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弟夫婦にのみ生前に孫への教育費にお金を父が渡していました【Q&A №578】

2017/09/05


【質問の要旨】

孫への教育費は特別受益になるか?

記載内容   教育費 遺産分割 考慮

【ご質問内容】
 亡くなった父の財産分割をするに辺り、兄弟二人で遺産分割をする事になりました。
 父の預貯金を調べてみたところ、弟夫婦に父が生前孫の教育費にと200万を渡していた事が判明しました。
 財産分割について、生前父から一切お金を貰っていなかった私としてはその差額分を考慮して欲しいと弟にお願いしたのですが、弟は残った財産は兄弟なのだからきっちり二分の一に別けるべきだと聞く耳を持ちません。
 父が生前に弟夫婦へ渡したお金は財産分割には含まれないのでしょうか?
(長男の嫁)



【原則は特別受益にならない】
 遺産分割のときに考慮される贈与(特別受益といいます)は、基本的に、相続人が被相続人から贈与を受けた場合のことをいいます。

 したがって、相続人の配偶者や子供(被相続人の孫)が贈与を受けた場合には、相続人以外の者ですので、原則として特別受益にならない(つまり、遺産分割時に考慮しなくてよい)ということになります。

 今回のご質問では、亡くなったお父さんが、孫への教育費として、子供である弟夫婦にお金を渡していたという事案です。
 弟さん夫婦には渡されていますが、お孫さんは未成年者ですので、親権者の弟夫婦が受け取った、現にお孫さんの教育資金として使われている(あるいは使われそうである)というような事情であれば、それは孫への贈与と考えるべきですので、弟夫婦の特別受益にはならないということになります。

【場合によっては特別受益と判断されることもあるが、限定的】
 相続人本人ではなく、配偶者に対して贈与をしたという事案で、福島家庭裁判所白川支部昭和55年5月24日(家裁月報33巻4号75頁)は、「贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であってもこれを相続人の特別受益とみて、遺産の分割をすべきである。」と判示しています。(【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)参照)

 この裁判例を見ると、経緯や額を考慮して、場合によっては特別受益と判断されることもありえると考えられます。
 特にそのお金がお孫さんの教育資金としてではなく、弟さんが使ったということであれば、特別受益になる可能性もあり得ます。

 又、あなたとしては、孫の教育費だとはいっても、お父さんが出さなければ弟夫婦が出さなければならなかったものなのだから、実質的には弟夫婦への贈与だと主張することも可能でしょう。

 ただ、孫への贈与が、その親への特別受益と認められるケースは決して多いとは言えないということだけは覚えておかれると良いでしょう。

(弁護士 岡井理紗)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
ホームページ  http://www.osawalaw.com/
 
14:47 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

特別受益だと認めさせたい【Q&A №577】

2017/09/04


【質問の要旨】

①子や孫への生前贈与は特別受益にあたるか?
②預貯金のみを相続したいが、どのように協議を進めればいいか?

記載内容  特別受益 生前贈与 調停

【ご質問内容】
 父が被相続人。相続人は私・兄・妹です。 
 兄は兼業農家の跡取りとして、遺産全部を受け継いで当然と考えており、妹も同意しています。
 私はこれまで、父からまとまった金銭を受け取ったことが全くなく、この相続では預貯金の3分1を受け取ることを希望しています。 

①父が生前、兄や兄の子(孫)に金銭を渡したことは、特別受益にあたるでしょうか。
 特別受益にあたるなら、相続遺産に加えたいですが、妥当でしょうか。
 心配なのは兄がすんなり認めるかです。認めさせる方法を教えて下さい。

②遺産分割協議は駆け引きの場だと思います。
 どんなことに注意すればいいでしょうか。
 大切なことを教えてください。


(のえる)



【あなたの申し出はどう評価できるか】
 あなたの相続分は3分の1ですが、それは遺産全部について、その3分の1です。
 遺産の中には不動産もあると思いますが、その不動産についてもあなたは3分の1の相続分があります。

 もし、遺産の中に不動産があるのに、あなたが預貯金の3分の1のみの相続で我慢するというのであれば、不動産については法定相続分を取得しないという大幅な譲歩をしていることになります。
 お兄さんとしては決して損な話ではありません。

【生前引渡分の扱い】
 生前にお父さんがお兄さんに金銭を渡していたのであれば、おそらく生前贈与に該当するでしょうから、遺産分割の際には、特別受益として遺産に持ち戻される可能性が高いです。

 ただ、お孫さんについての生前贈与ですが、お兄さんとその子であるお孫さんとは、別の人格ですので、お兄さんの特別受益と見なされる可能性は低いでしょう。

【お兄さんはすんなりとは認めない可能性が高い】
 あなたの提案する預貯金の3分の1の相続でお兄さんがすんなりと認めるかという点についても述べます。
 都会では相続をお金で割り切ることが多く、あなたの提案でお兄さんが納得することも多いでしょう。

 しかし、郊外などで農業をされているような方については、跡取りが遺産全部を取得するものだという考えを持つ方が多く、又、周囲の親族もそのような方向で圧力をかけてくるということも多いようです。

 このような地域性に加えて、妹さんが遺産はいらないという意向であるなら、お兄さんとしては《あなたにだけなぜ遺産を与えるのか》ということで、あなたの提案に難色を示す可能性が高いと思われます。

 又、お兄さんの立場から言えば、お父さんの農業を手伝ったので、特別寄与として遺産から優先的に支払いをせよと主張することも考えられます。

【調停制度の利用をお勧めします】
 このように本来は当然遺産分割するべきなのに、遺産分割をしないというようなケースでは調停制度を利用されるといいでしょう。
 調停はお兄さんの住んでいる地域の家庭裁判所に申立をします。
 手続き等がわからないのであれば、家庭裁判所に行って、どのように申立をすればいいかをお聞きになるといいでしょう。

 調停のいいところは、調停委員という第三者がお兄さんとあなたの話の双方を聞き、円満な解決の助けをしてくれるということです。
 裁判所で第三者が法律を前提に解決しますので、お兄さんとしても納得せざるを得ない場合が多いですし、あなたのように預貯金の3分の1でいいということであれば、調停委員としてもお兄さんを鋭意説得してくれるものと思います。

【調停での対応のコツ】
 調停のコツとしては、最初は全部の財産の3分の1を請求し、その後、調停委員の説得で預貯金の3分の1に応じる形をとるといいでしょう。
 調停は互いに譲り合って解決するという制度ですので、最初に譲ったところから出発すると更なる譲歩を求めれらますので、この点はよく覚えておかれるといいでしょう。

【調停は裁判ではない】
 なお、お兄さんや親戚の方などは、《裁判沙汰にして》などというかもしれません。
 しかし、調停は裁判ではなく、円満な解決を望む制度です。
 相続についての話し合いは本当に難しく、私(弁護士大澤)の経験でも話し合いで解決することは本当に少ないです。
 お兄さんがあなたの希望に従った解決をしないのなら、早期に調停を申し立てることを考えるといいでしょう。

【弁護士の知恵も借りる】
 なお、あなたの遺産問題で何が問題になるかを知っておくためにも相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
 何が問題であり、あなたが本来はどの程度の財産をもらえるのかを教えてくれるはずです。
 あなたの考えで間違っているところはないかどうか、弁護士の眼からみれば何が問題点になるのか、それらを知った上で、調停の申立をして、問題を解決するのがベストだと思います。

(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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15:09 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正出金とされた場合【Q&A №567】

2017/05/18


【質問の要旨】

頼まれた出金が不正出金と疑われないか

記載内容  不正出金 証拠

【ご質問内容】

私の祖母は介護が必要で施設でお世話になっています。

去年に祖母の娘(私の叔母)が、「息子が結婚する」と祖母のところへ報告にきたそうです。
祖母は孫に結婚祝いを渡すから10万円を自分の口座からおろして持ってきてほしい母に頼みました。

祖母の子供は長女(叔母)と長男(私の父)ですが(祖父は他界)、叔母はアルコール依存症で私たち家族に暴言を吐くようになり仲が悪くなって祖母以外の私の家族とは音信不通です。

母は言う通りに10万円を祖母の口座からおろし普通の封筒に入れ祖母のところへ持って行き、叔母も後日その10万円を受け取りに来たそうです。

しかしその後も結婚はしていないみたいで、(その話を出すと叔母は言葉を濁すそうで)婚約破棄になったか騙しとった可能性が出てきました

祖母は足が不自由な位で病気もなく頭もハッキリしていますが、もし亡くなって相続の話になった時にこの10万円が不正出金になるのではと心配になりました。

言われた通り口座から引き出したのは私の母ですが、叔母が「そんなお金貰っていない、不正な出金だ」と言われたら証拠がありません。

これは祖母の口座を管理している私の家族の不正出金になるのでしょうか。宜しくお願い致します。

(けり)





【厳密には祖母の同意がありますが】

 今回は、お祖母さんの同意を得て出金したのですから、(外形上はともかく)厳密には不正出金ではありません。そのお金をお母さんが利得したわけでもありませんので、後日責任追及を受ける理由はありません。

 しかし、そのような話はお祖母さんが亡くなった後は誰も分かりませんので、叔母さんが「10万円が消えている。誰かが不正出金した」と騒ぐ可能性もないわけではありません。

【経過を書面化するなど記録しましょう】

 幸いなことに、お祖母さんはまだご存命で判断能力も十分なようです。それであれば、10万円の出金経過(叔母さんの息子さんの結婚祝いのため出金を依頼したこと、叔母さんを通じて息子さんに渡したこと等)を書面化しておき、お祖母さんにこれを承認する旨のサインや印鑑をもらっておけば、不正出金でないことの証拠になります

 (叔母さんが騙したかどうかは別問題として)少なくともこの書面を作成しておくことで、お母さんの不正出金だと言われることは防ぐことができるでしょう。

【出金の証拠は残るが、支払いの証拠は残らない】

 お祖母さんの指示に従い、お母さんがお祖母さん名義の口座から10万円を出金したという事案ですと、払戻伝票はお母さんが書かれていたことになります。

 また、口座名義人ではないお母さんが出金するのですから、金融機関はお祖母さんのお母さんを代理人とするという内容の委任状も取っているはずです。

 金融機関はこれらの出金関係の書類を残しています

 お祖母さんの死亡後であれば、その法定相続人がこれらの出金関係の書類の取り寄せが可能です。
要するに出金した証拠は残るということです。

 一方で、出金したお金を、お母さんが叔母さんの息子に渡したという点については、結婚祝いで渡したのですから、領収書などは出してもらえないでしょう。
 そのため、出金したお金の使途を裏付ける書類はないということになります。

【死亡後に出金分の使途が問題になると・・】

 お祖母さんがなくなり、叔母さんがこの10万円の出金を問題にすることを想定すると、その際、お母さんは困った立場になります。

 10万円をお母さんが出金したことは金融機関に残っている払戻伝票等の書類で証明できますが、その出金した10万円を叔母さんの息子に支払ったことは証明できないからです。
 叔母さんが10万円を問題にする場合、その息子が自らもらったと言うことも考えにくいでしょう。

 又、結婚祝いとして渡したと言っても、その結婚自体がなかったというのですから、ますますお母さんの立場は不利になります。

【証明方法としては書面を作る、録音をするという方法がある】

 お祖母さんが存命なら、出金の依頼《叔母さんの息子さんが結婚するという話を聞いたので、10万円を出金することをお母さんに依頼し、お祖母さん自身が叔母さんにその10万円を渡したこと》を書いてもらうといいでしょう。

(弁護士 北野英彦)
大澤龍司法律事務所
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13:36 遺産分割 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★名義貸し預金の調査はできるか【Q&A №548】

2016/12/13



【質問の要旨】

名義貸しの預金は誰のものか

記載内容 名義貸し 借名預金 履歴

【ご質問内容】

母が子や孫の名前で定額貯金をし、満期が来たのでそれぞれの名義の者が勝手に払い戻してしまいました。

母は名義を借りていただけだとメモで残していたので、母の死後、相続人同士で話し合って等分に分けることになったのですが金額もバラバラのようだし、ウヤムヤにしたいようです。

母の預金の履歴を調べる方法はあるのでしょうか

やっぱりもう無理なのでしょうか。

名義貸しとか税金の払い方とかのこともよくわからず要領をえない質問ですみません。

よろしくお願いします。
 
(あきらめかけてる相続人1)







【名義人にしか開示しないのが原則】

本件のように、別人の名義で預金をする(例えば親が子供の名義で預金する)ことが、昔は多く行われており、「名義貸し預金」「借名預金」などと呼ばれていました。

このような名義貸し預金は、預金をした(=お金を出した)人物と口座の名義人が一致しないため、取引履歴の開示請求を受ける金融機関も慎重な対応をします。

実際には名義人である子どもさん自身が履歴照会を求めれば、金融機関は誰がお金を預けたかはわかりませんので、名義人の照会には問題なく応じます。

反面、お母さんが自らのお金を預けたとしても、名義が他人であれば、お母さん(その相続人であるあなた)が請求しても、他人名義であるというそれだけの理由で金融機関は取引履歴を開示しない可能性が高いです。

なお、本件のような名義貸し預金(借名預金)の払戻手続や一般論については当ブログQ&A №300に記載しておりますので、合わせてご参照ください。


【名義人の承諾をとるしかない】

もし、名義人(子どもさんら)の了解がとれるのであれば、金融機関としても名義人の了解があるのですから、履歴を開示することに同意するでしょう。

開示に際して、具体的にどのような同意手続きが必要かは金融機関により異なります。

そのため、同意が取れそうな場合には、予め、金融機関に必要書類等を確認されるといいでしょう。


【お母さんのいた場所で通帳を探す】

被相続人が他人名義で預金を作っていた場合、相手方からはその名義人に贈与をしたのだという主張が出されることが多いです。

そのようなケースでは、私は通帳や印鑑を名義人に渡していたのなら、贈与の可能性が高いが、これらが被相続人の手元にあれば名義を借りただけだと判断することにしています。

もし、お母さんが単に子供さんの名義を借りただけというのであれば、預金通帳やその取引印はお母さんの手元にあるはずですので、それを探して、履歴を確認されるといいでしょう。

もし、通帳も印鑑も子どもに渡していたというのであれば、それはお母さんから子供への生前贈与だったとされる可能性があり、その場合には特別受益の問題が発生します。

なお、お母さんの手元に通帳が見つかった、あるいは少なくともお母さんが死亡するまでは通帳がお母さんの手元にあったというのであれば、生前贈与ではなく、遺産の一部になり、相続の対象になります。

遺産分割協議をしても、話し合いが進まないような場合には、早めに法律相談され、遺産であるとして証拠を残す方法や、解約された預貯金についての保全措置の要否、今後の取るべき方策等も弁護士にお聞きになるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

大澤龍司法律事務所
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16:02 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★内縁の妻からの葬儀費用の請求【Q&A №547】

2016/12/07



【質問の要旨】

内縁の妻が立て替えていた葬儀費用と入院費用を回収できるか?遺族年金はどうなるか?

記載内容 葬儀代 喪主 内縁の妻

【ご質問内容】

内縁の夫がなくなり(重婚的関係)本妻が体裁もあるので喪主を努めたいと言い、本妻が喪主、施主が内縁の妻で葬儀を終えました。

葬儀費用はとりあえず施主が払いました。

葬儀費用は折半(口約束)と約束したのに払ってくれません。

そのほかに入院費もかなりの金額を内縁の妻が払いました内縁の夫の遺産から、葬儀費用、入院費用を請求する事は可能ですか?

また、葬儀費用、入院費用、をもらうことにより、遺族年金の申請をするにあたって、内縁の妻の証明に不利になりますか

(ban)






【入院費用は相続債務であり、返還請求ができるが・・】

内縁の夫の入院費は本来その夫が支払うべきものであるのが未払いになっているものですから、相続の債務であり、遺産から支払う必要があります。

そのため、相続人に立替入院費の支払いを請求できます

なお、その請求先は法定相続人全員であり、支払いは各法定相続分に応じた分です。

そのため、子がいる場合であれば、法律的に請求できるのは、配偶者である妻に対しては立替分の2分の1のみです。


【葬儀費用について】

葬儀の喪主は妻であり、施主は内妻であるあなた、費用はあなたと妻と折半するとの口頭の合意があったにもかかわらず、妻の方が折半分の支払いに応じないという前提で考えると、折半の合意が成立したことが証明できれば、あなたは妻に半額を請求することができます

ただ、口頭ですので、《言った、言わない》の議論となり、結局、合意の証明なしとして、内妻であるあなたの請求が認められない可能性も高いでしょう。


【遺族年金の請求について】

遺族年金については厚生年金保険法により、《配偶者》が第一順位の受給権を有しています(厚生年金保険法第59条の2項。末記条文を参照)。

民法における配偶者は戸籍上の妻のみですが、この厚生年金保険法における《配偶者》には、戸籍上の妻のみならず、内縁の妻も含まれます(末記の厚生年金保険法第3条を参照。なお、以下においては厚生年金保険法の配偶者の意味で使用する場合には《配偶者》と記載します)。

今回の件では、戸籍上の妻が存在し、かつ、内縁の妻も存在しますので、《配偶者》に該当する人が2名になり、どちらが《配偶者》と扱われるのかという問題があります。

仮に戸籍上の妻がいても、《事実上の離婚状態》であり、かつ、あなたが夫の収入で生計を維持しているという立場であれば、遺族年金をもらえる立場になります(平成27年10月2日大阪地裁の判決が参考になります。⇒【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?参照)

上記裁判例も参考にして述べれば、《事実上の離婚状態》とは、婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつその状態が固定化して近い将来に回復される見込みがない場合をいい、具体的には次のようないろんな事項を検討した結果で判断されることになります。

①別居期間 ②別居の経緯 ③別居期間中の婚姻当事者の婚姻関係修復の努力の有無 ④別居後の経済的依存関係の有無(婚姻費用的なものを支払っているか) ⑤別居している夫婦の連絡あるいは面会状況 ⑥夫の内縁の妻との生活状況

単に別居して長期間経過しているというだけで内縁の妻が遺族年金は受けることのできる《配偶者》になるわけではありませんのでその点をご留意ください。

なお、遺族年金の支給を受ける要件として、死亡した者の収入により生計を維持していることが要件となっています。

さて、入院費や葬儀費の請求すること自体は、遺族年金の受給と直接関係しません。

ただ、もし、あなたが独自に多額の財産を有しており、それで入院費を支払い、又、葬儀費を支払ったというのであれば、《死亡した夫の収入で生計を維持したとは言えない》ということで生計維持要件を欠き、受給できなくなる可能性があります

(弁護士 大澤龍司)


厚生年金保険法

(遺族)
第五十九条  
遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(略)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
(略)
2  前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。


(用語の定義)
第三条
2  この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。


大澤龍司法律事務所
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15:47 その他 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続割合を教えてほしい【Q&A №530】

2016/09/21

【質問の要旨】

既婚(子あり)の兄がいる場合の相続分

記載内容 結婚 

【ご質問内容】

私は、埼玉県○○市に住む○○歳の男性です。

初めに私は障害者です。5年ほど前に『脳梗塞を患い』

○○市で介護保険の申請をし『要支援2』の認定を受けました。

・私は一人で住んでいます。

・私は字が書けません。

・言葉がやや不自由ぎみです。

・足が不自由で50mぐらいしか歩けません。

・今は殆ど歩け無いです。

【私はうまく喋る事が出来ないので】

【電話ではなくてメールで連絡を御願い致します。m(_ _)m】

それで相談なのですが

私には82歳に成る母親がいます。

なにぶん高齢なので、いつも『死んだら宜しくね。』と、言っております。

気になるのは遺産相続で、私以外には兄が一人おります。

兄は結婚してて義姉とその孫に成る息子が20代二人おります。

それと私には離婚した妻と23歳になる息子がいます。

こんな家族関係ですが、私の遺産相続は幾らに成るのでしょう?

※当事務所の判断により、一部伏字にしています。

(ほほほ)







【相続人はあなたとお兄さん】

まず結論から申し上げますと、このままお母さんが亡くなった場合、お母さんの相続人は、あなたとお兄さんのお二人です。

お二人はお母さんの「子」であり、相続人たる地位を有するからです。

このことは、たとえあなた方ご兄弟に子ども(お母さんから言えば孫)がいたとしてもなんら変わりません。また、あなたの障害や離婚もこの結論には影響しません。

そして、兄弟姉妹の相続分は頭数で平等に分けられますので、あなたもお兄さんも、相続分は2分の1ずつです。戦前の法律とは違い、特に長男の相続分が多いというような事はありません。

以上は、お父さんが既に亡くなっているものとして回答しています。

もし、お父さんが生きておられ、お母さんと婚姻しているのであれば、配偶者としてお父さんが遺産の2分の1を、又、お兄さんとあなたはそれぞれ4分の1の割合で遺産をもらえることになります。


【考えられるその他の可能性】

なお、お兄さんがもし不慮の事故などでお母さんより先に亡くなった場合、その後に発生したお母さんの相続は、あなたと、あなたのお兄さんの子が相続人になります(このような場合を代襲相続と言います)。

この代襲相続の場合でも、あなたの相続分が2分の1であることは変わりがありません。

また、仮にお義姉さんがお母さんと養子縁組をすれば、子は3人になりますので、相続分はそれぞれ3分の1ずつになります。

養子縁組をしているかどうかはお母さんの戸籍謄本を見ればわかりますので、もしご心配であればお調べになっても良いと思います。

(弁護士 北野英彦)

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13:44 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄されたマンションの管理費回収方法【Q&A №465】

2015/09/09



マンションの区分所有者が亡くなり、相続人がいません。滞納管理費を回収する手段はありますか?


【ご質問内容】

分譲マンションで独居老人が1年前に亡くなりました。

その後の管理費(年間約35万円)が滞納中です。

当該不動産に抵当権等の権利設定は全くありません。

相続人調査は未だ行っていませんが、息子さんの話では相続放棄する(した)とのこと。

管理組合として債権保全を行い滞納管理費を回収するにはどう処置したらよいでしょうか。

例えば、当該不動産に仮差押をすることは可能でしょうか。可能としたら、どのような手続きが必要になりますか。

宜しくお願い致します。


記載内容

  マンション 管理費 滞納

(管理組合理事A)





【まず、他に相続人がいないかどうかを調査する必要がある】

 すでに息子さんが相続放棄されているようですが、他に相続人はいないのでしょうか。

 相続には順位があり、配偶者と子(または孫)がまず第一順位に相続人になります。

 今回の質問では息子さんが相続放棄されたということですので、第2順位の直系尊属である独居老人のお父さんやお母さんが生存しているのか、万一、生存しているとしたらその方が相続放棄をしているのかどうかを確認する必要があります。

 その後、兄弟姉妹も第3順位の相続人になりますので、これらの方が存在するのかどうか、存在するなら相続放棄をしているのかを確認する必要があります。

 もし、相続放棄をされていない法定相続人がおられれば、その方が債務を引き継ぎますので、その方に請求して、必要な手続きを進められるといいでしょう。



【相続財産管理人を選任することになるが・・】

 相続放棄の結果、相続人がいない場合には、債務を引き継ぐ人もいなくなり、滞納された管理費はもはや誰にも請求できません

 ただ、マンション(の一部屋)という財産があるケースですので、その財産を競売等で換価して、延滞賃料の支払いに充てるということも考えられます。

 しかし、訴訟等の法的手続きをするには相手方が必要ですが、相続人不在では債務者がいないために手続をすることができません

 このような場合、債務者の立場になる相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申立することができ、申立があれば、裁判所は相続財産管理人となる弁護士を選任します。

 管理組合としては、この相続財産管理人を債務者として手続きを進めることになります。

 ただ、相続財産管理人の選任申立するには、裁判所に約90万円程度の予納金を納める必要があります。

 この予納金は原則として返還されません




【回収までの手続き】

 財産管理人は独居老人の方の遺産を調査されますので、もし預貯金があれば、財産管理人に債権申し出をする手続きがありますので、延滞管理費の弁済を受けることができる可能性があります。

 もし、預貯金がない場合にも、財産管理人が独居老人のマンションを売却し、その代金で延滞金を支払ってくれる可能性もあります。

 ただ、延滞額である約30万円を回収するために、相続財産管理人申立のための予納金90万円を出すのかということになり、管理組合としてはどちらを選択するかということになります



【管理組合として考えるべきことは・・】

 財産管理人の選任の方針を選択すれば、管理組合として90万円もの費用負担が必要になります。

 しかし、反面、このまま放置しておくと、その独居老人の部屋からの管理費は未来永劫に回収されなくなります。

 また、その部屋をこのまま放置しておくことが、近隣の住民(所有者)やマンション全体にとって悪影響を与える可能性も考えられます。

 多額の金銭がかかっても相続財産管理人を選任するのか、このまま放置するのか、管理組合や他の所有者で協議、検討のうえ、今後の方針を固められる必要があるでしょう。
 
(弁護士 大澤龍司)
大澤龍司法律事務所
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16:04 相続債務 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

騙して遺言を書かせると罪になるのか 【Q&A №458】

2015/07/27



【質問のまとめ】

認知症で遺言作成能力がなくなっていた母の遺言書が出てきました。

 三女が下書きをして、認知症の母を騙して書かせたものです。

 そんなものを書かせることは犯罪ではないですか? 



記載内容

  意思能力 詐欺 警察


【ご質問内容】

 母は当時認知症で遺言作成能力はありませんでした。

 診療記録や介護記録や認知症の検査結果があります。

 私長女は母から「三女に下書きをして来たから遺言書書けと言われて書いた」と聞いていましたが、検認時に初めて見ました。

 次女の息子(たった一人の男の孫)に「墓を守って貰いたい為、不動産をその孫の名前にした」と聞いていました。

 その言葉から「孫に遺贈する」内容だと思いました。

 しかし検認された遺言書は遺贈の件も墓の話も一切なく、重い病気にかかっている次女に不動産(仏壇のある古い家)を押し付け、長女と三女に貯金を二分の一ずつ相続させるとの内容です。

 三女は「お母さんの希望を尊重して下書きしてきた」と母に渡したとメールに書いてます。

 要介護5の母は三女の下書き通りに書けば自分の希望通りになると必死で書いたと思われます。

 意思ではないので遺言書を無効にするのは当然ですが、認知症の母に騙して書かせた三女に罪は問えないものでしょうか?

 三女は親のキャッシュカード7枚作成し出金し返していません。

 金融機関の取引履歴でわかっています。

 この使途不明金を有耶無耶にする為にこのような遺言書を書かせたものと思います。



(azurea)








【詐欺になっても、処罰されることはない】

 騙して遺言書を作成させたというのであれば詐欺になる可能性が考えられます。

 ただ、仮に詐欺罪にあたる行為がなされたとしても、親子(法律的に言えば直系血族)間での詐欺は処罰の対象になりません(刑法 251条、244条。末尾に条文を記載しておりますのでご参照ください)。




【対応策は遺言無効と生前の取込分の返還を求める方法で】

 刑法で処罰されないとなると、民事上の対応として次の2つの方策が考えられます。

 ①遺言書の無効を主張する。

 お母さんについて認知症の検査がされているのであれば、その結果によっては遺言が無効とされる可能性があります。

 その検査が長谷川式認知スケールなら30点が満点ですので、10点以下であれば意思(遺言)能力なしとして無効になる可能性が高いでしょう(【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介参照)。


 次に、仮に生前に取込(無断出金)された分があるのなら、生前なら、お母さんがその出金者に対して不当利得返還請求あるいは不法行為による損賠賠償請求ができます。

 お母さんが死亡された場合、これらの権利は相続分に応じて相続人が取得しますので、上記遺言の無効とともに、取込財産の相続分に応じた分の返還を求めるといいでしょう。




【弁護士との相談も考える】

 いずれにせよ、認知症の程度の判断、カードでの出金をしたのが三女であるのかどうかなど証明も必要ですし、また、三女の行動から見て、話し合いで簡単に決着がつくようには思われません。

 もし、可能であれば、相続に詳しい弁護士に事情を説明され、とるべき方策を協議されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)



刑法

(親族間の犯罪に関する特例)
第244条
 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

2  前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

3  前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

(準用)
第251条  第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪(詐欺罪等)について準用する。
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16:19 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★相続放棄と遺留分【Q&A №447】

2015/05/27
 


生前贈与を受けた人が相続放棄をした場合,特別受益はどうなりますか?

また,生前贈与を受けた人が相続放棄して,遺留分減殺請求をされた場合はどうですか?



記載内容

  生前贈与 遺留分 相続放棄 


【質問詳細】

被相続人(父)、相続人A(長女)B(次女)C(長男・末)がいます。

Aは生前に1,000万、B・Cは500万ずつ贈与を受けています。

父の遺産は現金500万、不動産1000万です。

Aは上記1,000万円の他に、父が生前の2年前にAの子二人(孫にあたる、共に成人)

に100万円ずつ生活支援のお礼としてお金を渡したこと、それ以前に色々な事象にて

お金(総額で2~300万円か)を貰っていたことを考慮し、遺産を放棄することにしました。

相続人BとCは父生前のA及び子に対する過大な贈与を受けたことが不満で、遺産1,500万円に各々の生前贈与(特別受益)を加算し、分配すべきと主張しています。

Aとして相続を放棄するのに、差額をB・Cに払う義務あるのですか?

併せてB・Cの遺留分について減殺請求権があった場合どうなりますか?



(goo)





【相続放棄すると特別受益の問題は発生しない

 Aさんが、お父さんの遺産について相続放棄をする前提で回答していきます。

 相続放棄をすると、Aさんは法定相続人ではなくなり、遺産分割の問題は発生しません。

 遺産分割はBさんとCさんとの間でするだけになります。

 特別受益は、遺産分割の際、法定相続人に生前贈与分などがある場合にその贈与分を遺産に持ち戻すという制度です。

 しかし、その生前贈与を受けた人が法定相続人でなくなれば、特別受益の問題は発生しません




【相続放棄しても遺留分の問題は発生する

 相続放棄をした場合でも、その人が多額の生前贈与を受けていたのであれば、他の法定相続人(正確に言えば遺留分権利者)から遺留分減殺請求を受ける場合もありえます


 例えば、生前に1億円の贈与を受けた人がいたため、遺産が0円であったような場合で、その贈与を受けた人が相続放棄をするケースを考えてみましょう。

 贈与を受けた人は相続放棄をしているのですから、特別受益の問題は発生しません。

 しかし、遺留分は法定相続人にある程度の遺産(法定相続分の半分程度)だけは渡るようにしようという制度ですので、生前贈与を受けた人は請求に応じて、遺留分に該当する遺産を渡さなければならないということになります。




本件のケースでは遺留分減殺請求はできない

 遺産は法定相続人AさんとBさん、Cさんに生前贈与計2000万円遺産が計1500万円その他に200万円と2~300万円の生前贈与分があるとの前提ですので、遺留分計算の基礎となる遺産額は4000万円になります。

 Bさんとしては生前贈与分500万円と今回の遺産分の半額である750万円の1250万円がお父さんの遺産から入ることになります。

 Aさんの相続放棄によって、Bさん及びCさんの遺留分は本来の法定相続分2分の1の半分(4分の1)になっています。そうするとBさんCさんのそれぞれの遺留分は1000万円となります。


 (Bさんの)得た額    (Bさんの)遺留分 


 遺留分が侵害されていませんので、Aさんが遺留分減殺請求をされることは法的にはないケースでしょう。
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14:53 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

父の言葉を代筆した遺言書の効力【Q&A №446】

2015/05/22




口頭で言ったことを、ほかの人が代筆して文書にして、

本人が自筆で署名押印した場合、将来の遺産分割協議で有利になりますか?



記載内容   遺留分 


【質問詳細】
 義父より自身が死んだ時のために相続人間で争い事が起きぬよう残しておきたいことがあるので、協力して欲しいと言われました。

 相続人(子)はA男・B男・C子で(私はC子夫)、C家が父を看ています(A・Bとソリが合わないことから)。

 父は今までにC家に対して自身の生活支援のお礼として事ある度に幾らかのお金を渡してきました。

 家屋購入資金(C子夫名義)、孫の入学祝いや就職祝い、孫の結婚祝い、等です。

 A家とB家にも相応にお金を渡していましたが、C家までには至らなかったようです。

 それがA・Bとして不満であり、大きな騒動になりました。

 C家は相続人であるC子が直接貰い受けていないお金もあるが、総括してA・Bより多くのお金をもらっていることから、父没後の遺産を放棄するつもりです(A・Bより色々理由つけられて遺留分を請求してくることが予想されることから)。

 これを義父に話したところ、「遺産は平等に受けろ。A・Bは今まで何も支援してくれない上に渡した金額差に文句を言っているだけ。二人が自分にしたことを明確に列記し、何で差がついたか、今まで幾ら渡したかを言うので、自身の宣言書として書き残して欲しい」とのことです(父は口は達者ですが体力が衰え書き事ができない)。

 内容はこれから考えるとの事ですが、とりあえず私がそれを聞き代筆し、父自筆で署名捺印した書面について将来の相続協議に有利となるのでしょうか?


(Noppo)





【それは遺言書ではない】
 
 質問者の方はおわかりのようですが、念のために記載しておきます。

 お父さんが考えた内容を、あなたが《とりあえず私がそれを聞き代筆し、父自筆で署名捺印した書面》は遺言書にはなりません

 遺言書は遺言者が全文を自分で記載し、日付及び署名・捺印をしたものです。

 お父さんの意思に基づいたとしても、その内容をあなたが記載したのでは遺言書にはなりません。



【お父さんの意思を書いた文書は相続協議に役に立つか】

 遺言書ではないにしても、死亡された人の意思がはっきりしている場合、それが遺産分割協議に役立つかは場合により異なります。

 法定相続人間でお父さんの意思についての共通了解があり、しかも法定相続人の間及びお父さんと法定相続人間で人間関係が円満な場合には、お父さんの意思が尊重される場合が多いでしょう。

 しかし、本件ではお父さんとあなた以外の法定相続人との関係も、法定相続人間の関係もぎくしゃくしていることを考えると、あなたが質問で記載したような書面を残しても、相続のためには役立たない可能性が極めて高いでしょう。




【相続放棄と遺留分】

 あなたは相続放棄をするということもお考えのようです。

 おそらく相続放棄をし、相続人にならないことによって、相続問題に巻き込まれないということをお考えになっていることと思います。

 あなたが相続放棄をするのであれば、あなたは相続人ではなくなりますので、法定相続分を前提とする遺産分割問題は発生しません

 しかし、あなたが生前に贈与を受けていたという事実はなくなるわけではありませんので、他の相続人としては、あなたに対して遺留分減殺請求をする可能性があります

 その場合、生前の贈与分は遺留分の算定の基礎財産に含まれることになります。

 相続放棄をしたからといって、遺産争いがなくなるわけではないということを理解しておく必要があるでしょう。




【遺留分減殺請求への対処が必要】

 本件では、遺産分割であれば他の相続人はあなたの特別受益を主張するであろうし、また、相続放棄をしても遺留分減殺をする可能性が高いです。

 そうであればあなたとしては、そのような事態に対処する方策を現時点で取っておく必要があります。

 そのような場合には、あなたとしては金銭を他の法定相続人に支払って解決することが多いです。

 その点を考えると、あなたとしてはお父さんから金融財産(預貯金等)をもらう内容の遺言書を書いてもらい、不動産等は他の法定相続人に渡すということで、将来の金銭支払いに対処するという必要があると思われます。

 いずれにせよ、具体的な金銭勘定がわかりませんが、この点については相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。

 なお、お父さんが遺言書をご自分で書けないというのであれば、公正証書遺言を公証人に作成してもらうという方法もありますので、この点も併せて弁護士と相談されるといいでしょう。

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11:43 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

亡父の家の鍵は返すべきものなのか【Q&A №438】

2015/03/25



 3人兄弟です。

 私は末弟です。

 死後、遺産である家のカギ、について質問します。

 親から3人とも、緊急用に親の家のカギを預かっていました。

 分割協議の結果長男が家を相続します。

 長男からカギを返せ、返さなければ被害届を出す、と言われています。

 私の子供は(被相続人からみて孫)祖父っ子であった為、又、私が、当然長男はカギを交換すると勝手に思っていたため、子供に、祖父の思い出としてカギを渡してしまっています。

 カギは、もとは父の所有物なので遺品なのか、であれば私にも1本貰える権利があるのか、或は、カギは家の付属物で、家を相続した長男のものになるのか、教えて頂きたいです。

 分割協議に異論はありません。

 よろしくお願いいたします。


記載内容   

  カギ 実家 

(きんつば)





【鍵は遺産です】

 もともとお父さんから鍵をあなたが緊急用として預かったということですので、鍵の所有権はお父さんにあり、鍵は遺産の一部になります。

 あなたは緊急の場合に家に立ち入るための目的で、所有者であるお父さんから鍵を預かったということになります。




【鍵の返還義務があるか】

 鍵が遺産であるとするとその相続が問題になります。

 遺産分割協議書に鍵をどのように相続するかが記載されているのであれば、その内容に従って、鍵が相続されます。

 しかし、鍵の相続について、特別に記載しているような遺産分割協議書はまずないでしょう。

 次に、鍵も動産ですので、遺産分割協議書に動産に関する条項があれば、そのとおりの扱いになると考える余地がありそうです。

 しかし、私としては家屋を単独取得した人がおれば、その人が鍵の返還を受けることができると考えるべきだと思います。

 鍵は、家の使用に伴う必要不可欠なものであり、家を取得しなかった者が所持し続ける必要性はないでしょう。

 緊急用に預かったようですが、お父さんが死亡している以上、預かった目的は消滅していますので、その点からも返還をするべきものでしょう。

 鍵自体が経済的な価値があるような場合(例えばダイヤモンドをちりばめたようなもの)は別として、鍵自体の経済的は価値はほとんどないのが通常であることを考えれば、やはり家の所有者が返還をうけるべきだという結論になります。



【鍵と形見、被害届について】

 長男さんは鍵を返さなければ被害届を出すと言われているということですが、警察がこのような問題を取り上げるということはないでしょう。

 お孫さんがお祖父さんである被相続人の形見として持っているということも記載されていますが、形見としては他の物を与え、鍵は家の単独所有者である長男さんに返還するのが望ましいと考えますが、いかがでしょうか。

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13:08 遺産 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

戸籍謄本の取り寄せ【Q&A №419】

2014/12/11



 遺言書の検認には相続人全員の戸籍謄本が必要だということですが、
父が死んで、子ども3人が相続人で、姉2りは結婚している場合は、
姉のしょうだくなしでも、郵送で、兄弟でも遺言書の検認、相続のためである、と
して戸籍謄本をとれますか?
この場合、必要書類はなんでしょうか?


記載内容

  戸籍謄本 直系親族 正当な理由

(hjhj)


【遺言書検認や相続関係確認のためなら他人の戸籍も取ることが可能】
 他人の戸籍については、原則として同一戸籍内(配偶者や子)及び直系血族(両親、祖父母、孫)であれば取り寄せ可能です。
 正当な理由があれば他の人の戸籍も取り寄せが可能です。
 遺言書の検認や相続関係確認のための取り寄せであれば、正当な理由に該当しますので取り寄せが可能です。

【必要な書類は以下の4種類です】
 郵送で戸籍を取り寄せする場合、次のような書類が必要です。
○戸籍等の取り寄せのための申請用紙(所定の事項を記載する)
 なお、この用紙は、ネットで「全国の市区町村窓口一覧」にアクセスし、入手することが可能です。
○本人確認書類
 運転免許証や住基カード、健康保険証の写しがこれに該当します。
○定額小為替
 役所に支払う料金は次のとおりであり、郵便局で定額小為替を買って同封する必要があります。
 参考までに言えば、1通あたりの料金は次のとおりです。
●戸籍謄本・戸籍抄本  450円
●除籍謄本・除籍抄本  750円
●改製原戸籍謄本・改製原戸籍抄本  750円
●戸籍附票謄本・戸籍附票抄本  100円~500円
(役所により料金が異なります)
○ 返信用封筒
 申請人の住所地にしか送付してもらえませんので、ご注意ください。

(なお、郵送ではなく窓口にて戸籍を請求する場合は、定額小為替でなく現金で支払います。また、返信用封筒は不要です。)

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10:02 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

養子縁組前に生まれていた子の代襲相続【Q&A №414】

2014/12/03



 7年前に祖父が他界したとき(父:長男は既に他界)、遺言があり、遺産は、父の弟に全て渡す(ただし祖父の後妻に毎月50万支払条件)ことになり、その他の相続人(母、父の弟の妻(養子になっていた為)、父の妹、父の子供私と姉)は遺留分をもらっています。
 今回祖父の後妻が亡くなり、相続分割について話し合いがおこなわれています。
 後妻の養子には父、母、父の弟、弟の妻が入っていたのですが、父が既に他界していることから相続は、母、弟、弟の妻の3人で父の子供の私と姉には相続出来ないと言われています。弟夫婦は既に祖父の遺産を全て受けているのでせめて母に少しで多く残す方法は無いのでしょうか。
 祖父、後妻の財産の管理は弟夫婦が全ておこなっており、遺産分割の話し合いも弟夫婦に縁のある税理士が間に入りアドバイスをしているようです。


記載内容

  養子縁組 特別寄与 生前贈与

(ヒューマン)


【養子縁組の前に生まれていた孫は代襲相続できない】
 質問のケースでは、あなたのお父さんは、被相続人であるお祖父さんの後妻さんと養子縁組されています。
 ところで、養子縁組をされた後にあなたとお姉さん(以下、あなた達といいます)が生まれたのであれば、あなた達は被相続人であるお祖父さんの直系卑属になりますので、代襲相続ができます。
 しかし、養子縁組前に生まれていたのであれば、あなた達は被相続人であるお祖父さんの直系卑属ではなく、代襲相続はできません(※後記参照条文:民法887条2項但書参照)。

【法定相続分を動かす手段は特別受益か特別寄与ぐらいしかない】
 もし、あなた達がお父さんとお祖父さんの後妻さんとの養子縁組の前に生まれていた場合には、相続人はあなたのお母さんと(お父さんの)弟さん夫婦の3人となり、その法定相続分は各3分の1です。
 ただ、後妻さんが弟さん夫婦に対して生前贈与をしているというような《特別受益》に該当する事実があれば、お母さんの相続分を増加させることが可能になります。
 又、あなたのお母さんが、後妻さんの財産を増加させ、あるいは減少を食い止めたというような事情があれば、《特別寄与》として寄与分を主張できることがあります。
 それらに該当するような事情があるかどうか、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。

【相続分の範囲内での解決しかない】
 後妻の相続では遺言も書かれていないようですので、法定相続分通り、①あなたのお母さん、②お父さんの弟、③弟さんの妻の3名がそれぞれ子の立場で3分の1ずつ後妻の遺産を相続します。
 そして、「祖父の相続の際に多く遺産を相続しているから」という事情はお母さんの相続分を増やす理由にはなりません。道理としてはよくわかるのですが、そのような事情を法律上反映する制度が我々の知る限りありません。
 その意味で、大変申し訳ない回答ではありますが、相続分の範囲内で可能な限りのご意向を実現するほかないように思われます。

《参照条文》  民法第887条:(子及びその代襲者等の相続権)
 1.被相続人の子は、相続人となる。
 2.被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
 3.前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

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16:57 相続人 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★遺留分減殺対策で、家を贈与又は売買したい【Q&A №413】

2014/12/03



 母は持家のマンションで一人暮らしです。
 その母の家を私の娘に生前贈与したいと言っています。(母の財産は、そのマンションだけです。)推定相続人は私と妹の2人で、妹は母の財産の半分を貰う気 満々です。
 母から娘への名義変更なら、原則としては特別受益には該当しませんよね。(娘は19歳大学生です。)
 もし妹が遺留分減殺請求したら、この場合 持ち戻しと言うことになるのですか?
 そう判断されない様にする方法は ありますか?
 この裁判にかかる費用は いくらぐらいですか?
 妹に母の家を渡さない方法として、家を私か主人が買い取ると言うのはどうですか?
 評価額は1700万円くらいなので、その値段で買う。(現金買取でも良いですか?)そして母から娘へ教育資金贈与を1500万円して貰う。
 母は現金を持っていないので、つじつまは あっていると思うのですが、どうですか?売買なら特別受益にもならないですよね。税金がかかるとは思いますが。これ以外に妹に家を渡さなくていい方法があれば教えて下さい。宜しくお願いします。

記載内容

   贈与

(佐奈)





【原則は特別受益にあたらないが、断言はできない】
 推定相続人(本件ではあなたと妹さん)に対する贈与なら、特別受益として遺産に持ち戻すことになります。
 しかし、質問に記載されているような、あなたの娘さん(被相続人から見ればお孫さん)への贈与は推定相続人に対するものではないため、ご指摘のとおり、原則として特別受益の問題は発生しません。
 ただ、夫に対する贈与が、推定相続人である妻に対する贈与であるとされた裁判例が1件あります(「【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益」参照)ので、絶対に特別受益にはならないと断言することはできません。
 どのような場合に特別受益とされるかの判断基準は、裁判例が1例だけですので、必ずしも明らかではありませんが、抽象的に言えば《娘さんに対する贈与が、あなたに対する贈与と同視されるような場合》には特別受益とされる可能性があります。
 今回のようなケースでは、
①娘さん(孫)が未成年であり、自分では管理処分する意思と能力を持たない。
②なぜ推定相続人であるあなたではなく、お孫である娘さんにわざわざ贈与するのかという動機

という点などが、検討されるべき事項になるように思います。

【特別受益にはならなくとも、遺留分減殺請求は受けることになる】
 娘さんへの贈与が、推定相続人であるあなたへの特別受益と判断された場合には、特段の事情がない限りは、時期や損害を加える意思の有無を問わず、遺留分減殺の関係では遺産に持ち戻されます(相続Q&A №324およびQ&A №411参照)。
 なお、仮に娘さんへの贈与があなたの関係での特別受益にならないとしても、妹さんの立場から言えば、娘さんに対する遺留分減殺請求をすることが可能です。
 遺留分減殺で遺産に持ち戻される贈与は、相続開始前の1年間にされた贈与か、遺留分権利者に損害を加えることを知った贈与です(後記参照条文:民法1030後段)が、本件の場合、贈与の対象となる持ち家が、お母さんの唯一の財産ですので、《損害を加えることを知った贈与》とされる可能性が高いでしょう。

【買い取れば特別受益にはならない?】
 次に、あなた又はあなたのご主人が買い取る案をお考えのようですが、1700万円という買取金額が相当額であれば、その売買自体は特別受益にはなりません(なお、税務当局は親子間の売買には厳しい目を向けており、果たして本当の売買であるかどうかを調査するという可能性もあることも考慮されておくといいでしょう)。
 又、売買代金1700万円のうち、約80%に相当する1500万円を、お母さんから娘さん(孫)へ教育資金として贈与するとなれば、本来は親であるあなたが負担しなければならない教育費を、お祖母さんが負担したことになり、これによって、あなたが教育資金の負担を免れたという《特別受益》が発生する可能性もあります。
 また、売買の時期や贈与の時期が近接している、娘さんにわざわざ教育資金を出す必要性が乏しいような場合には、売買と贈与とが《仕組まれた一体の取引》であり、実質的には買取ではなく、あなたへの贈与であったと見られる可能性も想定しておく必要があります。

【遺留分減殺請求の裁判費用】
 裁判にかかる費用としては裁判所に納める申立印紙代や弁護士費用がありますが、今回最も大きな費用となるのは弁護士費用でしょう。
 弁護士費用は自由化されていますので一概には言えませんが、遺留分減殺請求事件は弁護士間では難しい事件とされています。
 このことを考えると、事件を依頼する場合に支払う着手金として、妹さんからの請求額の8~10%程度になり、事件終了時に支払う報酬として、仮に全部を勝訴した(妹さんに1円も支払いをしない)という場合には、請求額の10~16%といった金額の水準で契約する弁護士が多いように思います。

《参照条文》 民法第1030条(遺留分の算定)
 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。


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16:50 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

孫や自分の夫への贈与と特別受益【Q&A №411】

2014/11/20



 母はマンション(持家)で一人暮らしです。相続人は私と妹の二人で、母が妹には財産を残さないと言っていて、マンションを私に生前贈与すると言っています。しかし私に名義変更したら特別受益になりますよね。
 妹は母の財産を貰えると思っていますし、遺留分の事も知っています。そこで特別受益に該当しない方法として、マンションの名義を主人か私の娘(相続人では無いので)にするのは、どうですか?この時に相続税はどうなりますか?それと、名義を夫か娘に変更した後、母のマンションに夫か、娘が住まないと問題になりますか?住民票を移すだけでもいいですか?時々は泊まります。 
 もう一つの案が、母から私に名義変更して、暫くして私から夫に名義変更すると言うのは可能ですか?その時、結婚して23年なので住居用不動産の配偶者控除を利用すればマンションの評価額は2000万円以下なので税金はゼロですよね。この場合、母の住所に住民票を1人でも移していれば大丈夫ですか? たくさん書いてしまいましたが、宜しくお願いします。


記載内容

   贈与
(仁万)


【夫や孫への贈与も特別受益になりうる】
 贈与が特別受益として遺産に持ち戻されるのは、原則として、法定相続人に対するもののみです。
 したがって、相続人ではないご主人や娘さん(お母さんから言えば孫)にマンションの名義を移転することについては特別受益にならないというのがとりあえずの結論になります。
 しかし、過去の裁判例の中には、たとえば法定相続人である長女ではなく、その夫に対した贈与が、実質的には相続人への贈与であると同一視され、特別受益として持ち戻しされたものもあります(相続Q&A №324および「【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益」をご参照ください。)。
 なお、ご主人や娘さんに贈与した場合には、相続税ではなく贈与税が課税されることになり、多額の贈与税を受贈者が支払うことになる場合もありますので、ご注意ください。

【居住と所有は別問題です】
 名義変更後のマンションに、贈与を受けたご主人か娘さんかが居住するのかどうかという問題ですが、所有者と居住者は必ずしも合致する必要はなく、お母さんが居住のままでもいいと思います。
 ただ、親子や親族間の名義移転については、名義の仮想移転であり、真実の贈与ではないという主張が出てくる可能性もあります。
 そのため、そのような主張を封じるために、新所有者と居住者であるお母さんとの間で使用に関するなんらかの合意をしておくといいでしょうし、固定資産税等も贈与を受けた所有者が支払う必要があるでしょう。

【二段階の名義変更のメリットはない】
 いったんあなたに名義変更した後に、更にご主人に名義変更するという二段階の贈与もお考えのようです。
 しかし、あなたがいったん母から贈与を受けたという時点で特別受益が発生し、相続の時点で遺産に持ち戻しされることになります。
 また、登記費用が二重に発生しますし、贈与税も夫婦間の居住用資産の配偶者控除の適用を受けるにしても、少なくとも、お母さんからあなたに名義移転する段階で贈与税がかかります。
 結局、2段階の名義移転のメリットはないという結論になります。
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16:01 生前贈与・特別受益 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続人の配偶者の借金返済は特別受益となるか【Q&A №403】

2014/10/10
 子(法定相続人)の配偶者が過去に起こした借金が原因で、苦しい生計を案じた親(被相続人)が孫の教育費・車購入・住居購入(配偶者名義)の一部援助、借金の肩代わり(返済不要)、そして孫に数度の生活援助をした経緯があります。
 被相続人の遺産を当該相続人が相続する際、援助を受けた金員は特別受益としてみなされるのでしょうか。それとも借金が原因であるとの見解から、当該相続人の被相続人への借金として遺産に加算し、別相続人に分配されるものなのでしょうか。

記載内容

借金の支払い 返済 特別受益 相続人以外の人への贈与
(BOO)


【相続人以外の人への贈与は原則、特別受益にならない】
 質問は被相続人の生前の財産移転行為のうち、お孫さんへの教育費・数度の生活援助、住居購入(配偶者名義)の一部援助は《お孫さん》あるいは《配偶者》という、いずれも相続人以外の人に対するものです。
 特別受益は相続人に対する贈与を対象としており、相続人以外の者への贈与は原則として特別受益に該当しません。
 ただ、裁判例の中には、配偶者への贈与であっても、贈与の経緯、目的物の価額、その贈与により受ける相続人に利益等を考慮した後、特別受益としなければ相続人間の実質的平等に反するとして、配偶者への贈与を特別受益としたものがありますが、かなり古い判例です(福島家裁白河支部審判 昭和55年5月24日)。
 本件では、相続人ではなく、借金をした配偶者の名義で購入した住居購入代金の一部を支援したということですが、(今度借金したら、差押えでその住居を押さえられるのにという疑問もでますが、その点は別として、)名義は配偶者名義だが、実質は相続人のものであるという何らかの理由や事実があれば、特別受益の可能性はあります。しかし、配偶者がローン代金を支払っているということなら、特別受益とすることはむずかしいと思います。
 お孫さんへの贈与も特別受益にならないのが原則ですが、実質的には相続人への贈与と同視できるような場合には、このお孫さんへの支援が特別受益とされる可能性もあると思われます。

【借金等の肩代わり(返済不要)はケースバイケース】
 借金の肩代わり(返済不要)ということであれば贈与になります。
 しかし、全ての生前贈与が特別受益になるわけではなく、《生計の資本》としての贈与のみが特別受益となります。
 借金も、住宅ローンのような生活費を原因とする借金なら特別受益になるでしょう。
 しかし、ギャンブル等の遊興費が原因の借金なら《生計の資本》に関係ない贈与として特別受益にならないと考えられています。
 ギャンブルの借金の立替支払いが特別受益にならないという結論には納得しがたいと言われる方も多いでしょうが、条文上、《生計の資本》としての贈与だけを特別受益としている以上、この結論はやむを得ないという考え方になります。

【当事務所の弁護士協議では・・・】
 ただ、当事務所の弁護士間で検討した結果も、参考として以下に記載しておきます。
 前項の結論は借金の原因に基づいて、特別受益かどうかを判定しています。
 上記のような考え方を前提にすると、仮にギャンブルによる借金のため、相続人が生活できず、そのため被相続人が多額の贈与をした場合は次の結論となります。
①生活費を援助した場合・・・特別受益となる。
②被借金自体を立て替えて支払った場合・・・特別受益ではない。
 ただ、このような結論は説得力が乏しいように思います。
 そのため、上記の②も結果として相続人の生活苦を救うための方策としての支払いであり、特別受益として扱われてもいいのではないかと考える余地がありそうです。

【車のローンの支払い】
 なお、相続人の車のローンの支払い、あるいは車代金の支払いは特別受益になると考えていいでしょう。
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16:31 生前贈与・特別受益 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

介護保険料・健康保険料の還付金と相続放棄【Q&A №390】

2014/06/19
 亡くなった主人の相続放棄をしました。

 市役所からの通知が届き、「死亡した方の年金から天引きされていた介護・国民保険料が、未支給年金を受給する資格のある遺族に還付される」とのことです。
 それで、「還付請求書」に振込口座などを書いて出してください、との通知でした。

 未支給年金は、妻が相続放棄をしても受け取れるとのことですが、主人が収めすぎた介護・国民保険料の還付も、受け取ってもよろしいのでしょうか?

 年金生活者だったので、死亡後にさまざまな還付金があるのですが、相続放棄すると、受取ってもよいものといけないものがあるようで判断に悩みます。

記載内容

還付金 未支給年金 保険料
(ぽんこ)


【相続放棄した場合、遺産なら還付を受けることができない】
 問題となっているのは
① 未支給年金
② 介護保険の還付金
③ 国民健康保険の還付金

といういずれも請求権です。
 これらの権利が遺産になる場合には、相続放棄をすれば請求できません。
 以下、個別に検討していきます。

【未支給年金は遺産ではない】
 未支給年金については、末尾に記載した法律により、相続の規定である民法とは異なる支給順序が定められています。
 そのため、裁判所の判決で遺産ではないという判断をされています。
 そのため、相続放棄をしていても未支給年金を受け取ることができます。

【介護保険及び健康保険還付金は遺産である】
 ところが、介護保険や国民健康保険の保険料の還付金はこのような特別の規定がないため、他の請求権と同じ扱いで、債権として民法の原則に従うことになり、遺産になります。
 そのため、相続放棄をすると請求することができません。

【もらってしまうと不利益がある可能性があります】
 もし、遺産である介護保険や健康保険還付金の還付を受けうると相続放棄ができなくなりますし、既に相続放棄をしていても相続放棄の効果を主張できなくなります。
 相続放棄をするということは通常は被相続人の方の債務が多額である場合が多いということになります。
 還付を受けたという事実を債権者が知ることはないとは思いますが、万一、債権者が及び健康保険還付金を受けたことを知った場合には、それらの債権者から被相続人の方の債務の請求を受けることになりかねませんので、ご注意ください。

《参照条文》
国民年金法第19条 (未支給年金)

1. 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
2. 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者の子は、同項に規定する子とみなす。
3. 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。
4. 未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。
5. 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。
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13:07 相続放棄 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

遺産調査の弁護士費用【Q&A №385】

2014/06/11
 祖母がなくなりました。

 私は相続人のうちの一人なのですが、別の相続人が財産を管理していたため、遺産の額が把握できないでいます。

 かなりの額の財産があったはずなのですが、管理していた者は遺産はほとんどないと言っています。

 祖母の現時点の遺産額の把握と、口座の過去の入出金記録を調べて資産の推移を確認したいです。

 ただし、どこの金融機関と取引があったのか、私の方では分からないです。

 弁護士さんに調査していただく場合の費用を知りたいです。

 現時点では裁判は考えておらず、調査だけお願いしたいとおもっています。

 それから、調査していただいた結果は、今後裁判になった場合、証拠として採用してもらえるのでしょうか?

記載内容

弁護士費用 預金 取引履歴
(孫)





【調査に関する弁護士費用について】

 弁護士で相続調査だけを受任するケースは多くはありません。

 当事務所では、以前は遺産調査だけを受任することもありましたが、現在は、遺産調査及びその後の事件の受任をワンセットにして50万円(税別)で事件を受任しています。

 他の事務所でも調査だけを受任しているケースは少ないと思います。いずれにせよ費用は事務所により異なりますので、もし、具体的な料金を知りたいというのであれば、各事務所のホームページを調べたり、直接電話で確認されたりするといいでしょう。

 なお、参考までに申し上げれば、現在の弁護士費用の基準としてよく用いられる(旧)大阪弁護士会の報酬規程では《調査案件》については着手金や報酬を記載していませんでした。

 弁護士は調査をするのではなく、事件を解決する役割だという理解からでしょう。


【弁護士の調査はどこが違うのか】

 弁護士でなくとも、法定相続人であれば、遺産の調査は可能です。

 ただ、どのような調査をしたらいいのか、そのためにどのような手続きをするのかについては弁護士の方が詳しいでしょう。

 又、出てきたデータからどのような結論がでるのか、それを法律的にどのように請求していくのかという場面では弁護士でしかわからない点が多数あります。

 現在は裁判までお考えではないということですが、もし、相手方の法定相続人等が遺産の内容を明らかにしてくれないのであれば、そのような案件は話し合いで解決することは困難な場合が大半です。

 早期の段階で、相続に詳しいお近くの弁護士に依頼し、調査と事件の受任もしてもらうのが望ましいでしょう。


【調査結果は当然、証拠となる】

 裁判や遺産分割調停になった場合、調査した資料は証拠として提出することが可能ですし、場合によれば決定的な証拠になることもあります。

 今回の質問の場合、取引のあった金融機関(正確に言うと支店)を発見できるかどうかが重要なポイントですので、その点に重点を注がれるといいでしょう。
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11:32 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

相続放棄した場合の高額療養費【Q&A №380】

2014/06/03
 母のかかっていた訪問診療クリニック、訪問看護、訪問薬局は、まず医療機関と家族が契約したうえでサービスが提供されるシステムでした。それで、娘である私が契約書に記入し、医療費は一か月分まとめて、私の口座から、翌月に自動引き落としになっていました。

 私の場合、医療費は私の口座から払うという契約になっており私が支払ってきたことは通帳記録からも証明できるのですが、そのような場合でも払い戻し金は受け取れないのでしょうか。

 三ケ所それぞれに限度額認定証を提示していますが、それでも合わせると月に20万程度支払っています。合算された払戻金が受取れないのはキツイです。

記載内容

高額療養費 還付金 被保険者 世帯主 健康保険法
(ぽんた)


【還付金返還請求権は誰のものなのかが問題です】
 年金については、特別に法律で、死亡した時点までの未支給分については、順位は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」というように、民法の法定相続人の規定とは別個のもらえる順序が定められています。
 高額療養費は、健康保険法に基づく高額療養費制度に基づくものですが、この請求については、死亡までの未還付分がどのようになるかを直接定めた規定はありません。
 ただ、健康保険法では、この高額療養費を請求できるのは《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》と記載されています。
 お母さんが世帯主か、組合員健康保険の被保険者である場合には、お母さんが請求権者であり、その権利はお母さんの遺産になります。
 このようにその療養費請求権がお母さんのものである場合には、高額療養費請求権はお母さんの遺産になり、《相続放棄をすれば高額療養費は受け取れない》という結論になります。

【あなたが世帯主または組合員かどうかを確かめる】
 あなたの場合、まず、あなたが世帯主か、健康保険の組合員かどうかを確認しましょう。
 もし、どちらかであれば、先ほどの健康保険法の規定上からみて《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であるあなたの独自の権利として請求できると理解してもよいでしょう。
 この場合、役所に出向き、あなたが《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であったことを説明するとともに、現実にもあなたがお金を支払ってきたという証拠として通帳等を持参されるといいでしょう。

【最後は、ダメ元の精神で役所と協議する】
 なお、あなたが《世帯主》でもなく、又《組合員健康保険の被保険者》でもない場合でもない場合には、あなたには請求権がないように思われます。
 しかし、
① お母さんのかかっていた訪問診療クリニック等との契約はあなたがしていた。
② 医療費は、あなたの口座から自動引き落としになっていた。

という事実がありますので、あなたが返還してもらってもおかしくはないともいえます。
 役所と交渉して、支払ってもらったという話も聞いたことがありますので、あなたとしても、実質上の支払い者であるということを訴えて、療養費の振込み口座をあなたの口座にしてもらえるよう、努力されるといいでしょう。

参考条文:健康保険法第57条の2(高額療養費)
 保険者は、療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養及び生活療養を除く。次項において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費若しくは特別療養費として支給される額若しくは第56条第2項の規定により支給される差額に相当する額を控除した額(次条第1項において「一部負担金等の額」という。)が著しく高額であるときは、世帯主又は組合員に対し、高額療養費を支給する。ただし、当該療養について療養の給付、保険外併用療養費の支給、療養費の支給、訪問看護療養費の支給若しくは特別療養費の支給又は第56条第2項の規定による差額の支給を受けなかったときは、この限りでない。
2 高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める。
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10:31 相続放棄 | コメント(2) | トラックバック(0) | 編集

「残余財産を〇〇に」と書かれた遺言の意味【Q&A №354】

2014/03/12
100歳で他界した被相続人の母には元々2000万円の財産がありました。相続人は私と妹の二人です。母は認知症で3年程老健に入所していました。母には内縁配偶者がいましたが、子供はいません。
 母が入所中に内縁配偶者が死亡し、遺言により4000万円が母に相続され、母の財産は合計6000万円になりました。母が亡くなる半年前に作成した公正証書遺言が見つかり、証人は妹と懇意な間柄の税理士とその職員で、私に1500万円を、残余を妹に相続する内容でした。
 調査すると母の財産管理が内縁配偶者から妹に移ると、妹は不規則に計3000万円を遺言作成前に引き出していました。したがって遺言作成時の財産は3000万円に減っています。
 妹は更に遺言作成後1000万円を引き出していました。妹はその内の1500万円は妹の孫に学費として生前贈与されたもので遺産に入らないと主張していますが、一切証拠や納税証明等はありません。
 私としては妹が引き出した内の1000万円は母の為の経費と認め、他の2500万円を不当利得返還請求し、公正証書遺言無効訴訟を考えております。
 そこで質問ですが、公正証書遺言が有効な場合、遺言にある残余とはどの時点のものですか?不当利得として認められた場合は残余に含まれてしまいますか?また上記の訴訟を行わず調停のみで1500万円より多くの相続は不可能でしょうか?

記載内容

残余財産 その余の財産 遺産の認定時点 遺留分 意思能力 遺言書の無効
(エンダ―)


【遺言にある「残余」とはどの時点のものか】
 遺言は相続開始時に効力を発生するものであり、相続開始時点(=今回はお母さんがお亡くなりになった時点)の遺産を分けるものです。
 そのため、遺言書が有効なものであれば、お母さんが亡くなった時点で残っていた預金などの財産のうち、1500万円があなたに、残りの財産はすべて妹さんに相続されることになります。

【不当利得として認められた場合は残余に含まれるのか】
 お母さんの遺産がどのように増えようが、新たな遺産が見つかろうが、あなたの相続するのは最大で1500万円にしかなりません(逆に言えば、1500万円以下だった場合には妹さんは一円も相続できず、あなたが遺産をすべて相続するだけ、という内容です)。
 そのため、あなたが妹さんの不当利得などを発見しても、それは妹さんが相続する《残余》財産が増えるだけであり、あなたが相続する財産が増えることはありません。

【調停を有利に導くためにどんな主張をするべきか】
 調停を有利に展開するためには、まず、どういう主張をだすかという問題があります。
 遺産全体が最大限で6000万円ということですので、あなたの遺留分は最も多く考えても4分の1の1500万円です。
 遺言では1500万円をあなたにということですので、遺留分侵害の問題は生じません。
 そのため、あなたとしては、遺言書の作成時点で、お母さんには意思能力はなく、遺言は無効であると主張されるといいでしょう。

【調停では遺言書の無効かどうかを判断しない】
 次に調停はあくまで話し合いであり、証拠調べなどはなく、又、遺言書が無効かどうかの結論を出すところでもありません、
 ただ、あなたの方が、遺言書が無効であるという確実な証拠を提出できるのであれば、調停委員としても、遺言書の無効の可能性があることを配慮して、相手方に1500万円以上を出すように話しかけてくれる可能性があります。
 お母さんの介護記録や病院のカルテ等、意思能力がないことを裏付ける確実な証拠を獲得する努力をお続けになるといいでしょう。
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16:01 遺言 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

孫への贈与と遺留分減殺請求【Q&A №353】

2014/03/06
 姉が一人おり姉には成人した子供が一人。私は現在海外に住んでいて父の死後、母と姉家族が同居。以前母から手書きで不動産の1~2(同居している家等)を姉に、3,4を私に、5の土地を孫(姉の子)にと書かれたメモを受け取り母の意思ならば従う気持ちでおりました。今回姉の話で私に相続させると書かれてた土地の1つを母の弟がお金が必要で自分の土地と母の土地を合わせないと売れない事を理由に要求して来た結果、印鑑を捺して売った。姉夫婦が面倒な対応を引き受けたと聞き初めて知らない間に売られていた事を知りました。孫の大学の学費は母が全て出したと母がしっかりしている時に母から聞いており、今回ご相談したい気持ちになりました理由は今回の訪問時『孫に不動産の全てを譲る。』と母の直筆で書かれた紙を私に見えるように貼ってあるのを見たからです。このような状況から全ての不動産を姉や姉の子供の名義に私の知らぬ間に(母の捺印済みで)変更されていた場合、私への遺産相続のはどうなるのか?そうなっていた場合私が母の意思であった一部でも相続できる為の手段と裁判になった際の費用等をご教示頂きたく、何卒宜しくお願い致します。
 母や姉に直接この話を問うことは姉の性格上、そして母が老人特有の物忘れもありますので、100%理路整然と話をできない状態にもなって来ております為、不可能だと考えております。

記載内容

 贈与 遺言書の有効要件 遺留分減殺請求 自筆のメモ 貼り紙 意思能力
(涙)


【メモは遺言書にはならない】
 遺言書が有効であるためには最低限、①日付があり、②氏名が自書され、③印鑑が押されていることが必要です。
 お母さんが不動産を、法定相続人であるあなたやお姉さん、お孫さんに分けるとの手書きのメモを書いていたようですが、単なるメモでは遺言書にはなりません。
(又、仮に遺言書であっても、該当不動産が売却されているのであれば、遺言書のうちのあなたに不動産を相続させるという部分は効力を持ちません。)

【貼り紙も遺言書にならない】
 《『孫に不動産の全てを譲る。』と母の直筆で書かれた紙》が貼られていたとしても、冒頭に記載した遺言書の有効要件を充たしていない限り、それは単なる《貼り紙》であり、遺言書ではありません。
 そのため、お母さんが死んだ後、お姉さんがこの《貼り紙》を根拠にして、お孫さん(お姉さんの子)に不動産を相続(遺贈)させることはできません。
 あなたとしては、遺言書ではないのだから、そんな貼り紙はなんらの効力がないということで対応されるといいでしょう。

【遺言書が存在する可能性もあるが・・・】
 ただ、お姉さんの動きを見ていると、遺産である不動産を全部、取り込みたいようです。
 このような状勢からいえば、既に要件を充たした自筆の遺言書あるいは公正証書遺言が作成されている可能性も否定できません。
 お母さんの死後、遺言書が出てきて、そこには、遺産の全部をお姉さん側に相続させる(遺贈する)というような内容だった場合でも、あなたには《遺留分減殺請求権》があります。
 この権利は、本来の法定相続分(本件では相続人はお姉さんとあなたの2人なので2分の1)の半分(4分の1)の限度で、遺産をもらえるという制度です(「相続コラム:遺留分とは」参照)。
 ただ、遺留分減殺請求ということになると、専門家である弁護士の助力が必要であると思われますで、遺言書がある事が判明し、その内容があなたに不利ということなら、早めに相談し、必要に応じて委任をされるといいでしょう。
 なお、弁護士費用は、弁護士により異なり、又、あなたが受け取る金額によっても違いますが、総額でいえば、あなたが受け取る金額の10~20%の程度のことが多いでしょう。

【遺言書を無効にする証拠を集める】
 判断能力がないときに書かれた遺言書は無効です。
 現状では、お母さんが《老人特有の物忘れもありますので、100%理路整然と話をできない状態にもなって来ております》ということのようですが、もし、可能であれば、お母さんの判断能力を調べるテスト(「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」参照)を受けて頂くことも考えておくといいでしょう。
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16:28 遺留分  | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

父から名義変更を受けた保険契約【Q&A №350】

2014/03/04
 長男の私は少し離れたところで自分の家族ですんでおり、父は妹と同居しています。
 30年ほど前、妹が子供を2人生み離婚して実家の借家に住んでいたところいつの間にか実家で同居(子供男2人と)するようになっていました。

 父の年齢が80半ばになり、実家の内情を確認したら、

 父が簡易保険をかけており、
契約者が父で被契約者妹、受取人が父、
契約者が妹で、被契約者孫、受取人が妹、
などバラバラで契約し全部父が払っていました。

 昨年の初め、300万円の簡易保険が満期になったときに、バラバラの簡易保険を満期分支払い、約1000万円分契約者と受取人が妹名義に変えてしまっていました。
 約1000万円は妹名義で証書は妹が持っていました。
 父は今も同居しているのでうやむやでしたが、最近は妹にやったと言い出し始めました。

 妹は10年以上無職で子供の大学までの学費を親に出してもらっていることも確認済みです。

 数年後の生活費や約2000万円の簡易保険分は、遺産相続に含むことはできませんでしょうか? また、今準備すべきことはどのようなことでしょうか?

記載内容

生命保険 契約者 被保険者
(マッキー)


【生命保険金は遺産にはならない】
 お父さんが生命保険(死亡保険金)契約をし、その受取人を指定している場合には、その受取人の受ける生命保険金は、原則として遺産には入らないというのが裁判所の扱いです(Q&A №288Q&A №289Q&A №304を参照)。
 これは、生命保険金は、保険契約に基づいて生じる権利であり、お父さんから引き継いだ遺産ではないからです。

【他人の保険金を支払っていた場合】
 但し、お父さんではなく、それ以外の人の名義で生命保険契約をし、その保険金をお父さんが支払っている場合には、お父さんが支払っている保険料が特別受益になる可能性があります。

【契約名義の変更について】
 お父さんの名義の生命保険契約があり、お父さんが保険料を支払っていた場合、その解約返戻金はお父さんの財産です。
 そのような保険につき、契約名義が妹さんに変更された場合、その名義変更の時点で存在していた解約返戻金額がお父さんから妹さんに行くわけですから、その分が特別受益になるものと思われます。
 又、その後の保険料をお父さんが支払っていたというのであれば、その保険料支払い額が特別受益になる可能性があります。

【孫への学費と特別受益だが・・・】
 今回の質問では、お孫さんの学費をお父さん(おじいさん)が支払っています。
 2つの問題が発生します。
 まず、特別受益は相続人間の利害調整の問題であり、贈与を受けた者が相続人の場合に発生する問題です。
 お孫さんは法定相続人ではないので、本来ならば特別受益の問題は発生しません。
 ただ、お孫さんに対する贈与と言っても、実質的に妹さんに対する贈与であるといえるような場合には、法定相続人である妹さんの特別受益の問題が発生します(参考例:Q&A №324Q&A №327、又は【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

【生活費と特別受益について】
 生活費についても、月額10万円程度であれば、お父さんの扶養義務の範囲内であるとして、特別受益と認められない場合が多いでしょう。

【生命保険の経過を確認、記録しておく】
 以上のとおりであり、あなたの方としては生命保険を中心にして、遺産分割の話を進めるのがベストだと思います。
 そのため、現在のするべき事項としては、簡易保険の贈与経過をお父さんや妹さんから聞きだし、それを詳しく確認し、記録に残しておくといいでしょう。
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養子縁組で相続関係はどう変わるのか。【Q&A №345】

2014/02/13
 昨年4月に祖母が亡くなりました。
 相続人としては実子2人(私の母・叔母(妹))と養子(私の父:婿養子のため養子縁組しておりました。)の計3人になると思います。
 祖母は負の財産があり、私の母は相続放棄しました。叔母も放棄する予定です。父は既に他界しております。
 この前、税務署から連絡があり、私と弟が相続人であるから、相続する意志があるのかを聞かせて欲しいとの事でした。
 私の母が相続放棄しているので、その子(祖母にとっての孫)の私達には相続の権利はないと思っていたのですが、税務署の言い分は私と弟は亡くなった父の代償相続人だという事でした。
 家庭裁判所に問い合わせると、父の養子縁組より前に出生している私と弟は代償相続人にはなり得ないと返答を頂きました。(放棄手続きについても、相続権がないのだから放棄の手続きをとっても受理されないだろうとも言われました。)
 その旨を税務署に伝えると、祖母と血の繋がりがあるだとか、放棄しない・できないのであれば相続を承認したとみなすと一方的に告げられて非常に困っています。
 そもそも私と弟に相続権があるのか(当然あっても放棄します)、またもし相続権がないのであれば税務署にどのような形で通告すればよいのか、アドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

(無礼な税務署職員)


【結論から言えば、家庭裁判所の見解が正しい】
 結論から申し上げますと、家庭裁判所の見解が正しいです。
 税務署にも納得して頂ける内容にするため、民法の条文と文献、判例を記載した回答にしました。
 難しいかもしれませんが、ご理解ください。

【子の代襲相続に関する民法の規定】
 民法の代襲相続の規定は次のようなものです。
《民法第八百八十七条
 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。》

 この条文の下線部分は、「被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になれない」という意味です。

【直系卑属でない者は代襲相続できない】
 父さんが被相続人の養子ですので、子になります。
 問題は、そのお父さんの養子縁組前の子供であるあなた方が、被相続人の直系卑属にあたるかどうかです。
 さきほど記載した民法887条2項の但し書き(上記の下線部分)は昭和37年の民法改正で新設された条文であり、「もっぱら養子の縁組前の子を相続から除く」目的でさだめられたものです(参考文献:有斐閣『新版 注釈民法(26)』247頁6行目以下。図書館などでこの本を探してご確認ください)。

【養子縁組前の子は直系卑属にならない】
 そうすると、問題は、養子縁組前に生まれた養子の子が被相続人の直系卑属になるかどうかという点に絞られます。
 この点については、養子縁組前に生まれた養子の子は、被相続人との間で血族関係をもたない、すなわち直系卑属にならないということが、古くからの確定した裁判例です(大審院判決昭和19年6月22日民集23巻371頁等。なお、これ以外にも判例がありますが、前記『注釈民法』に記載されていますのでご参照ください)。

【養子縁組前の子は代襲相続しない】
 以上のとおりであり、結局、あなた方は縁組前の子であるので、被相続人の直系卑属にはなりません。
 そのため、民法第887条2項の但し書きによりあなた方は代襲相続人にはならず、被相続人であるお祖母さんの相続をすることはありません。
 税務署にはこの回答を印刷してお見せするといいでしょう。
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13:22 相続人 | コメント(1) | トラックバック(0) | 編集

★不正出金をした相続人を廃除できるか【Q&A №341】

2014/01/20
 95歳の祖母には、弁護士の後見人がついています。

 それで、推定相続人のいとこと叔母が後見人がつく前に祖母のお金を勝手に700万近く使い込みし、また、勝手に定期預金700万~を解約していました。

 後見人により、定期預金分、700万は返金してきましたが、残りの700万は、言いがかりだけいい、反省もないうえに返す気もない様子です。

 祖母の面倒は、母、私と姉、叔母の四人で見ています。
 推定相続人の3人の孫は、介護に参加していません。


 この、行為は廃除に該当する「著しい行為」であると思います

 推定相続人である孫を、後見人の弁護士が祖母の代理で裁判所に廃除の申し立てをすることは可能でしょうか?

 お忙しいと思いますが大変困っていますので、どうかお力とアドバイスをお願いいたします。

記載内容

不正出金 廃除 後見人 一身専属権
(けいこ)


【不正出金のみでは著しい非行とは言いがたい】
 《著しい非行》があった場合、被相続人は家庭裁判所に相続人の廃除の申立をすることができます。
 この廃除が認められるとその著しい非行をした推定相続人は相続資格を失います(但し、その子供の代襲相続は可能です)。
 問題は、《著しい非行》とはどのような行為を言うのかという点です。
 虐待や侮辱などの暴力的、精神的が廃除事由の典型ですが、不正出金や浪費などのように金銭的・経済的な打撃といった事情はそれほど重要視されていないという印象があります。
 親のお金を浪費したり、親の土地を勝手に借金の担保に入れたりしたケースで廃除を認める裁判例もないわけではありませんが、裁判所は単に不正出金があるというだけでは(たとえ700万円という多額といえども)そう簡単に廃除を認めないと考えた方がいいでしょう。

【後見人が廃除の申立をすることはできない・・一身専属権からの制限】
 廃除は被相続人の意思に基づいて請求するものです。
 難しい言葉でいえば、廃除の意思表示は《行使上の一身専属権》であると言われており、被相続人本人の意思表示が必要なものです。
 そのため、被相続人以外の他人は、被相続人のためとは言っても、代理行使ができないものです。
 後見人は被相続人の財産管理・維持について自ら権利行使をすることができますが、被相続人そのものではありませんので、被相続人の一身専属権である廃除の申立をする権利まではないと考えるべきでしょう。
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義理の母も相続するのか【Q&A №337】

2013/12/27
 旦那(三男)他界して一年過ぎ、
私67歳・長男息子夫婦・孫中学生2人
で息子夫婦と暮らしております。孫もこれからお金が掛かる年齢ですので質問してみました。宜しく御願い致します。

 義理の母の入院にあたりお世話などに病院に行ってはいるのですが入院費用を折半してと義理の長男夫婦から言われ入院代を兄弟(長男次男(三男私の旦那で他界)娘での折半に含まれるべきか??病院でのお世話は継続しますが。私自身、息子夫婦に面倒みてもらってるのもありますし金銭的にギリギリです。

 又、義理の父が亡くなった時は私の旦那は相続してませんし義理の母が亡くなった時、私は相続権はありますか?無いと記憶してますがあるのでしたら放棄しようと思っています。

記載内容

義理の母 養子縁組 扶養義務 相続放棄 代襲相続
(モコモコ)


【義母の相続人にはならない】
 ご主人が先に亡くなり、その後にお義母さんが亡くなった場合、あなたはお義母さんの相続人にはなりません。
 あなたの息子さんが、ご主人の代襲相続人として、お義母さんの相続人になります。
 
【義母の入院費用の支払い義務はない】
 扶養義務を負うのは、直系血族と兄弟姉妹です。
 あなたのご主人はお義母さんの子供であり、お義母さんを扶養する義務がありましたが、あなたはお義母さんの子供ではありませんので、扶養義務はありません。
 従って、あなたが入院費の支払いを拒否してもなんら違法ではなく、義務違反でもありません。
 参考までにいえば、義理の長男夫婦は、お義母さんの直系血族になり、又、あなたの子供さんも同様に直系血族になりますので、お義母さんを扶養する義務があります。

【あなたの子供さんの相続放棄について】
 あなたの子供さんはお義母さんの遺産についての法定相続人(代償相続人)です。
 従って、子供さんらが相続放棄をしたいのなら、家庭裁判所へ相続放棄の申述手続きをする必要があります。
 相続放棄は相続を知って3ケ月以内にする必要がありますので、期間が過ぎないようにご注意ください。
大澤龍司法律事務所
電話番号    06-6361-6017
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★★【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)

2013/11/06
法定相続人の夫への贈与が特別受益として認められたケース
(昭和55年5月24日 福島家庭裁判所白河支部)

【事実関係】・・(事実関係はわかりやすくするために変更しています)
 被相続人甲が死亡し、その相続人はA及びBである。
 右遺産として、いずれも不動産(評価額は合計2150万円相当)である。
 なお、被相続人は、生前にAの夫であるKに不動産(1350万円相当)を贈与した。
 Bは、Kへの生前贈与はAの特別受益であると主張した。
 このような主張は認められるか。

【参考条文】
 民法第903条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

【裁判所の判断】
 問題の贈与は、相続人であるAに対するものではなく、その夫であるKに対してなされているのであるから、形式的に見る限り特別受益にはあたらない。
 しかし、通常配偶者の一方に贈与がなされれば、他の配偶者もこれにより多かれ少なかれ利益を受けるのであり、場合によっては、直接の贈与を受けたのと異ならないこともありうる。
 遺産分割にあたっては、当事者の実質的な公平を図ることが重要であり、形式的に贈与の当事者でないという理由で、相続人のうちある者が受けている利益を無視して遺産の分割を行うことは、相続人間の実質的な公平を害する。
 そのため、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質及びこれにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であってもこれを相続人の特別受益とみて、遺産の分割をすべきである。
 本件では
① 本件贈与はA夫婦が分家をする際に、その生計の資本としてAの父親である被相続人からなされたものである。
② 贈与された土地のうち大部分を占める農地についてみると、これを利用するのは農業に従事しているAである。
③ 贈与は被相続人の農業を手伝ってくれたことに対する謝礼の趣旨も含まれていると認められるが、農業を手伝ったのはAであること
などの事情からすると、被相続人が贈与した趣旨はAに利益を与えることに主眼があつた。
④ 登記簿上Kの名義にしたのは、Aが夫であるKをたてたほうがよいとの配慮からしたものと推測され、本件贈与は直接Aになされたのと実質的には異ならない。
⑤ 又、その評価も、遺産の総額が2150万円であるのに対し、贈与財産の額は1350万円であり、両者の総計額の38%にもなることを考慮すると、右贈与によりAの受ける利益を無視して遺産分割をすることは、相続人間の公平に反するというべきであり、本件贈与はAに対する特別受益にあたると解するのが相当である。

【弁護士コメント】特別受益が問題になるのは、原則として共同相続人が贈与を受けた場合である。
 従って、相続人の子供や配偶者が贈与を受けた場合には、特別受益にはならない。
 しかし、
① 遺産と比較して贈与の金額(本件では不動産であるが、その価額)が遺産額に比して多額であったこと(贈与額は繰り戻し前の遺産額の約62%となる)
② 被相続人意思が、本来の法定相続人に贈与する意思を有していたと考えられること
③ 更に配偶者名義にしたのは《夫である配偶者を立てた方がよい》との趣旨に出たものであること
を考慮して、この判例では配偶者(夫K)に対する贈与を、法定相続人である妻Aに対する特別受益と判断した。
本件事案としては適切な判断だと思われる。
 被相続人が孫に生前贈与した場合に、それが法定相続人のである子供の特別受益になるかどうかが問題になる。
 そのような場合に参考になる判例である。
 しかし、原則は特別受益にならないということは理解しておく必要があるだろう。
 そのうえで、金額の多寡が多すぎ、かつ贈与した経過をみれば、これは法定相続人に対する贈与と同視できるという特段の事情があれば、特別受益として認められる場合があると考えておくといいだろう。
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11:25 相続判例散策 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

不正に遺産が流出していた場合の対応【Q&A №319】

2013/10/07
  
祖母が亡くなり孫三人に預金をしてくれていた。姉と妹は預金を貰っていたが、私の預金は隠匿され残高ゼロになっていた。それを機に税務事務所に行き資産評価証明書を取り寄せたら、いくつかの不動産がなくなっていた。父に言ったらしらをきりごまかした。
 母の病気を付込み叔母が財産を狙っているようだ。姉も、父の弱みを握り脅迫してかなりの財産を貰って、妹までも母からこそこそ手渡しでお金を渡しているようだった。家族全員が不正し、この状態では正常な遺産分割ができない。
 祖母が亡くなる二年前に祖母から、父は昔会社のお金を使込み、祖母が全額返済をしたと聞かされた。それから父に対する不信感が増え父に叱咤するようになり関係性まで悪くなった。そのことは誰も知らず私にだけ教えてくれた。警察沙汰にならずに済んだと言っていた。祖母から財産を流用されないように見ていてと言っていたが、どうすることも出来ない。


記載内容

不正出金 贈与 借名預金は誰のものか 遺産の管理

(さっちー)


【相続人は誰か・・】
 質問はお祖母さんの相続問題です。
 相談内容を見ると、あなたのお父さん、お母さんはまだご存命のようです。
 その前提であれば、お祖母さんの子であるお父さん(あるいはお母さん)が相続人であり、あなたはお祖母さんの相続人ではありません。
 そのため、あなたとしては、お祖母さんの遺産についてなんらかの主張ができる立場にはありませんので、この点はご確認ください。

【孫名義での預金について】
 ただ、お祖母さんがあなたを含む孫3人に預金を残されています。
 この預金は誰のものかという問題がでてきます。
 まず、お祖母さんが孫(3人)の名義で預金をしていたということですが、その印鑑や通帳は誰が保管していたのでしょうか。
 もし、お祖母さんが保管していたのであれば、これはあなたの名義ではあるものの、いわゆる借名預金であり、あなたの名義を借りてしたお祖母さんの財産であると考えていいでしょう。
 明確な贈与の手続(お祖母さんから通帳と印鑑を渡される、中身を送金してもらう等)もなしに、お祖母さんが死亡したのであれば、あなた名義の預金であってもお祖母さんの遺産であり、あなた自身の財産と扱うことは難しいでしょう。

【財産の管理を頼まれていても・・・】
 お祖母さんから《財産を流用されないように見ていて》と言われておられたようですが、現在のあなたの立場からいえば、相続人でもなく、財産を管理できる立場にはありません。
 もし、あなたがお祖母さんの遺産を管理していても、相続人からの引き渡し請求があればそれに応じないと仕方がないことになります。
 ただ、お祖母さんが遺言書を作成しており、あなたがその執行者に任命されているのであれば、遺言執行者として遺言の内容を実現する必要があるでしょう。


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行方不明の相続人への対処【Q&A №262】

2013/04/02
 夫が他界しました。息子は、さんざん親のお金を使ったあげく、行方知らずです。私と娘だけで夫の財産を相続したいのですが、息子を排除する方法はあるでしょうか。
 家庭裁判所に訴えれば、息子の財産権を無くすことができると、聞いたことがあります。本当でしょうか。

記載内容

行方不明 失踪宣告 廃除

(miko)


【行方不明者も相続人です】
 息子さんが音信不通ということですが、行方不明者であっても財産権はあります。
また、行方不明者であったとしても、相続人であることに変わりはありません。
 そのため、ご主人の相続手続を行う(例えば、預金を解約あるいは引きだしたり、自宅の登記を移転するような場合)には、息子さんの同意が必要不可欠です。
 
【失踪宣告の申立も可能だが・・】
 息子さんと、音信不通が7年間以上にもなり、死亡している可能性があるような場合には、《失踪宣告の申立》を家庭裁判所に対して申し立てるという手段があります。
 まずは戸籍で生存確認をされ、住民票を取り寄せて居場所をつかめないか確認する必要があります。
 それでもやはり連絡が取れず、集めた情報から死亡している可能性がある場合には、失踪宣告の申立をすることも考えていいでしょう。
 ただ、今回の質問のケースでは、単に居所がしれないというだけのようですので、失踪宣告ができるか疑問です。
 仮に失踪宣告がなされたとしても、息子さんはその住所地において死亡したものとして扱われ、息子さんの相続が開始します。戸籍を調べて息子さんに子供さん(ご主人からすれば孫にあたる人物など)がいれば、結局その相続人から同意をもらう必要があるので、本件ではあまり問題解決の役には立たないでしょう。

【本件で廃除は難しい】
 また、息子さんから相続人の立場を奪う方法として、《廃除》を裁判所に申し立てるという手段があります(廃除の制度説明については、当ブログ Q&A №102 などをご参照ください)。
 しかし、この制度は被相続人に対する虐待とか、重大な侮辱、その相続人の重大な非行行為などがある場合であり、そう簡単には認められるものではありません。
 そのため、結論としては、息子さんを可能な限り探しだし、息子さんが見つからなければ預金などはあなたと娘さんの持分だけの支払いを銀行に請求し、自宅の不動産などについてはあなた方の持分があることだけを相続登記するといった方法をとらざるを得ないでしょう。


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11:44 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

被相続人の遺産の範囲の調査【Q&A №208】

2012/10/30
 特別受益に該当しますか。
 前提:弟が死亡し、相続が発生しました。弟には妻(入籍したのは約5年前)はい
ますが、子供はおりません。相続人は、弟の妻、私たち兄弟の計3名です。
弟は生前、退職金で妻の弟の借金(何百万円単位)を肩代わりしたり、土地を購入し
妻名義で土地の登記をしています。これらは、相続財産に該当しますか。
また、それを証明するため、銀行口座の取引履歴を入手したいと考えています。その際、弟と兄弟の関係を示す戸籍謄本が必要とのことですが、具体的にはどの戸籍謄本を入手すればよろしいのでしょうか。
(父母:死亡、弟:この度死亡、兄弟、それぞれ違う県に本籍があります。)
記載内容

借金 肩代わり 取引履歴 他人名義の不動産 相続証明
(わたる)


【返済資金提供は贈与?貸金?】
 奥さんの弟さん(以下、義理の弟さんといいます)の借金返済について、弟さんが資金を提供した場合には、その資金を贈与したのか、貸しただけなのかということが、まず問題になります。
 資金提供の際にどのような話や事情があったのかを調査しましょう。
 借用証書が作成されたのかどうか、弟さんが返還請求した事実があるかどうか、少額でもあれ義理の弟さんによる返済の事実がないのかどうかなどを確認して、贈与か貸金かを判断しましょう。
 貸したのであれば、貸金債権として遺産に含まれ、相続人は返還請求ができます。
 しかし、贈与なら、原則として遺産に含まれません。

【妻名義での土地の購入】
 奥さん名義の土地についても、その資金を誰が出したのかが問題となります。
 もし、弟さんがその資金を全部出したというのであれば実質的には弟さんのものであり、名義だけを奥さんから借りたにすぎないとして、弟さんの遺産と主張することも可能になります。
 当事務所が担当している事件には、そのような主張をする場合もよくあります。
 資金以外にも、固定資産税の支払いや弟さん夫婦間の収入の比較などの調査をし、弟さんの遺産であることを証明する資料を収集する必要があるでしょう。
 又、支払い資金の動きを確認するためにも、弟さんの銀行口座の取引履歴を取寄せることも必要不可欠です。

【兄弟が相続人であることの証明するための戸籍は・・】
 金融機関としては、あなたが相続人であれば、取引履歴の照会に回答します。
 兄弟が相続人になるためには、被相続人である弟さんに子供や孫がいないこと、お父さんお母さんがおらず、お祖父さんやお祖母さんもいないことが前提になります。
 そのため、弟さんとあなたが兄弟であることを証明する戸籍や除籍謄本だけではなく、被相続人である弟さんの出生からの戸籍等も必要ですし、両親もすでに死亡していることを証明する戸籍も必要になります。
 なお、本籍地が他府県に分かれているとのことですが、郵送でも取寄せが可能のはず(弁護士の場合には郵送で取寄せします)ですが、念のためにその本籍地の役所に問い合わせされるといいでしょう。

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10:25 遺産分割 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集

★相続人一人による預金情報の開示【Q&A №205】

2012/10/09
 遺産相続
 6月に義父が亡くなり、義母と主人は早く他界しています。
 その娘が孫(娘達)に父親は借金が有るので迷惑を掛けると悪いので相続を放棄するように弁護士を依頼して少額の通帳だけのコピーを添付し書類だけを送付してきました。娘達は借金が有るのだったら叔母さんも放棄すれば良いことにプラスを独り占めしようとしている魂胆が不服です。私(嫁)には遺産相続の権利は無いのでしょうか。
 銀行の開示は相続人の一人でも出来るとインターネットで読みました。可能ですか。どうすればどうぞアドバイスを宜しくお願い致します。

記載内容

預金情報 取引履歴 相続放棄期間の延長 債務の発見

(さっちゃん)


【妻に義父の相続権はありません】
 まず、妻であるあなたに義理の父の相続権があるかどうかについて説明します。
 義父さんが先に死亡した場合であれば、あなたのご主人が相続します。
 その後、あなたのご主人が死亡したのなら、あなたはご主人の遺産を相続することになります(義父さんの遺産もその中に入っているでしょう)。
 しかし、質問の場合は、先にご主人が亡くなっていますので、亡くなったご主人の子であるあなたの娘さんたち(義父さんの孫)が相続します(これを代襲相続と言います)が、あなたには相続する権利はありません。

【今、するべきことは相続の調査・・娘さん一人で調査可能です】
 今回のようにご主人の兄弟(義父の娘さん)が相続放棄を勧めてきたが、それに不審があるというのなら、是非、義父さんの遺産の内容を調査するべきでしょう。
 まず、最初に義父の娘さんに財産が他になかったのか、又、借金の額や相手方、その裏付け証拠を求めましょう。
 これと並行して、娘さんたち(義父さんの孫)は相続人ですので、娘さんたちが金融機関に義父さんの遺産である預金情報を調査することができますので、早期に調査を実行されるといいでしょう(この方法については、本ブログの相続問題、Q&A №98 をはじめとするカテゴリ( 参考カテゴリ:「遺産調査」 )の各記事をご参照ください)。

【相続放棄が可能なのか・・】
 相続放棄は死亡を知ってから3ヶ月以内という短期間しかできませんので、6月に義父が亡くなられたということであれば、すでに相続放棄ができなくなっている可能性があります。
 ただ、万が一負債が残っている可能性も踏まえますと、債務があることを知ってから3ケ月以内は相続放棄が可能になる余地があります。
 又、今から遺産調査をすると、3ケ月以内に調査が完了することは難しい可能性が高く、そのため、予め裁判所に放棄期間の伸長申請も必要になるでしょう(家庭裁判所にこの申請書式を置いていることがあります)。
 これらの点については、家庭裁判所に聞いてもある程度のことは教えてくれますが、できれば法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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15:43 遺産調査 | コメント(0) | トラックバック(0) | 編集
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