときには、今度は兄が、出金額は母に渡した、あるいは母のために使用したということを証明する必要があります。

【証明責任は天秤のようなもの】
裁判における主張や証明責任は上皿天秤のようなもので、ある程度、あなたが証明し、それが事実らしいということになると、今度は兄の方が反証(あるいは反論)することが必要になります。
兄は母に渡したというのであれば、その点の証明は原則として兄がする必要があります。
あなたの方が、母が受け取っていない事実まで証明する必要はありません。

【カード出金をした理由はどうしてか?】
観点を変えて説明します。
兄は母に依頼されてカード出金をしたのなら、母から委任を受けて出金をしたのであり、母にその出金額を返還する義務があります。
その義務を履行したかどうかは、当然、義務者の兄がするべきものであり、証明責任はあなたではなく、兄が負うという結論になります。

【裁判の見通しについて】
役所で相談した弁護士は、裁判での返還は無理に近い、ほとんどの裁判で被相続人に渡したといって逃げることができるという判断ということですが、私とは見解が異なります。
冒頭に述べたように、当事務所が中心に扱う相続案件は、このような生前の取り込み分がある場合がほとんどです。
被害者の立場で、どんどん訴訟を起こしていますし、依頼者の人にそれなりに満足のいく成果を上げています。
もちろん、裁判になれば、兄の方からは、いろんな隠された事実を言い出し、また、新しい主張をしてくるでしょう。
裁判のことですので、絶対に勝訴するというような断言はできませんが、最悪の場合でも和解という解決方法で取り込んだ金銭の一部でも返還させることも可能の場合が多いです。

【弁護士に相談することをお勧めします】
この相談はあくまで質問者の方がお書きになった事実の限度で、回答をしています。
弁護士としてはより詳しい事実を知り、正確な判断をしたい案件です。
何が問題で、今後、どのような対応をしていいのか、その回答を得るために、是非、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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17:04 相続財産 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

連帯債務の住宅ローン支払い【Q&A №626】

2018/10/25


【質問の要旨】

子が支払った父の住宅ローン

記載内容  住宅ローン 立て替え 

【ご質問内容】

(亡)父親を主債務者、連帯債務者、息子(相談者)で住宅ローンをくんでおりました。
ローンの支払いは私がずっとしていたのですが、父親名義の通帳に現金で入金しておりました。
私の記載はありません。
今回、遺産分割協議となり、立て替えたお金の返還請求をしたいのですが、どう立証すればよいのでしょうか。
生活費の入金10万ローンの支払い4万を同日入金しております。
年金暮らしの父親には、財産はなく、14万の入金は絶対に無理なのですが。

626



(コマッタ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【貸金の場合、何が問題となるか】
父名義の不動産だが、相談者がそのローンの支払いをしているという事案です。
父親に対する貸金の返還請求をしたいとのことですが、あなたが父親にお金を貸したという点の証明ができるかが問題になります。
あなたから父に銀行送金でされている場合には、金銭の移動は父の通帳の履歴で簡単に証明できます。
この場合は、その送金が返還を前提とした貸付けか、それとも贈与かという点だけが問題になります。
しかし、今回のように父に現金で渡して、父口座に入金され、そこから住宅ローンの引き落としがされているという場合には、その現金の入金は履歴でわかりますが、あなたがその原資を出しているということを他の相続人に納得してもらう必要があります。

【具体的に証明する必要があるのは・・】
他の相続人を納得させるには次のような事情を説明、証明する必要がありそうです。
① 父への現金入金が毎月されていること
 ・・この点は父の預金履歴で証明できるでしょう。
② あなたの口座から、父への入金の前(直前が望ましい)に、父への入金相当額が引き落としされていること
 ・・この点は、あなたの口座の履歴で証明できるでしょう。
③ 父は、住宅ローンの原資に該当するような毎月の収入がないこと
 ・・この点の証明はできるのか、検討が必要です。
④ あなた以外に父に住宅ローンの原資を渡す人はいないこと
 ・・この点もどのように証明するのか、難しいところです。
⑤ 父への金銭の交付は貸金である(返還を前提として渡している)こと
 ・・父が死亡している現在、その点の証明がどの程度できるかも難しい点でしょう。

【他の相続人が納得するかどうか・・】
もし、裁判であれば、前項の①から⑤を証明して、裁判所が納得してくれるように証明していくことが必要です。
今回の案件では、他の相続人が納得するような証拠を出す必要があります。
具体的な事実関係が不明ですが、証明に困難を感じる案件のように思います。
お近くの相続に詳しい弁護士に事実を詳しく説明をし、どのような方策があるかを聞き、交渉の参考にされるといいでしょう。

【連帯債務ということについて】
質問には、あなたが《連帯債務》と記載されています。
もし、あなたが《連帯債務》を負っているのなら、あなた自身が自分の名義で返済できたのではないかという疑問があります。
父が主債務者とあるので、おそらく《連帯保証》の間違いだと思われます。
また、仮に《連帯債務》であったとしたら、不動産名義は共有になっているのではないかという疑問も出てきます。
いずれにせよ、法律問題もありますので、弁護士に早急に相談される必要がありそうです。
大澤龍司法律事務所
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14:10 遺産分割のトラブル | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

遺留分対象のマンション売却について【Q&A №625】

2018/10/22


【質問の要旨】

遺留分減殺請求後の不動産売却

記載内容  遺留分 不動産売却 同意書 


【ご質問内容】

遺留分対象の中古マンション売却についてご質問がありメールしました。宜しくお願い致します。

父が他界し、相続が発生。相続人は先妻の子(4名)と後妻の計5名です。
公正証書遺言があり預金は後妻と先妻の子らで折半、中古マンション(1部屋)は後妻相続(名義は後妻変更済)となっています。

現在、相手方代理人とFAXを使い話し合っています。
マンション売却について相続終了まで売却代金を相手方代理人口座で預かる事を条件にマンション売却に同意しました。
相手方代理人より不動産売却について署名捺印の同意書(売却予定金額2000万円と瑕疵担保責任免責が記載)の提出を求められています。
売却には同意したのですが、同意書の提出は同意したつもりはありません。

相手方代理人は、同意書がないと相続人5名のうちの誰かが途中で売却を中止してくださいと言った場合、買い手から5名に対して損害賠償請求される可能性があるから同意書がないと売却できないと主張しています。
現在、相手方にマンション売却の一時中止をお願いしていますが、相手方はマンションを売却中です。

ご質問

①こちらは相手方作成の同意書を提出しないと損害賠償を請求されるのでしょうか。

②相手方代理人が辞任や解任された時は、売却代金が後妻に行ってしまう可能性が分かったので、売却中止を求めると相手方より損害賠償等の請求をされる事はあるのでしょうか。

625


(雪男)



 ※敬称略とさせていただきます。

【後妻はマンションを単独で売れる】
父の死亡後、遺言書でマンションは後妻の単独名義になっています。
後妻以外の相続人(あなたを含む)は、売却代金を後妻の弁護士が預かることを条件に、後妻がマンションの売却をすることに同意しました。
以上の前提で考えると、後妻としては単独でマンションを売却するについては、何ら法的な障害はありません。
そのため、後妻としては、サッサと単独で契約し、その代金を弁護士が預かり、その後、これを他の相続人に分配するということで問題が解決するということになります。

【なぜ、同意書が必要なのか】
法的には同意書を出す必要はありません。
ただ、売買に関連する仲介業者としては、後妻以外の他の相続人が売買の邪魔をしない保証が欲しいのでしょう。
質問にははっきりとは記載されてはいませんが、おそらく、他の相続人としては遺留分減殺請求権を行使できる(あるいはした)立場にあります。
そのため、業者としては、売買契約締結の途中でそのような権利主張がでてきたら、契約が中途でストップする、そのようなことがないように同意書が欲しいと言ってきたのでしょう。

【法的には原則、同意書を出す必要はない】
あなたが同意書を出さなければならない法的な理由はありません。
ただ、気になるのは、弁護士が売却代金を預かることを条件にマンションの売却をすることに同意したようですが、その際、私なら、合意内容を文書化しておきますし、その中で《後妻以外の相続人は売買に協力する》という内容に加えて《売却に必要な書類の作成に協力する》との一文をいれておきます。
もし、これがあれば、あなたは同意書を作成する義務があります。
以上の前提で買主からあなたへの損害賠償を考えてみると次のような結論になります。
① あなたが、協力義務があるにもかかわらず、同意書を提出しないというのなら、後妻から債務不履行だということで損害賠償ということもありえます。
② もし、相手方弁護士が辞任あるいは解任された場合には、売買代金をその弁護士が預かれなくなった場合なら、代金の確保ができません。
そのため、売却に協力しないことが可能であり、その場合には損害賠償を受けることはないでしょう。
参考までに言えば、買主が損害賠償を請求するのは、売主である後妻に対してであり、あなたに損害賠償を請求することは考えにくいです。

【文書化されていなければ、この際、文書化をする】

今回のような売却代金を預かるという形で遺産を売却する場合に、一番、リスクが高いのは、後妻が代金全部を使うことでしょう。
そのリスクを避けるため、代金を弁護士が預かるということにした、弁護士の信用を担保にしたということでしょう。
ただ、弁護士が預かるということが売買契約を認める前提条件であるとの点は明確に証明できている必要があります。
もし、まだ、文書化されていないのなら、この際、同意書の提出と引き換えに弁護士預かりが条件だと明確に文書化するといいでしょう。

【リスクを回避するなら、処分禁止の仮処分】
次に、その弁護士が信頼できる人でないと将来の分配が心配になります。
仮にその弁護士が信頼できるとしても、後妻がその弁護士を解任した場合、弁護士は後妻に金を引き渡すのではないかという不安は消えません。
現在の業者は同意書を要求しているのでしょうが、そのような同意書なしで売却する業者も多いです。
もし、あなたが、後妻も弁護士も信頼できないというのであれば遺留分減殺を理由として、遺留分の限度で売買できないという内容の裁判(処分禁止の仮処分の申立)をされるといいでしょう。
この裁判が出ると、遺留分の限度であなたの登記が付き、あなたへの支払いが確保できます。
ただ、裁判が出るためにはいろいろな要件がありますので、是非、相続に強い弁護士と相談されるといいでしょう。
大澤龍司法律事務所
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17:47 遺留分 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

死亡保険金を叔母に横取りされた【Q&A №624】

2018/10/18


【質問の要旨】

死亡直前に書き換えられた保険金

記載内容  生命保険 受取人 変更 


【ご質問内容】

今から2年前に母から遺言書作った話は聞いていました。
内容は聞いてませんが、死亡保険金の受取人は私にしてあると聞いていました。
ところが、亡くなる2日前に叔母から呼ばれていくと、公正遺言書を見せられ、これがあなたの分よ。と通帳など
渡されましたが、その中には生命保険の証書がなく、解約したのかな?くらいに思っていましたが、税理士に全体表を見せられたとき、何で叔母に生命保険金が全部行ってるのだろうと、保険会社に問い合わせたところ、一社から亡くなる直前に受取人の変更があったことがわかりました。
受取人変更請求が、あったとされる日は、母は入院中であったため、本人がやったのではないと思います。
叔母に横取りされた保険金は取り戻すことは可能ですか?
出来るならその方法が、知りたいです。

624

(ルル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生命保険金は遺産に含まれない】
今回は母の公正証書遺言があったにもかかわらず、生命保険が財産の中に含まれていなかったということで疑問を感じておられるようです。
しかし、一般に死亡保険金は法律上、遺産には含まれておりませんので、遺言に記載されることはまずありません。
特に今回は公証人が関与している公正証書遺言ですので、仮に母が間違って生命保険を遺言に記載したいと述べたとしても、公証人が訂正するでしょう。
つまり、生命保険が遺言書に載っていないこと自体は特におかしなことではありません。

【入院中でも受取人変更が可能なことがある】
ところが、あなたが税理士から見せられた全体表(おそらくは相続税申告用の遺産目録)には生命保険の記載があり、しかもそのうち一社の保険については受取人が死亡直前に叔母宛に変更されたようです。
この受取人変更の時期に母は入院中だったとのことですので、あなたとしては「母に無断で変更された無効な受取人変更である」と争いたいところでしょう。
しかし、入院には様々な理由がある(意識不明の重体もあれば、意識はしっかりした病気やケガもある)ため、単に入院中だからということで、受取人変更がすべて無効になるとは限りません。
実際の訴訟では、入院先の病院から医療記録や看護記録を取り寄せ、入院の理由や入院時の判断能力や意識状態を細かく検討していくことが必要となります。
その上で、やはり母には生命保険の話を理解し、受取人変更の手続きを取る(=書類にサインをする)ことができない状態であったということをあなたが証明して、初めて、叔母に変更された生命保険の受取人変更が無効であったと認められ、変更前の受取人が(あなたであれば)保険金を取り戻すことができるでしょう。

【療養中や入院中でも手続きを行うことがある】
この点に関し、最近では銀行や保険会社(さらには遺言を作成する公証人)は、本人の意思確認のため、入院先の病院や療養中の自宅に出向いて手続きを行うことがあります。
特に、高齢の方で先行きを心配される状況の場合、周囲の方が手配をして遺言作成や入院費捻出のための預金解約手続きなどを行われることがあります。
そのため、入院中であっても受取人変更の手続きが行われた可能性があります。
あなたとしては、前記の通り受取人変更が行われた前後の医療記録を取り寄せ、その当時の判断能力の有無についての判断を医師などの協力を得て、早急にされるといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
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17:19 遺産分割のトラブル | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

遺留分放棄の請求【Q&A №623】

2018/10/18


【質問の要旨】

遺留分放棄をするべきか

記載内容  遺留分放棄 家業 撤回 


【ご質問内容】

実家が自営業をしています。
長男が家業や家を守っていかないといけないと言う理由で、遺言書には、一切の財産を長男に。そして公正証書として残しておくと言われました。
それと、今のうちに遺留分放棄をしてくれと求められました。(長男は継ぐ事に前向きではありません)
ある程度の金額を提示されたものの、現時点で資産がいくらあるのかをしらされておりませんので、遺留分相当の額なのかも、不明です。
昔から、父はモラハラでハンコ押さないと今後の付き合いや財産は一切お前に与えないようにすると脅されました。
しかも、父と母の二人分の遺留分放棄と言われ、納得がいきません。果たして、両親ともの遺留分の放棄は出来るのですか?
また、遺留分放棄を撤回するのは、難しいと書いてありましたが、家庭裁判所で条件がつけられたり、こちらから長男が必ず家業を継続しているという条件や資産が嘘であった場合など、公正証書に残すとか。
有効な手段はありますか?
このままでは、親子関係、兄弟関係が悪くなってしまいます。

623


(トオル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【相続開始前の遺留分の放棄は可能です】
生前の相続分の放棄とは相続が開始する前に、あらかじめ遺留分を請求しないということを認めてもらう手続きです。
生前の相続分の放棄はできませんが、遺留分放棄は可能です。    
自営業の資産が細分化されるのを防ぐなど、相続財産の多くを後継者に残す必要性があるため、このような制度が認められていますが、被相続人やその他の人の不当な圧力で加わるような事態も想定されるため、相続開始前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。
裁判所の許可なく、生前に遺留分放棄をした場合、たとえそれが文書などで証明できるようなものであっても、放棄の効力は一切ありません。

【裁判所は、不当な強制を受けていないかを確認する】
生前の遺留分放棄をするには、遺留分を放棄する者が、家庭裁判所に対して、遺留分放棄の許可申立てをすることになります。
遺留分放棄の許可申立を受けた裁判所は、放棄の申立が、被相続人や他の相続人から不当な強制を受けてなされたものでないかという点を審査します。
具体的に言えば、裁判所は、遺留分放棄をする合理的な理由や必要性があるのか、また放棄の申し立てをした人がすでに十分な財産をもらっているのか等が判断材料になります。
許可が出た後は、遺留分を請求することはできません。
但し、法律上は撤回が可能です。

【参考条文:家事事件手続法】
第七十八条 家庭裁判所は、審判をした後、その審判を不当と認めるときは、次に掲げる審判を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。
 一 申立てによってのみ審判をすべき場合において申立てを却下した審判
 二 即時抗告をすることができる審判
2 審判が確定した日から五年を経過したときは、家庭裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその審判を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の取消し又は変更をする場合には、その審判における当事者及びその他の審判を受ける者の陳述を聴かなければならない。
4 第一項の規定による取消し又は変更の審判に対しては、取消し後又は変更後の審判が原審判であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。


しかし、裁判所の立場から言えば、一旦、決定を出した以上、簡単には生前の遺留分放棄の許可を撤回しません。
撤回のためには、放棄した人が、生前の放棄の許可を撤回するだけの事情の変化があったことを説明し、かつ証明する必要があります。
遺留分放棄の判断の前提になっていた事情が変更になり、遺留分放棄の状態を維持することが客観的に見て不合理・不相当になれば、裁判所が職権で放棄許可審判を取り消すことができることになっています。
そのため、仮に放棄の申立をする倍、その前提としてどれほど財産の開示を受けていたのか、わかる資料を裁判所にも提出し、また、自分自身も保存しておく必要があります。
いずれにせよ、遺留分放棄も許可が出た後はそれを撤回するかどうかは裁判所の判断ということになり、前もって合意をしていたからといって認められるわけではありません。
家族関係のこともあるようですので、法律的なことだけで結論を出すことはできませんが、可能であれば、生前の遺留分の放棄はできるだけしない方がいいでしょう。

【納得してから遺留分放棄の許可申立をすべき】
現段階では、あなたは、資産もわからないままに対価を示され、放棄を一方的に求められているようです。
ただ、上記に述べたとおり、一度遺留分放棄の判断をしてしまうと、それを取り消すためには、事情が変更になったとして裁判所の判断が必要になり、簡単ではありません。
そのため、遺留分放棄をする前に、資産の内容の開示を受けた上で、長男が家業を継ぐために、対価をもらって遺留分放棄をすることが妥当かを検討し、納得できる内容であれば、遺留分放棄の許可申立てをするということにすべきです。
なお、申し立てに際して、父と母の分は別々に申し立てる必要がありますが、別々に申し立てれば、双方について遺留分放棄をすることは可能です。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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土地の売買【Q&A №622】

2018/10/16


【質問の要旨】

売却した実家不動産の代金は誰が受け取るか

記載内容  実家 不動産 

【ご質問内容】

先日父が亡くなり、亡くなる前に不動産屋さんと、土地の売買を進めていました。
これは、母も兄姉も承知していたことで、父が亡くなり手続きが一時ストップしてきましたが、兄が不動産屋さんに相手が家を建てたいので手続きを進めて欲しいとの事に。
そこも問題ないのですが、売却のお金を、兄は自分の口座を新しく作ってそこに取り敢えず入金して貰い、後で皆に分割すると言ってます。
遺産相続の一環で行うから問題ないと言いますが、この場合、兄はそのお金を相続した扱いになり、分割したら兄からの贈与になる気がします。
この場合、その売却金はどのように扱うのが正確ですか?
土地売却は進めてあげたいのですが…

622


(ハル)



 ※敬称略とさせていただきます。

【相続した財産の売却方法】
相続した財産を売却して、経費を差し引いた代金を相続人に分割することは、よくある話です。
その際、売買の方法として、次の2つの方法が考えられます。
それぞれについて、税金面と代金の支払い確保の面からプラスとマイナスを記載しておきますので、ご参照ください。

【お兄さんの単独名義にする方法】
相続人が多数いる場合、売買手続きを簡単にするために、お兄さんの単独名義にすることがあります。
この場合は、遺産分割協議書で兄が売買物件を単独で相続取得すると記載する必要があります。
兄が単独取得したことから、他の相続人は不動産からの取り分がなくなるので、その兄に単独取得させた代償として、金銭をもらうということをはっきりと記載しておく必要があります。
これをしないで、兄の単独名義にして、その後、売買代金の一部をもらった場合、税務署から贈与ではないかという疑惑を持たれかねません。
是非、《代償金》としてもらうのだという点を明記しておくことを忘れないようにしてください。
なお、この兄単独名義にする点は、売り主が兄一人になりますので、売買の手続きがスムーズにいくという利点があります。
しかし、兄が売買代金全額を受け取りますので、もし、兄がサラ金の借金がある、あるいは他に信頼できないような点があれば、お金が兄のところで消えてしまい、あなたにはまわらないというリスクがあります。

【3人が売り主になって、売却する方法】
代金の支払いの確保という点から言えば、相続人全員が売り主になるという方法もあります。
この場合、契約書には相続人全員が署名・捺印をし、また売買代金受領の場合には原則として、全員が立ち会うことになります。
私(弁護士大澤)が父からの遺産の不動産を売買した場合には、手続きは姉に売買の交渉をしてもらいましたが、決済のときには相続人全員が立ち会い、その場で経費を除いた売買代金全額を受け取りました。
別に姉を疑っていたわけではありませんが、皆がそれを希望したので、そのような形にしました。
売却代金の支払い確保にはこれが一番良いやり方ですが、反面、全員が売買の当事者になるので、手続きが面倒になるという欠点があります。

【どちらを選ぶかは兄が信頼できる人かどうかで決める】
結局、兄が信頼できるのであれば、兄の単独名義にし、兄から代償金として売却代金の一部をもらうというのが、手続きがスムーズでよい方法でしょう。
支払いで、若干でも不安があるのなら、法定相続人全員で売却するという、手続き的には煩雑な方法を採用するということになります。
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特別受益の件!【Q&A №621】

2018/10/02


【質問の要旨】

息子の消費者金融への支払いは特別受益になるか

記載内容  消費者金融 特別受益 贈与

【ご質問内容】

大沢先生宜しくお願い申し上げます。
もう20年以上前になりますが、息子が消費者金融で問題をおこし、当時の弁護士さんに200万円以上の費用をお支払して問題を解決して頂きました。
勿論息子に私への返済はさせておりません。
したがって遺留分の計算などで、この場合特別受益として認めてもらえる可能性はありますでしょうか。
大沢先生お忙しいところ大変恐縮ですが宜しくお願い申しあげます。

621


(トラちゃん)





20年前に息子の消費者金融の支払いをしたということであれば、特別受益になる可能性があります。
このようなケースで何が問題になるかを整理してみました。

【支払った人の相続でのみ特別受益になる】
まず、息子の消費者金融の借金を支払ったということですが、そのお金を誰が支払ったのかを確認しておく必要があります。
もし、《あなたが支払った》のであれば、《あなたの遺産分割の際》に特別受益として扱われます。
しかし、あなたの配偶者の相続の場合にはなんら特別受益にはなりません。
あくまで支払った人が死亡した場合、その人の相続でのみ、特別受益になるだけですので、ご注意ください。

【特別受益は贈与の場合で、貸金なら別途の扱いとなる】
特別受益は生前に《贈与》したという場合の問題です。
そのため、息子から《返還を予定していない》ということが前提になります。
もし、返還してもらう気持ちで、何回も請求した、あるいは借用書を差し入れてもらったというのなら、それは《貸金》になります。
貸金であれば、その返還請求権は原則10年で消滅時効にかかり、消滅します。
特別受益の場合は、20年や30年前であろうと、消滅時効にはかからず、特別受益として扱われます。

【贈与を証明できる必要がある】
質問のような20年も前の特別受益の場合、一番大きな問題点は、贈与したことが、果たして証明できるのかという点です。
支払った人がまだ生きている時には、息子は《支払ってもらったことはない》とまで主張することはないでしょう。
しかし、特別受益が問題となるのは、支払った人が死亡したときです。
そのとき《支払ってもらったという事実はない。もし、あるというなら証明してくれ》と言い出す可能性が高いです。
そのため、弁護士費用としていくら支払ったのか、また、消費者金融にどれだけ送金したのかを証明する書類があれば、大事に保存しておく必要があります。
また、仮に弁護士費用の領収書などがあったとしても、それは弁護士費用などが支払いされたという事実を証明するだけで、それをあなたが出したということを証明するものではありません。
なぜなら、弁護士の領収書は依頼者は息子ですので、息子宛に出しますし、送金も息子名義で送金されている可能性が高いはずです。
そのため、将来、特別受益が問題になった際、息子は《私が弁護士費用を支払った、私が送金したのだ》という可能性が高いです。

【今、できることとしては・・】
そのため、あなたがそのお金を出したというのであれば、その事実をあなたが元気なうちにはっきりさせておく必要があります。
息子に贈与を受けましたという書面を書かせることができればいいでしょうが、今更、そういうことも難しいかもしれません。
弁護士費用や送金の領収書などがあるなら整理して、特別受益を主張しようとする人に、生前に渡しておく必要があります。
次に息子との話の中で、消費者金融の債務整理をあなたのお金で支払いされたということを認める発言をさせるように持っていき、その会話などをICレコーダーやビデオ等で残しておき、これも特別受益を主張したい人に渡しておく必要があるでしょう。
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17:19 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄後の分譲マンションの管理費【Q&A №620】

2018/10/02


【質問の要旨】

相続放棄したマンションの管理費も支払義務があるか

記載内容  不動産 相続財産管理人 管理責任

【ご質問内容】

夫が死亡し、親族全員相続放棄しました。
マンションの管理会社が弁護士を通じて 夫の死後から現在までの マンション管理費、修繕費(150万ほど)を支払って欲しいと連絡がありました。
応じない場合は 訴訟を起こすとのことです。

この場合、私たちは支払わなければいけないのでしょうか?
相続財産管理人は私たちが申立てするのでしょうか?

620


(きらり)





【全員が相続放棄した場合は最後の相続人が責任を負う】
相続人は不動産などの相続財産の管理責任を負いますが、法定の申述手続を行い相続放棄した場合、次順位の相続人が管理を開始した段階で管理責任を引き継ぎ、前順位の相続人は責任を免れます。
もっとも、最後に相続放棄した相続人は、相続放棄後も責任を免れることができません。

(民法940条)
1.相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。(後略)


相続放棄すれば全ての責任を免れると思っておられる方は多いのですが、不動産など管理を要する財産をお持ちの場合、相続放棄後も管理責任が続きますので要注意です。
※注:本件のような全員が相続放棄をした場合に、管理責任を負うのは最後の相続人であるかどうかについては、当事務所内で異なる意見があります。

【管理責任を免れるには管理人選任の必要がある】では、最後に相続放棄をした相続人はどうすれば管理責任を免れるのでしょうか。
実際には、家庭裁判所に相続財産管理人を選任する申立をすることで、管理責任を免れることができますので、この方針を弁護士など専門家に相談することが必要となります。
しかし、大阪の場合であれば裁判所に90万円~100万円程度の費用を申立時に予納する必要がある(弁護士費用は別途必要)ため、非常にコストがかかります。
また、遺産である預金などからこの予納金や弁護士費用を安易に支出したりすると、遺産を処分したということで相続放棄が認められなくなる(民法921条1号 法定単純承認)可能性もあるため、あまりお勧めできません。

(民法921条1号)
第921条次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。


【今回はマンション管理組合と調整すべき】
では、相続放棄をしたあなたとして取るべき方針は何でしょうか?
少し見方を変えれば、あなたと同様に困っているのはむしろマンションの管理費を請求する管理組合側です。管理組合の側も、不動産を換価処分して費用を回収するため相続財産管理人選任の準備を進めている可能性があります。そのため、費用のかかる管理人の選任手続については管理組合と相談し、費用負担などについて調整してから検討されてもよいでしょう。
この点も専門的な知見を元にした方針の立案と交渉が必要ですので、相続案件や相続放棄に詳しい弁護士などに相談されるのがよいでしょう。
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17:13 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

親族相盗例における相続放棄【Q&A №616】

2018/08/30


【質問の要旨】

横領した父の相続放棄

記載内容  横領 法人 損害賠償

【ご質問内容】

先日、叔父が経営する企業(株式会社)で働く父が、会社のお金を横領した後、お金を使わずにそのまま病気で亡くなりました。
生前の父の行いを考慮し、私は相続放棄をする予定です。
父は過去に離婚しており、相続人候補は叔父のみですが、その叔父も相続放棄をしようと考えている所です。
このようなケースにおいて、叔父は横領分のお金を父の銀行口座から取り戻すことができるのでしょうか。
一見すると、叔父が相続放棄を選んだ時点で、父の横領分のお金も放棄しなければならないように思いますが、
そのお金を本来受け取る権利を有するのは叔父の会社ですので、叔父にとってあまりにも酷ではないかと思い、
実際どのように考えるべきなのかをご教示頂きたく質問させて頂きました。

616

(マサムネ)





【損害賠償請求権は会社が有する権利】
まず、お話を整理しますと、あなたの父は会社(法人)のお金を横領したまま死亡されたということですので、あなたの父に対して損害賠償請求を行い、横領されたお金を取り戻す権利を有しているのは会社(法人)です。叔父(個人)ではありません。
ここは区別が難しいのですが、被害者は会社(法人)であることをまずご認識下さい。

【横領の責任は現在、叔父が引き継いでいる】
他方で、本来なら横領の損害賠償責任は相続人であるあなたが相続します。
ただ、今回はあなたが相続放棄をされるようですので、その場合、残された唯一の相続人である叔父があなたの父を相続します。
その結果、叔父(個人)が会社(法人)に対する損害賠償責任も相続する、という状態になります。
元々叔父(個人)は被害者の立場ですので少し変な状況になりますが、法律上はこのような状態になります。

【叔父は相続人として預金の払い戻しができる】
この状況下であれば、叔父(個人)はあなたの父の相続人として、銀行に対し預金の解約・払戻などの相続手続を取ることができます。もちろん、あなたの父の横領の責任として、会社(法人)にお金を返すこともできます。
元々は被害者の立場であった会社の代表者である叔父が責任を取る、というのは非常におかしな話ですが、実際上、横領されたお金を取り戻すにはこれがもっとも簡易な方法と思われます。
(厳密には、あなたの父がほかの借金をしていた可能性も考えられますので、ほかに負債がないことを確認ができるまで預金に手を付けない方がよいでしょう。)

【叔父も相続放棄した場合は相続財産管理人の選任】
他方で、この状況から叔父も相続放棄した場合、相続人は不在の状況になります。
その場合、誰もあなたの父の相続預金を解約することができないため、叔父の会社(法人)は、横領されたお金の回収ができません。
この状況であなたの父から横領のお金を返してもらうには、会社から家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てをし、選任された相続財産管理人に対する交渉や裁判を行っていく必要が出てきます。ところが、これには裁判を行う手間はもちろん、一般に90万円前後の予納金を裁判所に納めて選任申し立てをすることになるため、非常に負担が大きく、あまりお勧めできません。
そのため、(ほかの負債の有無にもよりますが)叔父が相続放棄するべきかどうかは慎重な判断が必要でしょう。

(弁護士北野英彦)
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13:17 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

「来てよかった。」そう感じていただける法律事務所です。

2018/07/17

1.納得のいく回答をします。

法律相談では、依頼者から事実を正確に聞き、弁護士が解決案を考え、わかりやすく説明します。

そのため、当事務所では、法律相談には、原則として2名以上の弁護士が入ります。

又、わかりやすく説明するために、ホワイトボードや大きなディスプレイを設置しています。

何が問題点で何をしたらいいか納得して帰っていただけるよう、全力でご説明します。

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2.相続が得意な事務所です。

当事務所は相続事件が得意です。

所長の大澤は裁判所から依頼されて破産した大規模会社の財産整理を担当してきました。

その中で隠された財産を見つけ出すノウハウを獲得してきました。

そのノウハウを活かし、生前に隠匿された預金や財産の発見を得意としています。

もちろん、他の事件でも調査能力を活かして成果を上げています。

 

3.親しみやすい事務所です。

所長の大澤は大阪の住吉生まれ、庶民の出身で、大阪弁でしゃべります。

下町の良さに若干の上品さを加えた雰囲気の事務所です。

相談を終えられた依頼者の方に、《本当に来てよかった、この事務所、好きやわ!》と言っていただくのが、弁護士として本当にうれしい瞬間です。


(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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遺産の対象と遺留分について【Q&A №612】

2018/07/13


【質問の要旨】

全遺産を遺贈する遺言があるが、遺留分はどうなるのか

記載内容  全遺産 遺贈 生命保険

【ご質問内容】

母が亡くなりました。父はすでに他界しているため、相続人は弟と私(姉)の二人です。

母は身体が不自由だったため、25年私が身の回りの世話をし、その後5年前に弟が母を引き取りました。(弟とは訳あって絶縁状態です)

母の死後、半年経っても相続についての連絡がないので、問い合わせると、公証役場で作成したすべての財産と権利を弟に相続させる、という内容の遺言書コピーが送られてきました。

また遺言執行者を弟に指名しているため、母の財産の一部を残し、すでに口座名義等を弟のものへ変更しておりました。

遺留分減殺請求を考えております。
下記は遺産の対象となるのでしょうか?

① 弟家族への生前贈与
  弟、妻、子、孫2(幼児)5人それぞれ×100万×5年間=2500万

② 一時払い生命保険の掛け金1000万
  契約者、被保険者、受取人すべて弟 
  弟から上記は遺産の範囲に含めないと主張されているのですが、納得できません。
  また、遺言書作成後の上記贈与の場合、遺留分侵害を分かっていた生前贈与と考えられないでしょうか。

612

(はな)




【遺留分減殺請求ができます】

今回のように遺言で、遺産が他の相続人(弟)に全部いくような場合には、遺産をもらえない相続人(あなた)は遺留分減殺請求をすることができます。
法定相続人が子2人なら、減殺請求で遺産の4分の1をもらえます。

【すべての生前贈与が遺産になるわけではない】

問題は、遺留分計算の前提となる遺産の範囲です。
法律では、すべての生前贈与が遺産になるとはされていません。
遺留分の計算上、遺産に組み入れられるのは次の2つの場合です。
①相続開始前の1年間になされた贈与
②1年を超える前の贈与であっても遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされたもの

【特別受益は1年以上前でも遺産に入る】
ただ、法律には記載されていませんが、裁判所は共同相続人の特別受益になるような生前贈与については、相続開始時から1年を超える生前贈与でも遺産に入るとしています(最高裁平成10年3月24日判決)。
その結果、母の遺産の共同相続人の立場にある弟への生前贈与は、1年を超える分でも遺産に組み入れられます。

【共同相続人以外の者に対する贈与は原則、遺産に入らないが・・】

弟の妻、その子や孫は、共同相続人という立場ではありません。
そのため、このような立場の者に対する生前贈与は相続開始の前、1年間のみに限って、遺留分の基礎財産には組み入れることができます。
ただ、特別受益に関する判例には、《実質上、相続人(弟)にしたと同視できる生前贈与は特別受益になる》としたものがあります(【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

そのため、弟の妻らに対する生前贈与が実質上、弟に対してしたものと同視できるとすれば、生前贈与の時期を問わず、遺産に組み入れすることができるという結論になります。
実質上という判断は諸般の事情を考慮してなされるものであり、簡単には言えませんが、弟とその家族にのみ生前贈与をしており、各人への贈与額が贈与税の基礎控除以内の同額であるというのであれば、実質上、弟に対する500万円の生前贈与を、贈与税を免れるために分割したにすぎないと考えることも可能かもしれません。
ただ、遺留分の分野は相続でも最も難しいところであり、かつ、特別受益であるかどうかが大きな論点になるケースです。
相続に詳しい弁護士に詳しい事情を説明した上で、その見解をお聞きするのがいいと思います。

【一時払い生命保険の掛け金の扱い】
被相続人が契約した生命保険については、その受取人が共同相続人の一人であっても遺産にはなりません(Q&A №298)。
ただ、今回は、弟が契約者であり、被保険者でかつ受取人であるなら、弟は本来自分が支払うべき1000万円の掛け金を母に支払ってもらったのであり、その全額が生前贈与になり、かつ特別受益に該当すると考えられ、遺留分減殺の対象になります。
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「預金を使い込まれてしまった。」そんな問題に特化した弁護士がいます。

2018/07/03
  •  
  •  
【当事務所は遺産調査・発見を得意としています】

 当事務所の弁護士大澤龍司は、裁判所から依頼されて破産管財人として多くの会社の財産整理をしてきました。

その中で破産した会社が隠した財産をどのように発見するかというノウハウを取得しました。

このノウハウを相続事件に応用して、現在、遺産調査に活用しています。

当事務所の遺産調査の特色は次のようにまとめることができます。

① 徹底した証拠集め

金融機関にどのような照会をするのか、その際、どの程度まで必要資料が出てくるのか、多くの経験と実績を積んできました。

その経験を遺産調査に活かして、取れる証拠はできるだけ取るという徹底的証拠集めをしています。

② パソコンなどを利用した詳細な分析

金融機関などから取引履歴を取り寄せしたところ、膨大なデータのため、どのように処理し、何を読み取っていくのがわからない人も多いのではないでしょうか。

当事務所では、パソコンを利用したデータ処理を行い、グラフ化して問題点を発見するなど、詳細な分析が得意です。

③ 弁護士や事務スタッフなどの多面的な検討

集められたデータから何を読み取るのか、弁護士だけで判断するのではなく、スタッフの見方も考慮に入れ、多面的な検討をして、隠された問題点の発見に努めています。


【当事務所の相続財産調査の実績】
 当事務所で扱った相続財産調査のケースで、どの程度の財産が判明・発見できたのかを一覧表にまとめてみました。
 事案がそれぞれ異なるために、新たに発見できた遺産の金額が億を超すものから、ほとんど新しい遺産が発見できず数万円であったものまであります。
 調査にかかった期間も記載しています。

  20130606160004223.png 
 

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不正な預金引き出しと疑われたくない【Q&A №567】

2018/06/29


【質問の要旨】

頼まれた出金が不正出金と疑われないか

記載内容  不正出金 証拠

【ご質問内容】

私の祖母は介護が必要で施設でお世話になっています。

去年に祖母の娘(私の叔母)が、「息子が結婚する」と祖母のところへ報告にきたそうです。
祖母は孫に結婚祝いを渡すから10万円を自分の口座からおろして持ってきてほしいと母に頼みました。

祖母の子供は長女(叔母)と長男(私の父)ですが(祖父は他界)、叔母はアルコール依存症で私たち家族に暴言を吐くようになり仲が悪くなって祖母以外の私の家族とは音信不通です。

母は言う通りに10万円を祖母の口座からおろし普通の封筒に入れ祖母のところへ持って行き、叔母も後日その10万円を受け取りに来たそうです。

しかしその後も結婚はしていないみたいで、(その話を出すと叔母は言葉を濁すそうで)婚約破棄になったか騙しとった可能性が出てきました

祖母は足が不自由な位で病気もなく頭もハッキリしていますが、もし亡くなって相続の話になった時にこの10万円が不正出金になるのではと心配になりました。

言われた通り口座から引き出したのは私の母ですが、叔母が「そんなお金貰っていない、不正な出金だ」と言われたら証拠がありません。

これは祖母の口座を管理している私の家族の不正出金になるのでしょうか。宜しくお願い致します。

(けり)





【厳密には祖母の同意がありますが】

 今回は、お祖母さんの同意を得て出金したのですから、(外形上はともかく)厳密には不正出金ではありません。そのお金をお母さんが利得したわけでもありませんので、後日責任追及を受ける理由はありません。

 しかし、そのような話はお祖母さんが亡くなった後は誰も分かりませんので、叔母さんが「10万円が消えている。誰かが不正出金した」と騒ぐ可能性もないわけではありません。

【経過を書面化するなど記録しましょう】

 幸いなことに、お祖母さんはまだご存命で判断能力も十分なようです。それであれば、10万円の出金経過(叔母さんの息子さんの結婚祝いのため出金を依頼したこと、叔母さんを通じて息子さんに渡したこと等)を書面化しておき、お祖母さんにこれを承認する旨のサインや印鑑をもらっておけば、不正出金でないことの証拠になります

 (叔母さんが騙したかどうかは別問題として)少なくともこの書面を作成しておくことで、お母さんの不正出金だと言われることは防ぐことができるでしょう。

【出金の証拠は残るが、支払いの証拠は残らない】

 お祖母さんの指示に従い、お母さんがお祖母さん名義の口座から10万円を出金したという事案ですと、払戻伝票はお母さんが書かれていたことになります。

 また、口座名義人ではないお母さんが出金するのですから、金融機関はお祖母さんのお母さんを代理人とするという内容の委任状も取っているはずです。

 金融機関はこれらの出金関係の書類を残しています

 お祖母さんの死亡後であれば、その法定相続人がこれらの出金関係の書類の取り寄せが可能です。
要するに出金した証拠は残るということです。

 一方で、出金したお金を、お母さんが叔母さんの息子に渡したという点については、結婚祝いで渡したのですから、領収書などは出してもらえないでしょう。
 そのため、出金したお金の使途を裏付ける書類はないということになります。

【死亡後に出金分の使途が問題になると・・】

 お祖母さんがなくなり、叔母さんがこの10万円の出金を問題にすることを想定すると、その際、お母さんは困った立場になります。

 10万円をお母さんが出金したことは金融機関に残っている払戻伝票等の書類で証明できますが、その出金した10万円を叔母さんの息子に支払ったことは証明できないからです。
 叔母さんが10万円を問題にする場合、その息子が自らもらったと言うことも考えにくいでしょう。

 又、結婚祝いとして渡したと言っても、その結婚自体がなかったというのですから、ますますお母さんの立場は不利になります。

【証明方法としては書面を作る、録音をするという方法がある】

 お祖母さんが存命なら、出金の依頼《叔母さんの息子さんが結婚するという話を聞いたので、10万円を出金することをお母さんに依頼し、お祖母さん自身が叔母さんにその10万円を渡したこと》を書いてもらうといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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12:10 遺産分割のトラブル | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

土地を相続 相手企業が地代を法務局供託【Q&A №611】

2018/06/26
【質問の要旨】

相続した土地の地代を供託されたが、供託金を受け取るには?

記載内容  地代 供託 承諾


【ご質問内容】

土地を相続したのですが、兄弟2人で話し合いがつかず、土地の相続ができません。
すると、土地を借りている相手企業が兄弟どちらに地代をしはらっていいのかわからない、といって法務局に供託しました。

1、この場合、供託金を法務局からうけとるには どうすればいいのでしょうか?
全額もらえますか?
もらうとき、兄弟の承諾書は必要ですか?
相続争いのため、兄の承諾はもらえそうにないです。
このままだと、誰も地代をもらえず、ということになるのでしょうか?

2、もらえない場合は、相続分に応じて請求できますか?
土地は父親(死亡)の名義になっていて、最近母親が死亡して、
その母親の遺言書(家裁検認済み)でわたしが全部母親の財産を相続することになったのですが、
この場合、母の法定相続分2分の1、と私の相続分4分の1、あわせて4分の3受け取れるとおもうのですが、
法務局には、母の遺言書とかも一緒にもっていかなくてはならないのでしょうか?
他に持っていく書類はありますか?

611

(オリエンタル)



 ※敬称略とさせていただきます

【賃料は遺産とは別物です】
遺産分割前の賃貸不動産で発生する賃料については、平成19年の最高裁の判決(最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決・民集59巻7号1931頁)で
①賃料は遺産とは別物である
②賃料は各法定相続人が各々の法定相続分に応じて取得する。
と判断されています。
そこで、遺産分割ができていない場合、各法定相続人がそれぞれの法定相続分に相当する賃料を取得する権利があるということになります。

【供託金を還付してもらうために必要な書類】
今回、借主が地代の支払先に困り、賃料を供託したということですが、この供託金についても、あなたの相続分に相当する額について、還付を受けることが可能です(なお、同様の事案において、供託金のうち法定相続分の還付を受けることができると判断した裁判例として、【相続判例散策】供託された株式の配当金、自分の相続分だけ受け取れるか?名古屋高判平成23年5月27日(平成23年(行コ)11号)参照)。

ただ、供託金を還付してもらうには、ご自身が当該土地の相続人である(つまり、当該土地の所有者の一人である)こと及びその相続分がどれだけかということがわかる資料が必要です。
あなたの場合、お父さんが先に亡くなり、次にお母さんが亡くなってお母さんについては遺言書があるというのであれば、具体的には、
①供託物払渡請求書(供託所にも置いてありますし、法務省のホームページにもあります)
②実印と印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)
③戸籍・除籍謄本、遺言書等相続人であることと相続分のわかる書類
が必要になると思われます。
ただ、念のため、法務局に行かれる前に、具体的事情を説明した上で、必要書類を確認されるとよいと思います。

【供託金の全額を還付してもらうには承諾書が必要】
前記のとおり、あなたの相続分のみを受け取るには、必要書類をもって法務局で申請すればよいです。
ただ、全額の還付にはお兄さんの承諾書が必要です。
お兄さんから承諾書がもらえそうにないのであれば、全額の還付を受けるのは難しいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
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【相続判例散策】供託された株式の配当金、自分の相続分だけ受け取れるか?名古屋高判平成23年5月27日(平成23年(行コ)11号)

2018/06/26
供託された株式の配当金、自分の相続分だけ受け取れるか?

名古屋高判平成23年5月27日(平成23年(行コ)11号)

【ケース】

被相続人が所有していた株式に関し発生した配当金等につき、債権者不確知(債権者が確定せず、誰に支払ってよいのかわからないこと)を理由に供託された。
この供託金について、一部の相続人が各相続分に応じて供託金の払渡請求(還付請求)をした。
その理由は、配当金債権等は分割債権であり、相続人は自己の相続分に応じてその権利を確定的に取得しているかというものである。
これに対して、法務局はこの払渡請求を却下した。
払渡請求を拒否された相続人が法務局の扱いに不服申立てし、その取消しを求めた。

【裁判所の判断の概略】

相続人が数人あるときは、遺産は、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するから、遺産である株式も共同相続人が(準)共有することになる。
しかし、相続開始後に発生した株式配当金は、遺産である株式から派生しているが、それとは別個の具体化した財産である。
この配当金請求権は、金銭債権であり、各共同相続人が、その相続分に応じて分割債権として確定的に取得する(平成16年(受)第1222号同17年9月8日第一小法廷判決・民集59巻7号1931頁〔以下「平成17年判決」という。〕参照)ものであるから、法務局は支払い請求を認めなければならない。

【弁護士のコメント】

被相続人が所有していた株式は遺産であり、遺産分割の対象になります。
相続発生後にも、当然、株式の配当がなされます。
当該株式や不動産を誰が相続するか、遺産分割協議等によって確定していればその人に配当金を支払いすればいいのですが、相続する者が確定していない場合、配当金や賃料を支払う側としては、誰に支払えばよいのかわからない状況になり、法務局に供託するということがあります。
(同様のことは、賃貸不動産の賃料についても生じます)。
このような株式配当金について、遺産分割ができる前の段階で、各相続人がその相続分に応じた配当金を受け取れるのかどうかが問題になります。
今回、紹介した裁判例は、供託された配当金のうち、自らの相続分に相当する金額を請求したところ、法務局がこれを拒否したという事例ですが、裁判所は法務局の扱いは間違いであり、請求を認めるべきであるとの判断をしました。
なお、参考までに言えば、遺産中の賃貸不動産の賃料の扱いについても同様の問題が発生します。

※賃料に関する参考判例:
不動産自体は遺産ですが、それが賃貸されている場合に発生する賃料については同様の問題が発生します。
結論を簡単に言えば、株式配当金と同じく、賃貸不動産の賃料も独自の具体化した金銭債権であり、各相続人がその相続分に応じて請求ができるということになります(参考判例:最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決・民集59巻7号1931頁)。

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代襲相続人謝礼金相場について【Q&A №610】

2018/06/12


【質問の要旨】

遺産を相続しない承諾料(ハンコ代)の相場

記載内容  ハンコ代 承諾料 放棄


【ご質問内容】

父方の叔父が亡くなり、叔父の書いた遺言書により叔母が家、土地、預貯金、生命保険、を相続する事になりました。
司法書士事務所より父が他界しているため遺産分割協議書が送られてきて、印鑑証明書とともに実印を押して、送り返して欲しいとの事でした。
私の方には貰える現金は無く、謝礼として、商品券5千円が同封されていました。
謝礼金の相場としては適正なのでしょうか。
ちなみに私には叔母がいくら相続するのかは知らされていません。

610

(みーちゃん)



 ※敬称略とさせていただきます

【兄弟には遺留分がないが、念のために遺言書の確認が必要】
配偶者や子のいない叔父が死亡したのであれば、叔父の兄弟である、あなたの父が相続人になります。
父が死亡しているのであれば、父の子(すなわちあなた)が代襲で相続人になり、叔父の遺産をもらうことができます。
ただ、叔父が遺言書を書いており、その内容が他の人に遺産を全部相続させるという内容であれば、あなたには遺産が来ることはありません。
これは兄弟には遺留分が認められない(民法第1028条、【コラム】遺留分とは)からです。
今回の質問の場合、遺言書に問題がないのであれば、あなたの同意や印鑑なしで登記ができるはずです。
にもかかわらず、あなたの印鑑が必要だというのはどうしてでしょうかという疑念があります。
そのため、遺言書が本当に叔父の意思に基づくものか、あるいは遺言書作成人時に叔父に意思能力があったかどうかは念のために確認しておくといいでしょう。
なお、公正証書遺言であれば、原則として遺言書としての有効性については問題がないと思われますが、その場合でも遺言書の内容を確認しておく必要があるでしょう。

【承諾料の基準はこんな事情を考慮して決定する】
承諾料というのは、不動産登記をする場合や不動産からの立ち退きをするような場合に、登記をしたい人や立ち退きをさせたい人が出す金銭のことであり、登記などのときにはハンコ代ということもあります。
ハンコ代がどの程度が妥当かは、ケースにより異なります。
例えば借地権譲渡の場合のように借地権価格の10%程度という、ある程度の基準が決まっていることもありますが、多くの場合には金額が決まっていないと言っていいでしょう。
ただ、次のような点を考慮されることが多いので、金額決定の際に参考にされるといいでしょう。
① あなたの側に何らかの権利があるのか、ないのか。
もし、権利があるのなら、その権利を金銭的に換算した金額が承諾料になるでしょう。
冒頭に遺言書が有効かどうかを確認しなさいと言ったのはこのような観点からです。
② 手続きの手間を省くための承諾料なら、その手間を省くことにより得る相手方の利益
  相手方に権利があるとしても、その権利を実現するためにはあなたの印鑑が必要なケースがあります。
 例えば、遺言書があっても自筆の場合には、金融機関によっては、相続人全員の同意が必要というところもあります。
そのような場合、相手方としては、あなたの印鑑がとれない場合、裁判をせざるをえません。
裁判すれば時間や手間もかかり、又、弁護士(費用)も必要でしょう。
その手間や費用等を省くためにどの程度を出すべきかを考えることになります。
③ 相手方との人間関係も考慮要素である。
あなたと相手方とがどのような人間関係にあるかも承諾料に影響します。
いつもお世話になっている人なら、相手方の申し出た金額に反論はむずかしいかもしれません。
反面、そのような関係にない場合には、前記①及び②も効力入れた金額を請求してもいいということになります。

【今回の商品券は妥当か】
以下は私(弁護士大澤龍司)の私見ですが、参考にされるといいでしょう。
あなたに何らの権利がないとした場合、
① 遺産総額が10万円程度なら、今回の承諾料が商品券5000円でもやむを得ないとは思います。
② 遺産総額が100万円ということなら3~5万円という程度。
③ 遺産総額が1000万円ということなら30~50万円程度。
以上はあくまで長年の経験からくるものであり、これらの金額を基準にして具体的な事情で増減していくというのが私のやり方です。
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自筆証書遺言は、絶対に遂行されるのですか【Q&A №608】

2018/05/11


【質問の要旨】

遺言があり、養育費の未払いがある場合は取り分はどうなる?

記載内容  養育費 遺言 遺留分


【ご質問内容】

父が亡くなり、遺言書が出てきました。
両親が離婚したので、私は生後3か月で母に引き取られました。
離婚の原因は、父と後妻の不倫です。
母は、慰謝料も請求した養育費も支払われず、仕方なく泣き寝入りしました。
父は、私が成人するまで一度たりとも養育費を支払わず、逃げ得したことになります。
そんな父が亡くなり、遺言書に後妻の長男に全ての遺産を譲渡すると書かれた遺言書が出てきました。
父親としての責任と義務を全く果たしてこなかったのに遺言書通りになるのでしょうか。
未払いの養育費は、5パーセントの法定遅延損害金を加算すれば、3,000万円以上になります。

608

(ミッキー)



 ※敬称略とさせていただきます

【遺留分を請求することができます】
まず、「後妻の長男に全遺産を遺贈する」という父の遺言ですが、仮に遺言が有効であるとしても、あなた自身には遺留分という権利が残されています。
遺留分とは、あなた自身が本来有していた法定相続分の2分の1の限度で、財産を遺贈された方(今回は後妻の長男)に請求することができる権利のことです。
遺留分を請求することを法律では「遺留分減殺請求」と呼びますが、具体的な遺留分の計算は、相続人が①後妻と②後妻の長男、そして③あなたの3人のケースの場合、次のように計算されます。

(父の相続人)・・・あなた、長男、後妻の3名と仮定した場合

(本来の法定相続分)・・・後妻 → 2分の1
                後妻の長男 → 4分の1
                あなた → 4分の1

このケースですと、あなたの遺留分は法定相続分(4分の1)の2分の1ですので、全体の8分の1と計算されます
このように、遺言があってもあなたは遺留分を請求し、遺産を一部受け取る権利があります。
なお、遺留分は遺留分の侵害(=遺言の内容)を知ってから1年以内に(内容証明郵便等で)請求を行わないと時効消滅してしまいます。くれぐれもこの点はご注意ください。

【取り決めた未払養育費や慰謝料は承継される】
今回は養育費や慰謝料の未払いがあるようです。
まず、なんらの約束事(書面)もしておらず、単に父から養育費をもらっていないだけ、ということであれば、そもそも養育費は請求できません。
しかし、書面等で金額や支払時期の取り決めをしていたのであれば、一般のお金の支払義務と同様に請求でき、未払いがあればお父さんの債務として、これも相続分に従って分割され、各相続人に引き継がれます。
 (なお、慰謝料は一般に母(前妻)の権利ですので、権利者はあなたではないことにご注意ください)

【養育費も一部は相続で消滅する】
上記のケースでは、未払いの養育費について、後妻が2分の1、後妻の長男が4分の1の支払義務を引き継ぎます。
しかし、4分の1の限度ではあなたも支払義務を引き継ぐことになるため、あなたが引き継いだ養育費の4分の1は権利と義務が相殺されて消滅し、請求できなくなることにご注意ください(このことを法律上は「混同」と呼びます)。

【実際には時効などハードルは高い】 
また、養育費の請求にはもう一つ大きな問題があります。
養育費もお金の貸し借りと同様、時効により消滅します。たとえば養育費の支払時期が毎月末日払いなど定期的な支払いの場合、毎月の支払日から5年で時効消滅します。そのためたとえば20歳で支払期間が終了した養育費は、あなたが25歳を超えていれば時効で全部消滅している可能性があります。
もっとも、途中で一部支払いがあったなどの事情があれば時効が中断することもありますので、ご心配でしたら遺留分の請求の見込みなども含め、お近くの専門家に一度ご相談された方がよいでしょう。

 (弁護士 北野英彦)
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遺産相続における話合いのでの合意の破棄【Q&A №606】

2018/04/20


【質問の要旨】

死亡後の不動産賃料の扱いはどうなるのか

記載内容  家賃 死亡後 承継


【ご質問内容】

2年前に父が他界し、兄と妹の兄弟3人で相続の手続き中です。
3人の話合いの際、実家の2世帯住宅に家賃を払って住んでいた兄夫婦を当座の実家の管理者として住み続けてもらうことに一旦合意したものの、その後話し合いがこじれ、現在、家裁での家事調停中です。
そこで、当初の合意を破棄し、亡くなった父と兄との賃貸契約が継続しているとみなし、父の死後の家賃を遺産分割に反映させたいと考えているのですが、可能でしょうか。
また実家の隣の父が所有していた空地を兄の妻の会社の駐車場として父と賃貸契約を結んでいたのですか、そちらも父の死後も契約が継続しているとみなし、遺産分割に反映させることはできますでしょうか。

484

(John)



 ※敬称略とさせていただきます

【遺産の中に賃貸物件がある場合、その賃料は相続分で分割する】
今回の質問では、遺産の中には、亡父が、①兄に賃貸していた物件と②兄の妻の会社に賃貸していた物件の2つがあります。
遺産の中に賃貸物件がある場合、その賃貸物件から上がる収益(賃料)を誰が取得するのかについては最高裁の裁判例(リンク:最一判平成17年9月8日)があります。
同裁判例は、賃料をもらう権利は遺産分割とは別であること、遺産分割が完了するまでは、賃料は法定相続人がその法定相続分に応じて取得すると判断し、その後、裁判は全て、この判例に従って判断をしています。
そのため、あなたは今回の上記①及び②の賃料の3分の1をもらう権利がありました(この点は本ブログQ&A №593をご参照下さい)。
なお、念のために言えば、この賃料をもらう権利は、あなたが相続人になったことにより、亡父の賃貸人としての地位をあなたも3分の1の限度で引き継いだということから発生するものであり、他の相続人(例えば兄)の同意はなくとも、当然に請求ができます。

【兄に対する請求について】
まず、兄が居住している①の物件ですが、既に賃料は請求しないという《合意》が成立したのであれば、その合意は有効です。
したがって、今更、その合意を撤回することはできません。
ただ、合意の内容やその合意した時の状況に応じて、合意が無効だといえる場合があるかもしれませんが、質問にはそのようなことは記載されていません。
もし、そのような状況があるのであれば、一度、お近くの弁護士と法的対処が可能かどうかを相談されるといいでしょう。
ただ、兄のする管理の手間と賃料とを比較して、賃料の方が多額でバランスが取れないということであれば、あなたとしては《賃料の免除》という大幅な譲歩をしているので、その点を考慮して、兄は遺産分割の取り分を少なくするべきだと主張するしかないでしょう。

【駐車場の賃料は、遺産分割合意までは請求できる】
前記②の駐車場の賃料については、父死亡後の賃料の3分の1を請求されるといいでしょう。
この請求は遺産分割とは全く別ですので、分割の合意ができなくとも請求可能です。
なお、念のために言えば、遺産分割の合意ができ、その駐車場を相続する人が決定した段階から、その人が単独で賃料を取得することになります。
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生前の貸金を返済したが相続に影響する?【Q&A №604】

2018/03/22


【質問の要旨】

車の修理代を援助してもらい、返したが、特別受益になるのか

記載内容  返済 ローン 自動車


【ご質問内容】

 亡くなった母から生前一時的に援助を受けました。
 経緯は10年前交通事故に合い車を修理しなくてはならず急きょ修理代を借りることになりました。
 しかしローンを組み中古車を購入することになり借りた一時金は母に返しました。
 借りていた期間は2~3カ月です。
 現在調停中で他の相続人の弁護士から特別受益との指摘を受けております。
 返金した証明、購入した中古車の登録証、ローン返済の書類証明の提出を要求されておりますがその中古車は既に手放しました。
 書類等はありません。
 以上の要求について証明、書類提出できなければ特別受益に値するといわれました。
 どのように対応したら宜しいのでしょうか?

604

(パキラ)



 ※敬称略とさせていただきます

【借りたお金の性格は貸金であるので、特別受益にはならない】
 まず、あなたがお母さんから借りたお金の性格が問題になります。
 あなたが母から贈与を受けたのなら特別受益になります。
 しかし、あなたが主張されているように母からの借り入れというなら、母はあなたに対して貸金債権を有することになります。

【貸金での問題点】
 貸金だとした場合には、あなたが母に返済をしたかが問題になります。
 もし、貸金の返済を証明できなければ、貸金債権として母の遺産になります。
 結局、貸金の場合には特別受益にはなりませんが、返済が証明できなければ、母のあなたに対する貸金債権は存続し、母の死亡時には「貸金返還請求権」という債権として遺産になります。
 贈与や借り入れのどちらにせよ、あなたが貸金の返済を証明できなければ、いずれの場合においても母の遺産として計算されることになります。

【返済の証明はどうするのか?】
 問題は返済を証明できるかどうかです。
 あなたが、返済時に、母から領収書をもらっていたなら、それを証拠に出せば返済を証明できます。
 領収書がないのなら、次のような方策を考えるといいでしょう。
 もし、あなたがお母さんの口座に送金して返済しているのなら、お母さんの預貯金口座の取引履歴を確認して返金を証明できる可能性があります。
 もし、手渡しで返金したというのなら、受け取った母が、返金分を自分の手元にはおかず、預貯金口座に入金した可能性がないかどうか、母の取引履歴で確認するといいでしょう。
 その場合、あなたの預貯金口座から引き出して返済したのだというのなら、あなたの預貯金口座の履歴も取り寄せするといいでしょう。
 あなたの口座から返金分が払い戻しされ、その一方で近接した時期に母の口座に返金額に相当する金銭が入金されているのであれば、返金が立証できる可能性が高いです。
 ただ、取引履歴は10年間程度しか取り寄せできません。
 貸金が約10年前のようですので、迅速に取引履歴の入手の手配をされるといいでしょう。

【返済が証明できない場合】
 貸金の返済を証明する責任はあなた側にあります。
 もし、あなたが返済を証明できないのであれば、借金は返済されていないということなり、母のあなたに対する貸金請求権が遺産になります。
 この場合、あなたは他の相続人に対して、その相続分に応じた返金をする必要があります。

【中古車を買ったことは返済の証明にはならない】
 あなたとしては、修理をせず、中古車の買入をされたとのことです。
 しかし、修理をしなかった、あるいは中古車を買入れたことは、借金の返済の証明としては極めて弱いです。
 修理をしなかったということが借金に返済とつながるというのも、更に中古車を買ったから借金を返済したということも、それだけでは、返済の証明にはならないでしょう。
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遺産相続をしたのは私なのに【Q&A №603】

2018/03/08


【質問の要旨】

祖母の遺産を相続人ではない母が勝手に受け取れるのか

記載内容  弁護士 依頼者 連絡窓口


【ご質問内容】

 三年前に父方の祖母が亡くなり、父は六年前に亡くなっていたので、父の弟、弟の娘、私の姉、私で遺産相続(四分の一づつ)遺産相続しました。
 母親は扶養になっておらず、遺産相続していません。
 父の弟達と揉めて母が弁護士に依頼して、遺産相続の書類やサインと捺印は私に請求しますが、母が私に来た手紙を私に渡さず自分で取引して、私の相続分はどうなったの?と聞くと「私が苦労したからら私の物だとか私がお金を払ってる。お前には関係無い私が法律だ」とかんしゃくを起こしてわめき散らしとても恐ろしいです。
 税金500万円取られた、お金がまだ振り込まれて無いなど言っていますが、姉は弁護士に自分の通帳番号を伝えているが、私は伝えておらず、多分、母が私の名前で勝手に口座を作り、そこに振り込ませている?
 私は障害者手帳を持っていて、障害者控除もなります。母親が勝手に私の遺産相続を取れるのですか?

603

(らむね)



 ※敬称略とさせていただきます

【相続関係の整理】
 祖母が亡くなり、その相続という案件です。
 まず、相続人ですが、祖母の配偶者(祖父)は既に死亡しているようですので、法定相続人は祖母の子(父の兄弟)になります。
 なお、質問には相続人として《父》の他に、⦅弟》、《弟の娘》とありますが、この2ケ所に記載された《弟》が同一人である場合には、その娘が祖母の養子になっていない限りは《弟の娘》は相続人にはなりませんのでご注意ください。

【弁護士に依頼しているのはあなたです】
 あなたは父の代襲相続人であり、法定相続人です。
 そのため、弁護士に相続事件を委任するのはあなた自身です。
 母は、父の祖母の相続について、相続権は全くありません。
 その弁護士を探してきたのは母であり、着手金を支払ったのは母であるとしてもあくまで依頼者は相続人であるあなたです。

【なぜ、弁護士は母と連絡をとるのか】
 相続事件を受任する際に、多数の相続人のみなさんの中で代表者を決めてもらい、弁護士との連絡窓口をその代表者に一本化することがあります。
 また、直接の当事者でなくとも近親者の方に連絡窓口をしてもらうこともあります。
 そのような場合は、弁護士は母と連絡を取り合っている場合がありえます。

【弁護士に連絡を取るべきです】
 しかし、連絡窓口を母にしようと、弁護士に依頼するのは、相続人であるあなたです。
 そのような場合でも、あなたが依頼者ですので、弁護士に連絡して、今後の連絡は私にしてほしいと申し出をされるといいでしょう。
 この場合、メールかファックスなどで行い、後に証拠が残るようにしておきましょう。
 特に遺産が入金されるような場合には、あなたの口座に送金するように申し入れすることは必要不可欠です。

【もしもの時には別の弁護士も】
 いずれにせよ、今回のケースではあなたの気持ちや利益がきちんと遺産分割に反映できるように弁護士と打ち合わせをするなど、あなたの意向を弁護士に伝える必要があります。 もし、申し入れをしているにもかかわらず、弁護士からあなたに連絡がない場合には、その弁護士としては懲戒にも処せられるべき案件になります。
 そのような場合であれば、その弁護士とは別の弁護士に依頼するも是非、検討される必要があるでしょう。


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預金口座の取引履歴を開示したい【Q&A №602】

2018/02/20


【質問の要旨】

祖母が開設した娘名義の口座の取引内容を確認することはできるか?

記載内容  離婚 借金 取り引き内容


【ご質問内容】

 離婚をして10年以上経ちます。娘が1人います。
 昨年、娘の父親が亡くなりました。元夫は母親と会社を経営してました。
 元夫の母からは借金しかなく娘には何も渡すものは無いと言われました。
 今まで父親からは養育費として少しは頂いてたので祖母は19歳まで生活費を渡すと言ってます。
 先日、祖母が生活費とは別に少しづつ貯金をしてあげるからと娘の銀行口座の開設に行きました。通帳と印鑑は祖母が持ってます。しかし周りからはその口座に遺産関係が入るからだと言われました。もしそうだとしたらどうなるのでしょうか?
 通帳、印鑑が無くても娘は口座の取り引き内容は閲覧できるのでしょうか?
 私は全く関わりたく無いのですが娘が大学に行きたいと言ってるので学費だけでもと思っています。


(aloha)



 ※敬称略とさせていただきます

【元夫の相続人は娘】
① 元夫の相続人は、元夫があなたとの離婚後に再婚しておれば、現在の配偶者と元夫の子(あなたの娘。もし、他に子がいればその子も相続人になります)。
② 結婚してもおらず、他に子供がいないのであれば、娘のみが相続人になります。
なお、上記①及び②のいずれの場合でも、元夫の母親やあなた自身は相続人ではありません。

【相続するということは借金も引き継ぐということ】
 相続するということは、元夫の財産も借金などの負債もすべて引き継ぐということです。
 なお、相続人である娘が未成年であれば、親権者であるあなたが娘の代理人として相続手続をすることになります。

【元夫の遺産や借金については調査をすべき】
 元夫の母親の話では、元夫には借金しかなく、娘に渡すものはないとのことです。
 もし、元夫の母親の話が正しいとすれば、娘は元夫の借金を相続してしまうことになります。
 又、ひょっとすると財産があるかもしれません。
 今後の娘の行動を考えるには、元夫に借金があるのかどうか、又、財産があるのかどうかを調査する必要があります。
 調査の結果、借金が多ければ相続放棄の手続きをし。借金もあるが財産もあるというのであれば、双方を比較して財産が多いと判断すれば相続人として財産を取得する手続きをすることになります。
 いずれにせよ、亡夫の財産調査は必要不可欠です。

【相続放棄するなら3ケ月以内に】
 相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申し立てする必要があり、3か月の期限内に調査が終わりそうにないなら、放棄をする期間を延長(これを熟慮期間の伸長といいます)する必要があります。

【印鑑を預けてはいけない】
 祖母に娘の口座を作ってもらうために印鑑を預けたということですが、もし実印を預け、印鑑証明書を渡したというのであれば、それは極めて危険な行為です。
 娘の実印と印鑑証明書があれば、遺産分割協議書が勝手に作成されたり、亡夫の遺産である預貯金が勝手に解約されるかもしれません。
 娘さんが未成年のようなので、親権者であり、法定代理人であるあなたが娘さんの口座を作ることができます。
 もし娘の口座を作るので、あればあなたがその手続きをし、口座を祖母に連絡すればよく、印鑑まで預ける必要はありません。

【遺産が入るかも??】
 遺産を渡す気があるのなら、当然、祖母は、亡夫の遺産は借金だけというような話もしないはずです。
 もし、あなたが渡した印鑑が実印であり、かつ印鑑証明書なども渡したのであれば、祖母としては銀行等で亡夫の預貯金を解約取得する手続きができる場合があります(法定相続人である娘のもらうべき遺産を元夫の母が勝手に引き出すという最悪のケースも想定されます)。
 あなたとしては、そちらを心配するべきでしょう。
 もう、遅いかもしれませんが、預けている娘の印鑑などもすぐに取り返した方がいいでしょう。

【まず、するべきことは遺産調査と印鑑の回収】
 あなたが娘の学費をなんとかしたいというのであれば、亡夫の預貯金など、遺産の調査をするべきです。
 娘さんは相続人ですので、元夫の預貯金の取引履歴を取り寄せすることは可能です
 亡夫の預貯金などは、娘が亡夫の子であることを証明する戸籍や実印などがあれば、過去の取引内容を含めて、調査が可能です。

(調査方法についてはリンク参照)
《過去の参考ブログ:相続放棄 借金の調べ方 預貯金等、遺産の調査


(弁護士 岡井理紗)
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被相続人の記帳本を交換 私はコピー相手方は原本でした。【Q&A №601】

2018/02/20


【質問の要旨】

被相続人の記帳本の原本を相手方に渡さなければならないか?

記載内容  証拠 交換 原本


【ご質問内容】

 証拠になりうる記帳本を、相続人が半分ずつ交換しました。こちらはコピー、相手は原本をもってきて交換したのですが、最初からお互い確認していなかったので、双方が原本、双方がコピーの交換とはいきませんでした。
 もし、こちらが原本を渡してしまえば、すでにコピーを渡してしまっているので、手元に何もなくなります。実は、相手にすごく不信感を抱いております。
 調停委員の方も、そこまでは確認してくださっていなかったので、慌てて相手方の代理人に聞いて下さったところ、「後日いついつまでに原本の日記を送って下さい」、と言われました。
 次回からは、遠いため電話の調停になる予定です。

 何もかもが初めてなので、宜しくお願いいたします。

(マロン)



 ※敬称略とさせていただきます

【本来は原本を交換する必要はない】
 調停で当事者双方が証拠を出し合うことはよくあります。
 その際、コピーを提出するのが原則であり、原本を交換しあうというのは(少なくとも弁護士がついている場合では)まれなケースです。
 もちろん、コピーが正しいかどうか疑問がある、あるいはコピーが不鮮明な場合などは、原本を提示(見せてもらう)ことでコピーに問題があるかどうかを確認します。

【今回の質問では原本を見せなければいけないか?】
 今回のケースでは、あなたは相手方から原本を預かったが、あなたの方はコピーを渡したということのようです。
 調停であれば調停委員がついているはずであり、コピーの交付をし、原本は確認するだけでよかったのではないかと思います。
 ただ、原本の分量が多量であり、その場では時間的に確認できないということで原本を渡すということになったのかもしれません。
 このように原本を交付する方法には疑問がありますが、この点はこれ以上深く触れないこととしましょう。
 さて、次回からは電話で調停ということになれば、相手方の弁護士としては、あなたからはコピーをもらっただけで原本を確認できなかったわけですので、原本確認の方法としてその送付を求めることはやむをえないことでしょう。
 あなたとしては自分は原本の交付を受けながら、自分の持っている分については、相手方に原本の確認をする機会を与えないということは不公平でしょう。
 そのため、あなたは、相手方代理人に原本を見せる必要があります。

【返還に不安があるのなら】
 もし、返還について不安があるのなら、遠方であってもあなたが相手方弁護士の事務所に行き、その弁護士が原本を確認できる機会を与える必要があります。
 もし、遠隔地でそのような訪問もできないというのなら、相手方弁護士に原本を送付するのはやむを得ないでしょう。
返還してくれるかどうか不安なら、相手方弁護士から原本を返還するという文書(返還期限も記載してもらうことも考えましょう)を取り付けることです。
 又、原本を送ればコピーがないということであれば、原本を送る前にコピーを取る手配をされるといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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後妻による定期預金解約について【Q&A №600】

2018/02/19


【質問の要旨】

口座名義人の委任状があれば定期預金の中途解約はできるのか?

記載内容  定期預金解約 解約伝票 価格賠償


【ご質問内容】

質問①

 定期預金の中途解約についてご相談いたします。
 よろしくお願い致します。概略を記します。

 昨年、父が他界し相続が発生しました。相続人は4名(後妻+先妻の子3名)です。
 父は6年間ほど要介護度5(寝返りできない、痰の吸引が2時間毎に必要)で介護は後妻さんがしていました。後妻さんは定期預金(1,500万円)の中途解約を父の了解を得て行ったと言っています。
 銀行に口座名義人確認の方法を尋ねましたらキャッシュカードと暗証番号との説明でした。
 解約伝票の署名は口座名義人(父)の筆跡のようであり、預金の使途を後妻さんに聞いたら適宜使用と答えました。

 同銀行のお客様相談センターに問い合わせたころ支店の対応に任せているとの事でした。
 同銀行他支店に定期預金の中途解約について尋ねたら、口座名義人の委任状があっても解約は認めない、口座名義人が窓口に来れない場合は、何かしら他の方法で確認をとる、又は相続人全員の了承をとるとの事でした。銀行のダブルスタンダードといえる対応に対しどのように考え行動したらよいのでしょうか。ご教示お願い致します。

質問②

 相続で話し合いの最中なのですが、相手方が遺留分対象のマンションを売却しています。
 遺産額も決まらないのに相手方弁護士は、価格賠償を主張しています。
 どのような対応を考えたらいいのでしょうか?(マンションの仮差押えは、供託金の用意ができません。)



(雪男)



 ※敬称略とさせていただきます

質問①定期預金の解約の件と質問②マンションの売却の件の2件の質問をいただいていますので、2件まとめて回答いたします。

【質問①について…当該解約時の状況を確認するべき】
 被相続人の定期預金が後妻さんによって無断で解約されたのであれば、後妻の不法行為(ないし不当利得)ということになり、あなたが父の相続人として、返還請求をすることができます。
 無断であるかどうかの判断資料としては、誰が窓口で手続きをしたのかを確認する必要があると思われます。

【引き出しを勝手にしたかどうかの判断】
 銀行は、口座名義人の委任状があっても解約は認めず、口座名義人が窓口に来られない場合はほかの方法で意思確認するという対応だったようです。
 さて、上記銀行の対応と解約伝票の筆跡からすれば、父が書いた解約伝票を後妻が窓口に持っていき、後妻がキャッシュカードを持参し、又、暗証番号も答えたことから、銀行としては本人の意思を確認できたとして解約したと理解できます。
 銀行の対応に若干、疑問があるようにも思えるものの、父が委任状の意味を理解して署名捺印したのであれば、後妻が父の意思に反して勝手に解約したとは言えませんが、反面、父が6年程、要介護5の状態(身体的な面か、意思能力にも問題があったのかが明らかではありませんが)であれば、場合によれば、委任状を記載していても父には意思能力(判断能力)がなく、解約は不法行為に該当する可能性もあります。
 いずれにせよ、預金の引き出し時点の父の状態をカルテなどで確認する必要があります。

【父の意思能力がない場合】
 もし、父に意思能力がないというのであれば、後妻が勝手に引き出したものと主張できるでしょう。
 ただ、このような場合でも、後妻が解約したお金を父の介護のために使ったことを立証すれば、その分については後妻が取得したものとはいえず、返還を求めることはできないでしょう。

【父の意思で解約していたとしても、後妻が贈与を受けていれば特別受益になる】
 仮に父の意思で解約がなされたことが明らかになったとしても、それを後妻に贈与したのであれば、今度は特別受益の問題になります。
 特別受益だとすれば、1500万円を父の遺産に持ち戻して遺産分割をすることになりますので、あなたが取得する遺産額が増えます。

【質問②について…売却される前にマンションに登記をする】
 以下は、あなたがすでに遺留分減殺請求をしているとの前提でお答えいたします。
 遺留分減殺請求をした時点で、あなたと相手方とはマンションを共有する関係になります。
 しかし、第三者から見れば、この共有関係は明らかではありません。
 そのため、第三者に対して、あなたが遺留分権者としてマンションの共有持分権を持っていることを主張するためには、あなたが遺留分で所有権を取得したことの登記が必要です。
 この登記があれば、あなたは対外的にもマンションの共有者の一人ということになり、相手方はマンション(の全部)を勝手に売却できなくなります。
 現在、まだ、あなたへの遺留分登記がなされておらず、既に買受人である第三者に対する所有権移転登記が完了しているのであれば、あなたはこの第三者に所有権取得を主張することができません。
 売買契約はしたが、買受人の移転登記前であれば、早急に買受人に登記が移転されないように《仮処分》という手続きをする必要があります。
 既に買受人が移転登記を完了しているのであれば、あなたとしては相手方に遺留分相当額の価格賠償を求めることしかできず、相手方弁護士と交渉するしかないと思われます。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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14:07 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父からの生前贈与は母を相続するとき影響するか【Q&A №599】

2018/02/08


【質問の要旨】

祖父からの生前贈与を母の遺産分割時に証明する必要があるのか?

記載内容  祖父から 生前贈与

【ご質問内容】

 昨年母が亡くなり相続が開始致しました。
 父は既に他界しております。
 私は25年前父方の祖父から1200万円の生前贈与を受けました。両親も承知のことです。
 その後一人息子だった父が祖父から相続を受け他界、母がまた全てを相続し昨年他界致しました。
 現在兄姉私の3人が相続人です。遺産分割の話し合いの際弁護士をつけた姉は1200万円は特別受益だと主張、違うのであれば祖父から受けた生前贈与を証明せよと言われておりますが25年前のことですので証明できずにおります。
 調停員からは裁判になる可能性が高いといわれました。
 途方に暮れております。


(ゆり)



 ※敬称略とさせていただきます

【一般に祖父からの贈与は無関係】
 今回の遺産分割は母の遺産です。
 そのため、特別受益で検討すべきなのはあくまで「母からの生前贈与の有無」に限定されます。
 もし父や祖父からの生前贈与があったとしても特別受益にはあたりません。あなたとしては「祖父からの贈与の有無は本件に関係ない。」と回答すればされで済みます。

【例外的に特別受益とされる場合がある】
 ただ、事情によっては例外的に祖父からの贈与が実質的には母の贈与と同視できる場合があります。
 たとえば、親が娘の子(孫)に学費を贈与した場合、直接贈与を受けたのは孫(祖父から孫の口座に直接振り込み)であっても、本来は娘が負担するべき学費であることを考慮し、実質的には娘に対する贈与だと扱われることがあります。
 ご相談ではそのような例外的事情はなさそうですが、参考までに紹介しておきます。

【姉の側で立証する必要がある】
 他方で、あなたは姉の側から「祖父からの生前贈与を証明せよ」と言われているようですが、そのような照明をする必要はありません。
 母からの贈与であり、母の遺産の特別受益というのであれば、その証明は姉の側でするべきことであり、あなたが祖父からもらった証拠など示す必要はありません。
 
【調停は互譲で解決を図るもの】
 以上のとおり、あなたとしては、特別受益の証明は姉側でするべきであると述べるといいでしょう。
調停はあくまで話し合いですので、あなたがどれだけ正しい主張を述べても、姉が解決案を了解しなければ裁判になってしまうことはやむをえません。
 もし、あなたが裁判を望まないというあれば、どこかで妥協点を見つけるしかありません。
 その場合でも、あなたとしては、まず正しい言い分をしっかりと主張した上で、妥協できる点を探るという立場で対応されるといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
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14:37 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

生命保険 故人 父親が他界【Q&A №598】

2018/02/07


【質問の要旨】

母が受取人となっている父の生命保険を貰う権利はあるのか?

記載内容  生命保険 受取人 財産分与

【ご質問内容】

  父親が他界しました。生命保険 受け取り人 母親ですが、 これは、財産分与 
私にも 貰える権利ありませんか?


(e.gaku)



 ※敬称略とさせていただきます

【原則として、生命保険金は遺産分割の対象ではない】
 保険金受取人として特定の相続人を指定した場合、生命保険金は遺産分割の対象の財産にならないとするのが裁判所の判例です(Q&A №298参照)。
 その理由は、生命保険金の支払いは、生命保険契約に基づいて支払われるものであり、被保険者の死亡と同時に指定された相続人の財産になるという性格を持っており、そのため、相続財産にはならないと考えられているからです。
 したがって、生命保険金の受取人が母になっていた場合には、保険金は母が単独で取得し、あなたがもらう権利はないですし、又、相続財産の中にも入らず、遺産分割の対象になりません。

【但し、著しい不公平な事情があれば、相続財産として扱われることもある】
 ただ、遺産総額と対比した場合、保険金を受け取る相続人と他の相続人間で著しく不公平となるような場合があります。
そのような場合には、特段の事情があるとして、例外的に生命保険を遺産の中に入れて遺産分割をすることになります。
この特段の事情としては、
① 保険金額と遺産総額とを比較して、生命保険金の金額があまりに多額である。
② 保険金の受取人が多額の保険金を受けるべき理由(同居していたか、介護等の貢献をしたかなど)がない。
というようなことが考えられます。
このような事情がある場合には、特段の事情として、生命保険金を遺産に持戻すということが認められる場合があります。

【著しく不公平かどうかの基準】
 過去の裁判例では、生命保険金の額が・・・万円であるのに、その他の相続財産が     万円であったケースで、生命保険金額が約59%(計算式:生命保険金額÷⦅生命保険金額+その他の相続財産額)を占めていたということで、生命保険金を相続財産にいれたものがあります。
 なお、単なる生命保険の割合だけで特段の事情の有無が判断されるのではなく、婚姻期間や同居の有無、介護等の貢献をしたかという事情も考慮して判断されますので、この点も注意が必要です。

【今回の質問の場合】
 本件では、生命保険金の受取人は母(被相続人の妻)ということですので、遺産総額と比較して生命保険額があまりに多額であり、かつ、父母の婚姻期間が短いとか、あなたが父と同居して介護をしてきたというような特段の事情があれば、生命保険金を相続財産にいれることもありえます。
それらの点を考慮して、判断されるといいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
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10:34 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続 調停から審判【Q&A №596】

2018/01/15


【質問の要旨】

姉名義だが、父と姉が債務を負っている住宅の残ローンの半分は相続しなければならないのか。

記載内容  住宅ローン 光熱費

【ご質問内容】

 審判をするか悩んでおります。現在調停をしており先日担当裁判官と直接話をしましたが納得が行くものではありません。
 弁護士を入れて進めていますが、同じ結果になったとしても調停と審判では違うと審判を勧められています。
 ※特別受益と住宅ローン:家は姉名義で住宅ローンは二人で払っていたのでそれは特別受益ではないかと主張した。

 ボーナス払年二回11万ずつ現金で渡し、月々支払は光熱費と相殺していた。
 2世帯住宅だがメーターはひとつで父の口座から引落しで支払をしていた。
 裁判官の見解:ボーナス払いの現金を渡してたと言う証拠がない、光熱費が父の口座から引落としされてるのは明確だが姉が現金を渡してたかも知れないし相殺してたとは認められない従って特別受益は認められない。
 住宅ローンの債務についても半分の300万を負担する事、相続の分配に含んで行う。
 ※定期預金引出:生前父から電話があり、障害を持つ弟が入所している施設に寄付しないと居られなくなると言われ定期を渡した。

 姉に確認したら父に対して制裁だと話し返すよう話したが弟の保険に入ったと嘘を言い返済しなかった。
 裁判官の見解:定期解約をしたのは金融機関の書類で姉なのは事実だが、その後どうなったかは明白でない為、戻せとは言えず本件とは別に返還請求を別途するようにと。


(なつ)



 ※敬称略とさせていただきます

【父の支払を示す証拠が大前提】
 まず、今回は姉の単独名義で取得した自宅の住宅ローンについて、そのローン代金について父と姉がそれぞれ別個に、分割して借り入れをしたケースです。
 ところで質問では、ローンの返済は姉の口座から引き落されていたということであれば、父が姉の口座にお金を入れていなければ父は実質的に1円も負担していないことになります。そうすると、父が支払った証拠がない本件では、調停や審判の場ではなによりも証拠が重視されるため、特別受益とは認められないものと思われます。

【親子間では光熱費の無償使用もありうる(ローンとの相殺)】
 次に、あなたは、父と姉との間に「父が姉に渡す(父名義部分の)ローンの支払資金と姉が父に支払うべき光熱費を相殺する」という約束があったことを主張されているようです。
 しかし、今回は父が姉にお金を渡した証拠がないため、第三者の立場から見れば「父は姉の家に無償で住ませてもらっていた」という状況に見えてしまいます。そのため、父はそもそも姉に光熱費を請求するつもりがなかったと裁判所は考えるしかない状況かもしれません。
 ここはあなたの側で父と姉との間に相殺の約束があったことを立証する必要があるでしょう。
 要するに、結局のところポイントは「父が姉にお金を渡していた証拠をいかに見つけ出すか」という点にあります。
 この証拠が見つけられないためにあなたの主張が通らないという事態が生じているのです。

【父名義のローン残債務は分担】
 父名義の住宅ローン残債務については、父の金融機関に対する債務ですので、相続人であるあなたと姉が相続分に応じて分割された債務を支払いする義務があることは間違いなく、対金融機関の関係で返済せざるを得ないでしょう。

【姉の家は遺産分割の対象にならない】
 そうすると、父の遺産分割の結果、姉はローンを分割してあなたに半分負担させることができるが、姉は自宅を丸ごと自分のものにできるという利益を受けることになります。これはたしかに不公平感があることでしょう。
 この点の解決方法としては、父の債務である住宅ローンで融資された金銭はその全額が、売買代金の決済の時点で姉の代金の支払いに充てられているはずであり、この分は贈与として特別受益に該当する可能性があります。
 裁判所はその点の立証ができていないといっているのであれば、その点を立証するよう全力を尽くされるといいでしょう。
 現在、弁護士に依頼されているようですので、その立証方法としてどのようなものがあるかどうか、その弁護士と協議されるといいでしょう。

【不正な預金解約は調停・審判で判断しにくい】
 最後に別途訴訟提起が必要と言われている点ですが、調停や審判は遺産であることが明らかな(ほぼ争いのない)遺産だけを取り扱う手続です。そのため、不正な預金解約(損害賠償請求)のように事実関係に大きな争いがあるものは調停で判断ができないのが通常です。その場合、別途訴訟を提起して遺産であることを確認することが必要であり、この点は裁判所の見解が一般的といえるでしょう。

(弁護士 北野英彦)
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相続した不動産売却時の負担【Q&A №597】

2018/01/12


【質問の要旨】

相続放棄をすると相続財産売却時の費用は負担しなくていいのか?

記載内容  相続放棄 解体 費用 

【ご質問内容】

 父没後、父の資産は預金300万円、父が住んでいた家・土地があります。
 相続人は姉・私(弟)の2人です。姉は結婚時に花嫁道具とか家屋取得などで父より援助を受けたこともあり、相続放棄しました。
 私が父の遺産を相続するに、家(木造、築50年)が古く売却が難しいと思い、解体を業者に相談したところ、解体費の他に建築法
による市道拡張工事(現状1.5m幅、2m以上幅が必要)や不明確な境界であるため確定する費用などで600万円かかると言われました。
 私にそんな費用を捻出する金銭がないので、姉に相談したところ、「自分は遺産を放棄したのだから負担する義務はな
い。所有者になるあなたが負担すべき」と言われました。
 私が負担すべきものなんでしょうか?


(困りねこ)



 ※敬称略とさせていただきます

【相続放棄をすると、最初から相続人にならなかったものと扱われる】
 お姉さんは、お父さんの相続について、相続放棄をしたとのことです。
 相続放棄をすると、その効果として、放棄する相続人は、その相続に関しては最初から相続人にならなかったものと扱われます。
 つまり、お姉さんは初めからお父さんの相続人ではなかったということになりますので、「自分は遺産を放棄したのだから負担する義務はない。所有者になるあなたが負担すべき」というお姉さんの主張は正しいです。
 そのため、お姉さんは相続債務を負うことはありません。

【加えて、今回の費用は相続債務でもない】
 お姉さんが相続放棄をしておらず、その建物が共有ということであれば、今回の建物の解体費や工事費、境界確定のために必要な費用を分担してもらうことも可能です。
 しかし、前述のとおり、お姉さんは放棄したことによって、相続とは全く関係のないことになりました。
 加えて、建物の解体費用は相続債務ではありません。
 あなたが相続人としてその建物を取得することが相続であり、建物解体費用などは相続が終わった後に、その建物を売却するための費用であって、この点からもお姉さんに負担を求めるのは困難でしょう。
 現在、お手元に上記費用を支払う余裕がないのであれば、解体せずそのままの状態で売却するしかないというのが結論になります。

(弁護士 岡井理紗)
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13:45 相続放棄 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

香典と葬儀費用の相殺、事務管理【Q&A №595】

2017/12/21


【質問の要旨】

喪主と葬儀費用支払者が違う場合、香典は誰がもらうのか

記載内容 葬儀費用 香典 喪主

【ご質問内容】 

母が死んで、葬式が終わり、私が喪主だったのですが、当然、香典は喪主である私がもらうと思うのですが、姉が香典は私がもらう、と発言をしました。
そして、香典をあずかっていた受付の人から、家の部屋で「代表者に渡します」といったにもかかわらず、私が喪主なのに、同席した姉が横から手を伸ばして、香典180万円を奪い取ってしまいました。
そこで、姉に対し、不法行為で180万円の損害賠償を請求しようとおもうのですが、請求できますか?
1 仮に、姉が葬儀費用を支払ったので、相殺する、と主張した場合不法行為の場合、加害者のほうから相殺できないと思うのですが。
2 仮に、姉が事務管理を主張した場合、私は姉に葬儀費用を支払ってくれ、とかいってないし、本人の意思・利益に適合しなければ事務管理は成立しない(通説。700条但書)と思うので、事務管理を主張できないと思うのですが。
3 香典が喪主に対する贈与であれば、贈与された金を何に使おうと、喪主の勝手であり、必ずしも葬儀費用に使う必要はないのでしょうか?

(outon510)





【香典と葬儀費用の法的な扱い】
今回は香典と葬儀費用の負担に関するご質問ですので、まず前提となる法律上の扱いから回答させていただきます。
まず、香典や葬儀費用について定めた法律はありません。
そのため、これらの金銭の扱いについては裁判所の判断や法律学者の見解が分かれているため、明確に「損害賠償を請求できる」とまでは断定できません。
ただ、その中でも次のような考え方が一般的です。
① 葬儀は喪主が主宰するものであり、相当と思われる規模や費用も喪主が決定する。
② 葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するので、相続債務ではない。
③ 葬儀は喪主が主催するので、その費用は喪主が負担し、香典も喪主に対する贈与と扱い、喪主が全部を取得するのが原則である。
④ ただ、家庭裁判所での扱いでは、他の相続人が葬儀に出席している場合であれば、葬儀費用はその出席した相続人全員で分担することを求めることができ、遺産から葬儀費用を差し引いて遺産分割を行うようにすることも多い。
このようにした費用分担する場合には、香典は葬儀費用の控除科目として組み込まれることになり、その分、葬儀費用が減少する。
(詳しくは、当ブログNo.538、424、401、308、140などをご参照下さい。)
以上の見解からすると、今回のご相談は次のように整理できると思われます。

【質問1 葬儀費用を支払った姉の行為は不法行為になるか】
喪主があなたであるにも関わらず、葬儀費用を負担したのはお姉さんのときにどのように考えるかというのが最初の質問です。
この点については、相続人のみなさんが出席した葬儀ではあったようですので、法的には③の考え方に基づいて相続全員で葬儀費用を負担し、香典も全員で分割するという処理が妥当と思われ、この見解ではあなたも香典を請求できます。但し、あなたの相続分(兄弟が2名なら180万円の2分の1で90万円程度)の限度にとどまります。
(ただ、この点については、事務所の弁護士間でも意見が分かれており、香典の性質とは親族や近隣住民が葬儀費用の一部に充てるという趣旨で支払うものである理解すると、今回のように喪主が葬儀費用を出さず、他の者(姉)者が費用を出した場合、香典は葬儀費用を出した者が取得することになる。したがって、今回の質問のようなケースでは喪主は香典をもらえない。その結果、お姉さんが香典を持ち去ったのはなんら不法行為にならないという結論になります。)
また、不法行為の加害者であるお姉さんから相殺ができないというのはご指摘の通りですが、裁判所は葬儀費用から香典を控除した額を相続人で分割する考え方を採用しているため、相殺されたに近い和解案で解決が図られる可能性が高いように思います。

【質問2 事務管理の主張について】
このケースで事務管理の主張というのはあまり考えにくいと思いますが、ご指摘の通り、事務管理は本人の意思と利益に適合する必要があります(民法700条ただし書き)。ただ、いくらあなたが「姉に葬儀費用を支払ってくれと頼んだ憶えはない」と主張しても、あなたも葬儀に出席している以上、あなたの意思や利益に反していたとは認められないでしょう。

【香典はまず葬儀費用に充当されるのが一般】
 最後に香典が喪主に対する贈与とされた場合の扱いについても回答しておきます。
 ご指摘の通り、贈与されたお金であればその使途は問われません。葬儀費用は別の資金から用立てしても構いません。
 ただし、遺産分割協議や裁判所の調停での話し合いをするときには、葬儀費用と香典をワンセットで差し引きして利害調整を行うことが一般的であり、その意味では香典はまず葬儀費用に充当されるのが一般、といえるでしょう。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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17:32 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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